特許第6055870号(P6055870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6055870バックライトユニットおよび液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055870
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】バックライトユニットおよび液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20161219BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20161219BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20161219BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20161219BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20161219BHJP
   F21V 9/08 20060101ALI20161219BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20161219BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20161219BHJP
【FI】
   F21S2/00 431
   G02B5/20
   G02B5/26
   G02B5/22
   F21V9/16 100
   F21V9/08 100
   F21V9/08 200
   F21V9/08 400
   G02F1/13357
   F21Y115:10
【請求項の数】16
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-99718(P2015-99718)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-110979(P2016-110979A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-133363(P2014-133363)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-245205(P2014-245205)
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】大場 達也
(72)【発明者】
【氏名】加茂 誠
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−041706(JP,A)
【文献】 特開2014−006361(JP,A)
【文献】 特開2004−309618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/08
F21V 9/16
G02B 5/20
G02B 5/22
G02B 5/26
G02F 1/13357
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と出射光量選択低減部材とを少なくとも含み、
前記発光部は、
光源と、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換部材と、を含み、かつ、
発光中心波長が430〜480nmの波長帯域にある発光強度のピークを有する青色光と、発光中心波長が520〜560nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する緑色光と、発光中心波長が600〜680nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する赤色光と、を発光し、少なくとも前記緑色光および赤色光は前記蛍光体による発光であり、
前記出射光量選択低減部材は、
前記発光部から出射される光の光路上に位置し、かつ
前記発光部から発光され出射光量選択低減部材に入射する光の中で、680〜730nmの波長帯域の光の出射光量を選択的に低減する出射光量選択低減能を有する、バックライトユニット。
【請求項2】
前記発光部から出射される光の光路上に選択反射部材を更に有し、
前記選択反射部材は、
青色光の発光中心波長と緑色光の発光中心波長との間の波長帯域;および
緑色光の発光中心波長と赤色光の発光中心波長との間の波長帯域、
の少なくとも一方の波長帯域に反射ピークを有する、請求項1に記載のバックライトユニット。
【請求項3】
前記出射光量選択低減部材と前記選択反射部材とは別部材である請求項に記載のバックライトユニット。
【請求項4】
前記出射光量選択低減部材と前記選択反射部材とは同一部材である請求項に記載のバックライトユニット。
【請求項5】
前記出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項6】
前記出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光に対して吸収性を示す色素を含む請求項5に記載のバックライトユニット。
【請求項7】
前記出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に反射する選択反射能を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項8】
前記出射光量選択低減部材は、屈折率の異なる層が複数積層された多層膜である請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項9】
前記出射光量選択低減部材は、コレステリック液晶相が固定された光反射層である請求項8に記載のバックライトユニット。
【請求項10】
前記発光部に、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する選択吸収部材を更に含む請求項7〜9のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項11】
前記出射光量選択低減部材は、前記波長変換部材と一体積層されている請求項1〜10のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項12】
前記蛍光体は、量子ドットを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項13】
前記蛍光体は、セラミック蛍光体を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項14】
前記光源は、単一ピークの光を発光する光源である請求項1〜13のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項15】
前記光源は、青色光を発光する青色光源である請求項14のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のバックライトユニットと、液晶セルと、を少なくとも含む液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライトユニット、およびこのバックライトユニットを備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下、LCD(Liquid Crystal Display)とも言う)などのフラットパネルディスプレイは、消費電力が小さく、省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。液晶表示装置は、少なくともバックライトユニットと液晶セルとから構成され、通常、更に、バックライト側偏光板、視認側偏光板、カラーフィルターなどの部材が含まれる。
【0003】
バックライトユニットとしては、光源として、白色LED(Light-Emitting Diode)等の白色光源を含むものが広く用いられている。これに対し近年、白色光源に代えて、例えば青色LEDのような光源から発光された光と、光源から出射された光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む、光源とは別部材として配置された波長変換部材からの発光により、白色光を具現化する新たなバックライトユニットが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−41706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記新たなバックライトユニットでは、より詳しくは、例えば、以下のように白色光が具現化される。
光源から出射された光が、この光の光路上に配置された波長変換部材に入射する。波長変換部材に入射した光の中で、蛍光体に当たった光は蛍光体を励起させ、蛍光体に当たらずに波長変換部材を通過した光は波長変換部材外に出射される(光源由来の出射光)。
一方、励起された蛍光体は、入射光とは異なる波長の光(蛍光)を発光する。蛍光体として、例えば黄色光を発光する蛍光体(黄色蛍光体)を用いれば黄色光が波長変換部材から出射し、緑色光を発光する蛍光体(緑色蛍光体)を用いれば緑色光が出射し、赤色光を発光する蛍光体(赤色蛍光体)を用いれば赤色光が出射する。こうして波長変換部材から、光源由来の出射光とは波長の異なる出射光(更なる出射光)を得ることができる。そして光源由来の出射光と更なる出射光とが混色されることにより、白色光が具現化される。例えば特許文献1の段落0033には、光源由来の出射光としての青色光と、更なる出射光としての黄色光、更なる出射光としての黄色光および赤色光、または更なる出射光としての緑色光および赤色光と、を混色することにより白色光を具現化することが提案されている。このようにそれぞれ単一の発光ピークを有する各色光を混色して白色光を具現化することは、液晶表示装置の表示面における輝度(単位面積当たりの明るさの程度)の向上および色再現域の拡大に有効である。中でも、液晶表示装置のカラーフィルターが選択する波長帯域に発光中心波長を有する青色光、緑色光および赤色光を用いることは、輝度向上の観点から望ましい。カラーフィルターの吸収による光の損失を低減することができるためである。
他方、色再現域については、より高画質の画像を表示可能な液晶表示装置を得るべく更なる拡大が求められている。より詳しくは、現行のテレビ規格(FHD(Full High Definition)、NTSC(National Television System Committee))比72%から更に拡大することが求められている。色再現域は、原理上、バックライトユニットから出射される各色光の出射光ピークをシャープにするほど(半値幅を狭小化するほど)、向上する。そのため、発光ピークの半値幅が狭い蛍光を発光する蛍光体を用いることが、色再現域向上の手段の1つとして考えられる。半値幅が狭い蛍光を発光する蛍光体の具体例としては、例えばカドミウムを含むナノ粒子(量子ドット;詳細は後述する)の中には、そのような蛍光体も存在するが、一般に高価である。したがって、そのような蛍光体を利用することは、バックライトユニット(およびこれを備えた液晶表示装置)の高コスト化につながり、上記新たなバックライトユニットの汎用性を低下させてしまう。
かかる状況下、蛍光体の発光ピークの半値幅の狭小化によらずに色再現域を拡大するための新たな手段が求められている。
【0006】
そこで本発明の目的は、青色光、緑色光、および赤色光の三色混色により白色光を具現化するバックライトユニットを備えた液晶表示装置の色再現域を拡大するための新たな手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の通り、色再現域は、原理上、バックライトユニットから出射される各色光の出射光ピークを狭小化することにより拡大することができる。そこで色再現域拡大のための手段として、青色光の発光中心波長と緑色光の発光中心波長の間の光や、緑色光の発光中心波長と赤色光の発光中心波長の間の光を選択的に除去(例えば吸収により除去)するフィルター層を設けることにより、バックライトユニットから出射される青色光、緑色光および赤色光の出射光ピークの半値幅を狭小化することが考えられる。しかるに、かかる手段では、色再現域は拡大できるとしても、フィルター層により除去される分、光の利用効率は低下し、その結果、表示面に表示される画像の輝度は低下してしまう。これでは、青色光、緑色光および赤色光の三色混色による白色光の具現化により輝度の向上が可能になるという利点を損なうこととなる。
本発明者らは、上記の点を考慮し更に鋭意検討を重ねた結果、以下のバックライトユニット:
発光部と出射光量選択低減部材とを少なくとも含み、
発光部は、
光源と、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換部材と、を含み、かつ、
発光中心波長が430〜480nmの波長帯域にある発光強度のピークを有する青色光と、発光中心波長が520〜560nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する緑色光と、発光中心波長が600〜680nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する赤色光と、を発光し、少なくとも緑色光および赤色光は蛍光体による発光であり、
出射光量選択低減部材は、
発光部から出射される光の光路上に位置し、かつ
発光部から発光され出射光量選択低減部材に入射する光の中で、680〜730nmの波長帯域の光の出射光量を選択的に低減する出射光量選択低減能を有する、バックライトユニット、
を見出すに至った。即ち、上記バックライトユニットによれば、液晶表示装置において輝度の大きな低下を招くことなく色再現域の拡大が可能になることが、本発明者らにより新たに見出された。より詳しくは、以下の通りである。
上記発光部は、上述の3つの波長帯域に発光強度のピークを有する光を発光する。なお白色光源からの発光スペクトルには、通常、赤色光の波長帯域に発光ピークは存在しない。かかる発光部を備えたバックライトユニットから出射される光の中で、蛍光体が発光する赤色光の発光中心波長よりも長波長側の上記波長帯域(680〜730nm)の光を選択的に除去することにより、赤色光の半値幅を狭小化することができる。これにより、色再現域を拡大することが可能となる。また、この波長帯域よりも短波長側の光を除去することは、先に記載した通り輝度低下をもたらすのに対し、上記の長波長側の波長帯域の光量の大小は、人の目が感じる画像の明るさを大きく変化させない。これは、波長680nm以上の長波長帯域の光に対する、人の目の感度(視感度)がきわめて低いことによる。そして輝度計により測定される輝度には、実際に人が感じる明るさに対応させるために視感度を考慮した補正がなされているため、上記の長波長側の波長帯域の光を除去しても輝度計により測定される輝度が大きく変化することはない。即ち、680〜730nmの波長帯域の光を選択的に除去することにより、輝度を大きく変化させることなく、色再現域を拡大することが可能になるのである。以上の点は、本発明者らが、青色光、緑色光および赤色光の三色混色による白色光の具現化において色再現域を拡大するための手段を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、初めて得られた知見である。
なお、上記のように赤色光の半値幅を狭小化することは、暖色系の画像の色再現性の向上にも有効である。より詳しくは、暖色系の鮮明な画像を液晶表示装置の表示面に表示するためにも、赤色光の半値幅を狭小化することは好ましい。
【0008】
一態様では、上記バックライトユニットは、発光部から出射される光の光路上に選択反射部材を更に有する。選択反射部材は、青色光の発光中心波長と緑色光の発光中心波長との間の波長帯域(以下、「反射波長帯域1」とも記載する。)および緑色光の発光中心波長と赤色光の発光中心波長との間の波長帯域(以下、「反射波長帯域2」とも記載する。)の少なくとも一方の波長帯域に反射ピークを有する。なお反射ピークとは、反射スペクトルの少なくとも一部の波長帯域における反射極大であり、必ずしも反射スペクトルの全領域において最も反射が大きくなる波長(最大反射波長)に限られるものではない。この点は、後述する吸収極大についても、同様である。また、反射ピークは、透過スペクトルにおける吸収極小波長から定めることもできる。この逆に、吸収極大は、反射スペクトルにおける反射極小波長から定めることもできる。
上記のような反射ピークを有する選択反射部材を発光部から出射される光の光路上、即ち出射側に配置することにより、発光部から出射される光の中で、反射波長帯域1の波長帯域の光や反射波長帯域2の波長帯域の光を発光部側へ反射させ発光部へ入射させることができる。こうして入射した光が発光部に含まれる蛍光体に当たり蛍光体を励起させることにより新たな発光(蛍光)を得ることができる。また、上記反射波長帯域1、2の光を除去するにより、バックライトユニットから出射される各色光の出射光ピークを狭小化することができるため、蛍光体により発光された光(赤色光や緑色光)の出射光の半値幅を狭小化することができる。ただし、単に除去するのみでは、先に記載したように輝度の低下を招くのに対し、上記の通り新たな発光を得るための励起光として利用することにより、輝度の大きな低下を招くことなく、色再現域を更に拡大することが可能となる。なお、発光部から出射された光の一部を反射させ再び発光部に入射させ蛍光体の励起光として利用することに関しては、特開2008−287073号公報に記載がある。しかるに特開2008−287073号公報は、白色光源から出射させる光の利用効率向上を課題として開示するものであり(同公報段落0006参照)、上記の新たなバックライトユニットを備えた液晶表示装置の色再現域の拡大を課題とする本発明に対して何ら示唆を与えるものではない。
【0009】
出射光量選択低減部材と選択反射部材とは、一態様では別部材であり、他の一態様では同一部材である。
【0010】
一態様では、出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する。
【0011】
一態様では、出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光に対して吸収性を示す色素を含む。
【0012】
一態様では、出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に反射する選択反射能を有する。
【0013】
一態様では、出射光量選択低減部材は、屈折率の異なる層が複数積層された多層膜である。
【0014】
一態様では、出射光量選択低減部材は、コレステリック液晶相が固定された光反射層である。
【0015】
一態様では、上記選択反射能を有する出射光量選択低減部材を有するバックライトユニットには、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する選択吸収部材が発光部に含まれる。
【0016】
一態様では、出射光量選択低減部材は、波長変換部材と一体積層されている。ここで「一体積層」とは、出射光量選択低減部材と波長変換部材とが、接着、粘着または塗工形成によらず単に配置されている状態を除く意味で用いることとする。例えば、後述するように塗布法により波長変換層を形成する際に基材として用いるバリアフィルムに出射光量選択低減部材が含まれる態様や、2つの部材を貼り合わせる中間層により出射光量選択低減部材と波長変換部材とが密着されている状態、接着剤を使用するラミネート加工または接着剤を使用しないラミネート加工(熱圧着)により2つの部材が密着されている状態等が、「一体積層」に包含される。
【0017】
一態様では、蛍光体は、量子ドットを含む。
【0018】
一態様では、蛍光体は、セラミック蛍光体を含む。
【0019】
一態様では、光源は、単一ピークの光を発光する光源である。
【0020】
一態様では、光源は、青色光を発光する青色光源である。
【0021】
本発明の更なる態様は、上記バックライトユニットと、液晶セルと、を少なくとも含む液晶表示装置に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、青色光、緑色光および赤色光の三色混色により白色光を具現化する新たなバックライトユニットを備えた液晶表示装置において、輝度の大きな低下を招くことなく色再現域を拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)、(b)は、本発明の一態様にかかるバックライトユニットに含まれる発光部の一例の説明図である。
図2図2は、波長変換部材の製造装置の一例の概略構成図である。
図3図3は、図2に示す製造装置の部分拡大図である。
図4図4は、本発明の一態様にかかる液晶表示装置の一例を示す。
図5図5に、実施例1〜3、6〜8、11〜13、16〜18、21、比較例1〜6の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
図6図6に、実施例4、9、14、19の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
図7図7に、実施例5、10、15、20の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明および本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明および本明細書中、ピークの「半値幅」とは、ピーク高さ1/2でのピークの幅のことを言う。また、430〜480nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を青色光と呼び、520〜560nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を緑色光と呼び、600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を赤色光と呼ぶ。
なお、本発明および本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が記載されている基の場合の炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。ある基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、水酸基、アルコキシ基(例えば炭素数1〜6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基等を挙げることができる。
また、本発明および本明細書において、「重合性組成物」とは、重合性化合物を少なくとも一種含む組成物であり、光照射、加熱等の重合処理を施されることにより硬化する性質を有する。また、「重合性化合物」とは、1分子中に1つ以上の重合性基を含む化合物である。重合性基とは、重合反応に関与し得る基である。以上の詳細は後述する。
【0025】
[バックライトユニット]
本発明の一態様にかかるバックライトユニットは、発光部と出射光量選択低減部材とを少なくとも含む。発光部は、光源と励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換部材とを含み、かつ、発光中心波長が430〜480nmの波長帯域にある発光強度のピークを有する青色光と、発光中心波長が520〜560nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する緑色光と、発光中心波長が600〜680nmの波長帯域にあり半値幅が50nm超の発光強度のピークを有する赤色光と、を発光し、少なくとも緑色光および赤色光が蛍光体による発光である。出射光量選択低減部材は、発光部から出射される光の光路上に位置し、かつ 発光部から発光され出射光量選択低減部材に入射する光の中で、680〜730nmの波長帯域の光の出射光量を選択的に低減する出射光量選択低減能を有する。
以下、上記バックライトユニットについて、更に詳細に説明する。
【0026】
<発光部>
(発光部の発光特性)
上記バックライトユニットに含まれる発光部は、発光中心波長が430〜480nmの波長帯域にある発光強度のピークを有する青色光と、発光中心波長が520〜560nmの波長帯域にある緑色光と、発光中心波長が600〜680nmの波長帯域にある赤色光と、を発光する。このように青色光、緑色光および赤色光の三色光を混色することにより白色光を具現化することができる。また、少なくとも緑色光および赤色光が蛍光体による発光であって、それらの半値幅は50nm超である。先に記載したように、発光される光の半値幅が狭い(例えば50nm以下の)蛍光体も存在するが、本発明によれば、そのような蛍光体に依拠せずに、かつ輝度を大きく低下させることなく、色再現域の拡大が可能となる。色再現域拡大のための手段の詳細は、後述する。蛍光による発光により得られた各色光の半値幅は、例えば150nm以下、または100nm以下である。一方、青色光の半値幅は、50nm以下であってもよく、50nm超であってもよい。青色光は、一態様では光源から発光され、他の一態様では波長変換部材に含まれる蛍光体による発光である。前者の態様では、光源から出射され波長変換部材に入射した青色光は、一部は波長変換部材において蛍光体の励起光となり、一部が波長変換部材を通過して波長変換部材外に出射される。こうして出射される光が、発光部から出射される青色光となる。この場合、青色光の半値幅は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは40nm以下であり、更に好ましくは30nm以下であり、また例えば10nm以上である。一方、後者の態様では、例えば後述する紫外光を発光する光源から出射され波長変換部材に入射した紫外光が蛍光体を励起させることで、蛍光体から青色光が発光される。この場合、青色光の半値幅は、半値幅の狭い蛍光体に依拠しないという観点からは、好ましくは50nm超であり、また例えば150nm以下、または100nm以下である。
【0027】
(発光部の構成)
上記バックライトユニットに含まれる発光部の具体的態様の一例を、図面に基づき説明する。ただし、本発明は下記態様に限定されるものではない。
図1は、発光部1の説明図である。図1中、発光部1は、光源1Aと、面光源とするための導光板1Bを備える。図1(a)に示す例では、波長変換部材1Cは、導光板から出射される光の経路上に配置されている。一方、図1(b)に示す例では、波長変換部材1Cは、導光板と光源との間に配置されている。
そして図1(a)に示す例では、導光板1Bから出射される光が、波長変換部材1Cに入射する。図1(a)に示す例では、導光板1Bのエッジ部に配置された光源1Aから出射される光2は青色光であり、導光板1Bの液晶セル(図示せず)側の面から液晶セルに向けて出射される。導光板1Bから出射された光(青色光2)の経路上に配置された波長変換部材1Cには、青色光2により励起され緑色光3を発光する蛍光体と青色光2により励起され赤色光4を発光する蛍光体が少なくとも含まれる。このようにしてバックライトユニット1からは、蛍光体から発光された緑色光3および赤色光4、ならびに波長変換部材1Cを通過した青色光2が出射される。こうして赤色光、緑色光および青色光を発光させることで、白色光を具現化することができる。
図1(b)に示す例は、波長変換部材1Cと導光板1Bの配置が異なる点以外は、図1(a)に示す態様と同様である。図1(b)に示す例では、波長変換部材1Cから、励起された緑色光3および赤色光4、ならびに波長変換部材1Cを透過した青色光2が出射され導光板1Bに入射し、面光源が実現される。
なお上記では、光源から青色光が出射される態様を例に示したが、上記バックライトユニットの発光部に含まれる光源は、青色光を出射するものに限定されるものではない。詳細は後述する。
【0028】
(光源)
上記発光部に含まれる光源は、一態様では、単一ピークの光を発光する光源である。ここで単一ピークの光を発光するとは、発光スペクトルに、白色光源のように2つ以上のピークが出現するのではなく、発光極大波長を発光中心波長とする1つのピークのみが存在することを意味する。一態様では、そのような光源から出射される単色光を、波長変換部材の蛍光体から発光される他の色の光と混色することにより、白色光を具現化することができる。具体的な一態様では、光源として、430nm〜480nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色光を発光するもの、例えば、青色光を発光する青色発光ダイオード(青色LED)を用いることができる。青色光を発光する光源を用いる場合、波長変換部材に、少なくとも、励起光により励起され緑色光を発光する蛍光体と、赤色光を発光する蛍光体が含まれることが好ましい。これにより、光源から発光され波長変換部材を通過した青色光と、波長変換部材から発光される緑色光および赤色光により、白色光を具現化することができる。
または他の態様では、光源として、300nm〜430nmの波長帯域に発光中心波長を有する紫外光を発光するもの、例えば、紫外線発光ダイオードを用いることができる。この場合、波長変換部材には、励起光により励起され緑色光を発光する蛍光体、励起光により励起され赤色光を発光する蛍光体とともに、励起光により励起され青色光を発光する蛍光体が含まれることが好ましい。これにより、波長変換部材から発光される青色光、緑色光および赤色光により、白色光を具現化することができる。
また他の態様では、発光ダイオードに替えてレーザー光源を使用することもできる。
また、別の一態様では、発光スペクトルに2つ以上のピークが出現する光源が用いられる場合もある。そのような光源としては、例えば、上述した単一ピークの光を発光する光源に、付随的に蛍燐光体を加えてより長波域の発光帯を付与した光源が挙げられる。具体例としては、青色光を発光する発光素子に微量の黄色蛍光体を組合せることにより青色光と黄色光とを発光する光源(例えばLED)等が例示される。なお黄色光とは、570〜585nmの範囲の波長帯域に発光中心波長を有する光をいうものとする。
【0029】
(波長変換部材)
(i)蛍光体
波長変換部材には、少なくとも、励起光により励起され緑色光を発光する蛍光体および励起光により励起され赤色光を発光する蛍光体が含まれる。また、先に記載したように、励起光により励起され青色光を発光する蛍光体が含まれることもある。これら蛍光体は、励起光とは異なる波長の蛍光を発光する(波長変換する)ことができるため、波長変換部材は、入射光とは異なる波長の光を出射することができる。
【0030】
蛍光体としては、一態様では、量子ドット(Quantum Dot、QD、量子点とも呼ばれる。)を挙げることができる。量子ドットは、例えば、ナノオーダーのサイズを有する半導体結晶(半導体ナノ結晶)粒子、または半導体ナノ結晶表面が有機リガンドで修飾された粒子、もしくは半導体ナノ結晶表面がポリマー層で被覆された粒子である。量子ドットの発光波長は、通常、粒子の組成、サイズ、ならびに組成およびサイズにより調整することができる。
【0031】
量子ドットの一例としては、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AlN、AlP、AlSb、TiN、TiP、TiAs、TiSb等の半導体結晶のナノ粒子、または一種の半導体結晶をコアとし、他の一種の半導体結晶をシェルとするコアシェル構造を有するナノ粒子等を挙げることができる。コアとなる粒子に、より広いバンドギャップを持つシェルを被覆することで、量子効率を大きく向上することができ、高い発光効率を有する量子ドットを得ることができる。コアシェル構造を有する量子ドットの一態様としては、シェルが多層構造である、いわゆるコア・マルチシェル構造を有する量子ドットを挙げることもできる。バンドギャップの広いコアに、バンドギャップの狭いシェルを1層または2層以上積層し、更にこのシェルの上に、広いバンドギャップを有するシェルを積層することで、より一層発光効率の高い量子ドットを得ることができる。
【0032】
量子ドットとしては、半導体結晶粒子の表面が有機リガンドにより被覆されているもの、および保護層により被覆されているものを挙げることもできる。有機リガンドにより修飾することにより、または保護層により被覆することによって、量子ドットの化学的安定性を向上することができる。有機リガンドとしては、例えば、ピリジン、メルカプトアルコール、チオール、ホスフィン、およびホスフィン酸化物などを挙げることができる。一方、保護層は、エポキシ、シリコン、アクリル系樹脂、ガラス、カーボネート系樹脂、またはそれらの混合物などを使用してもよい。
【0033】
以上説明した量子ドットは、公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手可能である。詳細については、例えばUS2010/123155A1、特表2012−509604号公報、米国特許第8425803号、特開2013−136754号公報、WO2005/022120、特表2006−521278号公報、特表2010−535262号公報、特表2010−540709号公報等を参照できる。
【0034】
ところで量子ドットとしては、カドミウムを含むものが知られているが、近年、環境負荷低減の観点から、量子ドットのカドミウムフリー化が進められている。カドミウムを含む量子ドット(例えばCdSe、CdTe、CdS等)は、通常半値幅が50nm以下と狭いのに対し、カドミウムフリーの量子ドットの発光は、通常半値幅が50nm超と広い。本発明によれば、このような半値幅の広い量子ドットによる発光を利用しつつ、輝度を大きく低下することなく、色再現域を拡大することができる。したがって、好ましい一態様では、波長変換部材に含まれる蛍光体は、カドミウムフリー(カドミウム非含有)の量子ドットである。
【0035】
また他の一態様では、波長変換部材に含まれる蛍光体は、セラミック蛍光体である。セラミック蛍光体とは、量子ドットではない無機蛍光体であって、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)等の無機結晶、金属酸化物または金属硫化物に金属元素を賦活剤として添加したセラミック蛍光体が挙げられる。具体例としては、以下のセラミック蛍光体を挙げることができる。以下において、「:」の後にカチオンとして表記されている金属種が、賦活剤として添加された金属元素である。セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce3+)系蛍光体(YAG系蛍光体)、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu2+、SrGa:Eu2+、α−SiAlON:Eu2+、CaScSi12:Ce3+、SrGa:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)S:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu2+、CaAlSiN:Eu2+等。また、例えばYAG系蛍光体は、イットリウム(Y)の一部または全体が、Lu、Sc、La、GdおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素で置換されていてもよく、またアルミニウム(Al)の一部または全体が、GaおよびInの少なくとも一方または両方で置換されていてもよい。更に、YAG系蛍光体は、組成を変化させることにより、蛍光体の発光波長を調整することができる。例えば、YAG系蛍光体のYの一部または全体をGdで置換することにより、発光波長を長波長側にシフトすることができる。また、Gdの置換量を増加することにより、発光波長が長波長側にシフトする。また例えば、YAG系蛍光体のAlの一部をGaで置換することにより、発光波長を短波長側にシフトすることができる。すなわち、この場合には、青みの強い黄色(緑色)の光を発光する蛍光体とすることができる。他のセラミック蛍光体についても、組成調整により発光波長を調整することができる。
【0036】
(ii)波長変換部材の作製方法
以上記載した蛍光体は、波長変換部材において、通常、マトリックス中に含まれる。マトリックスは、通常、重合性組成物を光照射等により重合させた重合体(有機マトリックス)である。波長変換部材の形状は特に限定されるものではない。例えば、波長変換部材は、蛍光体を含む層(波長変換層)を少なくとも有し、後述するバリアフィルム等を任意に含むシート状ないしフィルム状の部材である。波長変換層は、好ましくは塗布法により作製することができる。具体的には、蛍光体を含む重合性組成物(硬化性組成物)を適当な基材上に塗布し、次いで光照射等により硬化処理を施すことにより、波長変換層を得ることができる。
【0037】
蛍光体は、波長変換層を形成するための重合性組成物(塗布液)に粒子の状態で添加してもよく、溶媒に分散した分散液の状態で添加してもよい。分散液の状態で添加することが、蛍光体の粒子の凝集を抑制する観点から、好ましい。ここで使用される溶媒は、特に限定されるものではない。蛍光体は、上記塗布液の全量100質量部に対して、例えば0.01〜10質量部程度添加することができる。
【0038】
重合性組成物の調製に用いる重合性化合物は特に限定されるものではない。重合性化合物は、一種用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。重合性組成物全量に占める全重合性化合物の含有量は、10〜99.99質量%程度とすることが好ましい。好ましい重合性化合物の一例としては、硬化後の硬化被膜の透明性、密着性等の観点からは、単官能または多官能(メタ)アクリレートモノマー、そのポリマー、プレポリマー等の単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。なお本発明および本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、アクリレートとメタクリレートとの少なくとも一方、または、両方の意味で用いるものとする。「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0039】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリル酸およびメタクリル酸、それらの誘導体、より詳しくは、(メタ)アクリル酸の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を分子内に1個有するモノマーを挙げることができる。それらの具体例については、WO2012/077807A1段落0022を参照できる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を1分子内に1個有するモノマーと共に、(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを併用することもできる。その詳細については、WO2012/077807A1段落0024を参照できる。また、多官能(メタ)アクリレート化合物として、特開2013−043382号公報段落0023〜0036に記載のものを用いることもできる。更に、特許第5129458号明細書段落0014〜0017に記載の一般式(4)〜(6)で表されるアルキル鎖含有(メタ)アクリレートモノマーを使用することも可能である。
【0041】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの使用量は、重合性組成物に含まれる重合性化合物の全量100質量部に対して、塗膜強度の観点からは、5質量部以上とすることが好ましく、組成物のゲル化抑制の観点からは、95質量部以下とすることが好ましい。また、同様の観点から、単官能(メタ)アクリレートモノマーの使用量は、重合性組成物に含まれる重合性化合物の全量100質量部に対して、5質量部以上、95質量部以下とすることが好ましい。
【0042】
好ましい重合性化合物としては、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合可能な環状エーテル基等の環状基を有する化合物も挙げることができる。そのような化合物としてより好ましくは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を挙げることができる。エポキシ化合物については、特開2011−159924号公報段落0029〜0033を参照できる。
【0043】
上記重合性組成物は、重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を含むことができる。重合開始剤については、例えば、特開2013−043382号公報段落0037、特開2011−159924号公報段落0040〜0042を参照できる。重合開始剤は、重合性組成物に含まれる重合性化合物の全量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。
【0044】
波長変換層は、以上記載した成分、および任意に添加可能な公知の添加剤を含む層であれば、形成方法は特に限定されるものではない。以上説明した成分、および必要に応じて添加される一種以上の公知の添加剤を、同時または順次混合して調製した組成物を、適当な基材上に塗布した後に光照射、加熱等の重合処理を施し重合硬化させることにより、マトリックス中に蛍光体を含む波長変換層を形成することができる。ここで公知の添加剤の一例として、例えば、隣接する層との密着性を向上可能なシランカップリング剤を挙げることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを何ら制限なく使用することができる。密着性の観点から好ましいシランカップリング剤としては、特開2013−43382号公報に記載の一般式(1)で表されるシランカップリング剤を挙げることができる。詳細については、特開2013−43382号公報段落0011〜0016の記載を参照できる。シランカップリング剤等の添加剤の使用量は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。また、組成物の粘度等のために、必要に応じて溶媒を添加してもよい。この場合に使用される溶媒の種類および添加量は、特に限定されるものではない。例えば溶媒として、有機溶媒を一種または二種以上混合して用いることができる。
【0045】
上記重合性組成物を、適当な基材上に塗布し、必要に応じて乾燥させ溶媒を除去するとともに、その後、光照射等により重合硬化させて、波長変換層を得ることができる。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。また、硬化条件は、使用する重合性化合物の種類や重合性組成物の組成に応じて、適宜設定することができる。
【0046】
上記重合性組成物の重合処理は、どのような方法により行ってもよいが、一態様として、重合性組成物を2枚の基材間に挟持した状態で行うことができる。かかる重合処理を含む波長変換部材の製造工程の一態様を、図面を参照し以下に説明する。ただし、本発明は、下記態様に限定されるものではない。
【0047】
図2は、波長変換部材の製造装置100の一例の概略構成図であり、図3は、図2に示す製造装置の部分拡大図である。図2、3に示す製造装置100を用いる波長変換部材の製造工程は、
連続搬送される第一の基材(以下、「第一のフィルム」とも記載する。)の表面に、蛍光体を含有する重合性組成物を塗布し塗膜を形成する工程と、
塗膜の上に、連続搬送される第二の基材(以下、「第二のフィルム」とも記載する。)をラミネートし(重ねあわせ)、第一のフィルムと第二のフィルムとで塗膜を挟持する工程と、
第一のフィルムと第二のフィルムとで塗膜を挟持した状態で、第一のフィルム、および第二のフィルムの何れかをバックアップローラに巻きかけて、連続搬送しながら光照射し、塗膜を重合硬化させて波長変換層(硬化層)を形成する工程と、
を少なくとも含む。第一の基材、第二の基材のいずれか一方として酸素や水分に対するバリア性を有するバリアフィルムを用いることにより、片面がバリアフィルムにより保護された波長変換部材を得ることができる。また、第一の基材および第二の基材として、それぞれバリアフィルムを用いることにより、波長変換層の両面がバリアフィルムにより保護された波長変換部材を得ることができる。
【0048】
より詳しくは、まず、図示しない送出機から第一のフィルム10が塗布部20へと連続搬送される。送出機から、例えば、第一のフィルム10が1〜50m/分の搬送速度で送り出される。但し、この搬送速度に限定されない。送出される際、例えば、第一のフィルム10には、20〜150N/mの張力、好ましくは30〜100N/mの張力が加えられる。
【0049】
塗布部20では、連続搬送される第一のフィルム10の表面に蛍光体を含有する重合性組成物(以下、「塗布液」とも記載する。)が塗布され、塗膜22(図3参照)が形成される。塗布部20では、例えば、ダイコーター24と、ダイコーター24に対向配置されたバックアップローラ26とが設置されている。第一のフィルム10の塗膜22の形成される表面と反対の表面をバックアップローラ26に巻きかけて、連続搬送される第一のフィルム10の表面にダイコーター24の吐出口から塗布液が塗布され、塗膜22が形成される。ここで塗膜22とは、第一のフィルム10上に塗布された重合処理前の塗布液をいう。
【0050】
本実施の形態では、塗布装置としてエクストルージョンコーティング法を適用したダイコーター24を示したが、これに限定されない。例えば、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法等、種々の方法を適用した塗布装置を用いることができる。
【0051】
塗布部20を通過し、その上に塗膜22が形成された第一のフィルム10は、ラミネート部30に連続搬送される。ラミネート部30では、塗膜22の上に、連続搬送される第二のフィルム50がラミネートされ、第一のフィルム10と第二のフィルム50とで塗膜22が挟持される。
【0052】
ラミネート部30には、ラミネートローラ32と、ラミネートローラ32を囲う加熱チャンバー34とが設置されている。加熱チャンバー34には第一のフィルム10を通過させるための開口部36、および第二のフィルム50を通過させるための開口部38が設けられている。
【0053】
ラミネートローラ32に対向する位置には、バックアップローラ62が配置されている。塗膜22の形成された第一のフィルム10は、塗膜22の形成面と反対の表面がバックアップローラ62に巻きかけられ、ラミネート位置Pへと連続搬送される。ラミネート位置Pは第二のフィルム50と塗膜22との接触が開始する位置を意味する。第一のフィルム10はラミネート位置Pに到達する前にバックアップローラ62に巻きかけられることが好ましい。仮に第一のフィルム10にシワが発生した場合でも、バックアップローラ62によりシワがラミネート位置Pに達するまでに矯正され、除去できるからである。したがって、第一のフィルム10がバックアップローラ62に巻きかけられた位置(接触位置)と、ラミネート位置Pまでの距離L1は長い方が好ましく、例えば、30mm以上が好ましく、その上限値は、通常、バックアップローラ62の直径とパスラインとにより決定される。
【0054】
本実施の形態では重合処理部60で使用されるバックアップローラ62とラミネートローラ32とにより第二のフィルム50のラミネートが行われる。即ち、重合処理部60で使用されるバックアップローラ62が、ラミネート部30で使用するローラとして兼用される。ただし、上記形態に限定されるものではなく、ラミネート部30に、バックアップローラ62と別に、ラミネート用のローラを設置し、バックアップローラ62を兼用しないようにすることもできる。
【0055】
重合処理部60で使用されるバックアップローラ62をラミネート部30で使用することで、ローラの数を減らすことができる。また、バックアップローラ62は、第一のフィルム10に対するヒートローラとしても使用できる。
【0056】
図示しない送出機から送出された第二のフィルム50は、ラミネートローラ32に巻きかけられ、ラミネートローラ32とバックアップローラ62との間に連続搬送される。第二のフィルム50は、ラミネート位置Pで、第一のフィルム10に形成された塗膜22の上にラミネートされる。これにより、第一のフィルム10と第二のフィルム50とにより塗膜22が挟持される。ラミネートとは、第二のフィルム50を塗膜22の上に重ねあわせ、積層することをいう。
【0057】
ラミネートローラ32とバックアップローラ62との距離L2は、第一のフィルム10と、塗膜22を重合硬化させた波長変換層(硬化層)28と、第二のフィルム50と、の合計厚みの値以上であることが好ましい。また、L2は第一のフィルム10と塗膜22と第二のフィルム50との合計厚みに5mmを加えた長さ以下であることが好ましい。距離L2を合計厚みに5mmを加えた長さ以下にすることより、第二のフィルム50と塗膜22との間に泡が侵入することを防止することができる。ここでラミネートローラ32とバックアップローラ62との距離L2とは、ラミネートローラ32の外周面とバックアップローラ62の外周面との最短距離をいう。
【0058】
ラミネートローラ32とバックアップローラ62の回転精度は、ラジアル振れで0.05mm以下、好ましくは0.01mm以下である。ラジアル振れが小さいほど、塗膜22の厚み分布を小さくすることができる。
【0059】
また、第一のフィルム10と第二のフィルム50とで塗膜22を挟持した後の熱変形を抑制するため、重合処理部60のバックアップローラ62の温度と第一のフィルム10の温度との差、およびバックアップローラ62の温度と第二のフィルム50の温度との差は30℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下、最も好ましくは同じである。
【0060】
バックアップローラ62の温度との差を小さくするため、加熱チャンバー34が設けられている場合には、第一のフィルム10、および第二のフィルム50を加熱チャンバー34内で加熱することが好ましい。例えば、加熱チャンバー34には、図示しない熱風発生装置により熱風が供給され、第一のフィルム10、および第二のフィルム50を加熱することができる。
【0061】
第一のフィルム10が、温度調整されたバックアップローラ62に巻きかけられることにより、バックアップローラ62によって第一のフィルム10を加熱してもよい。
【0062】
一方、第二のフィルム50については、ラミネートローラ32をヒートローラとすることにより、第二のフィルム50をラミネートローラ32で加熱することができる。
ただし、加熱チャンバー34、およびヒートローラは必須ではなく、必要に応じで設けることができる。
【0063】
次に、第一のフィルム10と第二のフィルム50とにより塗膜22が挟持された状態で、重合処理部60に連続搬送される。図面に示す態様では、重合処理部60における重合処理は光照射により行われるが、塗布液に含まれる重合性化合物が加熱により重合するものである場合には、温風の吹き付け等の加熱により、重合処理を行うことができる。
【0064】
バックアップローラ62と、バックアップローラ62に対向する位置には、光照射装置64が設けられている。バックアップローラ62と光照射装置64と間を、塗膜22を挟持した第一のフィルム10と第二のフィルム50とが連続搬送される。光照射装置により照射される光は、塗布液に含まれる光重合性化合物の種類に応じて決定すればよく、一例としては、紫外線が挙げられる。紫外線を発生する光源として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。光照射量は塗膜の重合硬化を進行させ得る範囲に設定すればよく、例えば、一例として100〜10000mJ/cmの照射量の紫外線を塗膜22に向けて照射することができる。
【0065】
重合処理部60では、第一のフィルム10と第二のフィルム50とにより塗膜22を挟持した状態で、第一のフィルム10をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送しながら光照射装置64から光照射を行い、塗膜22を硬化させて波長変換層(硬化層)28を形成することができる。
【0066】
本実施の形態では、第一のフィルム10側をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送したが、第二のフィルム50をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送させることもできる。
【0067】
バックアップローラ62に巻きかけるとは、第一のフィルム10および第二のフィルム50の何れかが、あるラップ角でバックアップローラ62の表面に接触している状態をいう。したがって、連続搬送される間、第一のフィルム10および第二のフィルム50はバックアップローラ62の回転と同期して移動する。バックアップローラ62へ巻きかけは、少なくとも紫外線が照射されている間であればよい。
【0068】
バックアップローラ62は、円柱状の形状の本体と、本体の両端部に配置された回転軸とを備えている。バックアップローラ62の本体は、例えば、φ200〜1000mmの直径を有している。バックアップローラ62の直径φについて制限はない。カール変形と、設備コストと、回転精度とを考慮すると直径φ300〜500mmであることが好ましい。バックアップローラ62の本体に温度調節器を取り付けることにより、バックアップローラ62の温度を調整することができる。
【0069】
バックアップローラ62の温度は、光照射時の発熱と、塗膜22の硬化効率と、第一のフィルム10と第二のフィルム50のバックアップローラ62上でのシワ変形の発生と、を考慮して、決定することができる。バックアップローラ62は、例えば、10〜95℃の温度範囲に設定することが好ましく、15〜85℃であることがより好ましい。ここでローラに関する温度とは、ローラの表面温度をいうものとする。
【0070】
ラミネート位置Pと光照射装置64との距離L3は、例えば30mm以上とすることができる。
【0071】
光照射により塗膜22は硬化層28となり、第一のフィルム10と硬化層28と第二のフィルム50とを含む波長変換部材70が製造される。波長変換部材70は、剥離ローラ80によりバックアップローラ62から剥離される。波長変換部材70は、図示しない巻取機に連続搬送され、次いで巻取機により波長変換部材70はロール状に巻き取られる。
【0072】
以上、波長変換部材の製造工程の一態様について説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではない。例えば、蛍光体を含む重合性組成物を基材上に塗布し、その上に更なる基材をラミネートすることなく、必要に応じて行われる乾燥処理の後、重合処理を施すことにより波長変換層(硬化層)を作製してもよい。作製された波長変換層には、一層以上の他の層を、公知の方法により積層することもできる。また、詳細を後述する出射光量選択低減部材や選択反射部材を基材とすることも可能である。
【0073】
波長変換層の総厚は、好ましくは1〜500μmの範囲であり、より好ましくは100〜400μmの範囲である。また、波長変換層は、二層以上の異なる発光特性を示す蛍光体を異なる層に含む積層構造であってもよく、二種以上の異なる発光特性を示す蛍光体を同一の層に含んでいてもよい。波長変換層が二層以上の複数の層の積層体である場合、一層の膜厚は、好ましくは1〜300μmの範囲であり、より好ましくは10〜250μmの範囲であり、さらに好ましくは30〜150μmの範囲である。
【0074】
(iii)波長変換部材に含まれ得る層、基材
上記波長変換部材は、波長変換層のみ、または波長変換層に加えて後述する基材を有する構成であってもよい。または、波長変換層の少なくとも一方の主表面に、無機層および有機層からなる群から選ばれる少なくとも一層を有することもできる。そのような無機層および有機層としては、後述のバリアフィルムを構成する無機層および有機層を挙げることができる。
【0075】
−基材−
波長変換部材は、強度向上、製膜の容易性等のため、基材を有していてもよい。基材は、波長変換層に直接接していてもよい。基材は、波長変換部材中に1つまたは2つ以上含まれていてもよく、波長変換部材は、基材、波長変換層、基材がこの順で積層された構造を有していてもよい。波長変換部材が2つ以上の基材を含む場合、かかる基材は同一であっても異なっていてもよい。基材は、可視光に対して透明である透明支持体であることが好ましい。ここで可視光に対して透明とは、可視光領域における光線透過率が、80%以上、好ましくは85%以上であることをいう。透明の尺度として用いられる光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
【0076】
基材の厚さは、ガスバリア性、耐衝撃性等の観点から、10〜500μmの範囲内、中でも20〜400μmの範囲内、特に30〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0077】
また、基材は、上述の第一のフィルムおよび第二のフィルムのいずれか、または双方として用いることもできる。
【0078】
基材は、バリアフィルムであることもできる。バリアフィルムは酸素分子を遮断するガスバリア機能を有するフィルムである。バリアフィルムが、水蒸気を遮断する機能を有していることも好ましい。
【0079】
バリアフィルムは、通常、少なくとも無機層を含んでいればよく、支持体フィルムおよび無機層を含むフィルムであってもよい。支持体フィルムについては、例えば、特開2007−290369号公報段落0046〜0052、特開2005−096108号公報段落0040〜0055を参照できる。バリアフィルムは、支持体フィルム上に少なくとも一層の無機層と少なくとも一層の有機層を含むバリア積層体を含むものであってもよい。一例として、支持体フィルム/有機層/無機層の積層構成、支持体フィルム/無機層/有機層の積層構成、支持体フィルム/有機層/無機層/有機層の積層構成(ここで二層の有機層は、厚さおよび組成の一方または両方が同一であっても異なっていてもよい)、等を挙げることができる。このように複数の層を積層することにより、より一層バリア性を高めることができる。他方、積層する層の数が増えるほど、波長変換部材の光透過率は低下する傾向があるため、良好な光透過率を維持し得る範囲で、積層数を増やすことが望ましい。具体的には、バリアフィルムは、酸素透過度が1cm/(m・day・atm)以下であることが好ましい。ここで、上記酸素透過度は、測定温度23℃、相対湿度90%の条件下で、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値である。また、バリアフィルムは、可視光領域における全光線透過率が80%以上であることが好ましい。可視光領域とは、380〜780nmの波長領域をいうものとし、全光線透過率とは、可視光領域にわたる光透過率の平均値を示す。
バリアフィルムの酸素透過度は、より好ましくは、0.1cm/(m・day・atm)以下、より好ましくは、0.01cm/(m・day・atm)以下である。可視光領域における全光線透過率は、より好ましくは90%以上である。酸素透過度は低いほど好ましく、可視光領域における全光線透過率は高いほど好ましい。
【0080】
−無機層−
「無機層」とは、無機材料を主成分とする層であり、好ましくは無機材料のみから形成される層である。これに対し、有機層とは、有機材料を主成分とする層であって、好ましくは有機材料が50質量%以上、更には80質量%以上、特に90質量%以上を占める層を言うものとする。
無機層を構成する無機材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属、または無機酸化物、窒化物、酸化窒化物等の各種無機化合物を用いることができる。無機材料を構成する元素としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウムおよびセリウムが好ましく、これらを一種または二種以上含んでいてもよい。無機化合物の具体例としては、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンを挙げることができる。また、無機層として、金属膜、例えば、アルミニウム膜、銀膜、錫膜、クロム膜、ニッケル膜、チタン膜を設けてもよい。
【0081】
上記の材料の中でも、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または酸化窒化ケイ素が特に好ましい。これらの材料からなる無機層は、有機層との密着性が良好であることから、バリア性をより一層高くすることができるからである。
無機層の形成方法としては、特に限定されず、例えば製膜材料を蒸発ないし飛散させ被蒸着面に堆積させることができる各種製膜方法を用いることができる。
【0082】
無機層の形成方法の例としては、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属等の無機材料を、加熱して蒸着させる真空蒸着法;無機材料を原料として用い、酸素ガスを導入することにより酸化させて、蒸着させる酸化反応蒸着法;無機材料をターゲット原料として用い、アルゴンガス、酸素ガスを導入して、スパッタリングすることにより、蒸着させるスパッタリング法;無機材料にプラズマガンで発生させたプラズマビームにより加熱させて、蒸着させるイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法)、酸化ケイ素の蒸着膜を製膜させる場合は、有機ケイ素化合物を原料とするプラズマ化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)等が挙げられる。蒸着は、支持体フィルム、波長変換層、有機層などを基板としてその表面に行えばよい。
【0083】
無機層の厚さは、例えば1nm〜500nmであり、5nm〜300nmであることが好ましく、10nm〜150nmの範囲であることがより好ましい。無機層の厚さが、上述した範囲内であることにより、良好なバリア性を実現しつつ、無機層における反射を抑制することができ、光透過率がより高い波長変換部材を提供することができるからである。
【0084】
波長変換部材には、一態様では、波長変換層の少なくとも一方の主表面が無機層と直接接していることが好ましい。波長変換層の両主表面に無機層が直接接していることも好ましい。また一態様では、波長変換層の少なくとも一方の主表面が有機層と直接接していることが好ましい。波長変換層の両主表面に有機層が直接接していることも好ましい。ここで「主表面」とは、波長変換部材使用時に視認側またはバックライト側に配置される波長変換層の表面(おもて面、裏面)をいう。また、無機層と有機層との間、二層の無機層の間、または二層の有機層の間を、公知の接着層により貼り合わせてもよい。光透過率向上の観点からは、接着層は少ないほど好ましく、接着層が存在しないことがより好ましい。一態様では、無機層と有機層とが直接接していることが好ましい。
【0085】
−有機層−
有機層としては、特開2007−290369号公報段落0020〜0042、特開2005−096108号公報段落0074〜0105を参照できる。なお有機層は、一態様では、カルドポリマーを含むことが好ましい。これにより、有機層と隣接する層との密着性、特に、無機層とも密着性が良好になり、より一層優れたガスバリア性を実現することができるからである。カルドポリマーの詳細については、特開2005−096108号公報段落0085〜0095を参照できる。有機層の厚さは、0.05μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.5〜10μmの範囲内であることが好ましい。有機層がウェットコーティング法により形成される場合には、有機層の厚さは、0.5〜10μmの範囲内、中でも1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。また、ドライコーティング法により形成される場合には、0.05μm〜5μmの範囲内、中でも0.05μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。ウェットコーティング法またはドライコーティング法により形成される有機層の厚さが上述した範囲内であることにより、無機層との密着性をより良好なものとすることができるからである。
【0086】
なお本発明および本明細書において、ポリマーとは、同一または異なる2以上の化合物が重合反応により重合した重合体をいい、オリゴマーも包含する意味で用いるものとし、その分子量は特に限定されるものではない。また、ポリマーは、重合性基を有するポリマーであって、加熱、光照射等の重合性基の種類に応じた重合処理を施されることにより更に重合することができるものであってもよい。
【0087】
また、有機層は、(メタ)アクリレートポリマーを含む重合性組成物を硬化させてなる硬化層であることもできる。(メタ)アクリレートポリマーとは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1つ以上含むポリマーである。有機層形成に用いる(メタ)アクリレートポリマーの一例としては、ウレタン結合を1分子中に1つ以上含む(メタ)アクリレートポリマーを挙げることもできる。以下、ウレタン結合を1分子中に1つ以上含む(メタ)アクリレートポリマーを、ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーと記載する。バリア層が二層以上の有機層を含む場合、ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーを含む重合性組成物を硬化させてなる硬化層と、他の有機層とが含まれていてもよい。一態様では、波長変換層の一方または両方の主表面と直接接する有機層は、ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーを含む重合性組成物を硬化させてなる硬化層であることが好ましい。
【0088】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーにおいて、一態様では、ウレタン結合を有する構造単位が、ポリマーの側鎖に導入されていることが好ましい。以下において、ウレタン結合を有する構造単位が導入される主鎖を、アクリル主鎖と記載する。
【0089】
また、ウレタン結合を有する側鎖の末端の少なくとも1つに、(メタ)アクリロイル基が含まれることも好ましい。ウレタン結合を有する側鎖のすべてに(メタ)アクリロイル基が含まれることがより好ましい。ここで末端に含まれる(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが更に好ましい。
【0090】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーは、一般にはグラフト共重合により得ることができるが、特に限定されるものではない。アクリル主鎖とウレタン結合を有する構造単位とは、直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基の一例としては、エチレンオキシド基、ポリエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、およびポリプロピレンオキシド基などが挙げられる。ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーは、ウレタン結合を有する構造単位が異なる連結基(直接結合を含む)を介して結合している側鎖を複数種含んでいてもよい。
【0091】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーは、ウレタン結合を有する構造単位以外の他の側鎖を有していてもよい。他の側鎖の一例としては、直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。直鎖または分岐のアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基、エチル基、またはメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。また、他の側鎖は、異なる構造のものが含まれていてもよい。この点は、ウレタン結合を有する構造単位についても同様である。
【0092】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーの1分子に含まれるウレタン結合および(メタ)アクリロイル基の数は、それぞれ1つ以上であり、2つ以上であることが好ましいが、特に限定されるものではない。ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、12,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましい。また、ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることがさらに好ましい。ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーのアクリル当量は、500以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、7,00以上であることが更に好ましく、また、アクリル当量が5,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましく、2,000以下であることがさらに好ましい。アクリル当量とは、一分子中の(メタ)アクリロイル基の数で重量平均分子量を除して求められる値である。
【0093】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーとしては、公知の方法で合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば大成ファインケミカル株式会社製のUV(Ultra Violet)硬化型アクリルウレタンポリマー(8BRシリーズ)を挙げることができる。ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーは、有機層を形成するための重合性組成物の固形分全量100質量%に対して5〜90質量%含まれることが好ましく、10〜80質量%含まれることがより好ましい。
【0094】
有機層を形成するために用いる硬化性化合物において、ウレタン結合含有(メタ)アクリレートポリマーの一種以上と、他の重合性化合物との一種以上とを併用してもよい。他の重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、アクリレート化合物がより好ましい。
(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。(メタ)アクリレート化合物として具体的には、例えば特開2013−43382号公報の段落0024〜0036または特開2013−43384号公報の段落0036〜0048に記載の化合物を挙げることができる。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0095】
有機層を形成するために用いる重合性組成物は、一種以上の重合性化合物とともに、公知の添加剤を含むこともできる。そのような添加剤の一例としては、有機金属カップリング剤を挙げることができる。詳細については、前述の記載を参照できる。有機金属カップリング剤は、有機層を形成するために用いる重合性組成物の固形分全量を100質量%とすると、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0096】
また、添加剤としては、重合開始剤を挙げることができる。重合開始剤を用いる場合、重合性組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。光重合開始剤の例としてはBASF社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0097】
有機層を形成するための重合性組成物の硬化は、重合性組成物に含まれる成分(重合性化合物や重合開始剤)の種類に応じた処理(光照射、加熱等)により行えばよい。硬化条件は特に限定されるものではなく、重合性組成物に含まれる成分の種類や有機層の厚さ等に応じて設定すればよい。
【0098】
無機層、有機層のその他詳細については、特開2007−290369号公報、特開2005−096108号公報、更にUS2012/0113672A1の記載を参照できる。
【0099】
有機層と無機層との間、二層の有機層の間、または二層の無機層の間を、公知の接着層により貼り合わせてもよい。光透過率向上の観点からは、接着層は少ないほど好ましく、接着層が存在しないことがより好ましい。
【0100】
(発光部に含まれ得る構成部材)
発光部には、以上記載した光源および波長変換部材が少なくとも含まれる。更に、通常のバックライトユニットの発光部に含まれる各種構成部材が任意に含まれ得る。そのような構成部材の一例としては、導光板、反射部材(反射板)、拡散部材(拡散シート)等が挙げられる。なお本発明のバックライトユニットの構成は、導光板や反射部材(反射板)などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であってもよい。図1には、一態様として、エッジライト方式のバックライトユニットの例を示した。導光板としては、公知のものを何ら制限なく使用することができる。また、導光板の出射面側と反対側(後部)に、反射部材を備えることもできる。このような反射部材としては特に制限は無く、公知のものを用いることができ、特許3416302号、特許3363565号、特許4091978号、特許3448626号などに記載されており、これらの公報の内容は本発明に組み込まれる。
【0101】
<出射光量選択低減部材>
次に、以上説明した発光部とともにバックライトユニットに含まれる出射光量選択低減部材の詳細を記載する。
出射光量低減部材は、発光部から出射される光の光路上に位置する。そして発光部から発光され出射光量選択低減部材に入射する光の中で、680〜730nmの波長帯域の光の出射光量を選択的に低減する出射光量選択低減能を有する。上記出射光量とは、より詳しくは、出射光量選択低減部材から出射側へ出射される光(出射光)の光量である。ここで、「出射側」とは、本発明のバックライトユニットが液晶表示装置に組み込まれた際に液晶パネル側となる方向をいう。一方、出射光量選択低減部材には、出射側とは逆の方向(入射側)から、発光部から発光された光が入射する。
上記の出射光量選択低減能を有する部材により、先に記載したようにバックライトユニットから出射される光の中で、人の目の感度がきわめて低い波長帯域の光を選択的に除去することによって、輝度の大きな低下をもたらすことなく、色再現域を拡大することが可能となる。ここで、出射光量選択低減部材により選択的に出射光量を低減する波長帯域を680nm以上とする理由は、680nm以上の長波長帯域における視感度がきわめて低いからである。一方、出射光量選択低減部材により選択的に出射光量を低減する波長帯域を730nm以下とする理由は、730nm超の波長帯域には視感度は無視できる程度に低いからである。視感度を考慮すると、視感度がわずかながら存在する780nm以下の波長帯域の光の出射光量を選択的に低減することが好ましい。780nm超の波長帯域には視感度は存在しないため、780nm超の波長帯域の出射光量は低減してもよく、低減しなくともよい。
【0102】
ここで「出射光量を選択的に低減」するとは、発光部から出射光量選択低減部材に入射する光の光量(入射光量)に対して出射される光の光量(出射光量)の減少率(減少率=[(入射光量−出射光量)/入射光量)]×100)が、680〜730nmの波長帯域において、その他の波長帯域よりも高いことを意味する。その他の波長帯域の減少率は低いほど好ましく、例えば20%以下であり、好ましくは10%以下である。吸収損失等も考慮した場合、その他の波長帯域の減少率は、例えば1%以上程度である。これに対し、680〜730nmの波長帯域の減少率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。また、680〜730nmの波長帯域の減少率は、例えば90%以下であるが高いほど好ましいため、上限は特に限定されるものではない。また、出射光量低減部材により、この部材から出射される光の中で、波長730nmの出射光強度の、赤色光の発光中心波長における強度に対する割合(以下、「強度比」と記載する)は、10%以下となることが好ましく、5%以下となることがより好ましく、3%以下となることが更に好ましい。上記強度比は、例えば1%以上であるが低いほど好ましいため下限は特に限定されるものではない。
【0103】
出射光量選択低減部材は、一態様では、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する。また、他の一態様では、出射光量選択低減部材は、680〜730nmmの波長帯域の光を選択的に反射する選択反射能を有する。以下、前者の態様を吸収型出射光量選択低減部材、後者の態様を反射型出射光量選択低減部材と記載し、各態様について順次説明する。
【0104】
(吸収型出射光量選択低減部材)
吸収型出射光量選択低減部材は、例えば、680〜730nmmの波長帯域の光を吸収する性質を有する成分を含むことにより上記選択吸収能を示すことができる。そのような成分としては、好ましくは680〜730nmmの波長帯域の光に対して吸収性を示す色素を挙げることができる。そのような色素としては、近赤外吸収色素として知られる各種色素、例えば、フタロシアニン色素、シアニン色素、ジイモニウム色素、クアテリレン色素、ジチオールNi錯体色素、インドアニリン色素、アゾメチン錯体色素、アミノアントラキノン色素、ナフタロシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素を用いることができる。これら色素の具体例としては「ケミカルレビューズ(Chenmical Reviews)」 1992年発行 92巻 No.6 1197〜1226ページ、「JOEMハンドブック2 ダイオードレーザーに対する染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers JOEM Handbook 2)」(ぶんしん出版社、1990年発行)、「光ディスク用赤外吸収色素の開発」ファインケミカル 23巻 No.3 1999年発行に記載の各種色素が挙げられる。中でも、フタロシアニン色素、ジイモニウム色素、シアニン色素が好ましい、また、好ましい色素としては、680〜730nmの波長帯域に吸収極大波長(好ましくは最大吸収波長)を有する色素を挙げることができる。
【0105】
好ましいフタロシアニン色素としては、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン色素を挙げることができる。
【0106】
【化1】
【0107】
一般式(I)中、Q1〜Q4は、それぞれ独立に、アリール基またはヘテロ環基を表し、少なくとも一つは含窒素ヘテロ環基である。Mは金属原子を表す。Q1〜Q4は、2つまたは3つがアリール基で、残りの1つまたは2が含窒素ヘテロ環基であることが好ましい。
【0108】
アリール基は、単環であってもよいし、縮合環であってもよく、単環であることが好ましい。アリール基としては、ベンジル基が特に好ましい。
【0109】
ヘテロ環基は、含窒素ヘテロ環基であることが好ましい。含窒素ヘテロ環基は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。そのようなヘテロ原子としては、例えば硫黄原子を挙げることができる。含窒素ヘテロ環基は、ヘテロ原子として窒素原子のみを含むもの好ましい。含窒素ヘテロ環基は、5員環または6員環の含窒素ヘテロ環基が好ましく、6員環の含窒素ヘテロ環基がさらに好ましい。含窒素ヘテロ環基中のヘテロ原子の数は、1〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2または3がさらに好ましい。
【0110】
アリール基およびヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基の詳細については、特開2013−182028号公報段落0010〜0011を参照できる。
【0111】
一般式(I)で表されるフタロシアニン色素は、Q1〜Q4のうち、少なくとも1つが含窒素ヘテロ環基であり、残りが下記一般式(I−1)で表されることが好ましい。
【0112】
【化2】
【0113】
一般式(I−1)中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、:の位置で中央の骨格と結合している。
【0114】
1、R2、R3、R4は、これらのうち1つまたは2つがハロゲン原子以外の置換基であり、残りが水素原子またはハロゲン原子であることが好ましく、これらのうち1つが置換基であり、残りが水素原子であることがより好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
1、R2、R3、R4は、それぞれ、この基の質量(この基を1分子と仮定したときの分子量)が30〜400であることが好ましく、30〜200であることがより好ましい。
【0115】
一般式(I)中、Mが表す金属原子として、好ましくは、Cu、Zn、Pb、Fe、Ni、Co、AlCl、AlI、InCl、InI、GaCl、GaI、TiCl2、Ti=O、VCl2、V=O、SnCl2またはGeCl2であり、より好ましくはCu、V=O、Mg、Zn、Ti=Oであり、特に好ましくはCuおよびV=Oである。
【0116】
フタロシアニン色素は、公知の方法によって合成することができる。例えば、フタロシアニン 化学と機能(アイピーシー)の記載に従って合成することができる。また、市販品を用いることもできる。また、フタロシアニン色素は、市販品としても入手可能である。
【0117】
以下に、一般式(I)で表されるフタロシアニン色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記例示化合物において、中心の金属原子を、Cu、Zn、Pb、Fe、Ni、Co、AlCl、AlI、InCl、InI、GaCl、GaI、TiCl2、Ti=O、VCl2、V=O、SnCl2またはGeCl2に置き換えたものも好ましく用いられる。さらに、下記例示化合物Aでは、一般式(I)のQ1〜Q4に相当する環のうち、1つのみが含窒素環となっているが、2つ以上が含窒素環の場合も好ましい。他の例示化合物についても、同様に考えることができる。
【0118】
また、下記例示化合物は、例えば二種類以上のニトリル化合物を環化して合成することができる。そのように合成される場合には混合物として得られるが、下記では便宜上代表的な構造のみを示している。例えば、下記例示化合物Fは、下記のニトリル化合物aとニトリル化合物bとを1:3のモル比で反応させることにより得ることができるが、合成上はニトリル化合物a由来の部分構造:ニトリル化合物b由来の部分構造=0:4〜4:0から構成されるフタロシアニン色素を含む。また、官能基の配置が異なる異性体構造も含む。
【0119】
【化3】
【0120】
【表1】
【0121】
【化4】
【0122】
【化5】
(上記において、Mは銅原子である。)
【0123】
好ましいシアニン色素としては、例えば、特開2009−108267号公報の一般式(1)で表されるシアニン色素を挙げることができる。その詳細については、特開2009−108267号公報段落0020〜0051を参照できる。
【0124】
好ましいジイモニウム色素としては、例えば、特開2008−069260号公報の一般式(II)で表されるジイモニウム色素を挙げることができ、より好ましいジイモニウム色素としては、特開2008−069260号公報の一般式(XII−1)で表されるジイモニウム色素を挙げることができる。これら一般式で表されるジイモニウム色素の詳細については、特開2008−069260号公報段落0072〜0115を参照できる。
【0125】
吸収型出射光量選択低減部材は、例えば、上記色素を含む重合性組成物を、適当な基材上に塗布し、次いで硬化処理を施すことにより、基材上に吸収型出射光量選択低減層を有する部材として形成することができる。そのような重合性組成物に含まれ得る重合性化合物等の成分等の詳細については、例えば、波長変換層形成のために用いられる重合性組成物に関する上述の記載を参照できる。また、特開2013−182028号公報段落0043〜0200、特開2009−108267号公報段落0054〜0063、特開2008−69260号公報段落0117〜0119を参照することもできる。基材としては、例えば先に記載したバリアフィルムを挙げることができる。また、波長変換部材と基材、例えばバリアフィルム、を兼用してもよい。即ち、バリアフィルム等の基材の一方の面に波長変換層を有し、他方の面に吸収型出射光量選択低減層を有する部材として、波長変換部材と出射光量選択低減部材とを一体積層することもできる。この点は、後述する反射型出射光量選択低減部材についても同様である。上記色素は、例えば上記色素を含む重合性組成物において、重合性化合物100質量部に対して1〜30質量部程度用いることができる。ただし、680〜730nmの波長帯域の光が出射光量選択低減部材から出射側へ出射される光量を選択的に低減する出射光量選択低減能を有する出射光量低減部材が形成できればよいため、上記色素の使用量は特に限定されるものではない。
【0126】
(反射型出射光量選択低減部材)
反射型出射光量選択低減部材としては、一態様では、屈折率の異なる層が複数積層された多層膜を挙げることができる。多層膜を構成する層は、無機層であっても、有機層であってもよい。例えば、屈折率の異なる材料(高屈折率材料、低屈折率材料)を順次積層して構成された誘電体多層膜を好適に利用できる。更に、誘電体多層膜の層構成に金属膜を追加した金属/誘電体多層膜としてもよい。なお、上記多層膜は、EB(Electron Beam)蒸着(電子ビーム共蒸着)、スパッタ等の公知の製膜方法により基材上に複数の製膜材料を堆積することにより形成可能である。また、有機層を含む多層膜は、塗布、ラミネート等の公知の製膜方法により形成可能である。有機層としては、例えば延伸フィルムを用いることができる。
【0127】
誘電体多層膜としては、一例として、二酸化チタン(TiO)層と二酸化ケイ素(SiO)層と交互に積層した構成のものを挙げることができる。また、誘電体としては、MgFやAl、MgO、ZrO、Nb、Ta等の誘電体も使用できる。また、多層膜の構成については、特許3187821号、特許3704364号、特許4037835号、特許4091978号、特許3709402号、特許4860729号、特許3448626号の各明細書に記載の多層膜に関する記載を参照することもできる。反射すべき波長帯域が決定すれば、かかる波長帯域の光を選択的に反射する多層膜の層構成(製膜材料の組み合わせ、各層の膜厚)は公知の膜設計法により定めることができる。
【0128】
反射型出射光量低減部材としては、一態様では、コレステリック液晶相が固定された光反射層を挙げることもできる。コレステリック液晶相が固定された光反射層により反射される光の波長帯域は、コレステリック液晶相の螺旋ピッチまたは屈折率を変えることにより調整することができる。コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、キラル剤の添加量を変えることによって容易に変更し調整することができる。具体的には富士フイルム研究報告No.50(2005年)pp.60−63に詳細な記載がある。
【0129】
コレステリック液晶相を形成するためのコレステリック液晶としては、適宜なものを用いてよく、特に限定はない。コレステリック液晶相は、螺旋ピッチに基づく反射中心波長λ(λ=nP、ここでnは液晶の平均屈折率、Pは螺旋ピッチ)および反射中心波長λを中心とした半値幅Δλ(Δλ=PΔn、ここでΔnは屈折率の異方性)の光のみを選択的に反射し、その他の波長域の光を透過することができる。このため、コレステリック液晶相が固定された光反射層に用いる液晶の屈折率の異方性Δnは、0.06≦Δn≦0.5程度であることが実用的である。これは、半値幅で15nm〜150nmに相当する。例えば、特表2011−510915号公報に記載の材料および特開2004−262884号公報に記載の材料を、そのようなΔnを実現するための材料のとして例示することができる。コレステリック液晶相を、半値幅を200nm以下に制御して作製する場合、単一のピッチではなく、コレステリック液晶相の螺旋方向でピッチ数が徐々に変化することで、広い半値幅を実現することができる方法(ピッチグラジエント法)を用いることができる。ピッチグラジエント法としては、Nature 378、467−46,1995に記載の方法、特許第4990426号に記載の方法を挙げることができる。
【0130】
−コレステリック液晶性化合物−
コレステリック液晶性化合物としては、薄膜化等の観点からは液晶ポリマーの使用が有利である。また複屈折の大きいコレステリック液晶性化合物ほど選択反射の波長帯域が広くなって好ましい。
【0131】
液晶ポリマーとしては、例えばポリエステル等の主鎖型液晶ポリマー、アクリル主鎖やメタクリル主鎖、シロキサン主鎖等からなる側鎖型液晶ポリマー、低分子カイラル剤含有のネマチック液晶ポリマー、キラル成分導入の液晶ポリマー、ネマチック系とコレステリック系の混合液晶ポリマーなどの適宜なものを用いることができる。取扱性等の点よりは、ガラス転移温度が30〜150℃のものが好ましい。
【0132】
コレステリック液晶相の形成は、偏光分離板に必要に応じポリイミドやポリビニルアルコール、SiOの斜方蒸着層等の適宜な配向膜を介して直接塗布する方式、透明フィルムなどからなる液晶ポリマーの配向温度で変質しない支持体に必要に応じ配向膜を介して塗布する方式などの適宜な方式で行うことができる。支持体としては、偏光の状態変化を防止する点などより位相差が可及的に小さいものを用いることが好ましい。また配向膜を介したコレステリック液晶相の重畳方式なども採用することができる。
【0133】
液晶ポリマーの塗布は、溶剤による溶液や加熱による溶融液等の液状物としたものを、ロールコーティング方式やグラビア印刷方式、スピンコート方式などの適宜な方式で展開する方法などにより行うことができる。
【0134】
また、コレステリック液晶相が固定された光反射層は、コレステリック液晶性を示す重合性化合物(以下、「重合性コレステリック液晶性化合物」と記載する。)を含む組成物を塗布した後に液晶相を形成し、さらに重合硬化させて液晶相を固定することによっても形成することができる。重合性コレステリック液晶性化合物を用いることは、光反射層の薄膜化および塗布適性の観点から好ましい。
【0135】
重合性コレステリック液晶性化合物とは、一分子中に1つ以上の重合性基を有するコレステリック液晶性化合物であって、一分子中に重合性基を2つ以上有する多官能性化合物であってもよく、一分子中に重合性基を1つ有する単官能性化合物であってもよい。重合性コレステリック液晶性化合物が有する重合性基は、重合反応し得る基であればよく、特に限定されるものではない。
【0136】
また、コレステリック液晶性化合物は、一態様では、棒状液晶性化合物であることができる。
【0137】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0138】
重合性棒状液晶性化合物としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、WO95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0139】
棒状液晶性化合物としては、例えば、特表平11−513019号公報や特開2007−279688号公報に記載のものも好ましく用いることができる。
【0140】
また、コレステリック液晶性化合物は、一態様では、円盤状液晶性化合物であることもできる。
【0141】
円盤状液晶性化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、特開2007−108732号公報や特開2010−244038号公報に記載の化合物を好ましい化合物として挙げることができる。
【0142】
以下に、円盤状液晶性化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
【化6】
【0144】
一態様では、コレステリック液晶相が固定された光反射層を有する反射型出射光量選択低減部材は、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層および円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層からなる群から選ばれる層を、二層以上含むことができる。上記群から選ばれる層を二層以上含む反射型出射光量選択低減部材は、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層のみを二層以上含んでもよく、円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層のみを二層以上含んでもよい。または、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層とをそれぞれ一層以上、合計二層以上含んでもよい。また、一態様では、反射型出射光量選択低減部材において、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層とが、直接または一層以上の他の層を介して、積層されていることが好ましい。反射型出射光量選択低減部材において棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層とが積層されていることは、本発明のバックライトユニットが組み込まれた液晶表示装置の表示面を、正面から観察して確認される色味と斜め方位から観察して確認される色味との差分を低下して色味の均一性を高める観点から好ましい。ここで、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層との積層順序は特に限定されるものではなく、どちらが、より出射側に配置されていてもよい。
【0145】
−その他の成分−
コレステリック液晶相が固定された光反射層を形成するために用いられる組成物は、コレステリック液晶性化合物の他、キラル剤、配向制御剤、重合開始剤、配向助剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0146】
配向制御剤としては、例えば、特開2005−99248号公報の段落0092および段落0093に例示されている化合物、特開2002−129162号公報の段落0076〜0078および段落0082〜0085に例示されている化合物、特開2005−99248号公報の段落0094および段落0095に例示されている化合物、特開2005−99248号公報の段落0096に例示されている化合物を挙げることができる。
【0147】
また、配向制御剤としては、フッ素系配向制御剤を用いることもできる。フッ素系配向制御剤としては、例えば、特開2013−203827号公報段落0100に示されている一般式(I)で表される化合物を好ましいものとして挙げることができる。かかる化合物の詳細については、特開2013−203827号公報段落0101〜0108を参照できる。
【0148】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)等が挙げられる。
【0149】
また、光反射層の作製方法については、例えば、特開平1−133003号公報、特許3416302号明細書、特許3363565号明細書、特開平8−271731号公報に記載の方法を用いることができ、これらの公報の内容は本発明に組み込まれる。
【0150】
ところで後述する選択反射部材は、一態様では、出射光量低減部材と同一部材として構成することができる。例えば、コレステリック液晶相を重畳することにより、光反射層としての出射光量低減部材と選択反射部材とを同一部材としてすることができる。このようなコレステリック液晶相の重畳に際しては、同じ方向の円偏光を反射する組合せで用いることが好ましい。これにより各コレステリック液晶相で反射される円偏光の位相状態を揃えて各波長域で異なる偏光状態となることを防止でき、光の利用効率を高めることができる。コレステリック液晶相が固定された光反射層は、右円偏光または左円偏光の少なくとも一方を、その反射中心波長の近傍の波長帯域において反射することができる。
【0151】
また、反射型出射光量選択低減部材の中で、先に記載した屈折率の異なる層が複数積層された多層膜は、通常、直線偏光の一方の成分(P偏光またはS偏光のいずれか)を選択的に反射する性質を有する。一態様では、直線偏光のいずれか一方の成分のみ反射する性質を有する反射型出射光量選択低減部材を用いることができる。また、他の一態様では、直線偏光のP偏光を選択的に反射する多層膜とS偏光を選択的に反射する多層膜とを重畳して反射型出射光量選択低減部材を作製することができる。例えば、延伸フィルムの積層体である多層膜については、第一の多層膜と第二の多層膜との延伸方向が直交するように重畳することにより、直線偏光のP偏光およびS偏光の両成分を反射することができる。
【0152】
一方、上記のコレステリック液晶相が固定された光反射層は、右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射する性質を有する。そこで右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶相が固定された光反射層と左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶相が固定された光反射層とを重畳することにより、右円偏光および左円偏光の両円偏光を反射可能な反射型出射光量選択低減部材を作製することができる。このような反射型出射光量選択低減部材は、例えば、重畳される光反射層において、旋光軸が左右異なるキラル剤を使用することにより得ることができる。
【0153】
また、バックライトユニットに任意に含まれ得る構成部材である輝度向上板(輝度向上フィルム)の中には、いわゆる反射偏光子としての機能を有し、直線偏光の一方の成分を反射したり、円偏光の右円偏光または左円偏光の一方を反射するものがある。そのような輝度向上板と反射型出射光量選択低減部材とを備えるバックライトユニットでは、反射型出射光量選択低減部材が光を出射する出射側に輝度向上板を配置することが好ましく、反射型出射光量選択低減部材と異なる偏光(例えば直線偏光であればP偏光またはS偏光のいずれか、円偏光であれば右円偏光または左円偏光のいずれか)を反射する輝度向上板を配置することがより好ましい。これにより、反射型出射光量選択低減部材が一方の偏光のみ反射するものであったとしても、反射されずに反射型出射光量選択低減部材を通過した偏光は輝度向上板により反射されるからである。そのような輝度向上板の一例としては、例えば、米国特許第5,808,794号、米国特許第7,791,687号、特開2012−237853号公報に記載されているポリマー多層反射膜の輝度向上板、市販品の具体例としては、住友スリーエム社製のDBEF(登録商標)シリーズが挙げられる。また、特開平6−281814号公報、特開平11−122412号公報、特開2004―264322号公報等に記載されるコレステリック液晶層を用いた輝度向上板、市販品の具体例としては日東電工社製のNIPOCS(登録商標)等が挙げられる。これらは、可視光帯域に広帯域な輝度向上帯域を有していてもよいし、必要な波長帯域にのみ輝度向上帯域を発揮するものでもよい。中でも、青色光、緑色光および青色光の各波長領域にのみ選択的な輝度向上帯域を有するものは、色再現域拡大に寄与する波長帯域のみを選択的に輝度向上させることが可能であることから、色再現域の更なる拡大に有効であり、好ましい。また、輝度向上板を設けることは、上述の重畳を要さずに、または重畳される積層数を減らしつつ各種偏光を反射することができる点で、出射光量選択低減部材の作製工程簡略化の観点から好ましい。更に、輝度向上板を設けることは、液晶パネルでの光損失を低減することによって、輝度のより高い液晶表示装置を提供することができる観点からも好ましい。
【0154】
以上記載した吸収型出射光量選択低減部材および反射型出射光量選択低減部材は、適当な基材上に形成することができる。そのような基材としては、特に限定されるものではないが、例えば前述のバリアフィルムを挙げることができる。また、出射光量低減部材を含むバリアフィルムを波長変換部材作製のために用いることにより、出射光量低減部材と波長変換部材とを一体積層することができる。より詳しくは、例えば、バリアフィルムの一方の面に出射光量選択低減部材を形成し、他方の面に波長変換層を形成することにより、出射光量選択低減部材と波長変換部材とを一体積層することができる。または、出射光量選択低減部材を、プリズムシート、拡散シート、輝度向上板等のバックライトユニットの構成部材として波長変換部材とは別部材として含まれる部材を基材として形成してもよい。
【0155】
出射光量選択低減部材の形状は特に限定されるものではないが、例えばシート状ないしフィルム状である。シート状ないしフィルム状の出射光量選択低減部材として、例えば出射光量選択低減層として設けられる態様において、出射光量選択低減層の厚さは、例えば0.1〜100μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。出射光量選択低減層と波長選択層とを直接接する隣接層として設けることも可能であり、基材等の他の層を介して積層することも可能である。吸収型出射光量選択低減層については、基材等の他の層を介して上記の二層を積層することが好ましい。より詳しくは、以下の通りである。吸収型出射光量選択低減層は、680〜730nmの波長の光を吸収することにより熱を帯びると考えられる。したがって、特に、熱により発光効率が低下する蛍光体を含む波長変換層については、吸収型出射光量選択低減層と他の層を介して積層することにより、温度上昇を抑制することが好ましい。例えば量子ドットは、発光効率(量子効率)が熱により低下する傾向があると言われている。そのため、一態様では、量子ドットを含む波長変換層を、吸収型出射光量選択低減層と他の層を介して配置することが好ましい。ただし、吸収型出射光量選択低減層と波長変換層とを直接接する隣接層として設けることも、もちろん可能である。例えば、耐熱性に優れる蛍光体を含む波長変換層と吸収型出射光量選択低減層とを、直接接する隣接層として配置すること等が可能である。
【0156】
なおバックライトユニットに反射型出射光量選択低減部材を備える態様では、発光部に、680〜730nmの波長帯域の光を選択的に吸収する選択吸収能を有する選択吸収部材を設けることも好ましい。そのような選択吸収部材としては、吸収型出射光量選択低減部材として使用可能なものを用いることができる。反射型出射光量選択低減部材で反射された680〜730nmの波長帯域の光を選択吸収部材により吸収することにより、かかる光が発光部の、例えば導光板において乱反射することによって輝度が低下することを防ぐことができる。そのような選択吸収部材は、例えば光源と波長変換部材との間に、例えば導光板上に、配置することができる。好ましくは、選択吸収部材は、波長変換部材とは離間した部材として配置することができる。離間した部材として配置することは、先に記載した温度上昇抑制の観点から好ましい。ここで、離間とは、前述の一体積層された状態ではないことを意味し、好ましくは、両部材の間に空気層が存在することを意味する。
【0157】
<選択反射部材>
本発明のバックライトユニットは、出射光量選択低減部材に加えて、
青色光の発光中心波長と緑色光の発光中心波長との間の波長帯域(反射波長帯域1);および
緑色光の発光中心波長と赤色光の発光中心波長との間の波長帯域(反射波長帯域2)、
の少なくとも一方の波長帯域に反射ピークを有する選択反射部材を更に含むことができる。先に記載した通り、このような選択反射部材により、発光部からの出射光に含まれる上記波長帯域の光のバックライトユニットからの出射光量を低減することができる。このような選択反射部材を設けることは、各色光の半値幅を狭小化することにより色再現域の更なる拡大を可能にする観点から好ましい。また、選択反射部材により反射され波長変換部材に入射した光が励起光となり、波長変換部材に含まれる蛍光体が励起し新たな蛍光を発光することにより、反射された波長帯域の光のバックライトユニットからの出射光量低下により輝度が大きく低下することを防ぐことができる。こうして、輝度の大きな低下を招くことなく、色再現域を更に拡大することが可能となる。このために、蛍光体としては、反射波長帯域1、反射波長帯域2の一方または両方の光により励起され得るものを用いることが好ましい。一般に、緑色蛍光体および赤色蛍光体は、反射波長帯域1の光または反射波長帯域2の光により励起可能である。
【0158】
色再現域の更なる拡大の観点から、反射波長帯域1は、好ましくは490〜510nmの範囲であり、より好ましくは480〜520nmの範囲である。一方、同様の観点から、反射波長帯域2は、好ましくは570〜590nmの範囲であり、より好ましくは560〜600nmの範囲である。
【0159】
上記選択反射部材の作製方法は、特に限定されるものではない。例えば、反射型出射光量選択低減部材について記載した構成において、選択的に反射する波長帯域を調整するための手段を採用することにより、反射波長帯域1に反射ピークを有するか、反射波長帯域2に反射ピークを有するか、または反射波長帯域1および反射波長帯域2にそれぞれ反射ピークを有する選択反射部材を得ることができる。また、出射光量選択低減部材と選択反射部材は同一部材であってもよい。そのような部材には、例えば、基材等の他の層を介して、または隣接層として、出射光量選択低減層と選択反射層とが積層されている部材、同一層が680〜730nmの波長帯域の光を吸収する吸収性または反射する反射性とともに、反射波長帯域1および反射波長帯域2の一方または両方の光に対して反射性を示す部材等が包含される。
【0160】
なお、上記選択反射部材として、コレステリック液晶相を用いたものを反射波長帯域1および反射波長帯域2の一方または両方に反射ピークを有するように設ける場合、その反射帯域の半値幅Δλは、50〜15nmの範囲であることが好ましく、40nm〜20nmの範囲であることがより好ましい。上記範囲であると、ディスプレイの色再現性向上と、ディスプレイの輝度向上とを好適に両立することができる。この場合において、用いる液晶性化合物の屈折率の異方性Δnは、0.06〜0.25の範囲であることが好ましく、0.08〜0.18の範囲であることがより好ましい。上記範囲であることは、液晶性を安定に示しつつ適切な半値幅を示す選択反射部材を得るうえで好ましい。
【0161】
また、半値幅Δλが小さい場合、選択反射部材に入射する光の角度により選択反射部材の反射ピーク波長がシフトする現象が見られることがある。一態様では、このような現象が見られた場合には、反射ピーク波長のシフトを補償するような層(補償層)を設けることができる。このような補償層は、例えば、厚み方向のレターデーションRthを、用いる液晶性化合物に対して適切に設定することにより実現できる。
【0162】
選択反射部材の形状は特に限定されるものではないが、例えばシート状ないしフィルム状である。シート状ないしフィルム状の選択反射部材として、例えば選択反射層として設けられる態様において、選択反射層の厚さは、例えば0.1〜100μmであり、好ましくは1〜5μmである。
【0163】
選択反射部材と出射光量選択低減部材の配置順については、バックライトユニットにおいてどちらが出射側にあってもよい。また、選択反射部材と出射光量選択低減部材とは、別部材としてもよく、同一部材としてもよい。更に、選択反射部材と波長変換部材とを同一部材とすることもできる。または、選択反射部材および出射光量選択低減部材の両部材を、波長変換部材と同一部材とすることも可能である。
【0164】
本発明のバックライトユニットは、以上説明した構成部材に加えて、公知の拡散板や拡散シート、プリズムシート(例えば、住友スリーエム社製BEFシリーズなど)等を備えていることも好ましい。その他の部材については、特許第3416302号、特許第3363565号、特許第4091978号、特許第3448626号の各明細書等に記載されており、これらの内容は本発明に組み込まれる。
【0165】
[液晶表示装置]
本発明の一態様にかかる液晶表示装置は、上述のバックライトユニットと、液晶セルと、を少なくとも含む。
【0166】
(液晶表示装置の構成)
液晶セルの駆動モードについては特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、またはTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。VAモードの液晶表示装置の構成としては、特開2008−262161号公報の図2に示す構成が一例として挙げられる。ただし、液晶表示装置の具体的構成には特に制限はなく、公知の構成を採用することができる。
【0167】
液晶表示装置の一実施形態では、対向する少なくとも一方に電極を設けた基板間に液晶層を挟持した液晶セルを有し、この液晶セルは2枚の偏光板の間に配置して構成される。液晶表示装置は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う。さらに必要に応じて偏光板保護フィルムや光学補償を行う光学補償部材、接着層などの付随する機能層を有する。また、カラーフィルター(カラーフィルター基板)、薄層トランジスタ基板、レンズフィルム、拡散シート、ハードコート層、反射防止層、低反射層、アンチグレア層等とともに(又はそれに替えて)、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層等の表面層が配置されていてもよい。
【0168】
本発明のバックライトユニットは、カラーフィルターが選択する波長帯域に発光中心波長を有する青色光、緑色光および赤色光を用いることにより白色光を具現化するものである。この点は、先に記載した通り、輝度向上の観点から望ましい。
カラーフィルターの好ましい特性は特開2008−083611号公報などに記載されており、この公報の内容は本発明に組み込まれる。
例えば、緑色を示すカラーフィルターにおける最大透過率の半分の透過率となる波長は、一方が590nm以上610nm以下であり、他方が470nm以上500nm以下であることが好ましい。また、緑色を示すカラーフィルターにおいて最大透過率の半分の透過率となる波長は、一方が590nm以上600nm以下であることが好ましい。さらに緑色を示すカラーフィルターにおける最大透過率は80%以上であることが好ましい。緑色を示すカラーフィルターにおいて最大透過率となる波長は530nm以上560nm以下であることが好ましい。
緑色を示すカラーフィルターにおいて、発光ピークの波長における透過率は、最大透過率の10%以下であることが好ましい。
赤色を示すカラーフィルターは、580nm以上590nm以下における透過率が最大透過率の10%以下であることが好ましい。
カラーフィルター用顔料としては、公知のものを何ら制限なく用いることができる。なお、現在は、一般的に顔料を用いているが、分光を制御でき、プロセス安定性、信頼性が確保できる色素であれば、染料によるカラーフィルターであってもよい。
【0169】
図4に、本発明の一態様にかかる液晶表示装置の一例を示す。図4に示す液晶表示装置51は、液晶セル21のバックライト側の面にバックライト側偏光板14を有する。バックライト側偏光板14は、バックライト側偏光子12のバックライト側の表面に、偏光板保護フィルム11を含んでいても、含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。
バックライト側偏光板14は、偏光子12が、2枚の偏光板保護フィルム11および13で挟まれた構成であることが好ましい。
本明細書中、偏光子に対して液晶セルに近い側の偏光板保護フィルムをインナー側偏光板保護フィルムと言い、偏光子に対して液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムをアウター側偏光板保護フィルムと言う。図4に示す例では、偏光板保護フィルム13がインナー側偏光板保護フィルムであり、偏光板保護フィルム11がアウター側偏光板保護フィルムである。
【0170】
バックライト側偏光板は、液晶セル側のインナー側偏光板保護フィルムとして、位相差フィルムを有していてもよい。このような位相差フィルムとしては、公知のセルロースアシレートフィルム等を用いることができる。
【0171】
液晶表示装置51は、液晶セル21のバックライト側の面とは反対側の面に、表示側偏光板44を有する。表示側偏光板44は、偏光子42が、2枚の偏光板保護フィルム41および43で挟まれた構成である。偏光板保護フィルム43がインナー側偏光板保護フィルムであり、偏光板保護フィルム41がアウター側偏光板保護フィルムである。
【0172】
液晶表示装置51が有するバックライトユニット1については、先に記載した通りである。
【0173】
本発明の一態様にかかる液晶表示装置を構成する液晶セル、偏光板、偏光板保護フィルム等については特に限定はなく、公知の方法で作製されるものや市販品を、何ら制限なく用いることができる。また、各層の間に、接着層等の公知の中間層を設けることも、もちろん可能である。
【実施例】
【0174】
以下に実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0175】
以下に示す各部材の吸収ピーク波長(吸収極大波長)、反射ピーク波長(反射極大波長)は、以下の方法で測定した値である。
分光光度計(島津製作所製UV−3150)にて、温度25℃相対湿度60%で波長380〜780nmの光線透過率を測定した。出射光量選択低減部材は、測定した光線透過スペクトルの680〜780nmにおける極小波長を吸収ピーク波長(吸収極大波長)、反射ピーク波長(反射極大波長)とした。また、選択反射部材については、測定した光線透過スペクトルの青色光の発光中心波長と緑色光の発光中心波長との間の波長帯域(反射波長帯域1)および緑色光の発光中心波長と赤色光の発光中心波長との間の波長帯域(反射波長帯域2)における極小波長をそれぞれ反射ピーク波長(反射極大波長)とした。
【0176】
1.バリアフィルム10の作製
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ50μm)の片面側に以下の手順で有機層および無機層を順次形成した。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセルサイテック社製TMPTA)および光重合開始剤(ランベルティ社製、ESACURE KTO46)を用意し、質量比率として、前者:後者=95:5となるように秤量し、これらをメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度15%の塗布液とした。この塗布液を、ダイコーターを用いてロールトウロールにて上記PETフィルム上に塗布し、50℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。その後、窒素雰囲気下で紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm)し、紫外線硬化にて硬化させ、巻き取った。支持体上に形成された第一有機層の厚さは、1μmであった。
【0177】
次に、ロールトウロールのCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、第一有機層の表面に無機層(窒化ケイ素層)を形成した。原料ガスとして、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。電源として、周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。製膜圧力は40Pa、到達膜厚は50nmであった。このようにして第一有機層の表面に無機層が積層されたバリアフィルム10を作製した。
【0178】
2.波長変換層形成用蛍光体含有重合性組成物(蛍光体分散液)の調製
【0179】
(調製例1)
波長変換層形成用蛍光体含有重合性組成物として、下記の蛍光体分散液Aを調製し、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、30分間減圧乾燥して塗布液として用いた。以下のトルエン分散液中の量子ドット濃度は、1質量%であった。
───────────────────────────────────
蛍光体分散液A
───────────────────────────────────
量子ドット1のトルエン分散液(発光極大:530nm) 10.0質量部
量子ドット2のトルエン分散液(発光極大:620nm) 1.0質量部
ラウリルメタクリレート 99.0質量部
光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(イルガキュア(登録商標)819(BASF社製)
───────────────────────────────────
量子ドット1、2としては、下記のコア‐シェル構造(InP/ZnS)を有するナノ結晶を用いた。
量子ドット1:INP530―10(NN-labs社製):蛍光半値幅65nm
量子ドット2:INP620−10(NN-labs社製):蛍光半値幅70nm
蛍光体分散液Aの粘度は50mPa・sであった。
【0180】
(調製例2)
波長変換層形成用蛍光体含有重合性組成物として、下記の蛍光体分散液Bを調製し、ボールミルで均一に分散したものを塗布液として用いた。蛍光体はいずれも粉末状であり、ボールミルで分散することにより凝集物の無い均一な塗布液を得た。
───────────────────────────────────
蛍光体分散液B
───────────────────────────────────
蛍光体1(発光極大:535nm) 1.0質量部
蛍光体2(発光極大:650nm) 3.0質量部
ラウリルメタクリレート 99.0質量部
光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(イルガキュア(登録商標)819(BASF社製)
───────────────────────────────────
蛍光体1および2としては、以下の蛍光体を用いた。
蛍光体1(SrGa2S4:Eu、ユーヴィックス社製HPL63/F−F1):蛍光半値幅52nm
蛍光体2(CaS:Eu、ユーヴィックス社製FL63/S−D1):蛍光半値幅60nm
【0181】
3.出射光量選択低減部材形成用組成物の調製
【0182】
(調製例3)
吸収型出射光量選択低減部材形成用組成物として、下記の組成物Cを調製し、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルターでろ過し、塗布液として用いた。
───────────────────────────────────
吸収型出射光量選択低減部材形成用組成物C
───────────────────────────────────
フタロシアニン色素A 5.0重量部
KAYARAD(登録商標) DPHA 5.8重量部
(日本化薬社製、重合性化合物)
アクリベースFF−187 5.8重量部
(藤倉化成社製、アクリル系バインダー)
光ラジカル重合開始剤 0.2質量部
(イルガキュア(登録商標)819(BASF社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 48.3重量部
───────────────────────────────────
フタロシアニン色素Aとしては、前述の表1に示したフタロシアニン色素Aを用いた。フタロシアニン色素Aは、特開2013−182028号公報の段落0233に記載の方法により合成されたものを用いた。
【0183】
(調製例4)
反射型出射光量選択低減部材形成用組成物として、下記の2種の組成物D1、D2を調製した。
組成物D1は、富士フイルム研究報告 No.50(2005年)p.60−63を参考に、使用するキラル剤の添加量を調整して作製した。
組成物D2は、キラル剤の旋光軸を反転させたキラル剤を用いた点以外は、組成物D1と同様に作製した。組成物D2を用いることにより、組成物D1を用いて形成される層に固定されるコレステリック液晶相とは、逆の旋光特性を示すコレステリック液晶相が固定された層を形成することができる。
なお組成物D1およびD2には、コレステリック液晶性化合物として棒状液晶性化合物を用いた。
【0184】
(調製例5)
反射型出射光量選択低減部材形成用組成物として、下記の2種の組成物R1、R2を調製した。組成物R1には、コレステリック液晶性化合物として下記棒状液晶性化合物を用いた。組成物R2には、コレステリック液晶性化合物として下記円盤状液晶性化合物を用いた。
【0185】
組成物R1は、下記成分を混合して調製した。
──────────────────────────────────────
反射型出射光量選択低減部材形成用組成物R1
──────────────────────────────────────
(溶質)
棒状液晶性化合物(下記化合物11) 80質量部
棒状液晶性化合物(下記化合物12) 20質量部
下記フッ素系水平配向剤1 0.1質量部
下記フッ素系水平配向剤2 0.007質量部
右旋回性キラル剤LC756(BASF社製) 3.0質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3.0質量部
(溶媒)
メチルエチルケトン 組成物R1において上記溶質の濃度が30質量%となる量
──────────────────────────────────────
【0186】
【化7】
【0187】
組成物R2は、下記成分を混合して調製した。
──────────────────────────────────────
反射型出射光量選択低減部材形成用組成物R2
──────────────────────────────────────
(溶質)
円盤状液晶性化合物(下記化合物1) 35質量部
円盤状コレステリック液晶性化合物(下記化合物2) 35質量部
左旋回性キラル剤(下記化合物3) 35質量部
配向助剤(下記化合物4) 1質量部
配向助剤(下記化合物5) 1質量部
重合開始剤(下記化合物6) 3質量部
(溶媒)
質量比98:2のCHClとCOHの混合溶媒 組成物R2において上記溶質の濃度が30質量%となる量
──────────────────────────────────────
【0188】
【化8】
【0189】
4.出射光量選択低減層を有するバリアフィルムの作製
バリアフィルム10の第一有機層および無機層(以下、「バリア層」と記載する。)を形成した側でない面に、組成物Cを塗布して乾燥後、紫外線照射により組成物を硬化(紫外線硬化)させ、吸収型出射光量選択低減層を設けたバリアフィルム21を作製した。吸収型出射光量選択低減部材の厚さは約2μm、吸収極大波長は682nmであった。
また、バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に組成物D1を塗布して乾燥の後、熟成によるコレステリック相の形成を行ってから紫外線照射により組成物を硬化させ、さらにその上に、組成物D2を同様に塗布・コレステリック相形成・紫外線硬化を行い、反射型出射光量選択低減層を設けたバリアフィルム22を作製した。反射型出射光量選択低減層の厚さは約2μm、反射極大波長は685nmであった。
さらに、バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に、蒸着装置を用いて誘電体多層膜をTiO/SiO/…/SiO/TiOの繰り返し構造を持つ合計29層の多層蒸着膜として形成し、その各膜厚を調整することによって反射型出射光量選択低減層を設けたバリアフィルム23を作製した。反射極大波長は685nmであった。
【0190】
5.680〜730nmの波長帯域の光を選択的に吸収する層(選択吸収層)を有するフィルム(吸収型出射光量選択低減部材または選択吸収部材として使用)の作製
トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム製フジタック(登録商標)TD40UC)上に、組成物Cを塗布して乾燥後紫外線硬化し、選択吸収層を設けたフィルム24を作製した。選択吸収層の厚さは約2μmであった。
【0191】
6.選択反射層を有するバリアフィルムの作製
バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に、富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60−63を参考に、使用するキラル剤の添加量およびその旋光軸を変更したコレステリック液晶含有組成物の組合せを用いて、反射極大波長を490nmおよび580nmに有する選択反射層を設けたバリアフィルム25を作製した。選択反射層の厚さは約4μmであった。
また、バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に、蒸着装置を用いて誘電体多層膜をTiO/SiO/…/SiO/TiOの繰り返し構造を持つ59層の多層膜として形成し、その各層膜厚を調整して、反射極大波長を490nmおよび580nmに有する選択反射層を設けたバリアフィルム26を作製した。
【0192】
7.吸収型出射光量選択低減層と選択反射層とを有するバリアフィルムの作製
上記で作製したバリアフィルム25の選択反射層上に、組成物Cを塗布して乾燥させた後に紫外線硬化し、吸収型出射光量選択低減層を設けた。以上により、バリアフィルム10のバリア層を形成した面でない面に、選択反射層および吸収型出射光量選択低減層をこの順に有するバリアフィルム27を作製した。
【0193】
8.反射型出射光量選択低減層および選択反射層の機能を兼ね備えた反射層を有するバリアフィルムの作製
バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に、蒸着装置を用いて誘電体多層膜をTiO/SiO/…/SiO/TiOの繰り返し構造を持つ89層の多層膜として形成し、その各層膜厚を調整して、反射極大波長を490nmおよび580nm、680nmに有する、反射型出射光量選択低減層および選択反射層の機能を兼ね備えた反射層を有するバリアフィルム28を作製した。
【0194】
9.反射型出射光量選択低減層と選択反射層とを有するバリアフィルムの作製
バリアフィルム25の選択反射層上に、組成物D1を塗布して乾燥の後、熟成によるコレステリック相の形成を行ってから紫外線照射により組成物を硬化させ、さらにその上に、組成物D2を同様に塗布・コレステリック液晶相形成・紫外線硬化を行い、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層が二層積層された反射型出射光量選択低減層を設けた。以上により、バリアフィルム10のバリア層を形成した面でない面に、選択反射層および反射型出射光量選択低減層をこの順に有するバリアフィルム29を作製した。
【0195】
10.出射光量選択低減層を有するバリアフィルムの作製
バリアフィルム10のバリア層を形成した側でない面に、組成物R1を塗布・コレステリック液晶相形成・紫外線硬化させて、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層を形成した。
更に、形成した光反射層上に、クラレ社製ポバールPVA−103を、乾燥後の膜厚が0.5μmになるように濃度調整して純水に溶解して調製した塗布液をバー塗布し、その後100℃で5分間加熱した。こうして形成した塗布膜の表面をラビング処理して配向膜を形成した。
形成した配向膜上に、組成物R2を塗布して、雰囲気温度70℃の加熱炉内に2分間保持して溶媒を気化させた後に、雰囲気温度100℃の加熱炉内で4分間加熱熟成を行って塗布膜を形成した。その後、この塗布膜を雰囲気温度80℃の加熱炉内に保持した後、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射して、円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層を形成した。
以上により、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物の光反射相が固定された光反射層が配向膜を介して積層された反射型出射光量選択低減層が形成された。
こうして、バリアフィルム10のバリア層を形成した面でない面に、反射型出射光量選択低減層を有するバリアフィルム30を作製した。
【0196】
11.波長変換層付部材の作製
【0197】
(製造例3)
上述した手順で作製したバリアフィルム10を第一のフィルム、バリアフィルム21を第二のフィルムとして使用し、図2および図3を参照し説明した製造工程により、波長変換部材Aを得た。具体的には、第一のフィルムとしてバリアフィルム10を用意し、1m/分、60N/mの張力で連続搬送しながら、無機層面上に蛍光体分散液Aをダイコーターにて塗布し、50μmの厚さの塗膜を形成した。次いで、塗膜の形成されたバリアフィルム10をバックアップローラに巻きかけ、塗膜の上に第二のフィルムとして、吸収型出射光量選択低減層を設けたバリアフィルム21の無機層面が塗膜に接する向きでラミネートし、その後、2枚のバリアフィルム(第一、第二のフィルム)で塗膜を挟持した状態でバックアップローラに巻きかけ、連続搬送しながら紫外線を照射した。バックアップローラの直径はφ300mmであり、バックアップローラの温度は50℃であった。紫外線の照射量は2000mJ/cmであった。上記紫外線の照射により塗膜を硬化させて硬化層(波長変換層)を形成し、波長変換部材Aを製造した。波長変換部材の硬化層の厚みは約50μmであった。こうして、波長変換部材と吸収型出射光量選択低減部材とが一体積層された部材A(波長変換層および吸収型出射光量選択低減層を有する部材3)を得た。
【0198】
(製造例1、2、4〜19)
下記表2の組み合わせで蛍光分散液とバリアフィルムとを用いた点以外は製造例3と同様にして、部材1、2、4〜19を作製した。
【0199】
【表2】
【0200】
11.液晶表示装置の作製
市販の液晶表示装置(パナソニック社製商品名THL42D2)を分解し、液晶パネルと導光板との間に、各製造例で作製した部材、および必要に応じフィルム24を構成に加え、バックライトユニットを以下の青色光源を備えたバックライトユニットに変更し、実施例、比較例のバックライトユニットおよびこのバックライトユニットが組み込まれた液晶表示装置を製造した。上記バックライトユニットは、光源として、青色発光ダイオード(日亜B−LED:Blue、主波長465nm、半値幅20nm)を備える。各部材をバックライトユニット内に配置する際、各部材の表裏それぞれのバリアフィルムは、このバックライトユニットが組み込まれた液晶表示装置の出射側、光源側との相対的な位置関係が表2に記載した通りとなるように配置した。なお液晶パネルに貼り付けられていた偏光板は、剥がさずにそのまま用いた。
表3に示す各部材は、導光板上に、接着、粘着または塗工形成によらず単に配置した。
フィルム24については、表3中、液晶パネルの光源側に隣接と記載されているものは、部材と液晶パネルとの間に配置(部材上に単に配置)した。導光板と部材との間と記載されているものは、導光板上に単に配置し、その上に部材を単に配置した。
図5に、実施例1〜3、6〜8、11〜13、16〜18、21、比較例1〜6の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
図6に、実施例4、9、14、19の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
図7に、実施例5、10、15、20の液晶表示装置の構成の模式図を示す。
なお図5〜7中、バックライトユニットの構成部材(拡散板、反射板、輝度向上板等)、液晶パネルの構成部材(液晶セル、偏光板、保護フィルム等)は図示を省略している。
実施例、比較例のバックライトユニットの構成を表3に示す。
【0201】
【表3】
【0202】
12.評価方法
<色再現域の評価>
作製した実施例および比較例の液晶表示装置にて順次、赤色の画素のみ、緑色の画素のみ、および青色の画素のみを点灯し、それぞれの色度をトプコンテクノハウス社製色彩輝度計「BM−5A」を用いて測定した。上記方法で測定された赤色、緑色、および青色の色度点をxy色度図上で結んで作られる三角形の面積を、NTSC規格の3原色点を結んで作られる三角形の面積で除して、NTSC比(%)を求めた。
また、表6に緑色光および赤色光の半値幅およびピーク波長(発光中心波長)を示したものについては、これら値は、輝度計(TOPCON社製SR−3)の分光スペクトル測定モードを用いて上記でNTSC比を測定するのと同様の設置形態にて測定した値である。
<輝度の評価>
作製した実施例および比較例の液晶表示装置の表示面に対して垂直方向740mmの位置に設置した輝度計(TOPCON社製SR−3)にて輝度を測定した。輝度は比較例1を1.00とし、各実施例・比較例は比較例1に対する相対値(任意単位(a.u.))で評価を行った。
<部材の温度上昇>
液晶表示装置の作製の際、各実施例、比較例の部材(波長変換層を有する部材)に熱電対を貼付して液晶表示装置を作製し、25℃相対湿度60%の恒温恒湿環境下で24時間、白色画面の連続点灯を行い、最後の6時間における平均温度を測定し、以下の評価とした。
A:平均温度が50℃未満であった
B:平均温度が50℃以上55℃未満であった
C:平均温度が55℃以上60℃未満であった
D:平均温度が60℃以上に達した
<表示面の正面で観察される色味と斜め方位で観察される色味の違い(斜め方位の色ムラ)>
実施例1、2、6、21および比較例3の液晶表示装置について、以下の方法で、表示面の正面で観察される色味と斜め方位で観察される色味との違い(色ムラ)を評価した。以下の色味座標u’v’の測定には、測定機として、ELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いた。
正面(極角0度)で測定した色味座標u’v’の値と、極角60度方向で測定した色味座標u’v’の値との差分をとった色味色差Δu’v’を、方位角0〜360度方向で測定し、その平均値を、斜め方位の色ムラの評価指標とした。その結果をもとに、以下の基準で、斜め方位の色ムラを評価した。
A:比較例3の液晶表示装置の斜め方位の色ムラよりも10%以上、良好である。
B:比較例3の液晶表示装置の斜め方位の色ムラよりも0%超10%未満、良好である。
C:比較例3の液晶表示装置の斜め方位の色ムラ以下である。
【0203】
13.評価結果
以上の実施例、比較例の評価結果を、下記表4〜6に示す。
具体的には、表4に、出射光量選択低減層を有する実施例と有さない比較例との対比結果を示す。
表5に、出射光量選択低減層と選択反射層とを有する実施例と、出射光量選択低減層を有さない比較例との対比結果を示す。
表6には、緑色光および赤色光の半値幅およびピーク波長(発光中心波長)を測定した実施例、比較例の測定結果を示す。
【0204】
【表4】
【0205】
表4に示す結果において、同じ蛍光体分散液を用いた実施例・比較例を対比した場合、出射光量選択低減層を有する実施例において、比較例と比べて色再現域が拡大していることがわかる。また、それに伴う輝度の低下はわずかでありほぼ無視できる程度である。
実施例1、2、6、21と比較例3の斜め方位の色ムラの対比から、実施例21では、棒状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層と円盤状液晶性化合物のコレステリック液晶相が固定された光反射層が積層された反射型出射光量選択低減部材により、斜め方位の色ムラが改善されたことが確認できる。なお実施例1、2、6における斜め方位の色ムラは、実用上支障のないレベルであった。
【0206】
【表5】
【0207】
表5に示す結果において、同じ蛍光体分散液を用いた実施例・比較例を対比した場合、
出射光量選択低減層とともに選択反射層を有する実施例において、比較例と比べて色再現域が拡大していることがわかる。また、それに伴う輝度の低下はわずかでありほぼ無視できる程度である。表5に示す実施例では、波長変換層に含まれる蛍光体が選択反射層により反射され波長変換層に入射した光により蛍光体が励起され緑色光および赤色光を発光することも、輝度低下の抑制に寄与していると考えられる。更に、同じ蛍光体分散液を用いた表4に示した実施例との対比から、出射光量選択低減層とともに選択反射層を有することにより色再現域が更に拡大することも確認できる。
【0208】
また、表4、5に示すように、吸収型出射光量低減層を有する実施例は、部材の温度上昇の評価結果はBであったが、反射型出射光量低減層を有する実施例は部材の温度上昇の評価結果はAであった。このように波長変換層を含む部材の温度上昇が少ないことは、熱により発光効率が低下する波長変換層を有するバックライトユニットにおいて望ましい。
【0209】
【表6】
【0210】
比較例3、比較例6は、出射光量選択低減層を有さない例であるため、これら比較例の赤色光、緑色光の半値幅は、波長変換層に含まれる蛍光体が発光する赤色光、緑色光の半値幅である。
表6に示すように、出射光量選択低減層を有し選択反射層を有さない実施例においては、赤色光のピークの半値幅が、同じ蛍光体分散液を用いた比較例(比較例3、比較例6)と比べて狭くなっていることから、出射光量選択低減層を有することにより、赤色光の半値幅が狭くなったことが確認できる。
更に、出射光量選択低減層とともに選択反射層を有する実施例では、赤色光のピークの半値幅に加えて、緑色光のピークの半値幅も狭くなっていることも確認できる。
以上のように半値幅が狭小化されたことが、先に表4、5に示した色再現域の拡大(NTSC比の向上)に寄与していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明は、液晶表示装置の製造分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7