特許第6054597号(P6054597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054597
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20161219BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G01R31/28 G
   G01R31/28 V
   H01L27/04 T
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-139593(P2011-139593)
(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公開番号】特開2013-7618(P2013-7618A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年3月26日
【審判番号】不服2015-20097(P2015-20097/J1)
【審判請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博昭
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−91482(JP,A)
【文献】 特表2003−513286(JP,A)
【文献】 特開2008−232690(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/116674(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0064616(US,A1)
【文献】 特開平8−105941(JP,A)
【文献】 特開2007−248135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速クロックグループに属する論理回路ブロックおよび低速クロックグループに属する論理回路ブロックを含む、動作周波数の異なる複数の論理回路ブロックを有し、遷移スキャンテストを実行可能に構成された半導体集積回路であって、
クロック供給源より、前記複数の論理回路ブロックの動作周波数各々に相当する周波数の複数のクロック信号を供給するクロック供給手段と、
前記クロック供給手段より前記高速クロックグループに属する論理回路ブロックの動作周波数に対応したクロック信号の供給を受けて動作する前記高速クロックグループに属するフリップフロップおよび前記低速クロックグループに属する論理回路ブロックの動作周波数に対応したクロック信号の供給を受けて動作する前記低速クロックグループに属するフリップフロップの双方を含む複数のフリップフロップを各々が備え、該複数のフリップフロップにおいて前段のフリップフロップのデータ出力端子と次段のフリップフロップのスキャンデータ入力端子とを互いに接続してスキャンシフト動作とキャプチャ動作の切換えが可能に構成された複数のスキャンチェーンと、該複数のスキャンチェーンのスキャン入力側に接続されたパターン展開回路と、該複数のスキャンチェーンのスキャン出力側に接続されたパターン圧縮回路とを有し、該複数のスキャンチェーンを構成する一部のフリップフロップのデータ出力端子が前記複数の論理回路ブロックの信号入力端子に接続され、該複数の論理回路ブロックの信号出力端子を、前記複数のスキャンチェーンを構成する他の一部のフリップフロップのデータ入力端子に接続して構成された圧縮スキャン回路と、
前記複数のスキャンチェーンのいずれかに接続され、前記スキャンシフト動作において値が設定されるクロック制御用フリップフロップを含み、前記クロック制御用フリップフロップに設定された値に基づいて、前記キャプチャ動作において、前記複数のスキャンチェーンを構成する複数のフリップフロップのうち、特定のフリップフロップへの前記クロック信号の供給を停止するクロック制御手段と、を備え
前記複数のクロック信号のうち、前記特定のフリップフロップへ供給されるクロック信号の周波数が、該特定のフリップフロップ以外のフリップフロップへ供給されるクロック信号の周波数よりも低速である
半導体集積回路。
【請求項2】
前記クロック制御手段は、前記遷移スキャンテストの実行を許可するスキャンイネーブル信号の値と、前記クロック制御用フリップフロップに設定された値との論理和が所定の値をとるとき、前記特定のフリップフロップへのクロック信号の供給を停止するクロックゲーティング手段を備える請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記複数のクロック信号の一つは、前記クロック供給源を入力とする分周回路の出力であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に係り、特に、遷移スキャンテストが可能に構成された半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における半導体集積回路の高速化及び大規模化に伴い、製造された半導体集積回路の検査や動作試験を短時間に実施できる方法が求められている。半導体集積回路のテスト手法として、スキャンテストがある。
【0003】
スキャンテストを行うためのスキャン回路は、例えば、図4に示すスキャン回路100のように、半導体集積回路内のフリップフロップ(D−FF)をスキャンフリップフロップ(スキャンFF)103a〜103dで置換した構成になっている。スキャンFFは、スキャン入力端子とスキャン出力端子を有するフリップフロップであって、前段に位置するスキャンFFのスキャン出力端子Qと、後段に位置するスキャンFFのスキャン入力端子SDを順次接続して、スキャンパスを形成している。具体的には、図4に示すように、フリップフロップのデータ入力DにマルチプレクサMUXを設け、そのフリップフロップに外部から直接データを入力できるようにスキャン入力端子SDを設けることで、通常の動作時のデータ入力Dとスキャン入力SDをマルチプレクサMUXのセレクト端子(スキャンイネーブル端子ともいう)SSで切り換える構成になっている。また、スキャンFF103a〜103dのスキャン出力Qは、通常の動作時におけるデータ出力と共通になっている。
【0004】
スキャン回路100は、スキャンFFを連結し(これをスキャンチェーンと呼ぶ)、各スキャンFFのスキャンイネーブル端子を制御することにより、シフトレジスタ動作が可能となっている。これにより順序回路を組合せ回路としてテストすることができる。すなわち、スキャンイネーブル信号によってスキャンFFのデータ入力Dが選択されているとき、フリップフロップは、組合せ回路101からの値を取り込む(これをキャプチャ動作と呼ぶ)。また、スキャンイネーブル信号がスキャンFFのスキャン入力SDを選択しているとき、スキャンFFはシフト動作を行う(これをスキャンシフト動作と呼ぶ)。
【0005】
一方、1つの半導体集積回路に異なる周波数のクロックで動作する領域が存在する場合があり、このような領域間におけるデータ転送テストを実速度(at_speed)で実行するため、例えば、特許文献1では、基本クロックと、その基本クロックを2分周した分周クロックとを生成している。また、特許文献2も、周波数と位相の少なくとも一方が異なる複数のクロック信号を使用した、半導体装置におけるスキャンテストを開示している。
【0006】
上述したスキャンテストのテスト時間を短縮する手法として、圧縮スキャンが知られている。図5は、圧縮スキャン回路の一例を示している。図5の圧縮スキャン回路200のパターン展開回路201は、各々が複数段(ここでは5段)のスキャンFF205からなる8個のスキャンチェーン207に対して、複数のスキャン入力端子211をマルチプレクサ217を経由して接続する構成となっている。スキャンチェーンに接続されるスキャン入力は、スキャンシフト中、ダイナミックに切り替わる。また、パターン圧縮回路203では、各スキャンチェーン207が排他的論理和(EX−OR)ゲート219を経由して、複数のスキャン出力端子213に接続される。スキャンテスト時間は、その大半がスキャンシフトに要する時間であることから、図5に示す圧縮スキャン回路200を用いることにより、各スキャンチェーンのスキャンフリップフロップの段数が減少するので、スキャンシフト時間が短くなり、結果としてスキャンテスト時間の短縮が可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2009−36668号公報
【特許文献2】特開2010−197291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示すような高速クロックで動作する高速クロック・フリップフロップ305と、低速クロックで動作する低速クロック・フリップフロップ307とが混在する半導体集積回路をスキャンテストする場合、スキャンFFのクロックを外部から直接制御できるようにする必要がある。すなわち、スキャンテスト時に、分周回路301があるとスキャンテストができないため、分周回路301をバイパスする必要がある。そこで、スキャンテスト時に異なる周波数のクロックが必要な場合、外部から別クロックを供給することも考えられるが、半導体チップの電極パッド数やパッケージの端子数に制限があるため、別クロックを供給する構成をとることができない、という問題がある。
【0009】
一方、異なる周波数のクロックを同一の外部クロック端子で供給して、遷移スキャンテストを実施しようとする場合、高速クロック・フリップフロップのテスト時に、低速クロック・フリップフロップについては、動作が補償されていないためスキャンFFの期待値をマスクして、テストを実施する必要がある。このとき、圧縮スキャンも同時に適用している場合、図5に示すように、パターン圧縮回路がEX−ORゲートで構成されているため、低速クロック・フリップフロップのスキャンFFの期待値をマスクすると、他のスキャンチェーンの同一段にある高速クロックのスキャンFFもマスクされてしまう。その結果、圧縮スキャンにおける故障の検出率が低下する、という問題がある。そして、圧縮スキャンで発見されなかった故障については、例えば、図6に示すように、パターン展開回路・パターン圧縮回路をバイパスして構成した圧縮バイパスモードを使用して故障検出をすることなり、圧縮バイパスでスキャンFFの段数が増加した分、遷移スキャンテストのテスト時間が長くなる、という問題が生じる。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、半導体集積回路に構築されている論理回路等に生じている遷移故障を短時間で、かつ精度良く検出することができる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、高速クロックグループに属する論理回路ブロックおよび低速クロックグループに属する論理回路ブロックを含む、動作周波数の異なる複数の論理回路ブロックを有し、遷移スキャンテストを実行可能に構成された半導体集積回路であって、クロック供給源より、前記複数の論理回路ブロックの動作周波数各々に相当する周波数の複数のクロック信号を供給するクロック供給手段と、前記クロック供給手段より前記高速クロックグループに属する論理回路ブロックの動作周波数に対応したクロック信号の供給を受けて動作する前記高速クロックグループに属するフリップフロップおよび前記低速クロックグループに属する論理回路ブロックの動作周波数に対応したクロック信号の供給を受けて動作する前記低速クロックグループに属するフリップフロップの双方を含む複数のフリップフロップを各々が備え、該複数のフリップフロップにおいて前段のフリップフロップのデータ出力端子と次段のフリップフロップのスキャンデータ入力端子とを互いに接続してスキャンシフト動作とキャプチャ動作の切換えが可能に構成された複数のスキャンチェーンと、該複数のスキャンチェーンのスキャン入力側に接続されたパターン展開回路と、該複数のスキャンチェーンのスキャン出力側に接続されたパターン圧縮回路とを有し、該複数のスキャンチェーンを構成する一部のフリップフロップのデータ出力端子が前記複数の論理回路ブロックの信号入力端子に接続され、該複数の論理回路ブロックの信号出力端子を、前記複数のスキャンチェーンを構成する他の一部のフリップフロップのデータ入力端子に接続して構成された圧縮スキャン回路と、前記複数のスキャンチェーンのいずれかに接続され、前記スキャンシフト動作において値が設定されるクロック制御用フリップフロップを含み、前記クロック制御用フリップフロップに設定された値に基づいて、前記キャプチャ動作において、前記複数のスキャンチェーンを構成する複数のフリップフロップのうち、特定のフリップフロップへの前記クロック信号の供給を停止するクロック制御手段と、を備え、前記複数のクロック信号のうち、前記特定のフリップフロップへ供給されるクロック信号の周波数が、該特定のフリップフロップ以外のフリップフロップへ供給されるクロック信号の周波数よりも低速であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、論理回路等に生じている遷移故障を短時間で、かつ精度良く検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る半導体集積回路全体の構成を示すブロック図である。
図2】各スキャンフリップフロップの構成を示す図である。
図3】実施形態に係る半導体集積回路における遷移スキャン時の動作を示すタイミングチャートである。
図4】スキャン回路の概要を示す図である。
図5】圧縮スキャン回路の一例を示す図である。
図6】圧縮スキャンにおける圧縮バイパスモードに対する回路例を示す図である。
図7】従来のスキャンテスト時におけるクロック系統を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る半導体集積回路全体の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る半導体集積回路1は、スキャンテストを行うための圧縮スキャン回路10と、圧縮スキャン回路10において遷移スキャンテストを実施する際に所定のクロック制御をする遷移スキャン用クロック制御回路7と、半導体集積回路1の基本動作クロック(CLK)を分周する分周回路9とを備える。
【0015】
圧縮スキャン回路10は、各々が複数段(ここでは6段)のスキャンフリップフロップ(適宜、スキャンFFとも記述する)FF1〜FF36を連結(シリアル接続)して構成されるスキャンチェーンと、スキャンFFからの入力信号に対して所定の信号を出力する、テスト対象となる組合せ回路15,17と、複数のスキャン入力端子12を、マルチプレクサを経由してスキャンFFに接続するパターン展開回路3と、スキャンチェーンからの出力を排他的論理和(EX−OR)ゲートを経由して、複数のスキャン出力端子14に接続するパターン圧縮回路5とを備えて構成される。なお、パターン展開回路3及びパターン圧縮回路5の構成は、図5に示すパターン展開回路201及びパターン圧縮回路203と同じであるため、ここではそれらの図示を省略する。また、図1の半導体集積回路1では、簡略化のため、スキャンFF21〜FF26とスキャンFF31〜FF36との間にある、一連のスキャンFF、及び組合せ回路を省略して示している。
【0016】
半導体集積回路1は、例えば、同期回路方式で設計されており、不図示のクロック生成部から供給されるクロック信号CLKを共有するスキャンフリップフロップFF1〜FF36の間に組合せ回路15,17が挿入され、これらスキャンFF及び組合せ回路がクロック信号CLKに同期して動作する。図1に示す半導体集積回路1では、スキャンFF1〜FF36のうち、スキャンFF1〜FF4,FF11〜FF14,FF21〜FF24,FF31〜FF36が高速クロック(例えば、10MHz)で動作する高速クロックグループに属するスキャンフリップフロップである。また、スキャンFF5,FF15,FF16,FF25,FF26は、低速クロック(例えば、5MHz)で動作する低速クロックグループに属するスキャンフリップフロップである。組合せ回路15,17は、例えば、ANDゲート、ORゲート、インバータ等の複数の論理素子からなる論理回路ブロックである。
【0017】
各スキャンFF1〜FF36は、図2に示すように、クロック入力端子(CLK)とデータ入力端子Dとを備えるDフリップフロップ(D−FF)であり、データ入力端子Dには、セレクタとして機能するマルチプレクサ(MUX)23が付加されている。このMUX23には、通常の動作時においてデータを入力するためのデータ入力端子Dと、フリップフロップに外部からデータを入力するためのスキャン入力端子SDとが設けられている。また、MUX23のセレクト端子(スキャンイネーブル端子)SSにより、通常の動作時のデータ入力Dとスキャン入力SDを切り換えるようになっている。スキャンFF1〜FF36のスキャン出力Qは、通常の動作時におけるデータ出力と共通になっており、これらスキャンFF1〜FF36が相互に直列に連結されている。すなわち、前段に位置するスキャンFFのスキャン出力端子Qと後段に位置するスキャンFFのスキャン入力端子SDとを順次接続して、スキャンFF1〜FF36によりシフトレジスタ(スキャンチェーン)を構成している。
【0018】
遷移スキャン用クロック制御回路7は、ラッチ回路8a及びORゲート8bからなるクロックゲーティングセル(CG)8と、クロック制御フリップフロップ(FFC)6とを備えており、半導体集積回路1において遷移スキャンを実行する際に、後述するクロック制御を行う。
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る半導体集積回路について、遷移スキャン時の回路動作について説明する。図3は、本実施形態に係る半導体集積回路における遷移スキャン時の動作を示すタイミングチャートである。半導体集積回路1のスキャンテストを行うため、最初に、図1のセレクタ55に、スキャンモード端子57を介してスキャンモード信号(ここでは、論理“1”)が入力される。さらに、スキャンイネーブル(SCANSE)端子53にスキャンイネーブル信号(ここでは、論理“1”)を入力する。これにより、すべてのスキャンFF1〜FF36のセレクト端子(スキャンイネーブル端子)SSも論理“1”となり、半導体集積回路1がスキャンシフト動作モードに設定される。
【0020】
スキャンイネーブル端子(SCANSE)が論理“1”となることで、遷移スキャン用クロック制御回路7に入力されたクロック信号CLKは、ラッチ回路8aとセレクタ55をそのまま通過して、上述した低速クロックグループに属するスキャンフリップフロップに入力される。高速クロックグループに属するスキャンフリップフロップには、クロック信号CLKが直接、入力されている。よって、スキャンイネーブル(SCANSE)端子が論理“1”のとき、すべてのスキャンFF1〜FF36にクロック信号が供給される。
【0021】
次に、圧縮スキャン回路10のスキャン入力端子12にスキャンテスト信号を入力し、クロックCLKを起動して、スキャンFF1〜FF36をシフトレジスタ動作させる。すなわち、各スキャンFF1〜FF36において、スキャンイネーブル端子SSが論理“1”となっているため、通常のデータ入力端子Dに代えて、スキャン入力端子SDから入力データが取り込まれ、クロック(CLK)信号に応じて、入力データ(スキャンテスト信号)が順次、FF1,FF2,FF3,FF4,FF5…へと取り込まれる。このとき、低速クロックグループのクロック制御用フリップフロップ(FFC)6の値が論理“0”となるように、スキャン入力端子12からスキャンテスト信号を入力する(図3の信号FFC/Dを参照)。
【0022】
なお、スキャンFF1〜FF36は、スキャンイネーブル端子SSが論理“0”となっている間、データ入力端子Dに供給された信号をクロック信号のタイミングで取り込んで、信号出力端子Qから出力する。
【0023】
続いて、図3に示すように、スキャンイネーブル(SCANSE)端子を論理“0”にして、半導体集積回路1をキャプチャ動作モードに設定し、クロック信号CLKを起動する。このとき、低速クロックグループについては、上述したようにクロック制御用フリップフロップ(FFC)6に、その値が論理“0”となるように、スキャン入力端子12からスキャンテスト信号が入力されている。そのため、クロック制御用フリップフロップ(FFC)6の出力Q(論理“0”)と、スキャンイネーブル(SCANSE)端子の論理“0”とが入力されたクロックゲーティングセル(CG)8のEB/SE信号がともに論理“0”となる。遷移スキャン用クロック制御回路7は、図3のCG/SE信号、及びCG/EB信号に示されるように、キャプチャ動作時において、遷移スキャン用クロック制御回路7のクロックゲーティングセル(CG)8からのクロック出力を停止する。
【0024】
このように、クロックゲーティングセル(CG)8のORゲート8bの出力(論理“0”)がラッチ回路8aに入力され、図3のCG/GC信号において点線Aで示すように、クロックゲーティングセル(CG)8から出力されるクロック信号CLKが止まる。このとき、高速クロックグループの始点フリップフロップからのみ、テスト対象となる組合せ回路15,17のテスト対象経路(テスト対象パス)に対して信号遷移を発生させる。より詳細には、図3のクロック信号(CLK,CG/CLK)に示すように、所定のテスト周期の間隔(テスト規格ともいう)を持ったクロック信号(キャプチャクロック信号)を2パルス分、圧縮スキャン回路10のテスト対象に供給する。その結果、最初のキャプチャクロックパルスにより、テスト対象経路の始点フリップフロップに信号遷移が発生し、2番目のキャプチャクロックパルスにより、スキャンテストデータに対応したテスト対象経路における動作結果が終点フリップフロップに取り込まれる。
【0025】
すなわち、半導体集積回路1をキャプチャ動作モードに設定したまま、さらにクロックを起動する。このとき、クロック制御用フリップフロップ(FFC)6の出力端子Qは、通常入力端子Dに接続されているため、クロック制御用フリップフロップ(FFC)6の出力Q(論理“0”)が、そのまま入力端子Dに取り込まれる。その結果、FFC6の値は変化しない。したがって、高速クロックグループのテスト対象経路において発生した遷移後の信号のみを、終点フリップフロップで取り込むことが可能となる。
【0026】
次に、スキャンイネーブル(SCANSE)端子を論理“1”にして、半導体集積回路1をスキャンシフト動作モードに設定する。そして、上述したように終点フリップフロップに取り込んだ信号を、クロック信号CLKを起動してスキャン出力端子14に転送し、その信号を期待する。すなわち、スキャンイネーブル(SCANSE)端子を論理“1”とすることにより、再度、スキャンフリップフロップFF1〜FF36によりスキャンパスを構成し、設定したスキャンテスト信号に対する各テスト対象における処理結果(テスト出力データ)を順次、スキャン出力端子14を介して回収し、得られた信号を期待する。
【0027】
つまり、不図示のテスター(遷移故障を判定するもの)において、スキャンフリップフロップFF1〜FF36からスキャンアウトされた出力結果を期待値と比較し、半導体集積回路1における遷移故障の有無を判定する。得られた信号の遅延時間が上述したテスト規格(テスト周期)よりも長く、期待値と一致しない場合は、半導体集積回路1のテスト対象の信号経路に遅延故障が生じていると判断する。
【0028】
一方、低速クロックグループのスキャンFFは、キャプチャ動作時においてクロックが止まっているため、キャプチャ動作モード前のスキャンシフト動作において入力した値をそのまま出力することとなる。したがって、半導体集積回路1の圧縮スキャン回路10では、テスト対象外グループのスキャンFFの信号をマスクする必要がなくなる。例えば、図1の半導体集積回路1において、組合せ回路17を構成するORゲート17bは、低速クロックで動作するよう設計されており、従来のようにキャプチャ動作時にクロック供給を止めない場合、前段に位置するスキャンFF15から論理“1”を取り込むことになる。そのため、ORゲート17bの後段にあるスキャンFF25をマスクする必要があったが、本実施形態に係る半導体集積回路1では、上述したようにキャプチャ動作時においてクロック供給を停止することで、低速クロックグループのスキャンFFでは、キャプチャ動作時にクロック起動がないので、スキャンシフト動作時に設定した値(“0”又は“1”)が固定され、低速クロックグループのテスト対象パスにおいて信号遷移が発生しない。その結果、ORゲート17bの後段にあるスキャンFF25が遷移した信号を取り込むことがないので、スキャンFF25については信号のマスクが不要となる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、圧縮スキャン回路10での遷移スキャン時にクロック制御をする遷移スキャン用クロック制御回路7を1つ設けた構成を示しているが、これに限定されない。例えば、半導体集積回路1に異なるクロックで動作するクロックグループが3つ以上ある場合は、図1に示す遷移スキャン用クロック制御回路7と同様の遷移スキャン用のクロック制御回路をそのグループ数に応じて複数個、設けるようにしてもよい。
【0030】
また、低速クロックでのテスト対象となる組合せ回路について遷移スキャンテストを行なう場合は、クロック制御用フリップフロップ(FFC)6に、その値が論理“1”となるように、スキャン入力端子12からスキャンテスト信号を入力する。当状態で、クロック端子51から低速クロックに相当するクロック信号CLKを入力することにより、ラッチ回路8aとセレクタ55を低速クロックがそのまま通過して、上述した低速クロックグループに属するスキャンフリップフロップに入力される。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、高速クロック動作ブロック(高速クロックグループ)、及び低速クロック動作ブロック(低速クロックグループ)という、動作周波数の異なるブロックが存在する半導体集積回路において、それらのブロック間にスキャンチェーンを配し、その半導体集積回路の遷移スキャンテストのキャプチャ動作時において、クロック制御用回路によって低速クロックグループのスキャンFFに供給されるクロックを止めるように構成する。こうすることで、高速クロックグループの遷移スキャンテスト時に低速クロックグループのスキャンFFにおいて信号をマスクする必要がなくなるため、圧縮スキャンモードでの故障の検出率を向上できるという効果がある。また、圧縮バイパスモードでスキャンテストを行う際、圧縮バイパスのパターン数が減少するため、遷移スキャンテストの時間を短縮できるという効果がある。
【0032】
さらに、動作周波数の異なるブロックに単一のクロック信号源からクロックを供給するとともに、クロック制御用回路のクロック制御FFにスキャンチェーンで所定の値を設定する構成とすることで、遷移スキャンテストのキャプチャ動作時に低速クロックグループのスキャンFFに供給されるクロックを半導体集積回路の外部から制御できる。その結果、高速・低速それぞれの動作周波数で遷移スキャンテストを短時間で実施でき、その遷移スキャンテストを実施するために半導体集積回路の信号端子数・パッド数を増加する必要もない、という効果がある。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体集積回路
3 パターン展開回路
5 パターン圧縮回路
6 クロック制御フリップフロップ(FFC)
7 遷移スキャン用クロック制御回路
8a ラッチ回路
8b ゲート
9 分周回路
10 圧縮スキャン回路
12 スキャン入力端子
14 スキャン出力端子
15,17 テスト対象組合せ回路
FF1〜FF36 スキャンフリップフロップ(スキャンFF)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7