特許第6054242号(P6054242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

特許6054242セルロース系樹脂組成物及びそれを成形してなる光学フィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054242
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】セルロース系樹脂組成物及びそれを成形してなる光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20161219BHJP
   C08L 1/10 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20161219BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20161219BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20161219BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161219BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08L1/00
   C08L1/10
   C08K5/07
   C08K5/3492
   C08K5/3475
   C08K5/16
   C08J5/18CEP
   G02F1/13363
   G02F1/1335 510
   G02B5/30
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-99704(P2013-99704)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218610(P2014-218610A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】村上 聖
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−177235(JP,A)
【文献】 特表2008−514468(JP,A)
【文献】 特表2007−536569(JP,A)
【文献】 特開2007−108775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−1/32
C08J 5/18
C08K 5/00−5/59
G02B 5/00−5/32
G02F 1/00−1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系樹脂100質量部に対し、下記一般式(2)
(式(2)中、R〜R13は、各々独立して、水素原子、アミノ基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、または、炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、R及びR14は、各々独立して、水素原子、または、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるβ−ジケトン化合物(A)0.2〜20質量部と、
トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、シアノアクリレート化合物及びベンゾフェノン化合物からなる群から選択される紫外線吸収剤(B)0.01〜8質量部と、
を配合してなり、
前記β−ジケトン化合物(A)と紫外線吸収剤(B)との質量比[(A)/(B)]が10/1〜5/1の範囲内であることを特徴とするセルロース系樹脂組成物。
【請求項2】
セルロース系樹脂がセルロースアシレートである請求項1記載のセルロース系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のセルロース系樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項4】
10〜150μmの膜厚に成形されてなる請求項記載の光学フィルム。
【請求項5】
光学補償用のフィルムである請求項3または4記載の光学フィルム。
【請求項6】
偏光板保護用のフィルムである請求項3または4記載の光学フィルム。
【請求項7】
液晶表示装置用のフィルムである請求項3または4記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系樹脂組成物及びそれを成形してなる光学フィルムに関し、詳しくは、優れた耐候性と大きなレターデーションを示す光学フィルムを製造することができるセルロース系樹脂組成物及びそれを成形してなる光学フィルムに関する。かかる光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、または、これらが積層されているものが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光フィルムが配置されている。また、液晶パネルには偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられており、例えば、着色防止としての位相差フィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられている。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
近年、ノートパソコンやTV等の液晶表示装置の高精細化、薄型軽量化の開発が進んでいる。それに伴って、光学フィルムもますます高性能化、薄膜化の要求が強くなっている。液晶表示装置に用いられる光学フィルムは、透明性、屈折率等が優れるセルロースエステルフィルムが広く使用されているが、セルロースエステルフィルムを単純に薄膜化しただけでは、種々の問題が発生する。
【0004】
光学フィルムには、偏光子や液晶を保護する目的で紫外線吸収剤が使用されているが、セルロースエステルフィルムを薄膜化した場合、紫外線吸収剤による紫外線抑制効果が減少するため、紫外線吸収剤を増量しなければならない。
しかし、単純な紫外線吸収剤の増量は、セルロースエステルフィルムの製膜工程において、剥離ロールや搬送ロールに紫外線吸収剤が付着しやすくなり、不良品が多発して生産性を大きく低下させてしまうという問題がある。
【0005】
また、液晶表示装置は、異方性を持つ液晶材料を使用しているため、斜めからの表示性能が低下するという問題がある。このような問題を解消するため視野角を拡大させる方法として、光学フィルムにレターデーション(複屈折率)上昇剤を添加する方法が知られている。
しかし、光学フィルムを薄膜化した場合、より大きなレターデーションが必要になるが、従来のレターデーション上昇剤では多量添加が必要となり、ブリードアウト等の問題が発生するため実用化が困難であった。また、ブリードアウトを改善する手法として、セルロースの総アシル基置換度などを低下させる方法が提案されているが、吸湿性が増加する等の問題があり、やはり実用化は困難であった。
【0006】
そのような状況下、実用化に向けて特定のレターデーション上層剤を添加する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、特定の芳香族化合物からなるレターデーション向上剤を含有するセルロースエステルフィルムからなる位相差板が提案されている。また、特許文献2では、フェノール性水酸基を有する多環芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用してなるセルロースエステルフィルムが提案されている。一方、特許文献3では、ジベンゾイルメタンをレターデーション上昇剤としてではなく紫外線吸収剤として使用してなるUVフィルター素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2000/55657
【特許文献2】特開2010−222433号公報
【特許文献3】特開2003−1777235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1における特定の芳香族化合物は、セルロースエステル樹脂との相溶性が不十分であるため、光学特性の向上効果は不十分であった。また、特許文献2におけるフェノール性水酸基を有する多環芳香族化合物もセルロースエステル樹脂との相溶性が不十分なため、光学特性向上効果が不十分であった。
【0009】
一方、特許文献3記載のUVフィルター素子においては、あくまでUV吸収に関する技術であって、ジベンゾイルメタン化合物の添加による光学特性の向上効果については全く記載されていない。また、特許文献3は、β−ジケトン化合物及び紫外線吸収剤を酢酸セルロースに配合したフィルムが開示されているが、レターデーション及び耐候性の効果を示唆する記載はなかった。
【0010】
そこで本発明の目的は、光学特性に優れ、耐候性に優れた光学フィルムを得ることができるセルロース系樹脂組成物及びそれを成形してなる光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、セルロース系樹脂に特定のβ−ジケトン化合物及び紫外線吸収剤を特定の比率で配合することにより上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、セルロース系樹脂100質量部に対し、下記一般式(2)、
(式(2)中、R〜R13は、各々独立して、水素原子、アミノ基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、または、炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、R及びR14は、各々独立して、水素原子、または、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるβ−ジケトン化合物(A)0.2〜20質量部と、
トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、シアノアクリレート化合物及びベンゾフェノン化合物からなる群から選択される紫外線吸収剤(B)0.01〜8質量部と、
を配合してなり、
前記β−ジケトン化合物(A)と紫外線吸収剤(B)との質量比[(A)/(B)]が10/1〜5/1の範囲内であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のセルロース系樹脂組成物においては、前記セルロース系樹脂として、セルロースアシレートを好適に用いることができる。
【0015】
本発明の光学フィルムは、前記本発明のセルロース系樹脂組成物が成形されてなることを特徴とするものである。
本発明の光学フィルムは、好ましくは10〜150μmの膜厚に成形されてなる。
また、本発明の光学フィルムは、光学補償用、偏光板保護用、または、液晶表示装置用の光学フィルムとして好適である。
【0016】
ここで、本発明において光学的特性に優れているとは、大きなレターデーションが付与されていることを意味し、このレターデーションは、一般には、フィルムの厚み方向のレターデーション値(Rth)によって把握することが可能である。なお、Rthは、下記式で定義される値である。このレターデーション値Rthは、例えば、KOBRA−WR(王子計測機器(株)製)やRETS−100(大塚電子(株)製)などの自動複屈折率計を用いて測定することができる。
Rth={(Nx+Ny)/2―Nz}×d
(式中、Nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、NyはNxに直角な方向でのフィルム面内の屈折率、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明のセルロース系樹脂組成物により得られる光学フィルムは、耐候性及び光学特性に優れ、すなわち、大きなレターデーションを付与されているものであるので、光学補償用、偏光板保護用、液晶表示装置用のフィルムとして好適に使用することがでる。特に、VAモードの液晶セルを用いるVA型液晶表示装置用の位相差フィルムとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に用いられるセルロース系樹脂は、いずれの種類のものであってもよいが、セルロースの低脂肪酸エステルが好ましい。セルロースの低脂肪酸エステルにおける低脂肪酸としては、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、セルロースの低脂肪酸エステルとしては、例えば、セルロースアシレート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートセルロースブチレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0019】
本発明に用いられるβ−ジケトン化合物(A)において、前記一般式(1)中、RおよびRで表される、無置換若しくは置換基を有する炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等が挙げられる。
これらアルキル基は、酸素原子、エステル基、カルボニル基、または、無置換若しくは置換基を有する炭素原子数6〜20のアリーレン基で単数または複数中断されていてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0020】
また、RおよびRで表される無置換若しくは置換基を有する炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられる。
これらアリールアルキル基中のアルキル基は、酸素原子、エステル基、カルボニル基、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素原子数6〜20のアリーレン基で単数または複数中断されていてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0021】
さらに、RおよびRで表される無置換若しくは置換基を有する炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセニルなどが挙げられる。これらアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0022】
前記一般式(1)中、R及びAで表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。
これらアルキル基は、酸素原子、エステル基、カルボニル基、または、無置換若しくは置換基を有する炭素原子数6〜20のアリーレン基で単数または複数中断されていてもよく、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0023】
前記一般式(1)中、RおよびAで表される炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル等が挙げられる。
これらアルキルカルボニル基中のアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0024】
前記一般式(1)中、RおよびAで表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記のアリールアルキル基と同じものが挙げられる。
【0025】
前記一般式(1)中、RおよびAで表される炭素原子数7〜20のアリールカルボニル基としては、上記アリール基にカルボニル基で連結されたものが挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)中、Aで表される炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、プロパン−2,2−ジイル、ブチレン、イソブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン等が挙げられる。
これらアルキレン基は、酸素原子、エステル基、カルボニル基、または、無置換若しくは置換基を有する炭素原子数6〜20のアリーレン基で単数または複数中断されていてもよく、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または、これらの組合せからなるもので置換されてもよい。
【0027】
上記置換基としては、より具体的には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等の炭素原子数1〜10のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ等の炭素原子数1〜10のアルコキシ基;メタノイルオキシ、エタノイルオキシ、プロパノイルオキシ等の炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル等の炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基;メトキシメチレンオキシ、エトキシメチレンオキシ、メトキシエチレンオキシ等の炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基;メトキシカルボニルエチレンオキシ、エトキシカルボニルメチレンオキシ、メトキシカルボニルエチレンオキシ等の炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等の炭素原子数7〜20のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセニル等の炭素原子数6〜20のアリール基;クロロ、ブロモ、フルオロ等のハロゲン原子;水酸基等が挙げられる。
尚、前記アルコキシアルキレンオキシ基は、具体的には、次式、
で表され、また前記アルコキシカルボニルアルキレンオキシ基は、具体的には、次式、
で表される。
【0028】
前記一般式(1)中、RおよびAが連結してなる炭素原子数3〜30の環状基とは、単環、多環、縮合環又は集合環であってもよく、芳香族環状基、飽和脂肪族環状基の区別無く使用することができ、環状基の水素原子の一部または全部が、炭素原子数1〜10のアルキル基、または、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい。かかる炭素原子数3〜30の環状基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセン、ビフェニル、トリフェニル、2−メチルフェニル(o−トリル、クレジル)、3−メチルフェニル(m−トリル)、4−メチルフェニル(p−トリル)、4−ヒドロキシフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル(キシリル)、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル(メシチル)、3,4,5−トリメトキシフェニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
【0029】
上記環状基の水素原子を置換する炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記アルキル基と同じものが挙げられる。
【0030】
上記環状基の水素原子を置換する炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられるが、かかるアルコキシ基中の任意の−CH−は、酸素原子、カルボニル基、エステル基で中断されていてもよく、一部あるいは全部の水素原子が、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0031】
前記一般式(2)中のR〜R13で表される無置換若しくは置換基を有する炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記のアルキル基と同じものが挙げられる。
【0032】
前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、上記のアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0033】
前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基としては、上記のアルカノイルオキシ基と同じものが挙げられる。
【0034】
また、前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、上記のアルコキシカルボニル基と同じものが挙げられる。
【0035】
また、前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基としては、上記のアルコキシアルキレンオキシ基と同じものが挙げられる。
【0036】
また、前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基としては、上記のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基と同じものが挙げられる。
【0037】
また、前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記アリールアルキル基と同じものが挙げられる。
【0038】
また、前記一般式(2)中のR〜R13で表される炭素原子数6〜20のアリール基としては、上記アリール基と同じものが挙げられる。
【0039】
また、前記一般式(2)中のRおよびR14で表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記アルキル基と同じものが挙げられる。
【0040】
また、前記一般式(2)中のRおよびR14で表される炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基としては、上記アルキルカルボニル基と同じものが挙げられる。
【0041】
また、前記一般式(2)中のRおよびR14で表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記アリールアルキル基と同じものが挙げられる。
【0042】
また、前記一般式(2)中のRおよびR14で表される炭素原子数7〜20のアリールカルボニル基としては、上記アリールカルボニル基と同じものが挙げられる。
【0043】
前記一般式(2)中のRおよびR14が連結してなる炭素原子数3〜30の環状基とは、上記環状基と同じものが挙げられる。
【0044】
本発明において、前記一般式式(2)で表されるβ−ジケトン化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により制限されるものではない。
【0045】
【0046】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、直鎖若しくは分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記アルキル基と同じものが挙げられる。
【0047】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、上記アルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0048】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数1〜10のアルカノイルオキシ基としては、上記アルカノイルオキシ基と同じものが挙げられる。
【0049】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、上記アルコキシカルボニル基と同じものが挙げられる。
【0050】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキレンオキシ基としては、上記アルコキシアルキレンオキシ基と同じものが挙げられる。
【0051】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数3〜21のアルコキシカルボニルアルキレンオキシ基としては、上記アルコキシカルボニルアルキレンオキシ基と同じものが挙げられる。
【0052】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記アリールアルキル基と同じものが挙げられる。
【0053】
前記一般式(3)中のR15〜R34で表される、炭素原子数6〜20のアリール基としては、上記アリール基と同じものが挙げられる。
【0054】
前記一般式(3)中のR35で表される炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、上記アルキレン基と同じものが挙げられる。
【0055】
本願発明において、式(3)で表されるβ−ジケトン化合物(A)としては、下記の化合物が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により制限されるものではない。
【0056】
【0057】
これらβ−ジケトン化合物(A)の使用量は、セルロース系樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部、好ましくは1〜20質量部である。この使用量が0.2質量部未満ではレターデーション上昇剤としての効果が十分発揮されず、一方、20質量部を越えて使用した場合には、ブリードを生じたり、光学フィルムの物性を低下させたりする場合があるため、好ましくない。
【0058】
本発明に係るβ−ジケトン化合物(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記〔化1〕または〔化2〕に示す反応式に従って製造することができる。尚、〔化1〕中のR〜R13は、上記一般式(2)中のR〜R13と同義であり、〔化2〕中のR15〜R35は、上記一般式(3)中のR15〜R35と同義であり、〔化1〕および〔化2〕中のXは、ハロゲン原子を表す。
【0059】
〔化1〕
【0060】
〔化2〕
【0061】
ここで、上記反応に使用される塩基(BASE)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属酸化物;水素化リチウム、水素化ナトリウム等の金属水素化物;炭酸カリウム等の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウム第三ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。上記塩基の使用量は、添加するハロゲン化合物中のハロゲン原子に対して、当モル以上加えることが好ましい。
【0062】
また、上記反応に使用される溶媒(Solv.)としては、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、THF、トリエチルアミン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、クロロホルム、ジクロロメタン、ピリジン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。上記溶媒の使用量は、任意の量とすることができるが、好ましくは、β−ジケトン化合物100質量部に対して、10〜500質量部の範囲で適宜使用することができる。
【0063】
本発明に用いられる紫外線吸収剤(B)としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾエート化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート化合物、サリシレート化合物、オキザニリド化合物、その他の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0064】
上記ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ジ第三ブチル−C7〜9混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第二ブチル−5−第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾイル)−5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどのベンゾトリアゾール化合物等が挙げられる。
【0065】
上記トリアジン化合物としては、例えば、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、1,6−ヘキサジアミンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)と2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリニル)−1,3,5−トリアジンの重合物、2−(4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−オクチルオキシ)−フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル]オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン及び2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの重縮合物等が挙げられる。
【0066】
上記ベンゾエート化合物としては、例えば、レゾルシノールものベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルアミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0067】
上記ベンゾフェノン化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、メチレン[ビス(ヒドロキシメトキシフェニレン)]ビス(フェニル)ケトン、1,4−ビス(4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン、ポリ−4−(2−アクリルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸トリハイドレート、ジイソジウム−2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5,5’−ジスルホン酸ベンゾフェノン2−ヒドロキシ−4−第三ブチル−4’−(2−メタクロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0068】
上記シアノアクリレート化合物としては、例えば、1,3−ビス[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス−{[(2’−シアノ−3’、3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}−プロパン、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、(2−エチルヘキシル)−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0069】
上記サリシレート化合物としては、例えば、フェニルサリシレート、4−第三ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0070】
上記オキザニリド化合物としては、例えば、2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等が挙げられる。
【0071】
その他の紫外線吸収剤としては、例えば、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N’−メチル−N’−フェニルホルムアミジン、N−(エトキシカルボニルフェニル)−N’−エチル−N’−エチル−N’−フェニルホルムアミジン、テトラエチル−2,2‘−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート、[(4−メトキシ−フェニル)−メチレン]−ジメチルエステル、4,4’−ヘキサメチレンビス(1,1−ジメチルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0072】
本発明においては、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾエート化合物、シアノアクリレート化合物、ベンゾフェノン化合物がセルロース系樹脂との相溶性が良好であるので好ましい。
【0073】
本発明のセルロース系樹脂組成物において、セルロース系樹脂100質量部に対する上記紫外線吸収剤(B)の配合量は、0.01〜8質量部、より好ましくは、0.05〜4質量部である。この使用量が0.01質量部未満では耐候性の効果が十分発揮されず、一方、8質量部を超えて使用した場合には、ブリードを生じたり、光学フィルムの物性を低下させたりする場合があるため、好ましくない。
【0074】
また、本発明のセルロース系樹脂組成物は、前記β−ジケトン化合物(A)と紫外線吸収剤(B)との質量比[(A)/(B)]が20/1〜5/2、好ましくは10/1〜5/1の範囲内である。この質量比が20/1を超えると耐候性の付与が不十分になる場合があり、一方、5/2を未満であると、ブリードを生じたり、光学フィルムの物性を低下させたりする場合があるため、好ましくない。
【0075】
また本発明のセルロース系樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加剤を配合することができる。上記その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物、難燃剤等を配合することができる。
【0076】
上記可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレートエステル類、トリフェニルホスフェート、ビフェニリルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のホスフェートエステル類、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレートなどのグリコール酸エステル類、等の化合物が挙げられる。
【0077】
上記可塑剤としては、その他にも下記のものが挙げることができる。例えば、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤、多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸(酢酸、芳香族酸など)をストッパーに使用して製造された可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤、多価アルコールの芳香族酸エステル系可塑剤(トリメチロールプロパンのトリベンゾエート等)などが挙げられる。
【0078】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−エチルフェノール、2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−チオビス−(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’−オキサミド−ビス[エチル−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−エチルヘキシル−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸及びC13−15アルキルのエステル、2,5−ジ−第三アミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(アデカパルマロール社製商品名AO.OH998)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2−第三ブチル−6−(3−第三ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−第三ペンチルフェニルアクリレート、6−[3−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−第三ブチルベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフォビン、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[モノエチル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネートカルシウム塩、5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2(3H)−ベンゾフラノン、とo−キシレンとの反応生成物、2,6−ジ−第三ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、DL−a−トコフェノール(ビタミンE)、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、ビス[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ステアリル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド等の3−(3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸誘導体等が挙げられる。
【0079】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキストリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピルグリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニル−テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4−ジ−第三ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、(1−メチル−1―プロパニル−3−イリデン)トリス(2−1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−第三ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス−第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9−ビス(4−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリ−第三ブチルフェニル−2−ブチル−2エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ポリ4,4’−イソプロピリデンジフェノールC12−15アルコールホスファイト、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ−第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0080】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート]メタン、ビス(メチル−4−[3−n−アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5−第三ブチルフェニル)スルファイド、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3‘−チオジプロピオネート、ラウリル/ステアリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−チオビス(6−第三ブチル−p−クレゾール)、ジステアリル−ジサルファイドが挙げられる。
【0081】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN NOR 371等が挙げられる。
【0082】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、および、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤は、フッ素樹脂などのドリップ防止剤や多価アルコール、ハイドロタルサイトなどの難燃助剤と併用することが好ましい。
【0083】
その他、本発明のセルロース系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、着色剤、架橋剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、蛍光剤、防かび剤、殺菌剤、金属不活性化剤、離型剤、顔料、加工助剤、発泡剤等を配合することができる。
【0084】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、加工方法に限定されることなく使用することができる。例えば、加工方法として、溶液流延法、溶融流延法、セルロースエステル樹脂組成物は、例えば、カレンダー加工、ロール加工、押出成形加工、溶融圧延加工、加圧成型加工、粉体成型加工等の加工方法が挙げられる。
【0085】
本発明のセルロース系樹脂組成物を成形することによって、光学異方性を有する成形体として利用することができる。例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学フィルムとして好適に用いることができる。
【0086】
本発明の光学フィルムは、例えば、位相差フィルム、輝度向上フィルム、パターンリターダーフィルム等を含むディスプレイ用フィルムの他、特定光(例えば、可視光線、近赤外線)を選択的に反射させる機能を有する選択反射フィルム等を含むものである。また、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、PDLC型電子ペーパー、デジタルペーパーなどの情報記録材料にも利用することができる。
【0087】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について説明するが、本発明は、以下の方法により限定されるものではない。
【0088】
本発明の光学フィルムは、セルロース系樹脂であるセルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液を塗布、乾燥することにより製造することができる。ドープ液には必要に応じて各種添加剤を混合することができる。ドープ液中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が支持体に流延した後の乾燥負荷を低減することができ、好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0089】
本発明に係る上記ドープ液の調製に用いる溶剤は、単独でも二種以上混合したものでもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤とを混合して用いることが生産効率の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独では膨潤するのみかあるいは溶解し得ないものを貧溶剤と定義する。そのため、セルロースエステルの平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えば、アセトンは、平均酢化度55%のセルロースエステルでは良溶剤になり、平均酢化度60%のセルロースエステルでは貧溶剤になってしまう。このように、良溶剤、貧溶剤は全ての場合に一義的に決まるものではない。本発明において好ましいセルロース系樹脂であるセルローストリアセテートの場合には、良溶剤としては、メチレンクロライドなどの有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられ、また、セルロースアセテートプロピオネートの場合にはメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル等が挙げられる。
一方、これらの場合、貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0090】
上記ドープ液を調製するときのセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができるため、好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。さらに公知の冷却溶解法を用いてもよい。冷却用解法を用いる場合には、良溶剤として酢酸メチル、アセトンを用いることができる。加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧によって行ってもよい。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるため、好ましい。
【0091】
溶剤を添加した後の加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない範囲の温度が、セルロースエステルの溶解度の観点から好ましい。加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃が更に好ましい。また、圧力は、設定温度で溶剤が沸騰しないように調整する。加熱後は、得られたセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾材を用いて濾過する。濾材としては、不要物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾材の目詰まりが発生しやすいという問題が生じる。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの範囲の濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質は特に制限無く用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
【0092】
ドープ液の濾過は通常の方法で行うことができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧ということがある)の上昇が小さく好ましい。好ましい濾過の温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃がさらに好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は、1.6×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10以下であることがより好ましい。
【0093】
流延(キャスト)工程に用いる支持体は、無端ベルト状若しくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましい。キャスト工程の支持体の温度は0℃から溶剤の沸点未満の温度までが好ましい。温度が高い方が乾燥速度を速くできるが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜50℃であり、5〜30℃がさらに好ましい。支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水バットを支持体に接触させる方法がある。これらの方法のうち、温水バットを用いる方法が、熱の伝達が効率的に行われ、支持体の温度が一定になる時間が短くなるため好ましい。温風を用いる場合は、目的の温度よりも高い温度の風を使う必要がある。フィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残存溶剤量は、10〜120質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または。60〜120質量%であり、特に好ましくは20〜30質量%または70〜115質量%である。
【0094】
本発明においては、上記残留溶剤量は下記式で定義される。
残留溶剤量=〔(加熱処理前のフィルム質量−加熱処理後のフィルム質量)/(加熱処理後のフィルム質量)〕×100(%)
尚、残留溶剤量を測定する際の加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間加熱することをいう。また、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶剤量を3質量%以下にすることが好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、テンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式を採ることができる。
【0095】
支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多い間に、テンター方式で幅保持または延伸を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため、好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限無く、熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができる。簡便さの点では、熱風で行うことが好ましい。この場合、乾燥温度は40〜150℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、寸法安定性を良くするためには50〜140℃で行うことが更に好ましい。
【0096】
光学フィルムの膜厚は、薄い方が表示装置の薄膜化が容易になるため好ましいが、薄過ぎると、透湿度が増大し、引き裂き強度が不足する。これらを両立する光学フィルムの膜厚としては、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら制限されるものではない。
【0098】
セルローストリアセテート(酢化度61%、重合度260)を100質量部及び下記の表1及び表2記載の添加剤を同表記載の質量部で、メチレンクロライド400質量部とメチルアルコール100質量部とからなる混合溶剤に撹拌しながら均一に溶解させ、各種ドープ液を調製した。次いで、得られたドープ液をガラス板状に約0.1mmの厚さになるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で1時間乾燥させ、さらに120℃で1時間乾燥させてフィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚は何れも約80μmであった。
得られたフィルムを用いて下記の評価を行った。これらの結果について表1及び表2に示す。
なお、表中の化合物の数字は、上記の対応するβ−ジケトン化合物の番号を表す。
【0099】
(1)耐候試験
得られたフィルムを70mm×70mmの大きさに切り取り、サンシャイン・ウェザオメーター(温度83℃、水スプレー無し)60時間の処理を行い、処理前後のレターデーション(Rth)を測定し、処理前のレターデーション値に対する低下率(%)を求めた。
レターデーションは、下記式に従い自動複屈折率計RETS−100(大塚電子株式会社製)を用いて、25℃、60%RH環境下、波長590nmにおけるフィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)を測定した。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
(式中、Nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、NyはNxに直角な方向でのフィルム面内の屈折率、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
【0100】
(2)耐ブリード性の評価
得られたフィルムを30mm×40mmの大きさに切り取り、温度85℃、相対湿度90%の高温高湿中に120時間放置した。その後フィルム表面を目視で観察し、ブリード物を確認した場合は、×、ブリード物を確認されなかった場合は、○として評価した。
【0101】
【表1】
*各種化合物は下記の通りである。
UV−1:トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン
UV−2:2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−3:2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン
UV−4:1,3−ビス[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス−{[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}−プロパン
LA−52:テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
【0102】
【表2】
【0103】
表1の比較例1−2では、紫外線吸収剤(B)の代わりにヒンダードアミン化合物を用いた場合、耐候試験後のレターデーション値が大きく低下した。また、比較例1−3では、β−ジケトン化合物(A)と紫外線吸収剤(B)の比率が、20:1〜5:2の範囲内にない場合、耐候性は十分なものではなかった。さらに、比較例1−4では、紫外線吸収剤(B)をβ−ジケトン化合物(A)よりも多く配合した結果、耐候試験中にブリード物が発生し、レタデーション値を測定することができなかった。
これらに対し、実施例1−1〜1−5および参考例1−1〜1−2における光学フィルムは、いずれも優れた耐候性と大きなレターデーション値を示すとともに、耐ブリード性に優れていることを確認することができた。
【0104】
また、表2の実施例2−1〜2−3より、種々のβ−ジケトン化合物(A)を用いた場合でも、紫外線吸収剤(B)と特定の比率で混合することによって、耐ブリード性を損なうことなく、大きなレターデーションと優れた耐候性を示すことを確認できた。