(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055501
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-31453(P2015-31453)
(22)【出願日】2015年2月20日
(62)【分割の表示】特願2013-222157(P2013-222157)の分割
【原出願日】2004年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-130519(P2015-130519A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】03257195.2
(32)【優先日】2003年11月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】04254659.8
(32)【優先日】2004年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ボブ シュトレーフケルク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヤコブス マテウス バゼルマンス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジョセフ ブリュレス
(72)【発明者】
【氏名】マルセル マシユス セオドア マリー ディーリヒス
(72)【発明者】
【氏名】ショエルト ニコラース ラムベルテュス ドンデルス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーン アレクサンダー ホーゲンダム
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ロエロフ ロープシュトラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェロエン ヨハネス ソフィア マリア メルテンス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス キャサリヌス ヒュベルテュス ムルケンス
(72)【発明者】
【氏名】ティモテウス フランシスクス センゲルス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ヴァルター ジーン セフェリユンス
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ シュレポフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ボーム
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−124873(JP,A)
【文献】
特開2001−125259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化されたビームを投射する投射系と、
基板を支持する基板テーブルと、
前記投射系の最終要素の下かつ前記基板および/または前記基板テーブルの上表面を含む表面の上の空間に浸漬液を提供する液体供給システムと、を含み、
前記液体供給システムの下方に向く平面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して親液性であり、前記下方に向く平面の少なくとも一部は、前記液体供給システムと前記基板及び/又は前記基板テーブルとの間にシールを形成するシール手段よりも前記投射系の光軸側により近くに配置される、リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記投射系の一部の疎液性の表面であって、前記液体供給システムの少なくとも一部の上に位置する疎液性の表面をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体供給システムは、前記基板テーブルの上に位置して前記空間に前記浸漬液を閉じ込める液体閉じ込め構造であって、親液性である前記下方に向く平面の少なくとも一部を含む液体閉じ込め構造を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記液体閉じ込め構造の平面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して疎液性である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
疎液性である前記液体閉じ込め構造の平面の少なくとも一部は、下方に向いており、かつ、親液性である前記下方に向く平面に対して前記シール手段の他方の側に配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記基板テーブルの上表面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して疎液性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
パターン化されたビームを投射する投射系と、
基板を支持する基板テーブルと、
前記投射系の最終要素の下かつ前記基板および/または前記基板テーブルの上表面を含む表面の上の空間に浸漬液を提供する液体閉じ込め構造と、を含み、
前記液体閉じ込め構造の下方に向く平面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して親液性であり、前記下方に向く平面の少なくとも一部は、前記液体閉じ込め構造と前記基板及び/又は前記基板テーブルとの間にシールを形成するシール手段よりも前記投射系の光軸側により近くに配置される、リソグラフィ装置。
【請求項8】
前記投射系の一部の疎液性の表面であって、前記液体閉じ込め構造の少なくとも一部の上に位置する疎液性の表面をさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記液体閉じ込め構造の平面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して疎液性である、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
基板テーブルによって支持された基板の上にパターン化されたビームを投射するステップと、
液体供給システムを用いて空間に浸漬液を提供するステップであって、前記空間は、パターン化されたビームの投射に用いられる投射系の最終要素の下かつ前記基板および/または前記基板テーブルの上表面を含む表面の上にある、提供するステップと、
前記液体供給システムの一部の下方に向く親液性の平面に前記浸漬液を引きつけるステップであって、前記下方に向く親液性の平面の少なくとも一部は、前記液体供給システムと前記基板及び/又は前記基板テーブルとの間にシールを形成するシール手段よりも前記投射系の光軸側により近くに配置される、ステップと、を含む、デバイス製造方法。
【請求項11】
パターン化されたビームを基板に向けて投射する投射系と、
前記投射系の最終要素の下かつ前記基板および/または基板テーブルの上の空間に浸漬液を提供する液体供給システムと、を含み、
前記投射系の表面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して疎液性であり、疎液性である前記表面の少なくとも一部は前記液体供給システムの少なくとも一部の上に位置する、リソグラフィ装置。
【請求項12】
疎液性である前記表面の少なくとも一部は下方に向いている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
疎液性である前記表面の少なくとも一部は実質的に前記基板に平行である、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
疎液性である前記表面の少なくとも一部は前記最終要素の表面から離れている、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
疎液性である前記表面の少なくとも一部は環形である、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記最終要素の周りに位置し、前記空間に前記浸漬液を少なくとも部分的に閉じ込める液体閉じ込め構造をさらに備え、前記液体閉じ込め構造の底面の少なくとも一部は前記浸漬液に対して親液性である、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記液体閉じ込め構造は、疎液性である前記表面の少なくとも一部の下にある前記液体供給システムの前記一部である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記最終要素の周りに位置し、前記空間に前記浸漬液を少なくとも部分的に閉じ込める液体閉じ込め構造をさらに備え、疎液性である前記表面の少なくとも一部は、前記液体閉じ込め構造の上方に向く表面の上にある、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板の目標部分上に転写する機械である。リソグラフィ装置は、たとえば集積回路(IC)製造に使用することができる。このような状況では、マスクなどのパターン化手段を使用して、ICの各層に対応する回路パターンを形成することができ、このパターンは、放射線感応性材料(レジスト)の層を有する基板(たとえば、シリコン・ウェハ)上の(1個又は複数のダイを一部含む)目標部分上に結像することができる。一般に、1枚の基板は、順に露光される隣接する目標部分の網目を含む。周知のリソグラフィ装置には、一度にパターン全体を露光して目標部分上に移すことによって各目標部分を照射する、いわゆるステッパと、所与の方向(「走査」方向)に平行に又は逆平行に基板を同時に走査しながら、投射ビームを用いてパターンをこの方向に走査することによって、各目標部分を照射する、いわゆるスキャナとが含まれる。
【0003】
比較的屈折率の高い液、たとえば投射系の最終要素と基板の間の空間を満たすようにされた水の中に、リソグラフィ投射装置中の基板を浸漬することが提案されてきた。このことのポイントは、液中では露光用放射線の波長がより短くなるので、より小さいフィーチャを結像することが可能になることである(なお、液の作用は、系の実効NA(Numerical Aperture;開口数)を高め、焦点深度も増加させることであると見なすことができる)。
【0004】
しかし、基板又は基板及び基板テーブルを液の浴中に漬けること(たとえば、参照により全体を本明細書に組み込む米国特許出願第4,509,852号参照)は、走査しながらの露光中に加速しなければならない大きな液体の塊が存在することを意味する。このため、追加の又はより強力なモータが必要になり、液中の乱れが有害な予測できない作用をもたらす。
【0005】
これまで提案された一解決策は、(一般に、基板は投射系の最終要素より大きい表面面積を有するので)液閉じ込めシステムを使用することによって、液体供給システムが、基板の局限領域上で投射系の最終要素と基板の間のみに液を提供するものである。これを実現するために提案された一方法は、参照により全体を本明細書に組み込むWO99/49504に開示されている。
図2及び3に示すように、液を少なくとも1つの注入口INから基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の移動方向に供給し、投射系の下を通過させた後、液を少なくとも1つの排出口OUTから排出する。つまり、基板が要素の下で−X方向に走査されるとき、液は、要素の+X側で供給され、−X側で排出される。
図2は、液が注入口INから供給され、要素の他方の側で低圧源に接続された排出口OUTから排出される構成を概略的に示す。
図2では、液は、最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、必ずしもこうすることが必要ということではない。最終要素のまわりに配置される注入口及び排出口は、様々な向き及び数が可能であり、各側に排出口を有する4組の注入口が、最終要素のまわりに規則正しいパターンで設けられた一例を
図3に示す。
【0006】
これまで提案された他の解決策は、投射系の最終要素と基板テーブルの間の空間の少なくとも一部の境界に沿って延在するシール部材を、液体供給システムに装備するものである。シール部材は、Z方向(光軸の方向)で相対的にいくらか移動できるが、XY平面上では投射系に対して実質上静止している。シール部材と基板の表面の間にシールが形成される。シールは、ガス・シールなどの非接触シールが好ましい。そのようなシステムは、参照により全体を本明細書に組み込むヨーロッパ特許出願第03252955.4号に開示されている。
【0007】
投射系の最終要素と基板の間に液を使用するには、浸漬液を扱えるようにリソグラフィ装置を手直しすることが必要になる。上記の局限領域式液体供給システムを使用する場合、液体供給システムの投射系とは反対の側に位置し、液体供給システム中で投射系とシャッタ部材の間に浸漬液を閉じ込めることができるようなシャッタ部材を使用することが提案されている。このことによって、基板交換中、液体供給システムがレンズの下に浸漬液を保持することが可能になる。そのようなシステムは、参照により全体を本明細書に組み込むヨーロッパ特許出願第03254059.3号に開示されている。
【0008】
そのようなシステムでは、とりわけ走査運動中に液体供給システムと基板の間で液が漏れることが、問題になり得る。
【0009】
基板自体上に結像するのと同じ条件下で、基板テーブル上のスルー・レンズ・センサに結像することも利点がある。センサは、投射ビームに対して基板を正しく位置決めできることを保証するために使用される。こうしたセンサには、透過像センサ(TIS:Transmission Image Sensor)が含まれる。このTISは、レチクル(マスク)・レベルでのマーク・パターンの投射空中像の位置をウェハ・レベルで測定するために使用されるセンサである。通常、ウェハ・レベルの投射像は、投射ビームの波長と同程度のライン幅を有するライン・パターンである。TISは、その下にあるフォト・ディテクタを用い、透過パターンを使用することによってこれらのマスク・パターンを測定する。センサ・データは、ウェハ・テーブルの位置に対してマスクの位置を6自由度で測定するために使用される。マスク上の4点が測定に使用されるので、投射マスクの拡大率及びスケーリングも測定される。センサは、パターンの位置及びすべての照射の設定による影響(シグマ、レンズNA、すべてのマスク(バイナリ、PSM(位相シフト・マスク)など))の測定も可能でなければならないので、ライン幅が狭いことが必要になる。さらに、センサは、装置の光学的性能を測定/モニタするためにも使用される。ひとみ形状、及びコマ収差、球面収差、非点収差、像面収差などの収差を測定するために、様々な測定が実施される。これらの測定の際、様々な照射設定が様々な投射像と組み合わせて使用される。そのような他のセンサとして、リソグラフィ・ツール上に設けられた干渉波面測定システムであるスキャナ総合レンズ干渉計(ILIAS:Integrated Lens Interferometer At Scanner)があり得る。システムのセットアップ及び認定、並びにひとみ測定のために、レンズ収差の測定が必要なので、ILIASは、(ゼルニケ36まで)レンズ収差の測定を(静的に)行う。ILIASは、システム・セットアップ及び校正のために使用されるスキャナに搭載の総合測定システムである。ILIASは、装置の必要に応じて定期的にスキャナをモニタ及び再較正するために使用される。別のセンサとして、線量計(スポット・センサ)もあり得る。これらセンサは、すべて基板レベルで使用され、したがって基板テーブル上に配置される。浸漬液が投射ビームにどのような影響を与えるかについての複雑な予測を行う必要を避けるために、基板上に結像されるのと同じ条件下で、すなわち投射系の最終要素とセンサの間で所定の位置に浸漬液がある状態でセンサを照射することが望ましい。
【0010】
浸漬液中に漬ける必要があるこれらの様々な構成部品をすべて投射系中で使用することに関する問題点は、液体供給システムが別の構成部品に移動した後、浸漬液残渣が後に残り、それによってリソグラフィ装置内の他の構成部品が液に汚染される問題が引き起され得ることである。さらに、リソグラフィ装置中の様々な要素の表面に対する液の移動によって、装置の光学的性能に対して有害な気泡が浸漬液内に発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、上記の問題のいくつかに、詳しくは浸漬式リソグラフィ装置の浸漬液中の気泡形成及び液漏れに対処することである。本発明の別の目的は、たとえば液体供給システムからの漏れにより、浸漬液によってリソグラフィ装置の構成部品が汚染される危険性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、
−放射線の投射ビームを提供するための照射系と、
−投射ビームにその断面においてパターンを付与するように働くパターン化手段を支持するための支持構造と、
−基板を保持するための基板テーブルと、
−基板の目標部分上にパターン化されたビームを投射するための投射系と、
−前記投射系の最終要素と前記基板の間の空間を浸漬液で充填するための液体供給システムとを含み、
前記浸漬液が、(i)最終要素及び/若しくは液体供給システムとの間で60°より小さい接触角を有し、かつ/或いは(ii)前記基板の表面との間で80°より小さい接触角を有することを特徴とするリソグラフィ装置が提供される。
【0013】
表面に対する浸漬液の接触角は、その液と外部環境、たとえば空気との界面がその表面に接触する場所で、その表面とその表面上に存在する浸漬液の正接平面との間の角度として測定される。
【0014】
基板の表面は、通常保護膜、レジスト被覆又は基板材料自体である。
【0015】
浸漬液が表面との間で60°より小さい接触角を有する場合、浸漬液及び表面の相対運動中に、気泡が浸漬液中に形成される可能性はより少なくなることが分っている。したがって、浸漬液が水ベースの場合、表面が親水性であることが必要である。浸漬液が基板との間で60°より小さい接触角を有することを保証する一方法は、浸漬液の表面張力を低減させるために浸漬液中に添加剤を含めることである。基板、最終要素及び液体供給システムタイプの材料は、界面活性剤や石鹸などの添加剤がよく適している。このことは、浸漬液と基板、最終要素及び/又は液体供給システムの間の表面張力が、浸漬液と空気の間の表面張力より大きい場合、特に有利であり、気泡形成をもたらすことになる表面に対する浸漬液の相対運動による、どんな気泡の形成も防止される可能性がある。
【0016】
漏れを低減するためのもっとも有利な構成は、浸漬液が、前記最終要素及び前記液体供給システムの表面との間で60°より小さい接触角を有し、かつ前記基板及び/又は基板テーブル及び/又は基板テーブル搭載センサの表面との間で90°より大きい接触角を有することを保証するものである。この構成では、浸漬液が、最終要素及び液体供給システムに「張り付き」、かつ液体供給システムの下にある液体供給システムに対して移動しつつある要素の上を容易に摺動する。したがって、液体供給システムと液体供給システムの下にある要素の間での液体供給システムからの漏れを低減することができる。
【0017】
浸漬液が60°より小さい接触角を有する表面の例には、ガラス、ガラス・セラミック、金属酸化物又は金属がある。表面には、任意選択で被覆又はポリマーの表面処理を施すことができる。
【0018】
前記本発明の別の目的は下記の本発明の構成により達成される。
【0019】
本発明の一態様によれば、
−放射線の投射ビームを提供するための照射系と、
−投射ビームにその断面においてパターンを付与するように働くパターン化手段を支持するための支持構造と、
−基板を保持するための基板テーブルと、
−基板の目標部分上にパターン化されたビームを投射するための投射系と、
−前記基板、センサ又はシャッタ部材と前記投射系の最終要素の間の空間を少なくとも部分的に浸漬液で充填するための液体供給システムとを含み、
前記浸漬液が、前記基板、センサ、シャッタ部材及び/又は最終要素の表面との間で90°より大きい接触角を有し、その表面が、装置の光軸又は前記投射系の表面及び/又は前記基板テーブルの上表面の実質的にすべてと整合可能なことを特徴とするリソグラフィ装置が提供される。
【0020】
こうすると、浸漬液が表面からはじかれ、したがって浸漬液残渣が表面上に残らず表面を乾いたままにしておくことが容易になることが保証される。このことは、表面がシャッタ部材の表面の場合、シャッタ部材を液体供給システムに保持する、液体供給システムとシャッタ部材の間の表面張力が大きくなる可能性がないため、シャッタ部材を液体供給システムから容易に(すなわち、より小さい力で)取り外すことができることを意味するので、やはり有利である。
【0021】
浸漬液が基板及び最終要素の両方の表面との間で90°より大きい接触角を有する場合、このようにすると、基板の局限領域のみに浸漬液を閉じ込める液体供給システムで有利に使用することができるシステムが形成される。このシステムでは、基板の局限領域に浸漬液を閉じ込めるための複数のガス入口によって、局限領域中の所定の位置に浸漬液を保持することができる。これは、浸漬液を所定の位置に保持するために局限領域の境界のまわりで空気に圧力を単に加えるだけで達成される。複数のガス入口を装置の光軸の周りに配置し、ガス入口は、光軸に向かう方向成分が少なくとも含まれる方向にガスを送るものであることが有利である。ガス入口が、装置の光軸に対して直接向かないことが有利であり、むしろ光軸の周りを円状に流れる空気流を発生するのがよりよいことが分っている。空気を基板の上表面に実質上平行な平面上に送ることが好ましい。
【0022】
浸漬液が表面との間で90°より大きい接触角を有することを保証する一方法は、表面が凸部及び凹部を含むことを保証するものであり、その場合、凸部間の間隔が5〜200μmの範囲であり、凸部の高さが5〜100μmの範囲であり、少なくとも凸部が疎水性ポリマー又は永続的に疎水性にされた材料からできている。
【0023】
本発明の別の態様によれば、
−基板を提供するステップと、
−照明系を使用して放射線の投射ビームを提供するステップと、
−パターン化手段を使用して、投射ビームにその断面においてパターンを付与するステップと、
−投射系の最終要素と前記基板の間の空間を浸漬液で充填するステップと、
−前記投射系を使用して、基板の目標部分上に放射線の投射ビームを投射するステップとを含み、
前記浸漬液が、(i)最終要素及び/若しくは液体供給システムとの間で60°より小さい接触角を有し、かつ/或いは(ii)前記基板の表面との間で80°より小さい接触角を有ることを特徴とする装置製造方法が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、
−基板を提供するステップと、
−照明系を使用して、放射線の投射ビームを提供するステップと、
−パターン化手段を使用して、投射ビームにその断面においてパターンを付与するステップと、
−投射系の最終要素と前記基板、センサ又はシャッタ部材の間の空間を少なくとも部分的に浸漬液で充填するステップと、
−前記投射系を使用して、基板の目標部分上に放射線のパターン化されたビームを投射するステップとを含み、
前記浸漬液が、前記基板、センサ、シャッタ部材及び/又は最終要素の表面との間で90°より大きい接触角を有し、その表面が、装置の光軸又は前記投射系の表面及び/又は前記基板テーブルの上表面の実質的にすべてと整合可能であることを特徴とする装置製造方法が提供される。
【0025】
本明細書では、IC製造のリソグラフィ装置の使用について具体的に参照するが、ここに記述するリソグラフィ装置は、光集積システム、磁区メモリ用誘導及び検出パターン、液晶表示装置(LCD)、薄膜磁気ヘッドなど他の応用例も有り得ることを理解されたい。そのような代替の応用例の文脈においては、本明細書で「ウェハ」又は「ダイ」の用語の使用は、それぞれより一般的な用語、「基板」又は「目標部分」と同義のものと見なすことができることが当業者には理解されよう。本明細書で言及する基板は、露光前又はその後、たとえばトラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、露光されたレジストを現像するツール)、又は計測ツール若しくは検査ツールで処理することができる。適用可能な場合、本明細書の開示は、それら及び他の基板処理用ツールに適用することができる。さらに、基板は、たとえば、多層のICを製作するために複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する「基板」という用語は、複数の処理された層をすでに含む基板を言うこともある。
【0026】
本明細書で使用する用語「放射線」及び「ビーム」は、紫外線(UV)(たとえば、波長が、365、248、193、157又は126nm)を含めて、すべてのタイプの電磁放射線を網羅する。
【0027】
本明細書で使用する用語「パターン化手段」は、投射ビームにその断面においてパターンを付与して、基板の目標部分中にパターンを生成するために使用することができる手段を言うものと広く解釈すべきである。投射ビームに付与されるパターンは、基板の目標部分中の所望のパターンと正確に一致しないことがあることに留意されたい。一般に、投射ビームに付与されるパターンは、目標部分中の集積回路など製作中のデバイス内にある特定の機能層に一致することになる。
【0028】
パターン化手段は、透過型又は反射型とすることができる。パターン化手段の例には、マスク、プログラム可能なミラー・アレイ及びプログラム可能なLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは周知であり、バイナリ、交互位相シフト、減衰型位相シフトなどのマスク・タイプ、並びに様々な複合マスク・タイプが含まれる。プログラム可能なミラー・アレイの一例は、行列構成の小さなミラーを使用するものであり、各ミラーは、入射放射線ビームを様々な方向に反射するように個々に傾けることができ、このようにして反射ビームがパターン化される。パターン化手段の各例では、支持構造は、フレーム又はテーブルとすることでき、たとえば、これらは、必要に応じて固定又は可動にすることができ、パターン化手段が、たとえば投射系に対して所望の位置にあることを保証することができる。本明細書では用語「レチクル」又は「マスク」のどんな使用も、より一般的な用語「パターン化手段」と同義のものと見なすことができる。
【0029】
本明細書で使用する用語「投射系」は、たとえば使用する露光用放射線に見合った、又は浸漬液の使用若しくは真空の使用など他のファクタに見合った屈折光学系、反射光学系及び反射屈折光学系を含めて、様々なタイプの投射系も網羅するものと広く解釈すべきである。本明細書で用語「レンズ」のどんな使用も、より一般的な用語「投射系」と同義のものと見なすことができる。
【0030】
照射系は、放射線の投射ビームの誘導、成形又は制御をするための屈折、反射及び反射屈折光構成部品を含めて、様々なタイプの光構成部品を網羅することもある。そのような構成部品は、以下においてまとめて又は単独で「レンズ」と呼ぶこともある。
【0031】
リソグラフィ装置は、2個(2重ステージ)以上の基板テーブル(及び/又は2個以上のマスク・テーブル)を有するタイプのものとすることができる。そのような「複数ステージ」の装置では、追加のテーブルを並行に使用することができ、或いは1個又は複数の他のテーブルを露光のために使用しながら、準備ステップを1個又は複数のテーブル上で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例によるリソグラフィ装置を示す図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施例とともに使用することができる液体供給システムの断面図である。
【
図4】本発明の一実施例による代替の液体供給システムの断面図である。
【
図5】
図4の液体供給システムと同様の、本発明の一実施例によるさらに手直しされた液体供給システムの断面図である。
【
図6】本発明の一実施例による基板テーブル搭載センサを示す図である。
【
図7】本発明の一実施例による液体供給システム及びシャッタ部材の断面図である。
【
図8】本発明の一実施例による別の液体供給システムの断面図である。
【
図9】
図8の液体供給システムの要素の概略投影図である。
【
図10】本発明の一実施例における基板に塗布された保護膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
例としてのみ、添付の概略図面を参照しながら、本発明の実施例を記述する。これらの図面では、対応する参照記号は対応する部品を示す。
「実施例1」
【0034】
図1は、本発明の具体的な実施例によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
−放射線(たとえば、紫外線)の投射ビームPBを提供するための照射系(照明装置)ILと、
−アイテムPLに対してパターン化手段(たとえば、マスク)MAを正確に位置決めするための第1の位置決め手段PMに接続され、パターン化手段を支持するための第1の支持構造(たとえば、マスク・テーブル)MTと、
−アイテムPLに対して基板(たとえば、レジスト被膜ウェハ)Wを正確に位置決めするための第2の位置決め手段PWに接続され、基板を保持するための基板テーブル(たとえば、ウェハ・テーブル)WTと、
−パターン化手段MAによって投射ビームPBに付与されるパターンを、(たとえば、1個又は複数のダイを有する)基板Wの目標部分C上に結像するための投射系(たとえば、屈折投射レンズ)PLと
を含む。
【0035】
この図に示すように、この装置は、透過型のタイプ(たとえば、透過型マスク使用)のものである。或いは、反射型のタイプ(上記のプログラム可能なミラー・アレイのタイプ使用)でもよい。
【0036】
照明装置ILは、放射線源SOからの放射線ビームを受光する。放射線源及びリソグラフィ装置は、たとえば放射線源がエキシマー・レーザの場合、別々の実体でよい。そのような場合、放射線源はリソグラフィ装置の一部をなすものとは見なされず、放射線ビームは、たとえば適切な誘導ミラー又はビーム・エクスパンダ、或いはその両方を含むビーム送出系BDの助けで、放射線源SOから照明装置ILに進む。他の場合、放射線源は、たとえば放射線源が水銀ランプの場合、装置と一体にすることができる。放射線源SO及び照明装置ILは、必要ならビーム送出系BDと合わせて、放射系と呼ぶことがある。
【0037】
照明装置ILは、ビームの角輝度分布を調節するための調節手段AMを含むことができる。一般に、少なくとも、照明装置のひとみ面中において半径方向の輝度分布の外部及び/又は内部の程度(通常、それぞれ外部σ及び内部σと呼ばれる)は、調節することができる。さらに、照明装置ILは、一般に、積分器IN及び集光器COなど他の様々な構成部品を含む。照明装置は、投射ビームPBと呼ばれ、その断面中に所望の一様性及び輝度分布を有する放射線の調整されたビームを提供する。
【0038】
投射ビームPBは、マスク・テーブルMT上に保持されたマスクMA上に入射される。投射ビームPBは、マスクMAを横切るとレンズPLを通過し、このレンズは、ビームの焦点を基板Wの目標部分C上に合わせる。第2の位置合せ手段PW及び位置センサIF(たとえば、干渉計)の助けを得て、たとえば、ビームPBの経路中に異なる目標部分Cを位置決めするために、基板テーブルWTを正確に移動することができる。同様に、第1の位置決め手段PM及び他の位置センサ(
図1には明示していない)を使用して、たとえば、マスク・ライブラリから機械的に抽出後又は走査中に、ビームPBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般に、対物テーブルMT及びWTの移動は、長ストローク機構(粗い位置決め)及び短ストローク機構(精細な位置決め)を用いて実現され、これらは位置決め手段PM及びPWの一部を形成する。しかし、ステッパ(スキャナではなく)の場合、マスク・テーブルMTは、短ストローク・アクチュエータのみに接続すればよく、又は固定でもよい。マスクMA及び基板Wは、マスク位置合せマークM1、M2、及び基板位置合せマークP1、P2を使用して位置合せを行うことができる。
【0039】
この図示の装置は、以下の好ましいモードで使用することができる。
1.ステップ・モードでは、投射ビームに付与されたパターン全体が一度に目標部分C上に投射される間(たとえば、単一静止状態露光)、マスク・テーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に保たれる。次いで、基板テーブルWTは、X及び/又はY方向にシフトされ、したがって異なる目標部分Cの露光ができる。ステップ・モードでは、露光域の最大サイズが、単一静止状態露光中に結像される目標部分Cのサイズを限定する。
2.走査モードでは、投射ビームに付与されたパターンが、目標部分C上に投射される間(たとえば、単一動的露光)、マスク・テーブルMT及び基板テーブルWTは、同時に走査される。マスク・テーブルMTに対する基板テーブルWTの相対移動の速度及び方向は、拡大率(縮小率)及び投射系PLの影像反転特性によって決まる。走査モードでは、露光域の最大サイズが単一動的露光中の目標部分の(走査方向でない方向の)幅を限定し、走査運動の長さは目標部分の(走査方向の)高さを決める。
3.他のモードでは、マスク・テーブルMTは、プログラム可能なパターン化手段を保持しながら基本的に静止状態に保たれる。基板テーブルWTは、投射ビームに付与されたパターンが、目標部分C上に投射される間、移動又は走査される。このモードでは、一般に、パルス状の放射線源が使用され、走査中、基板テーブルWTの移動した後ごとに、又は連続する放射線パルスの間に必要に応じてプログラム可能なパターン化手段が更新される。この運用モードは、上記のプログラム可能なミラー・アレイのタイプなどのプログラム可能なパターン化手段を利用するマスクを使用しないリソグラフィに容易に適用することができる。
【0040】
上記の使用モード又はまったく異なる使用モードの組み合わせ及び/又は変形を使用することもできる。
【0041】
図4は、基板Wと投射系PLの最終要素の間の空間中で基板Wの局限領域のみに浸漬液を供給する、
図2及び3の液体供給システムと同様なシステムを示す。浸漬液は、基板にも最終要素にも接触し、その2つの間にとぎれなく存在する。
図4の液体供給システムは、投射系PLの最終要素の外周のまわりに延在するシール部材10を含む。シール部材10は、好ましくは、シール部材10の底部と基板Wの上表面の間にシールを形成する非接触シール手段であるシール手段15を有する。したがって、浸漬液5は、基板Wとシール手段15と投射系PLの間に閉じ込められる。シール手段15は、参照により全体を本明細書に組み込むヨーロッパ特許出願第03252955.4号に記載のように、ガス注入口及びガス排出口を有するガス・シールとすることができる。液注入口18は、投射系PLと基板Wの間に浸漬液5を供給する。シール手段15がない同様の液体供給システムが可能であり、そのシステムでは、浸漬液が、投射系に固定されたシール部材10の底部と基板Wの間に毛管力によって保持される。
【0042】
自由対物距離(すなわち、投射系の最終要素の底部と基板Wの上表面の間の長さ)は、好ましくは3mm±0.2又は±0.1mm程度のものであるが、1mmと同程度に短くすることができる。
【0043】
液体供給システム内に浸漬液を保持する助けとして、基板W、基板テーブルWT、シャッタ手段、センサなど、液体供給システムの下を摺動するどの表面も、浸漬液がその表面との間で90°、好ましくは100°、より好ましくは110°又は120°より大きい接触角を有するような面にすることが役に立ち得る。基板の表面は、一般に、保護膜、レジスト被膜又は基板材料自体になる。基板テーブルの浸漬液に接触する上表面がすべてこの特性を有することが好ましい。したがって、浸漬液は、これらの表面上を容易に流れる。浸漬液に接触する、液体供給システムの表面、好ましくは投射系PLの最終要素20の表面、又は投射系の他のどの表面は、浸漬液が、それらの表面との間で60°、好ましくは50°、より好ましくは40°、最も好ましくは30°、25°又は20°、さらには15°又は10°より小さい接触角を有するような表面である。したがって、浸漬液は、それらの表面に「張り付き」、それによって浸漬液の喪失が低減される。
【0044】
上記の一般的な必須要件には例外がある。たとえば、最終要素でなく液体供給システムの上にあり実質的に基板Wに平行な(形状が環形の)投射系の表面22を提供すること、すなわちその表面は、浸漬液が、90°又はそれより大きい、好ましくは100°又はそれより大きい、もっとも好ましくは110°又は120°又はそれより大きい接触角を有することは有利になることがある。これは、抽出口19からの浸漬液抽出の助けになり得る。ガス・シール手段15の入出口もそのような特性から利益が得られる。これとは違って、シール部材10の底表面の内側部分には、シール手段15の半径方向内側に、浸漬液が他の領域とよりもその領域との間でもっと小さい接触角を取るように、適用される表面粗さを増加する表面処理を施すことで利益を得ることができる。
【0045】
基板Wが投射系PLに対して移動するとき(矢印50で表示)、浸漬液5と基板Wの間の摩擦によって、圧力が浸漬液中で高まって、浸漬液5のレベル7が一方で上昇し、レベル9が他方で下降する。これは、浸漬液5中に誘起された圧力勾配の結果であり、その結果、ガスが、投射系の下のある浸漬液の露光領域中に引き入れられることになり得る。
【0046】
基板Wの表面並びにシール部材10及び投射系PLの表面を、浸漬液が、その表面との間で60°、好ましくは50°、より好ましくは40°、最も好ましくは30°、25°又は20°より小さく、さらには15°又は10°の接触角をなす(親水性)ように形成することによって、一般に、浸漬液5中に気泡が形成される可能性を低減させるだけでなく、空気が露光領域中に引き入れられる可能性も低減させることが可能である。このようにすると、表面が濡れ、浸漬液が水ベースの場合、表面が親水性になることが保証される。問題の表面は、その上に結像される表面である基板Wの上表面40、投射系PLの最終要素の外側表面20、特にその底面、及び浸漬液5を局限領域に閉じ込めるシール部材10の内側表面である。
【0047】
そのような表面(もちろん、被覆とすることができる)を使用することは、浸漬液と表面の間の表面張力が、浸漬液と囲繞環境(たとえば、空気)の間の表面張力より大きくなることを意味する。その作用は、表面からすべての空気の気泡の除去を最適化することである。必要な接触角を保証する一方法は、浸漬液中の表面張力をできるだけ低減することである。浸漬液が実質的に水である場合(波長が193nmの場合)、浸漬液に界面活性剤又は石鹸を添加することによって、表面張力を都合よく低減することができる。ただし、これが悪影響(たとえば、193nmの透過量の損失)を及ぼさないことを条件とする。したがって、浸漬液中に空気が封じ込められるリスクが大いに低減される。表面粗さなど他のファクタも、材料の親水性を改善するために使用することができる。
「実施例2」
【0048】
第2の実施例を
図5に示す。この例は、以下に述べる点を除き第1の実施例と同じである。
【0049】
第2の実施例のシール部材10は、浸漬液5と様々な相互作用を有する層を含む。第1の層100は、上記のように、浸漬液5との間で60°より小さい、好ましくは50°より小さい、より好ましくは40°より小さい、もっとも好ましくは30°、25°又は20°さらには15°又は10°より小さい接触角を有する材料を含む。このようにすると、浸漬液5によってその層100が良好に濡れ、気泡がその層100上に形成される可能性を低減することが保証される。層100は、基板Wに面するシール部材10の下面上にあり、シール手段15よりも装置の光軸側により近くに配置されている。シール手段15の他方側に、浸漬液との間で90°より大きい、好ましくは100°より大きい、もっとも好ましくは110°又は120°より大きい接触角をなす(疎水性)第2の層110がある。基板Wに面するシール部材10の底面上にある、この第2の層110は、やはり浸漬液5をはじく作用を有し、それによってシール手段15の有効性を高める助けになる。
「実施例3及び4」
【0050】
実施例3及び4をそれぞれ
図6及び7に示す。それらは、第1の実施例と同じであり、それら実施例のいくつかの態様をより詳しく述べる。
【0051】
第3の実施例は、基板テーブルWT上に搭載され、浸漬液5を通して結像されるスルー・レンズ・センサ200に関するものである。第4の実施例は、参照により全体を本明細書に組み込むヨーロッパ特許出願第03254059.3号に記載のどちらのタイプ(すなわち、基板テーブルWTとは別の部材又はその一部)でもよいシャッタ部材300に関するものである。
【0052】
実施例3及び4はともに、浸漬液5と接触し、浸漬液との間で90°より大きい、好ましくは100°より大きい、もっとも好ましくは110°又は120°より大きい接触角を有する表面を使用する。そのような表面を使用することによって、センサ200又はシャッタ部材300が移動して液体供給システムから離れたとき、センサ200又はシャッタ部材300の上に浸漬液の残渣が残る可能性がないことが保証される。
【0053】
ここでより詳しく述べると、
図6は、センサ200を示し、センサは、上記の種類の任意のものとすることができ、検出要素210と、透過センサ回折格子222と、吸収要素220とを含む。吸収要素220は、センサのコントラストを高め、したがってセンサ性能全体を高めるために使用される。
【0054】
透過センサ回折格子222は、レチクル・レベルで対応するパターン(センサ上のパターンより4〜5倍大きい)の投射空中像をたたみ込むために使用される。レチクル・レベルにあるパターンの投射空中像による透過センサ回折格子222のたたみ込みは、基板レベルにある透過センサ回折格子222の位置に応じた輝度プロフィールをもたらすことになる。様々な基板テーブル位置における輝度データを用いて、空中像の位置及び形状が計算できる。
【0055】
センサ検出要素210は、回折格子の開放領域を透過した放射線を電気信号に変換する。吸収要素220の目的は、吸収特性が互いに異なる領域を提供することによって、投射ビームのエネルギーを一部吸収し、したがってセンサが十分なコントラストを実現できるようにすることである。吸収要素220は、アルミニウム及び/又はクロム(或いはそれらの合金)などの少なくとも1つの層からできていることが好ましいが、任意の金属の層から製作してもよい。
【0056】
図6では、投射系PLの最終要素がレンズ230として示してある。この実施例では、水などの浸漬液5が投射系の最終要素230とセンサ210の間に存在する。センサ200の上表面は、浸漬液5との間で90°より大きい、好ましくは100°より大きい、もっとも好ましくは110°又は120°より大きい接触角を有する被覆240が施される。
【0057】
被覆240は、いくつかの目的を果たす。それは、浸漬液を容易に除去することを可能にし、かつ/又は浸漬液残渣がセンサに残ることを防止する。このことは、空中のセンサを使用し浸漬液なしで測定もできることを意味する。浸漬液残渣の存在の結果、高さ及び位置の測定が誤ることになり得る。被覆層240の別の作用は、吸収要素220の金属を浸漬液5から隔離し、それによって、たとえば吸収要素220を形成する金属層間のガルバーニ反応に起因する、吸収要素220の金属の腐食を防止する。
【0058】
図7は、シャッタ部材300(カバー・プレート、エッジ・シール部材、ギャップ・シール手段又は部材或いは中間プレートとも呼ばれる)の一実施例を示す。シャッタ部材300は、基板表面ではない表面、多分、基板Wの上部表面と実質的に共面であり、基板Wのエッジに密着して隣接する基板テーブルWTの上部表面とすることができる。シャッタ部材300の領域は、基板テーブルWTが移動して投射系PL及びシール部材10がシャッタ部材300の上に位置した場合、シャッタ部材がシール部材10の開口部全体をふさいで、開口部から浸漬液が漏れることを防止できるように十分に広い。この位置では、通常の基板取扱い装置を使用して、基板Wを基板テーブルWTから取り外すことができる。
【0059】
図7に図示の実施例では、基板テーブルWTを移動して投射系PL及びシール部材10から完全に離し、基板Wを基板テーブルWTから取り外し、新しい基板を基板テーブルWT上に搭載することが可能である。
【0060】
図7では、シャッタ部材300は、シール部材10中の局限領域又は開口部の面積より大きい主な断面面積を有する平面の形である。シャッタ部材300の形状は、開口部を覆うものであるある限りどんな形状でもよい。シャッタ部材300は、基板ではなく、基板テーブルWTに対してもシール部材10に対しても移動可能であり、
図7に示す磁石360など任意の手段によってシール部材10に取り付けることができる。
【0061】
基板Wを露光した後、基板テーブルWTを移動して、シャッタ部材300をシール部材10の開口部の下に位置させる。投射系PLの下に位置させた後、開口部を覆うためにシール部材10の底部にシャッタ部材300を取り付ける。取り付け方法は、たとえば真空源によって行うことができる。次いで、基板Wを交換することができる離れた場所に基板テーブルWTを移動する。
図7では、シャッタ部材300をシール部材10に取り付けないときは、磁石370によってシャッタ部材300を基板テーブルWTに取り付けるが、非磁性体からできている場合、たとえば真空源によって取り付けることができる。
【0062】
浸漬液5と接触するシャッタ部材300の表面は、浸漬液5との間で90°より大きい、好ましくは100°より大きい、もっとも好ましくは110°又は120°より大きい接触角を有する表面である。したがって、第3の実施例と同様、基板テーブルが移動し、シャッタ部材300が後に残され、シール部材10上のシール手段15によって、浸漬液が、あってもわずかしか後に残らないことが保証され得る。さらに、シール部材の表面が上記のようである、すなわちその表面が浸漬液をはじく場合、シール部材10からシャッタ部材300を取り外すために必要な力が著しく小さくなる。浸漬液が水の場合、表面は疎水性と言われる。
「実施例5」
【0063】
図8及び9を参照して第5の実施例を述べる。第5の実施例は、以下に述べる点を除き第1の実施例と同じである。
【0064】
第5の実施例では、異なるタイプの浸漬液閉じ込めシステムが示してある。投射系PLの最終要素及び基板Wの上表面は、浸漬液5との間で90°より大きい、好ましくは100°より大きい及びもっとも好ましくは110°又は120°より大きい接触角を有する材料から製作される。
【0065】
浸漬液5は、基板W又は投射系PLと接触していない浸漬液の表面上に加圧ガスを加えることによって、所定の位置に保持される。加圧ガスは、浸漬液5を囲繞するシール部材10中の入口400から供給される。複数の入口400を設け、それらは、浸漬液5を所定の位置に維持するのに有効などんな構成のものでもよい。
【0066】
図8は概略であり、実際には投射系PLと基板Wの間の間隔は、数ミクロン〜数mm程度であり、したがって浸漬液5を所定の位置に保持するために必要な浸漬液上のガス圧は、低い。
【0067】
図8から分るように、シール部材10は、基板Wの上の異なるレベルにある幾組かのガス入口400を含むことができる。しかし、必ずしもそうする必要はなく、
図9に示すように、1レベルのガス入口400のみを設けてもよい。
【0068】
浸漬液5が正しい位置にあることを保証するために、各入口400から様々な圧のガスを供給することができる。
【0069】
シール部材10を投射系PLに取り付けることができる。入口400のガスの圧は、浸漬液5の位置の測定値に応じてフィードフォワード又はフィードバック方式で制御することができる。基板Wが投射系PLに対して移動したとき、浸漬液5内に力が発生し、この力の測定値又は予測値に基づき、それに応じて各ガス入口400から流れるガスの圧を調節でき、たとえば一方側の圧を他方側の圧より高めることができる。
【0070】
図9から分るように、ガスが、装置の光軸に向かう方向成分を含む方向に放出されるような方向に、ガス入口400は、向くことが好ましい。その方向は、光軸に直接向いていないが、基板Wの上表面に実質的に平行な平面上にある。浸漬液5の周りを回るガス流を発生することが望ましく、これは、ガス入口400の方向を光軸からずらして向けることによって行われる。他の構成のガス入口を使用できることも理解されよう。
「表面及び浸漬液」
【0071】
投射ビームの波長として193nmを使用するとき、浸漬液は実質的に水とすることが可能である。表面処理がされていないガラス上では、水は約70°の接触角になり、表面処理がされていないアルミニウム又はステンレス鋼上では、約80°の接触角になる。接触角は、液がなす角度である。本発明は、他のタイプの浸漬液にも等しく適用される。
【0072】
本発明では、浸漬液が水の場合、疎液性(liquid-phobic、接触角が90°より大きい)又は疎水性の表面を使用する。これらの表面は、一般にテフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フルオロアルキルシラン、ワックス、又は炭素のようなダイアモンドなどのポリマーから生成される。
【0073】
ほとんどの液とその表面の間で高接触角をもたらす1つの特に有効な表面は、参照により全体を本明細書に組み込むWO96/04123に記載されている。「ロータス表面」と呼ばれるこの表面は、凸部及び凹部から構成される表面構造を含む、浸漬液と表面(疎水性表面)の間で大きな接触角が必要である上記実施例のどれにも特に適している。この凸部及び凹部からなる表面構造では、凸部間の間隔が5〜200μmの範囲であり、凸部の高さが5〜100μmの範囲である。少なくとも凸部は、疎水性ポリマー又は永続的に疎水性にされた材料からできており、凸部は、水又は界面活性剤を有する水によって取り除くことができない。
【0074】
浸漬液が水である場合、親液性(liquidphilic、接触角が60°より小さい)表面又は親水性表面も使用される。これらの表面は、金属酸化物(たとえば、金属の表面上に)、ガラス(水晶又はZerodur(登録商標)など)によって実現できる。ただし、表面から異物を高度に除去するための表面処理を行うものとする。
【0075】
したがって、要素の材料自体によって、必要ならさらに表面処理を行って、又は要素の表面上に被覆することによって、必要なタイプの表面を設けることができる。たとえば、基板テーブルWTは、Zerodurなどの構造ガラス又はガラス・セラミックから製作されることがしばしばある。ポリマーの被覆又はロータス表面処理を適用して表面を疎液性にすることができる。別の例は、被覆して若しくは表面処理を施して親液性にされたポリマー(たとえば、テフロン(登録商標))から製作した、或いは親液性にするために処理を行った(たとえば、高度に洗浄し、研磨した)金属(たとえば、ステンレス鋼)の表面から製作された液体供給システムの場合である。
【0076】
表面との浸漬液の接触角に影響を与える(減少させる)別の方法は、界面活性剤を浸漬液に添加することである。界面活性剤の添加は、液の表面張力γを低減させる効果を有する。すなわち、安定した気泡の気泡半径Rは以下の式で与えられる。
【0078】
ここでΔPは界面間の差圧であり、γを小さくすると、気泡半径Rは減少する。さらに、表面拡大係数(surface spreading coefficient)Sも表面張力によって影響を受け、したがって界面活性剤を添加することによって、表面特性を変更せずに表面上の液の接触角を減少させることができる。
【0079】
界面活性剤は、有機塩又は無機塩でよい(そのイオンが水の分子を分裂させる)。界面活性剤は、どんなタイプのものでもよく(たとえば、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン及び非イオン性)、所望の結果を生じるような効力のある濃度で添加される(通常臨界ミセル濃度以下)。
【0080】
基板の表面からの浸漬液の蒸発によって、基板の許容できない温度低下が引き起され得る。したがって、浸漬液中に別の添加剤を使用して液の蒸気圧を変化させ、それによって蒸発を低減することが有利になり得る。
「保護膜」
【0081】
本発明の一実施例では、保護膜を基板に、すなわちその基板のレジストの上面上に塗布して、ガス又は気泡がレジスト又はレジスト・スタックの表面に張り付くことを防止する。露光中、レジスト上の気泡によって、印刷像の焦点ボケ及び/又はゆがみによる欠陥が引き起され、歩留まりが低下する。本発明のこの実施例によれば、保護膜は親液性(すなわち、浸漬液が水ベースの場合、親水性)であり、80°より小さい範囲、たとえば65°〜75°の接触角を有する。65°及び72°の接触角を有する表面を使用する実験では、基板1枚当りの気泡欠陥の数は、同じ条件下で、疎水性の保護膜又は保護膜のないレジストの場合の約500に比べ、10より少ない数まで減少することができる。親水性保護膜の使用は、気泡の形成を防止するとは考えられず、むしろ気泡が基板に付着し、そこで欠陥を起こすことになるのを防止すると考えられる。レジストに付着しないようにされた気泡を浸漬液から取り除いて、結像欠陥が起こるのを防止することができる。
【0082】
保護膜はドライ・リソグラフィでは周知であり、レジストを空気中の汚染から保護するために使用し、浸漬式リソグラフィで使用することが提案されていた。ただし、浸漬液(水)中で保護膜を不溶性にするために、フッ素処理したポリマーを添加する。これらポリマーは、保護膜を疎水性に、たとえば118°の接触角を有するようにする。本発明のこの実施例によれば、保護膜中の添加剤の量、特にフッ素処理したポリマーの量を親水性が所望の程度になるように選択する。
【0083】
保護膜も溶剤を使用して塗布すべきである。この溶剤は、レジスト溶剤と不相溶であり、一般に、メチルエチルケトン(MEK;methyl ethyl ketone)の共溶剤を時には有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;propylene glycol monomethyl ether acetate)又はエチル乳酸塩(ethyl lactate)であり、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH;tetra-methyl ammonium hydroxide)の弱アルカリ性溶剤(通常、0.262)であるレジスト現像液中で容易に可溶であることが望ましい。保護膜は、使用する、たとえば248、193又は157nmの露光波長の光による強力な照射下で安定であるべきである。
【0084】
本発明の詳しい実施例を以上説明してきたが、本発明が記述されたものとは別な方法で実施できることが理解されよう。この記述は、本発明を限定する意図のものではない。
【符号の説明】
【0085】
IL 照射系(照明装置)
IN 積分器
CO 集光器
PB 投射ビーム
MA パターン化手段、マスク
MT 支持構造、マスク・テーブル
M1、M2 マスク位置合せマーク
PL アイテム、投射系、屈折投射レンズ
BD ビーム送出系
W 基板
C 目標部分
WT 基板テーブル
IF 位置センサ
PM、PW 位置決め手段
P1、P2 基板位置合せマーク
OUT 排出口
IN 注入口
SO 放射線源
5 浸漬液
7、9 レベル
10 シール部材
15 シール手段
18 注入口
19 抽出口
20 投射系PLの最終要素、最終要素の外側表面
22 投射系の表面
40 基板Wの上表面
50 矢印
100 第1の層
110 第2の層
200 スルー・レンズ・センサ、センサ
210 検出要素
220 吸収要素
222 透過センサ回折格子
230 レンズ、最終要素
240 被覆
300 シャッタ部材
360、370 磁石
400 ガス入口、入口