特許第6055537号(P6055537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055537
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161219BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20161219BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20161219BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20161219BHJP
   C23C 14/40 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 R
   H05H1/46 M
   C23C16/509
   C23C16/52
   C23C14/40
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-248329(P2015-248329)
(22)【出願日】2015年12月21日
(62)【分割の表示】特願2011-274391(P2011-274391)の分割
【原出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-105489(P2016-105489A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100086564
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 聖孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 紀和
(72)【発明者】
【氏名】立川 俊文
(72)【発明者】
【氏名】永海 幸一
(72)【発明者】
【氏名】濱石 悟
(72)【発明者】
【氏名】板谷 耕司
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−238881(JP,A)
【文献】 特開2009−246091(JP,A)
【文献】 特開2005−130198(JP,A)
【文献】 特開平11−186239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23C 14/40
C23C 16/509
C23C 16/52
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記第1の高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記第1の高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、
前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンスの測定値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項2】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項3】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記第1の高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記第1の高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、
前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンスの測定値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項4】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記第1のモニタ時間は、前記第1の期間の中でその開始直後の第1の過渡時間を含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記第1のモニタ時間は、前記第1の期間の中でその終了直前の第2の過渡時間を含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、高周波電源と、前記高周波電源より出力される前記高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための高周波給電ラインと、前記高周波給電ライン上で前記高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む整合部と、前記高周波のパワーがオン状態になる第1の期間とオフ状態になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1の期間に設定されるモニタ時間中に、前記高周波給電ラインから得られる前記高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、
前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる記負荷側インピーダンスの測定値が前記高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項8】
被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、高周波電源と、前記高周波電源より出力される前記高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための高周波給電ラインと、前記高周波給電ライン上で前記高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む整合部と、前記高周波のパワーがオン状態になる第1の期間とオフ状態になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1の期間に設定されるモニタ時間中に、前記高周波給電ラインから得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、
前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、
前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程と
を有するプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記モニタ時間は、前記第1の期間の中で開始直後の第1の過渡時間を含まない、請求項7または請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記モニタ時間は、前記第1の期間の中で終了直前の第2の過渡時間を含まない、請求項7〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記モニタ時間は、前記第2の期間には設定されない、請求項7〜10のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記高周波パワー変調部は、前記パルス周波数またはその1サイクルの時間および前記パルス周波数の1サイクルにおける前記第1の期間の割合(デューティ比)の少なくとも一方を一定の範囲内で任意の値に設定することができる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板にプラズマ処理を施す技術に係り、特に処理容器内に供給される高周波のパワーをパルスに変調するパワー変調方式の容量結合型プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容量結合型のプラズマ処理方法は、処理容器内に上部電極と下部電極とを平行に配置し、下部電極の上に被処理基板(半導体ウエハ、ガラス基板等)を載置し、上部電極もしくは下部電極にプラズマ生成に適した周波数(通常13.56MHz以上)の高周波を印加する。この高周波の印加によって相対向する電極間に生成された高周波電界により電子が加速され、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマが発生する。そして、このプラズマに含まれるラジカルやイオンの気相反応あるいは表面反応によって、基板上に薄膜が堆積され、あるいは基板表面の素材または薄膜が削られる。
【0003】
近年は、半導体デバイス等の製造プロセスにおけるデザインルールが益々微細化し、特にプラズマエッチングでは、より高い寸法精度が求められており、エッチングにおけるマスクまたは下地に対する選択比や面内均一性をより高くすることも求められている。そのため、チャンバ内のプロセス領域の低圧力化、低イオンエネルギー化が指向され、40MHz以上といった高い周波数の高周波が用いられつつある。
【0004】
しかしながら、このように低圧力化および低イオンエネルギー化が進んだことにより、従来は問題とならなかったチャージングダメージの影響を無視することができなくなっている。つまり、イオンエネルギーの高い従前のプラズマ処理装置ではプラズマ電位が面内でばらついたとしても大きな問題は生じないが、より低圧でイオンエネルギーが低くなると、プラズマ電位の面内不均一がゲート酸化膜のチャージングダメージを引き起こしやすくなるといった問題が生じる。
【0005】
この問題に対しては、プラズマ生成に用いる高周波のパワーをデューティ比を制御可能なオン/オフ(またはHレベル/Lレベル)のパルスに変調する方式(以下、「第1のパワー変調方式」という。)が有効とされている(特許文献1)。この第1のパワー変調方式によれば、プラズマエッチング中に処理ガスのプラズマ生成状態とプラズマ非生成状態(プラズマを生成していない状態)とが所定周期で交互に繰り返されるので、プラズマ処理の開始から終了までプラズマを生成し続ける通常のプラズマ処理に比べて、プラズマを連続して生成している時間が短くなる。これによって、プラズマから被処理基板に一度に流入する電荷の量あるいは被処理基板の表面部に電荷が累積的に蓄積する量が減ることになるので、チャージングダメージは生じ難くなり、安定したプラズマ処理の実現およびプラズマプロセスの信頼性が向上する。
【0006】
また、従来より、容量結合型のプラズマ処理方法においては、基板を載置する下部電極に低い周波数(通常13.56MHz以下)の高周波を印加し、下部電極上に発生する負のバイアス電圧またはシース電圧によりプラズマ中のイオンを加速して基板に引き込むRFバイアス法が多く用いられている。このようにプラズマからイオンを加速して基板表面に衝突させることにより、表面反応、異方性エッチング、あるいは膜の改質等を促進することができる。
【0007】
ところが、容量結合型プラズマエッチング方法を用いてビアホールやコンタクトホール等のエッチングを行う場合には、ホールサイズの大小によってエッチングレートが異なる、いわゆるマイクロローディング効果が生じる問題があり、エッチング深さのコントロールが困難であるという問題がある。特に、ガードリング(GR)のような大きいエリアではエッチングが速いことが多く、CF系ラジカルが入りにくいスモールビアではエッチレートが遅いことが多い。
【0008】
この問題に対しては、イオン引き込みに用いる高周波のパワーのデューティ比を制御可能な第1レベル/第2レベル(またはオン/オフ)のパルスに変調する方式(以下、「第2のパワー変調方式」という。)が有効とされている。この第2のパワー変調方式によれば、被処理基板の所定の膜のエッチングが進行するのに適した比較的高い第1のレベル(Hレベル)のパワーを維持する期間とイオン引き込み用の高周波が被処理基板上の所定の膜にポリマーが堆積されるのに適した比較的低い第2のレベル(Lレベル)のパワーを維持する期間とが一定の周期で交互に繰り返されることにより、ホールサイズの大きい(広い)場所ほど高い堆積レートで所定の膜に適度なポリマー層が堆積され、エッチングの進行が抑制される。これによって、望ましくないマイクロローディング効果を低減し、高選択比および高エッチングレートのエッチングが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−71292号公報
【特許文献2】特開2009−33080号公報
【特許文献3】特開2010−238881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような第1のパワー変調方式または第2のパワー変調方式においては、高周波電源から処理容器内のプラズマまで高周波を伝送するための高周波給電ライン上に設けられる整合器の整合動作が課題になる。すなわち、整合器は、高周波電源より出力される高周波のパワーを処理容器内のプラズマに最も効率よく伝送するように、整合回路を含めた負荷側のインピーダンスを高周波電源側のインピーダンスに整合させるように動作する。ところが、上記のような第1または第2のパルス変調方式により高周波のパワーにパルス状の変調がかけられると、プラズマ負荷のインピーダンスがパルスに同期して周期的に変動し、これに整合動作を追従させるのが難しくなる。
【0011】
特にやっかいなのは、プラズマから高周波電源に向かって高周波給電ライン上を逆方向に戻ってくる反射波が、当該高周波に対応する基本波反射波だけでなく、パワー変調の周波数に応じた変調波や高調波歪等の異周波反射波も含むことである。このような異周波反射波の影響を受けずに基本波反射波だけに感応して、基本波反射波のパワーを可及的に小さくするように高速かつ精確な整合動作を行うことが課題となっている。
【0012】
この点に関して、当初は、パワー変調の1サイクルの中で、パワー変調をかける高周波のパワーをオフ(またはLレベル)にしている期間中は整合動作を停止し、当該高周波のパワーをオン(またはHレベル)にしている期間中に整合動作を行うようにしていた(特許文献2)。しかし、パワー変調の各サイクルにおいて、オン(またはHレベル)期間の開始時および終了間際にプラズマの状態が大きく変動する。このプラズマの過渡状態の変動にも追従して整合動作を行うと、整合器内で制御可能なリアクタンス素子(たとえばコンデンサ)が微動を繰り返すこととなって、プラズマの安定化を阻害してプラズマプロセスが不安定になるとともに、リアクタンス素子がその寿命を縮めてしまうという問題が生じる。そこで、パワー変調の各サイクルにおいて、オフ(またはLレベル)期間中だけでなく、オン(またはHレベル)期間中もその開始から所定時間(過渡時間)の間は整合動作を停止させる制御も行われている(特許文献3)。
【0013】
しかしながら、最近のプラズマ処理方法は、第1および第2のパワー変調方式のいずれを用いる場合でも、その方式に基づく技術的効果ひいてはプロセス性能を向上または拡張するために、あるいはプロセスマージンを広げるために、デューティ比については従来(25〜80%)より広いレンジ(たとえば10〜90%)を求められ、パワー変調のパルス周波数については従来(0.25〜100Hz)より高い領域(たとえば100Hz〜100kHz)を求められている。したがって、たとえば、デューティ比が10%でパワー変調のパルス周波数が90kHzの条件が選択されることもあり得る。上記従来技術のようにパワー変調の各サイクルで整合器の整合動作を断続的に停止する技法は、このようにパワー変調のパルス周波数がkHzあるいは10kHzのオーダになると、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に追従できないばかりか、整合器内の可動系部品の故障や寿命短縮化を来してしまうおそれがある。このため、パルス周波数の高いパワー変調方式には適合しえない。
【0014】
さらに、従来は、パワー変調をかけない側の高周波については、当該高周波給電ライン上に設けられる整合器に特別な制御をかけることはなかった。したがって、当該整合器は、他方の高周波にかけられるパワー変調と同期をとることもなく、あたかも当該高周波給電ライン上のパワー変調無しの高周波を単独で処理容器内のプラズマに印加する場合と同様に、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に対して瞬時瞬時(連続的に)応答する通常の整合動作を行うようになっていた。しかしながら、このような通常の整合動作では、完全整合状態ないし準整合状態を安定確実に確立するのが難しかった。しかも、上記のようにパワー変調の周波数がkHzあるいは10kHzのオーダになると、このようなパワー変調をかけない高周波側の整合問題も大きく顕著化してくる。
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、処理容器内に供給される高周波のパワーをパルスに変調する第1または第2のパワー変調方式において再現性の高い安定かつ精確な整合動作を行えるようにした容量結合型のプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記第1の高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記第1の高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンスの測定値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【0017】
本発明の第2の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【0018】
本発明の第3の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記第1の高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記第1の高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンスの測定値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【0019】
本発明の第4の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、前記プラズマを生成するのに適した周波数を有する第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、前記第1の高周波給電ライン上で前記第1の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む第1の整合部と、前記プラズマから前記第1の電極上の前記被処理基板にイオンを引き込むのに適した周波数を有する第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、前記第2の高周波給電ライン上で前記第2の高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための第2の整合部と、前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1および第2の期間のいずれにも設定される第1のモニタ時間中に、前記第1の高周波給電ライン上で得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記第1の高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【0020】
本発明の第5の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、高周波電源と、前記高周波電源より出力される前記高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための高周波給電ラインと、前記高周波給電ライン上で前記高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む整合部と、前記高周波のパワーがオン状態になる第1の期間とオフ状態になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1の期間に設定されるモニタ時間中に、前記高周波給電ラインから得られる前記高周波に対応する電圧検知信号および電流検知信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの信号の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られた前記電圧検知信号および前記電流検知信号の移動平均値に基づいて、前記高周波電源に対する前記負荷側インピーダンスの測定値を演算する負荷インピーダンス測定値演算工程と、前記負荷インピーダンス測定値演算工程により得られる記負荷側インピーダンスの測定値が前記高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【0021】
本発明の第6の観点におけるプラズマ処理方法は、被処理基板を載置する第1の電極とこれと対向する第2の電極とを収容し、両電極間で処理ガスの高周波放電によりプラズマが生成される真空排気可能な処理容器と、高周波電源と、前記高周波電源より出力される前記高周波を前記第1の電極または前記第2の電極のいずれか一方まで伝送するための高周波給電ラインと、前記高周波給電ライン上で前記高周波電源側のインピーダンスとその負荷側のインピーダンスとを整合させるための可変リアクタンス素子を含む整合部と、前記高周波のパワーがオン状態になる第1の期間とオフ状態になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返すように、前記高周波電源を制御する高周波パワー変調部とを有するプラズマ処理装置において前記被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記パルス周波数の1サイクル内で前記第1の期間に設定されるモニタ時間中に、前記高周波給電ラインから得られる前記負荷側インピーダンスの測定値を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてそれらの測定値の平均値を演算するサンプリング平均値演算工程と、前記サンプリング平均値演算工程により得られた各サイクルの平均値に基づいて、前記パルス周波数の1/m倍(mは2以上の整数)の周波数を有するサンプリングクロックの周期で前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値を求める移動平均値演算工程と、前記移動平均値演算工程により得られる前記負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が前記高周波電源側のインピーダンスに対応する所定の整合ポイントに一致または近似するように、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御するリアクタンス制御工程とを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプラズマ処理方法によれば、上記のような構成および作用により、処理容器内に供給される高周波のパワーをパルスに変調する第1または第2のパワー変調方式において再現性の高い安定かつ精確な整合動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態におけるプラズマ処理方法を実施するのに好適な容量結合型プラズマ処理装置の構成を示す断面図である。
図2A】上記プラズマ処理装置におけるパワー変調の一例を示す高周波の波形図である。
図2B】上記プラズマ処理装置におけるパワー変調の別の例を示す高周波の波形図である。
図3A】パワー変調をかけられる側の高周波およびその側波帯(変調分)のスペクトルを示す図である。
図3B】整合がとれている場合の反射波のスペクトルを示す図である。
図4A】パワー変調をかけられない側の高周波およびその側波帯(変調分)のスペクトルを示す図である。
図4B】整合がとれている場合の反射波のスペクトルを示す図である。
図5】プラズマ生成用の高周波電源および整合器の構成を示すブロック図である。
図6図5の整合器内の構成を示すブロック図である。
図7】イオン引き込み用高周波電源および整合器の構成を示すブロック図である。
図8図7の整合器内の構成を示すブロック図である。
図9】実施形態における整合器の作用を説明するための各部の波形図である。
図10】実施形態における移動平均値演算の作用を説明するための図である。
図11】実施形態における移動平均値演算の作用を説明するための図である。
図12】実施形態におけるスミスチャート上の整合動作点の分布(一例)を示す図である。
図13】一変形例におけるインピーダンスセンサの構成を示すブロック図である。
図14】一変形例におけるインピーダンスセンサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。

[プラズマ処理装置の構成]
【0025】
図1に、本発明の一実施形態におけるプラズマ処理方法を実施するのに好適なプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、下部2高周波重畳印加方式の容量結合型(平行平板型)プラズマエッチング装置として構成されており、たとえば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形の真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は接地されている。
【0026】
チャンバ10の底部には、セラミックなどの絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上にたとえばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、この上に被処理基板としてたとえば半導体ウエハWが載置される。
【0027】
サセプタ16の上面には半導体ウエハWを保持するための静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートの間に挟み込んだものであり、電極20にはスイッチ22を介して直流電源24が電気的に接続されている。直流電源24からの直流電圧により、半導体ウエハWを静電吸着力で静電チャック18に保持できるようになっている。静電チャック18の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるためのたとえばシリコンからなるフォーカスリング26が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面にはたとえば石英からなる円筒状の内壁部材28が貼り付けられている。
【0028】
サセプタ支持台14の内部には、たとえば円周方向に延びる冷媒室30が設けられている。この冷媒室30には、外付けのチラーユニット(図示せず)より配管32a,32bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ16上の半導体ウエハWの処理温度を制御できるようになっている。さらに、伝熱ガス供給機構(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン34を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0029】
サセプタ16には、高周波電源36,38がそれぞれ整合器40,42および共通の給電導体(たとえば給電棒)44を介して電気的に接続されている。一方の高周波電源36は、プラズマの生成に適した一定の周波数fRF1(たとえば100MHz)の高周波RF1を出力する。他方の高周波電源38は、プラズマからサセプタ16上の半導体ウエハWへのイオンの引き込みに適した一定の周波数fRF2(たとえば13.56MHz)の高周波RF2を出力する。
【0030】
このように、整合器40および給電棒44は、高周波電源36よりプラズマ生成用の高周波RF1をサセプタ16まで伝送する高周波給電ライン(高周波伝送路)43の一部を構成している。一方、整合器42および給電棒44は、高周波電源38よりイオン引き込み用の高周波RF2をサセプタ16まで伝送する高周波給電ライン(高周波伝送路)45の一部を構成している。
【0031】
チャンバ10の天井には、サセプタ16と平行に向かいあって接地電位の上部電極46が設けられている。この上部電極46は、多数のガス噴出孔48aを有するたとえばSi、SiCなどのシリコン含有材質からなる電極板48と、この電極板48を着脱可能に支持する導電材料たとえば表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる電極支持体50とで構成されている。この上部電極46とサセプタ16との間にプラズマ生成空間または処理空間PSが形成されている。
【0032】
電極支持体50は、その内部にガスバッファ室52を有するとともに、その下面にガスバッファ室52から電極板48のガス噴出孔48aに連通する多数のガス通気孔50aを有している。ガスバッファ室52にはガス供給管54を介して処理ガス供給源56が接続されている。処理ガス供給源56には、マスフローコントローラ(MFC)58および開閉バルブ60が設けられている。処理ガス供給源56より所定の処理ガス(エッチングガス)がガスバッファ室52に導入されると、電極板48のガス噴出孔48aよりサセプタ16上の半導体ウエハWに向けて処理空間PSに処理ガスがシャワー状に噴出されるようになっている。このように、上部電極46は、処理空間PSに処理ガスを供給するためのシャワーヘッドを兼ねている。
【0033】
また、電極支持体50の内部には冷媒たとえば冷却水を流す通路(図示せず)も設けられており、外部のチラーユニットにより冷媒を介して上部電極46の全体、特に電極板48を所定温度に温調するようになっている。さらに、上部電極46に対する温度制御をより安定化させるために、電極支持体50の内部または上面にたとえば抵抗発熱素子からなるヒータ(図示せず)を取り付ける構成も可能である。
【0034】
サセプタ16およびサセプタ支持台14とチャンバ10の側壁との間に形成される環状の空間は排気空間となっており、この排気空間の底にはチャンバ10の排気口62が設けられている。この排気口62に排気管64を介して排気装置66が接続されている。排気装置66は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10の室内、特に処理空間PSを所望の真空度まで減圧できるようになっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口68を開閉するゲートバルブ70が取り付けられている。
【0035】
主制御部72は、1つまたは複数のマイクロコンピュータを含み、外部メモリまたは内部メモリに格納されるソフトウェア(プログラム)およびレシピ情報にしたがって、装置内の各部、特に高周波電源36,38、整合器40,42、MFC58、開閉バルブ60、排気装置66等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0036】
また、主制御部72は、キーボード等の入力装置や液晶ディスプレイ等の表示装置を含むマン・マシン・インタフェース用の操作パネル(図示せず)および各種プログラムやレシピ、設定値等の各種データを格納または蓄積する外部記憶装置(図示せず)等とも接続されている。この実施形態では、主制御部72が1つの制御ユニットとして示されているが、複数の制御ユニットが主制御部72の機能を並列的または階層的に分担する形態を採ってもよい。
【0037】
この容量結合型プラズマエッチング装置における枚葉ドライエッチングの基本動作は次のようにして行われる。先ず、ゲートバルブ70を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック18の上に載置する。そして、処理ガス供給源56より処理ガスつまりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置66による真空排気でチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波電源36,38よりそれぞれ所定のパワーでプラズマ生成用の高周波RF1(100MHz)およびイオン引き込み用の高周波RF2(13.56MHz)を重畳してサセプタ16に印加する。また、直流電源24より直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWを静電チャック18上に固定する。上部電極46のシャワーヘッドより吐出されたエッチングガスは両電極46,16間の高周波電界の下で放電し、処理空間PS内にプラズマが生成される。このプラズマに含まれるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの主面の被加工膜がエッチングされる。
【0038】
この容量結合型プラズマエッチング装置においては、たとえば上述したようなチャージングダメージ対策として、高周波電源36より出力されるプラズマ生成用の高周波RF1のパワーを、たとえば10〜90%の範囲でデューティ比を制御可能として、たとえば1kHz〜100kHzのパルス周波数でオン/オフ(またはHレベル/Lレベル)のパルスに変調する第1のパワー変調方式を所与のエッチングプロセスに用いることができる。また、たとえば上述したようなマイクロローディング効果対策として、高周波電源38より出力されるイオン引き込み用の高周波RF2のパワーを、たとえば10〜90%の範囲でデューティ比の制御が可能であって、たとえば100Hz〜50kHzのパルス周波数でオン/オフ(またはHレベル/Lレベル)のパルスに変調する第2のパワー変調方式を所与のエッチングプロセスに用いることも可能となっている。
【0039】
たとえば、第1のパワー変調方式によって上記のようなドライエッチングを行う場合は、主制御部72よりパワー変調用に設定されたパルス周波数fSおよびデューティ比DSを規定する変調制御パルス信号PSが高周波電源36に与えられる。高周波電源36は、変調制御パルス信号PSに同期してプラズマ生成用高周波RF1の出力をオン・オフする。ここで、変調制御パルス信号PSの周期、オン期間(第1の期間)、オフ期間(第2の期間)をそれぞれTC,Ton,Toffとすると、TC=1/fS,TC=Ton+Toff,DS=Ton/(Ton+Toff)の関係式が成立する。
【0040】
一方、第1のパワー変調方式において、高周波電源38は、イオン引き込み用の高周波RF2をオン・オフすることなく連続的に出力する。もっとも、高周波RF1のオン・オフによりチャンバ10内でプラズマのインピーダンスが2つの値の間で行き来するために、高周波給電ライン45上の整合動作ないし整合度が高周波RF1のオン・オフに同期して2状態の間で行き来する。より詳しくは、後述するように、パルス周波数fSの1サイクルを構成するオン期間Tonとオフ期間Toffとの間で、それらの持続期間の長短に応じて整合の度合いが異なり、相対的に長い方の期間の時が短い方の期間の時よりも完全整合状態に近づき、それに伴って高周波給電ライン45上の高周波RF2のパワーにも差が生じる。
【0041】
すなわち、図2Aに示すように、オン期間Tonがオフ期間Toffよりも十分長い場合(デューティ比DSが十分大きい場合)は、オン期間Tonの時の方がオフ期間Toffの時よりも完全整合状態に近づくため、高周波RF2のパワーはオン期間Tonの時がオフ期間Toffの時よりも高くなる。
【0042】
反対に、図2Bに示すように、オフ期間Toffがオン期間Tonよりも十分長い場合(デューティ比DSが十分小さい場合)は、オフ期間Toffの時の方がオン期間Tonの時よりも完全整合状態に近づくため、高周波RF2のパワーはオフ期間Toffの時がオン期間Tonの時よりも高くなる。
【0043】
このように第1のパワー変調方式によってプラズマ生成用の高周波RF1にパワー変調をかけると、高周波給電ライン43上で高周波電源36からチャンバ10内のサセプタ16に向かう進行波の中に、本来の高周波RF1のみならず、図3Aに示すように、周波数軸上でその高周波RF1の周り(両側)にパルス周波数fSに応じた側波帯の周波数成分(パルス周波数の変調分)が発生する。この場合、整合器40の整合動作が効いて整合が良くとれている時は、高周波RF1のパワーがプラズマに最も効率よく吸収される。したがって、チャンバ10内のプラズマから高周波給電ライン43上を逆方向に伝搬してくる反射波においては、図3Bに示すように、高周波RF1と同じ周波数fRF1を有する基本波反射波のパワーが際立って低くなる。
【0044】
一方、パワー変調をかけない高周波RF2側の給電系においても、上記のように高周波RF1のオン・オフに同期して高周波RF2のパワーが2つの値の間で行き来(変動)することにより、図4Aに示すように、進行波および反射波の中に本来の高周波RF2および基本波反射波のみならず変調周波数fSに応じた側波帯の周波数成分(パルス周波数の変調分)が発生する。したがって、整合器42の整合動作が効いて整合が良くとれている時は、高周波RF2のパワーがプラズマに最も効率よく吸収される。この場合、チャンバ10内のプラズマから高周波給電ライン45上を逆方向に伝搬してくる反射波においては、図4Bに示すように、高周波RF2と同じ周波数fRF2を有する基本波反射波のパワーが際立って低くなる。
【0045】
なお、第2のパワー変調方式によってイオン引き込み用の高周波RF2のパワーにパワー変調をかける場合も、高周波RF1と高周波RF2の立場が逆転するだけで上記と同様のパワー変調に付随する側波帯がそれぞれに発生し、整合器40,42の整合動作に上記と同様の要求性能が課せられる。

[高周波電源及び整合器の構成]
【0046】
図5に、この実施形態におけるプラズマ生成系の高周波電源36および整合器40の構成を示す。
【0047】
高周波電源36は、プラズマ生成用の一定周波数(たとえば100MHz)の正弦波を発生する発振器80Aと、この発振器80Aより出力される正弦波のパワーを制御可能として、利得または増幅率で増幅するパワーアンプ82Aと、主制御部72からの制御信号にしたがって発振器80Aおよびパワーアンプ82Aを直接制御する電源制御部84Aとを備えている。主制御部72から電源制御部84Aには、上記変調制御パルス信号PSだけでなく、通常の電源オン・オフやパワーインターロック関係等の制御信号およびパワー設定値等のデータも与えられる。主制御部72と電源制御部84Aは、高周波RF1系のパワー変調部を構成する。
【0048】
高周波電源36のユニット内には、RFパワーモニタ86Aも備わっている。このRFパワーモニタ86Aは、図示省略するが、方向性結合器、進行波パワーモニタ部および反射波パワーモニタ部を有している。ここで、方向性結合器は、高周波給電ライン43上を順方向に伝搬するRFパワー(進行波)と逆方向に伝搬するRFパワー(反射波)のそれぞれに対応する信号を取り出す。進行波パワーモニタ部は、方向性結合器により取り出された進行波パワー検出信号を基に、高周波給電ライン43上の進行波に含まれる基本波進行波(100MHz)のパワーを表わす信号を生成する。この信号つまり基本波進行波パワー測定値信号は、パワーフィードバック制御用に高周波電源36内の電源制御部84Aに与えられるとともに、モニタ表示用に主制御部72にも与えられる。反射波パワーモニタ部は、チャンバ10内のプラズマから高周波電源36に返ってくる反射波に含まれる基本波反射波(100MHz)のパワーを測定するとともに、チャンバ10内のプラズマから高周波電源36に返ってくる反射波に含まれる全ての反射波スペクトルのトータルのパワーを測定する。反射波パワーモニタ部により得られる基本波反射波パワー測定値はモニタ表示用に主制御部72に与えられ、トータル反射波パワー測定値はパワーアンプ保護用のモニタ値として高周波電源36内の電源制御部84Aに与えられる。
【0049】
整合器40は、複数たとえば2つの制御可能なリアクタンス素子(たとえばコンデンサあるいはインダクタ)XH1,XH2を含む整合回路88Aと、リアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンスをアクチエータたとえばモータ(M)90A,92Aを介して制御するマッチングコントローラ94Aと、高周波給電ライン43上で整合回路88Aのインピーダンスを含む負荷側のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサ96Aとを有している。
【0050】
マッチングコントローラ94Aは、主制御部72の制御の下で動作し、インピーダンスセンサ96Aより与えられる負荷側インピーダンス測定値をフィードバック信号として、負荷側インピーダンス測定値が高周波電源36側のインピーダンスに相当する整合ポイント(通常50Ω)に一致ないし近似するように、リアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンスをモータ90A,92Aの駆動制御を通じて制御するようになっている。
【0051】
図6に、インピーダンスセンサ96A内の構成を示す。このインピーダンスセンサ96Aは、電圧センサ系のRF電圧検出器100A、電圧検知信号生成回路102A、サンプリング平均値演算回路104Aおよび移動平均値演算回路106Aと、電流センサ系のRF電流検出器108A、電流検知信号生成回路110A、サンプリング平均値演算回路112Aおよび移動平均値演算回路114Aと、負荷インピーダンス演算回路116Aとを有している。
【0052】
電圧センサ系において、RF電圧検出器100Aは、高周波給電ライン43上の高周波の電圧を検出する。電圧検知信号生成回路102Aは、たとえばスーパーヘテロダイン方式のフィルタ回路を有し、RF電圧検出器100Aからの高周波電圧検出信号をアナログのフィルタリング処理にかけて、高周波RF1に対応する電圧検知信号を生成する。
【0053】
サンプリング平均値演算回路104Aは、パワー変調に同期して動作し、パルス周波数fSの1サイクル内の所定のモニタ時間TH中に電圧検知信号生成回路102Aからの電圧検知信号を所定の周波数でサンプリングしてその平均値を演算する。この構成例では、電圧検知信号生成回路102Aからのアナログの電圧検知信号をサンプリング平均値演算回路104Aにおいてディジタル信号に変換する。主制御部72は、サンプリング用のクロックACK1と、高周波RF1系のモニタ時間THを指示するRF1モニタ信号ASとをサンプリング平均値演算回路104Aに与える。サンプリング平均値演算回路104Aは、数10MHz以上のサンプリングクロックACK1に同期して高速かつ多量の信号処理を要求されるため、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)を好適に用いることができる。
【0054】
移動平均値演算回路106Aは、サンプリング平均値演算回路104Aより得られた各サイクルの平均値に基づいて電圧検知信号の移動平均値を求める。すなわち、サンプリング平均値演算回路104Aより得られた連続するN個の電圧検知信号の平均値を一定の周期でサンプリングして、それらN個の平均値について移動平均値を求め、時間軸上でサンプリング範囲を所望の移動ピッチで移動させて上記の移動平均値演算を繰り返す。移動ピッチの値は任意に設定可能である。主制御部72は、サンプリング用のクロックACK2を移動平均値演算回路106Aに与える。移動平均値演算回路106Aは、特に高速の信号処理を求められないので、通常のCPUを好適に用いることかできる。
【0055】
電流センサ系において、RF電流検出器108Aは、高周波給電ライン43上の高周波の電流を検出する。電流検知信号生成回路110Aは、上述した電圧検知信号生成回路102Aと同様の構成および機能を有し、高周波RF1に対応する電流検知信号を生成する。サンプリング平均値演算回路112Aは、上述したサンプリング平均値演算回路104Aと同様の構成および機能を有し、パルス周波数fSの1サイクル内の所定のモニタ時間TH中に電流検知信号生成回路110Aからの電流検知信号を所定の周波数でサンプリングしてその平均値を演算する。移動平均値演算回路114Aは、上述した移動平均値演算回路106Aと同様の構成および機能を有し、サンプリング平均値演算回路112Aより得られた各サイクルの平均値に基づいて電流検知信号の移動平均値を求める。
【0056】
負荷インピーダンス演算回路116Aは、移動平均値演算回路106Aからの電圧検知信号の移動平均値と移動平均値演算回路114Aからの電流検知信号の移動平均値とに基づいて、高周波電源36に対する負荷側インピーダンスの測定値を演算する。負荷インピーダンス演算回路116Aより出力される負荷側インピーダンスの測定値は、サンプリングクロックACK2に同期して更新される。主制御部72は、負荷インピーダンス演算回路116Aに所要のクロックACK3を与える。通常、負荷インピーダンス演算回路116Aより出力される負荷側インピーダンスの測定値には、負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値が含まれる。
【0057】
整合器40内のマッチングコントローラ94Aは、インピーダンスセンサ96Aより与えられる負荷側インピーダンス測定値に応答し、負荷側インピーダンス測定値の位相が零(0)、絶対値が50Ωになるように、モータ90A,92Aを駆動制御して整合回路88A内のリアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンスを制御する。
【0058】
インピーダンスセンサ96Aよりマッチングコントローラ94Aに与えられる負荷側インピーダンス測定値は、パワー変調に同期して(正確には移動平均値演算の周期で)更新される。マッチングコントローラ94Aは、この更新の合間にも、整合動作つまりリアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンス制御を停止することなく、更新直前の負荷側インピーダンス測定値を整合ポイントに一致ないし近似させるように、モータ90A,92Aを連続的に駆動制御する。
【0059】
この実施形態では、上記のようにサンプリング平均値演算回路104A,112Aおよび移動平均値演算回路106A,114AによってRF電圧および電流の測定値に二重のサンプリング平均化処理をかけることにより、インピーダンスセンサ96Aより出力される負荷側インピーダンス測定値の更新の速度と、マッチングコントローラ94Aにおけるモータ90A,92Aの駆動制御(つまりリアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンス制御)の速度とを上手に調和させることができる。このことにより、パワー変調のパルス周波数を数10kHz以上のオーダに設定しても、整合器40の整合動作において、可動部品(特にリアクタンス素子XH1,XH2)の故障や寿命短縮化を来たさずに、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に適確に追従することができる。
【0060】
また、この実施形態では、上記のように、高周波給電ライン43上で得られる高周波RF1に対応した電圧検出信号および電流検出信号に基づいて求めた負荷側インピーダンスの測定値を整合ポイントに一致ないし近似させるようにオートマッチングを行うので、周波数軸上で高周波RF1の周り(両側)に変調周波数に応じた側波帯の周波数成分(パルス周波数fSの変調分)が存在しても、整合器40の整合動作は高周波RF1に対して選択的に効くようになっている。したがって、RFパワーモニタ86A内の反射波パワーモニタ部において、図3Bに示すように基本波反射波(fRF1)のパワーが際立って低くなるようなモニタ結果を得ることができる。
【0061】
図7に、この実施形態におけるイオン引き込み用の高周波電源38および整合器42の構成を示す。
【0062】
高周波電源38は、イオン引き込み用の一定周波数(たとえば13.56MHz)の正弦波を発生する発振器80Bと、この発振器80Bより出力される正弦波のパワーを制御してその利得または増幅率で増幅するパワーアンプ82Bと、主制御部72からの制御信号にしたがって発振器80Bおよびパワーアンプ82Bを直接制御する電源制御部84Bと、RFパワーモニタ86Bとを備えている。発振器80Bの周波数(13.56MHz)が発振器80Aの周波数(100MHz)と異なる点を除いて、高周波電源38内の各部80B〜86Bはプラズマ生成用の高周波電源36内の各部80A〜86Aとそれぞれ同様の構成および機能を有している。なお、主制御部72と電源制御部84Bは、高周波RF2系のパワー変調部を構成する。
【0063】
整合器42は、複数たとえば2つの制御可能なリアクタンス素子(たとえばコンデンサあるいはインダクタ)XL1,XL2を含む整合回路88Bと、それらリアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンスをアクチエータたとえばモータ(M)90B,92Bを介して制御するマッチングコントローラ94Bと、高周波給電ライン45上で整合回路88Bのインピーダンスを含む負荷側のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサ96Bとを有している。
【0064】
マッチングコントローラ94Bは、主制御部72の制御の下で動作し、インピーダンスセンサ96Bより与えられる負荷側インピーダンス測定値をフィードバック信号として、負荷側インピーダンス測定値が高周波電源38側のインピーダンスに相当する整合ポイント(通常50Ω)に一致ないし近似するように、リアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンスをモータ90B,92Bの駆動を通じて制御するようになっている。
【0065】
図8に、インピーダンスセンサ96B内の構成を示す。このインピーダンスセンサ96Bは、電圧センサ系のRF電圧検出器100B、電圧検知信号生成回路102B、サンプリング平均値演算回路104Bおよび移動平均値演算回路106Bと、電流センサ系のRF電流検出器108B、電流検知信号生成回路110B、サンプリング平均値演算回路112Bおよび移動平均値演算回路114Bと、負荷インピーダンス演算回路116Bとを有している。
【0066】
電圧センサ系において、RF電圧検出器100Bは、高周波給電ライン45上の高周波の電圧を検出する。電圧検知信号生成回路102Bは、たとえばスーパーヘテロダイン方式のフィルタ回路を有し、RF電圧検出器100Bからの高周波電圧検出信号をアナログのフィルタリング処理にかけて、高周波RF1に対応する電圧検知信号を生成する。
【0067】
サンプリング平均値演算回路104Bは、パワー変調に同期して動作し、パルス周波数fSの1サイクル内の所定のモニタ時間TL中に電流検知信号生成回路102Bからの電流検知信号を所定の周波数でサンプリングしてその平均値を演算する。この構成例では、電流検知信号生成回路102Bからのアナログの電流検知信号をサンプリング平均値演算回路104Bにおいてディジタル信号に変換する。主制御部72は、サンプリング用のクロックBCK1と、高周波RF2系のモニタ時間TLを規定するRF2モニタ信号BSとをサンプリング平均値演算回路104Bに与える。
【0068】
移動平均値演算回路106Bは、サンプリング平均値演算回路104Bより得られた各サイクルの平均値に基づいて電流検知信号の移動平均値を求める。すなわち、サンプリング平均値演算回路104Bより得られた連続するN個の電流検知信号の平均値を一定の周期でサンプリングして、それらN個の平均値について移動平均値を求め、時間軸上でサンプリング範囲を所望の移動ピッチで移動させて上記の移動平均値演算を繰り返す。移動ピッチの値は任意に設定可能である。
【0069】
電流センサ系において、RF電流検出器108Bは、高周波給電ライン45上の高周波の電流を検出する。電流検知信号生成回路110Bは、上述した電流検知信号生成回路102Bと同様の構成および機能を有し、高周波RF2に対応する電流検知信号を生成する。サンプリング平均値演算回路112Bは、上述したサンプリング平均値演算回路104Bと同様の構成および機能を有し、パルス周波数fSの1サイクル内の所定のモニタ期間TRF2中に電流検知信号生成回路110Bからの電流検知信号を所定の周波数でサンプリングしてその平均値を演算する。移動平均値演算回路114Bは、上述した移動平均値演算回路106Bと同様の構成および機能を有し、サンプリング平均値演算回路112Bより得られた各サイクルの平均値に基づいて電流検知信号の移動平均値を求める。
【0070】
負荷インピーダンス演算回路116Bは、移動平均値演算回路106Bからの電圧検知信号の移動平均値と移動平均値演算回路114Bからの電流検知信号の移動平均値とに基づいて、高周波電源38に対する負荷側インピーダンスの測定値を演算する。負荷インピーダンス演算回路116Bより出力される負荷側インピーダンスの測定値は、移動平均値演算用のサンプリングクロックBCK2に同期して更新される。主制御部72は、負荷インピーダンス演算回路116Bに所要のクロックBCK3を与える。通常、負荷インピーダンス演算回路116Bより出力される負荷側インピーダンスの測定値には、負荷側インピーダンスの絶対値および位相の測定値が含まれる。
【0071】
整合器42内のマッチングコントローラ94Bは、インピーダンスセンサ96Bより与えられる負荷側インピーダンス測定値に応答し、負荷側インピーダンス測定値の位相が零(0)、絶対値が50Ωになるように、モータ90B,92Bを駆動制御して整合回路88B内のリアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンスを制御する。
【0072】
インピーダンスセンサ96Bよりマッチングコントローラ94Bに与えられる負荷側インピーダンス測定値は、パワー変調に同期して(正確には移動平均値演算の周期で)更新される。マッチングコントローラ94Bは、この更新の合間にも、整合動作つまりリアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンス制御を停止することなく、更新直前の負荷側インピーダンス測定値を整合ポイントに一致ないし近似させるように、モータ90B,92Bを駆動制御する。
【0073】
この実施形態では、上記のようにサンプリング平均値演算回路104B,112Bおよび移動平均値演算回路106B,114BによってRF電圧および電流測定値に二重のサンプリング平均化処理をかけることにより、インピーダンスセンサ96Bより出力される負荷側インピーダンス測定値の更新の速度と、マッチングコントローラ94Bにおけるモータ90B,92Bの駆動制御(つまりリアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンス制御)の速度とを上手に調和させることができる。このことにより、パワー変調の周波数を数10kHz以上のオーダに設定しても、整合器42の整合動作において、可動系部品(特にリアクタンス素子XL1,XL2)の故障や寿命短縮化を来たさずに、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に適確に追従することができる。
【0074】
また、この実施形態では、上記のように、高周波給電ライン45上で得られる高周波RF2に対応した電圧検出信号および電流検出信号に基づいて求めた負荷側インピーダンスの測定値を整合ポイントに一致ないし近似させるようにオートマッチングを行う。すなわち、周波数軸上で高周波RF2の周り(両側)に変調周波数fSに応じた側波帯の周波数成分(パルス周波数の変調分)が存在しても、整合器42の整合動作は高周波RF2に対して選択的に効くようになっている。したがって、RFパワーモニタ86B内の反射波パワーモニタ部において、図4Bに示すように基本波反射波(fRF2)のパワーが際立って低くなるようなモニタ結果を得ることができる。

[整合器の作用]
【0075】
次に、図9につき、一例として第1のパワー変調方式における整合器40,42の作用をより詳細に説明する。
【0076】
第1のパワー変調方式によって所与のドライエッチングを行う場合、主制御部72よりプラズマ生成用の高周波電源36に変調制御パルス信号PSが与えられる。高周波電源36は、図9に示すように、変調制御パルス信号PSに同期して高周波RF1の出力またはパワーをオン・オフする。
【0077】
この場合、主制御部72からのRF1モニタ信号ASにより高周波RF1系の整合器40内のサンプリング平均値演算回路104A,112Aに指示されるサンプリング平均化処理のモニタ時間THは、パルス周波数fSの1サイクルのオン期間Ton内に設定される。好ましくは、図9に示すように、高周波給電ライン43上でRF1系の反射波のパワーが突発的に増大するオン期間Tonの開始直後および終了直前の過渡時間TA1,TA2を除いた区間にモニタ時間THが設定される。高周波RF1がパルス周波数fsでオン・オフしても、モニタ時間THがオン期間Ton内だけに設定され、オフ期間Toff内には設定されない。したがって、整合器40は、高周波RF1がオンの状態である時のみ機能する。
【0078】
サンプリング平均値演算回路104A,112Aは、このモニタ時間TH中にサンプリングクロックACK1に同期して電圧検知信号および電流検知信号をサンプリングして、それらの平均値をそれぞれ演算する。
【0079】
たとえば、パルス周波数fSが10kHz、デューティ比DSが80%、サンプリングクロックACK1の周波数が40MHzであって、モニタ時間THの長さがオン期間Tonの半分(50%)であるとする。この場合、パルス周波数fSの1サイクル毎に、オン期間Ton内のモニタ時間TH中に1600回のサンプリングが行われ、1600個分の平均値を表わす1個の平均値データaが得られる。
【0080】
整合器40内の電圧センサ系の移動平均値演算回路106Aは、図10に示すように、パルス周波数fSの各サイクル毎にサンプリング平均値演算回路104Aより出力される平均値データaを取り込んで、連続するN個の電圧検知信号の平均値aをサンプリングクロックACK2の周期TAでサンプリングして、それらN個の平均値データaについて移動平均値を求め、時間軸上でサンプリング範囲をサンプリングクロックACK2の周期TAに応じた移動ピッチで移動させて上記の移動平均値演算を繰り返す。
【0081】
たとえば、パルス周波数fSが10kHzの場合に、サンプリングクロックACK2の周期TAを200μsec(周波数では5kHz)にすると、図10に示すように、移動ピッチ(時間軸上の先頭側の平均値データaと最後尾側の平均値データaとを1回の移動平均値演算で入れ替える個数)は「2」である。このように、移動ピッチの値を任意の「m」(mは2以上の整数)に設定する場合は、サンプリングクロック信号ACK2の周波数をパルス周波数fSの1/m倍に選定すればよい。
【0082】
整合器40内の電流センサ系の移動平均値演算回路114Aも、電圧センサ系の移動平均値演算回路106Aと同じタイミングで動作し、電圧検知信号の平均値について同様の信号処理を行う。
【0083】
このように、第1のパワー変調方式を用いる場合、プラズマ生成用高周波RF1系の整合器40においては、パルス周波数fSの各サイクルのオン期間Ton内(好ましくは反射波パワーの多い過渡時間を除いた区間)に設定されるモニタ時間TH中にサンプリング平均値演算回路104A,112Aが高速度で緻密なサンプリング平均の信号処理を行い、さらに移動平均値演算回路106A,114Aが多数のサイクルに亘る移動平均の信号処理を行う。そして、移動平均のサンプリングクロックに同期して更新される負荷インピーダンス測定値演算回路116Aからの負荷側インピーダンス測定値に応じて、マッチングコントローラ94Aがリアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンス制御を連続的に行う。これにより、パワー変調のパルス周波数を数10kHz以上のオーダに設定しても、またデューティ比Dsを任意の大きさに設定しても、整合器40の整合動作において、可動部品(特にリアクタンス素子XH1,XH2)の故障や寿命短縮化を来たさずに、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に適確に追従することができる。
【0084】
一方、第1のパワー変調方式において、イオン引き込み用の高周波電源38には、変調制御パルス信号PSは与えられない。したがって、高周波電源38は、高周波波RF2を設定値パワーで連続的に出力する。
【0085】
この場合、主制御部72からのRF2モニタ信号BSにより高周波RF2系の整合器42内のサンプリング平均値演算回路104B,112Bに指示されるサンプリング平均化処理のモニタ時間TLは、パルス周波数fSの1サイクルのオン期間Tonおよびオン期間Toffのそれぞれに設定される。好ましくは、図9に示すように、オン期間Ton内では、高周波給電ライン45上でRF2系の反射波のパワーが突発的に増大する開始直後および終了直前の過渡時間TB1,TB2を除いた区間に一つのモニタ時間TL1が設定される。一方、オフ期間Toff内では、その全区間に亘って別のモニタ時間TL2が設定される。
【0086】
サンプリング平均値演算回路104B,112Bは、パルス周波数fSの1サイクル毎に、前部のモニタ時間TL1中にサンプリングクロックBCK1に同期して電圧検知信号および電流検知信号をサンプリングして、それらの平均値bをそれぞれ演算するとともに、後部のモニタ時間TL2中にもサンプリングクロックBCK1に同期して電圧検知信号および電流検知信号をサンプリングして、それらの平均値cをそれぞれ演算する。
【0087】
たとえば、パルス周波数fSが10kHz、デューティ比DSが80%、サンプリングクロックBCK1の周波数が40MHzであって、前部のモニタ時間TL1の長さがオン期間Tonの半分(50%)で、後部のモニタ時間TL2の長さがオン期間Toffの全部であるとする。この場合、パルス周波数fSの1サイクル内で、前部のモニタ時間TL1中に1600回のサンプリングが行われ、1600個分の平均値を表わす1個の平均値データbが得られるとともに、後部のモニタ時間TL2中に800回のサンプリングが行われ、800個分の平均値を表わす1個の平均値データcが得られる。
【0088】
整合器42内の電圧センサ系の移動平均値演算回路106Bは、図11に示すように、パルス周波数fSの各サイクル毎にサンプリング平均値演算回路104Bより出力される平均値データb,cを一緒に取り込んで、連続するN組の電圧検知信号の平均値[b,c]をサンプリングクロックBCK2の周期TBでサンプリングして、それらN組の平均値データ[b,c]について移動平均値を求め、時間軸上でサンプリング範囲をサンプリングクロックBCK2の周期TBに応じた移動ピッチで移動させて上記の移動平均値演算を繰り返す。
【0089】
たとえば、パルス周波数fSが10kHzの場合に、サンプリングクロックBCK2の周期TBを200μsec(周波数では5kHz)にすると、図11に示すように、移動ピッチ(時間軸上の先頭側の平均値データ[b,c]と最後尾側の平均値データ[b,c]とを1回の移動平均値演算で入れ替える組数)は「2」である。このように、移動ピッチの値を任意の「m」(mは2以上の整数)に設定する場合は、サンプリングクロック信号BCK2の周波数をパルス周波数fSの1/m倍に選定すればよい。
【0090】
整合器42内の電流センサ系の移動平均値演算回路112Bも、電圧センサ系の移動平均値演算回路106Bと同じタイミングで動作し、電流検知信号の平均値について同様の信号処理を行う。
【0091】
このように、この実施形態では、パルス周波数fSの各サイクルのオン期間Ton内(好ましくは反射波パワーの多い過渡時間を除いた区間)およびオフ期間Toff内に設定される前部および後部のモニタ時間TL1,TL2にサンプリング平均値演算回路104B,112Bが高速度で緻密なサンプリング平均の信号処理を行い、さらに移動平均値演算回路106B,112Bが多数のサイクルに亘る移動平均の信号処理を行う。そして、移動平均のサンプリングクロックに同期して更新される負荷インピーダンス測定値演算回路116Bからの負荷側インピーダンス測定値に応じて、マッチングコントローラ94Bがリアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンス制御を連続的に行う。これにより、パワー変調のパルス周波数を数10kHz以上のオーダに設定しても、またデューティ比Dsを任意の大きさに設定しても、整合器42の整合動作において、可動部品(特にリアクタンス素子XL1,XL2)の故障や寿命短縮化を来たさずに、負荷(プラズマ)インピーダンスの変動に適確に追従することができる。
【0092】
もっとも、高周波RF1系の整合器40は、上記のようにオン期間Ton中のプラズマのインピーダンスについて整合をとればよいので、図12のスミスチャート上で示すように整合動作点Aを整合ポイント(50Ω)に一致または可及的に近接させることができる。
【0093】
これに対して、高周波RF2系の整合器42は、オン期間Ton中のプラズマのインピーダンスとオフ期間Toff中のプラズマのインピーダンスとの双方について整合をとるので、完全整合状態よりはむしろ準整合状態を確立するように動作する。ここで、整合器42では上記のような2重のサンプリング平均化処理が行われることにより、オン期間Tonとオフ期間Toffとの間で、それらのモニタ時間(サンプリング期間)TL1,TL2の長さに比例して整合の度合いが異なり、相対的に長い方の期間の時が短い方の期間の時よりも完全整合状態に近づく。したがって、図9のようにデューティ比DSが十分大きい場合は、図12のスミスチャート上で示すようにオン期間Tonの時の整合点Bがオフ期間Toffの時の整合点Cよりも整合ポイントに近接する。また、モニタ時間(サンプリング期間)TL1,TL2中のRF2反射波パワーは、モニタ期間の長さに反比例し、図9に示すようにオフ期間Toffの時の方がオン期間Tonの時よりも大きくなる。
【0094】
なお、本発明において、整合状態とは、整合動作点がオン期間Tonまたはオフ期間Toffの別なく整合ポイント(50Ω)を限りなく目指し、かつ一定(第1)の近接範囲内に入っている状態である。これに対して、準整合状態とは、オン期間Tonの時とオフ期間Toffの時とで負荷インピーダンスの違いに基づき整合動作点が整合ポイント(50Ω)の周りで移動し、それでも第1の近接範囲よりも大きい一定(第2)の近接範囲内に入っている状態である。
【0095】
第2のパワー変調方式によってイオン引き込み用の高周波RF2のパワーにパワー変調をかける場合も、高周波RF1(整合器40)と高周波RF2(整合器42)の立場が逆転するだけで、両整合器40,42において上記と同様の作用が奏され、上記と同様の効果が得られる。

[他の実施形態または変形例]
【0096】
以上本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種種の変形が可能である。
【0097】
たとえば、図13に示すように、整合器40内のインピーダンスセンサ96Aを、RF電圧検出器100A、RF電流検出器108A、負荷インピーダンス演算回路120A、サンプリング平均値演算回路122Aおよび移動平均値演算回路124Aで構成することも可能である。
【0098】
ここで、負荷インピーダンス演算回路120Aは、RF電圧検出器100AおよびRF電流検出器108Aより得られるRF電圧検知信号およびRF電流検知信号に基づいて高周波給電ライン43上の負荷側インピーダンスの測定値を演算する。負荷インピーダンス演算回路120Aは、アナログ回路でも可能であるが、ディジタル回路で構成するのが好ましい。
【0099】
サンプリング平均値演算回路122Aおよび移動平均値演算回路124Aは、処理対象の信号が負荷側インピーダンス測定値に置き代わるだけで、上記実施形態におけるサンプリング平均値演算回路104A,112Aおよび移動平均値演算回路106A,114Aと同様のサンプリング平均化処理を行ってよい。
【0100】
この場合、マッチングコントローラ94A(図5)は、移動平均値演算回路124Aより得られる負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が高周波電源36側のインピーダンスに対応する整合ポイントに一致または近似するように、リアクタンス素子XH1,XH2のリアクタンスをモータ90A,92Aを通じて制御する。
【0101】
同様に、図14に示すように、整合器42内のインピーダンスセンサ96Bを、RF電圧検出器100B、RF電流検出器108B、負荷インピーダンス演算回路120B、サンプリング平均値演算回路122Bおよび移動平均値演算回路124Aで構成することも可能である。
【0102】
ここで、負荷インピーダンス演算回路120Bは、RF電圧検出器100BおよびRF電流検出器108Bより得られるRF電圧検知信号およびRF電流検知信号に基づいて高周波給電ライン45上の負荷側インピーダンスの測定値を演算する。負荷インピーダンス演算回路120Bは、アナログ回路でも可能であるが、ディジタル回路で構成するのが好ましい。
【0103】
サンプリング平均値演算回路122Bおよび移動平均値演算回路124Bは、処理対象の信号が負荷側インピーダンス測定値に置き代わるだけで、上記実施形態におけるサンプリング平均値演算回路104B,112Bおよび移動平均値演算回路106B,114Bと同様のサンプリング平均化処理を行ってよい。
【0104】
この場合、マッチングコントローラ94B(図7)は、移動平均値演算回路124Bより得られる負荷側インピーダンス測定値の移動平均値が高周波電源38側のインピーダンスに対応する整合ポイントに一致または近似するように、リアクタンス素子XL1,XL2のリアクタンスをモータ90B,92Bを通じて制御する。
【0105】
本発明においては、第1のパワー変調方式として、高周波RF1のパワーが第1のレベルになる第1の期間と第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返す形態も可能である。同様に、第2のパワー変調方式として、高周波RF2のパワーが第1のレベルになる第1の期間と第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返す形態も可能である。
【0106】
上記実施形態(図1)では、プラズマ生成用の高周波RF1をサセプタ(下部電極)16に印加した。しかし、プラズマ生成用の高周波RF1を上部電極46に印加する構成も可能である。
【0107】
本発明は、容量結合型のプラズマエッチング方法に限定されず、プラズマCVD、プラズマALD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなど任意のプラズマプロセスを行う容量結合型のプラズマ処理方法に適用可能である。本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ、有機EL、太陽電池用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0108】
10 チャンバ
16 サセプタ(下部電極)
36 (プラズマ生成用)高周波電源
38 (イオン引き込み用)高周波電源
40,42 整合器
43,45 高周波給電ライン
46 上部電極(シャワーヘッド)
56 処理ガス供給源
72 主制御部
88A,88B 整合回路
94A,94B マッチングコントローラ
96A,96B インピーダンスセンサ
100A,100B RF電圧検出器
102A,102B 電圧検知信号生成回路
104A,104B,112A,112B サンプリング平均値演算回路
106A,106B,114A,114B 移動平均値演算回路
116A,116B 負荷インピーダンス測定値演算回路
120A,120B 負荷インピーダンス測定値演算回路
122A,122B サンプリング平均値演算回路
124A,124B 移動平均値演算回路
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14