特許第6053598号(P6053598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アマダミヤチの特許一覧
特許6053598レーザ切断方法、レーザ出射ユニット及びレーザ切断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053598
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】レーザ切断方法、レーザ出射ユニット及びレーザ切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20161219BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20161219BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20161219BHJP
   B23K 26/14 20140101ALI20161219BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B23K26/38 Z
   B23K26/064 A
   B23K26/08 F
   B23K26/14
   B23K26/10
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-87342(P2013-87342)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-210277(P2014-210277A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161367
【氏名又は名称】株式会社アマダミヤチ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100086564
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 聖孝
(72)【発明者】
【氏名】内田 ▲高▼弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊明
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−136471(JP,A)
【文献】 特開平06−170570(JP,A)
【文献】 特開昭56−074387(JP,A)
【文献】 特開2003−227062(JP,A)
【文献】 特開平11−342485(JP,A)
【文献】 特開2011−177788(JP,A)
【文献】 特開2013−027933(JP,A)
【文献】 特開平11−342488(JP,A)
【文献】 特開2000−202672(JP,A)
【文献】 特開平08−019886(JP,A)
【文献】 特開昭59−087995(JP,A)
【文献】 特開昭59−087994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B23K 26/064
B23K 26/08
B23K 26/10
B23K 26/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象の板材に対して、アシストガスを噴き付けながら、レーザ発振器より発振出力されたレーザビームを集光レンズにより集光して照射し、前記レーザビームのビームスポットを相対的に移動させることにより、前記板材を前記ビームスポットの移動する経路に沿って溶融または蒸発させて分断するレーザ切断方法であって、
前記レーザビームの光路上で、前記集光レンズの前段にガルバノスキャナを配置するとともに、前記集光レンズの後段に無端のループ形状をなすスリット状先端口を有するノズルを配置し、
前記アシストガスを前記ノズルの前記スリット状先端口を介して前記板材に噴き付けながら、前記レーザ発振器からの前記レーザビームを前記ガルバノスキャナ、前記集光レンズおよび前記ノズルの前記スリット状先端口を介して前記板材に照射し、
前記板材上で前記レーザビームのビームスポットが予め設定された切断経路をトレースするように、前記ガルバノスキャナにより前記レーザビームをスキャニングして、前記レーザビームを前記ノズルの前記スリット状先端口の中で周回方向に移動させる、
ことを特徴とするレーザ切断方法。
【請求項2】
前記スリット状先端口のループ形状は多角形である、請求項1記載のレーザ切断方法。
【請求項3】
前記スリット状先端口のループ形状は三角形である、請求項2記載のレーザ切断方法。
【請求項4】
前記板材に、前記切断経路の1単位として、起点から第1の方向に任意の第1の距離だけ延びる第1の切断区間と、前記第1の切断区間の終端から前記第1の方向と直交する第2の方向に任意の第2の距離だけ延びる第2の切断区間と、前記第2の切断区間の終点から前記第1の方向と逆の方向に前記第1の距離と等しい第3の距離だけ延びる第3の切断区間と、前記第3の切断区間の終点から前記第2の方向に任意の第4の距離だけ延びる第4の切断区間とが設定され、
前記スリット状先端口は、前記第4の距離よりも短くて前記第4の切断区間と重なり得る底辺としての第1の辺と、前記第1または第3の距離と等しい高さと、切断途中の前記第1の切断区間と斜めに交差し得る第2の辺と、切断途中の前記第3の切断区間と斜めに交差し得る第3の辺とを有し、
前記板材上で前記切断経路の1単位の分断を行うときは、前記板材が前記ノズルに対して相対的に前記第2の方向と逆の方向に移動しながら、前記レーザビームが、前記スリット状先端口において、前記第1の切断区間を切断するために前記第1の辺と対向する第2の頂点へ向かって前記第2の辺の中を移動し、前記第2の切断区間を切断するために前記第2の頂点で静止し、前記第3の切断区間を切断するために第2の頂点から前記第1の辺と前記第3の辺が交わる第3の頂点へ向かって前記第3の辺の中を移動し、前記第4の切断区間を切断するために前記第3の頂点から前記第1の頂点へ向かって前記第1の辺の中を移動する、
請求項3に記載のレーザ切断方法。
【請求項5】
前記板材上で前記切断経路の1単位の分断を前記第2の方向において複数回または無数回連続的に繰り返して行うときは、前記ノズルに対する前記板材の相対的な移動を持続しながら、前記スリット状先端口における前記レーザビームの一周移動を一定の周期で複数回または無数回連続的に繰り返す、請求項4に記載のレーザ切断方法。
【請求項6】
前記板材は金属テープであり、
前記金属テープ上にテープ長さ方向の切断経路とテープ幅方向の切断経路とを交互に繰り返すパターンの切断経路が設定され、
前記金属テープを前記切断経路に沿って分断するために、前記金属テープが前記ノズルに対して相対的にテープ長さ方向に一定の速度で移動しながら、前記レーザビームが前記ノズルの前記スリット状先端口の中で周回方向に一周する動作が一定の周期で繰り返される、
請求項3に記載のレーザ切断方法。
【請求項7】
レーザ切断加工のために加工対象の板材に向けてアシストガスを噴き付けながらレーザビームを出射するレーザ出射ユニットであって、
レーザ発振器より伝送されて来る前記レーザビームを前記板材上に集光させるための集光レンズと、
前記レーザビームの光路上で前記集光レンズの前段に設けられ、前記レーザビームのビームスポットが前記板材上に設定された切断経路をトレースするように、前記レーザビームを二次元方向でスキャニングするためのガルバノスキャナと、
前記レーザビームの光路上で前記集光レンズの後段に設けられ、アシストガス供給部より送られて来る前記アシストガスを導入するとともに、前記集光レンズを透過して来る前記レーザビームを導入する筒状のノズル本体と、無端のループ形状をなすスリット状先端口とを有し、前記スリット状先端口より前記アシストガスを噴射するとともに前記レーザビームを出射するノズルと
を備えるレーザ出射ユニット。
【請求項8】
前記集光レンズは、テレセントリック性のfθレンズである、請求項7に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項9】
前記ノズル本体の上端の開口を塞いで、前記集光レンズからの前記レーザビームを透過させる透明板を有する、請求項7または請求項8に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項10】
前記ノズル本体の中に、上端が前記透明板に結合され、下端が前記スリット状先端口によって周囲を包囲されている吊り部材が設けられている、請求項7〜9のいずれか一項に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項11】
前記吊り部材の下端面は多角形である、請求項10に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項12】
前記吊り部材の下端面は三角形である、請求項11に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項13】
前記吊り部材は、上から下に向かって逆テーパ状に太くなる吊り棒を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項14】
前記吊り棒の側面と前記ノズル本体の側壁との間のスペースは、上から下に向かってテーパ状に狭くなる、請求項13に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項15】
前記レーザビームは、前記ノズル本体および前記スリット状先端口の中を無反射で通過する、請求項10〜14のいずれか一項に記載のレーザ出射ユニット。
【請求項16】
請求項7〜15のいずれか一項に記載のレーザ出射ユニットと、
レーザビームを発振出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から前記レーザ出射ユニットへ前記レーザビームを伝送するレーザ伝送部と、
前記レーザ出射ユニットの前記ノズルにアシストガスを供給するアシストガス供給部と
を有するレーザ切断装置。
【請求項17】
前記レーザ出射ユニットと加工対象の板材との間で所定方向に相対的な移動を行わせる移動機構を有する、請求項16に記載のレーザ切断装置。
【請求項18】
前記移動機構は、静止状態の前記スリット状先端口の近傍を前記板材が前記所定方向で通過するように、前記板材を搬送する加工テーブル機構を有する、請求項17に記載のレーザ切断装置。
【請求項19】
前記板材は金属テープであり、
前記加工テーブル機構は、前記金属テープをその回転する外周面に一定の回転角度だけ載せて前記スリット状先端口の近傍を通過させるローラを有する、
請求項18に記載のレーザ切断装置。
【請求項20】
前記ローラは、バキューム機構に接続されている多孔質の金属またはセラミックを含む円筒状の胴部を有し、前記バキューム機構より前記胴部の内部に与えられるバキュームの吸引力によって、その外周面に載っている前記金属テープを保持する、請求項19に記載のレーザ切断装置。
【請求項21】
前記ローラの外周面には、前記金属テープ上の前記切断経路と対向する位置に溝部が形成されている、請求項20に記載のレーザ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材にレーザビームとアシストガスを同時に当てて切断加工を行うレーザ切断方法、レーザ出射ユニットおよびレーザ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、レーザ切断法は、金属、非金属を問わず、様々な板材の切断加工に使われている。特に、薄い金属板材の精密切断加工において、レーザ切断法は、バリの発生が少ないこと、複雑な輪郭形状の切断にも容易に対応できること、高速切断が可能であることなど、多くの利点を有している。
【0003】
一般に、レーザ切断法は、板材にアシストガスを吹き付けながら、細く絞ったレーザビームにより板材を局所的に加熱溶融または蒸発させ、板材上でレーザビームのビームスポットを予め設定された切断経路に沿って相対的に移動させる。ここで、アシストガスは、切断によって生じた溶融物や蒸発物を吹き飛ばして除去するだけでなく、板材を冷却する役目や、レーザ光学系(特に集光レンズ)を飛散物から保護する役目もある。さらに、酸素ガスがアシストガスに用いられる場合は、酸化反応熱によって板材の溶融、蒸発を助長する働きもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−185874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえば、銅箔テープやアルミ箔テープのような薄い金属テープ(板材)をテープ長さ方向の切断経路とテープ幅方向の切断経路とを交互に繰り返すパターンで数メートル以上あるいは数10メートル以上に亘り連続的に分断する切断加工において、従来のレーザ切断方法および装置は、切断加工の性能や効率の面で限界に突き当たっている。
【0006】
すなわち、従来のレーザ切断装置は、加工対象の板材にアシストガスを十分高い圧力で吹き付けるために、細径の先端口を有するガンタイプのノズルをレーザ出射ユニットに取り付けている。このため、金属テープをテープ長さ方向に延びる切断経路に対してはガンタイプノズルまたは金属テープを相対的にテープ長さ方向で移動させ、金属テープ上でテープ幅方向に延びる切断経路に対してはガンタイプノズルまたは金属テープを相対的にテープ幅方向で移動させることになる。しかし、ガンタイプノズルまたは金属テープのどちらを移動させる場合でも、直交する2方向の移動を交互に途切れなくかつ高速に(たとえば数メートル/秒のテープ送り速度で)行うことは到底不可能である。
【0007】
また、従来のレーザ切断装置において、切り抜き加工を行うときは、板材上でレーザビームのビームスポットが切り抜きパターンの輪郭を一周するように、板材に対してガンタイプノズルを相対的に移動させている。やはり、ガンタイプノズルまたは板材のどちらを移動させる場合でも、切り抜き加工の速度はその移動速度に律速されており、高速化は困難である。
【0008】
本発明は、上記のような切断加工の現実的な要請および従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、板材を一定パターンの経路に沿って分断するレーザ切断加工の性能および効率を飛躍的に向上させるレーザ切断方法、レーザ出射ユニットおよびレーザ切断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ切断方法は、加工対象の板材に対して、アシストガスを吹き付けながら、レーザ発振器より発振出力されたレーザビームを集光レンズにより集光して照射し、前記レーザビームのビームスポットを相対的に移動させることにより、前記板材を前記ビームスポットの移動する経路に沿って溶融または蒸発させて分断するレーザ切断方法であって、前記レーザビームの光路上で、前記集光レンズの前段にガルバノスキャナを配置するとともに、前記集光レンズの後段に無端のループ形状をなすスリット状先端口を有するノズルを配置し、前記アシストガスを前記ノズルの前記スリット状先端口を介して前記板材に吹き付けながら、前記レーザ発振器からの前記レーザビームを前記ガルバノスキャナ、前記集光レンズおよび前記ノズルの前記スリット状先端口を介して前記板材に照射し、前記板材上で前記レーザビームのビームスポットが予め設定された切断経路をトレースするように、前記ガルバノスキャナにより前記レーザビームをスキャニングして、前記レーザビームを前記ノズルの前記スリット状先端口の中で周回方向に移動させる。
【0010】
上記構成のレーザ切断方法においては、ガルバノスキャナのスキャニング動作によりレーザビームをノズルのスリット状先端口の中で周回方向に移動させて板材上に集光させ、かつこのスリット状先端口より高圧力の鋭利な吐出流でアシストガスを板材に吹き付けることにより、板材上でレーザビームのビームスポットを二次元方向に途切れなく連続的かつ高速に移動させることができる。これにより、板材をスリット状先端口のループ形状に対応する輪郭形状にレーザ切断(切り抜き)加工することが可能である。さらには、スリット状先端口の無端ループの中でレーザビームを周回方向に移動させるレーザスキャニングと、板材とノズル間の必要最小限の相対移動(典型的には直線移動)とを同時併用することにより、板材を一定の二次元的な切断経路(特に上記直線移動の方向で一定のパターンを繰り返す切断経路)に沿って高速に分断することができる。
【0011】
本発明の好ましい一形態において、板材は金属テープであり、この金属テープ上にテープ長さ方向の切断経路とテープ幅方向の切断経路とを交互に繰り返すパターンの切断経路が設定される。この場合、スリット状先端口のループ形状は三角形である。そして、金属テープを切断経路に沿って分断するために、金属テープがノズルに対して相対的にテープ長さ方向に一定の速度で移動しながら、レーザビームがノズルの前記スリット状先端口の中で周回方向に一周する動作が一定の周期で繰り返される。
【0012】
本発明のレーザ出射ユニットは、レーザ切断加工のために加工対象の板材に向けてアシストガスを吹き付けながらレーザビームを出射するレーザ出射ユニットであって、レーザ発振器より伝送されて来る前記レーザビームを前記板材上に集光させるための集光レンズと、前記レーザビームの光路上で前記集光レンズの前段に設けられ、前記レーザビームのビームスポットが前記板材上に設定された切断経路をトレースするように、前記レーザビームを二次元方向でスキャニングするためのガルバノスキャナと、前記レーザビームの光路上で前記集光レンズの後段に設けられ、アシストガス供給部より送られて来る前記アシストガスを導入するとともに、前記集光レンズを透過して来る前記レーザビームを導入する筒状のノズル本体と、無端のループ形状をなすスリット状先端口とを有し、前記スリット状先端口より前記アシストガスを噴射するとともに前記レーザビームを出射するノズルとを有する。
【0013】
上記構成のレーザ出射ユニットによれば、ガルバノスキャナのスキャニング動作によりレーザビームをノズルのスリット状先端口の中で周回方向に移動させて板材上に集光させ、かつこのスリット状先端口より高圧力の鋭利な吐出流でアシストガスを板材に吹き付けることにより、板材上でレーザビームのビームスポットを二次元方向に途切れなく連続的かつ高速に移動させることができる。
【0014】
本発明の好ましい一形態において、集光レンズはテレセントリック性のfθレンズである。ガルバノスキャナによりスキャニングされるレーザビームは、集光レンズ上の入射位置または入射角に関係なく常にレンズの光軸と平行にノズル本体内のスペースとスリット状先端口を通り抜け、板材上の切断経路に集光する。
【0015】
また、好ましい一形態として、ノズル本体の上端の開口を塞いで、集光レンズからのレーザビームを透過させる透明板が設けられる。そして、ノズル本体の中には、上端が透明板に結合され、下端がスリット状先端口によって周囲を包囲されている吊り部材が設けられる。ノズルのスリット状先端口は、吊り部材の下端の周囲を囲むように形成される。
【0016】
好ましくは、この吊り部材は上から下に向かって逆テーパ状に太くなる吊り棒を有し、この吊り棒の側面とノズル本体の側壁との間のスペースは上から下に向かってテーパ状に狭くなる。かかる構成により、アシストガスをスリット状先端口より乱流の少ない高圧力で鋭利に噴出させることができる。
【0017】
本発明のレーザ切断装置は、上記レーザ出射ユニットと、レーザビームを発振出力するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から前記レーザ出射ユニットへ前記レーザビームを伝送するレーザ伝送部と、前記レーザ出射ユニットの前記ノズルにアシストガスを供給するアシストガス供給部とを有する。
【0018】
上記構成のレーザ切断装置においては、ガルバノスキャナのスキャニング動作によりレーザビームをノズルのスリット状先端口の中で周回方向に移動させて板材上に集光させ、かつこのスリット状先端口より高圧力の鋭利な吐出流でアシストガスを板材に吹き付けることにより、板材上でレーザビームのビームスポットを二次元方向に途切れなく連続的かつ高速に移動させることができる。
【0019】
本発明の好ましい一形態によれば、上記レーザ出射ユニットと加工対象の板材との間で所定方向に相対的な移動(典型的には直線移動)を行わせる移動機構を備えることで、板材を一定の二次元的な切断経路(特に上記直線移動の方向で一定のパターンを繰り返す切断経路)に沿って高速に分断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレーザ切断方法、レーザ出射ユニットまたはレーザ切断装置によれば、上記のような構成および作用により、板材を一定のパターンで分断するレーザ切断加工の性能および効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態におけるレーザ切断装置の全体構成を示す図である。
図2】一実施例における板材および切断経路の形態を示す平面図である。
図3】実施例における加工テーブル機構の構成を示す正面図である。
図4A】上記加工テーブル機構のテーブルローラ回りの構成を示す斜視図である。
図4B】上記テーブルローラの胴部の構成を示す斜視図である。
図5】レーザ出射ユニット内の光学系の構成を示す斜視図である。
図6A】実施例におけるノズルの構成を示す斜視図である。
図6B】上記ノズルの構成を示す平面図である。
図6C図6BのA−N−A線に沿う縦断面図である。
図7A】実施例において切断経路とスリット状先端口のループ形状との間に設定されるレイアウト条件の一例を示す図である。
図7B】上記レイアウト条件の別の例を示す図である。
図7C】上記レイアウト条件の別の例を示す図である。
図8A】実施例において切断経路の一単位を切断するレーザ切断加工の各段階を示す図である。
図8B】実施例において切断経路の一単位を切断するレーザ切断加工の各段階を示す図である。
図9】一変形例におけるスリット状先端口のループ形状とレイアウト条件を示す図である。
図10A】一変形例におけるノズルの構成を示す縦断面図である。
図10B】別の変形例におけるノズルの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[装置全体の構成]
【0023】
図1に、本発明の一実施形態におけるレーザ切断装置の構成を示す。このレーザ切断装置は、レーザ発振器10、レーザ電源12、レーザ伝送系14、レーザ出射ユニット16、主制御部18、スキャナ制御部20、アシストガス供給部22、加工テーブル機構24およびタッチパネル26を備えている。
【0024】
レーザ発振器10は、たとえばシングルモードのファイバレーザ発振器であり、発光元素としてたとえば希土類元素のイオンをドープしたコアを有する発振用の光ファイバと、この発振用光ファイバの一端面にポンピング用の励起光を照射する電気光学励起部と、発振用光ファイバの両端より軸方向に出る所定波長の光を共振増幅して出力する一対の光共振器ミラーとを有しており、たとえば500W以上の高出力で集光性の高い連続波またはQスイッチパルスのレーザビームLBを発振出力する。
【0025】
レーザ電源12は、主制御部18の制御の下で、レーザ発振器10の電気光学励起部の光源(一般にレーザダイオード)に励起電流を供給する。図示省略するが、レーザ発振器10より出力されるレーザビームLBのパワーをレーザ電源12にフィードバックして励起電流を制御するパワーフィードバック機構を備えることも可能である。
【0026】
レーザ発振器10より出力されたレーザビームLBは、レーザ伝送系14において、たとえばベントミラー30で所定方向に折り返され、次いで入射ユニット32内で集光レンズ34により集光されて伝送用の光ファイバ36の一端面に入射する。この伝送用光ファイバ36は、たとえばSI(ステップインデックス)形ファイバからなり、入射ユニット32内で一端面より入力したレーザビームLBをレーザ出射ユニット16まで伝送する。
【0027】
レーザ出射ユニット16は、伝送用光ファイバ36の終端に接続されるスキャナ筺体38と、このスキャナ筺体38の出口に接続されるノズル40とを有する。スキャナ筺体38には、コリメートレンズ42、ガルバノスキャナ44(図5)および集光レンズ46等の光学部品が収容されている。集光レンズ46は、スキャナ筺体38の底部または出口付近に設けられ、ノズル40と同軸に配置されている。スキャナ筺体38内の光学系の具体的な構成および作用については、図5につき後に詳しく説明する。
【0028】
ノズル40は、そのスリット状先端口40aを加工テーブル機構24に向けた姿勢(通常は垂直に起立した姿勢)でスキャナ筺体38の出口(下端)に接続され、集光レンズ34を透過して来たレーザビームLBをそのまま無反射で垂直下方に通過させてスリット状先端口40aより加工テーブル機構24上の板材Wに向けて出射するとともに、アシストガス供給部22よりガス供給管48を介して送られてくるアシストガスAGをスリット状先端口40aより板材Wに吹き付けるようになっている。ノズル40およびスリット状先端口40aの具体的な構成および作用については、図6A図6Cにつき後に詳しく説明する。
【0029】
加工テーブル機構24は、加工対象の板材Wをノズル40のスリット状先端口40aに対向させて少なくともその直下付近では水平に支持し、かつノズル40のスリット状先端口40aの近傍を水平方向に移動させるようになっている。加工テーブル機構24は、板材Wの形状および切削加工の内容等に応じて任意の構成を採り得る。
【0030】
主制御部18は、CPU(マイクロコンピュータ)を含んでおり、プログラムメモリに格納している各種プログラム(ソフトウェア)にしたがって装置全体ないし各部、特にレーザ出射ユニット16および加工テーブル機構24の動作を制御し、タッチパネル26の入力部26aおよび表示部26bを介してユーザ(作業員、保守員等)と情報(設定値、モニタ情報等)をやりとりする。

[実施例]
【0031】
このレーザ切断装置は、一実施例として、図2の(a)に示すように、銅箔テープやアルミ箔テープのような薄い金属テープWTを加工対象の板材Wとし、この金属テープWTをパルス波形に似た繰り返しのパターン(テープ長さ方向の切断経路とテープ幅方向の切断経路とを交互に繰り返すパターン)の切断経路CKに沿って数メートル以上あるいは数10メートル以上に亘り連続的に分断する切断加工に好適な装置構成および機能を有する。切断加工の後、金属テープWTは、図2の(b)に示すように切断経路CKを境に2片(Wm,WM)に分離される。一例として、縁部の細い帯片Wmは捨てられ、幅広の帯片WMが加工品としてたとえばリチウムイオン電池の電極に用いられる。
【0032】
図3に、この実施例における加工テーブル機構24の全体構成を示す。この加工テーブル機構24は、金属テープWTを繰り出すための繰り出しリール50と、金属テープWTを巻き取るための巻き取りリール52と、繰り出しリール50と巻き取りリール52との間でノズル40のスリット状先端口40aと対向して配置され、繰り出しリール50から巻き取りリール52へ送られる途中の金属テープWTをその回転する外周面に一定の回転角度だけ載せてノズル40のスリット状先端口40aの近傍を水平な一方向(Y+方向)に通過させるテーブルローラ54と、このテーブルローラ54の前後で金属テープWTにテンションを与えるための一対のテンションローラ56とを有している。
【0033】
さらに、加工テーブル機構24は、金属テープWTがノズル40のスリット状先端口40aの直下を一定の速度でテープ送り方向(Y+方向)に移動するように、繰り出しリール50、巻き取りリール52およびテーブルローラ54をそれぞれ回転駆動するモータ58,60,62と、主制御部18からの指令にしたがってこれらのモータ58,60,62の回転動作(特に回転速度)を個別にかつ統括して制御する送り制御部64とを備えている。
【0034】
図4Aおよび図4Bに、テーブルローラ54の構成を示す。テーブルローラ54の胴部66は、多孔質の金属またはセラミックからなる中空の円筒体として構成されている。この胴部66の両端部には、金属テープWTの横ずれを防止するための鍔部またはフランジ部68が設けられている。胴部66の両端面は閉塞され、一方の端面から突出する中空の回転軸70が従動プーリ72、タイミングベルト74および駆動プーリ(図示せず)を介してモータ60(図3)の駆動軸に結合されている。さらに、中空の回転軸70の先端はロータリージョイント(図示せず)を介してバキューム管(図示せず)に接続されている。バキューム装置(図示せず)からのバキュームがバキューム管、ロータリジョイント、回転軸70を介してテーブルローラ54の内部に与えられ、さらにテーブルローラ54の内部から多孔質の胴部66を介して金属テープWTに与えられる。これにより、金属テープWTは、テーブルローラ54の胴部66に所定の回転角度に亘ってバキューム力で吸着または保持されながら、ノズル40のスリット状先端口40aの直下を通過するようになっている。
【0035】
また、テーブルローラ54の胴部66において、ノズル40のスリット状先端口40aの直下を通過する外周面には、切断経路CK(図2)と同じ形状および繰り返しのパターンで円周方向に延びる無端の溝76が形成されている。これにより、レーザ切断加工中に金属テープWT上の切断経路CKで生じた溶融飛散物は、スリット状先端口40aより吹き付けられるアシストガスAGの圧力によって真下の溝76の中に落ちるようになっている。これにより、金属テープWTがローラ54に溶着することなく、確実に切断できる。
【0036】
図5に、レーザ出射ユニット16のスキャナ筺体38(図1図3)に内蔵されている光学系の構成を示す。
【0037】
スキャナ筺体38内には、コリメートレンズ42、ガルバノスキャナ44および集光レンズ46が図5に示すような配置構成で設けられている。より詳しくは、コリメートレンズ42がスキャナ筐体38の側壁付近に光軸を水平にして垂直の姿勢で配置され、このコリメートレンズ42にX軸ガルバノスキャナ44XのX軸ガルバノミラー80Xが約45°斜めの姿勢で水平に向き合っている。X軸ガルバノスキャナ44Xの回転駆動部は、円筒状のX軸ガルバノケーシング82X内に収められ、電気ケーブル84Xを介してスキャナ制御部20(図1)に接続されている。
【0038】
一方、スキャナ筐体38の出口付近に光軸を垂直にして水平な姿勢で配置される集光レンズ46に、Y軸ガルバノスキャナ44YのY軸ガルバノミラー80Yが約45°斜めの姿勢で垂直に向き合っている。光学系筐体38の中で、X軸ガルバノミラー80XとY軸ガルバノミラー80Y同士も互いに所定の交差する角度で斜めに対向している。Y軸ガルバノスキャナ44Yの回転駆動部は、Y軸ガルバノケーシング82Y内に収められ、電気ケーブル84Yを介してスキャナ制御部20に接続されている。
【0039】
スキャナ筐体38の中で、伝送用光ファイバ36の終端面から所定の拡がり角で出たレーザビームLBは、コリメートレンズ42により平行光になってX軸ガルバノミラー80XおよびY軸ガルバノミラー80Yに順次入射して反射し、最後に集光レンズ46を透過するようになっている。そして、集光レンズ46を透過したレーザビームLBは、ノズル40の中を垂直下方に通り抜けて、金属テープWT上の切断経路CKに集光するようになっている。なお、集光レンズ46は、テレセントリック性のfθレンズであり、Y軸ガルバノミラー80Yより入射するレーザビームLBをその入射位置または入射角に関係なく常にレンズの光軸と平行に垂直下方に向けて集光するようになっている。
【0040】
図6A図6Cに、レーザ出射ユニット16のノズル40の構成を示す。ノズル40は、三角筒状のノズル本体86と、このノズル本体86の中に宙吊で配置される三角柱状の吊り棒88と、この吊り棒88を支持する透明板たとえばガラス板90とを有している。ガラス板90は、ノズル本体86の上端開口を塞いでおり、その下面が吊り棒88の上端面88aおよびノズル本体86の上端面86aに接合されている。ノズル本体86および吊り棒88の材質には、被加工材(板材)からの光をはね返す金属たとえば銅が好適に用いられる。
【0041】
ノズル本体86と吊り棒88は、平面視で互いに略相似な三角形の端面ないし断面を有している(図6B)。また、上から下に向かって、ノズル本体86の側壁86bがテーパ状に細くなっているのに対して、吊り棒88は逆テーパ状に太くなっている(図6C)。これによって、吊り棒88の側面88bとノズル本体86の側壁86bとの間のスペースSPは、上から下に向かってテーパ状に狭くなっている。そして、ノズル40の先端(下端)には、ノズル本体86の下端86cと吊り棒88の下端88cとの間で無端のループ形状(三角形)をなすスリット状先端口40aが形成されている。つまり、スリット状先端口40aは、吊り棒88の下端88cの周囲に沿って一周し、無端の三角形ループ形状をなしている。
【0042】
集光レンズ46を透過してきたレーザビームLBは、ビーム径を絞りながら、ガラス板90を透過し、ノズル本体86内のスペースSPおよびスリット状先端口40aを無反射で垂直下方に通り抜けるようになっている。たとえば、レーザビームLBがスリット状先端口40aを通り抜けるときのビーム径が20μmである場合、スリット状先端口40aのスリット幅DW図6B)は70〜100μmに選ばれる。また、スリット状先端口40aと金属テープWTとの距離間隔DH図6C)は、たとえば100〜300μmに選ばれる。
【0043】
ノズル本体86の一側面の上部にガス導入口92が形成されている。このガス導入口92にアシストガス供給管48の先端部が接続される。アシストガス供給部22よりアシストガス供給管48を介して送られて来たアシストガスAGは、ガス導入口92からノズル本体86内のスペースSPに流れ込み、スペースSPの開口部である狭いスリット状先端口40aから噴出するようになっている。特に、この実施例では、ノズル本体86内でスペースSPを上から下に向かってテーパ状に狭くしているので、アシストガスAGがスリット状先端口40aより乱流の少ない高圧力で鋭利に噴出する構成になっている。なお、アシストガスAGには、酸素ガス、窒素ガス、エア等が用いられる。
【0044】
次に、図7A図8Bを参照して、この実施例におけるレーザ切断加工の作用を説明する。
【0045】
上記のように、この実施例においては、加工対象の板体Wが金属テープWTであり、この金属テープWT上にパルス波形に似た一定繰り返しパターンの切断経路CKが設定される(図2)。この場合、レーザ出射ユニット16に備わるノズル40のスリット状先端口40aは、このような切断経路CKに対して、図7Aに示すようなレイアウト上の3つの条件を満たす必要がある。
【0046】
すなわち、スリット状先端口40aの三角形ループは、3つの頂点A,B,Cおよび3つの辺(線分)a,b,cにより構成されているとする。第1の条件は、任意の底辺たとえばaが、切断経路CKの1単位(1サイクル)の中でテープ送り方向(Y+方向)と逆の方向(Y-方向)に延びる第4の切断区間(パルスの水平基底部分に相当する区間)K4に重なり、しかもこの第4の切断区間K4の距離Eより短いことである。第2の条件は、この底辺aと直交する三角形の高さhが、切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で外向きのテープ幅方向(X+方向)に延びる第1の切断区間(パルスの垂直立ち上がり部分に相当する区間)K1および内向きのテープ幅方向(X-方向)に延びる第3の切断区間(パルスの垂直立ち下がり部分に相当する区間)K3の距離Hに等しいことである。また、第3の条件は、斜辺b,cが第3および第1の切断区間にそれぞれ斜めに交差し得ることである。
【0047】
なお、切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で、第1の切断区間K1の終端から第3の切断区間K3の始端までテープ送り方向(Y+方向)と逆の方向(Y-方向)に延びる区間は、第2の区間(パルスの水平ピーク部分に相当する区間)K2である。
【0048】
図7Aに示す切断経路CKの各角部は、相当厳密に直角になっている。しかし、図7Bに示すように、切断経路CKの各角部が適当に丸まっていてもよい。また、スリット状先端口40aの三角形ループは、必ずしも2等辺三角形(b=c)である必要はなく、たとえば図7Cに示すような不等辺三角形(b≠c)であってもよい。
【0049】
主制御部18は、操作パネル26を通じて上記のような加工条件および各種設定値を入力し、ガルバノスキャナ44のスキャニング動作および加工テーブル機構24のテープ送り動作に用いる各種パラメータ値をメモリ上のテーブルに格納しておく。そして、金属テープWTが加工テーブル機構24に装填された状態で、起動信号が入力されると、主制御部18は、メモリに格納されている所定のプログラム(ソフトウェア)および上記パラメータ値にしたがって装置内の各部を制御し、レーザ切断加工を実行する。
【0050】
このレーザ切断加工では、レーザ電源12が、レーザ発振器10に所定のパワーで連続波またはQスイッチパルスのレーザビームLBを発振出力させる。スキャナ制御部20は、レーザ出射ユニット16のガルバノスキャナ44を通じてレーザビームLBをスキャニングし、金属テープWT上でレーザビームLBのビームスポットBSを水平面内の二次元方向つまりX方向(テープ幅方向)およびY方向(テープ長さ方向)で移動させる。アシストガス供給部22は、レーザ出射ユニット16のノズル40を通じてアシストガスAGを金属テープWTに吹き付ける。加工テーブル機構24の送り制御部64は、金属テープWTがノズル40のスリット状先端口40aの直下をテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで通過するように、モータ58,60,62の回転速度ひいては繰り出しリール50、巻き取りリール52およびテーブルローラ54の回転速度を制御する。
【0051】
金属テープWTにおいては、ノズル40のスリット状先端口40aと対向する切断経路CK上の母材がレーザビームLBのエネルギーにより加熱されて溶融または蒸発し、溶融飛散物はスリット状先端口40aからのアシストガスAGの圧力によって切断部から分離され、テーブルローラ54の溝76に落ちる。後述するように、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動しながら、レーザビームLBがノズル40のスリット状先端口40aの中をガルバノスキャナ44のスキャニングによって周回方向に可変の移動方向および速度で繰り返し移動することにより、レーザビームLBのビームスポットBSが金属テープWT上の切断経路CKをたどる(トレースする)。これによって、金属テープWTが切断経路CKに沿って分断されるようになっている。
【0052】
図8Aおよび図8Bに、この実施例のレーザ切断加工において、レーザビームLBのビームスポットBSが金属テープWT上で切断経路CKの1単位(1サイクル)をトレースするときの各段階を示す。図中、点線の切断経路<CK>は未切断の部分であり、塗り潰しの切断経路[CK]は切断済みの部分である。
【0053】
先ず、図8Aの(a)に示すように、或る時点t1で、レーザビームLBがスリット状先端口40aの中で頂点Aに位置し、かつ切断経路CKの1単位の中で第1の切断区間K1の始端に位置しているとする。この時、金属テープWTはテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動している最中であり、レーザビームLBもスリット状先端口40aの中を周回方向に可変の移動方向および速度で移動している最中である。ここで、頂点Aは、テープ送り方向(Y+方向)においては、スリット状先端口40aの中で最上流に位置している。
【0054】
上記時点t1の直後、上記第1の切断区間K1がテープ送り方向(Y+方向)において頂点Aよりも下流側を移動する時、図8Aの(b)に示すように、レーザビームLBは頂点Aから頂点Bに向かってスリット状先端口40aの斜辺bの中を移動する。この時のレーザビームLBの移動速度Vbは、テープ送り方向(Y+方向)のビーム移動速度成分VY+と、外向きのテープ幅方向(X+方向)のビーム移動速度成分VX+とのベクトル合成として与えられ、Vb=√(VX+2+VY+2)である。ここで、テープ送り方向(Y+方向)のビーム移動速度成分VY+は、Y軸ガルバノスキャナ44Yのスキャニング動作によって規定され、テープ移動速度VTと等しい速度(すなわちVY+=VT)に制御される。
【0055】
また、切断経路CKが直角に角張っていて、スリット状先端口40aが2等辺三角形の場合(図7Aの場合)、底辺aの長さをLaとすると、図8Aの(c)に示すように、第1の切断区間K1の始端が底辺aの真中を通過する時点t2(t2=t1+La/2VT)で、レーザビームLBが第1の切断区間K1の終端つまり頂点Bに到達するように、外向きのテープ幅方向(X+方向)におけるビーム移動速度成分VXが制御される。すなわち、レーザビームLBが斜辺bを移動する時の外向きのテープ幅方向(X+方向)のビーム移動速度成分VX+は、X軸ガルバノスキャナ44Xのスキャニング動作によって規定され、La/2VT=h/VX+の条件を満たす速度(すなわちVX+=2VT*h/La)に制御される。
【0056】
上記のように、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動し続ける一方で、レーザビームLBがスリット状先端口40aの斜辺bの中を頂点Aから頂点Bへ向かって所定の速度Vbで移動することにより、レーザビームLBのビームスポットBSは切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で起点から外向きのテープ幅方向(X+方向)に延びる第1の切断区間K1をトレースすることになる。
【0057】
そして、レーザビームLBが第1の切断区間K1の終端つまり頂点Bに到達すると、ガルバノスキャナ44はこの頂点Bの位置でレーザビームLBの移動をいったん停止する。一方、金属テープWTは間断なくテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動しているので、レーザビームLBはスリット状先端口40aの頂点Bに位置したまま金属テープWT上の第2の切断経路K2をテープ送り方向(Y+方向)と逆の方向(Y-方向)に速度VTで相対的に移動することになる。これにより、図8Aの(d)に示すように、上記時点t2からLa/2VTまたはLK2/VT経過した時点t3で、レーザビームLBは第2の切断区間K2の終端に到達する。ここで、LK2は、第2の切断区間K2の距離であり、図7Aの例ではLK2=La/2である。
【0058】
このように、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動し続ける一方で、レーザビームLBがスリット状先端口40aの頂点Bに一定時間止まることにより、レーザビームLBのビームスポットBSは切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で第1の切断区間K1の終端からテープ送り方向(Y+方向)とは逆の方向(Y-方向)に延びる第2の切断区間K2をトレースすることになる。
【0059】
レーザビームLBが第2の切断区間K2の終端に到達すると、ガルバノスキャナ44がスキャニング動作を再開し、図8Bの(e)に示すように、レーザビームLBは頂点Bから頂点Cに向かってスリット状先端口40aの斜辺cの中を移動する。ここで、頂点Cは、テープ送り方向(Y+方向)においては、スリット状先端口40aの中で最下流に位置している。
【0060】
レーザビームLBが斜辺cの中を移動する時の速度Vcは、テープ送り方向(Y+方向)のビーム移動速度成分VY+と、内向きのテープ幅方向(X-方向)のビーム移動速度成分VX-とのベクトル合成として与えられ、Vc=√(VX-2+VY+2)である。この場合も、テープ送り方向(Y+方向)におけるビーム移動速度成分VY+は、Y軸ガルバノスキャナ44Yのスキャニング動作によって規定され、テープ移動速度VTと等しい速度(すなわちVY+=VT)に制御される。また、内向きのテープ幅方向(X-方向)におけるビーム移動速度成分VX-は、X軸ガルバノスキャナ44Xのスキャニング動作によって規定され、La/2VT=h/VX-の条件を満たす速度(VX-=2VT*h/La)に制御される。
【0061】
こうして、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動し続ける一方で、レーザビームLBがスリット状先端口40aの斜辺cの中を頂点Bから頂点Cへ向かって所定の速度Vcで移動することにより、レーザビームLBのビームスポットBSは切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で第2の切断区間K2の終端から内向きのテープ幅方向(X-方向)に延びる第3の切断区間K3をトレースすることになる。そして、図8Bの(f)に示すように、上記時点t3からLc/Vc経過した時点t4で、レーザビームLBは頂点Cに到達する。
【0062】
レーザビームLBが第3の切断区間K3の終端つまり頂点Cに到達すると、ガルバノスキャナ44はレーザビームLBの移動方向をテープ送り方向(Y+方向)と逆の方向(Y-方向)に切り換える。こうして、図8Bの(g)に示すように、レーザビームLBは頂点Cから頂点Aへ向かってスリット状先端口40aの底辺aの中を所定の速度Vaで移動する。この場合、テープ送り方向(Y+方向)に移動している切断経路CKの次の1単位の起点がスリット状先端口40aの頂点Aの真下に到着するのと同時に、それと逆方向(Y-方向)に移動するレーザビームLBも同じ頂点Aに到着するように、ビーム移動速度Vaが制御される。すなわち、(E−La)/VT=La/Vaの条件を満たせばよく、Y軸ガルバノスキャナ44Yのスキャニング動作によって、Va=La*VT/(E−La)に制御される。
【0063】
こうして、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動し続ける一方で、レーザビームLBがスリット状先端口40aの底辺aの中を頂点Cから頂点Aへ向かって所定の速度Vaで移動することにより、レーザビームLBのビームスポットBSは切断経路CKの1単位(1サイクル)の中で第3の切断区間K3の終端からテープ送り方向(Y+方向)と逆の方向(Y-方向)に延びる第4(最後)の切断区間K4をトレースすることになる。そして、図8Bの(h)に示すように、上記時点t4からLa/Va経過した時点t5で、レーザビームLBは頂点Aに到達する。そして、この時点t5から、切断経路CKの次の1単位(1サイクル)に対するレーザ切断加工が上記と全く同じ動作で繰り返される。
【0064】
上述したように、この実施例においては、金属テープWTがテープ長さ方向と平行なテープ送り方向(Y+方向)に一定速度VTで移動しながら、かつノズル40が物理的に静止した状態でそのスリット状先端口40aより乱流の少ない高圧力の鋭利な噴出流でアシストガスAGを金属テープWTに吹き付けながら、ガルバノスキャナ44のスキャニングによってレーザビームLBがノズル40のスリット状先端口40aの中を周回方向に可変の移動方向および移動速度で繰り返し移動することにより、金属テープWT上のパルス波形に似た繰り返しパターンの切断経路CKを途切れなく連続的かつ高速に(たとえば5メートル/秒以上のテープ送り速度で)分断することができる。すなわち、金属テープWTを上記切断経路CKに沿って分断するレーザ切断加工の性能および効率を飛躍的に向上させることができる。
【0065】
なお、図7Bに示すように金属テープWT上で切断経路CKの各角部が丸まっている場合は、スリット状先端口40aの各頂点A,B,C付近においてレーザビームLBの移動速度に適当な変化(減速または加速)を付ければよい。すなわち、切断経路CKの角部は、レーザビームLBの減速期間または加速期間が長いほどカーブが大きくなり、減速期間または加速期間が短いほどカーブが小さくなる。そして、減速期間または加速期間が極度に短い場合には、図7Aのように角張る。
【0066】
また、図7Cに示すように、ノズル40のスリット状先端口40aが不等辺三角形(b≠c)のループ形状をなしている場合も、レーザビームLBが斜辺b,cを移動する時のビーム移動速度Vb,Vc(特にテープ幅方向の速度成分VX)に違いがあるだけで、レーザ切断加工の全体的な動作は2等辺三角形の場合と殆ど同じである。

[他の実施形態または変形例]
【0067】
上記実施形態のレーザ切断装置において、ノズル40のスリット状先端口40aが台形のループ形状を有していても、金属テープWT上に上記実施例と同様のレーザ切断加工を施すことができる。この場合、スリット状先端口40aの台形ループは、図9に示すようなレイアウト上の条件を満たせばよく、三角形ループの場合の上記3つの条件に加えて、上辺dの長さfが切断経路CKの第2の切断区間K2の距離Fよりも短いことが第4の条件として追加される。そして、上辺dにおいては、金属テープWTがテープ送り方向(Y+方向)に距離Fだけ移動する間に、レーザビームLBが頂点B'から頂点B"に向かって上辺dの中をテープ送り方向(Y+方向)に距離fだけ移動するようなレーザスキャニングが行われる。また、ノズル40のノズル本体86の中には、スリット状先端口40aのループ形状に対応した台形形状の下端面を有する四角柱の吊り棒(図示せず)が宙吊で設けられる。
【0068】
このように、ノズル40のスリット状先端口40aは、四角形のループ形状を有してもよく、さらには金属テープWT上に設定される切断経路のパターンに応じて任意の多角形のループ形状を有することができる。
【0069】
また、上記実施例は、金属テープWTを加工対象の板材Wとし、レーザ出射ユニット16(特にノズル40)を固定して金属テープWTをそのテープ長さ方向に移動させながら同方向で途切れなく連続的に分断するレーザ切断加工に係るものであった。しかし、上記実施形態のレーザ切断装置においては、任意の形状を有する任意の材質の板材Wを加工テーブル機構24上で任意の方向(特に任意の二次元方向)に移動させるレーザ切断加工を行うことができる。
【0070】
あるいは、別の実施例として、好ましくはノズル40および板材Wの双方を固定して、レーザ出射ユニット16内でガルバノスキャナ44によりレーザビームLBをスリット状先端口40aの中で周回方向に移動させるレーザスキャニングを行うことにより、任意の板材W上で任意のパターンを切り抜くレーザ切断加工(レーザ切り抜き加工)を行うことも可能である。この場合、スリット状先端口40aは、多角形、円、楕円等の標準図形に限らず、切り抜くパターンの所望の輪郭を直接規定する任意のループ形状を有してよい。
【0071】
この実施例においては、ノズル40および板材Wの双方を静止させたまま、ガルバノスキャナ44のスキャニングによりレーザビームLBをスリット状先端口40aの中を一周させるだけで、板材W上でスリット状先端口40aのループ形状に応じた輪郭を有するパターンを切り抜くことができる。この方式によれば、ガルバノスキャナ44におけるレーザスキャニングの動作速度によって切り抜き加工速度が律速されるので、切り抜くパターンの輪郭に応じてノズル40または板材Wを二次元方向に移動させる場合(従来方式)に比して桁違いに高速・短時間のレーザ切り抜き加工を実現することができる。
【0072】
ノズル40の各部の構造や材質も、種種の変形が可能である。たとえば、図10Aに示すように、ノズル本体86を上端から下端まで一様な太さ(または口径)の角筒体または円筒体として構成することも可能である。ノズル本体86の中に宙吊で設けられる吊り棒88は、必ずしも中実体である必要はなく、中空体であってもよい。また、吊り棒88の下端面は、任意の輪郭形状を有することができる。したがって、吊り棒88において、下端面の形状と上端面の形状あるいは中間部の断面形状とは非相似であってもよい。
【0073】
さらには、単一部材の吊り棒88を複合部材に置き換えることも可能である。たとえば、図10Bに示すように、ガラス板90に接合される上部板部材92と、スリット状先端口40aのループ形状を規定する下部板部材94と、上部板部材92と下部板部材94とを連結する棒部材96とを一体的に結合した複合的な吊り部材98をノズル本体86の中に設けることも可能である。このような複合的吊り部材98においては、ノズル先端の下部板部材94のみを高反射性の金属(たとえば銅)で構成し、ノズル40の中に設けられる他の部材94,96を別の部材たとえば樹脂等で構成してもよい。
【0074】
上記実施形態において、レーザ発振器10は、シングルモードのファイバレーザ発振器に限定されず、他の型式のファイバレーザ発振器やYAGレーザ発振器等であってもよい。レーザ伝送系14において、伝送用光ファイバ36を省く構成も可能である。レーザ出射ユニット16のノズル40を可動式に構成することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 レーザ発振器
12 レーザ電源
16 レーザ出射ユニット
18 主制御部
20 スキャナ制御部
22 アシストガス供給部
24 加工テーブル機構
40 ノズル
40a スリット状先端口
44 ガルバノスキャナ
46 集光レンズ
54 テーブルローラ
86 ノズル本体
88 吊り棒
90 ガラス板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B