特許第6056141号(P6056141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6056141円筒状ボンド磁石の製造方法およびその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056141
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】円筒状ボンド磁石の製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20161226BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20161226BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20161226BHJP
   B22F 3/20 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   B22F3/00 C
   B22F3/02 R
   B22F3/20 D
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-284850(P2011-284850)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135103(P2013-135103A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉間 慎二
(72)【発明者】
【氏名】山本 宗生
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−167963(JP,A)
【文献】 実開昭51−069969(JP,U)
【文献】 特開平05−090053(JP,A)
【文献】 特開平05−101956(JP,A)
【文献】 特開平09−170004(JP,A)
【文献】 特開2011−114300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/00−7/02、41/00−41/04
B22F 1/00−8/00
C22C 1/04−1/05、33/02
H02K 1/17、1/27、15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料と樹脂とを含むボンド磁石組成物を円筒状の成形空間に充填する工程と、その成形空間内側に配置された配向用磁石により、前記磁性材料を磁気的に配向させるとともに、溶融されたボンド磁石組成物を前記配向用磁石の軸方向に押し出して成形する工程とを有する円筒状ボンド磁石の製造方法であって、
前記配向用磁石は、円柱状または円筒状の第一の永久磁石と、前記軸方向に前記第一の永久磁石と互いの磁極面が対向するように隣接して配置された円柱状または円筒状の第二の永久磁石と、を有しており、
前記第一および第二の永久磁石は、隣接する他方の永久磁石との対向面となる面において、磁石ピースのN極面と、前記磁石ピースと隣接する別の磁石ピースのS極面が周方向に交互に現れるように、複数の磁石ピースが並べられてなり、
前記第一および第二の永久磁石は、前記軸方向において同極同士が向かい合うように配置されている、円筒状ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
前記第一の永久磁石と前記第二の永久磁石の間に、円柱状の第三の永久磁石を配置することにより前記配向用磁石が構成されており、
前記第三の永久磁石は、前記第一および第二の永久磁石の磁極面と対向しない面において、磁石ピースのN極面と、前記磁石ピースと隣接する別の磁石ピースのS極面が周方向に交互に現れるように、複数の磁石ピースが並べられてなる、請求項1に記載の円筒状ボンド磁石の製造方法。
【請求項3】
前記第一及び第二の永久磁石の磁化方向は、軸方向に対して、0度以上90度未満の角度で外周方向に傾斜されている請求項1または2に記載の円筒状ボンド磁石の製造方法。
【請求項4】
前記磁性材料が、Sm−Fe−N系の磁性材料である請求項1から3のいずれか一項に記載の円筒状ボンド磁石の製造方法。
【請求項5】
磁性材料と樹脂とを含むボンド磁石組成物が充填される円筒状の成形空間と、その成形空間内側に配置され、前記磁性材料を磁気的に配向させるための配向用磁石とを備え、溶融されたボンド磁石組成物を前記配向用磁石の軸方向に押し出して成形する円筒状ボンド磁石の製造装置であって、
前記配向用磁石は、円柱状または円筒状の第一の永久磁石と、前記軸方向に前記第一の永久磁石と互いの磁極面が対向するように隣接して配置された円柱状または円筒状の第二の永久磁石と、から構成されており、
前記第一および第二の永久磁石は、隣接する他方の永久磁石との対向面となる面において、磁石ピースのN極面と、前記磁石ピースと隣接する別の磁石ピースのS極面が周方向に交互に現れるように、複数の磁石ピースが並べられてなり、
前記第一および第二の永久磁石は、前記軸方向において同極同士が向かい合うように配置されている、円筒状ボンド磁石の製造装置。
【請求項6】
前記第一の永久磁石と前記第二の永久磁石の間に第三の永久磁石が配置されており、
前記第三の永久磁石は、前記第一および第二の永久磁石の磁極面と対向しない面において、磁石ピースのN極面と、前記磁石ピースと隣接する別の磁石ピースのS極面が周方向に交互に現れるように、複数の磁石ピースが並べられてなる請求項5に記載の円筒状ボンド磁石の製造装置。
【請求項7】
前記第一及び第二の永久磁石の磁化方向は、軸方向に対して、0度以上90度未満の角度で外周方向に傾斜されている請求項5または6に記載の円筒状ボンド磁石の製造装置。
【請求項8】
前記磁性材料が、Sm−Fe−N系の磁性材料である請求項5から7のいずれか一項に記載の円筒状ボンド磁石の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形法によって製造された内周方向に磁力を発する円筒状の異方性ボンド磁石に関するものであり、特に、その異方性ボンド磁石の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性材料と、その磁性材料のバインダーとしての樹脂とから構成されたボンド磁石は、焼結磁石と比較して複雑な形状が造形可能であり、機械的強度が優れている。そのため、ボンド磁石は、DCモータやステッピングモータといった永久磁石型同期モータや、レーザープリンター用のマグネットロール等の電子部品として数多く採用されている。
【0003】
ところで、このようなボンド磁石の製造方法は、大きく分けて、射出成形、圧縮成形および押出成形の3種類に分類される。
【0004】
これらの製造方法のうち、射出成形法は、磁性材料と熱可塑性樹脂からなるボンド磁石組成物を射出成形機のシリンダー内で加熱することにより、溶融および流動状態とし、プランジャーを用いて金型内部に充填し、所望の形状に成形する方法である。
【0005】
また、圧縮成形法は、磁性材料と熱硬化性樹脂とから構成されたボンド磁石組成物を、プレス金型内に充填して、圧縮しながら成形する方法である。
【0006】
以上の圧縮成形法と射出成形法の工程は、ボンド磁石組成物の金型への充填、成形および成形品であるボンド磁石の取り出しという一定のサイクルがあり、その生産は所謂バッチ式生産であるため、その生産スピードには限界がある。
【0007】
また、射出成形と圧縮成形は、細長い成形品、所謂長尺物の成形について限界がある。その一つの理由は、金型の加工上の問題である。金型に成形品の形状を彫り込むわけだが、金型の深さ方向への高精度の加工は非常に難しい。もう一つの理由は、成形上の問題である。圧縮成形の場合、長尺の細長い物をプレスしても、成形品の真ん中には圧力が伝わらない。また、射出成形で長尺物を成形した場合、ゲートから入ったボンド磁石組成物が冷えてしまうためショートショット(成形材料の未充填による成形不良)になる。
【0008】
これらに対して、押出成形法は、磁性材料と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とから構成されたボンド磁石組成物を、シリンダー内で加熱することで溶融そして流動状態とし、この流動状態にあるボンド磁石組成物を、金型に連続的に供給しつつ、所望の形状に成形する方法である。このため、押出成形法は、射出成形や圧縮成形のバッチ式に対して連続式となるため、生産性が非常に優れる。さらに、連続して成形することができるため、射出成形や圧縮成形では困難であった長尺品の成形が容易となる。
【0009】
次に、ボンド磁石を構成する磁性材料について述べる。まず、その磁性材料の原料組成の点から、フェライト系と希土類系の磁性材料に分類される。フェライト系は、歴史が古く安価であることから、最も普及している。しかし、フェライト系は、希土類系よりも磁力が弱く、成形品が小さくなると磁力が不足する。そのため、小さい成形品では、希土類系の磁性材料を使用することが好ましい。
【0010】
また、ボンド磁石を構成する磁性材料は、磁性の発現機構の点から、等方性と異方性にも分類される。等方性磁性材料は、どの方向にも同等の磁力を発現する。一方、異方性磁性材料は、一方向にのみ強い磁力を発現できる。そのため、異方性磁性材料は、ボンド磁石とする際に、磁性材料の粒子の磁化方向を一定の向きに揃えて異方化させなければならない。このような操作を配向と呼ぶ。この配向には、大きく分けて、機械配向と磁場配向の二種類がある。「機械配向」とは、磁性材料が板状粒子から構成される場合に、成形するとき、板状粒子に外部から圧力を加えると、板状粒子がその厚み方向に整列することを利用するものである。板状粒子が、その厚み方向に磁化容易軸を有する場合には、この操作により機械的に磁性材料の粒子を配向させることができる。一方、「磁場配向」とは、成形するときに、外部から磁場を印加することで粒子を配向させることを言う。粒子形状、磁化容易軸の方向との関係より、フェライト系の磁性材料では機械配向も可能だが、希土類系の磁性材料では磁場配向に限定される。異方性磁性材料を利用した場合には、等方性磁性材料を利用した場合に比べて配向の工程が増えるため、成形が難しくなる一方で、等方性磁性材料を利用した場合よりも磁力は強くなる。
【0011】
内周方向に磁力を発する円筒状磁石は、ハードディスクドライブや光メディアの中に組み込まれているスピンドルモータに広く利用されている。このほとんどは、等方性Nd−Fe−B系の磁性材料と樹脂とからなるボンド磁石組成物を圧縮成形することにより得られた円筒状のボンド磁石である。これは、上述したように、等方性Nd−Fe−B系の磁性材料は、成形する際に磁性材料を配向させる工程を設ける必要が無いので、成形が非常に簡単であり、着磁工程だけで所望の表面磁束波形を付与することができるからである。
【0012】
しかしながら、成形された円筒状ボンド磁石の表面磁束密度を高めるためには、単位体積あたりに大量のNd−Fe−B磁性材料を詰め込むしかなく、その結果、成形された円筒状ボンド磁石の比重が大きくなってしまうことが問題となっている。
【0013】
スピンドルモータの小型化および軽量化のため、円筒状ボンド磁石は、更に軽量で、かつ磁力が大きいことが要求される。そのため、射出成形または圧縮成形により、円筒状ボンド磁石を製造する研究が盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−223233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、等方性のNd−Fe−B系磁性材料を利用したボンド磁石と比べて、異方性のボンド磁石の普及が遅れている。以下、図面を参照しながら、その理由を説明する。図1は、円筒状ボンド磁石を射出成形する従来の金型の一例を示す断面図である。また、図2は、配向用磁石を構成する小磁石の1ピースの寸法を示す斜視図である。
【0016】
異方性の磁性材料を含むボンド磁石組成物を材料として、内周方向に磁力を発する円筒状ボンド磁石を成形する場合を考える。まず、その製造装置の構成として、図1に示されるように、成形品である円筒状ボンド磁石の内周面を成形する金型の中に、配向用の永久磁石を配置する必要がある。
【0017】
ここで、スピンドルモータ用の円筒状磁石の代表的な仕様として、外形(Φ)19mm×内径(Φ)17mm×高さ(H)3mm、極数が12極という仕様がある。このような円筒状磁石のための配向用磁石を構成する磁石1ピースの寸法は、図2に示されるように、概ね、側面が中心角(α)30度、半径(r)8mm、円弧の大きさ(a)4.97mmであり、奥行き(b)が3mmの楔形形状であり、配向用磁石全体の大きさと比較しても非常に小さい。このような小さいサイズになると、たとえ強力な永久磁石を材料としたとしても、発生する配向磁場は弱くなる。実際に、このような小さいサイズの磁石を、信越化学製NdFeB焼結磁石N48Hで作製して、図1に示す金型に配置した場合には、配向磁場は4000Gにしかならない。
【0018】
このような表面磁束密度の小さい配向磁場の中では、ボンド磁石組成物に含まれる磁性材料は配向し難いので、結果として、円筒状ボンド磁石の表面磁束密度は小さくなってしまう。例えば、等方性のNd−Fe−B系磁性材料を利用した圧縮成形による円筒状ボンド磁石の表面磁束密度が約2000Gであるのに対して、このような小さい配向磁場中の射出成形による成形品である円筒状ボンド磁石の表面磁束密度は、約1500Gとなる。
【0019】
このように表面磁束密度が小さくなる問題を解決するために、例えば、特許文献1に開示されたように、配向用磁石として、その外周方向に反発するよう配列させた磁石を利用することが検討されている。このように、外周方向に反発するように複数の小磁石を並べて構成された配向用磁石とした場合、特許文献1に記載されているように、成形品である円筒状ボンド磁石の内周方向に測定した表面磁束密度をグラフに表したときの波形が先細り型になってしまう。
【0020】
そのような課題を解決するため、特許文献1では、配向用磁石を構成する複数の小磁石の間に、成形空間を挟んで磁性ヨークを配置することにより、上述の先細りの問題を解消して、正弦波に近い表面磁束密度波形を得ている。
【0021】
しかしながら、このような配向用磁石を利用する方法によって、スピンドルモータ用の円筒状磁石の代表的な仕様である、12極の極数を有する円筒状ボンド磁石を得るためには、周方向に配向用磁石を24分割して、それに対応する24個の小磁石を反発させながら並べて配置する必要がある。上述したような、内径が17mmという小型の円筒状ボンド磁石を成形するために、このような先行技術を適用するのは非常に困難である。
【0022】
すなわち、配向用磁石を構成する小磁石の1ピースが非常に小さくなるため、加工が困難であること、配向用磁石を構成する1つ1つの磁石の磁力が弱いこと、配向用磁石の組立が困難であること、がその理由である。
【0023】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の成形技術では困難であった、軽量かつ強力な磁力を有し、表面磁束密度の波形が正弦波形に近く、高さ方向の表面磁束密度のバラつきが小さい、内周方向に磁力を発する円筒状磁石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は、磁性材料と樹脂とを含むボンド磁石組成物を円筒状の成形空間に充填する工程と、その成形空間内側に配置された配向用磁石により、上記磁性材料を磁気的に配向させるとともに、溶融されたボンド磁石組成物を上記配向用磁石の軸方向に押し出して成形する工程とを有する円筒状ボンド磁石の製造方法であって、上記配向用磁石は、軸方向にN極とS極が交互に現れるように構成された第一の永久磁石に対し、その第一の永久磁石のN極とS極に同極同士向かい合うN極とS極が交互に現れるように構成された第二の永久磁石を上記第一の永久磁石の軸方向に隣接して配置させてなることを特徴とする円筒状ボンド磁石の製造方法である。
【0025】
上記第一の磁石と上記第二の磁石の間に、外周に向かう径方向にN極とS極が交互に現れるように構成された第三の永久磁石を配置することにより、上記配向用磁石を構成することが好ましい。
【0026】
また、上記課題を解決するため、本発明は、磁性材料と樹脂とを含むボンド磁石組成物が充填される円筒状の成形空間と、その成形空間内側に配置され、上記磁性材料を磁気的に配向させるための配向用磁石とを備え、溶融されたボンド磁石組成物を上記配向用磁石の軸方向に押し出して成形する円筒状ボンド磁石の製造装置であって、上記配向用磁石は、軸方向にN極とS極が交互に現れるように構成された第一の永久磁石と、その第一の永久磁石の軸方向に隣接して配置され、第一の永久磁石のN極およびS極に同極同士向かい合うN極およびS極が交互に現れるように構成された第二の永久磁石と、から構成されていることを特徴とする円筒状ボンド磁石の製造装置である。
【0027】
上記第一の磁石と上記第二の磁石の間に、外周に向かう径方向にN極とS極が交互に現れるように構成された第三の永久磁石が配置されていることが好ましい。
【0028】
上記第一及び第二の永久磁石の磁化方向は、軸方向に対して、0度以上90度未満の角度で外周方向に傾斜されていることが好ましい。上磁性材料が、Sm−Fe−N系の磁性材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、押出成形法により、軽量かつ表面磁束密度が高く、表面磁束密度の波形が正弦波形に近く、高さ方向の表面磁束密度のバラつきが小さい、内周方向に磁力を発する円筒状ボンド磁石ボンド磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、円筒状ボンド磁石を射出成形する従来の金型の一例を示す断面図である。
図2図2は、配向用磁石を構成する小磁石の1ピースの寸法を示す斜視図である。
図3図3は、本発明にかかるボンド磁石を押出成形する製造装置の断面図である。
図4図4は、本発明との比較のための比較例1における配向用磁石の斜視図および断面図である。
図5図5は、本発明の実施例1における配向用磁石の斜視図および断面図である。
図6図6は、本発明の実施例2における配向用磁石の斜視図および断面図である。
図7図7は、本発明の実施例3における配向用磁石の斜視図および断面図である。
図8図8は、本発明の実施例4における配向用磁石の斜視図および断面図である。
図9図9は、各実施例および各比較例における配向用磁石の長手方向に表面磁束密度を測定した結果を示す図である。
図10図10は、各実施例および各比較例における円筒状ボンド磁石の周方向に沿って表面磁束密度を測定した結果を示す図である。
図11図11は、各実施例および各比較例における円筒状ボンド磁石の高さ方向に表面磁束密度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
磁性材料と樹脂とからなるボンド磁石組成物を、磁場配向させながら押出成形により内周方向に磁力を発する円筒状ボンド磁石を得る製造方法において、上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、押出方向の少なくとも1点で複数の磁石のピースの同極同士が反発するように配置させて配向用磁石を構成することにより、本発明を完成するに至った。
【0032】
図3は、本発明にかかる円筒状ボンド磁石を押出成形する製造装置の断面図である。本発明の円筒状ボンド磁石の製造装置について、図3を用いて説明する。図3に示されるように、本発明の円筒状ボンド磁石の製造装置は、磁性材料と樹脂とからなるボンド磁石組成物を加熱して溶融させる可塑化部1と、その可塑化部1に連続して設けられ、溶融されたボンド磁石組成物を円筒状に流動させるスパイダー部2と、そのスパイダー部2に連続して設けられ、流動してきたボンド磁石組成物を円筒状に成形する金型部3と、その金型部3に連続して設けられ、流動してきたボンド磁石組成物を円筒状に成形するともに磁性材料を配向させる配向用磁石が配置された成形部4とを有する。以下、本発明の円筒状ボンド磁石の製造方法および製造装置について詳述する。
【0033】
まず、図3に示されるように、可塑化部1のスクリュー5にて、磁性材料と樹脂とからなるボンド磁石組成物を、加熱することにより溶融させて、流動状態とする。
【0034】
次に、スクリュー5の推進力により、スパイダー部2のスパイダー6と外ダイ7の内面との間に形成された流路8を通じて、スパイダー部2から金型部3に溶融されたボンド磁石組成物を送る。この金型部3では、内ダイ9と外ダイ10とにより、円筒形状の流路11が形成されており、この流路11を通じて、スパイダー部2から送られてきた溶融状態のボンド磁石組成物を成形部4に送る。このとき、溶融状態のボンド磁石組成物は、流路11を通過することにより、目的のボンド磁石の形状である円筒状に成形されていく。
【0035】
そして、成形部4において、溶融状態のボンド磁石組成物は、それに含まれる磁性材料が配向されるとともに、それに含まれる樹脂が硬化されていく。この成形部4では、内ダイ12と外ダイ13とにより形成された流路16が、先の金型部3から送られてきた溶融状態のボンド磁石組成物を、製造装置の外部に送り出す流路であるとともに、溶融状態のボンド磁石組成物の成形空間ともなっている。また、内ダイ12内部には、配向用磁石が埋設されている。そのため、溶融状態のボンド磁石組成物が流路16を通過することにより、磁性材料の粒子は、磁化方向に向かって容易に配向する。この磁性材料が配向磁場のもとを通過した後、樹脂を硬化させることにより、成形品である円筒状ボンド磁石を得る。
【0036】
図5乃至図8は、本発明にかかる配向用磁石の斜視図および、その斜視図中に示した点線部の個所の断面図を、磁化方向を表す矢印とともに示す。本発明にかかる配向用磁石は、図示されたように、1つの極に対して、配向用磁石の長手方向(すなわち、製造装置の押出方向)に対して同じ極同士の2つの磁石を反発させて強力な磁場を取り出している。
【0037】
すなわち、本発明の配向用磁石の構成の仕方には、例えば、以下に詳述する(1)から(4)に述べるように多くの形態が考えられるが、本発明はこれに限定されない。
【0038】
(1)図5に示されるように、軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第一の永久磁石51と、同じく軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第二の永久磁石52の、互いのN極とS極が押出方向に対して平行に反発するように、配向用磁石50を構成する。
【0039】
なお、この円筒状の第一および第二の永久磁石は、磁力が損なわれない程度に内部が中空にされた円筒状磁石であってもよい。このことは、以下に述べる別の実施形態においても同様である。また、図5に示される配向用磁石を一組として、間にヨーク(例えば、鉄が材料)を挟むなどして、複数組を連結させた配向用磁石を構成してもよい。このことは、以下に述べる別の実施形態においても同様である。
【0040】
この図5に示される配向用磁石50を、図5上図中に点線で示される箇所で切断すると、図5下図に示されるように、磁化方向(矢印の先がN極)が、第一の永久磁石51と第二の永久磁石52が接続する境界線で互いに向かい合っている。
【0041】
このような配向用磁石50により、第一の永久磁石51と第二の永久磁石52が接続する面から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かって、強い磁力を放射することができるようになっている。また、図5に示される配向用磁石50の長手方向に表面磁束密度を測定した結果は、例えば、図9内の実施例1として示される。
【0042】
(2)図6に示されるように、軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第一の永久磁石61と、同じく軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第二の永久磁石62の、互いのN極とS極が押出方向に対して斜め(図6下図では、磁石ピースの断面四角形の対角線方向)で、かつ、磁化方向が外周方向に向き互いに反発するように配向用磁石を構成する。
【0043】
なお、ここでいう「斜めの方向」とは、図6下図中の角度θの方向であり、ボンド磁石組成物の押し出し方向(すなわち、配向用磁石の軸方向)に対して、角度にして0度以上90未満の方向をいうものとする。このことは、以下に述べる別の実施形態においても同様である。
【0044】
また、この図6に示される配向用磁石を、図6上図中に点線で示される箇所で切断すると、図6下図に示されるように、磁化方向(矢印の先がN極)が、第一の永久磁石61と第二の永久磁石62が接続する境界線のほうへ外側に向かって斜めに向かい合っている。
【0045】
このような配向用磁石60により、第一の永久磁石と第二の永久磁石が接続する面から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かって、強い磁力を放射することができるようになっている。また、図6に示される配向用磁石60の長手方向に表面磁束密度を測定した結果は、例えば、図9内の実施例2として示される。
【0046】
(3)図7に示されるように、径方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第三の永久磁石73を準備する。その第三の永久磁石73を真ん中に配置して、軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第一、第二の永久磁石71、72を、第三の永久磁石73の軸方向の両側に隣り合って並べることにより、配向用磁石70を構成する。すなわち、第三の永久磁石73を、第一の永久磁石71と第二の永久磁石72とで軸方向に挟むように配置する。
【0047】
この図7に示される配向用磁石を、図7上図中に点線で示される箇所で切断すると、図7下図に示されるように、磁化方向(矢印の先がN極)が、第一、第二の永久磁石71、72と第三の永久磁石73とでは互いに垂直方向であり、第一の永久磁石71と第二の永久磁石72とでは、磁化方向(矢印の先がN極)が、第三の永久磁石の方に向かっており、押出方向に対して平行に互いに向かい合っている。
【0048】
このような配向用磁石70により、第一、第二の永久磁石71、72と第三の永久磁石73が接続する二ヶ所の界面から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かう磁力と、第三の永久磁石73の中心から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かう磁力とによって、配向用磁石70全体でさらに強い磁力を放射することができるようになっている。また、図7に示される配向用磁石70の長手方向に表面磁束密度を測定した結果は、例えば、図9内の実施例3として示される。
【0049】
(4)図8に示されるように、径方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第三の永久磁石83を準備する。その第三の永久磁石83を真ん中に配置して、軸方向にN極とS極が交互に現れるように複数の磁石ピースを並べることにより構成された円柱状の第一、第二の永久磁石81、82を、第三の永久磁石83の軸方向の両側に隣り合って並べることにより、配向用磁石80を構成する。すなわち、第三の永久磁石83を、第一の永久磁石81と第二の永久磁石82とで軸方向に挟むように配置する。
【0050】
ここで、第一、第二の永久磁石81、82は、N極とS極を結ぶ磁化方向が押出方向に対して斜め(図8下図では、磁石ピースの断面四角形の対角線方向)であり、かつ外周方向で第三の磁石83と反発するように配向用磁石を構成する。
【0051】
この図8に示される配向用磁石80を、図8上図中に点線で示される個所で切断すると、図8下図に示されるように、磁化方向(矢印の先がN極)が、第一の永久磁石81と第二の永久磁石82とでは、外周の方で互いに斜め方向に向かい合っており、第一、第二の永久磁石81、82と第三の永久磁石83とでは、磁化方向が、第三の永久磁石83の外周に向かって斜めに向かい合っている。ここでいう第一、第二の永久磁石81、82における斜め方向は、図8下図に示される磁石ピースの断面四角形の対角線方向となっている。
【0052】
このような配向用磁石80により、第一、第二の永久磁石81、82と第三の永久磁石83が接続する二ヶ所の界面から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かう磁力と、第三の永久磁石83の中心から外側(特に、成形部4内の流路16)に向かう磁力とによって、さらに強い磁力を放射することができるようになっている。また、図8に示される配向用磁石80の長手方向に表面磁束密度を測定した結果は、例えば、図9内の実施例4として示される。
【0053】
配向用磁石の長手方向の表面磁束密度を表す図9に示されるように、上述した(1)から(4)の第一および第二の2つの配向用永久磁石の反発により得られる磁力の発生する個所は、ほぼ1点である。しかしながら、その1点で発している磁力は非常に強い。それは、従来の配向用磁石の磁力と比較しても明らかである。本発明にかかる押出成形は、射出成形や圧縮成形のようなバッチ式ではなく、連続成形であるため、そのわずか1点の強力な配向磁場の下を必ず溶融状態のボンド磁石組成物が連続して通過する。そのため、ボンド磁石の成形品は、その長手方向にも均一に高い割合で配向し、高い表面磁束密度を得ることが可能になる。
【0054】
なお、図5乃至8に示される配向用磁石を、射出成形や圧縮成形に適用することは事実上不可能である。なぜなら、射出成形や圧縮成形は、押出成形のように連続してボンド磁石組成物が金型内に充填される方式ではないので、長手方向の1点だけから強力な磁力を発するボンド磁石になってしまい、均一に高い割合で配向した高い表面磁束密度を得ることができないからである。
【0055】
また、配向用の永久磁石に使用する磁石の材料は、Brが1T以上のものが好ましく、例えば、Nd−Fe−B系焼結磁石、Sm−Co系焼結磁石を用いることができる。磁力の大きい磁石を使うと、配向磁場が強くなり、ボンド磁石の表面磁束密度も高く出来る。
【0056】
また、上述のように押出成形で得られたボンド磁石は、必要であれば着磁工程を行ってもよい。着磁を行うことで、表面磁束密度はより高くなる。
【0057】
本発明で用いられる磁性材料は、異方性の磁性材料が適用可能である。異方性の磁性材料としては、フェライト系、Sm−Co系、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系などが挙げられる。上記の磁性材料は1種類単独でも、2種類以上を混合物としても使用可能である。また必要に応じて、耐酸化処理やカップリング処理を施しても良い。
【0058】
本発明で用いられる樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂や、エステル系、ポリアミド系、などの熱可塑性エラストマー、または、エポキシ系やフェノール系などの熱硬化性樹脂、または、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、液状ゴムなどのゴム材料を使用することができる。
【0059】
磁性材料と樹脂の配合比率は、樹脂の種類にもよるが、ボンド磁石組成物全体に対する磁性材料の割合が45〜65Vol%とすることが望ましい。また、酸化防止剤、滑剤等をさらに混合することもできる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0061】
<実施例1>
(磁性材料の準備)
磁性材料は、異方性のSm−Fe−N系磁性材料(平均粒子径3μm)とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
まず、Sm−Fe−N系磁性材料をエチルシリケートおよびシランカップリング剤で表面処理する。表面処理を行ったSm−Fe−N系磁性材料9137gと12ナイロン(PA12)863gをミキサーで混合する。得られた混合粉を、2軸混練機を用いて220℃で混練し、冷却後、適当な大きさに切断しボンド磁石組成物を得る。
(押出成形)
図5は、本実施例1で使用した配向用磁石50を示す図である。図5の配向用磁石50を使用して押出成形を行った。外ダイの内径は19mm、内ダイの外径は17mmである。配向用磁石は、押出方向に配向させた第一の永久磁石51と第二の永久磁石51の同極同士を接着して作製する。第一の永久磁石51と第二の永久磁石51の磁化方向は、軸方向に対して0°とする。第一及び第二の永久磁石51、52のサイズは、各々直径16mm、長さは10mmで、これを内ダイ12内部に埋設する。配向用磁石と流路11を隔てる隔壁は0.5mmである。押出成形時の金型温度は、200℃に設定し、出口温度を165℃まで冷却する。この様にして、外径19mm、内径17mm、長さ1000mm、内周12極の異方性円筒状ボンド磁石を得る。さらに、切断機を用いて長さ20mmに切断する。得られた成形品を着磁ヨークにより着磁する。着磁条件は、静電容量1000μF、電圧2.5kVでありそのとき流れる電流は18.0kAである。
【0062】
<実施例2>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じボンド磁石組成物を作製する。
(押出成形)
図6は、本実施例2で使用した配向用磁石60を示す図である。上記実施例1の配向用磁石50を、図6に示される配向用磁石60に変更する以外は、実施例1と同様にして押出成形を行った。配向用磁石60は、押出方向に対して外周のほうへ向かって斜めの磁化方向を有する第一の永久磁石61と第二の永久磁石62の同極同士を接着して配置する。第一の永久磁石61と第二の永久磁石62の磁化方向は、軸方向から外周のほうへ向かって測った角度(θ)にして50°とする。
【0063】
<実施例3>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じボンド磁石組成物を作製する。
(押出成形)
図7は、本実施例3で使用した配向用磁石70を示す図である。上記実施例1の配向用磁石50を、図7に示す配向用磁石70に変更する以外は、実施例1と同様に押出し成形を行った。配向用磁石70は、押出方向に垂直な径方向に磁化方向を有する第三の永久磁石73を、真ん中に設置し、その左右に押出方向に対して平行な磁化方向を有する、第一、第二の永久磁石71、72の同極同士を、第三の永久磁石73の左右に接着して配置する。第一の永久磁石71と第二の永久磁石72の磁化方向は、軸方向に対して0°とする。
【0064】
<実施例4>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じ磁石組成物を作製する。
(押出成形)
図8は、本実施例4で使用した配向用磁石80を示す図である。上記実施例1の配向用磁石50を、図8に示される配向用磁石80に変更する以外は、実施例1と同様に押出し成形を行った。配向用磁石80は、押出方向に垂直な径方向に磁化方向を有する第三の永久磁石83を真ん中に設置し、その左右に押出方向に対して外周に向かう斜めに磁化方向を有する、第一、第二の永久磁石81、82を左右に接着して配置する。第一、第二、第三の永久磁石81、82、83は、外周に向かう方向で、それぞれ同極同士が向かい合っている。第一の永久磁石81と第二の永久磁石82の磁化方向は、軸方向から外周のほうへ向かって測った角度(θ)にして50°とする。
【0065】
<比較例1>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じボンド磁石組成物を作製する。
(押出成形)
図4は、本発明との比較のための比較例1における配向用磁石40の斜視図および断面図である。なお、図4下図は、図4上図中に点線で示される箇所の断面図である。上記実施例1の配向用磁石50を図4に示される配向用磁石40に変更する以外は、実施例1と同様に押出成形を行った。
【0066】
<比較例2>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じボンド磁石組成物を作製する。
(射出成形)
200℃に加熱した可塑化部でボンド磁石組成物を溶融し、90℃に加熱した金型内にボンド磁石組成物を射出し、成形品を得る。成形空間の形状は、外径(Φ)19mm×内径(Φ)17mm×長さ(L)20mmである。金型の成形空間内に、図5に示す配向用磁石を配置した。配向用磁石のサイズは、直径(r)16mm、長さ(L)20mmである。配向用磁石50と成形空間を隔てる隔壁は、0.5mmである。得られた成形品を着磁ヨークにより着磁する。着磁条件は、静電容量1000μF、電圧2.5kVでありそのとき流れる電流は18.0kAである。
【0067】
<比較例3>
(磁性材料の準備)
実施例1と同じ磁性材料とする。
(ボンド磁石組成物の作製)
実施例1と同じ磁性材料を用いて、実施例1と同じボンド磁石組成物を作製する。
(圧縮成形)
外径が(Φ)19mm、内径が(Φ)17mm、長手方向の長さが20mmの成形空間を持つ金型に、ボンド磁石組成物を充填する。プレス機により500MPaの圧力をかける。金型からボンド磁石成形品を取り出し、150℃のオーブン中で10時間、樹脂を硬化させる。この様にして外径(Φ)19mm×内径(Φ)17mm×高さ20mmの等方性ボンド磁石成形品を得る。得られた成形品を着磁ヨークにより着磁する。着磁条件は、静電容量1000μF、電圧2.5kVでありそのとき流れる電流は18.0kAである。
【0068】
<評価>
(配向磁場の測定)
上記実施例および比較例における配向用磁石の配向磁場を、ガウスメーターにより測定した。測定は、配向用磁石を金型に埋設し、一つのN極のピークに対して、配向用磁石の長手方向にプローブを移動させて行った。図9は、各実施例および各比較例における配向用磁石の長手方向に表面磁束密度を測定した結果を示す図である。
【0069】
(ボンド磁石成形品の径方向の表面磁束密度測定)
上記実施例および比較例で得られた円筒状ボンド磁石について、マグネットアナライザーにより、円筒状ボンド磁石の内周における表面磁束密度を測定した。測定は、マグネットアナライザーの360°回転ステージに円筒状ボンド磁石を固定し、プローブを円筒状ボンド磁石の内周面に接触させ、ステージを360°回転させることで行った。図10は、各実施例および各比較例における円筒状ボンド磁石の周方向に沿って表面磁束密度を測定した結果(30°回転分)を示す図である。
【0070】
(円筒状ボンド磁石の高さ方向の表面磁束密度測定)
円筒状ボンド磁石の高さ方向の表面磁束密度測定は、ガウスメーターによって行った。高さが20mmの円筒状ボンド磁石の1つのN極のピークについて、高さ方向に上から5mmから上から15mmまでプローブを移動させて測定を行った。図11は、各実施例および各比較例における円筒状ボンド磁石の高さ方向に表面磁束密度を測定した結果を示す図である。高さ方向について、表面磁束のバラつきが、5%より小さいものを「○」とし、5%〜20%であるものを「△」とし、20%より大きいものを「×」として、以下の[表1]に評価結果を示す。
【0071】
(密度測定)
上記実施例および比較例で得られたボンド磁石について、アルキメデス法により、密度測定を行った。
【0072】
以上の評価結果を、以下の[表1]にまとめる。
【0073】
【表1】
【0074】
<結果の考察>
本発明の実施例は、比較例1と比べると、全ての実施例において、表面磁束高いことが分かる。これは、本発明の特徴である、長手方向に磁石を反発させて配向用磁石を構成した効果であることが分かる。
【0075】
図11に示されるように、射出成形により円筒状ボンド磁石を成形した比較例2では、高さ方向に表面磁束密度がばらついており、押出成形により円筒状ボンド磁石を成形した他の各実施例のように、高さ方向に表面磁束密度が均一ではない。すなわち、高さの中間点で、表面磁束密度が高くなっている。これにより、本発明の配向用磁石の構成は、押出成形と組み合わせてはじめて効果を発揮することが分かる。
【0076】
また、本発明の実施例は、全ての実施例において、比較例3と比べて密度が小さいことが分かる。すなわち、表面磁束密度は略同じにして、比較的軽い円筒状ボンド磁石を製造することができる。要するに、本発明は、スピンドルモータ用として広く利用されている等方性のNd−Fe−B系磁性材料を圧縮成形して得られた磁石と比べて、磁力を低下させることなく軽量化できることが分かる。
【0077】
実施例3および4は、表面磁束密度が高い。これは、3つの永久磁石により配向用磁石を構成することにより、図9に示されるように、長手方向の広い領域にわたって高い磁場が発生していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、軽量かつ表面磁束密度が高く、表面磁束密度の波形が正弦波形に近く、高さ方向の表面磁束密度のバラつきが小さい、内周方向に磁力を発する円筒状ボンド磁石を提供することができる。内周方向に磁力を発する円筒状ボンド磁石は、ハードディスクドライブや光メディア等のスピンドルモータに利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・可塑化部、2・・・スパイダー部、3・・・金型部、4・・・成形部、5・・・スクリュー、6・・・スパイダー、8、11、16・・・ボンド磁石組成物の流路、14、40、50、60、70、80・・・配向用磁石、7、10、13・・・外ダイ、9、12・・・内ダイ、15・・・ホッパー、51、61、71、81・・・第一の永久磁石、52、62、72、82・・・第二の永久磁石、53、63、73、83・・・第三の永久磁石。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11