特許第6054229号(P6054229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054229
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】液晶媒体
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20161219BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20161219BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20161219BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/30
   C09K19/12
   G02F1/13 500
【請求項の数】18
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2013-76423(P2013-76423)
(22)【出願日】2013年4月1日
(62)【分割の表示】特願2008-31476(P2008-31476)の分割
【原出願日】2008年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-177594(P2013-177594A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】102007007609.8
(32)【優先日】2007年2月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】メラニエ クラーゼンメマー
(72)【発明者】
【氏名】マチアス ブレマー
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−532344(JP,A)
【文献】 特開2000−053602(JP,A)
【文献】 特表2006−507387(JP,A)
【文献】 特開2005−298733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
18質量%以上の式IAの少なくとも1種類の化合物と、20質量%以上の式IBの少なくとも1種類の化合物とを含む液晶媒体。
【化1】
【化2】
(式中、
1Aは、C2n+1−CH=CH−(nは、1、2、3または4である。)であり、
1Bは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【化3】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
2AおよびR2Bは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【化4】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
【化5】
およびYは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHFまたはCNを表し、
は、HまたはCHを表し、
aおよびbは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、ただしa+bは1である。)
【請求項2】
式IAの化合物は、式CY−nV−(O)mの化合物から成る群より選択される請求項1に記載の液晶媒体。
【化6】
(式中、
nは、1、2、3または4であり、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
(O)は、酸素原子または単結合を表す。)
【請求項3】
18質量%以上の式IAの少なくとも2種類の化合物(ただし、1種類以上の式CY−nV−(O)mの化合物および1種類以上の式CY−Vn−(O)mの化合物の両者を少なくとも含む。)と、15質量%以上の式IBの少なくとも1種類の化合物とを含む液晶媒体。
【化7】
【化8】
(式中、
1AおよびR1Bは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【化9】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
2AおよびR2Bは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【化10】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
【化11】
およびYは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHFまたはCNを表し、
は、HまたはCHを表し、
aおよびbは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、ただしa+bは1である。)
【化12】
(式中、
nは、1、2、3または4であり、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
(O)は、酸素原子または単結合を表す。)
【化13】
(式中、
nは、0、1、2、3または4であり、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
(O)は、酸素原子または単結合を表す。)
【請求項4】
式CY−nV−(O)mの化合物は、式CY−1V−Omの化合物である請求項2または3に記載の液晶媒体。
【化14】
(式中、mは、1、2、3、4、5または6である。)
【請求項5】
式CY−Vn−(O)mの化合物は、式CY−V−Omの化合物である請求項3に記載の液晶媒体。
【化15】
(式中、mは、1、2、3、4、5または6である。)
【請求項6】
式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を更に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化16】
(式中、
は、H、または15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、
【化17】
−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を表し、
がアルキル基を表す場合、pは1または2を表し、
がアルケニル基を表す場合、pは2を表し、
vは、1〜6を表す。)
【請求項7】
式IIIの1種類以上の化合物を更に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化18】
(式中、
31およびR32は、それぞれ互いに独立に、12個までの炭素原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、
【化19】
および
は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を表す。)
【請求項8】
式IA−1〜IA−10の少なくとも1種類の化合物を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化20.1】
【化20.2】
(式中、
およびYは、請求項1で示される意味を有し、および
alkylは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。)
【請求項9】
式IB−1〜IB−16の1種類以上の化合物を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化21.1】
【化21.2】
【請求項10】
式IBの化合物は、式CC−n−VおよびCC−n−V1の化合物から成る群より選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化22】
(式中、nは、1、2、3、4、5または6を表す。)
【請求項11】
式IBの化合物は、式CC−3−V1の化合物である請求項10に記載の液晶媒体。
【化23】
【請求項12】
式IIAの化合物は、式CCY−V−(O)m、CCY−1V−(O)mおよびCCY−Vn−(O)mの化合物から成る群より選択される請求項6に記載の液晶媒体。
【化24】
(式中、
nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6であり、
(O)は、酸素原子または単結合を表す。)
【請求項13】
式IIBの化合物は、式CPY−V−(O)mの化合物から成る群より選択される請求項6に記載の液晶媒体。
【化25】
(式中、
mは、1、2、3、4、5または6であり、
(O)は、酸素原子または単結合を表す。)
【請求項14】
式IIIの化合物は、式CCH−nOmおよびCCH−nmの化合物から成る群より選択される請求項7に記載の液晶媒体。
【化26】
(式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である。)
【請求項15】
式IIIの化合物は、式CCH−nmの化合物から成る群より選択される請求項14に記載の液晶媒体。
【化27】
(式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である。)
【請求項16】
式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を含む請求項1または2に記載の液晶媒体。
【化28】
(式中、
は、Hまたは15個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【化29】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を表し、
pは、1または2を表し、および
vは、1〜6を表す。)
【請求項17】
式IIIaおよびIIIbから成る群より選択される1種類以上の化合物を含む請求項1または2に記載の液晶媒体。
【化30】
(式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。)
【請求項18】
表Bより選択される1種類以上の安定剤を含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【表1.1】
【表1.2】
【表1.3】
【表1.4】
【表1.5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式IAの少なくとも1種類の化合物と、式IB、ICおよびIDから成る化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物とを含む極性化合物類の混合物に基づく負の誘電異方性の液晶媒体に関する。
【0002】
【化1】
【0003】
【化2】
式中、
1AおよびR1Bは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【0004】
【化3】

−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
2A、R2B、R1C、R1DおよびR2Dは、それぞれ互いに独立に、6個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【0005】
【化4】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
【0006】
【化5】
、Y、YおよびYは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHFまたはCNを表し、
は、HまたはCHを表し、
2Cは、HまたはFを表し、
3Cは、H、CH、Cまたはn−Cを表し、
aおよびbは、それぞれ互いに独立に、0、1または2を表し、ただしa+bは1以上であり、
cは、1または2を表し、および
dは、0または1を表す。
【0007】
この型の媒体は、特に、ECB効果に基づいてアクティブマトリクス駆動を備える電気光学的ディスプレイ用に、およびIPS(n−lane witching)およびFFS(ringe ield witching)ディスプレイ用に使用できる。本発明の媒体は、好ましくは負の誘電異方性を有する。
【背景技術】
【0008】
電気的制御複屈折率の原理、ECB効果、またはDAP効果(整列相の変形:deformation of aligned phases)は、1971年に最初に記載された(M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19(1971)、3912;非特許文献1)。その後、J.F.Kahn(Appl.Phys.Lett.20(1972)、1193;非特許文献2)およびG.LabrunieおよびJ.Robert(J.Appl.Phys.44(1973)、4869;非特許文献3)による報文が発行された。
【0009】
J.RobertおよびF.Clerc(SID 80 Digest Techn.Papers(1980)、30;非特許文献4)、J.Duchene(Displays 7(1986)、3;非特許文献5)およびH.Schad(SID 82 Digest Techn.Papers(1982)、244;非特許文献6)の報文では、ECB効果に基づく高情報量のディスプレイ素子中での使用に適するものとするためには、液晶相が、高い値の弾性定数比K/K、高い光学異方性値Δn、−0.5以下の値の誘電異方性Δεを有していなければならないことが示された。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子はホメオトロピックなエッジ配向を有している(VA技術、ertically ligned技術)。誘電的に負の液晶媒体、所謂IPSまたはFFS効果を利用するディスプレイ中でも使用できる。
【0010】
ECB効果を利用するディスプレイは、所謂VAN(ertically ligned ematic)ディスプレイとして、例えばMVA{ulti−domain ertical lignment、例えば:Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第6〜9頁(非特許文献7)およびLiu、C.T.ら、論文15.1:「A 46−inch TFT−LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第750〜753頁(非特許文献8))}モード、PVA{atterned ertical lignment、例えば:Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State−of−the−Art for LCD−TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第760〜763頁(非特許文献9)}モード、ASV{dvanced uper iew、例えば:Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第754〜757頁(非特許文献10)}モード中において、液晶ディスプレイの3種類のより最近の型の1つとして確立されてきたもので、IPS(n−lane witching)ディスプレイ(例えば:Yeo、S.D.、論文15.3:「An LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第758および759頁(非特許文献11))および長く知られているTN(wisted ematic)ディスプレイに加えて、特にテレビ用途向けとして現在のところ最も重要である。それらの技術は、一般的な形で、例えばSouk,Jun{SIDセミナー2004、セミナーM−6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M−6/1〜M−6/26(非特許文献12)}およびMiller,Ian{SIDセミナー 2004、セミナーM−7:「LCD−Television」、セミナー講義ノート、M−7/1〜M−7/32(非特許文献13)}で比較されている。オーバードライブ駆動方法により、近年のECBディスプレイの応答時間は既に著しく改良されてきたが(例えば:Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57−in.Wide UXGA TFT−LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第106〜109頁(非特許文献14))、ビデオに対応できる応答時間を達成することは、特にグレーレベルのスイッチングにおいて、依然として満足いくほどには未だ解決されていない問題である。
【0011】
この効果を電気光学的ディスプレイ素子中で工業的に応用するには、多数の要求を満足するLC相が必要となる。ここで特に重要なものは、水分、空気、および熱、赤外線、可視および紫外領域の放射、直流および交流電界などの物理的影響に対する化学的安定性である。
【0012】
さらに、工業的に使用できるLC相は、適切な温度範囲での液晶中間相および低粘度が必要である。
【0013】
現在までに開示された液晶中間相を有する一連の化合物には、単一の化合物でこれら全ての要求を見たすものはなかった。従って、LC相として使用できる材料を得るためには、一般に、2〜25種類、好ましくは3〜18種類の化合物の混合物が調製される。しかしながら、著しく負の誘電異方性および充分な長期安定性を有する液晶材料がこれまで入手できなかったため、最適な相はこのように簡単には調製できなかった。
【0014】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は既知である。個々のピクセルをそれぞれスイッチングするために使用することができる非線形素子は、例えば、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。これは「アクティブマトリックス」と呼ばれ、2つの区別される型に分けられる。
【0015】
1.基体としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスター。
【0016】
2.基体としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0017】
第1の型の場合、使用される電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立て品の場合であっても接続部での問題が生じるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0018】
好適であってより有望な第2の型の場合には、TN効果が、通常使用される電気光学的効果である。
【0019】
区別される2つの技術がある。即ち、例えばCdSeのように化合物半導体を含むTFT、または多結晶またはアモルファスシリコンに基づいたTFTである。後者の技術について、世界的に集中した研究がなされている。
【0020】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1つのガラス板の内面に形成され、もう一方のガラス板は、内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラー対応のディスプレイにも適用でき、このディスプレイでは、フィルター素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0021】
これまでに開示されたTFTディスプレイは、通常、透過光に対して直交した偏光板を備えるTNセルとして作動し、背面から照らされる。
【0022】
ここで用語「MLCディスプレイ」は、集積非線形素子を備える任意のマトリックスディスプレイを含む。即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)のような受動型素子を備えたディスプレイも含む。
【0023】
この型のMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケットテレビ)、または自動車または航空機内での高度情報ディスプレイに適している。コントラストの角度依存性と応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題がある[TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay、1984年9月、第84巻、第A210〜288号、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁(パリ)(非特許文献15);STROMER,M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁(パリ)(非特許文献16)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化する。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命に全体に渡って低下するので、許容される抵抗値を長期の動作期間で有するディスプレイのためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。
【0024】
これまでに開示されたMLC−TNディスプレイの不具合は、それらの比較的低いコントラスト、比較的大きい視野角依存性、およびこれらのディスプレイ中で中間調を生じさせることが困難なことである。
【0025】
したがって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有し、これらのおかげで各種の中間調を生じさせることができるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19(1971)、3912
【非特許文献2】J.F.Kahn、Appl.Phys.Lett.20(1972)、1193
【非特許文献3】G.LabrunieおよびJ.Robert、J.Appl.Phys.44(1973)、4869
【非特許文献4】J.RobertおよびF.Clerc、SID 80 Digest Techn.Papers(1980)、30
【非特許文献5】J.Duchene、Displays 7(1986)、3
【非特許文献6】H.Schad、SID 82 Digest Techn.Papers(1982)、244
【非特許文献7】Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs・・・」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第6〜9頁
【非特許文献8】Liu、C.T.ら、論文15.1:「A 46−inch TFT−LCD HDTV Technology・・・」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第750〜753頁
【非特許文献9】Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State−of−the−Art for LCD−TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第760〜763頁
【非特許文献10】Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第754〜757頁
【非特許文献11】Yeo、S.D.、論文15.3:「An LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第758および759頁
【非特許文献12】Souk、Jun、セミナーM−6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M−6/1〜M−6/26
【非特許文献13】Miller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM−7:「LCD−Television」、セミナー講義ノート、M−7/1〜M−7/32
【非特許文献14】Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57−in.Wide UXGA TFT−LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第106〜109頁
【非特許文献15】TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay、1984年9月、第84巻、第A210〜288号、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁(パリ)
【非特許文献16】STROMER,M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁(パリ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、特にモニターおよびテレビ用途向けのMLCディスプレイを提供することを目的としており、該ディスプレイはECBまたはIPS効果に基づいており、上記の不具合を示さないか示しても低減されており、同時に非常に高い比抵抗値を有している。特に、モニターおよびテレビ用には、ディスプレイが非常に高温および非常に低温においても機能することが保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0028】
驚くべきことに、これらのディスプレイ素子中で、式IAの少なくとも1種類の化合物と、式IB、ICおよびIDの群からの少なくとも1種類の化合物とを含むネマチック液晶混合物を使用すれば、この目的が達成されることが今回見出された。式IAの化合物は、例えば、EP 0 969 071 B1、EP 1 362 839 A2、DE 199 27 627 A1およびDE 101 57 674 A1より既知である。式IBの化合物は、例えばよりGB 0 168 683 B1およびEP 0 122 389 B1より既知である。式ICの化合物は、例えばWO 03/010120より既知である。式IDの化合物は、例えばDE 10 204 236およびDE 39 06 040より既知である。
【0029】
よって、本発明は、式IAの少なくとも1種類の化合物と、式IB、ICおよびIDから成る化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物とを含む極性化合物類の混合物に基づく液晶媒体に関する。
【0030】
本発明の混合物は、70℃以上の透明点と共に非常に広い範囲でネマチック相を示し、非常に好ましい値の容量閾値、比較的高い値の保持率および同時に−30℃および−40℃において非常に良好な低温安定性を示し、非常に低い回転粘度および短い応答時間を有する。よって、本発明の混合物は、回転粘度γの改良に加え、弾性率K33の上昇が応答時間の改良に寄与している事実によって区別される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の混合物の好ましい実施形態の幾つかを以下に示す。
【0032】
a)式IAおよびIB中のR1AおよびR1Bは、好ましくはアルケニル基を表し、特にはビニル、1E−アルケニルまたは3−アルケニルで、非常に特に好ましくは、CH=CH、CHCH=CH、CCH=CH、CCH=CH、CH=CHC、CHCH=CHC、CH=CHCH、CHCH=CHCH、CCH=CHCHである。
【0033】
1Aは、特にはCH=CHを表す。R1Bは、特にはCHCH=CHまたはCH=CHを表す。
【0034】
1C、R1DおよびR2Dは、好ましくは直鎖状のアルキル基、特にはCH、C、n−C、n−Cまたはn−C11、更にはn−C13またはn−C15を表す。
【0035】
b)式IAの1種類、2種類、3種類または4種類以上、好ましくは1種類、2種類または3種類の化合物を含む液晶媒体。
【0036】
c)混合物全体における式IAの化合物の割合が、5質量%以上、好ましくは少なくとも10質量%、特に好ましくは15質量%以上である液晶媒体。
【0037】
存在するのであれば、混合物全体における式IBの化合物の割合は、好ましくは5質量%以上、特には10質量%以上、非常に特に好ましくは20質量%以上である。
【0038】
存在するのであれば、混合物全体における式ICの化合物の割合は、好ましくは2質量%以上、特には4質量%以上、非常に特に好ましくは5質量%以上である。
【0039】
存在するのであれば、混合物全体における式IDの化合物の割合は、好ましくは4質量%以上、特には8質量%以上、非常に特に好ましくは10質量%以上である。
【0040】
本発明の混合物中の式IB、ICおよび/またはIDの化合物の総割合は、好ましくは5質量%以上、特には10質量%以上、非常に特に好ましくは15質量%以上である。
【0041】
d)式IAの好ましい化合物は、式IA−1〜IA−54の化合物である。
【0042】
【化6.1】
【0043】
【化6.2】
【0044】
【化6.3】
【0045】
【化6.4】
【0046】
【化6.5】
【0047】
【化6.6】
【0048】
【化6.7】
【0049】
【化6.8】
【0050】
alkylは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0051】
式IA−1、IA−2、IA−3、IA−4、IA−11、IA−12、IA−13およびIA−14の化合物が特に好ましい。
【0052】
式IAおよび式IA−1〜IA−54の補助式の化合物中において、好ましくはYおよびYは両者ともフッ素を表し、YはHである。
【0053】
更に、以下の組み合わせが好ましい。
【0054】
=F、Y=ClおよびY=H;
=Cl、Y=FおよびY=H。
【0055】
式IBの好ましい化合物は、式IB−1〜IB−16の化合物である。
【0056】
【化7.1】
【0057】
【化7.2】
【0058】
式ICの好ましい化合物は、式IC−1〜IC−16の化合物である。
【0059】
【化8.1】
【0060】
【化8.2】
【0061】
【化8.3】
【0062】
式中、R1Cは、好ましくは直鎖状のアルキル基を表す。式IC−3、更にはIC−1およびIC−4の化合物が特に好ましい。
【0063】
式IDの好ましい化合物は、式ID−1〜ID−6の化合物である。
【0064】
【化9】
【0065】
式中、R1Dは好ましくは直鎖状で1〜7個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R2Dは好ましくは直鎖状で1〜7個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表す。式ID−1およびID−4の化合物が特に好ましい。
【0066】
e)式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を更に含む液晶媒体。
【0067】
【化10】
式中、
は、Hまたは15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基(好ましくはアルキル基)を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCFによって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【0068】
【化11】
−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を表し、
pは、1または2を表し、および
vは、1〜6を表す。
【0069】
式IIAおよびIIBの好ましい化合物を以下に示す。
【0070】
【化12.1】
【0071】
【化12.2】
【0072】
【化12.3】
【0073】
【化12.4】
【0074】
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0075】
式IIAおよびIIBの化合物中のRは、好ましくはそれぞれの場合で、直鎖状で6個までの炭素原子を有するアルキル基を表し、特にはCH、C、n−C、n−Cまたはn−C11である。L1〜4は、好ましくはそれぞれFを表す。
【0076】
f)式IIIの1種類以上の化合物を更に含む液晶媒体。
【0077】
【化13】
式中、
31およびR32は、それぞれ互いに独立に、12個までの炭素原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、
【0078】
【化14.1】
【0079】
【化14.2】
【0080】
を表し、および
は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を表す。
【0081】
g)混合物全体における式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は少なくとも20質量%である液晶媒体。
【0082】
h)混合物全体における式IIIの化合物の割合は少なくとも5質量%である液晶媒体。
【0083】
i)式IIIa〜IIIhより選ばれる1種類以上の化合物を更に含む液晶媒体。
【0084】
【化15.1】
【0085】
【化15.2】
【0086】
式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0087】
本発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIdの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0088】
j)式IAの化合物の1種類以上と、式IB、ICおよびIDから成る化合物群より選択される少なくとも1種類以上の化合物とを組み合わせて5〜80質量%、
式IIAおよび/またはIIBの化合物の1種類以上を5〜80質量%
を含むか、またはそれらより成る液晶媒体(ただし、式IA、IB、IC、IDおよびIIAおよび/またはIIBの化合物の総量は、100質量%以下である。)。
【0089】
k)以下の1種類以上の4環化合物を更に含む液晶媒体。
【0090】
【化16.1】
【0091】
【化16.2】
【0092】
式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に、前記式IIAおよびIIBのRで示される意味の1つを有し、
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。
【0093】
l)式Y−1〜Y−8の1種類以上の化合物を更に含む液晶媒体。
【0094】
【化17.1】
【0095】
【化17.2】
【0096】
式中、R13〜R20は、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。
【0097】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、式Y−1〜Y−8の1種類以上の化合物を5質量%以上の量で含む。
【0098】
m)以下の式の1種類以上の化合物:
【0099】
【化18】
を、好ましくは3質量%より多い量で、特に5質量%以上で、非常に特に好ましくは5〜25質量%で、更に含む液晶媒体。
【0100】
ただし、R21は1〜7個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、
mは1〜6を表す。
【0101】
n)式T−1〜T−22の1種類以上のフッ素化されたターフェニル類を更に含む液晶媒体。
【0102】
【化19.1】
【0103】
【化19.2】
【0104】
【化19.3】
【0105】
【化19.4】
【0106】
式中、Rは、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、
mは、1〜6を表す。
【0107】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0108】
本発明の媒体は、好ましくは、式T−1〜T−22のターフェニル類を2〜30質量%の量で、特には5〜20質量%で含む。
【0109】
式T−1、T−2、T−3およびT−22の化合物が特に好ましい。これらの化合物の中で、Rは、好ましくは、それぞれ1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、更にはアルコキシ基を表す。
【0110】
混合物のΔnの値を0.1以上とする場合、好ましくはターフェニル類が本発明の混合物中で使用される。好ましい混合物は、化合物T−1〜T−22の化合物群より選ばれる1種類以上のターフェニル化合物類を2〜20質量%で含む。
【0111】
o)式B−1〜B−3の1種類以上のビフェニル類を更に含む液晶媒体。
【0112】
【化20.1】
【0113】
【化20.2】
【0114】
式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0115】
混合物全体における式B−1〜B−3のビフェニル類の割合は、好ましくは少なくとも3質量%、特には5質量%以上である。
【0116】
式B−1〜B−3の化合物のうち、式B−2の化合物が特に好ましい。
【0117】
特に好ましいビフェニル類は、以下である。
【0118】
【化21】
【0119】
式中、alkylは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。本発明の媒体は、特に好ましくは、式B−1aおよび/またはB−2cの1種類以上の化合物を含む。
【0120】
p)式Z−1〜Z−16の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0121】
【化22.1】
【0122】
【化22.2】
【0123】
式中、Rおよびalkylは上で示された意味を有する。
【0124】
q)式O−1〜O−13の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0125】
【化23.1】
【0126】
【化23.2】
【0127】
式中、RおよびRはR2Aで示される意味を有し、RおよびRは、好ましくは、それぞれは互いに独立に、直鎖状のアルキル基、さらにアルケニル基を表す。
【0128】
好ましい媒体は、式O−1、O−3、O−4、O−9および/またはO−13の1種類以上の化合物を含む。
【0129】
r)本発明の好ましい液晶媒体は、例えば式N−1〜N−5の化合物のようなテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含む1種類以上の物質を含む。
【0130】
【化24.1】
【0131】
【化24.2】
【0132】
式中、R1NおよびR2Nは、それぞれ互いに独立にR2Aで示される意味を有し、好ましくは直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルコキシ基または直鎖状のアルケニル基を表し、およびZ、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CFO−、−OCF−、−CH−または単結合を表す。
【0133】
s)好ましい混合物は、式BCの1種類以上のジフルオロジベンゾクロマン化合物類および/または式CRのクロマン類を含む。
【0134】
【化25】
【0135】
式中、RB1、RB2、RCR1およびRCR2は、それぞれ互いに独立にR2Aの意味を有する。本発明の混合物は、好ましくは3〜20質量%の量で、特には3〜15質量%の量で、式BCおよび/またはCRの化合物を含む。
【0136】
式BCおよびCRの特に好ましい化合物は、化合物BC−1〜BC−7およびCR−1〜CR−5である。
【0137】
【化26.1】
【0138】
【化26.2】
【0139】
式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0140】
式BC−2の1種類、2種類または3種類の化合物を含む混合物が非常に特に好ましい。
【0141】
本発明は、更に、ECBまたはFFS効果に基づきアクティブマトリックス駆動を備え、上記の液晶媒体を誘電体として含有することを特徴とする電気光学的ディスプレイに関する。
【0142】
本発明の液晶媒体は、好ましくは−20℃以下〜70℃以上まででネマチック相を有し、特に好ましくは−30℃以下〜80℃以上、非常に特に好ましくは−40℃以下〜90℃以上である。
【0143】
ここで用語「ネマチック相を有する」は、一方でスメクチック相および結晶化が対応する温度の低温で確認されないことを意味し、他方でネマチック相から加熱しても依然透明化しないことを意味する。低温における検査は対応する温度において流動粘度計により行なわれ、試験は、電気光学的用途に対応する層厚みを有する試験用セルに少なくとも100時間保存して行なわれる。
【0144】
対応する試験用セル中における−20℃での保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であると言われる。−30℃および−40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、毛細管による従来法により、透明点が測定される。
【0145】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマチック相範囲と、20℃において最大で30mm・s−1の流動粘度ν20を有する。
【0146】
液晶混合物中の複屈折率Δnは一般に0.07および0.16の間であり、好ましくは0.08および0.12の間である。
【0147】
本発明の液晶混合物は、約−0.5〜−0.8、特には−3.0〜−6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。20℃における回転粘度γは、好ましくは150mPa・s以下、特には120mPa・s以下である。
【0148】
本発明の液晶媒体は比較的低い値の閾電圧(V)を有している。それらは、好ましくは1.7V〜2.5Vの範囲、特に好ましくは2.4V以下、非常に特に好ましくは2.2V以下である。
【0149】
本発明においては、用語「閾電圧」は、他に明言しない限り、フレデリックス閾値としても知られる容量閾値(V)に関する。
【0150】
加えて、本発明の液晶媒体は、液晶セル中において高い値の電圧保持率を有する。
【0151】
一般に、低い駆動電圧または閾電圧を有する液晶媒体は、高い駆動電圧または閾電圧を有する液晶媒体よりも低い電圧保持率を有し、また逆もいえる。
【0152】
本発明において、用語「誘電的に正の化合物」はΔε>1.5の化合物を表し、用語「誘電的に中性の化合物」は−1.5≦Δε≦1.5の化合物を表し、用語「誘電的に負の化合物」はΔε<−1.5の化合物を表す。ここで、化合物の誘電異方性は、化合物を10%の濃度で液晶ホストに溶解し、それぞれの場合で20μmの厚みでホメオトロピックおよびホモジニアス表面配向を有する少なくとも1つの試験用セル中で1kHzにおいて、得られた混合物の容量を決定することにより決定される。測定電圧は典型的には0.5V〜1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物の容量閾値よりは常に低くする。
【0153】
誘電的に正および誘電的に中性の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−4792で、誘電的に負の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−2857で、いずれも独国のメルク社製である。検討されるそれぞれの化合物の値は、検討される化合物を添加した後のホスト化合物の誘電率の変化、およびその化合物100%への外挿により得られる。検討される化合物は、ホスト混合物に10%の量で溶解される。材料の溶解度が低すぎてこれが行なえない場合、所望の温度で検討できるようになるまで濃度を段階的に半分にしていく。
【0154】
本発明で示される全ての温度の値は℃で示されている。
【0155】
電圧保持率は、メルク社で製造された試験用セル中で決定される。測定用セルはソーダライムガラス基板を有し、ポリイミド配向層(AL−3046、日本合成ゴム社、日本製)を備えて製造される。層厚みは均一に6.0μmである。透明ITO電極の面積は1cmである。
【0156】
本発明の混合物は、例えばVAN、MVA、(S)−PVAおよびASVのような全てのVA−TFT用途に適している。更に、Δεが負であるIPS(n−lane witching)、FFS(ringe ield witching)およびPALCの用途に適している。
【0157】
本発明のディスプレイ中のネマチック液晶混合物は一般に2種類の成分AおよびBを含んでおり、これらの成分自身は1種類以上の個々の化合物より成る。
【0158】
成分Aは著しい負の誘電異方性を有しており、−0.5以下の誘電異方性のネマチック相を与える。式IAの1種類以上の化合物に加え、成分Aは、好ましくは、式IC、ID、IIA、IIBの1種類以上の化合物を含む。
【0159】
成分Aの割合は好ましくは45および100%の間であり、特には60および100%の間である。
【0160】
成分Aのためには、−0.8以下の値のΔεを有する1種類(またはそれより多く)の個々の化合物が好ましくは選択される。混合物全体におけるAの割合が低いほど、Δεの値をより負としなければならない。
【0161】
成分Bは明瞭なネマトゲン性を有しており、20℃において30mm・s−1以下、好ましくは25mm・s−1以下の流動粘度を有する。
【0162】
成分Bにおける特に好ましい個々の化合物は、非常に低い粘度のネマチック液晶で、20℃において18mm・s−1以下、好ましくは12mm・s−1以下の流動粘度を有している。
【0163】
成分Bは、モノトロピック性またはエナンチオトロピック性のネマチックであり、スメクチック相を有さず、そして、液晶混合物において極めて低い温度までスメクチック相の発生を防止することができる。例えば、高いネマトゲン性の各種材料を、スメクチック液晶混合物に加えた場合、これらの材料のネマトゲン性は、達成されたスメクチック相抑制の程度をとおして比較することができる。
【0164】
多数の好適な材料が、文献により当業者に知られている。式IIIの化合物が特に好ましい。
【0165】
加えて、これらの液晶相も18種類より多い成分を含んでいてもよく、好ましくは18〜25種類の成分である。
【0166】
その相は、好ましくは、式IA、IB、IC、ID、IIAおよび/またはIIB、および任意にIIIの化合物を、4〜15種類、特には5〜12種類、特に好ましくは10種類より少ない種類を含む。
【0167】
式IA、IB、IC、ID、IIAおよび/またはIIBおよびIIIの化合物に加え、他の構成成分も、例えば混合物全体の45%までの量、しかし好ましくは35%まで、特には10%までの量で存在してよい。
【0168】
他の構成成分は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性の物質より選択され、特には、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、フェニル−またはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸エステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換された桂皮酸エステル類に分類される既知の物質から選択される。
【0169】
この型の液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式IVで特徴付けることができる。
【0170】
−L−G−E−R10 IV
式中、LおよびEは、それぞれ、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロへキシルシクロヘキサン構造、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環、2,6−二置換ナフタレン、ジ−およびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンから成る群より選択される炭素環構造またはヘテロ環構造である。
【0171】
Gは、−CH=CH−、−N(O)=N−、−CH=CQ−、−CH=N(O)−、−C≡C−、−CH−CH−、−CO−O−、−CH−O−、−CO−S−、−CH−S−、−CH=N−、−COO−Phe−COO−、−CFO−、−CF=CF−、−OCF−、−OCH−、−(CH−、−(CHO−またはC−C単結合であり、Qはハロゲン、好ましくは塩素、または−CNを表し、そしてRおよびR10は、それぞれ18個までの、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルコキシカルボニルオキシであり、または代わりに、これらの基の1つは、CN、NC、NO、NCS、CF、SF、OCF、F、ClまたはBrを表す。
【0172】
これらの化合物の殆どにおいて、RおよびR10は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常、アルキルまたはアルコキシ基である。提案された置換基の他の変種もまた一般的である。このような物質またはそれらの混合物もまた、商業的に入手できる。全てのこれらの物質は、文献から知られる方法により調製することができる。
【0173】
当業者には言うまでもなく、本発明のVA、IPS、FFSまたはPALC混合物は、例えばH、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含むことができる。
【0174】
例えば米国特許第6,861,107号明細書中で記載されるようないわゆる反応性メソゲン(RM)である重合性化合物を更に本発明の混合物に加えることができ、好ましくは混合物の0.12〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の濃度である。この型の混合物は所謂ポリマー安定化VAモード用に使用でき、このモードでは反応性メソゲンの重合が液晶混合物中で進行するよう意図されている。このための前提条件は、液晶混合物自身が例えばアルケニル側鎖を含む化合物のような重合性成分を一切含んでいないことである。
【0175】
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えばEP−A 0 240 379に記載されているような通常の構成に対応する。
【0176】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、パーセンテージのデータは質量パーセントである。温度はすべて摂氏で示される。
【0177】
式IAの化合物および式IB、ICおよびIDの化合物群からの1種類以上の化合物に加え、本発明の混合物は、好ましくは以下に示す1種類以上の化合物を含む。
【0178】
以下の略称を使用する(n、mおよびzは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である)。
【0179】
【化27.1】
【0180】
【化27.2】
【0181】
【化27.3】
【0182】
【化27.4】
【0183】
【化27.5】
【0184】
【化27.6】
【0185】
【化27.7】
【0186】
【化27.8】
【0187】
【化27.9】
【0188】
【化27.10】
【0189】
【化27.11】
【0190】
【化27.12】
【0191】
本発明で使用できる液晶媒体は、それ自体従来の方法で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、好ましくは加温して溶解する。例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール等の有機溶媒中で成分溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。
【0192】
適切な添加剤を利用することで、本発明の液晶相を、例えばECB、VAN、IPS、GHまたはASM−VA LCD等のこれまで開示された任意の型のディスプレイ中において使用できるように改変できる。
【0193】
誘電体は、例えばUV吸収剤、抗酸化剤、ナノ微粒子およびフリーラジカル補足剤のような当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含むこともできる。例えば、0〜15%の多色性色素、安定化剤またはキラルドーパントを加えることができる。
【0194】
例えば、0〜15%の多色性色素を添加することができ、さらには導電性塩、好ましくは4−ヘキソキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.第24巻、第249〜258頁(1973年)参照)を、導電性を改良するために添加することができ、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するために物質を加えることもできる。この型の物質は、例えばDE−A 22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728に記載されている。
【0195】
表Aに、本発明による混合物に添加できる使用可能なドーパントを示す。混合物が1種類以上のドーパントを含む場合、0.01〜4質量%の量、好ましくは0.1〜1.0%の量で使用する。
【0196】
【表1.1】
【0197】
【表1.2】
【0198】
【表1.3】
【0199】
例えば本発明の混合物に、混合物の総量に基づいて10質量%まで、好ましくは0.01〜6質量%の量、特には0.1〜3質量%の量で添加することができる安定剤を表Bに示す。
【0200】
【表2.1】
【0201】
【表2.2】
【0202】
【表2.3】
【0203】
【表2.4】
【実施例】
【0204】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、
は20℃における容量閾電圧(V)を表し、
Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、
Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、
cl.p.は透明点(℃)を表し、
は20℃における「スプレイ」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
は20℃における「ベンド」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
γは20℃で測定される回転粘度(mPa・s)を表し、磁場回転法で決定され、
LTSは試験セル中で決定される低温安定性(ネマチック相)を表し、
HR(20)は20℃における電圧保持率(%)を表し、
HR(100)は100℃における5分後の電圧保持率(%)を表し、
HR(UV)はUV曝露後の電圧保持率(%)を表す。
【0205】
閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは20μmの間隔で離れている2枚の平行な外板と、その外板の内側上に、液晶のホメオトロピック配向をもたらすSE−1211(日産化学製)の配向層がオーバーレイされた電極層とを有している。
【0206】
ここで適用される全ての濃度は、他に特に示さない限り対応する混合物または混合物成分に基づくものである。物理的特性は「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国メルク社に記載されているように決定し、他に特に示さない限り温度は20℃である。
【0207】
<混合物例>
<例1>
【0208】
【表3】
<例2>
【0209】
【表4】