特許第6054133号(P6054133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6054133-焙煎油の製造方法、油脂組成物、食品 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054133
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】焙煎油の製造方法、油脂組成物、食品
(51)【国際特許分類】
   C11B 1/02 20060101AFI20161219BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20161219BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20161219BHJP
   C11B 1/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C11B1/02
   A23D9/02
   A23D9/00 504
   C11B1/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-229851(P2012-229851)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80528(P2014-80528A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
(72)【発明者】
【氏名】徳地 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】粟江 敬子
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐三
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−140583(JP,A)
【文献】 特開2012−143171(JP,A)
【文献】 特開2006−204266(JP,A)
【文献】 特開2005−304411(JP,A)
【文献】 特開2007−037470(JP,A)
【文献】 食用油脂製造技術,株式会社ビジネスセンター社,平成21年7月14日 第2刷発行,p.96〜103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00 −15/00
C11C 1/00 − 5/02
A23D 7/00 − 9/06
A23L 7/117−29/225
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む焙煎油の製造方法であって、
前記油糧原料がコーンジャムであり、
前記焙煎工程において、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上となるように前記油糧原料を粉砕処理したのち、前記焙煎処理を行うことを特徴とする焙煎油の製造方法。
【請求項2】
油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む焙煎
油の製造方法であって、
前記油糧原料が菜種であり、
前記焙煎工程において、JIS標準ふるいの目開き1400μmパスが40%以上90%以下となるように前記油糧原料を粉砕処理したのち、前記焙煎処理を行うことを特徴とする焙煎油の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕処理を、前記油糧原料の通過質量百分率50%のときの粒径が、粉砕処理前の10%以上82%以下となるように行う、請求項1又は2に記載の焙煎油の製造方法。
【請求項4】
前記焙煎工程において、粉砕処理した前記油糧原料を100〜250℃の温度に達するまで前記焙煎処理を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の焙煎油の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で得られた焙煎油を含有させることを特徴とする油脂組成物の製造方法
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で得られた焙煎油を用いることを特徴とする食品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味の改善された焙煎油の製造方法、該方法によって得られた焙煎油を含有する油脂組成物、該方法によって得られた焙煎油を利用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎油は、例えば、特許文献1に記載されるように、油糧原料を焙煎処理した後、採油して製造される。
【0003】
焙煎油は、油糧原料を焙煎処理することによって、香ばしい風味が付与されており、大豆油、菜種油、コーン油、紅花油、ひまわり油、パーム油等の食用油と混合して、これらの食用油の風味を高めたり、各種食品の風味付け等に利用されている。
【0004】
特許文献2には、なたね種子を115〜125℃で焙煎したのち圧搾して得られる粗油を、温水乃至熱水と接触させて粗油中に溶解している不純物を水和凝集させて除去する工程と、得られた半精製油に120〜140℃で焙煎処理したなたね圧搾粕を1〜10重量%添加してろ過する工程とを含む香味油の製造法が開示されている。そして、特許文献2によれば、なたね種子を粗砕後に空気に曝しながら熱処理すると、劣化物が生成したり、基質の油脂の酸化劣化が促進され易くなるので、油糧原料としてのなたね種子に対し、粗砕などの種子に裂傷を与えるような操作は避ける必要があると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−140583号公報
【特許文献2】特開2005−304411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一部の油糧原料を焙煎処理すると、油糧原料に由来する穀物臭や青臭さといった不快臭が生じ、これらの不快臭が焙煎油に付与されて、焙煎油の風味が損なわれ易かった。特に、コーンジャムや菜種などを焙煎すると、強い不快臭が生じる傾向にあった。
【0007】
よって、本発明の目的は、不快臭を低減して風味の改善された焙煎油の製造方法、該方法によって得られた焙煎油を含有する油脂組成物、及び該方法によって得られた焙煎油を利用した食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、油糧原料を所定の粒径以下になるように粉砕処理した後、焙煎処理することで、不快臭を生じさせることなく油糧原料を焙煎処理でき、不快臭の低減された焙煎油が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の焙煎油の製造方法の第1は、油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む焙煎油の製造方法であって、前記焙煎工程において、前記油糧原料の通過質量百分率50%のときの粒径(以下、「D50」と略す場合がある)が、粉砕処理前の10%以上82%以下となるように粉砕処理したのち、前記焙煎処理を行うことを特徴とする。この態様において、前記油糧原料は、コーンジャム及び菜種から選ばれた1種であることが好ましい。
【0010】
本発明の焙煎油の製造方法の第2は、油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む焙煎油の製造方法であって、前記油糧原料がコーンジャムであり、前記焙煎工程において、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上となるように前記油糧原料を粉砕処理したのち、前記焙煎処理を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の焙煎油の製造方法の第3は、油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む焙煎油の製造方法であって、前記油糧原料が菜種であり、前記焙煎工程において、JIS標準ふるいの目開き1400μmパスが40%以上90%以下となるように前記油糧原料を粉砕処理したのち、前記焙煎処理を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の焙煎油の製造方法は、前記焙煎工程において、粉砕処理した前記油糧原料を100〜250℃の温度に達するまで前記焙煎処理を行うことが好ましい。
【0013】
本発明の油脂組成物は、上記方法で得られた焙煎油を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の食品は、上記方法で得られた焙煎油を利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の焙煎油の製造方法によれば、油糧原料を所定の粒径以下となるように粉砕処理した後、焙煎処理をするので、不快臭を生じさせることなく油糧原料を焙煎処理できる。このため、香ばしく、風味が良好で、不快臭の低減された焙煎油を製造できる。
【0016】
また、本発明の焙煎油の製造方法により得られる焙煎油を油脂組成物に含有させることで、油脂組成物に良好な風味を付与できる。
【0017】
また、本発明の焙煎油の製造方法により得られる焙煎油を利用して食品を製造することで、各種食品に良好な風味を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】油糧原料1−1〜1−3の粒度に応じた粒径加積曲線を示す図面である。
図2】油糧原料3−1〜3−3の粒度に応じた粒径加積曲線を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の焙煎油の製造方法は、油糧原料を粉砕処理する粉砕工程と、粉砕処理した油糧原料を焙煎処理する焙煎工程と、焙煎処理した油糧原料を圧搾処理して油分を得る圧搾工程とを含む。
【0020】
本発明の焙煎油の製造方法で用いる油糧原料としては特に限定は無く、食用油を採取しうるものを用いることができる。なかでも、本発明では、油糧原料の焙煎による不快臭の発生を抑制できるので、焙煎処理によって強い不快臭が生じる油糧原料の場合、本発明の効果が顕著に得られる。焙煎処理によって強い不快臭が生じうる油糧原料としては、コーンジャム、菜種、紅花、綿実等が挙げられる。特に本発明に適した油糧原料は、コーンジャム、菜種である。
【0021】
以下、本発明の焙煎油の製造方法の各工程について詳しく説明する。
【0022】
粉砕工程では、油糧原料を粉砕処理する。油糧原料の粉砕処理方法には、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、カッターミル、ロールミル、ハンマーミル、ボールミル、ピンミル等の粉砕装置を用いた方法が一例として挙げられる。
【0023】
本発明において、油糧原料の粉砕処理は、油糧原料のD50が、粉砕処理前の10%以上82%以下となるように行うことが好ましい。ここで、D50とは、通過質量百分率において50%となる粒径を意味し、JIS規格A01204に準じて測定することができる。例えばJIS標準ふるいを用いた乾式自動振動機(商品名「VSS−50」、筒井理化学器械株式会社製)により、試料200〜250gを10分間ふるい分けして粒度分布を求め、この粒度分布から各粒度における通過質量百分率を算出することにより、D50を求めることができる。
【0024】
油糧原料の粉砕処理は、油糧原料のD50が、粉砕処理前の10%以上82%以下、好ましくは、粉砕処理前の40%以上82%以下、より好ましくは粉砕処理前の50%以上82%以下となるように行う。油糧原料をこのように粉砕処理することで、焙煎時において、穀物臭等の不快臭の発生を抑制でき、焙煎油の風味を向上できる。なお、過剰に粉砕をすると圧搾処理で油分を得る際に、圧搾効率が低下する場合がある。
【0025】
また、油糧原料の粉砕処理は、油糧原料の種類によって粉砕の程度を調整することがより好ましい。
【0026】
例えば、油糧原料がコーンジャムの場合、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上となるように粉砕処理することが好ましく、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上、かつ、JIS標準ふるいの目開き3350μmパスが55%以上となるように粉砕処理することがより好ましく、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上、かつ、JIS標準ふるいの目開き3350μmパスが60%以上となるように粉砕処理することがさらに好ましい。この場合、JIS標準ふるいの目開き2800μmパスが15%以上であれば、D50が、粉砕処理前の10%以上82%以下となっていなくてもよい。
【0027】
また、油糧原料が菜種の場合、JIS標準ふるいの目開き1400μmパスが40%以上90%以下となるように粉砕処理することが好ましく、JIS標準ふるいの目開き1400μmパスが40%以上90%以下、かつ、JIS標準ふるいの目開き1700μmパスが60%以上となるように粉砕処理することがより好ましい。この場合、JIS標準ふるいの目開き1400μmパスが40%以上90%以下であれば、D50が、粉砕処理前の10%以上82%以下となっていなくてもよい。
【0028】
油糧原料を、上記のように粉砕処理することで、穀物臭等の不快臭が低減され、香ばしい風味の良好な焙煎油を製造できる。なお、後述する試験例7、8に示されるように、油糧原料に対し、粉砕処理の代わりに圧扁処理を行っても、焙煎油の不快臭は十分に低減できない。
【0029】
本発明では、油糧原料を粉砕処理後、分級してもよい。分級することで、油糧原料の粒径がそろい、油糧原料を均一に焙煎処理できる。
【0030】
次に、焙煎工程では、粉砕処理した油糧原料を焙煎処理する。
【0031】
油糧原料の焙煎処理方法は特に制限はなく、外部より電熱、熱風、バーナー、マイクロ波などを介して油糧原料を加熱することにより行うことができる。
【0032】
焙煎条件は、油糧原料の種類により異なるが、最終品温100〜250℃に5〜40分で到達するように行うことが好ましい。具体的には、油糧原料がコーンジャムの場合、最終品温110〜170℃に5〜30分で到達するように行うことが好ましい。また、油糧原料が菜種の場合、最終品温110〜160℃に5〜30分で到達するように行うことが好ましい。焙煎温度が低すぎると、香ばしい風味が得られ難く、更には、不快臭が強くなる傾向にある。また、焙煎温度が高すぎると、焦げ臭が強くなる傾向にある。上記焙煎条件で油糧原料を焙煎処理することで、不快臭を低減しつつ、香ばしく、甘い香りを有する風味の良い焙煎油を製造できる。
【0033】
次に、圧搾工程では、焙煎処理した油糧原料(以下、「焙煎油糧原料」という)を圧搾処理して油分を得る。
【0034】
本発明では、圧搾処理を行う前に、水分調整を行って焙煎油糧原料の水分含量を高めてもよい。焙煎油糧原料の水分調整は、水分含量が1〜20質量%となるように行うことが好ましく、2〜10質量%がより好ましく、2〜6質量%がさらに好ましい。焙煎油糧原料の水分調整を行うことで、焙煎油糧原料の圧搾率が向上し、焙煎油を収率よく回収できる。
【0035】
焙煎油糧原料の水分調整方法は、特に限定は無く、従来公知の方法で行うことができる。例えば、焙煎油糧原料に対し、水をスプレー状に添加したり、水蒸気を吹き込んで水分調整を行う方法等が挙げられる。
【0036】
焙煎油糧原料の圧搾処理方法は、特に限定は無く、円筒状に形成されたケーシングとその内部に回転自在に設けられたスクリューよりなるエキスペラー式圧搾機等を用いて行うことができる。
【0037】
圧搾工程を経て得られた油を、必要に応じて脱ガム処理し、ろ過処理して不純物を除去することにより焙煎油が得られる。
【0038】
本発明により得られる焙煎油は、香ばしく、風味が良好で、更には、穀物臭等の不快臭が殆どない。このため、この焙煎油を、コーン油、菜種油、大豆油、ごま油、パーム油等の他の食用油と混合することで、風味の良い油脂組成物が得られる。
【0039】
他の食用油との配合比は、特に限定は無いが、質量比で、焙煎油:他の食用油の値が3:97〜97:3であることが好ましく、3:97〜70:30であることがより好ましい。本発明の製造方法によって得られた焙煎油や、該方法で得られた焙煎油を含む油脂組成物は、マーガリン、ファットスプレッド、ドレッシング、マヨネーズ、フライ食品、炒め物、菓子等の各種食品に使用でき、各種食品に良好な風味を付与できる。
【実施例】
【0040】
[焙煎油の製造]
(製造例1)(コーンジャム焙煎油の製造)
D50が3832μmのコーンジャム(油糧原料1−1)をカッターミルで粉砕処理し、D50が3029μm(粉砕処理前のD50の79%、2800μmパス 34%)のコーンジャム粉砕物を得た(油糧原料1−2)。さらに、得られたコーンジャム粉砕物のJIS標準ふるいの目開き1mmの篩上を分級回収し、D50が3086μm(粉砕処理前のD50の80.5%、2800μmパス 25%)のコーンジャム粉砕物を得た(油糧原料1−3)。また、更に細かく粉砕処理したコーンジャム粉砕物を、JIS標準ふるいの目開き1689μmと1180μmの篩で分級し、コーンジャム粉砕物を得た(油糧原料1−4、5)。コーンジャム(油糧原料1−1)及びコーンジャム粉砕物(油糧原料1−2〜1−5)の粒度に応じた通過質量百分率を表1、図1に示す。
【0041】
なお、各粉砕物の粒度に応じた通過質量百分率は、乾式自動振動機(商品名「VSS−50」、筒井理化学器械株式会社製)により各粉砕物約200gを10分間ふるい分けして粒度分布を求め、この粒度分布から各粒度における通過質量百分率を算出することにより求めた。また、D50は、通過質量百分率において50%となる粒径とした。
【0042】
【表1】
【0043】
次に、表1に示す各油糧原料を、最終品温120〜160℃に達温するまで直火で、8〜20分焙煎処理した。焙煎処理した各油糧原料の含水量を3〜5%に調整し、エキスペラー式圧搾機にて圧搾処理して油分を回収した。回収した油分を脱ガム処理し、ろ過処理して、コーンジャム焙煎油を製造した。
【0044】
(製造例2)(菜種焙煎油の製造1)
D50が1737μmの菜種(油糧原料2−1)をカッターミルで粉砕処理し、D50が910μm(粉砕処理前のD50の52%、1400μmパス 65%)の菜種粉砕物(油糧原料2−2)を得た。なお、D50は、製造例1と同様にして求めた。
また、同菜種を圧扁処理して菜種圧扁処理物(油糧原料2−3)を得た。
次に、油糧原料2−1、2−2、2−3を、最終品温120℃に達温するまで直火で、6〜30分焙煎処理した。焙煎処理した各油糧原料の含水量を約3%に調整し、エキスペラーにて圧搾処理して油分を回収した。回収した油分を脱ガム処理し、ろ過処理して、菜種焙煎油を製造した。
【0045】
(製造例3)(菜種焙煎油の製造2)
油糧原料2−1および2−2を用いて、最終品温100℃、120℃、140℃に達温するまで直火で、約5〜30分焙煎処理した。焙煎処理した各油糧原料の含水量を約3%に調整し、エキスペラーにて圧搾処理して油分を回収した。回収した油分を脱ガム処理し、ろ過処理して、菜種焙煎油を製造した。
【0046】
(製造例4)(菜種焙煎油の製造3)
D50が1737μmの菜種(油糧原料3−1)をクラッキングロールで粉砕処理し、D50が1375μm(粉砕処理前のD50の79%、1400μmパス 54%)の菜種粉砕物(油糧原料3−2)を得た。また、前記菜種を衝撃式粉砕機で粉砕処理し、D50が1392μm(粉砕処理前のD50の80%、1400μmパス 51%)の菜種粉砕物(油糧原料3−3)を得た。菜種(油糧原料3−1)及び菜種粉砕物(油糧原料3−2、3−3)の粒度分布を表2、図2に示す。なお、各粉砕物の粒度に応じた通過質量百分率及びD50は、製造例1と同様にして求めた。
【0047】
【表2】
【0048】
次に、表2に示す各油糧原料を、最終品温120℃に達温するまで直火で、約8分焙煎処理した。焙煎処理した各油糧原料の含水量を約3%に調整し、エキスペラーにて圧搾処理して油分を回収した。回収した油分を脱ガム処理し、ろ過処理して、菜種焙煎油を製造した。
【0049】
[焙煎油の評価]
(試験例1)
製造例1で得られたコーンジャム焙煎油の2質量部と、コーン油(製品名「AJINOMOTO 胚芽の恵みコーン油」 (株)J−オイルミルズ社製)の8質量部とを混合し、油脂組成物を調製した。
各油脂組成物の100gを300ml容ビーカーに採取し、160℃達温から10分後に、加熱時の香り(穀物臭、香ばしさ)を、表3の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。また、天ぷら粉120gと水200gとを混合してバッターを調製した。バッター10gを、各油脂組成物で160℃、1分30秒フライし、揚げ玉を製造した。得られた揚げ玉の味(穀物臭、香ばしさ、甘い風味)について、表3の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表4に記す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
(試験例2)
製造例1で得られたコーンジャム焙煎油の2質量部と、コーン油(製品名「AJINOMOTO 胚芽の恵みコーン油」 (株)J−オイルミルズ社製)の8質量部とを混合し、油脂組成物を調製した。
調製した各油脂組成物の300gを500ml容片手鍋に採取し、160℃達温から10分後に、加熱時の香り(穀物臭、甘く香ばしい香り、焦げ臭)について、表5の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表6に記す。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
(試験例3)
天ぷら粉120gと水200gとを混合してバッターを調製した。バッター10gを、試験例2で調製した各油脂組成物で160℃、1分30秒フライし、揚げ玉を製造した。得られた揚げ玉の風味(穀物臭、甘み・厚み・持続性、香ばしさ)について、表7の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表8に記す。
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
(試験例4)
試験例2で調製した各油脂組成物でポテト(製品名「シューストリングフライポテト」 味の素冷凍食品株式会社製)を160℃、2分30秒フライし、フライドポテトを製造した。得られたフライドポテトの風味(穀物臭、甘み・厚み・持続性、香ばしさ)について、表7の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表9に記す。
【0059】
【表9】
【0060】
(試験例5)
卵黄1個と、塩1gと、酢20gとを混合した後、試験例2で調製した各油脂組成物200gを攪拌しながら徐々に添加してマヨネーズを製造した。得られたマヨネーズの風味(穀物臭、甘み・厚み・持続性、香ばしさ)について、表7の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表10に記す。
【0061】
【表10】
【0062】
(試験例6)
コーンパフを105℃で30分予備乾燥した。予備乾燥したコーンパフ30gを攪拌しながら、50〜60℃に加温した試験例2で調製した各油脂組成物15gをスプレー噴霧した。油脂組成物の全量をスプレー噴霧した後、塩1gを加えて攪拌した。その後、常温暗所で一晩放置した後、風味(穀物臭、甘み・厚み・持続性、香ばしさ)について、表7の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表11に記す。
【0063】
【表11】
【0064】
(試験例7)
製造例2で得られた菜種焙煎油の2質量部と、菜種油(製品名「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」 (株)J−オイルミルズ社製)の8質量部とを混合し、油脂組成物を調製した。
得られた油脂組成物の100gを300ml容ビーカーに採取し、160℃達温から10分後に、加熱臭(青臭さ、焙煎香)について、表12の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表13に記す。表13に示すように、菜種を圧扁処理した場合よりも、所定の粒径となるように粉砕処理することで、充分な焙煎香を有し、青臭さの非常にすくない焙煎油を得ることができた。
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
(試験例8)
天ぷら粉120gと水200gとを混合してバッターを調製した。バッター10gを、試験例7で調製した各油脂組成物で160℃、1分30秒フライし、揚げ玉を製造した。得られた揚げ玉の風味(青臭さ)について、表12の評価基準に基づき、2名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表14に記す。
【0068】
【表14】
【0069】
(試験例9)
製造例3で得られた菜種焙煎油の2質量部と、菜種油(製品名「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」 (株)J−オイルミルズ社製)の8質量部とを混合し、油脂組成物を調製した。
得られた油脂組成物の100gを300ml容ビーカーに採取し、160℃達温から10分後に、加熱臭(穀物臭、甘く香ばしい香り、焦げ臭)について、表15の評価基準に基づき、5名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表16に記す。
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】
【0072】
(試験例10)
天ぷら粉120gと水200gとを混合してバッターを調製した。バッター10gを、試験例9で調製した各油脂組成物で160℃、1分30秒フライし、揚げ玉を製造した。得られた揚げ玉の風味(穀物臭、甘く香ばしい香り、焦げ臭)について、表15の評価基準に基づき、5名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表17に記す。
【0073】
【表17】
【0074】
(試験例11)
製造例4で得られた菜種焙煎油の2質量部と、菜種油(製品名「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」 (株)J−オイルミルズ社製)の8質量部とを混合し、油脂組成物を調製した。
得られた油脂組成物の100gを300ml容ビーカーに採取し、160℃達温から10分後に、加熱臭(穀物臭、甘く香ばしい香り、焦げ臭)について、表15の評価基準に基づき、5名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表18に記す。
【0075】
【表18】
【0076】
(試験例12)
天ぷら粉120gと水200gとを混合してバッターを調製した。バッター10gを、試験例9で調製した各油脂組成物で160℃、1分30秒フライし、揚げ玉を製造した。得られた揚げ玉の風味(穀物臭、甘く香ばしい香り、焦げ臭)について、表15の評価基準に基づき、5名のパネラーにより官能評価を行い、平均値を算出した。結果を表19に記す。
【0077】
【表19】
図1
図2