(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0013】
図1において、自動分析装置100は、血液や尿などの生体サンプル(以下、試料と称する)を収容する複数のサンプル容器1が収納されたサンプル容器ラック2と、サンプル容器ラック2を搬送するラック搬送ライン3と、試薬容器保持部であって試料の分析に用いる種々の試薬が収容された複数の試薬容器4が収納・保温され、試薬ディスクカバー7により覆われた試薬容器ディスク5(試薬容器保持部)と、試薬容器ディスク5に設けられ、試薬容器4の開封を行う試薬容器開封装置20(後の
図4参照)と、試料と試薬を混合するための複数の反応容器8が収納されたインキュベータディスク9と、回転駆動や上下駆動および吸引・吐出動作によりサンプル容器1からインキュベータディスク9の反応容器8に試料を分注するサンプル分注ノズル10と、試薬ディスクカバー7に設けられた試薬ディスクカバー開口部7aを介して、回転駆動や上下駆動および吸引・吐出動作により試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する試薬分注ノズル11と、反応容器8に収容された反応液を攪拌する反応容器攪拌機構14と、回転駆動や上下駆動により、インキュベータディスク9の反応容器8で混合された反応液を吸引して検出ユニット18a,18bに送るノズル17a,17bと、ノズル17a,17bで吸引されて送られた反応液に検出処理を施し特定成分の検出を行う検出ユニット18a,18bと、自動分析装置100全体の動作を制御する制御装置19とを概略備えている。
【0014】
また、自動分析装置100は、未使用である複数の反応容器8やサンプル分注チップ10aが収納された反応容器・サンプル分注チップ収納部13、及び、その交換・補充用にスタンバイされた反応容器・サンプル分注チップ収納部12と、使用済みのサンプル分注チップ10a及び反応容器8を廃棄するための廃棄孔15と、サンプル分注チップ10a及び反応容器8を把持して搬送する搬送機構16とを備えている。搬送機構16は、X軸、Y軸、Z軸方向(図示せず)に移動可能に設けられており、反応容器・サンプル分注チップ収納部13に収納された反応容器8をインキュベータディスク9に搬送したり、使用済み反応容器8を廃棄孔15に破棄したり、未使用のサンプル分注チップ10aをチップ装着位置16aに搬送したりする。
【0015】
図2は、試薬容器保持部である試薬容器ディスクをその周辺構成とともに抜き出して示す図であり、
図3は試薬容器を抜き出して示す図である。また、
図4は、試薬容器ディスクに設けられた試薬容器開封装置を抜き出して示す図である。
【0016】
なお、試薬容器ディスク5には、開封前の試薬容器4(
図2及び
図3参照)と開封後の試薬容器4(
図4参照)の両方が搭載されているが、
図2においては、図示の簡単のため開封後の試薬容器4のみの搭載状態を図示している。
【0017】
図2に示すように、試薬容器ディスク5には、複数の試薬容器4が搭載されており、その周辺には、試薬容器4からインキュベータディスク9の反応容器8に試薬を分注する試薬分注ノズル11と、試薬容器4に設けられた個体識別標識4d(本実施の形態ではバーコード)を読み取り、その識別情報を制御装置19の制御部19aに送る読取装置5aとが設けられている。なお、試薬容器4の個体識別標識4dにはRFIDタグなどを用いても良い。個別識別標識4dに記録される識別情報には、試薬容器4に収容された試薬を識別するための試薬識別番号(識別コード)、収容された試薬が対応する検査項目名、試薬の有効期限、ロット番号およびシーケンス番号等が含まれている。
【0018】
図3等にも示すように、各試薬容器4は、複数種類(本実施の形態では3つ)の試薬を収容する容器4a〜4cから構成されており、1つの試薬容器4(つまり、1組の容器4a〜4c)には、対応する分析項目に必要な1組の試薬が収容されている。試薬容器4の各容器4a〜4cに収容される試薬としては、発光標識を含む発光標識試薬や磁性粒子を含む磁性粒子試薬などがある。
【0019】
図4において、試薬容器開封装置20は、図示しない駆動装置により上下方向に駆動可能に設けられた基部20dと、試薬容器4の3つの容器4a〜4cのそれぞれに対応して設けられた3つの開封フック20a〜20dとを備えている。
【0020】
開封前の試薬容器4は、容器4a〜4cの開口部がそれぞれ蓋部材40a〜40cにより密封されている。蓋部材40a〜40cには、それぞれ、試薬容器開封装置20の開封フック20a〜20cを引っ掛けるための突起部41a〜41cが設けられている。そして、試薬開封装置20の基部20dを試薬容器ディスク5に搭載・固定した状態の試薬容器4(未開封)の情報に配置し、図示しない駆動装置によって開封フック20a〜20cを駆動して突起部41a〜41cに引っ掛け、この状態で基部20dを上方に駆動することにより、試薬容器4の開口部から蓋部材40a〜40cを引き起こして密閉状態を解除し、試薬容器4の開封を行う。
【0021】
制御装置19は、自動分析装置100全体の動作を制御するものであり、予め設定したプログラムや、入力部19cなどにより入力されるオペレータからの指令に基づいて試薬容器4の初期開封(後述)や試料の分析処理の制御を実施する。このような制御装置19は、試料や分析項目に関する情報・設定の入力を行う入力部19cと、入力部19cへの入力内容に基づいて自動分析装置100の動作制御や分析結果の処理を行う制御部19aと、分析に関する設定入力画面や分析結果を表示する表示部19bと、分析に関する設定や試料・試薬等に関する情報、分析結果等を記憶する記憶部19dとを備えている。ここで、初期開封とは、例えば工場出荷時に試薬容器を密閉するために施された密閉処理を試薬の使用に際して開封することである。
【0022】
図5は、制御装置19各部の機能を概略的に示す図である。
【0023】
図5に示すように、記憶部19dは、搭載中試薬情報記憶部119hと、試薬情報台帳記憶部119iと、試薬残量情報記憶部119jを有している。
【0024】
搭載中試薬情報記憶部119hは、試薬容器保持部である試薬容器ディスク5に搭載中の複数の試薬容器4及びそれぞれに収容された試薬の試薬情報であって、少なくとも試薬の使用時刻及び消費量の情報を含む試薬使用履歴情報を試薬容器4の個体識別標識4dから読取装置5aにより読み取った識別情報と対応させて記憶する機能ブロックである。
【0025】
読取装置5aで読み取られた試薬容器4の識別情報は、制御部19aを介して記憶部19dに送られ、搭載中試薬情報記憶部119hに記憶される。ここで、後述する試薬情報台帳記憶部119iに、試薬容器4の識別情報に対応する識別情報および試薬使用履歴情報が記憶されている場合には、その情報が読み出され、試薬使用履歴情報として搭載中試薬情報記憶部119hに記憶される。その後、その試薬容器4に収容された試薬の使用に伴って、その識別情報に対応して試薬使用履歴情報が追加される。なお、試薬容器ディスク5に搭載中の試薬容器4が取り外された場合には、その試薬容器4に関する識別情報および試薬使用履歴情報は搭載中試薬情報記憶部119hから削除される。また、試薬情報台帳記憶部119iに記憶された識別情報及び使用履歴情報は、特定の条件が満たされるまでは記憶が維持される。特定の条件としては、例えば、予め設定された期間の経過などが挙げられる。
【0026】
図6は、搭載中試薬情報記憶部において搭載中の試薬容器の試薬使用履歴情報が記憶される試薬使用履歴情報テーブルを概略的に示す図である。
【0027】
図6に示すように、試薬使用履歴情報テーブルには、試薬ディスク5に搭載中の複数の試薬容器4のそれぞれについての試薬情報60,61,62として、試薬容器4及び試薬の識別情報63,64,65と試薬使用履歴情報66,67,68とが対応して記憶されている。なお、複数の試薬容器4の試薬情報60,61,62は、それぞれ、試薬容器ディスク5における試薬容器4の搭載位置(図示せず)に対応して記憶されている。
【0028】
各試薬容器4の識別情報63,64,65には、識別するための試薬識別番号(識別コード)、収容された試薬が対応する検査項目名、ロット番号およびシーケンス番号等が含まれている。例えば、試薬容器ディスク5において予め位置番号1番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報60としては、識別情報63として、検査項目:TSH、識別コード:1、ロット番号:101、シーケンス番号:120が記憶されている。同様に、位置番号2番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報61は、識別情報64として、検査項目:TT、識別コード:50、ロット番号:130、シーケンス番号:14が記憶されている。また、位置番号50番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報61は、識別情報65として、検査項目:AB、識別コード:320、ロット番号:130、シーケンス番号:34が記憶されている。
【0029】
また、各試薬容器4の使用履歴情報には、各試薬の使用日、使用時刻、及び試薬容器4の初期開封(後述)実施からの累計の消費量が含まれている。例えば、試薬容器ディスク5において予め位置番号1番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報60としては、使用履歴情報66として、1回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(10:28:25)、及び累計の消費量:1から、173回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(15:11:57)、及び累計の消費量:173までが記憶されている。なお、消費量は、予め設定した1回分の消費量で正規化しており、したがって、使用回数と同義である。以下同様に、位置番号2番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報61としては、使用履歴情報67として、1回目の試薬の使用日:(12/01/10)、使用時刻:(10:03:29)、及び累計の消費量:1から、10回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(15:00:09)、及び累計の消費量:10を含み、最終使用回の試薬の使用日、使用時刻、及び累計の消費量(図示せず)までが記憶されている。また、位置番号50番が割り当てられた設置位置(図示せず)に搭載された試薬容器4の試薬情報62としては、使用履歴情報68として、1回目の試薬の使用日:(12/01/23)、使用時刻:(11:23:33)、及び累計の消費量1から、299回目の試薬の使用日:(12/01/23)、使用時刻:(16:01:23)、及び累計の消費量:299までが記憶されている。
【0030】
試薬情報台帳記憶部119iは、試薬容器保持部である試薬容器ディスク5に搭載実績のある全ての試薬容器4に収容された試薬の試薬使用履歴情報を試薬容器4の個体識別番号標識4dから読取装置5aにより読み取った識別情報と対応させて記憶する機能ブロックである。ここで、試薬容器ディスク5に搭載実績のある試薬容器4とは、過去に試薬容器ディスク5に搭載されたことのある試薬容器4と、試薬容器ディスク5に搭載中の試薬容器4との両方を指している。
【0031】
前述のように、読取装置5aで読み取られた試薬容器4の識別情報は、制御部19aを介して記憶部19dに送られ、搭載中試薬情報記憶部119hに記憶される。ここで、試薬情報台帳記憶部119iに、試薬容器4の識別情報に対応する識別情報および試薬使用履歴情報が記憶されている場合には、その情報が読み出され、試薬使用履歴情報として搭載中試薬情報記憶部119hに記憶される。また、試薬情報台帳記憶部119iに、試薬容器4の識別情報に対応する識別情報および試薬使用履歴情報が記憶されていない場合には、読取装置5aで読み取られた試薬容器4の識別情報は、試薬情報台帳記憶部119iにも記憶される。その後、搭載中試薬情報記憶部119h及び試薬情報台帳記憶部119iの両方において、その試薬容器4に収容された試薬の使用に伴って識別情報に対応して試薬使用履歴情報が追加される。
【0032】
図7は、試薬情報台帳記憶部において、試薬容器ディスクに搭載実績のある全ての試薬容器の試薬使用履歴情報が記憶される試薬台帳テーブルを概略的に示す図である。
【0033】
図7に示すように、使用履歴台帳テーブルには、試薬容器保持部である試薬ディスク5に登載実績のある全ての試薬容器4のそれぞれについての試薬情報60,61,70として、試薬容器4及び試薬の識別情報63,64,71と使用履歴情報66,67,72とが対応して記憶されている。
【0034】
試薬情報台帳記憶部119iの各識別情報63,64,71には、搭載中試薬情報記憶部119hと同様に、試薬識別番号(識別コード)、検査項目名、ロット番号およびシーケンス番号等が含まれている。例えば、記憶番号1番が割り当てられた試薬使用履歴情報として記憶された試薬情報60としては、識別情報63として、検査項目:TSH、識別コード:1、ロット番号:101、シーケンス番号:120が記憶されている。同様に、記憶番号2番が割り当てられた試薬使用履歴情報として記憶された試薬情報61は、識別情報64として、検査項目:TT、識別コード:50、ロット番号:130、シーケンス番号:14が記憶されている。また、記憶番号n番が割り当てられた試薬使用履歴情報n(n:正の整数)として記憶された試薬情報70は、識別情報71として、検査項目:CL、識別コード:500、ロット番号:130、シーケンス番号:34が記憶されている。
【0035】
また、各試薬容器4の使用履歴情報には、各試薬の使用日、使用時刻、及び試薬容器4の初期開封(後述)実施からの累計の消費量が含まれている。例えば、試薬情報60としては、使用履歴情報66として、1回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(10:28:25)、及び累計の消費量:1から、173回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(15:11:57)、及び累計の消費量:173までが記憶されている。なお、前述のように、消費量は、予め設定した1回分の消費量で正規化している。以下同様に、試薬情報61としては、使用履歴情報67として、1回目の試薬の使用日:(12/01/10)、使用時刻:(10:03:29)、及び累計の消費量:1から、10回目の試薬の使用日:(12/01/12)、使用時刻:(15:00:09)、及び累計の消費量:10を含み、最終使用回の試薬の使用日、使用時刻、及び累計の消費量(図示せず)までが記憶されている。また、試薬情報70としては、使用履歴情報72として、1回目の試薬の使用日:(12/01/23)、使用時刻:(17:21:33)、及び累計の消費量:1が記憶されている。
【0036】
試薬残量情報記憶部119jは、後述する試薬残量管理部119cでの試薬残量の演算結果を識別情報と対応させて記憶する機能ブロックである。
【0037】
読取装置5aで読み取られた試薬容器4の識別情報は、制御部19aを介して記憶部19dに送られ、試薬残量情報記憶部119jにも記憶される。その後、その試薬容器4に収容された試薬の使用に伴って、その識別情報に対応して試薬残量管理部119cで演算された試薬残量が更新される。
【0038】
図8は、試薬残量情報記憶部において、試薬容器ディスクに搭載実績のある全ての試薬容器の試薬残量情報が記憶される試薬残量情報テーブルを概略的に示す図である。
【0039】
図8に示すように、試薬残量情報テーブルには、試薬容器保持部である試薬ディスク5に登載実績のある全ての試薬容器4のそれぞれについての試薬残量情報90,91,92として、試薬容器4及び試薬の識別情報63,64,71と残量情報93,94,95とが対応して記憶されている。
【0040】
試薬残量情報記憶部119jの各識別情報63,64,71には、試薬情報台帳記憶部119iと同様に、試薬識別番号(識別コード)、検査項目名、ロット番号およびシーケンス番号等が含まれている。例えば、記憶番号1番が割り当てられた試薬残量情報として記憶された試薬残量情報90の識別情報63としては、検査項目:TSH、識別コード:1、ロット番号:101、シーケンス番号:120が記憶されている。なお、前述のように、消費量は、予め設定した1回分の消費量で正規化している。以下同様に、記憶番号2番が割り当てられた試薬使用履歴情報として記憶された試薬残量情報91の識別情報64としては、検査項目:TT、識別コード:50、ロット番号:130、シーケンス番号:114が記憶されている。また、記憶番号n番が割り当てられた試薬使用履歴情報n(n:正の整数)として記憶された試薬残量情報92の識別情報71としては、検査項目:CL、識別コード:500、ロット番号:130、シーケンス番号:34が記憶されている。
【0041】
また、各試薬容器4の残量情報93,94,95には、各試薬の残量が記憶されている。例えば、試薬残量情報90の試薬残量93として、試薬残量:327が最終的な試薬残量の情報として記憶されている。同様に、試薬残量情報91の試薬残量94として、試薬残量:341が最終的な試薬残量の情報として記憶されている。また、試薬残量情報92の試薬残量95として、試薬残量:499が最終的な試薬残量の情報として記憶されている。
【0043】
図5に示すように、制御部19aは、試薬開封予測要求部119a、試薬開封予測部119b、試薬残量管理部119c、試薬開封・使用前準備処理計画部119d、試薬開封・使用前準備処理管理部119e、試薬開封・使用前準備処理実行部119f、出力部119gとを有している。
【0044】
試薬開封予測要求部119aは、試薬容器ディスク5に搭載された未開封の試薬容器4に対する初期開封(後述)の実施の可否を判定する開封判定処理の実施指令の判断を行う機能ブロックである。自動分析装置100において、試薬開封予測要求部119aで予め設定した動作(例えば、オペレータからの指令や、電源投入などの特定の動作)が実施されると、試薬開封予測要求部119aは開封判定処理の実施を試薬開封予測部119bに指示する。開封判定処理は、自動分析装置による分析処理の開始前に実施される。
【0045】
試薬開封予測部119bは、試薬容器ディスク5に搭載された未開封の試薬容器4に対する初期開封の実施の可否を判定する開封判定処理を行う機能ブロックである。試薬開封予測部119bは、試薬開封予測要求部119aからの開封判定処理の実施が指示されると、試薬開封予測部119bは搭載中試薬情報記憶部119iから使用履歴情報を取得し、その使用履歴情報に基づいて、所定期間の試薬の使用量の予測値(予測使用量)を演算し、その演算結果を試薬残量と比較する。そして、予測使用量が試薬残量を越えた場合には、対象の試薬容器4に収容された試薬と同種の試薬を収容した未開封の試薬容器4の試薬容器開封装置20による開封を計画するように、後述の試薬開封・使用前準備処理計画部119dに指示する。試薬の予測使用量の演算には種々の方法が考えられるが、例えば、各試薬の過去1週間の各曜日における一日の使用量をそれぞれ合計したものを予測使用量として用いる。なお、自動分析装置の出荷時に設定された初期値を用いることもできる。
【0046】
試薬残量管理部119cは、試薬容器4に収容された試薬の使用の度に、搭載中試薬情報記憶部119h(および、試薬情報台帳記憶部119i)の搭載中試薬情報に記憶される試薬使用履歴の消費量に基づいて試薬残量を演算し管理する機能ブロックである。演算した試薬残量の情報は、試薬開封予測部119bに送られて、演算に用いられる。
【0047】
試薬開封・使用前準備処理計画部119dは、試薬開封、および試薬の使用前準備動作の実行計画を立てる機能ブロックである。試薬開封・使用前準備処理計画部119dは、試薬開封予測部119bからの試薬容器4の開封指示に従って、試薬容器4の開封、及び攪拌等の使用前準備動作の実行計画を立てる。
【0048】
試薬開封・使用前準備処理管理部119eは、各試薬の試薬開封、及び使用前準備動作の実行状態を管理する機能ブロックであり、試薬開封・使用前準備処理実行部119fは、試薬開封、及び使用前準備動作を実行する機能ブロックであり、出力部119gは、試薬開封、及び使用前準備動作の実行状況(後の
図9参照)を表示部19bに出力し表示させるものである。
【0049】
図9は、試薬容器ディスクに搭載の試薬容器の試薬開封、及び使用前準備動作の実行状況を表示する試薬使用前準備実行状況確認画面を示す図である。
【0050】
図9において、試薬使用前準備実行状況確認画面80には、使用前準備が計画された各試薬容器4の試薬容器ディスク5における設置位置の表示欄である設置位置81と、検査項目の表示欄である検査項目82と、使用前準備全体の実行状況の表示欄である実行状況83と、実行状況の詳細として初期開封の実行状況の表示欄である開封84と、使用前準備の実行状況の表示欄である使用前準備85と、確認を終了して画面を閉じるOKボタン86とが設けられている。実行状況83、開封84、使用前準備85の各欄では、計画中を示す記号P、実行中を示す記号R、完了を示す記号Cにより、各処理の実行状況が示されている。例えば、試薬ディスク5の設置位置1に搭載された試薬容器4の検査項目はTSHであり、その試薬使用前準備は実行中であることが記号Rにより示されている。また、実行状況の詳細としては、初期開封が終了し(記号Cで表示)、使用前準備が実行中である(記号Rで表示)ことが表示されている。その他の試薬容器4についても同様である。
【0051】
ここで、本実施の形態における自動分析処理の始動時の動作の一例を
図10を参照しつつ説明する。
【0052】
図10は、本実施の形態における自動分析装置の始動時の動作の流れを示す処理フローである。
【0053】
本実施の形態の自動分析装置における制御部19aは、自動分析装置の始動が指示されると(例えば、電源の投入などが実施されると)、予め定められた校正処理の設定内容に基づいて校正処理を実施する。校正処理の設定内容には、自動分析装置の始動時の校正実施有無や校正を行う項目等の情報が含まれており、校正処理を実施しない設定となっている場合には、校正処理を行わず次の処理(試薬開封・試薬準備処理)を実施する。
【0054】
校正処理の実施(又は不実施)の後、制御部19aは、
図10に示すように、まず試薬容器ディスク5に搭載中の試薬容器4に設けられた個体識別標識4dから識別情報を取得する(ステップS10)。次に、識別情報に基づいて搭載中試薬情報記憶部119hから該当する試薬使用履歴情報を読み出す(ステップS20)。次に、読み出した試薬使用履歴情報に基づいて予測消費量を演算する(ステップS30)。次に、試薬残量情報記憶部119jから試薬残量情報を読み出す(ステップS40)。そして、試薬残量情報に基づく試薬残量と予測消費量を比較して、試薬残量が予測消費量よりも多いかどうかを判定し(ステップS50)、判定結果がYESの場合は、処理を終了し、後段の分析処理に移行する。また、ステップS50での判定結果がNOの場合は、該当試薬の未開封(未使用)試薬容器に対する初期開封を実行し(ステップS60)、さらに、使用前準備処理を実行する(ステップS70)。その後、処理を終了して、後段の分析処理に移行する。
【0055】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0056】
従来技術においては、自動分析装置に搭載される試薬容器の数は増加傾向にあり、使用中の試薬容器の他に予備の試薬容器を含む試薬容器を搭載することも可能になっている。予備の試薬容器を搭載できると、試薬切れが生じた場合に、オペレータによる試薬容器の交換作業の有無によらず、自動分析装置の動作を継続することができ、分析効率の改善を図ることができる。しかしながら、自動分析装置の分析に用いる試薬は、試薬容器の開封後かつ使用前に準備操作を実施して使用可能状態にしておく必要がある。したがって、試薬の準備操作の間は分析動作を停止せざるを得ず、分析スケジュールの変更が発生するなど使い勝手に問題がある。また、予備の試薬容器について投入時に開封し、試薬の準備操作を実施した状態で搭載しておけば、分析動作の停止は避けられるが、試薬は外気に触れると劣化が進みやすくなるため、使用中の試薬容器の試薬が切れるまでの間は、未使用のまま劣化だけが進行することになり望ましくないという問題もあった。
【0057】
これに対し、本実施の形態においては、搭載中試薬情報記憶部119hに記憶した試薬使用履歴情報に基づいて演算した予測消費量と、試薬残量情報記憶部119jに記憶した試薬残量とを比較し、その比較結果に基づいて、試薬容器保持部に保持された未開封の試薬容器の分析処理の開始前における初期開封を実施するかどうかを判定するよう構成したので、試薬容器に収容された試薬の劣化を抑制しつつ、分析効率の向上を図ることができる。