(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが,SiH
2Cl
2ガスは,温度が低いと常温でも非常に反応し易いので,従来のようにチャンバ外において共通配管を通して他のガスと混合させると,これらのガスが反応して反応副生成物が生成されて配管の内壁に付着して堆積し,パーティクル発生の原因になり易い。
【0006】
このため,SiH
2Cl
2ガスは他のガスと同時に導入せず,パージしながら交互に導入したり,チャンバ外の共通配管を加熱したりすることも考えられる。
【0007】
しかしながら,チャンバ外においては共通配管のすべての部分を加熱するのは構造上難しい場合も多く,共通配管に常温の部分が残っているとそこで反応してパーティクルが発生する虞がある。また,SiH
2Cl
2ガスは非常に反応し易いため,パージしても配管内に残留していると他のガスと反応してパーティクルが発生してしまう。特にSiH
2Cl
2ガスはNH
3ガスと非常に反応し易いので,僅かでもSiH
2Cl
2ガスが残留していると,NH
3ガスを通したときに反応副生成物が生成されて配管内に付着し,パーティクルが発生してしまう。
【0008】
この場合,共通配管にできるだけガスを残留させないようにパージ時間を長くすることも可能であるが,パージ時間を長くするほどスループットが低下してしまうため,好ましくない。
【0009】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,少なくともチャンバ外においては,SiH
2Cl
2ガスが他の処理ガスと混合しないようにすることができ,これらのガスの反応副生成物によるパーティクルの発生を抑制できる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,SiH
2Cl
2ガスと他の処理ガスを用いて基板の成膜処理を行う成膜装置であって,前記基板を載置する載置台を備えたチャンバと,前記チャンバに設けられ,複数のガス導入口から導入されたガスを前記基板に向けて吐出する複数の吐出孔を備えたシャワーヘッドと,前記SiH
2Cl
2ガスを前記シャワーヘッドのガス導入口まで供給する供給ラインと,前記他の処理ガスを前記シャワーヘッドのガス導入口まで供給する供給ラインと,を備え,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインは,少なくとも前記シャワーヘッドのガス導入口までは前記他の処理ガスの供給ラインとは合流しないように独立して設けたことを特徴とする成膜装置が提供される。
【0011】
また,上記チャンバの排気ラインに接続される真空ポンプと,前記排気ラインの前記真空ポンプよりも上流側に接続され,前記排気ラインを流れるガスによる反応副生成物を捕捉するトラップと,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインの途中から分岐して前記排気ラインに接続されるプリフローラインと,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインとプリフローラインとを切り換え可能な開閉バルブと,前記他の処理ガスの供給ラインの途中から分岐して前記排気ラインに接続されるプリフローラインと,前記他の処理ガスの供給ラインとプリフローラインとを切り換え可能な開閉バルブと,を備え,少なくとも前記SiH
2Cl
2ガスのプリフローラインは,前記排気ラインの前記トラップよりも上流側に接続するようにしてもよい。
【0012】
また,上記シャワーヘッドは,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室と,前記他の処理ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室とをそれぞれ別々に設け,これらのバッファ室からのガスはそれぞれ別々の前記吐出孔から吐出されるように構成してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,SiH
2Cl
2ガスとTi含有ガスとN含有ガスとを用いて基板の成膜処理を行う成膜装置であって,前記基板を載置する載置台を備えたチャンバと,前記チャンバに設けられ,複数のガス導入口から導入されたガスを前記基板に向けて吐出する複数の吐出孔を備えたシャワーヘッドと,前記SiH
2Cl
2ガスを前記シャワーヘッドのガス導入口まで供給する供給ラインと,前記Ti含有ガス(例えばTiCl
4ガス)を前記シャワーヘッドのガス導入口まで供給する供給ラインと,前記N含有ガス(例えばNH
3ガス)を前記シャワーヘッドのガス導入口まで供給する供給ラインと,を備え,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインは,少なくとも前記シャワーヘッドのガス導入口までは前記Ti含有ガスと前記N含有ガスの供給ラインとは合流しないように独立して設けたことを特徴とする成膜装置が提供される。
【0014】
また,上記チャンバの排気ラインに接続される真空ポンプと,前記排気ラインの前記真空ポンプよりも上流側に接続され,前記排気ラインを流れるガスによる反応副生成物を捕捉するトラップと,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインの途中から分岐して前記排気ラインに接続されるプリフローラインと,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインとプリフローラインとを切り換え可能な開閉バルブと,前記Ti含有ガスの供給ラインの途中から分岐して前記排気ラインに接続されるプリフローラインと,前記Ti含有ガスの供給ラインとプリフローラインとを切り換え可能な開閉バルブと,前記N含有ガスの供給ラインの途中から分岐して前記排気ラインに接続されるプリフローラインと,前記N含有ガスの供給ラインとプリフローラインとを切り換え可能な開閉バルブと,を備え,少なくとも前記SiH
2Cl
2ガスのプリフローラインは,前記排気ラインの前記トラップよりも上流側に接続するようにしてもよい。
【0015】
また,上記シャワーヘッドは,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室と,前記Ti含有ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室と,前記N含有ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室とをそれぞれ別々に設け,これらのバッファ室からのガスはそれぞれ別々の前記吐出孔から吐出されるように構成してもよい。
【0016】
また,上記シャワーヘッドは,前記SiH
2Cl
2ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスと前記Ti含有ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスとを拡散するバッファ室と,前記N含有ガスの供給ラインに接続されたガス導入口から導入されるガスを拡散するバッファ室とをそれぞれ別々に設け,これらのバッファ室からのガスはそれぞれ別々の前記吐出孔から吐出されるように構成してもよい。
【0017】
また,上記載置台に,その外周から外側に張り出すリング状部材を設けるようにしてもよい。この場合,上記リング状部材は,前記載置台から張り出した部分に複数の貫通孔を設けてもよい。
【0018】
また,上記吐出孔にその孔径よりも大きい径の拡径部を形成し,前記拡径部の深さを変えることにより,前記吐出孔のコンダクタンスを調整するようにしてもよい。この場合,前記吐出孔の拡径部は,コンダクタンスを調整したいガス種の吐出孔のすべてに形成し,前記拡径部の深さは,前記基板のセンタ領域に吐出する吐出孔よりも,エッジ領域に吐出する吐出孔の方を深くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,少なくともチャンバ外においてはSiH
2Cl
2ガスの供給ラインを他の処理ガスの供給ラインと独立させて,別々の供給ラインでチャンバまで供給されるようにしたことにより,少なくともチャンバ外においてSiH
2Cl
2ガスが他の処理ガスと混合しないようにすることができるので,これらのガスの反応副生成物によるパーティクルの発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(成膜装置の構成例)
まず,本発明の実施形態にかかる成膜装置について図面を参照しながら説明する。ここでは,基板例えば半導体ウエハ(以下「ウエハ」という。)上にTiSiN膜を成膜する処理を行う成膜装置を例に挙げて説明する。
図1は,本実施形態にかかる成膜装置の構成例を示す図である。成膜装置100は,ウエハWに対する成膜処理を行うチャンバ102,このチャンバ102に所定の処理ガスを供給する処理ガス供給部200,チャンバ102内を排気する排気部300を備える。
【0023】
排気部300は,チャンバ102の排気口に接続された排気ライン310を備え,この排気ライン310には,チャンバ102内を真空引きして所定の真空圧力に保持する真空ポンプ330が接続される。排気ライン310の真空ポンプ330よりも上流側には,例えばチャンバ102内で反応しきれなかった処理ガスにより発生する反応副生成物などを捕捉して,下流側の真空ポンプ330に入り込まないようにするトラップ320が介在されている。
【0024】
本実施形態では,後述するように処理ガスとして常温で液体であるTiCl
4ガスや,常温でも他の処理ガスと反応し易いSiH
2Cl
2ガスなどを用いるため,ここでのトラップ320としては処理ガス同士が反応して発生する反応副生成物などの付着物を捕捉してそれよりも下流側に流さない構成のものを用いることが好ましい。
【0025】
このようなトラップ320としては,例えば箱状のフレーム内に排気ライン310を接続する流入口を設け,その流入口から流出口までの流路に複数の邪魔板を設けてラビリンス構造に構成したものを用いることができる。トラップ320の構造はこれに限られるものではなく,排気ライン310を流れるガスの反応副生成物などの付着物がトラップ320内で捕捉できるようなものであればどのような構成であってもよい。
【0026】
本実施形態で用いられる処理ガスは常温でも反応副生成物を発生させるため,トラップ320も常温にしておくだけで反応副生成物を捕捉することができる。トラップ320の温度は,これに限られるものではなく,処理ガスの種類によって調整できるようにしてもよい。例えば冷却器や水冷によって冷却するようにしてもよい。
【0027】
また,排気ライン310のトラップ320よりも上流側には図示しないヒータを取り付けて排気ライン310内に不所望の反応副生成物が付着しないようにすることが好ましい。なお,チャンバ102の具体的構成例については後述する。
【0028】
本実施形態にかかる成膜装置100において,TiSiN膜を成膜するための処理ガスとしては,少なくともSi含有ガス,Ti含有ガス,N含有ガスが必要である。ここでは,Si含有ガスとしてSiH
2Cl
2ガスを用い,Ti含有ガスとN含有ガスとしてはそれぞれTiCl
4ガスとNH
3ガスを用いた場合を例に挙げる。
【0029】
このうちSiH
2Cl
2ガスは常温でも反応し易いので,チャンバ102の外において他の処理ガスと同じ配管に合流させると不所望の反応副生成物が発生し,それが配管内に付着してパーティクル発生の原因になることが分かった。特にSiH
2Cl
2ガスとNH
3ガスは非常に反応し易く,もしこれらを同じ配管内に流すようにすると,たとえパージして交互に供給したとしても,少しでもガスが残留していれば不所望の反応副生成物(塩化アンモニウムなど)が発生する虞がある。
【0030】
そこで,本実施形態における処理ガス供給部200では,少なくともチャンバ102外においてはSiH
2Cl
2供給部を他の処理ガスの供給部と独立させて,別々の供給ラインでチャンバまで供給されるようにした。これにより,チャンバ102外においてSiH
2Cl
2ガスが他の処理ガスと混合しないようにすることができるので,これらのガスの反応副生成物によるパーティクルの発生を抑制できる。
【0031】
(処理ガス供給部の構成例)
次に,このような処理ガス供給部200の構成例について
図1を参照しながら説明する。ここでは,NH
3ガス,TiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガスの各処理ガスの供給部をすべて独立して設けた場合を例に挙げる。すなわち,
図1に示す処理ガス供給部200には,NH
3供給部200A,SiH
2Cl
2供給部200B,TiCl
4供給部200Cがそれぞれ独立して設けられ,各処理ガスは別々の供給ラインを介してチャンバ102に供給されるようになっている。これによればチャンバ102の外においては,TiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガス,NH
3ガスをそれぞれ,独立してチャンバ102まで供給することができる。
【0032】
以下,各処理ガスの供給部200A,200B,200Cの具体的な構成例を説明する。先ずNH
3供給部200Aは,NH
3ガス供給源220AからのNH
3ガスをチャンバ102に導入する供給ライン210Aを備える。供給ライン210Aにはガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)240Aが設けられている。
【0033】
なお,ここでいう供給ライン210Aの「ライン」は,配管として構成される場合に限られるものではなく,例えば流路ブロック内に形成される流路として構成される場合なども含まれる。上述した排気ライン310,後述する他の供給ライン,プリフローラインなどの「ライン」についても同様である。
【0034】
マスフローコントローラ240Aの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)230A,第2開閉弁(下流側側開閉弁)250Aが設けられている。なお,
図1に示すようにガス供給源220Aと第1開閉弁230Aとの間には,レギュレータ222Aと圧力計(PT)224Aとを設けるようにしてもよい。
【0035】
NH
3ガスの供給ライン210Aには,パージガスやキャリアガスとして用いられるN
2ガスの供給ライン260Aが接続されている。具体的には,N
2ガスの供給ライン260Aには逆流防止弁263Aが介在し,その上流側にはN
2ガス供給源262Aが接続され,下流側はパージガスライン264Aとキャリアガスライン265Aに分岐して,それぞれNH
3ガスの供給ライン210Aの別の部位に接続されている。
【0036】
パージガスライン264Aは,NH
3ガスの供給ライン210Aのうち,第1開閉弁230Aとマスフローコントローラ240Aとの間に接続されている。パージガスライン264Aには開閉弁266Aが介在している。これにより,N
2ガスをパージガスとして供給ライン260Aに流す際には,上記開閉弁266Aをマスフローコントローラ240Aの上流側に設けられる第1開閉弁として,N
2ガスの流量をマスフローコントローラ240Aで制御することができる。
【0037】
キャリアガスライン265Aは,NH
3ガスの供給ライン210Aのうち,第2開閉弁250Aよりも下流側に接続されている。キャリアガスライン265Aには,ガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)268Aが設けられている。マスフローコントローラ268Aの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)267A,第2開閉弁(下流側側開閉弁)269Aが設けられている。これにより,N
2ガスをNH
3ガスのキャリアガスとして供給ライン260Aに流す際には,N
2ガスの流量をNH
3ガスとは独立してマスフローコントローラ268Aで制御できる。
【0038】
次に,SiH
2Cl
2供給部200Bは,SiH
2Cl
2ガス供給源220BからのSiH
2Cl
2ガスをチャンバ102に導入する供給ライン210Bを備える。供給ライン210Bにはガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)240Bが設けられている。
【0039】
マスフローコントローラ240Bの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)230B,第2開閉弁(下流側側開閉弁)250Bが設けられている。なお,
図1に示すようにガス供給源220Bと第1開閉弁230Bとの間には,レギュレータ222Bと圧力計(PT)224Bとを設けるようにしてもよい。
【0040】
SiH
2Cl
2ガスの供給ライン210Bには,パージガスやキャリアガスとして用いられるN
2ガスの供給ライン260Bが接続されている。具体的には,N
2ガスの供給ライン260Bには逆流防止弁263Bが介在し,その上流側にはN
2ガス供給源262Bが接続され,下流側はパージガスライン264Bとキャリアガスライン265Bに分岐して,それぞれSiH
2Cl
2ガスの供給ライン210Bの別の部位に接続されている。
【0041】
パージガスライン264Bは,SiH
2Cl
2ガスの供給ライン210Bのうち,第1開閉弁230Bとマスフローコントローラ240Bとの間に接続されている。パージガスライン264Bには開閉弁266Bが介在している。これにより,N
2ガスをパージガスとして供給ライン260Bに流す際には,上記開閉弁266Bをマスフローコントローラ240Bの上流側に設けられる第1開閉弁として,N
2ガスの流量をマスフローコントローラ240Bで制御することができる。
【0042】
キャリアガスライン265Bは,SiH
2Cl
2ガスの供給ライン210Bのうち,第2開閉弁250Bよりも下流側に接続されている。キャリアガスライン265Bには,ガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)268Bが設けられている。マスフローコントローラ268Bの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)267B,第2開閉弁(下流側側開閉弁)269Bが設けられている。これにより,N
2ガスをSiH
2Cl
2ガスのキャリアガスとして供給ライン260Bに流す際には,N
2ガスの流量をSiH
2Cl
2ガスとは独立してマスフローコントローラ268Bで制御できる。
【0043】
次に,TiCl
4供給部200Cは,TiCl
4供給源220CからのTiCl
4を気化器242Cにて気化させてチャンバ102に導入する供給ライン210Cを備える。このTiCl
4は常温で液体のため,気化器242Cにて気化させてTiCl
4ガスにする。気化器242Cの下流側には,TiCl
4ガスのガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローメータ(MFM)244Cが設けられている。
【0044】
気化器242Cの上流側及びマスフローメータ(MFM)244Cの下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)230C,第2開閉弁(下流側側開閉弁)250Cが設けられている。
【0045】
TiCl
4ガスの供給ライン210Cには,パージガスやキャリアガスとして用いられるN
2ガスの供給ライン260Cが接続されている。具体的には,供給ライン260Cには逆流防止弁263Cが介在し,その上流側にN
2ガス供給源262Cが接続され,下流側はパージガスライン264Cとキャリアガスライン265Cに分岐して,それぞれTiCl
4ガスの供給ライン210Cの別の部位に接続されている。
【0046】
パージガスライン264Cは,TiCl
4ガスの供給ライン210Cのうち,第1開閉弁230Cと気化器242Cとの間に接続されている。パージガスライン264Cには開閉弁266Cが介在している。これにより,N
2ガスをパージガスとして供給ライン260Cに流す際には,上記開閉弁266Cをマスフローメータ244Cの上流側に設けられる第1開閉弁として,N
2ガスの流量を気化器242Cとマスフローメータ244Cで制御することができる。
【0047】
キャリアガスライン265Cは,TiCl
4ガスの供給ライン210Cのうち,第2開閉弁250Cよりも下流側に接続されている。キャリアガスライン265Cには,ガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)268Cが設けられている。マスフローコントローラ268Cの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)267C,第2開閉弁(下流側側開閉弁)269Cが設けられている。これにより,N
2ガスをTiCl
4ガスのキャリアガスとして供給ライン260Cに流す際には,N
2ガスの流量をTiCl
4ガスとは独立してマスフローコントローラ268Cで制御できる。
【0048】
このような処理ガス供給部200によって各処理ガスをチャンバ102に供給する際には,各マスフローコントローラ240A,240B,気化器242Cとマスフローメータ244Cによりガス流量を調整する。このとき,最初に所定流量のガスを供給する際や流量を変更する際には,供給開始から所定流量に安定するまである程度の立ち上がり時間が必要になる。
【0049】
このような各処理ガスの供給開始時の立ち上がり時間を短縮するため,本実施形態では,チャンバ102に処理ガスを供給する各供給ライン210A,210B,210Cの他に,これらと排気ライン310をそれぞれ接続する各プリフローライン270A,270B,270Cを設け,各供給ライン210A,210B,210Cと各プリフローライン270A,270B,270Cとを開閉弁で切り換えられるようにしている。
【0050】
これによれば,チャンバ102に各処理ガスを供給する前にそれぞれ,プリフローライン270A,270B,270Cに切り換えて所定流量で排気ライン310に流して流量を安定させておく。こうしておくことで,チャンバ102に処理ガスの供給を開始する際には,供給ライン210A,210B,210Cに切り換えるだけで,所定流量の処理ガスを瞬時にチャンバ102に供給できる。これにより,チャンバ102に処理ガスの供給を開始する際の立ち上がり時間を短縮でき,流量が安定した状態で供給できる。
【0051】
以下,このようなプリフローライン270について
図1を参照しながらより詳細に説明する。NH
3ガスのプリフローライン270Aは,その上流側は供給ライン210Aのマスフローコントローラ240Aと第2開閉弁250Aとの間に接続され,下流側は排気ライン310のトラップ320よりも下流側に接続される。プリフローライン270Aの上流側には開閉弁272Aが介在されている。これにより,上記開閉弁272Aをマスフローコントローラ240Aの下流側に設けられる第2開閉弁として,NH
3ガスのプリフロー流量をマスフローコントローラ240Aで制御することができる。
【0052】
SiH
2Cl
2ガスのプリフローライン270Bは,その上流側は供給ライン210Bのマスフローコントローラ240Bと第2開閉弁250Bとの間に接続され,下流側は排気ライン310のトラップ320よりも上流側に接続される。プリフローライン270Bの上流側と下流側にはそれぞれ,開閉弁272B,274Bが介在されている。これにより,上記開閉弁272Bをマスフローコントローラ240Bの下流側に設けられる第2開閉弁として,SiH
2Cl
2ガスのプリフロー流量をマスフローコントローラ240Bで制御することができる。
【0053】
TiCl
4ガスのプリフローライン270Cは,その上流側は供給ライン210Cのマスフローメータ244Cと第2開閉弁250Cとの間に接続され,下流側は排気ライン310のトラップ320よりも上流側に接続される。プリフローライン270Cの上流側と下流側にはそれぞれ,開閉弁272C,274Cが介在されている。これにより,上記開閉弁272Cをマスフローメータ244Cの下流側に設けられる第2開閉弁として,TiCl
4ガスのプリフロー流量をマスフローメータ244Cで制御することができる。
【0054】
これによれば,例えばSiH
2Cl
2ガスをチャンバ102に供給する前に,第2開閉弁250Bを閉じたまま開閉弁272Bを開いてプリフローライン270Bに切り換えて,SiH
2Cl
2ガスを所定流量で排気ライン310に流して安定させておく。こうしておくことで,チャンバ102にSiH
2Cl
2ガスの供給を開始する際には,開閉弁272Bを閉じて第2開閉弁250Bを開いて供給ライン210Bに切り換えるだけで,所定流量のSiH
2Cl
2ガスを瞬時にチャンバ102に供給できる。
【0055】
これにより,チャンバ102にSiH
2Cl
2ガスの供給を開始する際の立ち上がり時間を短縮でき,流量が安定した状態で供給できる。これと同様に,他のNH
3ガス,TiCl
4ガスについても,プリフローライン270A,270Cを利用することにより,チャンバ102にガス供給を開始する際の立ち上がり時間を短縮でき,流量が安定した状態で供給できる。
【0056】
ここで,プリフローライン270B,270Cの下流側をトラップ320よりも下流側ではなく,上流側に接続した理由とその作用効果について詳細に説明する。上述したように,排気ライン310には,チャンバ102内で反応しきれなかったTiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガスも共通の排気ライン310を流れるので,これらによって発生する反応副生成物が下流側の真空ポンプ330に入り込まないように,真空ポンプ330の上流側に常温のトラップ320を設けている。
【0057】
他方,プリフローライン270B,270Cを流れるTiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガスも未反応であって常温でも非常に反応し易い。このため,これらを排気ライン310に流す場合には上記と同様にトラップ320の上流側に接続することで,これらによって発生する反応副生成物が下流側の真空ポンプ330に入り込まないようにしている。
【0058】
こうして,TiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガスの反応副生成物は,トラップ320によって捕捉されるので,NH
3ガスのプリフローライン270Bについては,
図1に示すようにトラップ320よりも下流側に接続するようにしてもよい。
【0059】
さらに,本実施形態ではこのようなトラップ320による反応副生成物の捕捉効果を高めるため,上記NH
3ガスのプリフローライン270Bとは別に,NH
3ガスの供給ライン210Aの第1遮蔽弁230Aの上流側から分岐するトラップライン280Aを設け,このトラップライン280Aの下流側を排気ライン310のトラップ320よりも上流側に接続している。
【0060】
トラップライン280Aには,ガス流量を調整するための流量制御器として例えばマスフローコントローラ(MFC)284Aが設けられている。マスフローコントローラ284Aの上流側及び下流側にはそれぞれ第1開閉弁(上流側開閉弁)282A,第2開閉弁(下流側側開閉弁)286Aが設けられている。また,トラップライン280Aの下流側には開閉弁288Aが設けられている。これにより,トラップライン280Aを流れるNH
3ガスの流量制御やオンオフ制御を独立して行うことができる。
【0061】
これによれば,例えばトラップライン280Aに所定流量のNH
3ガスを流し続けることによって,プリフローライン270BからのSiH
2Cl
2ガス及びプリフローライン270CからのTiCl
4ガスをトラップ320内でNH
3ガスと混合させて積極的に反応副生成物を発生させることができる。これにより,トラップ320によって効率よく反応副生成物を捕捉でき,捕捉効果をより一層高めることができる。
【0062】
なお,従来のように共通の供給ラインで供給する場合には,独立してプリフローラインを設けるのは難しく,本実施形態のように各処理ガスを別々の供給ライン210A,210B,210Cを介して供給するように構成したからこそ,プリフローライン270A,270B,270Cについても各処理ガスごとに独立して設けることができる。
【0063】
また,上記TiCl
4ガスのプリフローライン270Cには,ダイバートライン(Divert Line)を設けるようにしてもよい。具体的には
図2に示すように,プリフローライン270Cを開閉弁274Cの上流側で分岐させてダイバートライン290Cを設ける。ダイバートライン290Cには,開閉弁292Cが介在され,その下流側にはダイバートライン290Cの専用の真空ポンプ340が接続される。真空ポンプ340の下流側は図示しない除害装置に接続される。
【0064】
これによれば,開閉弁274Cを閉じて開閉弁292Cを開くことによって,プリフローライン270CからのTiCl
4ガスがトラップ320に入り込まないように,ダイバートライン290Cに回避させることができる。これにより,トラップ320で捕捉される付着物の量を減らすことができるので,トラップ320のメンテナンスの回数を減らすことができる。
【0065】
(チャンバの構成例)
次にチャンバ102の構成例について図面を参照しながら説明する。
図3はチャンバの構成例を示す断面図である。
図3に示すチャンバ102は,上述した各供給ライン210A,210B,210CからNH
3ガス,SiH
2Cl
2ガス,TiCl
4ガスをそれぞれ別々にチャンバ102に導入できるように構成したものである。
【0066】
図3に示すように,チャンバ102は,気密に構成された略円筒状の処理容器110を備えており,この処理容器110にウエハWを収容し,このウエハW上にTiSiN膜を成膜するプロセス処理を実施可能に構成されている。
【0067】
処理容器110内にはウエハWを載置するための載置台120が配置されている。載置台120は,ウエハWを載置する円板状のサセプタ122と,このサセプタ122を支持する円筒状の支柱125を備える。サセプタ122は例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスからなる。
【0068】
また,サセプタ122にはヒータ128が内蔵されている。このヒータ128はヒータ電源130から供給される電力に応じて発熱するものであり,この作用によってウエハWの温度が調節される。
【0069】
なお,載置台120は,上記の他にも,図示はしないが,搬送アームなどの搬送機構からウエハWを受け取り,また搬送機構にウエハWを受け渡すために,ウエハWを支持して昇降させることができるウエハ支持機構を備えている。このウエハ支持機構は,例えば3本のウエハ支持ピン(リフタピン)を有しており,各ウエハ支持ピンは,サセプタ122に形成された貫通孔を通って,その表面に対して突没するように動作する。
【0070】
処理容器110の側壁112には,図示しない搬送アームなどによって処理前のウエハWを搬入して載置台120に載置し,また処理済みのウエハWを載置台120から取り出して搬出するための搬出入口113が設けられている。搬出入口113はゲートバルブGによって気密に開閉できるようになっている。処理容器110の底壁114の中央部には円形の開口部115が形成されており,底壁114にはこの開口部115を覆うように下方に向けて突出した排気室116が連結されている。排気室116の側壁には排気ライン310を介して上述した排気部300が接続されている。
【0071】
処理容器110の天井壁118には,処理ガスを処理容器110内に導入するシャワーヘッド140が設けられている。ここでのシャワーヘッド140は,上述したNH
3供給部200A,SiH
2Cl
2供給部200B,TiCl
4供給部200Cからの各処理ガスをそれぞれ独立して処理容器110内に供給するいわゆるポストミックスタイプである。
【0072】
具体的には
図3に示すシャワーヘッド140は,その上部に3つのガス導入口141,142,143が設けられ,これらに上述した各供給ライン210A,210B,210Cがそれぞれ接続されて各処理ガスが導入されるようになっている。
【0073】
このシャワーヘッド140は,最も上側に位置する上段ブロック体144とその下側に設けられる下段ブロック体150を備える。上記ガス導入口141,142,143は,上段ブロック体144の上側に設けられる。下段ブロック体150は複数段で構成される。
図3は2段で構成した場合を例に挙げているが,これに限られるものではない。
【0074】
下段ブロック体150には,3つのバッファ室151,152,153がそれぞれ独立して設けられている。各バッファ室151,152,153には,ガス導入口141,142,143からのガスが上段ブロック体144に形成されたガス流路を通って別々に導入されるようになっている。下段ブロック体150の下面には,バッファ室151,152,153にそれぞれ連通するガス吐出孔161,162,163が交互に形成されている。
【0075】
このような
図3に示すシャワーヘッド140によれば,NH
3供給部200A,SiH
2Cl
2供給部200B,TiCl
4供給部200Cからの各処理ガスはそれぞれ,別々のガス供給ライン210A,210B,210Cを通ってガス導入口141,142,143に導入される。
【0076】
そして,
図3に示すシャワーヘッド140内では,各ガス導入口141,142,143から導入された各ガスはそれぞれ,上段ブロック体144の別々の流路から各バッファ室151,152,153に導入され,それぞれ拡散してガス吐出孔161,162,163から別々に処理容器110内へ吐出される。これによれば,シャワーヘッド140内においてもNH
3ガス,SiH
2Cl
2ガス,TiCl
4ガスは互いに混合されることはないので,シャワーヘッド140で反応副生成物が発生することを防止でき,これによるパーティクルの発生を防止できる。
【0077】
図3に示すシャワーヘッド140はポストミックスタイプであるため,成膜処理において処理容器110内に各処理ガスを同時に供給することはもちろんのこと,交互に供給することも可能であり,またいずれかの処理ガスのみを供給することも可能である。
【0078】
なお,
図3では各ガス導入口141,142,143にそれぞれ,各処理ガスの供給ライン210A,210B,210Cを接続した場合を例に挙げたが,これに限られるものではなく,どの各ガス導入口141,142,143にどの処理ガスの供給ライン210A,210B,210Cを接続するようにしてもよい。
【0079】
また,
図3ではシャワーヘッド140として,下段ブロック体150に各処理ガスに対応する3つのバッファ室151,152,153を独立して設けた場合を例に挙げて説明したが,バッファ室の数や配置はこれに限られるものではない。例えば後述するようにバッファ室の数を減らして,複数の処理ガスに共通するバッファ室を形成してもよい。
【0080】
(チャンバの他の構成例)
次に,チャンバ102の他の構成例について図面を参照しながら説明する。ここでは,
図3に示す下段ブロック体150に2つのバッファ室を形成したシャワーヘッド140を備えたチャンバ102を例に挙げる。
図4は,このようなチャンバ102の構成例を示す断面図である。なお,
図4においてシャワーヘッド140以外の構成は
図3と同様であるため,
図3と同様の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお,
図4に示す下段ブロック体150はその段数を
図3に示すものよりも1段少なくした場合を例に挙げている。
図4に示す下段ブロック体150の段数もこれに限られるものではない。
【0081】
図4に示すシャワーヘッド140についても,
図3と同様に3つのガス導入口141,142,143が設けられ,これらにそれぞれ上述した各供給ライン210A,210B,210Cがそれぞれ接続されて各処理ガスが導入されるようになっている。
【0082】
このシャワーヘッド140の下段ブロック体150には,2つのバッファ室154,155がそれぞれ独立して設けられている。バッファ室154にはガス導入口141からのガスが上段ブロック体144に形成されたガス流路を通って導入されるようになっている。バッファ室155にはガス導入口142,143からのガスが上段ブロック体144に形成されたガス流路において途中で合流して導入されるようになっている。下段ブロック体150の下面には,バッファ室154,155に連通するガス吐出孔164,165が交互に形成されている。
【0083】
このような
図4に示すシャワーヘッド140によっても,
図3に示す場合と同様に,NH
3供給部200A,SiH
2Cl
2供給部200B,TiCl
4供給部200Cからの各処理ガスはそれぞれ,別々のガス供給ライン210A,210B,210Cを通ってガス導入口141,142,143に導入される。
【0084】
そして,
図4に示すシャワーヘッド140内では,ガス導入口141から導入されたガスはバッファ室154に導入され,ガス導入口142,143から導入されたガスは上段ブロック体144に形成されたガス流路で合流してバッファ室155に導入される。各バッファ室154,155に導入されたガスはそれぞれ拡散してガス吐出孔164,165から別々に処理容器110内へ吐出される。これにより,シャワーヘッド140においては,SiH
2Cl
2ガスとTiCl
4ガスは,少なくともNH
3ガスとは互いに混合されることはないので,SiH
2Cl
2ガスとNH
3ガスとの反応副生成物の発生を防止でき,これによるパーティクルの発生を防止できる。
【0085】
なお,シャワーヘッド140内のようにチャンバ102内においては,チャンバ102の外の配管とは異なり,シャワーヘッド140自体を加熱することは容易である。このため,
図4に示すシャワーヘッド140のようにSiH
2Cl
2ガスと他の処理ガスがその流路内で混合されるように構成しても,シャワーヘッド140内の流路において反応副生成物が発生する場合は,シャワーヘッド140自体を加熱することによって,その流路内での反応副生成物の発生を抑制することができる。
【0086】
(成膜処理の具体例)
次に,このようなチャンバ102によって実行されるTiSiN膜の成膜処理の具体例について説明する。まず,処理容器110内にウエハWを搬入し,ヒータ128によりウエハWを加熱しながら排気部300の真空ポンプ330により処理容器110内を真空排気して減圧し,所定の真空圧力にする。
【0087】
このとき,NH
3供給部200A,SiH
2Cl
2供給部200B,TiCl
4供給部200Cではそれぞれ,ガス供給ライン210A,210B,210Cの開閉バルブ250A,250B,250Cを閉じ,開閉バルブ272A,272B,272Cを開いてプリフローライン270A,270B,270Cに切り換えることによってガス流量を調整しておく。そして,各処理ガスのガス流量が安定すると,各ガスの供給が可能となる。
【0088】
その後は,処理ガスの供給を開始する場合はプリフローラインをガス供給ラインに切り換え,処理ガスの供給を停止する場合はガス供給ラインをプリフローラインに切り換える。例えばSiH
2Cl
2ガスの供給を開始する場合は,開閉バルブ272Bを閉じて,開閉バルブ250Bを開くことでプリフローライン270Bからガス供給ライン210Bに切り換える。SiH
2Cl
2ガスの供給を停止する場合は,開閉バルブ250Bを閉じて開閉バルブ272Bを開くことでガス供給ライン210Bからプリフローライン270Bに切り換える。
【0089】
ここでは,
図5に示すようにTiCl
4ガス,SiH
2Cl
2ガス,NH
3ガスを同時に供給して膜形成処理を所定時間t1だけ行った後,各配管をN
2ガスでパージするパージ処理を所定時間t2だけ行う。次に,NH
3ガスを供給して窒化処理を所定時間t3だけ行った後,各配管をN
2ガスでパージするパージ処理を所定時間t4だけ行う。
【0090】
これらt1〜t4を1サイクルとして,これを複数サイクル繰り返すことによって,ウエハW上にSFD(Sequential Flow Deposition)−TiSiN膜を形成する。このように,処理ガスのオンオフを繰り返す場合には,処理ガスは流し続けて,プリフローライン270A,270B,270Cと供給ライン210A,210B,210Cとの切り換えを行うだけで,各処理ガス導入時の立ち上がり時間を短縮でき,流量が安定した状態で供給できるので,より良好な成膜処理を行うことができる。
【0091】
なお,本実施形態ではSiH
2Cl
2ガスの他の処理ガスとしては,Ti含有ガスとしてTiCl
4ガスを挙げるとともに,N含有ガスとしてNH
3ガスを挙げて説明したが,これらの処理ガスに限られるものではない。
【0092】
(ウエハ上のガス流れの調整)
ところで,
図3に示すシャワーヘッド140のガス吐出孔161,162,163の配置や
図4に示すシャワーヘッド140のガス吐出孔164,165の配置によっては,ウエハWのセンタ領域(中心領域)とこれを囲むエッジ領域(周縁領域)のガスの流れに相違が生じる場合も考えられる。このため,このようなガス流れを調整することで,ウエハWのセンタ領域とエッジ領域の処理の面内均一性をより一層高めることができる。
【0093】
具体的にはシャワーヘッド140のガス吐出孔から吐出されるガスは,載置台120上のウエハWのセンタ領域からエッジ領域に向けて流れ,載置台120と側壁112との間を通って下方の排気部300に向けて流れる。このとき,側壁112に近いエッジ領域では周方向にもガスの流れが生じ,その周方向のガス流れの速度分布によっては,ウエハWのエッジ領域ではセンタ領域よりも流速が速くなりガスが留まり難くなる。
【0094】
そこで,本実施形態における載置台120に,例えば
図6,
図7に示すように,その外周から外側に張り出すように略板状のリング状部材(分散リング)400を設けることで,ウエハW上の周方向のガスの流速を調整するようにしてもよい。
図6は載置台120にリング状部材400を設けた場合の斜視図であり,
図7はリング状部材400を設けた載置台120を上方から見た平面図である。
図6は,リング状部材400を
図7に示すA−A断面で切断したものである。
【0095】
このようにリング状部材400を設けて載置台120の外周位置をその全周に渡って側壁112側に延長することで,ウエハWのエッジ領域上のガスの流速がセンタ領域上のガスの流速と同様になるように調整できる。リング状部材400は例えば石英で構成し,載置台120とほぼ同じ温度にすることが好ましい。なお,リング状部材400の材質や温度はこれに限られるものではない。例えばリング状部材400をアルミナセラミックスなどで構成してもよい。
【0096】
ここで,ウエハW上の周方向のガスの流れを,載置台120にリング状部材400を設けた場合と設けない場合とを比較しながらより詳細に説明する。
図8A,
図8Bはそれぞれ,ウエハWの中心から側壁112にかけてその載置台120上の周方向のガスの流速分布を示す。
図8Aは載置台120にリング状部材400を設けない場合であり,
図8Bは載置台120にリング状部材400を設けた場合である。ここでは,シャワーヘッド140からNH
3ガスを吐出したとき,載置台120上の周方向に生じるガスの流速0〜1m/sを小さい方からA〜Eの5段階の領域に分けて示している。
【0097】
図8Aによれば,載置台120にリング状部材400を設けない場合,ウエハWのセンタ領域上は最も流速が遅いA領域(ハッチング領域)となるものの,エッジ領域上はそれよりも流速が速いB〜E領域となっている。特に載置台120上ではセンタ側からエッジ側にかけて周方向の流速が速くなり,側壁112に近い部分では流速が最も速いE領域も生じていることが分かる。
【0098】
これに対して,
図8Bによれば,載置台120にリング状部材400を設けた場合には,ウエハWのセンタ領域上からエッジ領域上にかけて流速が遅いA領域(ハッチング領域)が拡大していることが分かる。これによれば,ウエハWのエッジ領域の流速を抑制することができ,センタ領域と同様の流速に調整できることが分かる。これにより,ウエハWにTiSiN膜を成膜する際に,エッジ領域にもセンタ領域と同様にガスを流すことができるので,面内均一性をより向上させることができる。例えばウエハWのエッジ領域のTiSiN膜の膜厚や膜中のシリコン量をセンタ領域と同様になるように調整することができる。
【0099】
なお,
図6に示すリング状部材400は,載置台120の外周に載置する部分とそれよりも外側に張り出す部分に段差を形成した場合を例に挙げているが,これに限られるものではなく,段差を設けなくてもよい。また,リング状部材400の形状も
図6,
図7に示すものに限られるものではなく,載置台120の外周を延長することでウエハW上のガスの流れを調整できるような形状であればよい。
【0100】
また,リング状部材400には,
図9に示すように,載置台120から張り出した部分に複数の貫通孔410を設けるようにしてもよい。これによれば,ウエハW上を流れるガスは,リング状部材400の貫通孔410も通るので,貫通孔410の配置位置又はその個数若しくは孔径などによってガスの流れを調整することができる。また,排気のコンダクタンスを調整することもできる。
【0101】
以上では,ウエハW上のガス流れをリング状部材400によって調整する場合について説明したが,
図3,
図4に示すシャワーヘッド140のガス吐出孔のコンダクタンスを調整することで,ウエハW上のガス流れを調整するようにしてもよい。具体的にはガス吐出孔の径や形状を,ウエハWのセンタ領域上とエッジ領域上とで変えることが考えられる。これにより,ウエハWのエッジ領域上のガスの流れをセンタ領域上と同様にすることができる。
【0102】
ここで,ガス吐出孔のコンダクタンスを調整したシャワーヘッド140の具体的構成例について説明する。ここでは,
図3に示すシャワーヘッド140のガス吐出孔161,162,163のうち,NH
3ガスのガス吐出孔161について,そのセンタ領域上とエッジ領域上のコンダクタンスを調整した場合を例に挙げる。
図10はこのようなシャワーヘッド140の具体例を示す平面図である。
図10は,各ガス吐出孔161,162,163の配置例を示している。
【0103】
図10は,NH
3ガスのガス吐出孔161の孔形状を変えることで,コンダクタンスを調整したものである。具体的にはすべてのガス吐出孔161にその孔径よりも大きな径の拡径部(拡径孔)161aを形成し,その拡径部161aの深さ(長さ)を調整することによって,コンダクタンスを調整する。例えばガス吐出孔161に拡径部161aとしてのザグリ(ザグリ穴)を形成してそのザグリの深さによってコンダクタンスを調整することができる。このように,NH
3ガスのみのコンダクタンスを調整する場合には,NH
3ガスのガス吐出孔161のすべてに拡径部161aを設けてその深さでコンダクタンスを調整する。これによれば,拡径部161aの形状(例えばザグリを形成したときに形成されるテーパ面など)に影響を受けることなく,微少なコンダクタンスの調整も可能となる。
【0104】
図10では,ウエハWのセンタ領域上のガス吐出孔161のザグリ深さをDとすると,ウエハWのエッジ領域上のガス吐出孔161のザグリ深さをDよりも大きいD′とする。これにより,ウエハWのセンタ領域上よりもエッジ領域上のNH
3ガス流量を多めに流すことができ,ウエハW上のガスの流れを調整することができる。特にガス吐出孔161のザグリ深さでコンダクタンスを調整することで,ガス流量の微少な調整も可能となる。
【0105】
ここで,
図10に示すようなシャワーヘッド140による効果を確認する実験を行った結果について図面を参照しながら説明する。
図11は,本実験結果をグラフに示した図である。
【0106】
ここでは,
図3に示すチャンバ102において,NH
3ガスのガス吐出孔161のコンダクタンスを調整した
図10に示すシャワーヘッド140を適用した場合(白丸)と,NH
3ガスのガス吐出孔161のコンダクタンスを調整しないシャワーヘッド140(すべてのガス吐出孔に拡径部を設けず,その配置位置は
図10に示すものと同じもの)を適用した場合(黒四角)とにおいてそれぞれ,直径300mmのウエハW上にTiSiN膜を成膜し,ウエハWの膜厚を測定した。このグラフの横軸にはウエハW上の位置をとり,縦軸にはウエハW上の各点のTiSiN膜の膜厚比をとっている。ここでの膜厚比は,ウエハWの中心位置(横軸0の位置)の膜厚に対する比である。
【0107】
図11の実験結果によれば,コンダクタンス調整ありの場合(白丸)には,コンダクタンス調整なしの場合(黒四角)に対して,ウエハW上のセンタ領域からエッジ領域にかけて膜厚比の均一性が大幅に改善されていることが分かる。
【0108】
このように,NH
3ガスのガス吐出孔161のコンダクタンスをセンタ側よりもエッジ側の方を大きくするように調整することで,ウエハWの成膜処理の均一性を大幅に改善させることができる。
【0109】
なお,
図10では,NH
3ガスのガス吐出孔161のコンダクタンスを調整する場合を例に挙げて説明したが,これに限られるものではなく,
図3に示す他のガス(SiH
2Cl
2,TiCl
4)のガス吐出孔162,163や,
図4に示すガス吐出孔164,165のコンダクタンスを調整してもよい。
【0110】
また,上述したようなコンダクタンスを調整したガス吐出孔を備えたシャワーヘッド140と,リング状部材400を設けた載置台120とを組み合わせて成膜装置を構成してもよい。これによりウエハWの成膜処理の均一性をより一層改善させることができる。
【0111】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
例えば,上記実施形態では成膜装置100を用いて,SFD−TiSiN膜の成膜処理を行う場合を例に挙げて説明したが,これに限られるものではない。例えばCVD(Physical Chemical Vapor Deposition)−TiSiN膜の成膜処理を行うようにしてもよい。