(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱硬化性膜形成工程前に、基板上に前記複数のチップが配置された状態で、当該チップ上に前記熱硬化性膜の剥離膜を形成する剥離膜形成工程をさらに有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の接合方法。
前記熱硬化性膜形成工程後であって前記配置工程前に、基板を熱処理し、前記熱硬化性膜中の溶剤を除去する熱処理工程をさらに有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合方法。
前記熱硬化性膜形成工程において、前記複数のチップと塗布ノズルの吐出口との間に当該吐出口から吐出された熱硬化性剤の液溜りを形成し、その状態で基板と前記塗布ノズルを水平方向に相対的に移動させて、前記チップ上に前記熱硬化性剤を塗布して前記熱硬化性膜を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合方法。
前記接合装置は、前記第1の支持部に保持された基板を前記熱硬化性膜が硬化しない第1の温度で熱処理しながら、前記複数のチップ上の前記熱硬化性膜に第2の支持部を当接させ、その後、前記熱処理機構によって前記第1の温度より高い第2の温度で基板を熱処理し、前記熱硬化性膜を硬化させ、その後、前記熱処理機構によって前記第2の温度又はそれより高い第3の温度で基板を熱処理しながら、前記押圧機構によって基板と複数のチップを押圧して、当該基板と複数のチップを接合するように、前記第1の支持部、前記第2の支持部、前記熱処理機構及び前記押圧機構を制御する制御部をさらに有することを特徴とする、請求項10に記載の接合システム。
前記熱硬化性膜形成装置で前記チップ上に前記熱硬化性膜を形成する前に、基板上に前記複数のチップが配置された状態で、当該チップ上に前記熱硬化性膜の剥離膜を形成する剥離膜形成装置をさらに有することを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の接合システム。
前記熱硬化性膜形成装置で前記チップ上に前記熱硬化性膜を形成した後であって、前記接合装置で基板と複数のチップを接合する前に、基板を熱処理し、前記熱硬化性膜中の溶剤を除去する熱処理装置をさらに有することを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の接合システム。
前記接合装置で基板と複数のチップを接合した後、前記熱硬化性膜を除去する熱硬化性膜除去装置をさらに有することを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の接合システム。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる接合システム1の構成の概略を示す平面図である。
図2は、接合システム1の内部構成の概略を示す側面図である。
【0033】
接合システム1では、
図3に示すように基板としてのウェハW上に複数のチップCを接合する。以下、
図4に示すようにウェハWにおいて、チップCと接合される面を「表面Wa」といい。当該表面Waと反対側の面を「裏面Wb」という。同様にチップCにおいて、ウェハWと接合される面を「表面Ca」といい。当該表面Caと反対側の面を「裏面Cb」という。
【0034】
ウェハWの表面Waには複数のバンプBwが形成され、当該バンプBwの先端にはソルダSwが形成されている。同様にチップCの表面Caには複数のバンプBcが形成され、当該バンプBcの先端にはソルダScが形成されている。バンプBw、Bcはそれぞれ例えば銅(Cu)からなり、ソルダSw、Scはそれぞれ例えば銀スズ(AgSn)や金スズ(AuSn)からなる。なお、以下の説明において、バンプBw、Bcと呼称する際には、それぞれソルダSw、Scを含む場合がある。
【0035】
ウェハWのバンプBwとチップCのバンプBcは、それぞれ対応する位置に形成されている。そして、ウェハWのバンプBwとチップCのバンプBcがそれぞれ接合されて、ウェハW上にチップCが接合される。
【0036】
なお、接合システム1に搬入されるウェハWの表面Waには、予め複数のチップCが所定の位置に仮接合されている。この仮接合は、ウェハWの搬送中や処理中にチップCが位置ずれしない程度に接合されるものであり、例えばウェハWの表面Waに複数のチップCを載置し、当該複数のチップCを軽く押圧することで仮接合される。
【0037】
接合システム1は、
図1に示すように例えば外部との間で複数のウェハWを収容可能なカセットCsが搬入出される搬入出ステーション2と、複数のチップCが搭載されたウェハWに対して所定の処理を施す各種処理装置を備えた処理ステーション3とを一体に接続した構成を有している。
【0038】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。カセット載置台10には、複数、例えば4つのカセット載置板11が設けられている。カセット載置板11は、X方向(
図1中の上下方向)に一列に並べて配置されている。これらのカセット載置板11には、接合システム1の外部に対してカセットCsを搬入出する際に、カセットCsを載置することができる。このように搬入出ステーション2は、複数のウェハWを保有可能に構成されている。なお、カセット載置板11の個数は、本実施の形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0039】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10に隣接してウェハ搬送部20が設けられている。ウェハ搬送部20には、X方向に延伸する搬送路21上を移動自在なウェハ搬送装置22が設けられている。ウェハ搬送装置22は、鉛直方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板11上のカセットCsと、後述する処理ステーション3の第3の処理ブロックG3のトランジション装置50、51との間でウェハWを搬送できる。
【0040】
処理ステーション3には、各種処理装置を備えた複数例えば3つの処理ブロックG1、G2、G3が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(
図1中のX方向負方向側)には、第1の処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1中のX方向正方向側)には、第2の処理ブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1中のY方向負方向側)には、第3の処理ブロックG3が設けられている。
【0041】
例えば第1の処理ブロックG1には、ウェハW上に複数のチップCを接合する接合装置30、31と、ウェハWの複数のチップC上に残存する熱硬化性膜を除去する熱硬化性膜除去装置32、33とが、搬入出ステーション2側からこの順でY方向に並べて配置されている。なお、これら接合装置30、31、熱硬化性膜除去装置32、33の装置数や配置は任意に設定することができる。また、これら接合装置30、31、熱硬化性膜除去装置32、33の構成については後述する。
【0042】
例えば第2の処理ブロックG2には、
図2に示すようにウェハWの複数のチップC上に剥離膜を形成する剥離膜形成装置40、41と、ウェハWの複数のチップC(剥離膜)上に熱硬化性膜を形成する熱硬化性膜形成装置42、43と、ウェハWを所定の温度に熱処理する熱処理装置44〜46と、同様の熱処理装置47〜49とが、搬入出ステーション2側からこの順でY方向に並べて配置されている。剥離膜形成装置40、41と熱硬化性膜形成装置42、43は、それぞれ下からこの順で2段に設けられている。また、熱処理装置44〜46と熱処理装置47〜49は、それぞれ下からこの順で3段に設けられている。なお、剥離膜形成装置40、41、熱硬化性膜形成装置42、43、熱処理装置44〜49の装置数や配置は任意に設定することができる。
【0043】
剥離膜形成装置40、41では、いわゆるスピン塗布法によってウェハW上に剥離膜が形成される。すなわち、例えばスピンチャックに保持されたウェハWを回転させながら、当該ウェハW上に剥離剤を供給する。そうすると、供給された剥離剤はウェハWの表面Wa上、すなわちウェハWの複数のチップC上を拡散し、当該複数のチップC上に剥離膜が形成される。なお、剥離膜はチップCから熱硬化性膜を剥離するための膜であって、剥離剤には例えばフッ素系の剥離剤が用いられる。
【0044】
なお、剥離膜形成装置40、41における剥離膜の形成方法は、本実施の形態に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えばミスト状の剥離剤を用いて複数のチップC上に剥離膜を形成してもよいし、或いは気化した剥離剤を用いて複数のチップC上に剥離膜を形成してもよい。
【0045】
熱処理装置44〜49は、ウェハWを載置して加熱する熱板と、ウェハWを載置して冷却する冷却板を有し、加熱処理と冷却処理の両方を行うことができる。
【0046】
なお、熱硬化性膜形成装置42、43の構成については後述する。
【0047】
例えば第3の処理ブロックG3には、ウェハWのトランジション装置50、51が下からこの順で2段に設けられている。
【0048】
図1に示すように第1の処理ブロックG1〜第3の処理ブロックG3に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域60が形成されている。ウェハ搬送領域60には、例えばウェハ搬送装置61が配置されている。
【0049】
ウェハ搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向(Y方向、X方向)及び鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置61は、ウェハ搬送領域60内を移動し、周囲の第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2及び第3の処理ブロックG3内の所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0050】
次に、上述した接合装置30、31の構成について説明する。接合装置30は、
図5に示すように内部を密閉可能な処理容器100を有している。
【0051】
処理容器100は、下部チャンバ101と上部チャンバ102を有している。上部チャンバ102は、例えばエアシリンダ等の昇降機構(図示せず)によって鉛直方向に昇降可能に構成されている。下部チャンバ101における上部チャンバ102との接合面には、処理容器100の内部の気密性を保持するためのシール材103が設けられている。シール材103には、例えばOリングが用いられる。そして、
図6に示すように下部チャンバ101と上部チャンバ102を当接させることで、処理容器100の内部が密閉空間に形成される。
【0052】
下部チャンバ101には、処理容器100内の雰囲気を減圧する減圧機構120が設けられている。減圧機構120は、処理容器100内の雰囲気を吸気するための吸気管121と、吸気管121に接続された例えば真空ポンプなどの負圧発生装置122とを有している。
【0053】
処理容器100の内部には、ウェハWを上面で載置して保持する第1の支持部130と、ウェハWの複数のチップC上に形成された熱硬化性膜Tに当接する第2の支持部131とが設けられている。第1の支持部130は下部チャンバ101に支持され、第2の支持部131は上部チャンバ102に支持されている。また、第1の支持部130は、第2の支持部131の下方に設けられ、第2の支持部131と対向するように配置されている。
【0054】
第1の支持部130には、例えばウェハWを静電吸着するための静電チャックが用いられる。第1の支持部130には、熱伝導性を有する窒化アルミセラミックなどのセラミックが用いられる。また、第1の支持部130には、例えば直流高圧電源140が接続されている。そして、第1の支持部130の表面に静電気力を生じさせて、ウェハWを第1の支持部130上に静電吸着することができる。なお、第1の支持部130の材質は本実施の形態に限定されず、例えば炭化ケイ素セラミックやアルミナセラミック等の他のセラミックを用いてもよいし、例えば第1の支持部130の表面に絶縁層を形成する場合には、セラミックの他、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料を用いてもよい。
【0055】
第1の支持部130の内部には、ウェハWを加熱する熱処理機構としての第1の加熱機構141が設けられている。第1の加熱機構141には、例えばヒータが用いられる。第1の加熱機構141によるウェハWの加熱温度は、例えば制御部400により制御される。
【0056】
また、第1の支持部130の下面側には、第1の冷却機構142が設けられている。第1の冷却機構142には、例えば銅製の冷却ジャケットが用いられる。すなわち、第1の冷却機構142に冷却媒体、例えば冷却ガスが流通し、当該冷却媒体によってウェハWが冷却される。第1の冷却機構142によるウェハWの第1の冷却温度は、例えば制御部400により制御される。なお、第1の冷却機構142は本実施の形態に限定されず、ウェハWを冷却できれば種々の構成を取り得る。例えば第1の冷却機構142には、ペルチェ素子などの冷却部材が内蔵されていてもよい。
【0057】
さらに、第1の冷却機構142の下面側には、断熱板143が下部チャンバ101に支持されて設けられている。断熱板143は、第1の加熱機構141によりウェハWを加熱する際の熱が下部チャンバ101側に伝達されるのを防止する。なお段熱板213には、例えば窒化ケイ素が用いられる。
【0058】
第1の支持部130の下方には、ウェハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン150が例えば3箇所に設けられている。昇降ピン150は、昇降駆動部151により上下動できる。昇降駆動部151は、例えばボールネジ(図示せず)と当該ボールネジを回動させるモータ(図示せず)とを有している。また、第1の支持部130の中央部付近には、第1の支持部130及び下部チャンバ101を厚み方向に貫通する貫通孔152が例えば3箇所に形成されている。そして、昇降ピン150は貫通孔152を挿通し、第1の支持部130の上面から突出可能になっている。なお、昇降駆動部151は下部チャンバ101の下部に設けられている。そして昇降駆動部151は、支持部材160上に設けられている。
【0059】
第2の支持部131には、熱伝導性を有する窒化アルミセラミックなどのセラミックが用いられる。第2の支持部131は、上述したように複数のチップC上の熱硬化性膜Tに当接すればよいが、例えば熱硬化性膜Tを押圧する図示しない押圧板(例えばSiウェハ)が設けられる場合、当該押圧板を静電吸着するための静電チャックであってもよい。かかる場合、第2の支持部131には、例えば直流高圧電源(図示せず)が接続される。なお、第2の支持部131の材質は本実施の形態に限定されず、例えば炭化ケイ素セラミックやアルミナセラミック等の他のセラミックを用いてもよいし、例えば第2の支持部131の表面に絶縁層を形成する場合には、セラミックの他、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料を用いてもよい。また、押圧板を用いない場合は、第2の支持部131には熱硬化性膜Tと剥離性の高い表面処理、例えばフッ素被膜を付加してもよい。
【0060】
第2の支持部131の内部には、ウェハWを加熱する熱処理機構としての第2の加熱機構170が設けられている。第2の加熱機構170には、例えばヒータが用いられる。第2の加熱機構170には、例えばヒータが用いられる。第2の加熱機構170によるウェハWの加熱温度は、例えば制御部400により制御される。
【0061】
また、第2の支持部131の上面側には、第2の冷却機構171が設けられている。第2の冷却機構171には、例えば銅製の冷却ジャケットが用いられる。すなわち、第2の冷却機構171に冷却媒体、例えば冷却ガスが流通し、当該冷却媒体によってウェハWが冷却される。第2の冷却機構171によるウェハWの第2の冷却温度は、例えば制御部400により制御される。なお、第2の冷却機構171は本実施の形態に限定されず、第2の冷却機構171を冷却できれば種々の構成を取り得る。例えば第2の冷却機構171には、ペルチェ素子などの冷却部材が内蔵されていてもよい。
【0062】
なお、第2の支持部131は、第2の冷却機構171の上面側に設けられた断熱板(図示せず)を有していてもよい。この断熱板は、第2の加熱機構170によりウェハWを加熱する際の熱が後述する支持板180側に伝達されるのを防止する。
【0063】
第2の支持部131の上面側には、支持板180を介して、第2の支持部131を鉛直下方に押圧する押圧機構190が設けられている。押圧機構190は、ウェハWを覆うように設けられた圧力容器191と、圧力容器191の内部に流体、例えば圧縮空気を供給する流体供給管192と、内部に流体を貯留し、流体供給管192に流体を供給する流体を流体供給源193とを有している。
【0064】
なお、これら第2の支持部131の上面側の部材は、支持板180の上方に設けられたエアシリンダ(図示せず)に支持されている。そして、支持板180の上方に設けられた調整ボルト(図示せず)によって、上部チャンバ102の平行出しや、第2の支持部131と第1の支持部130との隙間の調整が行われる。
【0065】
圧力容器191は、例えば鉛直方向に伸縮自在の例えばステンレス製のベローズにより構成されている。圧力容器191は、その下面が支持板180の上面に固定されると共に、上面が第2の支持部131の上方に設けられた支持板194の下面に固定されている。支持板194は、上部チャンバ102に支持されている。流体供給管192は、その一端が圧力容器191に接続され、他端が流体供給源193に接続されている。そして、圧力容器191に流体供給管192から流体を供給することで、圧力容器191が伸長する。この際、圧力容器191の上面と支持板194の下面とが当接しているので、圧力容器191は下方向にのみ伸長し、圧力容器191の下面に設けられた第2の支持部131を下方に押圧することができる。そして圧力容器191が伸縮性を有するので、第2の支持部131の平行度と第1の支持部130の平行度に差異が生じていても、圧力容器191はその差異を吸収できる。またこの際、圧力容器191の内部は流体により加圧されており、均一に押圧できる。したがって、第1の支持部130と第2の支持部131の平行度に関わらず、圧力容器191は第2の支持部131を面内均一に押圧することができる。第2の支持部131を押圧する際の圧力の調節は、圧力容器191に供給する圧縮空気の圧力を調節することで行われる。なお、支持板194は、押圧機構190により第2の支持部131にかかる荷重の反力を受けても変形しない強度を有する部材により構成されているのが好ましい。
【0066】
なお、接合装置31の構成は、上述した接合装置30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0067】
次に、上述した熱硬化性膜除去装置32、33の構成について説明する。熱硬化性膜除去装置32は、
図7に示すように内部を密閉可能な処理容器200を有している。処理容器200のウェハ搬送領域60側の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
【0068】
処理容器200の内部には、ウェハWを上面で載置して保持する第1の保持部210と、ウェハWの複数のチップC上に形成された熱硬化性膜Tを吸着保持する第2の保持部240とが設けられている。第1の保持部210は、第2の保持部240の下方に設けられ、第2の保持部240と対向するように配置されている。
【0069】
第1の保持部210には、例えばウェハWを吸着保持するための真空チャックが用いられる。第1の保持部210には、ウェハWを吸着保持するための吸引管211が接続され、当該吸引管211は、例えば真空ポンプなどの負圧発生装置212に接続されている。なお、本実施の形態では第1の保持部210として、真空チャックを用いたが、これに限定されるものではない。例えば第1の保持部210として、静電チャックを用いてもよい。
【0070】
第1の保持部210の下方には、ウェハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン230が例えば3箇所に設けられている。昇降ピン230は、処理容器200の底面に設けられた昇降駆動部231により上下動できる。昇降駆動部231は、例えばボールネジ(図示せず)と当該ボールネジを回動させるモータ(図示せず)とを有している。また、第1の保持部210の中央部付近には、第1の保持部210を厚み方向に貫通する貫通孔232が例えば3箇所に形成されている。そして、昇降ピン230は貫通孔232を挿通し、第1の保持部210の上面から突出可能になっている。
【0071】
第2の保持部240は、後述する局所移動部260によって引っ張られた際に、その形状を柔軟に変化させることができるように、柔軟性を有する部材で形成される。第2の保持部240は、薄板状の本体部241と、本体部241の表面に貼り付けられた吸着パッド242とを備える。本体部241は、たとえば板バネなどの弾性部材で形成され、吸着パッド242は、樹脂部材又はゴムで形成される。
【0072】
本体部241の外周部には、引張部241aが形成されている。この引張部241aの先端には、後述する局所移動部260のシリンダ262が取り付けられる。
【0073】
また、本体部241の外周部には、複数の固定部241bが設けられている。固定部241bは、後述する支持板250に設けられる支持部材251に対応する位置に設けられており、かかる支持部材251に固定される。第2の保持部240は、固定部241bが支持板250の支持部材251に固定されることによって、支持板250に支持される。
【0074】
吸着パッド242は、ウェハWの複数のチップC上に形成された熱硬化性膜Tを吸着保持する円盤状の樹脂部材である。吸着パッド242には、熱硬化性膜Tを吸着保持するための吸引管243が接続され、当該吸引管243は、例えば真空ポンプなどの負圧発生装置244に接続されている。なお、吸着パッド242は熱硬化性膜Tを吸着するが、その後、吸着パッド242から熱硬化性膜Tを剥離除去する。
【0075】
第2の保持部240の上方には、支持板250が第2の保持部240と空隙を介して対向配置される。支持板250の下面には複数の支持部材251が第2の保持部240へ向けて突設される。かかる支持部材251と第2の保持部240の固定部241bとが固定されることによって、第2の保持部240は、支持板250に支持された状態となる。
【0076】
支持板250の外周部上面には、第2の保持部240の外周部の一部を第1の保持部210から離す方向へ移動させる局所移動部260が設けられている。局所移動部260は、支持板250に固定された本体部261と、基端部が本体部261に固定され、本体部261によって鉛直方向に沿って昇降するシリンダ262とを備える。シリンダ262の先端部は、第2の保持部240の本体部241に設けられた引張部241aに固定される。
【0077】
かかる局所移動部260は、本体部261を用いてシリンダ262を鉛直上方に移動させることにより、シリンダ262に固定された引張部241aを鉛直上方へ移動させる。これにより、第2の保持部240に保持された熱硬化性膜Tが鉛直上方へ移動し、第1の保持部210に保持されたウェハW上のチップCから剥離される。
【0078】
また、局所移動部260には、ロードセル263が設けられており、局所移動部260は、シリンダ262にかかる負荷をロードセル263によって検出することができる。局所移動部260は、ロードセル263による検出結果に基づいて、熱硬化性膜Tにかかる鉛直上向きの力を制御しながら、第2の保持部240を引っ張ることができる。
【0079】
支持板250の上方には、移動機構270が配置される。移動機構270は、処理容器200の天井面に固定された本体部271と、基端部が本体部271に固定されて鉛直方向に沿って昇降する昇降駆動部272とを備える。昇降駆動部272としては、たとえばモータやシリンダ等を用いることができる。昇降駆動部272の先端部は、支持板250の中央部上面に固定される。
【0080】
かかる移動機構270は、本体部271を用いて昇降駆動部272を鉛直上方に移動させることにより、昇降駆動部272に固定された支持板250を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、支持板250に支持された第2の保持部240および局所移動部260が昇降する。
【0081】
なお、熱硬化性膜除去装置33の構成は、上述した熱硬化性膜除去装置32の構成と同様であるので説明を省略する。
【0082】
次に、上述した熱硬化性膜形成装置42、43の構成について説明する。接合装置30は、
図8に示すように内部を密閉可能な処理容器300を有している。処理容器300のウェハ搬送領域60側の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
【0083】
処理容器300の内部には、ウェハWを保持して回転させるスピンチャック310が設けられている。スピンチャック310は、水平な上面を有し、当該上面の中心部には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック310上に吸着保持できる。
【0084】
スピンチャック310は、例えばモータなどを備えたチャック駆動部311を有し、そのチャック駆動部311により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部311には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック310は上下動可能になっている。
【0085】
スピンチャック310の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ312が設けられている。カップ312の下面には、回収した液体を排出する排液管313と、カップ312内の雰囲気を排気する排気管314が接続されている。
【0086】
図2に示すようにスピンチャック310のX方向負方向(
図2の下方向)側には、Y方向(
図2の左右方向)に沿って延伸するレール320が形成されている。レール320は、例えばスピンチャック310のY方向負方向(
図2の左方向)側の外方からY方向正方向(
図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール320には、アーム321が取り付けられている。
【0087】
アーム321には、
図8及び
図9に示すようにウェハWに熱硬化性剤を供給する塗布ノズル322が支持されている。アーム321は、
図2に示す移動機構としてのノズル駆動部323により、レール320上を移動自在である。これにより、塗布ノズル322は、スピンチャック310のY方向正方向側の外方に設置された待機部324からスピンチャック310上のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、アーム321は、ノズル駆動部323によって昇降自在であり、塗布ノズル322の高さを調整できる。
【0088】
なお、熱硬化性剤としては、後述するようにウェハWとチップCを接合する際の温度よりも低い温度で硬化する材料が用いられる。本実施の形態の熱硬化性剤には、例えば170℃〜180℃で硬化する熱硬化性樹脂が用いられ、例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂が用いられる。
【0089】
塗布ノズル322は、
図10に示すようにX方向に向けて延伸する略直方体形状に形成されている。塗布ノズル322は、例えばウェハWの径よりも長く形成されている。塗布ノズル322の下端面には、例えばウェハWの径よりも長いスリット状の塗布液の吐出口322aが形成されている。
【0090】
塗布ノズル322には、
図8に示すように当該塗布ノズル322に熱硬化性剤を供給する供給管325が接続されている。供給管325は、内部に熱硬化性剤を貯留する熱硬化性剤供給源326に連通している。また、供給管325には、熱硬化性剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群327が設けられている。
【0091】
なお、熱硬化性膜形成装置43の構成は、上述した熱硬化性膜形成装置42の構成と同様であるので説明を省略する。
【0092】
以上の接合システム1には、
図1に示すように制御部400が設けられている。制御部400は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、接合システム1におけるウェハWと複数のチップCの接合処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、接合システム1における後述の接合処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部400にインストールされたものであってもよい。
【0093】
次に、以上のように構成された接合システム1を用いて行われるウェハWと複数のチップCの接合処理方法について説明する。
図11は、かかる接合処理の主な工程の例を示すフローチャートである。
【0094】
なお、本実施の形態において、接合システム1に搬入されるウェハW上には、
図12に示すように予め複数のチップCが所定の位置に仮接合されている。これら複数のチップCの高さは、上述した種々の要因によりばらついている。なお、
図12中ではウェハW上に3つのチップCが図示されているが、実際にはさらに多数のチップCが配置されている。また、
図12中の符号“B”はバンプBw、Bcを指す。
【0095】
先ず、複数枚のウェハWを収容したカセットCsが、搬入出ステーション2の所定のカセット載置板11に載置される。その後、ウェハ搬送装置22によりカセットCs内のウェハWが取り出され、処理ステーション3の第3の処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。このとき、ウェハWは、複数のチップCが仮接合された表面Waが上方を向いた状態で搬送される。
【0096】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって剥離膜形成装置40に搬送される。剥離膜形成装置40では、スピンチャックに保持されたウェハWを回転させながら、当該ウェハW上に剥離剤を供給する。そうすると、供給された剥離剤はウェハWの表面Wa上、すなわちウェハWの複数のチップC上を拡散し、
図13に示すように複数のチップC上に剥離膜Dが形成される(
図11の工程S1)。なお、この剥離膜Dの膜厚は例えば数nm〜100nmである。
【0097】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって熱処理装置44に搬送される。熱処理装置44では、ウェハWが所定の温度に熱処理されて、ウェハWの複数のチップC上に形成された剥離膜D中の溶剤が除去され、当該剥離膜Dが焼成される(
図11の工程S2)。
【0098】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって熱硬化性膜形成装置42に搬送される。熱硬化性膜形成装置42に搬入されたウェハWは、スピンチャック310に吸着保持される。
【0099】
続いて、
図14に示すようにアーム321によって、待機部324の塗布ノズル322をウェハWの外周部の上方まで移動させ、さらに塗布ノズル322を所定の高さまで下降させる。このとき、塗布ノズル322の吐出口322aとチップC上の剥離膜Dと塗布ノズル322との距離は、剥離膜D上に塗布される熱硬化性剤Sの膜厚に応じて設定され、本実施の形態では例えば10μm〜20μmである。そして、熱硬化性剤供給源326から塗布ノズル322に熱硬化性剤Sを供給し、当該塗布ノズル322の吐出口322aから表面張力によって熱硬化性剤Sを露出させる。そうすると、剥離膜D表面と塗布ノズル322の吐出口322aとの間に、塗布ノズル322から吐出された熱硬化性剤Sの液溜まりが形成される。
【0100】
その後、熱硬化性剤Sを剥離膜Dの表面に接触させた状態で、アーム321によって塗布ノズル322をウェハWの径方向(
図14中の矢印の方向)に移動させる。そうすると、吐出口322aから吐出された熱硬化性剤Sは、その自重と毛細管現象の作用によって剥離膜Dの表面に順次供給される。
【0101】
この熱硬化性剤Sの塗布は、当該熱硬化性剤Sが接触する剥離膜Dの表面に対してのみ行われる。したがって、剥離膜Dが形成されていない場所、すなわちチップC、C間のウェハWの表面Waには熱硬化性剤Sが流入しない。こうして、
図15に示すようにウェハWの複数のチップCに形成された剥離膜D上に熱硬化性剤Sが塗布され、当該剥離膜D上に熱硬化性膜Tが形成される(
図11の工程S3)。
【0102】
なお、工程S3において塗布される熱硬化性膜Tの膜厚は、複数のチップCの高さのばらつきを吸収する高さ以上であって、本実施の形態では例えば10μm〜20μmである。
【0103】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって熱処理装置47に搬送される。熱処理装置47では、ウェハWが所定の温度、例えば140℃に加熱されて、ウェハWの複数のチップC上に形成された熱硬化性膜T中の溶剤が除去され、当該熱硬化性膜Tが焼成される(
図11の工程S4)。
【0104】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって接合装置30に搬送される。このとき、上部チャンバ102は下部チャンバ101の上方に位置しており、上部チャンバ102と下部チャンバ101は当接しておらず、処理容器100内が密閉空間に形成されていない。接合装置30に搬送されたウェハWは、第1の支持部130に載置されて保持される。
【0105】
その後、移動機構(図示せず)によって上部チャンバ102を下降させる。そして、上部チャンバ102と下部チャンバ101を当接させて、これら上部チャンバ102と下部チャンバ101で構成される処理容器100の内部が密閉空間に形成される。
【0106】
その後、減圧機構120によって処理容器100内の雰囲気を吸引し、処理容器100内を所定の真空度まで減圧する。このように処理容器100の内部を真空雰囲気下に維持することにより、ウェハWやチップC、バンプBw、Bcが酸化するのを抑制することができる。
【0107】
その後、第1の加熱機構141と第2の加熱機構170によって第1の支持部130に保持されたウェハWを第1の温度に加熱しながら、押圧機構190によって第2の支持部131を熱硬化性膜Tに当接させる(
図11の工程S5)。この第1の温度は、熱硬化性膜Tが硬化しない温度、例えば150℃に設定される。
【0108】
この工程S5では、熱硬化性膜Tが適当な粘度を有しているため、
図16に示すように熱硬化性膜Tが変形し、当該熱硬化性膜Tの上面が第2の支持部131の下面に倣う。これにより、複数のチップCの高さのばらつきが吸収され、複数のチップC上のすべての熱硬化性膜Tの高さがウェハ面内で均一になる。
【0109】
なお、上述した第1の温度は、複数のチップCの高さのばらつきに応じて設定される。例えば複数のチップCの高さのばらつきが大きい場合には、上記第1の温度を低く設定し、熱硬化性膜Tの流動性を向上させればよい。また、押圧機構190によって第2の支持部131を押圧する際の押圧圧力も、複数のチップCの高さのばらつきに応じて設定される。例えば複数のチップCの高さのばらつきが大きい場合には、押圧圧力を大きくすればよい。さらに、上記のように第1の温度と押圧圧力を設定できない場合には、例えば工程S5を行う時間を調整してもよい。
【0110】
その後、第1の加熱機構141と第2の加熱機構170によって、ウェハWを第2の温度に加熱する(
図11の工程S6)。の第2の温度は第1の温度より高い温度であって、熱硬化性膜Tが硬化する温度であり、例えば170℃〜180℃である。この工程S6によって、
図17に示すように熱硬化性膜Tが硬化する。
【0111】
その後、第1の加熱機構141と第2の加熱機構170によってウェハWを第3の温度に加熱しながら、押圧機構190によってウェハWと複数のチップCを押圧する(
図11の工程S7)。この第3の温度は第2の温度又はそれより高い温度であって、ウェハWとチップCを接合するのに必要な温度であり、すなわちウェハW上のバンプBwのソルダSwとチップC上のバンプBcのソルダScが接合するのに必要な温度であり、例えば180℃〜200℃である。また、押圧機構190の押圧圧力は、ウェハWとチップCを接合するのに必要な圧力、例えば50kN〜100kNに設定される。
【0112】
この工程S7では、上記工程S5において複数の熱硬化性膜Tの高さが均一になっているため、複数のチップCは均一な圧力でウェハWに押圧される。また、上記工程S6において熱硬化性膜Tが硬化しているので、押圧機構190によってウェハWとチップCを所定の圧力で押圧しても、熱硬化性膜Tが変形することはない。こうして、ウェハW上のバンプBwのソルダSwとチップC上のバンプBcのソルダScが適切に接合され、
図18に示すようにウェハWと複数のチップCが適切に接合される。
【0113】
所定時間経過し、ウェハWと複数のチップCが接合された後、第1の冷却機構142と第2の冷却機構171によってウェハWを所定の温度に冷却する。このとき、ウェハWやチップC、バンプBw、Bcが空気と接触した際に、当該ウェハW、チップC、バンプBw、Bcが酸化しない酸化しない温度、例えば常温まで冷却される。
【0114】
その後、減圧機構120による処理容器100内の減圧を停止した後、移動機構(図示せず)によって上部チャンバ102を上昇させる。複数のチップCが接合されたウェハWは、第1の支持部130からウェハ搬送装置61に受け渡され、接合装置30から搬出される。
【0115】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置61によって熱硬化性膜除去装置32に搬送される。熱硬化性膜除去装置32に搬入されたウェハWは、第1の保持部210に保持される。
【0116】
その後、移動機構270によって第2の保持部240を下降させる。第2の保持部240は、吸着パッド242が複数のチップC上の熱硬化性膜Tに当接するまで下降する。そして、
図19に示すように第2の保持部240によって複数の熱硬化性膜Tが吸着保持される。
【0117】
その後、
図20に示すように局所移動部260を用いて第2の保持部240の外周部の一部を引っ張る。具体的には、局所移動部260は、第2の保持部240の本体部241に設けられた引張部241aをシリンダ262の動作によって鉛直上向きに移動させる。これにより、引張部241a側(
図20のY方向負方向側)にある熱硬化性膜T1の外周部が鉛直上向きに引っ張られて、当該熱硬化性膜TがチップC(剥離膜D)から連続的に剥離する。
【0118】
引張部241aの鉛直上向きの移動は引き続き行われ、熱硬化性膜T1が剥離すると、続いて熱硬化性膜T2、T3がチップCから連続的に剥離する。こうして、ウェハW上にある複数の熱硬化性膜Tが、引張部241aからY方向正方向に連続的に剥離される。
【0119】
ここで、上述したように、第2の保持部240は、柔軟性を有する部材で形成されるため、局所移動部260が第2の保持部240の引張部241aを鉛直上向きに引っ張った際に、かかる引っ張りに伴って柔軟に変形する。これにより、ウェハWと複数のチップCに対して大きな負荷をかけることなく、熱硬化性膜TをチップCから剥離させることができる。
【0120】
また、チップC上には剥離膜Dが形成されているので、熱硬化性膜Tは円滑にチップCから剥離される。
【0121】
その後、
図21に示すように移動機構270によって第2の保持部240を上昇させる。これにより、複数の熱硬化性膜Tが複数のチップCから剥離する(
図11の工程S8)。
【0122】
その後、熱硬化性膜Tが剥離されたウェハWは、ウェハ搬送装置61によってトランジション装置51に搬送され、その後搬入出ステーション2のウェハ搬送装置22によって所定のカセット載置板11のカセットCsに搬送される。こうして、一連のウェハWと複数のチップCの接合処理が終了する。
【0123】
なお、ウェハWの複数のチップC上には剥離膜Dが残存しているが、当該剥離膜Dの除去は、例えばウェハW上に洗浄液を供給して行われる。この剥離膜Dの除去は、接合システム1の外部で行ってもよいし、接合システム1の内部に別途洗浄装置を設けて、当該洗浄装置で行ってもよい。
【0124】
以上の実施の形態によれば、工程S5において第1の温度でウェハWを加熱する際、複数のチップC上の熱硬化性膜Tは硬化しない。この状態で複数のチップC上の熱硬化性膜Tに第2の支持部131を当接させると、当該第2の支持部131の当接面に倣って熱硬化性膜Tが変形する。このため、例えばウェハW上で複数のチップCの高さがばらついていても、熱硬化性膜Tの高さはウェハ面内で均一になる。その後、工程S6において第2の温度でウェハWを加熱し、熱硬化性膜Tを硬化させた後、工程S7において第3の温度でウェハWを加熱しながら、ウェハWと複数のチップCを押圧する。この工程S7において、熱硬化性膜Tの高さがウェハ面内で均一であるため、ウェハWと複数のチップCを均一に適切な圧力で押圧することができる。このように適切な圧力で押圧できるので、ウェハWとチップCの接合強度を適切にすることができ、さらにウェハWとチップCが損傷を被ることもない。したがって、ウェハWと複数のチップCを適切に接合することができる。
【0125】
しかも、本実施の形態によれば、ウェハW上に複数のチップCを配置した状態で、一度にウェハWと複数のチップCを接合している。このため、従来のようにチップの接合を1枚ずつ行う場合に比べて、ウェハW上に複数のチップCを効率よく接合することができ、半導体デバイスの製造のスループットを向上させることができる。
【0126】
また接合システム1は、接合装置30、31、熱硬化性膜除去装置32、33、剥離膜形成装置40、41、熱硬化性膜形成装置42、43、熱処理装置44〜49を有しているので、上述した工程S1〜S8を順次行って、ウェハWと複数のチップCを接合することができる。また、一の装置において所定の処理を行っている間、他の装置において別の処理を行うこともできる。すなわち、接合システム1内で複数のウェハWを並行して処理することができる。したがって、ウェハWと複数のチップCの接合を効率よく行うことができ、接合処理のスループットを向上させることができる。
【0127】
また工程S3では、熱硬化性膜形成装置42において、熱硬化性剤Sの表面張力を利用して当該熱硬化性剤Sが塗布されるため、チップC(剥離膜D)のみに熱硬化性剤Sが塗布され、チップC、C間のウェハWの表面Waには熱硬化性剤Sが流入しない。そうすると、工程S8で熱硬化性膜除去装置32において、熱硬化性膜Tを容易に除去することができる。したがって、ウェハWと複数のチップCの接合処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0128】
また工程S5〜S7では、接合装置30、31において、ウェハWと複数のチップCの接合処理が所定の真空度の雰囲気下で行われる。したがって、ウェハWやチップC、バンプBw、Bcが酸化するのを抑制することができる。
【0129】
以上の実施の形態の工程S4では、熱処理装置47においてウェハWが所定の温度、例えば140℃に加熱されていたが、当該ウェハWの加熱処理を2段階で行ってもよい。例えば工程S3において熱硬化性膜Tが形成されたウェハWを熱処理装置48に搬送し、当該熱処理装置48においてウェハWを例えば100℃に加熱処理する。その後、ウェハWを別の熱処理装置49に搬送し、当該熱処理装置49においてウェハWを例えば140℃に加熱処理する。このようにウェハWの加熱温度を段階的に上げることによって、熱硬化性膜T中の溶剤が突沸するのを抑制することができる。
【0130】
以上の実施の形態の工程S3では、熱硬化性膜形成装置42においてノズル駆動部323によって塗布ノズル322を水平方向に移動させることで、ウェハWと塗布ノズル322を相対的に移動させたが、ウェハWを水平方向に移動させるようにしてもよい。或いは、塗布ノズル322とウェハWの両方を水平方向に移動させるようにしてもよい。
【0131】
また、以上の実施の形態の工程S3では、熱硬化性膜形成装置42においてウェハWの複数のチップC上に熱硬化性剤Sを塗布していたが、熱硬化性膜Tの形成方法はこれに限定されない。例えば熱硬化性膜TをチップC上に貼り付けてもよい。
【0132】
以上の実施の形態の工程S8では、熱硬化性膜除去装置32を用いていたが、熱硬化性膜Tの除去方法はこれに限定されない。例えば熱硬化性膜TがチップCから容易に剥離できる材料であれば、例えば粘着テープを用いて熱硬化性膜Tを剥離するなど、さらに簡易な方法で熱硬化性膜Tを除去してもよい。また、熱硬化性膜TがチップCから容易に剥離できる材料であれば、工程S1、S2のチップC上の剥離膜Dの形成を省略してもよい。かかる場合、剥離膜形成装置40、41を省略することができる。
【0133】
以上の実施の形態では、工程S2において剥離膜Dを焼成し、工程S4において熱硬化性膜Tを焼成していたが、これら剥離膜Dと熱硬化性膜Tによっては、当該焼成処理を省略してもよい。
【0134】
なお、以上の実施の形態の第1の温度と第2の温度は例示であって、熱硬化性膜Tの種類に応じて設定される。また、第3の温度も例示であって、製造される半導体デバイスの種類、すなわちチップCやバンプBw、Bcの種類に応じて設定される。
【0135】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。