【文献】
F. Yun ,M.A. Reshichikov ,K. Jones ,P. Visconti ,H. Morkoc ,S.S. Park ,K.Y. Lee,Electrical, structural, and optical characterization of free-standing GaN template grown by hydride vapor phase epitaxy,Solid-State Electronics,Elsevier Science Ltd.,2000年12月 1日,Volume44,Issue 12,Pages 2225-2232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記AlxGayInzNウェーハのAlxGayInz側には機械研磨スクラッチが存在し、前記化学機械研磨により該機械研磨スクラッチが除去される、請求項1または2に記載の製造方法。
フリースタンディングGaNウェーハの製造方法であって、GaNウェーハのGa側を、コロイダルシリカスラリーを用いて化学機械研磨した後に、該GaNウェーハから残留コロイダルシリカ粒子を洗浄により除去する工程を有する製造方法。
【発明の概要】
【0014】
本発明は概して、優れた表面品質をGa側にて有するAl
xGa
yIn
zN(式中、0<y≦1およびx+y+z=1)ウェーハに関し、また、そのようなウェーハの製造方法にする。
【0015】
本発明の1つの要旨は、そのようなタイプの高品質Al
xGa
yIn
zNウェーハであって、ウェーハのGa側における10×10μm
2面積内で1nm未満の根二乗平均(RMS)粗さを特徴とする表面粗さを有するウェーハに関する。
【0016】
徐々に好ましさの程度が高くなる範囲で、そのようなウェーハのGa側でのRMS表面粗さは次の範囲内にある:(1)10×10μm
2面積内で0.7nm未満;(2)10×10μm
2面積内で0.5nm未満;(3)2×2μm
2面積内で0.4nm未満;(4)2×2μm
2面積内で0.2nm未満;および(5)2×2μm
2面積内で0.15nm未満。
【0017】
本発明によるAl
xGa
yIn
zNウェーハは好ましくは、原子間力顕微鏡で観察した場合にそのGa側における規則的なステップ構造を特徴とする。
【0018】
本発明によるAl
xGa
yIn
zNウェーハは好ましくは、そのGa側におけるAl
xGa
yIn
zNウェーハの結晶欠陥が1μm未満の直径を有する小さいピットを構成することを特徴とする。そのような寸法を有する小さいピットは原子間力顕微鏡(AFM)および走査型電子顕微鏡(SEM)技術のいずれによっても容易に認められるが、同時に、このようなピットはAl
xGa
yIn
zNウェーハ表面に著しいダメージを与えるものでなく、よって、後にその上に成長するAl
xGa
yIn
zN結晶の品質を損なうものではない。
【0019】
このような高品質Al
xGa
yIn
zN結晶ウェーハは、シリカまたはアルミナを含有する化学的機械研磨(CMP)スラリー組成物を用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハブランク(blank、または未加工ウェーハ)をそのGa側にて化学的機械研磨(CMP)することによって容易に製造される。そのようなCMPプロセスにより、Al
xGa
yIn
zNウェーハの結晶欠陥(直径1μm未満の小さいピットにより確認される)を容易に視認可能にすることができる。
【0020】
本発明のもう1つの要旨は、上述の本発明のAl
xGa
yIn
zNウェーハ上に成長したエピタキシャルAl
x'Ga
y'In
z'N膜(式中、0<y'≦1およびx'+y'+z'=1)を含むエピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体に関する。そのようなエピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体は好ましくはウルツ鉱型結晶性薄膜を含むが、特定の半導体、電子または光電子用途に対して適切な任意の他の適当な形態または構造であってよい。このエピタキシャル膜の組成はウェーハ基板の組成と同様であっても、異なっていてもよい。エピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体は、上述の本発明のAl
xGa
yIn
zNウェーハ上に順次成長した、組成またはドーピングの異なるいくつかのエピタキシャルAl
x'Ga
y'In
z'N膜を含んでいてよい。エピタキシャル膜はグレーデッド組成を有していてよく、即ち、エピタキシャル膜の組成は基板とエピタキシャル膜との間の境界からの距離につれて変化してよい。本明細書において使用する場合、用語「薄膜」は約100μm未満の厚さを有する材料層を意味する。
【0021】
また、本発明のもう1つの要旨は、上述の本発明のAl
xGa
yIn
zNウェーハ上に成長した少なくとも1つのそのようなエピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体を含む光電子デバイスに関する。
【0022】
本発明の更なる要旨は、上述の本発明のAl
xGa
yIn
zNウェーハ上に成長した少なくとも1つのそのようなエピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体を含むマイクロ電子デバイスに関する。
【0023】
本発明の更なる要旨は、上述の本発明のAl
xGa
yIn
zNウェーハ上に成長したエピタキシャルAl
xGa
yIn
zN結晶構造体を含むAl
xGa
yIn
zNブールに関する。ブール(boule:または元結晶)とは、少なくとも2枚のウェーハへとスライスできるものとして定義される。Al
xGa
yIn
zNブールは、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)、有機金属塩化物(MOC)法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)、昇華法、液相成長法などの任意の適当な方法で成長させることができる。
【0024】
更なる要旨において、本発明はAl
xGa
yIn
zNウェーハをそのGa側にて化学的機械研磨(CMP)する方法であって、
200nm未満の粒子寸法を有する研磨アモルファスシリカ粒子と、
少なくとも1種の酸と、
場合により、少なくとも1種の酸化剤と
を含むCMPスラリーを用い、CMPスラリーのpH値は約0.5〜約4の範囲にある方法を意図する。
【0025】
CMPスラリー中の研磨アモルファスシリカ粒子は、例えばヒュームドシリカまたはコロイダルシリカを含み得る。CMPスラリー中のアモルファスシリカ粒子は約10nm〜約100nmの範囲にある平均粒子寸法を有することが好ましい。
【0026】
好ましい構成上の要旨において、本発明のCMPスラリーは少なくとも1種の酸化剤、例えば過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸などを含む。
【0027】
そのようなCMPスラリーのpH値は約0.6〜約3の範囲にあることが好ましく、約0.8〜約2.5の範囲にあることがより好ましい。
【0028】
本発明の更なる要旨は、Al
xGa
yIn
zNウェーハをそのGa側にて化学的機械研磨(CMP)する方法であって、
200nm未満の粒子寸法を有する研磨コロイダルアルミナ粒子と、
少なくとも1種の酸と、
場合により、少なくとも1種の酸化剤と
を含むCMPスラリーを用い、CMPスラリーのpH値は約3〜約5の範囲にある方法に関する。
【0029】
CMPスラリー中の研磨コロイダルアルミナ粒子は約10nm〜約100nmの範囲にある粒子寸法を有することが好ましい。
【0030】
好ましい構成上の要旨において、本発明のCMPスラリーは、少なくとも1種の酸化剤、例えば過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸などを含む。
【0031】
そのようなCMPスラリーのpH値は約3〜約4の範囲にあることが好ましい。
【0032】
本発明の更なる要旨は、Al
xGa
yIn
zNウェーハをそのGa側にて化学的機械研磨(CMP)することであって、
200nm未満の粒子寸法を有するアモルファスシリカ粒子と、
少なくとも1種の塩基と、
場合により、少なくとも1種の酸化剤と
を含むCMPスラリーを用い、CMPスラリーのpH値は約8〜約13.5の範囲にある方法に関する。
【0033】
そのようなCMPスラリー中のアモルファスシリカ粒子は約10nm〜約100nmの範囲にある粒子寸法を有するヒュームドシリカ粒子、または約10nm〜約100nmの範囲にある粒子寸法を有するコロイダルシリカ粒子を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の実施に有用な塩基は、これらに限定されるものではないが、アンモニア、アルカノールアミンおよび水酸化物、例えばKOHまたはNaOHを含む。アンモニアおよびアルカノールアミンはCMPスラリーを安定化するようにも機能するので特に好ましい。
【0035】
そのようなCMPスラリーは少なくとも1種の酸化剤、例えば過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸などを含む。
【0036】
そのようなCMPスラリーのpH値は約9〜約13の範囲にあることが好ましく、pH値が約10〜約11の範囲にあることがより好ましい。
【0037】
本発明の更なる要旨は、Al
xGa
yIn
zNウェーハの結晶欠陥密度を容易に測定するためにAl
xGa
yIn
zNウェーハのそのGa側における結晶欠陥を強調する方法であって、
Al
xGa
yIn
zNウェーハを供給する工程、
上述の本発明のCMP方法の1つに従って、ウェーハをそのGa側にて化学的機械研磨する工程、
研磨したAl
xGa
yIn
zNウェーハを洗浄および乾燥する工程、および
ウェーハ中の欠陥密度を測定するために原子間力顕微鏡または走査型電子顕微鏡でウェーハをスキャンする工程を含む方法に関する。
【0038】
CMPプロセスは本明細書に上述したような酸性シリカスラリーを用いて実施することが好ましい。
【0039】
また、本発明のもう1つの要旨は、高品質Al
xGa
yIn
zNウェーハを製造する方法であって、
約100μm〜約1000μmの範囲にある厚さを有するAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクを供給する工程、
場合により、Al
xGa
yIn
zNウェーハの内部応力を低下させる工程、
場合により、約5μm〜約15μmの範囲にある平均粒子寸法を有する研磨材を含むラッピングスラリーを用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクをそのN側にてラッピングする工程、
場合により、約0.1μm〜約6μmの範囲にある平均粒子寸法を有する研磨材を含む機械研磨スラリーを用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクをそのN側にて機械研磨する工程、
場合により、約5μm〜約15μmの範囲にある平均粒子寸法を有する研磨材を含むラッピングスラリーを用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクをそのGa側にてラッピングする工程、
約0.1μm〜約6μmの範囲にある平均粒子寸法を有する研磨材を含む機械研磨スラリーを用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクをそのGa側にて機械研磨する工程、
少なくとも1種の化学反応物質と200nm未満の平均粒子寸法を有する研磨コロイダル粒子とを含むCMPスラリーを用いてAl
xGa
yIn
zNウェーハをそのGa側にて化学的機械研磨する工程、および
場合により、Al
xGa
yIn
zNウェーハの内部応力を更に低下させ、および表面品質を向上させるようにマイルド(または穏やかに)エッチングする工程を含み、得られるAl
xGa
yIn
zNウェーハは、ウェーハのGa側における10×10μm
2面積内で1nm未満の根二乗平均(RMS)表面粗さを有する方法に関する。
【0040】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクは任意の適当な方法により、例えば(1)Al
xGa
yIn
zNブールを成長させ、その後、これをウェーハブランクへとスライスすること、あるいは(2)厚いAl
xGa
yIn
zN膜を異種基板上に成長させ、その後、この厚い膜を基板から分離することにより作製できる。ウェーハブランクはc軸がウェーハ表面に対して垂直になるように向き決めされていてよく、あるいはウェーハブランクは後のエピタキシー成長、デバイス加工またはデバイス設計を容易にするように意図的にわずかに食違って(misorient)いて(c軸がウェーハ表面に対して垂直でなくて)よい。
【0041】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクは、例えばそのようなAl
xGa
yIn
zNウェーハとこれがその上で成長する異種基板との間の温度係数および格子定数の相違によって生じる内部応力を低下させるためのプロセス(または処理)に付してよい。内部応力の低下は、Al
xGa
yIn
zNウェーハを熱アニールすること、およびウェーハを化学エッチングすることのいずれによっても実施できる。
【0042】
熱アニールは窒素またはアンモニア雰囲気中、高温(または上昇した温度、例えば約700℃〜約1000℃)にて約1分間〜約1時間実施することが好ましい。
【0043】
Al
xGa
yIn
zNウェーハの化学エッチングはこのウェーハから表面材料の層を除去し、これにより該ウェーハの内部応力を緩和するように機能する。化学エッチングプロセスはウェーハの厚さにおいて100μm未満の表面材料を除去することが好ましく、より好ましくは厚さ10μm未満である。
【0044】
Al
xGa
yIn
zNウェーハは、高温にて非常に強い酸、例えば硫酸、リン酸またはそれらの組合せによって、および高温にて非常に強い塩基、例えば溶融KOHまたはNaOHによってのいずれでも化学エッチングできる。
【0045】
本発明の実施に好都合に用いられるラッピングスラリー組成物は任意の適当な研磨材、これらに限定されるものではないが、例えばダイアモンド粉末(powder:または微粉)、シリコンカーバイド粉末、ボロンカーバイド粉末およびアルミナ粉末などを含む研磨材を含んでいてよい。好ましくは、ラッピングスラリーは約6μm〜約10μmの範囲にある平均粒子寸法を有するダイアモンド粉末を含む。より好ましくは、2種またはそれ以上のラッピングスラリーでAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクをラッピングし、各々のより後のラッピングスラリーは段々とより小さくなる平均寸法を有する研磨材を含む。例えば、Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクは、約8μm〜約10μmの平均寸法を有する研磨材を含む第1スラリーによって、その後、約5μm〜約7μmの平均寸法を有する研磨材を含む第2スラリーによってラッピングしてよい。
【0046】
同様に、本発明において有用な機械研磨スラリーは、これらに限定されるものではないが、ダイアモンド粉末、シリコンカーバイド粉末、ボロンカーバイド粉末およびアルミナ粉末などを含む任意の適当な研磨材を含んでいてよい。約0.1μm〜約3μmの範囲にある平均粒子寸法を有するダイアモンド粉末が特に好ましい。また、機械研磨工程も2種またはそれ以上の機械研磨スラリーを適用してもよく、各々のより後の機械研磨スラリーは次第により小さくなる平均寸法を有する研磨材を含む。例えば、約2.5μm〜約3.5μmの平均寸法を有する研磨材を含む第1機械研磨スラリーを用いることができ、その後、約0.75μm〜約1.25μmの平均寸法を有する研磨材を含む第2機械研磨スラリーを、その後、約0.35μm〜約0.65μmの平均寸法を有する研磨材を含む第3機械研磨スラリーを、その後、約0.2μm〜約0.3μmの平均寸法を有する研磨材を含む第4機械研磨スラリーを、そして最後に、約0.1μm〜約0.2μmの平均寸法を有する研磨材を含む第5機械研磨スラリーを用いることができる。
【0047】
CMPスラリーは少なくとも1種の化学反応物質を含み、これは酸および塩基のいずれであってもよい。酸の場合にはCMPスラリーのpH値は約0.5〜約4の範囲にある値に調節することが好ましく、代わりに塩基である場合にはそのようなスラリーのpH値は約8〜約13.5の範囲にある値に調節することが好ましい。
【0048】
CMPの後、Al
xGa
yIn
zNウェーハは、ウェーハの応力を更に低下させ、および表面品質を向上させるための追加のプロセスに付してよい。この目的のためにはマイルド(または穏やかな)エッチングが好ましい。マイルドエッチングは、ダメージを受けていないGa側表面をエッチングすることなく、仕上げCMP研磨からのGa側表面にあるいくらかの残留表面ダメージを除去でき、よって、表面品質を向上させることができる。
また、マイルドエッチングはN側表面のダメージも除去でき、よって、表面ダメージにより生じるウェーハにおけるストレスを低下させることができる。また、このマイルドエッチングはN側表面をマット仕上げすることもできる。例えば、ウェーハは塩基(例えばKOHまたはNaOH)の水溶液または酸(例えばHF、H
2SO
4またはH
3PO
4)の水溶液中で、水溶液の沸点(典型的には約100℃)未満の温度にてわずかにエッチングすることができる。
【0049】
本発明の他の要旨、特徴および態様は次の説明および特許請求の範囲からより十分に明らかになるであろう。
【0050】
本発明による高品質Al
xGa
yIn
zNウェーハの製造は、以下により十分に説明するような、フリースタンディングAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクの作製、ラッピング、機械研磨、化学的機械研磨および内部応力の低下を含むプロセス工程によって容易に行われる。
【0051】
フリースタンディングAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクは様々な任意の適当な方法によって得られる。1つの方法は、まずAl
xGa
yIn
zNブールを成長させ、その後、これをスライスしてウェーハブランクとすることを含むものである。Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクを作製するもう1つの方法は、(1)例えばハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)、有機金属塩化物(MOC)法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)、昇華法などの適当な方法を用いて、厚いAl
xGa
yIn
zN膜を異種基板上に成長させる工程、およびその後(2)異種基板を研磨またはエッチングすることによって、レーザ誘起リフトオフプロセスによってまたは他の適当な技術によって、異種基板を厚いAl
xGa
yIn
zN膜から分離する工程を利用するものである。
【0052】
一例として、HVPEプロセス技術を用いて、約400μm厚さのGaN膜をサファイア基板上に成長させることができる。
【0053】
そのようなウェーハブランクの結晶方位を識別するため、例えばフラットなどのマークがウェーハに形成されていてよい。Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクは、後続のウェーハブランクのマウントおよび加工が容易なように、例えば粒子線によって、円形にされていてよい。
【0054】
フリースタンディングAl
xGa
yIn
zNウェーハブランクを取付け具(または治具)にマウントすることにより、必要なとおりに容易にラッピングまたはポリッシング(または研磨)することができる。ウェーハブランクはウェーハブランクを保持するための凹部を有するテンプレート(または型板)上にマウントすることができる。別法では、ウェーハブランクは平坦なテンプレート上に、例えば(1)そのようなテンプレートをホットプレート上で加熱し、(2)そのようなテンプレートにワックスを塗布(または適用)し、および(3)ウェーハブランクをワックス塗布テンプレートに対して押し付けることによって、マウントすることができる。テンプレートが冷えた後、ワックスは固まって、ウェーハブランクをテンプレート上に保持するように機能する。
【0055】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクがAl
xGa
yIn
zNブールから得られたものであり、比較的厚く、均一である場合、そのようなウェーハブランクをマウントするために凹型テンプレートを用いることができ、これはワックス塗布テンプレートよりもプロセス時間が短く、取外しが容易で、および汚染が少ないという利点がある。
【0056】
他方、より壊れやすく、薄く、または厚さがより不均一なAl
xGa
yIn
zNウェーハブランク、例えばHVPEプロセスにより得られるウェーハブランクの場合には、凹型テンプレートを用いることは、ラッピングおよび/またはポリッシングプロセスの間にAl
xGa
yIn
zNウェーハを壊すという危険性を伴うため、好ましさが劣るであろう。
【0057】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクをマウントするために用いる取付け具は、各ラッピングまたはポリッシング装置に対して適切であり、これに適合する任意の適当なタイプのものであってよい。Al
xGa
yIn
zNウェーハの厚さ均一性を向上させる目的で、平面を規定する3つのアジャスタブル・ダイアモンド・ストップを含む特別のラッピング取付け具を利用することができる。ストップにより規定される平面は取付け具表面に対して平行であり、この表面から所定の距離だけ離間している。3つのダイアモンド・ストップはAl
xGa
yIn
zNウェーハから表面材料が更に除去されるのを防止するストップ・ポイントとして機能するので、そのような所定の距離はラッピングしたAl
xGa
yIn
zNウェーハの最小厚さを規定する。
【0058】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクがその内部に存在する内部応力によってわずかに湾曲しまたは歪んでいる場合、ウェーハをテンプレート上にワックス・マウントする間にウェーハブランクへ加重することが好ましい。そのような目的のための加重のタイプおよび大きさは当該技術分野の知識の範囲内で容易に決定できる。
【0059】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクを適切にマウントした後、ウェーハに平坦な表面を形成するように、定盤表面に研磨粒子(または砥粒)が埋め込まれている定盤(またはラッピングプレート)に対してウェーハブランクを押し付けることによってこれをラッピングできる。ラッピングプロセスを制御するようにウェーハへの圧力を調節できる。
【0060】
同じ研磨材および定盤回転速度を用いる場合、Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクのラッピング速度(またはレート)は研磨材の粒子寸法の増大に伴って増加する。よって、より大きな研磨粒子はより高速のラッピング速度をもたらすが、より粗いラップ表面を形成する。
【0061】
また、ラッピング速度は使用する研磨材材料の硬度にも依存する。例えば、ダイアモンド粉末はシリコンカーバイド粉末よりも高速のラッピング速度を有し、また、シリコンカーバイド粉末はアルミナ粉末よりも高速のラッピング速度を有する。
【0062】
また、ラッピング速度は使用する定盤のタイプにも依存する。例えば、銅の定盤は鋳鉄板よりも低速のラッピング速度を有するが、銅の定盤は鋳鉄板によって形成されるよりも滑らかなラップ表面をもたらす。
【0063】
最良のラッピング効果を得るためには、例えば処理時間、表面仕上げおよび製造コストなどの多数の因子を考慮しなければならず、研磨材材料、粒子寸法、ラッピング速度およびウェーハ圧力の多数の組合せを本発明の実施に適用できる。Al
xGa
yIn
zNウェーハのクラック発生(または割れもしくは欠け)の可能性を低減するために、5psi、好ましくは2psi未満の圧力が好ましい。処理時間を短縮するために、1次研磨には50μm/時より大きいラッピング速度が好ましい。例えばダイアモンド、シリコンカーバイド、ボロンカーバイドおよびアルミナなどの様々な種類の研磨材材料のなかでも、ダイアモンドスラリーは、材料除去速度が大きく、より良好な表面仕上げを形成するので好ましい。
【0064】
Al
xGa
yIn
zNウェーハブランクのラッピングは単一工程または複数工程(後続の各ラッピング工程では徐々に粒子寸法が小さくなる研磨材を用いる)のいずれによっても行い得る。各ラッピング工程の後、次の工程に進む前に、前工程からの表面ダメージが実質的に除去されていることを確認するために光学顕微鏡を用いて表面を検査してよい。
【0065】
本発明の1つの例示的な態様において、1psiの圧力下で鋳鉄定盤上でAl
xGa
yIn
zNウェーハをラッピングするための9μmのダイアモンド研磨材を含む1種のラッピングスラリーを用いる。ダイアモンド研磨材粒子の寸法はダイアモンドスラリー製造者により規定されており、これはスラリー中のダイアモンド粒子の平均寸法である。
【0066】
本発明のもう1つの例示的な態様において、2種のラッピングスラリーであって、鋳鉄定盤上でAl
xGa
yIn
zNウェーハをラッピングするための9μmのダイアモンド研磨材を含む第1ラッピングスラリーと、所望の表面仕上げを得るために銅板上で同じウェーハをラッピングするための6μmのダイアモンド研磨材を含む第2スラリーとを用いる。
【0067】
Al
xGa
yIn
zNウェーハをラッピングした後、滑らかな表面形態を得るためにこれを機械研磨することができる。機械研磨プロセスの間、研磨材粒子を有する研磨パッドに対してAl
xGa
yIn
zNウェーハを押し付ける。典型的には、研磨プロセスはラッピングよりも(同一寸法のダイアモンドスラリーを用いたとしても)良好な表面仕上げを提供する。研磨は単一工程または複数工程(後続の各研磨工程では徐々に粒子寸法が小さくなる研磨材を用いる)のいずれによっても行い得る。
【0068】
機械研磨プロセスの後、Al
xGa
yIn
zNウェーハ表面は比較的滑らかになる。
図1は、鏡面仕上げが得られるまで1μmのダイアモンドスラリーで機械研磨した後のGaN表面のノマルスキー光学顕微鏡写真(×100)を示す。しかしながら、このようなAl
xGa
yIn
zNウェーハは著しい表面および準表面ダメージがまだ存在するのでAl
xGa
yIn
zN結晶をホモエピタキシャル成長させるには適さない。この表面ダメージは、
図2に示すように、原子間力顕微鏡(AFM)の下で視認できる高密度な研磨スクラッチを特徴とする。
【0069】
そのような表面および準表面ダメージならびに研磨スクラッチを除去するため、Al
xGa
yIn
zNウェーハを化学的機械研磨(CMP)することが好ましい。
【0070】
Al
xGa
yIn
zNウェーハのGa側を化学的機械研磨するのに有効な第1CMPスラリーは酸および200nm未満の粒子寸法を有する研磨アモルファスシリカ粒子、例えばヒュームドシリカまたはコロイダルシリカなどを含む。そのようなCMPスラリーのpH値は好ましくは約0.5〜約4の範囲にある。また好ましくは、そのようなCMPスラリーは酸化剤、例えば過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸なども含む。
【0071】
図3および4は、0.8のpH値を有する酸性コロイダルシリカCMPスラリーを用いて約1時間化学的機械研磨したGaNウェーハのノマルスキー光学顕微鏡写真およびAFM写真を示す。GaNウェーハはCMPの前にまず、1μmのダイアモンドスラリーで研磨した。基板にはわずかに欠陥があるものの、GaN表面は非常に滑らかであり、2×2μm
2面積内で約0.15nm、10×10μm
2面積内で約0.5nmのRMS表面粗さを有する。更に、これまで見られなかったステップ構造がAFMの下、GaN表面に観察される。このようなステップ構造の存在は、CMPプロセスが前の機械研磨による研磨スクラッチを除去するのに奏功したことを示している。そのようなスラリーを使用するCMP速度は、例えば約2μm/時のオーダーであり得る。
【0072】
更に、CMPプロセスが表面にある準表面ダメージをも除去したことを確認するため、CMPプロセス後のウェーハを強いエッチャントH
3PO
4で、180℃にて5分間エッチングする。このエッチング条件では、GaN表面のGa側にある結晶欠陥ならびに表面および準表面ダメージは良好な結晶性材料よりも大きい速度でエッチングされ、エッチピットを形成する。ピットの寸法および数は原子間力顕微鏡で調べることができる。熱いH
3PO
4エッチングの後、CMP研磨ウェーハ(またはCMPポリッシュドウェーハ)にはいくつかのエッチピットが見られるが、エッチピットの密度はCMP研磨した表面に存在したピットの密度と同じである。しかしながら、ピットの寸法は大きくなる。比較のために、CMPプロセスで完全に研磨していないウェーハ(即ち、CMP処理時間がより短く、よって、研磨ダメージが残存している)には、H
3PO
4で180℃にて5分間エッチングした後、より多くのエッチピットが見られ、このピットの多くは線に沿っている。
このことはCMPプロセスが完了しないと表面および準表面ダメージが完全に除去されないことを示している。
【0073】
酸化剤は好都合に酸性CMPスラリーに添加することができる。過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸を酸化剤として使用する場合、研磨速度は2μm/時より大きく、RMS表面粗さは2×2μm
2面積内で0.2nm未満、10×10μm
2面積内で0.5nm未満である。Al
xGa
yIn
zNウェーハ表面におけるステップ構造がAFMの下で容易に観察される。
【0074】
Al
xGa
yIn
zNウェーハのGa側を化学的機械研磨するのに有効な第2CMPスラリーは酸および200nm未満の粒子寸法を有する研磨コロイダルアルミナ粒子を含む。そのようなCMPスラリーのpH値は好ましくは約3〜約4の範囲にある。また好ましくは、そのようなCMPスラリーは酸化剤、例えば過酸化水素またはジクロロイソシアヌル酸なども含む。
【0075】
図7は、酸化剤として過酸化水素を含む酸性コロイダルアルミナCMPスラリー(pH=3.6)で1時間化学的機械研磨した後のGaN表面のAFM写真を示す。ステップ構造がAFMの下で観察され、このことは酸性コロイダルアルミナスラリーがGaN表面から機械的ダメージを除去するのに有効であることを示している。しかしながら、同じ研磨操作条件では、コロイダルアルミナ系スラリーはシリカ系スラリーよりもはるかに遅い研磨速度(約0.1μm/時)を有する。遅い研磨速度のために、酸性コロイダルアルミナCMPスラリーによる1時間の研磨の後も多くの研磨スクラッチが依然として存在する。
このコロイダルアルミナ系スラリーにより表面/準表面ダメージを完全に除去するには、はるかに長い研磨時間が必要である。
【0076】
Al
xGa
yIn
zNウェーハのGa側を化学的機械研磨するのに有効な第3CMPスラリーは塩基および200nm未満の粒子寸法を有するアモルファスシリカ粒子(ヒュームドシリカおよびコロイダルシリカのいずれでもよい)を含む。そのようなCMPスラリーのpH値は好ましくは約8〜約13.5の範囲にある。
【0077】
図5および6は、11.2のpH値を有する塩基性コロイダルシリカスラリーを用いて約1時間化学的機械研磨したGaNウェーハのノマルスキー光学顕微鏡写真およびAFM写真を示す。この表面は酸性シリカスラリーにより得られる表面仕上げと比較して、より凸凹に見え、研磨したときのスクラッチをかなり多く有する。更に、このスクラッチは1μmのダイアモンド粉末を含むダイアモンドスラリーで機械研磨した後のGaN表面におけるものより大きく、より深い。このことはより大きな粒子または粒子凝集物が塩基性シリカスラリー中に存在することを示している。興味深いことに、ステップ構造も観察される。ステップ構造の存在は、前の機械研磨による表面ダメージが除去されていることを示すが、スラリー中により大きい粒子が存在することにより新たなダメージが導入される。
従って、研磨前に塩基性シリカスラリーを濾過して、大きい粒子を除去し、およびそのようなスラリー中の研磨粒子が200nm未満の粒子寸法を有することを確保するのが望ましい。
【0078】
pH変更のために水酸化物を用いることに加えて、塩基性シリカスラリーのpHはアンモニアまたはアルカノールアミンによって調節してよい。アンモニアまたはアルカノールアミンで安定化させたスラリーはより滑らかな研磨面を形成し、よって、水酸化物系スラリーよりも好ましい。
【0079】
CMPプロセスの安定性を向上させるため、CMPプロセスの間、周囲の湿度および温度を制御することが好都合であろう。
【0080】
化学的機械研磨の後、Al
xGa
yIn
zNウェーハを当該技術分野において既知の技術を用いて洗浄および乾燥してよい。また、仕上げ研磨ウェーハから残りの表面および準表面ダメージを除去するためにマイルドエッチングを用いることもできる。マイルドエッチングの条件は、ダメージを受けていないGa側表面をエッチングせず、またはある限度内でエッチングしつつ、仕上げ研磨によるGa側表面にあるいくらかの残留表面ダメージを除去するように選択する。また、マイルドエッチングは、N側表面にあるダメージを除去して、N表面のダメージにより生じたウェーハの応力を低下させることもできる。また、このマイルドエッチングはN表面をマット仕上げすることもできる。例えば、ウェーハは塩基(例えばKOHまたはNaOHなど)の水溶液または酸(例えばHF、H
2SO
4またはH
3PO
4など)の水溶液中で100℃未満の温度にてわずかにエッチングすることができる。
【0081】
Al
xGa
yIn
zNウェーハは内部応力を受け得、これはウェーハを湾曲させ、または反らさせる。Al
xGa
yIn
zNウェーハの熱アニールまたは化学エッチング(これらは一連のウェーハ製造工程の前、後またはその間に実施してよい)により、そのような内部応力を緩和させることができる。
【0082】
Al
xGa
yIn
zNウェーハがその表面に大きなピットを有し、製造プロセスによるピット内に汚染物質が捕捉されている場合、ウェーハ作製工程の間に化学エッチングおよび洗浄工程を有してピットから汚染物質を除去することが有益である。
【0083】
本発明の1つの態様において、Al
xGa
yIn
zNウェーハを窒素雰囲気中、1000℃以下の温度にて熱アニールに付す。好ましくは、アニール温度は約700℃〜約1000℃の範囲にあり、熱アニール時間は約1分間〜約1時間の範囲にある。
【0084】
本発明のもう1つの態様において、Al
xGa
yIn
zNウェーハを化学エッチングに付し、これは好都合に、ダメージを受けた表面材料をAl
xGa
yIn
zNウェーハから除去し、および表面ダメージにより生じたウェーハの湾曲および反りを低減する。
【0085】
Al
xGa
yIn
zNウェーハの化学エッチングは、高温で非常に強い酸または塩基中にウェーハを浸漬することによって実施できる。150℃より高い温度の硫酸またはリン酸はAl
xGa
yIn
zNウェーハをエッチングできる。別法では、溶融水酸化カリウムまたはナトリウムもAl
xGa
yIn
zNウェーハをエッチングできる。エッチング条件、例えばエッチング温度およびエッチング時間などは、好ましくは、厚さ100μm未満および好ましくは厚さ10μm未満の表面材料を除去するように制御される。
【0086】
例えば酸性シリカCMPスラリー(pH=0.8)を用いて約1時間、GaN表面を化学的機械研磨した後に小さなピットが形成され、これはGaNウェーハの結晶格子における転移に起因し得る。ピットの直径は典型的には1μm未満、およびより典型的には0.5μm未満である。ピットは原子間力顕微鏡で撮像した場合、明瞭なエッジのない丸形に見える。ウェーハを完全にCMP研磨し、そして例えばH
3PO
4により180℃にて5分間エッチングした場合、ピットの寸法は大きくなるが、ピットの密度は同じままであり、即ち、それ以上のピットは形成されない。更に、CMP研磨ウェーハのエッチングにより形成されるピットは、原子間力顕微鏡で撮像した場合、六角形に見える。
【0087】
図8はGaN表面のAFM写真を示し、明瞭に視認可能なピットが存在している。GaN表面は酸性コロイダルシリカCMPスラリー(pH=0.8)を用いて約1時間化学的機械研磨した。
【0088】
また、
図9は酸性コロイダルシリカCMPスラリー(pH=0.8)により1時間化学的機械研磨したGaNウェーハの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示し、このようなGaNウェーハの欠陥密度を測定するのに数えることのできる視認可能なピットが存在している。GaNウェーハ表面を化学的機械研磨しないと、そのようなピットはAFMまたはSEMで観察することができない。
【0089】
従って、AFMまたはSEM技術による後の欠陥密度測定のため、結晶欠陥を強調する(または明らかにするもしくは目立たせる)ようにAl
xGa
yIn
zNウェーハを準備するためにCMPプロセスを用いることができる。
【0090】
この欠陥強調技術は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、ウェット化学エッチングおよび光電気化学エッチングなどの他の技術よりも優れている。これらエッチング技術は一般的に過酷なエッチング条件下で実施され、エッチングしたAl
xGa
yIn
zNウェーハを、後にその上にAl
xGa
yIn
zN結晶材料をエピタキシャル成長させるのに不適当なものにする。
【0091】
これに対して、結晶欠陥を強調するためにCMPプロセスを用いることはAl
xGa
yIn
zNウェーハの結晶表面にダメージを与えず、よって、後の結晶成長を可能にする。