(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるカプセルは、低分子量の有機界面活性剤を、カプセルの全重量に基づいて、好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満、特に好ましくは0.00001重量%未満しか含まず、とりわけ低分子量の有機界面活性剤を含まない。界面活性剤を含まないとは、前記カプセルが検出可能な量の低分子量有機界面活性剤を含まないこと、および低分子量有機界面活性剤がカプセルの製造に使用されていないことを意味する。本発明によるカプセルはまた、例えばゼラチン、加工デンプンまたはペクチンといった、高分子量の保護コロイドを含まないことが好ましい。
【0011】
カプセルの全質量に対するコアの質量分率は、通常50重量%以上、好ましくは50〜99重量%、特に好ましくは60〜90重量%である。百分率は多数のカプセルについて測定された統計的平均値を指す。
【0012】
コア/シェル構造をもつ本発明のカプセルは、それぞれの場合に、内部に少なくとも1種の難水溶性または非水溶性の有機活性成分を含むコアを有する。コアは20℃で液体でも固体でもよい。コアが20℃で固体である場合、その固体は結晶質、一部結晶質または非晶質であり得る。コアが20℃で液体である場合、その液体は均一相または懸濁液であり得る。好ましくは、本発明によるカプセルのコアは20℃で液体である。
【0013】
本発明に係るカプセルの内部にあるコアは、コアの質量に基づいて、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%、とりわけ90重量%以上の、少なくとも1種の難水溶性または非水溶性の有機活性成分を含む。活性成分が、例えば熱の導入の結果として溶融されるか、または20℃ですでに液体であるために、カプセル化工程の前の製造方法の間に液体の形で存在する場合、コアは難水溶性または非水溶性の活性成分のみから成ることが好ましい。
【0014】
その組成のため、コアは好ましくは疎水性を示す、すなわち、コアは単に難水溶性または非水溶性である。
【0015】
本発明によるカプセルは通常1000μm未満の平均粒子径(d50値)、好ましくは0.05μm〜100μmの平均粒子径、さらに好ましくは0.5μm〜20μm、特に1μm〜10μmの粒子径を有する。
【0016】
d50値は、粒子の50重量%がそのd50値に対応する値より小さい直径をもち、粒子の50重量%がそのd50値に対応する値より大きい直径をもつものと定義される。d50値は、例えばISO 13320-1に準拠した光散乱(例:Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて作成できるような、粒度分布曲線から読み取ることができる。
【0017】
好ましくは、本発明によるカプセルは0.5〜20μm、特に1μm〜10μmの粒子径を有する。
【0018】
本発明によるカプセルのシェルは、通常1〜2000nm、好ましくは1〜200nmの平均シェル厚を有する。シェルの平均厚さとカプセルの平均直径との比は、好ましくは1:50〜1:500、特に好ましくは1:100〜1:200である。
【0019】
カプセルの平均粒子径およびシェルの厚さはTEM(透過電子顕微鏡法)によって測定することができる。平均粒子径は光散乱(静的および動的光散乱)の方法を用いて測定することができる。
【0020】
本発明によるカプセル内のコアの形状は任意であり、例えば不定形または球形であってよく、好ましくは球形である。
【0021】
適切な難水溶性または非水溶性の有機活性成分は、例えば食品および動物栄養の分野に、医薬品および化粧品用途のために、作物保護の分野で、またはプラスチック添加剤の分野で使用される有機化合物である。しかし、難水溶性または非水溶性の有機活性成分はまた、爆薬、ワックスまたは防虫剤であってもよい。本発明によるカプセルは、活性成分を一時的にまたは永続的に周囲から分離する必要があるすべての用途において有利に使用することができる。
【0022】
有機活性成分は、通常は炭素と水素の両方を含む化合物である。
【0023】
難水溶性の有機活性成分は通常、20℃の水への溶解性が10g/L未満、好ましくは1g/L未満、特に好ましくは0.1g/L未満である化合物である。
【0024】
食品および動物栄養の分野で使用される活性成分は、とりわけ、脂溶性ビタミン、例えばトコフェロール、ビタミンAとその誘導体、ビタミンDとその誘導体、ビタミンKとその誘導体、ビタミンFとその誘導体、または飽和および不飽和脂肪酸、さらにその誘導体および複合物、天然および合成香味料、芳香物質および香料、ならびに親油性色素、例えばレチノイド、フラボノイドまたはカロテノイドである。
【0025】
医薬品の分野で使用される活性成分は、とりわけ、麻酔薬および麻薬、抗コリン薬、抗うつ薬、精神刺激薬および神経弛緩薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、消炎剤、気管支拡張薬、心血管薬、細胞増殖抑制剤、充血剤(hyperemics)、高脂血症薬、鎮痙薬、テストステロン誘導体、トランキライザーまたはウイルス増殖抑制剤である。
【0026】
化粧品の分野で使用される活性成分は、例えば、香油、有機UVフィルター、染料、有機顔料、またはパンテノールなどのケア物質である。
【0027】
本発明に係るカプセル内の活性成分として使用できる好ましい染料は、例えばWO 2005/009604 A1の第9頁第18〜30行に記載されるような、栄養または化粧品の分野で承認されている天然または合成染料である。
【0028】
作物保護の分野のための活性成分は、親油性の農業用化合物、例えば、殺虫剤、殺菌剤、農薬、殺線虫剤、殺鼠剤、軟体動物駆除剤、成長調整剤および除草剤である。
【0029】
農薬(または農業用活性成分)という用語は、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、殺鼠剤、薬害軽減剤および/または成長調整剤の群から選択される少なくとも1種の活性成分を指す。好ましい農薬は殺菌剤、殺虫剤、殺鼠剤および除草剤である。上記クラスの2種以上の農薬の混合物も使用することができる。当業者はそのような農薬に精通しており、例えば、Pesticide Manual, 第14版(2006), The British Crop Protection Council(ロンドン)中に見つけることができる。
【0030】
プラスチック添加剤の分野で使用される活性成分は、例えば、UV安定剤などの光安定剤、難燃剤または酸化防止剤である。
【0031】
好ましくは、本発明に係るカプセルのコア内には、有機UVフィルターが難水溶性または非水溶性の有機活性成分として使用される。
【0032】
そうした有機UVフィルターの例としては、化粧品用途のために承認された以下の市販のUVフィルターがある(INCI命名法による):
PABA、ホモサラート(HMS)、ベンゾフェノン-3(BENZ-3)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(BMDBM)、オクトクリレン(OC)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(EMC、OMC)、p-メトキシケイヒ酸イソアミル(IMC)、エチルヘキシルトリアゾン(OT、ET)、ドロメトリゾールトリシロキサン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(DBT)、4-メチルベンジリデンカンファー(MBC)、3-ベンジリデンカンファー(BC)、サリチル酸エチルヘキシル(OS、ES)、エチルヘキシルジメチルPABA(OD-PABA、ED-PABA)、ベンゾフェノン-4(BENZ-4)、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(ビスオクチルトリアゾール、BOT)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(AT)、ポリシリコン15またはジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、およびこれらのUVフィルターの混合物。さらなるUVフィルターを同様に使用することができる:2,4,6-トリス(ビフェニル)-1,3,5-トリアジン(TBT)、メタノン1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]](CAS番号919803-06-8)、1,1-ジ(カルボキシ-(2',2'-ジメチルプロピル))-4,4-ジフェニルブタジエン、メロシアニン誘導体またはベンジリデンマロネートUVBフィルター、さらにまた、これらのUVフィルターの互いとの、または当局によってすでに承認されたUVフィルターとの混合物。
【0033】
特に好ましいのは、オクトクリレン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールまたはビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、およびこれらのUVフィルターの混合物である。
【0034】
原則として、難水溶性または非水溶性の有機活性成分は20℃で液体または固体であって良く、固体それ自体は、オイルのような適切な親油性溶媒中に溶解した形でまたは懸濁液として存在することもできる。
【0035】
好ましくは、本発明によるカプセル内で使用される難水溶性または非水溶性の有機活性成分は20℃で液体である。
【0036】
難水溶性および非水溶性の活性成分のほかに、本発明によるカプセルのコアはまた、それぞれの応用分野で通常使用されているオイルまたは溶媒のような疎水性助剤を含むことができる。望ましいUVフィルターのような、化粧品の活性成分の場合には、難水溶性および非水溶性の有機活性成分を、化粧品に用いられるような、典型的なオイル成分中に溶解または懸濁することができる。
【0037】
化粧品において慣用されているオイル成分は、例えば、パラフィン油、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチルステアリル、水添ポリイソブテン、ワセリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンおよびステアリン酸である。しかし、このリストは例示であって、網羅的なものではない。
【0038】
特に好ましいのは、本発明に係るカプセルのシェルを構築するために使用される非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体中に溶解可能または懸濁可能な、難水溶性または非水溶性の有機活性成分である。
【0039】
コアを直接取り囲む本発明によるカプセルのシェルは、金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子を含み、これらのナノ粒子は少なくとも1種のさらなる金属酸化物または半金属酸化物によって一緒に接合されており、ここで、ナノ粒子を接合しているさらなる金属酸化物または半金属酸化物は、非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の加水分解とその後の重縮合により形成されている。
【0040】
本発明によれば、金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子は通常、3nm〜500nm、好ましくは5nm〜300nm、さらに好ましくは5nm〜150nm、特に好ましくは10nm〜100nmの平均粒子径を有する。ナノ粒子の粒子径は公知の方法により測定することができ、例えばTEM(透過電子顕微鏡法)によって、または光散乱(静的および動的光散乱)の方法を用いて測定することができる。
【0041】
本発明に従って使用される金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子は、ほぼ球形であることが好ましい。
【0042】
ナノ粒子に適した金属酸化物または半金属酸化物は、特に、水に難溶性の酸化物である。本発明に従う適切な好ましい金属酸化物または半金属酸化物の例としては、TiO
2、ZrO
2、HfO
2、Fe
2O
3、ZnO、Al
2O
3およびSiO
2がある。特に好ましいのは、二酸化ケイ素(SiO
2)であり、特にシリカゲルの形をしたものである。
【0043】
本発明に従って使用される金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子は、好ましくは荷電した表面、特に好ましくは負に荷電した表面を有し、それによって凝集に対して安定化されている。特に好ましいのは、8より高いpHで、特に9〜10のpH範囲で、凝集に対して安定化されているナノ粒子である。
【0044】
本発明に従って使用される金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子は、特に好ましくはシリカゲルのナノ粒子、特にコロイド状シリカゲルのナノ粒子であり、ここで、該粒子はほぼ球形であり、無孔質であり、水に分散可能である。特に、これらの粒子は高密度のコアとシラノール基(Si-OH)で覆われた表面をもっている。凝集を防止するために、シリカゲル表面上のシラノール基の一部は、塩基との反応を介して脱プロトン化されている、すなわちアニオン変性されているか、またはAl
3+イオンとの反応を介してカチオン変性されている。本発明によれば、アニオン変性されたシリカゲルナノ粒子を用いることが好ましい。
【0045】
シリカ(シリカゲル)のナノ粒子は、例えば、Grace社からLUDOXという名称のもとに水性分散体の形で入手可能である。これらのシリカゲルナノ粒子の表面は、上述したように、ナノ粒子が互いに凝集するのを防止するために、負電荷または正電荷をもっている。本発明によれば、表面が負に荷電している(アニオン型)シリカゲルのナノ粒子は特に適していることが判明した。アニオン型シリカゲルの場合には、通常、ナトリウムカチオンまたはアンモニウムカチオンが負に荷電した表面に対する対イオンとしての役割を果たしている。
【0046】
本発明のカプセルに存在するさらなる金属酸化物または半金属酸化物(非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の加水分解とその後の重縮合により形成されたもので、ナノ粒子を互いに接合している)は通常、水に難溶性の酸化物である。本発明に従う適切な好ましい金属酸化物または半金属酸化物の例としては、TiO
2、ZrO
2、HfO
2、ZnO、Al
2O
3およびSiO
2がある。特に好ましいのは、二酸化ケイ素(SiO
2)であり、特にシリカゲルの形をしたものである。
【0047】
特に好ましいのは、ナノ粒子の金属酸化物または半金属酸化物、および非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の加水分解により形成された金属酸化物または半金属酸化物が、それぞれ二酸化ケイ素、特にシリカゲルである、本発明によるカプセルである。
【0048】
本発明に従って使用することができる非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体は、例えば、WO 2005/009604 A1の第10頁第1行〜第11頁第11行に記載されている。
【0049】
使用することができる非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体は、好ましくは、金属または半金属アルコキシドモノマー、金属エステル、半金属エステル、もしくは部分加水分解および部分縮合されたポリマー、またはこれらの混合物である。こうしたゾル-ゲル前駆体は有機活性成分と均一に混ざり合うことが好ましい。特に好ましくは、有機活性成分はゾル-ゲル前駆体中に均一に溶解され得るか、またはゾル-ゲル前駆体と有機活性成分は均一な溶液を形成し、適切な場合には、その混合物を加温または加熱することが必要である。あるいはまた、活性成分とゾル-ゲル前駆体を含む均一な溶液を提供するために、同様に水と不混和性であるか不十分にしか混ざり合わない適切な有機溶媒を使用することも可能である。
【0050】
適切かつ好ましいゾル-ゲル前駆体は、式M(R)
n(P)
mの化合物[式中、Mは金属または半金属、例えばSi、Ti、Zr、Hf、ZnまたはAl、好ましくはSiであり、Rは加水分解可能な置換基であって、nは2〜4の整数であり、Pは非重合性の置換基であって、mは0〜4の整数である]またはその部分加水分解されたもしくは部分縮合されたポリマーまたはそれらの混合物である。M-R結合の加水分解時に、RHが切断されて、M-OH結合が形成される。その後の縮合反応では、2つのM-OH断片が反応して、水の除去を伴ってM-O-M基を形成する。加水分解可能な置換基Rの例は、アルコキシ基、例えばメタノラート、エタノラートもしくはイソプロパノラートなど、またはカルボキシレート基、例えばアセテート、パルミテートもしくはステアレートなどである。
【0051】
特に、好ましいのは、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシランもしくはSi(OEt)
4)またはその部分加水分解もしくは部分縮合ポリマーまたはそれらの混合物を上記の方法で使用することである。特に好ましいのは、オルトケイ酸テトラエチルをゾル-ゲル前駆体として使用することである。
【0052】
本発明に係るカプセルのシェルは、特に活性成分としてUVフィルターを用いる場合には、透明であることが好ましい。
【0053】
本発明はさらに、少なくとも1種の難水溶性または非水溶性の有機活性成分を含むコアと、該コアを直接取り囲むシェルをそれぞれ含んでなる、コア/シェル構造をもつカプセルの製造方法を提供し、ここで、該シェルは金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子を含み、これらのナノ粒子は少なくとも1種のさらなる金属酸化物または半金属酸化物によって一緒に接合されており、ここで、ナノ粒子を接合しているさらなる金属酸化物または半金属酸化物は非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の加水分解とその後の重縮合により形成されており、
前記方法は、以下の工程:
i) 金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子を含む水相中に、少なくとも1種の非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体および少なくとも1種の難水溶性または非水溶性の有機活性成分を含む油相を、せん断力を用いて乳化することによって、水中油型エマルションを調製する工程;
ii) コアを取り囲むシェルを形成するために、該エマルションの水相のpHを、非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の加水分解とその後の重縮合が起こる値とする工程;
および
iii) 適切であれば、工程ii)で製造したコア/シェル構造をもつカプセルを精製および/または単離する工程;
を含んでなる。
【0054】
難水溶性または非水溶性の活性成分に関する好ましい実施形態、金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子に関する好ましい実施形態、非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体に関する好ましい実施形態、さらにまた、コア/シェル構造をもつカプセルの寸法および種々の成分の質量分率に関する好ましい実施形態は、すでに上述した説明中に見いだすことができる。
【0055】
工程i)には、金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子を含む水相中に、少なくとも1種の非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体および少なくとも1種の難水溶性または非水溶性の有機活性成分を含む油相を、せん断力を用いて乳化することによって、水中油型エマルションを調製する工程が記載される。
【0056】
せん断力を用いてエマルションを調製する方法は、基本的に当業者に知られている。従って、例えば、ファンタ(fanta)ボウルと乳棒、高速攪拌機、高圧ホモジナイザー、シェーカー、振動ミキサー、超音波発生器、乳化遠心分離機、コロイドミルまたはアトマイザーをエマルションの調製に用いることができる。それぞれの場合に、当業者は、所望の結果(例えば、エマルションの所望の液滴サイズ)に応じて、また、選択された供給材料の物理化学的性質(例えば、その粘度あるいは熱抵抗性)に応じて、適した方法および適切な乳化ツールを選択することができる。
【0057】
工程i)において、エマルション中の油相の割合は、エマルションの全質量に基づいて、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0058】
乳化される油相の全体的な質量における非水溶性または難水溶性のゾル-ゲル前駆体の質量の割合は、ゾル-ゲル前駆体テトラエトキシシランに基づいて、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲である。異なるゾル-ゲル前駆体を用いる場合は、油相の全体的な質量に対するその成分の質量分率を、前駆体化合物のそれぞれのモル質量を考慮に入れて計算することができる。
【0059】
工程i)における好ましいゾル-ゲル前駆体はテトラエトキシシラン(Si(OEt)
4)である。
【0060】
金属酸化物または半金属酸化物のナノ粒子は、乳化工程前の水相中に、水相の質量に基づいて、通常0.01〜4重量%、好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の濃度で存在する。
【0061】
好ましいシリカゲルナノ粒子の場合、用いるコロイド状シリカゲルの質量は、油相の質量に基づいて、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。
【0062】
工程i)でのエマルションの調製は、通常1〜90℃、好ましくは15〜25℃、特に19〜23℃の温度範囲で実施される。
【0063】
所望の油滴サイズを有するエマルションが乳化工程i)で形成された後、工程ii)において、例えば酸または塩基を添加することにより、適切なpHにすることによって、油/水境界でゾル-ゲル前駆体の加水分解と重縮合が引き起こされる。
【0064】
好ましくは、工程ii)において、7〜13のpH、好ましくは7.5〜13、特に8〜11のpHがエマルションの水相において設定される。
【0065】
原理的に、工程ii)の終了時に得られたカプセルの懸濁液はまた、添加剤、例えば非イオン性、カチオン性もしくはアニオン性ポリマーまたは界面活性剤、あるいはそれらの混合物を添加することによって、安定化することができる。しかし、本発明に係るカプセルは、その製造時に、界面活性剤の使用が大幅にまたは好ましくは完全に不要になる、という事実の点で注目に値する。
【0066】
工程iii)において、工程ii)で製造されたコア/シェル構造をもつカプセルは、適切であれば、精製および/または単離される。適切な精製および単離方法は、当業者に知られており、例えば、遠心分離、濾過、溶媒の蒸発、再懸濁および透析方法などがある。例えば、溶媒を除去することによって、特に水を除去することによって、カプセルの水性懸濁液から粉末を得ることが可能である。
【0067】
コア/シェル構造をもつ本発明のカプセルは、カプセル化された活性成分に応じて、化粧品、医薬組成物、作物保護剤、飼料、食品または栄養補助食品に添加するのに適している。
【0068】
本発明はさらに、化粧品、医薬組成物、作物保護剤、飼料、食品または栄養補助食品に添加するための、上述した、または上記方法により製造されたコア/シェル構造をもつカプセルの使用を提供する。
【0069】
本発明はさらに、上述したコア/シェル構造をもつカプセルまたは上記方法により製造されたコア/シェル構造をもつ粒子を含む、粉末または液体製剤を提供する。
【0070】
コア/シェル構造をもつカプセルのほかに、粉末または液体製剤は通常、特定の応用分野で、例えば、化粧品または医薬組成物の分野で、作物保護の分野で、飼料、食品または栄養補助食品の分野で、当業者に知られている慣用の添加剤および/または助剤の少なくとも1種を含有する。
【0071】
同様に本発明によって提供されるのは、化粧品、医薬組成物、作物保護剤、飼料、食品または栄養補助食品に添加するための、上述した粉末または液体製剤の使用である。
【0072】
本発明はさらに、上述したまたは上記方法により製造されたコア/シェル構造をもつ本発明に係るカプセルを含む、化粧品、医薬組成物、作物保護剤、飼料、食品または栄養補助食品を提供する。特に好ましいのは、太陽の紫外線から皮膚を保護する分野のための化粧品または医薬組成物である。
【0073】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0074】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Uvinul(登録商標)A Plus)のカプセル化
24gのジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Uvinul(登録商標)A Plus)を48gのテトラエトキシシラン中に60℃で溶解した。この溶液(油相)を室温(22℃)へと冷却した。次に、この油相を、7.2gのシリカゲル(平均粒子径12nm;シリカゲルのグラムあたり220m
2の表面積;表面のpH:8)、3.6gの塩化ナトリウムおよび288gの水からなるコロイド状シリカゲル(LUDOX(登録商標)LS 30)の水溶液とともに、高圧ホモジナイザー(M-110F Microfluidizer、Microfluidics社)を用いて500バールで2分間ホモジナイズした。形成されたエマルションを25gの四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)と攪拌(マグネチックスターラー)しながら混合し、24時間攪拌した。
形成されたカプセルの粒度分布は、ISO 13320-1に準拠した光散乱(Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて測定した:d50=0.5μm。
【実施例2】
【0075】
エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul(登録商標)T 150)のカプセル化
10gのエチルヘキシルトリアゾン(Uvinul(登録商標)T 150)を50gの酢酸エチル中に室温(22℃)で溶解した。そこに40gのテトラエトキシシランを添加した。このようにして調製した油相を、1.0gのシリカゲル(平均粒子径22nm;シリカゲルのグラムあたり140m
2の表面積;表面のpH:9)および290gの水からなるコロイド状シリカゲル(LUDOX(登録商標)TM 40)の水溶液とともに、超音波ロッド(200W、7mm)を用いて室温(22℃)で2分間ホモジナイズした。形成されたエマルションを25gの四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)と攪拌(マグネチックスターラー)しながら混合し、24時間攪拌した。
形成されたカプセルの粒度分布は、ISO 13320-1に準拠した光散乱(Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて測定した:d50=1.0μm。
【実施例3】
【0076】
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(PDP)のカプセル化
24gのレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を48gのテトラエトキシシラン中に室温(22℃)で溶解した。このようにして調製した油相を、7.2gのシリカゲル(平均粒子径7nm;シリカゲルのグラムあたり350m
2の表面積;表面のpH:10)および288gの水からなるコロイド状シリカゲル(LUDOX(登録商標)SM 30)の水溶液とともに、高圧ホモジナイザー(M-110F Microfluidizer、Microfluidics社)を用いて500バールで5分間、室温(22℃)にてホモジナイズした。形成されたエマルションを25gの四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)と攪拌(マグネチックスターラー)しながら混合し、24時間攪拌した。
形成されたカプセルの粒度分布は、ISO 13320-1に準拠した光散乱(Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて測定した:d50=0.7μm。
【実施例4】
【0077】
酢酸リナリルのカプセル化
10gの酢酸リナリル(沸点:220℃;CAS番号:115-95-7)を20gのテトラエトキシシランと10gのホワイトオイル中に室温(22℃)で溶解した。このようにして調製した油相を、2.0gのシリカゲル(平均粒子径12nm;シリカゲルのグラムあたり220m
2の表面積;表面のpH:8)および250gの水からなるコロイド状シリカゲル(LUDOX(登録商標)LS 30)の水溶液とともに、高圧ホモジナイザー(M-110F Microfluidizer、Microfluidics社)を用いて500バールで5分間、室温(22℃)にてホモジナイズした。形成されたエマルションを25gの四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)と攪拌(マグネチックスターラー)しながら混合し、24時間攪拌した。調製されたサンプルをサンプルAと呼ぶことにした。
サンプルAの形成されたカプセルの粒度分布は、ISO 13320-1に準拠した光散乱(Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて測定した:d50=0.8μm。
【0078】
10gの酢酸リナリル(沸点:220℃;CAS番号:115-95-7)を26gのテトラエトキシシランと10gのホワイトオイル中に室温(22℃)で溶解した。このようにして調製した油相を、250gの水に溶解した1.0gの塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)の溶液とともに、高圧ホモジナイザー(M-110F Microfluidizer、Microfluidics社)を用いて500バールで5分間、室温(22℃)にてホモジナイズした。形成されたエマルションを25gの四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)と攪拌(マグネチックスターラー)しながら混合し、24時間攪拌した。調製されたサンプルをサンプルBと呼ぶことにした。
サンプルBの形成されたカプセルの粒度分布は、ISO 13320-1に準拠した光散乱(Microtrac社製のMicrotrac S3500 Bluewave)を用いて測定した:d50=0.8μm。
【0079】
水を除去するために、サンプルAおよびBは、それぞれまずB-290ミニスプレードライヤー(Buchi社、スイス)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥は次の条件下で行った:入口温度、約120℃;出口温度、約55℃;ツイン-マテリアルノズルを使用;スプレーガスとして窒素を使用。
【0080】
微粉末はMettler Toledo社製のHR73水分計を用いて105℃でさらに30分間乾燥させた。105℃で乾燥する前と後のサンプルAからの粉末の重量損失は約4.5重量%であった;105℃で乾燥する前と後のサンプルBからの粉末の重量損失は約9.0重量%であった。
【0081】
微粉末をさらに130℃で15分間乾燥させた。130℃で乾燥する前と後のサンプルAからの粉末の重量損失は約7.8重量%であった;130℃で乾燥する前と後のサンプルBからの粉末の重量損失は約13.2重量%であった。
【0082】
サンプルAから調製された粉末は、サンプルBから調製された粉末より優れた熱安定性を示す。