(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態により説明する。
なお、本実施形態の説明において「金属微粒子」とは、「金属一次粒子であって単分散状態であるもの」を示し、「金属凝集粒子」とは、複数の金属一次粒子が凝集して形成された凝集粒子を示している。また「金属粒子」とは、これら金属微粒子と金属凝集粒子を包含したものを示している。また、「金属一次粒子」と記した場合には、当該金属一次粒子は単分散であるか凝集状態であるかは限定しないものとする。
また、「平均粒子径」とは上記「金属粒子」の粒子径の平均値を示し、後述の分散液、樹脂組成物、樹脂複合体においては、「平均分散粒子径」と同義である。これに対して、「平均一次粒子径」は上記「金属一次粒子」の粒子径の平均値を示す。
【0013】
[可視近赤外光遮蔽黒色材料]
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色材料(以下、単に「黒色材料」ということがある)は、平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の金属粒子を含有し、前記金属粒子が、0.0005体積%となるように分散させた分散液において、光路長を10mmとした際の吸光度が下記条件(1)〜(3)を満たす可視近赤外遮蔽黒色材料である。
(1)波長400nmから1300nmまでの平均吸光度が0.8以上
(2)波長555nmでの吸光度が0.8以上
(3)波長1300nmでの吸光度が0.3以上
従来も金属粒子を用いた黒色膜は存在したが、可視光域での光遮蔽だけが高いものであり、可視光域、近赤外光域の両方で高い遮蔽能力を示す金属粒子含有黒色材料は存在していなかった。本発明は、金属粒子の粒子径とその形態を規定することで光を吸収する波長をコントロールし、可視光域に加え近赤外光域の両方で高い遮蔽能力を示すものである。
【0014】
平均粒子径を1nm以上かつ300nm以下と限定した理由は、平均粒子径を上記の範囲内とすることで所望の可視近赤外光遮蔽黒色材料を容易に得ることができるからである。即ち、平均粒子径が1nm以上であれば、金属粒子が可視光や近赤外光に対して十分な相互作用を有することから、可視光及び近赤外光の遮蔽性が高い黒色材料を得ることができ、一方平均粒子径が1nm未満では、可視光や近赤外光の波長と比較して小さすぎるために透過光量が増加して所望の黒色度が得られないおそれがある。また平均粒子径が300nm以下であれば、金属粒子による光散乱は無視できる範囲にあるので十分な黒色度を有する黒色材料を得ることができるのに対し、平均粒子径が300nmを超えると、散乱が生じて所望の黒色度を得難くなるおそれがある。
【0015】
平均粒子径は3nm以上かつ100nm以下であることが好ましく、3nm以上かつ60nm以下がより好ましく、5nm以上かつ60nm以下がさらに好ましく、10nm以上かつ40nm以下が特に好ましい。
ここで平均粒子径は、種々の形状を持つ金属粒子を平面に投影して得られる形状に対してそれぞれ同一の面積となるような円を規定し、その円の直径の平均値とした。なお、金属粒子が一次粒子である場合には、当該金属粒子をTEM(透過型電子顕微鏡)で直接観察した画像から面積を求め、算出することができる。また金属粒子が凝集粒子の場合には、当該金属粒子を用いて黒色膜を形成し、その黒色膜をTEMで観察した画像から凝集粒子の面積を求め、算出することができる。なおここで、黒色膜を観察する理由は、TEM観察においては試料作製時に凝集粒子が分散してしまうために、凝集粒子をそのままの(凝集状態を維持した)状態で試料化することが難しく、結果として凝集粒子としての測定が難しいためである。また、平均値を求めるためには、TEMの観察画像から任意の粒子を例えば100個選び、その平均値を求めればよい。
【0016】
また、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長400nmから1300nmまでの平均吸光度が0.8以上と限定した理由は、平均吸光度が0.8以上であれば可視光から近赤外光の領域での十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、平均吸光度が0.8未満では、光の吸光性が不足して可視光から近赤外光の領域での十分な光遮蔽性が得られない。同様の条件における波長400nmから1300nmまでの平均吸光度は1.0以上であることが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましい。
なお、波長400nmから1300nmまでの平均吸光度は、例えば金属粒子が上記の条件となるように分散させた分散液の吸光度を、分光光度計を用いて上記条件により1nmないし2nm間隔で測定し、得られた各波長の吸光度を算術平均して求めることができる。
【0017】
また、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長555nmでの吸光度が0.8以上と限定した理由は、波長555nmでの吸光度が0.8以上であれば、可視光域において十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、吸光度が0.8未満では、可視光域での吸光性が不足して十分な可視光遮蔽性即ち黒色度が得られない。同様の条件における波長555nmでの吸光度は1.0以上であることが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましい。
【0018】
また、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長1300nmでの吸光度が0.3以上と限定した理由は、波長1300nmでの吸光度が0.3以上であれば、近赤外光域において十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、吸光度が0.3未満では、近赤外光域での吸光性が不足して十分な近赤外光遮蔽性が得られない。同様の条件における波長1300nmでの吸光度は0.5以上であることが好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。
【0019】
また、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長400nmから800nmまでの平均吸光度は0.8以上であることが好ましい。波長400nmから800nmまでの平均吸光度が0.8以上であれば可視光領域での十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、平均吸光度が0.8未満では、光の吸光性が不足して可視光領域での十分な光遮蔽性が得られない。同様の条件における波長400nmから800nmまでの平均吸光度は1.0以上であることがより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.4以上が特に好ましい。
【0020】
なお、これらの4範囲の吸光度(波長400nmから1300nmまでの平均吸光度、波長555nmでの吸光度、波長1300nmでの吸光度、波長400nmから800nmまでの平均吸光度)のいずれかが特に高い場合には、可視近赤外光遮蔽黒色材料としての光吸収のバランスが崩れ、いわゆる「色味」が発生する可能性が生じるため、バランスが取れていることが好ましい。
この観点から、波長400nmから1300nmまでの平均吸光度(C)と波長400nmから800nmまでの平均吸光度(D)との比率C/Dは0.6以上であることが好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。
また、波長555nmにおける吸光度(E)と波長1300nmにおける吸光度(F)との比率F/Eは0.2以上であることが好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。
【0021】
金属粒子においては、粒子径や粒子形状を制御することで金属粒子が光を吸収する波長が変わることが知られている。そこで、金属粒子の粒子径とその形態を規定することで光を吸収する波長をコントロールし、可視光域に加え近赤外光域の両方で高い遮蔽能力を示す可視近赤外光遮蔽黒色材料を得ることができる。
このような金属粒子としては、(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子と、(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子の少なくともいずれかと、が混合されていることが好ましい。
【0022】
このように、(1)アスペクト比が2未満の金属微粒子であって、異なる平均一次粒子径(1nm以上30nm以下と、30nmを超えかつ300nm以下)を有する金属微粒子を組み合わせる場合、(2)平均一次粒子径とアスペクト比が共に異なる金属微粒子(平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子と、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子)を組み合わせる場合、(3)アスペクト比が2未満の金属粒子であって、微小径(平均一次粒子径が1nm以上30nm以下)の金属微粒子と、大粒径(平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下)の金属凝集粒子を組み合わせる場合、(4)平均一次粒子径とアスペクト比が共に異なる金属粒子(平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子と、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子)を組み合わせる場合、において、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色材料を好適に得ることができる。
【0023】
ここで金属微粒子および金属凝集粒子のアスペクト比は、金属微粒子または金属凝集粒子を平面に投影して得られる形状において、最も長い部分をの長さを長辺Lとし、該長辺Lに対して直角方向の長さを短辺Wとして、L/Wの値として算出した。なお、構成粒子が金属微粒子すなわち一次粒子である場合には、当該金属微粒子をTEMで直接観察した画像が平面投影画像となることから、このTEM画像から粒子径やアスペクト比を算出することができる。また金属凝集粒子の場合には、当該金属凝集粒子をTEMで直接観察しても良いが、凝集状態が不明確となる場合には、当該金属凝集粒子を用いて黒色膜を形成し、その黒色膜をTEMで観察した画像から、同様にして算出しても良い。
また金属微粒子ないしは金属凝集粒子の形状は、球状、楕円状、角柱状、棒状、板状(三角板、六角板等)、これらが連結した不定状、等の中から上記の組み合わせに適した形状のものを選択することにより、本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料を得ることができる。例えば、アスペクト比が2未満の金属微粒子や金属凝集粒子としては、球状の他、歪んだ球状、球状に近い楕円状、長さの短い角柱状、板状(三角板、六角板等)、多角形状や角が取れた多角形状等でもよい。また、アスペクト比が2以上の金属微粒子や金属凝集粒子としては、楕円状、角柱状、棒状等を選択することができる。なお、例えば多角形や円形板状粒子の場合、平面投影方向(観察方向)によってアスペクト比が2未満の場合と2以上の場合とに分けて観察される場合があり得るが、このような場合は観察結果のままとした。
【0024】
また、前記各金属粒子における平均粒子径の好ましい範囲は次の通りである。
まず、(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子における平均一次粒子径は1nm以上30nm以下であればよいが、3nm以上30nm以下であればより好ましく、5nm以上30nm以下であればさらに好ましく、5nm以上20nm以下が特に好ましい。
【0025】
次に、(B)の内、平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子における平均一次粒子径は30nmを超え300nm以下であればよいが、50nm以上200nm以下であればより好ましく、80nm以上150nm以下であればさらに好ましい。
また(B)の内、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子における平均一次粒子径は1nm以上300nm以下であればよいが、5nm以上150nm以下であればより好ましく、10nm以上120nm以下であればさらに好ましく、20nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0026】
また(B)の内、金属一次粒子が凝集してなる金属凝集粒子は、アスペクト比が2未満でかつ平均凝集粒子径は30nm以上300nm以下であればよいが、50nm以上200nm以下であればより好ましく、80nm以上150nm以下であればさらに好ましい。
また(B)の内、金属一次粒子が凝集してなる金属凝集粒子は、アスペクト比が2以上でかつ平均凝集粒子径は1nm以上300nm以下であればよいが、5nm以上150nm以下であればより好ましく、10nm以上120nm以下であればさらに好ましい。
【0027】
なおここで、(B)における金属粒子が金属微粒子(単分散した一次粒子)、金属凝集粒子のいずれでもよい理由は、次の通りである。
粒子径が1nmから数100nm程度の金属微粒子(ナノメートルサイズの金属微粒子)は、金属の表面プラズモン共鳴吸収により様々な色調を呈することが知られており、本実施形態の黒色膜においてもこの表面プラズモン吸収を利用している。ここで、金属の表面プラズモン共鳴吸収は、金属凝集粒子であっても金属微粒子と同様の作用効果を有している。従って、金属凝集粒子であっても、その平均凝集粒子径が1nmから数100nm程度であれば、同様の表面プラズモン吸収を起こしうるからである。
また、金属微粒子は、その寸法や形状が変わると誘電関数が変化して微粒子が吸収する光の波長が変わるが、一次粒子ではなく、凝集粒子の寸法や形状変化でも誘電関数に影響を与え、吸収する光の波長を変えられる場合があるためである。
【0028】
また、前記(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子の体積V
Aと、前記(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子、を合わせた金属粒子の合計の体積V
Bとの比V
A/V
Bは、5/95以上かつ95/5以下であることが好ましい。V
A/V
Bがこの範囲内にあることで、可視光及び近赤外光の遮蔽性が高い黒色材料を得ることができる。
V
A/V
Bの範囲は、10/90以上かつ90/10以下がより好ましく、20/80以上かつ80/20以下であればさらに好ましい。
この体積比は、例えばTEMの観察画像から任意の金属粒子100個を選び、その各粒子の形状と寸法から、それぞれの粒子が上記どの粒子に該当するか確定すると共にその体積を求め、算出すればよい。
【0029】
本実施形態における金属粒子は、白金、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマスからなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましく、銀、銅、ニッケル、錫、コバルト、鉄からなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましく、銀、銅、ニッケル、錫からなる群から選択される1種又は2種以上であることがさらに好ましい。
【0030】
上記金属粒子の中でも、(1)銀又は銀を含む合金及びこれらの混合物が特に好ましい。
銀は可視光、近赤外光で誘電率の実数部が負であり光吸収特性に優れている。また、従来、粒子径が1nmから数100nm程度の金属粒子(ナノメートルサイズの金属粒子)は、金属の表面プラズモン吸収により様々な色調を呈することが知られており、また、この色調は微粒子の組成や粒子径により変化することも知られている。銀はナノメートルサイズの金属粒子で可視光域でのプラズモン吸収が高いことから、銀又は銀を含む合金及びこれらの混合物が好ましい。
【0031】
また、上記金属粒子の中でも、(2)銀及び銀錫合金部を含むものが特に好ましい。
銀は単体での吸収特性に優れているが、可視近赤外光遮蔽黒色材料が銀微粒子のみから構成されていると、反射率が高くなって黒色度が低下したり、高温、例えば二百数十度以上の焼成で吸収スペクトルが変化してOD値が低下したりする場合がある。金属粒子を合金化することで、合金化により発生した散乱の効果で電子の移動が単体金属の場合よりも阻害されるため、黒色遮光膜の反射率を低下させることができる。
【0032】
本実施形態において、銀錫合金部とは、例えば次のものであって、銀錫金属間化合物の結晶構造を有するもの(以下、「銀錫金属間化合物相」とも言う)だけではなく、銀の結晶構造を有するもの(以下、「銀相」とも言う)を含んでもよい。
まず、銀錫金属間化合物相を有するものとしては、銀錫合金を化学式Ag
1-XSn
Xで表した場合のXの範囲としては、0.118≦X≦0.2285のζ相(空間群P6
3/mmc)及び0.237≦X≦0.25のε相(空間群Pmmn)が知られている(Binary Alloy Phase Diagram,p.94−97による)。これらの相の組成と空間群を、X線回折のICDDカード(JCPDSカード)と比較すると、ε相のX線回折データがAg
3Sn(IDCC 71−0530)、ζ相のX線回折データがAg
4Sn(IDCC 29−1151)に相当すると考えられる。従って、斜方晶系であるε相(Ag
3Sn)又は六方晶系であるζ相(Ag
4Sn)の構造を有する銀錫合金部を有する金属粒子であれば、化学的安定性と黒色度とを満足することができる。
【0033】
次に、銀相、すなわち銀の結晶構造を有するものとしては、銀中に銀の結晶構造を保った状態で錫が固溶したもの、すなわち銀結晶中の銀原子の一部を錫原子が置換したものとなるが、この場合の銀錫合金を化学式Ag
1-YSn
Yで表した場合、0<Y≦0.115であり、前記文献では(Ag)相(以下の表記で示される空間群:立方晶系)で示される。
【0035】
この範囲を、Ag
ZSn(Zは実数)で表記すれば、7.70≦Z<∞(無限大)となる。
なお、Y=0(Ag
1Sn
0)あるいはZ=∞(Ag∞Sn)はAg単独相に相当するため、ここで示す銀錫合金部としての規定範囲からは外してある。ただし、本実施形態の黒色材料における金属粒子としては、前記のように銀又は銀を含む合金及びこれらの混合物が特に好ましいことから、黒色膜中にはY=0のものを含んでもかまわない。
なおここで、結晶構造の同定には、通常行われるように粉末X線回折を用いることができる。試料には、例えば可視近赤外光遮蔽黒色材料の分散液から固液分離により回収した粉末等を用いればよい。
【0036】
金属粒子の粒子径や粒子形状を制御しながら、酸化還元電位が大きく異なる錫と銀との合金を製造する方法は従来見出されていなかったが、本発明者は液相反応法を用い、反応温度、pH、攪拌効率といった反応条件を厳密に制御することで粒子径や粒子形状を制御しながら銀錫合金を生成させることに成功した。
金属粒子に銀錫合金粒子を含むことで、遮光性、黒色度、吸光度の波長依存性の三者をバランス良く得ることができる。
吸収特性が優れた銀に、黒色度や耐熱性が優れた銀錫合金を加えると、吸収特性と黒色度とを兼ね備えた好ましい可視近赤外光遮蔽黒色材料を得ることができる。
【0037】
可視近赤外光遮蔽黒色材料を構成する金属元素中の銀元素の含有量は、30質量%以上かつ100質量%以下であることが好ましい。この金属粒子中の銀元素の含有量は、例えばEPMA(電子線マイクロアナライザー)で測定することができる。金属粒子中の銀元素の含有量はEPMAの測定値から銀元素の重量/金属元素の重量の総和で算出することができる。なお、前式の分母は金属元素のみの重量であって、例えば金属粒子の表面酸化に起因する酸素や、金属粒子の周囲に付着している分散剤等に起因する炭素等、金属以外の元素は含まない。
なお、銀元素含有量は、通常はICP発光分析等の湿式化学分析で求めることが多いが、金属元素のみの分析であれば、EPMAを用いても問題なく測定できる。試料には、可視近赤外光遮蔽黒色材料の分散液から固液分離により回収した粉末等を圧粉体に成形したもの等を用いることができる。
【0038】
上記金属粒子中の銀元素の含有量は45質量%以上かつ100質量%以下が好ましく、60質量%以上かつ100質量%以下がより好ましく、70質量%以上かつ98質量%以下がさらに好ましく、70質量%以上かつ95質量%以下が特に好ましい。
【0039】
[可視近赤外光遮蔽黒色材料分散液]
本実施形態の可視近赤外黒色材料分散液(以下、単に「分散液」ということがある)は、前述の本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料を分散媒中に分散させた分散液である。
この分散液中における黒色材料の含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下が好ましい。
ここで、黒色材料の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下と限定した理由は、この範囲が黒色材料が良好な分散状態を取りうる範囲のためである。即ち、含有率が1質量%以上であれば、この分散液を用いる場合において黒色材料として十分な効果を得ることができるからであり、一方1質量%未満であると、分散媒等の黒色材料以外の成分が多すぎるために、黒色材料としての効果が低下し、多量の分散液が必要となるためである。また、黒色材料の含有率が80質量%以下であれば、分散液の粘度が分散液として取り扱うための良好な範囲内に収めることができるからであり、一方80質量%を超えると、黒色材料の濃度が高くなり過ぎてペースト状態となり、分散液としての特徴を消失するからである。
分散液中における黒色材料の含有率は、より好ましくは5質量%以上かつ50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上かつ40質量%以下である。
【0040】
(分散媒)
分散媒は、基本的には、水、有機溶媒のうち少なくとも1種以上を含有したものである。なお、複数の分散媒を用いる場合には、当該分散媒同士が相溶性を有することが好ましい。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル、γ−ブチロラクトン等の他のエステル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;及びN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
上記の有機溶媒中、非水溶性有機溶媒を用いた場合の分散液における含水率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
分散液の含水率が5質量%を超えると、黒色材料を分散した分散液を非水系の樹脂成分あるいは樹脂形成成分と混合した場合に、分散液と樹脂成分あるいは樹脂形成成分とが分離し易くなり、安定した混合物(塗料)が得難くなる場合がある。すなわち、分散液の含水率を5質量%以下とすることで、種類が多い非水系の感光性樹脂の中から所望の露光、現像条件、膜物性等に合ったものを適宜選択することができ、分散液や塗膜における制約もなく、これらの設計の自由度を広げることができる。
【0042】
(分散剤及び分散助剤)
本実施形態の分散液では、黒色材料の分散性の制御、分散安定性の向上のために、分散剤や分散助剤、表面処理剤を併用することが好ましい。特に本実施形態の黒色材料である金属粒子は、単分散の金属微粒子と金属凝集粒子において、前記寸法と形状とを厳密に制御するため、分散性の制御が重要となる。そこで、これらの分散剤や分散助剤、表面処理剤(以下、「分散剤等」と表記する場合がある。)により金属粒子の表面を処理することで、分散性を制御する。なおここで、分散剤は黒色材料の分散安定性を確保するための、黒色材料とは全く構造の異なるポリマー等であり、分散助剤とは黒色材料の分散性を高めるための顔料誘導体をいう。
これらの分散剤等の種類や量は、分散媒の種類や分散方法に合わせて、公知のものの中から選択すればよいが、後述のように、この分散液を用いて黒色樹脂組成物や黒色膜を得る場合には、これら黒色樹脂組成物や黒色膜に用いる樹脂形成成分や樹脂成分に対しても良好な分散性を有する分散剤等を用いることが好ましい。このように、分散剤等の種類や量とともに、分散方法や分散条件を併せて調整することにより、黒色材料である金属粒子を分散媒、樹脂形成成分や樹脂成分に良好に分散させることにより、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色材料分散液や黒色樹脂組成物、黒色膜を得ることができる。
【0043】
これら分散剤等の中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。
一般的に高分子分散剤の分類としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤、ポリカルボン酸塩、ポリアルキル硫酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、分散媒である有機溶剤に対する相溶性や、樹脂として使用する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂との相溶性が高く、従って分散媒や樹脂成分に対しての黒色材料分散性に優れることを考慮すると、ウレタン系分散剤が好ましい。
【0044】
また、高分子分散剤を製法に依存した構造で分類した場合、ランダムコポリマー、櫛型コポリマー、ABA型ブロックコポリマー、BAB型ブロックコポリマー、両末端親水基含有ポリマー、片末端親水基含有ポリマーなどがある。これらの中では、分散媒である有機溶剤に対する相溶性や、樹脂として使用する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂との相溶性が高く、従って分散媒や樹脂成分に対しての黒色材料分散性に優れることを考慮すると、ランダムコポリマー、櫛形ポリマーが好ましい。
これらの条件を満たす分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)等を挙げることができる。これらの分散剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
また、前記表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤等を挙げることができる。
【0046】
また、上記分散剤等の黒色材料に対する添加量は、黒色材料を100質量部に対して2質量部以上かつ50質量部以下であることが好ましい。
ここで、分散剤等の添加率を2質量部以上かつ50質量部以下と限定した理由は、この範囲が黒色材料が良好な分散状態を取りうる範囲のためである。即ち、分散剤等の添加率が2質量部以上50質量部以下の範囲であれば、黒色材料を分散媒中に均一かつ安定した状態で分散させることができる。一方、分散剤等の添加量が2質量部未満であると、黒色材料の分散に必要な分散剤等の量が足りずに分散液の分散性が保持できず、黒色材料である金属粒子の凝集等が発生するために、黒色材料の光吸収特性が変化する結果、黒色材料としての特性が低下する場合がある。また、分散剤等の添加量が50質量部を超えると、黒色微粒子に対して分散剤等の量が過剰となり、分散剤同士の相互作用などにより分散液の分散性が保持できず、黒色材料である金属粒子の凝集等が発生するために、黒色材料の光吸収特性が変化する結果、黒色材料としての特性が低下する場合がある。さらに、過剰な分散剤等のために、この分散液を用いて形成した黒色膜の強度が低下したり、黒色膜のパターン形成性が低下する可能性もある。
上記分散剤等の黒色材料に対する添加量は、黒色材料100質量部に対して3質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上30質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上20質量部以下が特に好ましい。
【0047】
さらに、本実施形態の黒色材料を形成する金属粒子の組成、一次粒子径や凝集状態、黒色材料を分散混合させる分散媒、樹脂形成成分や樹脂成分の組成により、分散剤等の添加量にはより好適な範囲が存在する。その理由として、この黒色材料分散液を用いて形成された黒色樹脂組成物から、塗膜を形成し、さらに可視近赤外光遮蔽黒色膜を形成する場合において、分散液中、樹脂組成物中、塗膜中や可視近赤外光遮蔽黒色膜中における黒色材料の分散性を確保するとともに、場合によっては本実施形態を満たす範囲での金属微粒子の凝集粒子を得るためには、金属微粒子に対する分散剤等の添加量を厳密に調整しておく必要があるためである。
【0048】
この分散液においては、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた場合に、光路長を10mmとした際の波長400nmから1300nmまでの平均吸光度は0.8以上であることが好ましい。ここで、波長400nmから1300nmまでの平均吸光度が0.8以上であると限定した理由は、平均吸光度が0.8以上であれば可視光から近赤外光の領域での十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、平均吸光度が0.8未満では、光の吸光性が不足して可視光から近赤外光の領域での十分な光遮蔽性が得られないおそれがある。同様の条件における波長400nmから1300nmまでの平均吸光度は1.0以上であることがより好ましく、1.1以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましい。
【0049】
また、この分散液において、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた場合に、光路長を10mmとした際の波長555nmでの吸光度は0.8以上であることが好ましい。ここで、波長555nmでの吸光度が0.8以上であると限定した理由は、波長555nmでの吸光度が0.8以上であれば、可視光域において十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、吸光度が0.8未満では、可視光域での吸光性が不足して十分な可視光遮蔽性即ち黒色度が得られないおそれがある。同様の条件における波長555nmでの吸光度は1.0以上であることがより好ましく、1.1以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましい。
【0050】
また、この分散液において、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長1300nmでの吸光度は0.3以上であることが好ましい。ここで、波長1300nmでの吸光度が0.3以上であると限定した理由は、波長1300nmでの吸光度が0.3以上であれば、近赤外光域において十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、吸光度が0.3未満では、近赤外光域での吸光性が不足して十分な近赤外光遮蔽性が得られないおそれがある。同様の条件における波長1300nmでの吸光度は0.5以上であることがより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、1.0以上が特に好ましい。
【0051】
また、この分散液において、金属粒子が0.0005体積%となるように分散させた分散液を用い、光路長を10mmとした際の波長400nmから800nmまでの平均吸光度は0.8以上であることが好ましい。波長400nmから800nmまでの平均吸光度が0.8以上であれば可視光領域での十分な光遮蔽性が得られるからであり、一方、平均吸光度が0.8未満では、光の吸光性が不足して可視光領域での十分な光遮蔽性が得られないことがある。同様の条件における波長400nmから800nmまでの平均吸光度は1.0以上であることがより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.4以上が特に好ましい。
【0052】
このように、可視近赤外遮蔽黒色材料分散液の吸光度を上記の範囲にすることで、可視光及び近赤外光の両方で高い光吸収性を有する分散液を得ることができる。
なお、これらの4範囲の吸光度のいずれかが特に高い場合には、可視近赤外光遮蔽黒色材料としての光吸収のバランスが崩れ、いわゆる「色味」が発生する可能性が生じるため、バランスが取れていることが好ましい。
この観点から、この分散液における波長400nmから1300nmまでの平均吸光度(C)と波長400nmから800nmまでの平均吸光度(D)との比率C/Dは0.6以上であることが好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。
また、この分散液における波長555nmにおける吸光度(E)と波長1300nmにおける吸光度(F)との比率F/Eは0.2以上であることが好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。
【0053】
なお、本可視近赤外遮蔽黒色材料分散液中に分散した金属粒子においても、前記可視近赤外遮蔽黒色材料と同様の粒子径および粒子形状を有することが好ましい。すなわち、平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下であって、(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子と、(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子の少なくともいずれかと、が混合されていることが好ましい。
【0054】
同様に、前記(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子の体積V
Aと、前記(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子、を合わせた金属粒子の合計の体積V
Bとの比V
A/V
Bは、5/95以上かつ95/5以下であることが好ましい。V
A/V
Bがこの範囲内にあることで、可視光及び近赤外光の遮蔽性が高い黒色材料を得ることができる。
V
A/V
Bの範囲は、10/90以上かつ90/10以下がより好ましく、20/80以上かつ80/20以下であればさらに好ましい。
分散液中の金属粒子がこれらの条件を満たすことにより、可視光域に加え近赤外光域の両方で高い遮蔽能力を示す黒色度の高い分散液を得ることができる。
【0055】
なおここで、分散液中の金属粒子の平均粒子径とは、分散液中に含まれる金属微粒子(単分散一次粒子)と金属複合粒子を合わせた粒子の平均粒子系であるから、金属粒子の平均分散粒子径と同意である。
一方、この平均分散粒子径の下限値は実質的に3nmである。その理由として、本実施形態の黒色材料における金属微粒子の平均一次粒子径が1nm以上であり、また、分散に際して発生する多少の凝集を避けることができないため、平均分散粒子径が3nm未満の分散液を得ることは困難なためである。なお、平均分散粒子径が300nmを上回ると、黒色材料分散液中での金属粒子の分散が十分でなくなる結果、黒色材料自体の場合と同様に遮光性が低下したり、微粒子の散乱により外観が白っぽくなり黒色度が低下するおそれがある。
従って、平均分散粒子径は3nm以上かつ300nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上かつ60nm以下がさらに好ましく、5nm以上かつ40nm以下が特に好ましい。
【0056】
また、本可視近赤外遮蔽黒色材料分散液中に分散した金属粒子の90%累積分散粒子径は1μm以下であることが好ましい。90%累積粒子径が1μmを上回ると、黒色材料分散液中での微粒子の分散が十分でなくなるために、遮光性が低下したり、金属粒子の散乱により外観が白っぽくなり黒色度が低下するおそれがある。
上記90%累積体積粒子径は0.6μm以下であることが好ましく、0.4μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。
【0057】
上記分散液中の平均分散粒子径及び粒度分布指標の測定方法については、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いてこの分散液の粒度分布を測定し、得られた分布結果より算術平均により求めた体積平均粒子径(MV値)を平均分散粒子径とした。一方、粒度分布指標D90%は、粒度を累積分布で示した場合に、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)をD90%値とした。
また、後述の黒色樹脂組成物における平均分散粒子径及び粒度分布指標についても、同様の測定方法により求めた。
【0058】
(可視近赤外遮蔽黒色材料分散液の製造方法)
本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料分散液は、前述の可視近赤外遮蔽黒色材料と、必要に応じて分散剤や分散助剤等の成分とを、分散媒に加えて混合分散することにより調製することができる。混合分散方法は、黒色材料等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散処理方法より選択すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
[可視近赤外遮蔽黒色樹脂組成物]
本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色樹脂組成物(以下、単に「黒色樹脂組成物」ということがある)は、「本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料と樹脂形成成分とを少なくとも含む」、あるいは、「本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料と樹脂成分と樹脂成分が可溶な溶媒とを少なくとも含む」組成物である。なお、樹脂形成成分とは、樹脂成分を形成するための成分である。
ここで、可視近赤外遮蔽黒色樹脂組成物を構成するための主たる成分は次に示す[A]から[E]の5種類である。なお、[B]と[E]は異なるものとする。
[A]黒色材料
[B]黒色材料分散媒
[C]樹脂形成成分
[D]樹脂成分
[E]樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒
【0060】
本実施形態の黒色樹脂組成物は主にこの5成分の組み合わせにより構成されており、その組み合わせは次の(1)から(7)のとおりとなる。なお、必要に応じて添加することが可能な[A]から[E]以外の成分、すなわち分散剤、分散助剤や表面処理剤については、この説明では省略する。
(1):[A]+[C]
最小限の組み合わせである2成分系であり、液状の樹脂形成成分中に黒色材料を分散したものと捉えることができる。この場合、[C]は液状の必要がある。
(2):[A]+[B]+[C]
3成分系であり、前記「黒色材料分散液」と、樹脂形成成分とを混合したものと捉えることができる。一般的には[C]は液状の必要があるが、[C]が[B]に可溶の場合には、[C]は固体状であってもかまわない。
(3):[A]+[C]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂形成成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。[C]は[E]に溶解させているため、液状でも固体状でもかまわない。
(4):[A]+[D]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。なお[D]は固体であるから、[D]が存在する限り[E]は不可欠である。
(5):[A]+[B]+[D]
[D]が[B]に可溶な場合にのみ可能な、例外的な組み合わせであって、前記「黒色材料分散液」中に、樹脂成分を溶解したものと捉えることができる。この場合のみ、例外的に[E]は不要である。
(6):[A]+[B]+[C]+[E]
(7):[A]+[B]+[D]+[E]
4成分系であり、前記「黒色材料分散液」に、樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液を混合したものと捉えることができる。この場合、[B]と[E]は相溶性が高い必要がある。両者の相溶性が低い場合、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」それぞれは安定に存在しても、両者を混合した際に、相分離や粒子成分の凝集等が起こるため好ましくない。なお、[B]と[E]が同一の場合には、(6)は(2)又は(3)に、(7)は(4)又は(5)に、それぞれ含めるものとする。
【0061】
上記黒色材料[A]、黒色材料の分散媒[B]、樹脂形成成分[C]、樹脂成分[D]、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒[E]、の内、黒色材料、黒色材料の分散媒、については上述していることから、ここでは樹脂形成成分、樹脂成分、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒、について説明する。
【0062】
(樹脂成分)
本実施形態における樹脂成分としては、後述の黒色膜を形成するために、黒色材料である金属粒子が均一に分散された状態で硬化するものであって、形成された黒色膜に要求される特性に適したものを選択すればよい。この樹脂成分としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。
【0063】
前記電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線、例えば紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋又は重合反応にて硬化する樹脂を意味するものであって、ラジカル重合型のアクリル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂や、カチオン重合型のエポキシ樹脂、ビニルエーテル系樹脂、オキセタン類、グリシジルエーテル類を例示することができる。
上記アクリル系樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート系等を例示することができる。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。以下同様である。
【0064】
また、前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等を例示することができる。
また、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
さらに、本実施形態の黒色膜をブラックマトリクス等とする場合には、樹脂成分の原料である樹脂形成成分としてアルカリ可溶性樹脂を選択し、この樹脂形成成分を用いて形成される樹脂を樹脂成分とすることが好ましい。なお、詳細は後述する。
【0065】
(樹脂形成成分)
樹脂形成成分とは、前述の樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーが含まれる。すなわち、前記樹脂成分として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能であることから、これら樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくともいずれかもこれらに含まれる。
【0066】
樹脂成分として電離放射線硬化性樹脂を選択する場合、樹脂形成成分である前記電離放射線重合性モノマー(単量体)としては、分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーである多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有するモノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロへキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロへキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシド
類、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等グリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等ビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等オキセタン類等が挙げられる。これらの電離放射線重合性モノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記電離放射線重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0067】
前記電離放射線重合性プレポリマー(オリゴマーも包含する)としては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル系等の分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性オリゴマー、あるいはノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等のエポキシ系樹脂等の分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等が挙げられる。これらの電離放射線重合性プレポリマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なおここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0068】
また、前記樹脂成分として熱硬化性樹脂である前記のフェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等を選択する場合、樹脂形成成分としては、これら熱硬化性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
さらに、前記樹脂成分として熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を選択する場合にも、樹脂形成成分としては、これらの熱可塑性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
【0069】
さらに、これらの原料化合物や重合性樹脂モノマー、オリゴマー、プレポリマーから樹脂を反応形成させるために添加する、反応剤、反応開始剤や、重合剤、重合開始剤等を、樹脂形成成分に含めてもよい。
【0070】
ここで、黒色樹脂組成物における樹脂形成成分の含有量は、5質量%以上かつ70質量%以下とすることが好ましく、10質量%以上かつ50質量%以下とすることがより好ましい。
この範囲よりも樹脂形成成分が多すぎると、本黒色樹脂組成物を用いて黒色膜を形成したときに、樹脂成分単位体積中の黒色材料存在量が不足するために十分な遮光性が確保されない場合があり、一方樹脂形成成分が少なすぎると、均一な膜体が形成されない、必要な膜厚が得られない、黒色材料の凝集が増大して黒色性が低下する等、黒色膜としての好ましい形状が形成されない場合がある。
【0071】
前記黒色樹脂組成物を用いた黒色膜として、特定の形状にパターニングされた膜体、例えばブラックマトリクスとする場合には、樹脂形成成分に光(紫外線)感光性を持たせることにより、黒色樹脂組成物の塗布乾燥膜に対してフォトマスク等を用いて露光、現像を行い、特定のパターン形状とした黒色膜を形成することができる。また、紫外線感光性を有する樹脂成分原料を用いることにより、黒色パターン形成用のブラックレジストとしても使用することもできる。
ここで、光(紫外線)感光性としてはネガ型(現像により感光部が残留する)とポジ型(現像により感光部が除去される)があるが、本実施形態の黒色膜は、両者ともに適用することができる。但し、この可視近赤外光遮蔽黒色膜や膜中の金属微粒子は紫外線に対しても遮光性を有するため、黒色膜が厚くなる場合には、露光部(紫外線照射部)において膜の底部が十分に感光されない状態となる場合があり、この影響を防ぐためにはネガ型のほうが好ましい場合がある。
【0072】
上記紫外線感光性を有する樹脂成分原料としては、市販のレジスト材料を用いることができるほか、前記のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂に、光反応化剤を添加しても良い。前記市販のレジスト材料としては液晶用やMEMS用のものを用いることが好ましいが、この理由としては、これらのレジスト材料により形成された膜に対して熱硬化等の処理を行うことにより、永久膜としての形成が可能となるからである。
【0073】
ここで、ネガ型の感光性膜を形成する場合には、樹脂形成成分を硬化させるための反応開始剤として、熱や光によりラジカルを発生させて樹脂成分の重合を開始/促進させる物質を添加し、樹脂形成成分に光硬化性を持たせれば良い。即ち、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和化合物を含む黒色樹脂組成物を用い、該黒色樹脂組成物を塗布して形成された塗膜に光(紫外線)硬化性を持たせることが望ましい。
前記アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であれば特に限定はなく、例えばエポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂等が挙げられるが、これらのうち、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、中でも芳香環構造を有する樹脂が高い表面抵抗値及び低い比誘電率を与える点において特に好ましい。
この場合、前記黒色樹脂組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の割合は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。この範囲よりもアルカリ可溶性樹脂の割合が多過ぎると、ブラックマトリックス等のパターン形成時に充分な感度が確保されず、また必要な遮光性も確保できない場合があり、一方少な過ぎると樹脂ブラックマトリックス等の好ましい形状が形成されない場合がある。
【0074】
前記光重合開始剤とは、紫外線や熱によりエチレン性不飽和基を重合させるラジカルを発生させることのできる化合物である。
光重合開始剤としては、特に、感度の点でオキシム誘導体類(オキシム系化合物)が有効であり、遮光性を高くしたり、フェノール性水酸基を含むアルカリ可溶性樹脂を用いる場合などは、感度の点で不利になるため、特にこのような感度に優れたオキシム誘導体類(オキシム系化合物)が有用である。本実施形態では、上記光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂ブラックマトリクスを形成する場合、分散液中の光重合開始剤の割合は、全固形分に対して0.4質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。この範囲よりも光重合開始剤の割合が多すぎると現像速度が遅くなり過ぎる場合があり、一方少なすぎると十分な感度が得られず、好ましい樹脂ブラックマトリクス形状も形成されない場合がある。
【0075】
前記エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味するが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合が(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。さらに、エチレン性不飽和結合を分子内に3個以上有する化合物を用いると、形成膜の表面抵抗値や比誘電率などの電気特性的にとって好ましい。
【0076】
前記エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸、及びそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
また、前記エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、及び、(メタ)アクリル酸又はヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0077】
(樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒)
樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒(以下、「樹脂溶媒」という場合がある)としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高い液体であって、基本的には、水及び有機溶媒のうちの1種ないしは2種以上から選択されるものである。
なお、樹脂溶媒としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高いほかに、黒色材料の分散性が高いこと、黒色材料分散液との相溶性が高いこと、また、黒色材料分散液と混合した際に、黒色材料の分散性や樹脂成分や樹脂形成成分の溶解度が低下しないこと、という条件が必要である。これらの条件が満たされない場合には、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」それぞれは安定に存在しても、両者を混合して黒色樹脂組成物を形成した際に、相分離、黒色材料の凝集や沈降、樹脂形成成分又は樹脂成分の析出等が起こり、良好な黒色樹脂組成物が得られなくなるため好ましくない。ここで、樹脂溶媒と黒色材料分散液として、同一ないしは同類の溶媒を選択することができれば、このような問題点を回避できるので好ましい。
【0078】
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル、γ−ブチロラクトン等の他のエステル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;及びN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0079】
(分散剤及び分散助剤)
本実施形態の黒色塗料においても、黒色材料分散液と同様、黒色材料の分散性の向上、分散安定性の向上のために、分散剤、分散助剤や表面処理剤を併用することが好ましい。中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。なお、分散剤、分散助剤や表面処理剤については、黒色材料分散液において記載したものと同一であるから、詳細は省略する。
また、本実施形態の黒色材料分散液として分散剤、分散助剤や表面処理剤を含む分散液を選択し、この黒色材料分散液を黒色塗料の原料として使用する場合においては、当該分散液中に既に含まれている分散剤や分散助剤をそのまま使用してもよい。その理由として、分散剤や分散助剤は、黒色材料の表面を修飾することで黒色材料表面が分散媒や溶媒に対して親和性を有するようにする物質であることから、分散媒や溶媒と特性が変わらないのであれば、あえて別種の分散剤や分散助剤で処理する必要は無いからである。
【0080】
(黒色樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の黒色樹脂組成物は、少なくとも前記黒色材料並びに樹脂形成成分及び/又は樹脂成分を選択し、必要に応じて黒色材料分散媒や樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒を加え、さらには光重合開始剤、分散剤その他の成分を加えて混合分散することにより調製することができる。これらの内、黒色材料、黒色材料分散媒、樹脂形成成分、樹脂成分、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒、の組み合わせについては、前述のとおりである。
この場合、予め黒色材料分散液を調製し、これに樹脂形成成分等や光重合開始剤等を加えて溶解させることにより黒色塗料を調製してもよい。また、予め調整した黒色材料分散液と、樹脂形成成分等や光重合開始剤等の成分とを溶解させた溶液とを、混合することにより調製することができる。
混合分散方法は、黒色材料や樹脂形成成分等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散処理方法より選択すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。なお、予め調整した黒色材料分散液を用いる場合、黒色塗料の製造時には上記分散処理方法を行うことなく、黒色材料分散液と樹脂形成成分等を溶解させた溶液とを十分に混合・攪拌すればよい場合もある。
【0081】
[可視近赤外光遮蔽黒色膜]
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜(以下、単に「黒色膜」ということがある)は、本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色材料分散液、又は本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色樹脂組成物を基材に塗布してなる可視近赤外遮蔽黒色膜である。なお、この黒色膜は、黒色材料分散液や黒色樹脂組成物を基材に塗布した塗布膜に対して、加熱や減圧等により分散媒を除去したり、光照射や加熱等により樹脂形成成分を重合させて樹脂成分を形成するという操作を行うことにより、塗布膜を硬化させて得ることができる。
【0082】
ここで、本可視近赤外遮蔽黒色膜では、膜中に分散した黒色材料即ち金属粒子において、前記可視近赤外遮蔽黒色材料と同様の粒子径および粒子形状を有することが好ましい。即ち、平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下であって、(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子と、(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子の少なくともいずれかと、が混合されていることが好ましい。
【0083】
同様に、前記(A)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子の体積V
Aと、前記(B)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子、平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子、金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子、及び金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子、を合わせた金属粒子の合計の体積V
Bとの比V
A/V
Bは、5/95以上かつ95/5以下であることが好ましい。V
A/V
Bがこの範囲内にあることで、可視光及び近赤外光の遮蔽性が高い黒色材料を得ることができる。
V
A/V
Bの範囲は、10/90以上かつ90/10以下がより好ましく、20/80以上かつ80/20以下であればさらに好ましい。
この体積比は、例えばTEMの観察画像から任意の金属粒子100個を選び、その各粒子の形状と寸法から、それぞれの粒子が上記どの粒子に該当するか確定すると共にその体積を求め、算出すればよい。
黒色膜中の金属粒子がこれらの条件を満たすことにより、可視光域に加え近赤外光域の両方で高い遮蔽能力を示す黒色度の高い黒色膜を得ることができる。
【0084】
これら金属粒子の粒子径、粒子形状やアスペクト比は、薄膜化した黒色膜をTEM観察し、可視近赤外光遮蔽黒色材料の場合と同様にして求めれば良い。なお、黒色膜を薄膜化するのはTEM観察を容易にするためであるから、TEM観察ができればその厚みに制限はない。なお、薄膜化試料は、例えば膜試料を、FIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化することで得ることができる。
【0085】
また、分散液の場合と同様、黒色膜中の金属粒子の平均粒子径は平均分散粒子径と同意である。このことから、黒色膜中の黒色材料即ち金属粒子の平均分散粒子径は3nm以上かつ300nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上かつ60nm以下がさらに好ましく、10nm以上かつ40nm以下が特に好ましい。
同様に、黒色膜中に分散した金属粒子の90%累積分散粒子径は1μm以下であることが好ましい。90%累積粒子径が1μmを上回ると、黒色膜中での微粒子の分散が十分でなくなるために、遮光性が低下したり、金属粒子の散乱により外観が白っぽくなり黒色度が低下するおそれがある。
黒色膜中に分散した金属粒子の90%累積分散粒子径は0.6μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。
なお、この平均分散粒子径は、やはり薄膜化した黒色膜をTEM観察し、例えば100個の金属粒子径を測定してその平均を求めれば良い。
【0086】
ここで、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜は、波長400nmから1300nmにおける光学濃度の平均が1.0以上であることが好ましい。光学濃度はOD値(Optical Density値)とも呼ばれ、
光学濃度=−log
10T (T:透過率)・・・(式−1)
で表される。波長400nmから1300nmにおける光学濃度の平均が1.0以上であれば、可視近赤外光遮蔽黒色膜の可視光から近赤外光の領域における光吸収が良好なものとなる。
波長400nmから1300nmにおける光学濃度の平均は1.4以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましく、1.8以上であることが特に好ましい。
【0087】
波長400nmから1300nmにおける光学濃度の平均は、例えば分光光度計で波長400nmから1300nmの透過率を1nm間隔で測定し、上記(式−1)にしたがって各波長の透過率を光学濃度に換算した後に、波長400nmから1300nmの範囲で換算した光学濃度を平均すればよい。
【0088】
また、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜は、波長555nmにおける光学濃度が1.0以上であることが好ましい。波長555nmにおける光学濃度が1.0以上であれば、可視近赤外光遮蔽黒色膜の可視光域での光吸収が良好なものとなる。
波長555nmにおける光学濃度は1.4以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。
【0089】
また、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜は、波長1300nmにおける光学濃度が0.6以上であることが好ましい。波長1300nmにおける光学濃度が0.6以上であると可視近赤外光遮蔽黒色膜の近赤外光域での光吸収が良好なものとなる。
波長1300nmにおける光学濃度は1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
【0090】
ここで、本実施形態の黒色膜にて示される、波長400nmから1300nmの光学濃度の平均が1.0以上、波長555nmにおける光学濃度が1.0以上かつ波長における光学濃度が1300nmのOD値が0.6以上の可視近赤外光遮蔽黒色膜を得るためには、黒色膜中の金属粒子の体積分率が2体積%以上かつ50体積%以下であることが好ましい。
本実施形態の黒色膜中における金属粒子の体積分率は、黒色材料(金属粒子)及び樹脂成分それぞれの比重が既知であることから、原料として使用する金属粒子及び樹脂形成成分の質量より求めることができる。
【0091】
黒色膜中の金属粒子の体積分率を2体積%以上とすることで、可視光から近赤外光の領域において十分な光遮蔽性が得られやすくなる。また50体積%以下とすることで、金属微粒子による反射率が高くなることによる黒色度の低下を抑制し、かつ樹脂成分の含有比率が低下することによる膜の硬度低下や現像パターンの精度不良を防ぐことができる。
黒色膜中の金属微粒子の体積分率は、既述の通り2体積%以上かつ50体積%以下が好ましく、2体積%以上かつ30体積%以下がより好ましく、2体積%以上かつ20体積%以下がさらに好ましく、5体積%以上かつ15体積%以下が特に好ましい。
【0092】
また、黒色膜の反射率は低い方が黒色度が高まり、また黒色膜の反射による迷光を抑制できるため好ましい。波長400nmから800nmまでの平均反射率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。
波長380nmから800nmまでの平均反射率は、黒色膜の反射率を分光光度計により1nmないし2nm間隔で測定し、得られた各波長の吸光度を算術平均して求めることができる。
また、黒色膜中における金属粒子の体積分率や黒色膜の表面粗さ等によって黒色膜の反射率をある程度制御することができる。
【0093】
また、黒色膜中における金属粒子の体積分率により、黒色膜の導電性を制御することができる。金属粒子自体は導電性を有するが、黒色膜中においては金属粒子間に樹脂成分が存在し、樹脂成分が金属粒子間の導電経路を阻害する。さらに、黒色膜中の金属粒子は分散性がよく均一に分散しているため、例えばカーボンブラックのように金属粒子同士が連続的につながり導電パスを形成するようなことがない。従って、黒色膜中の金属粒子と樹脂成分の比率を変化させると、樹脂による金属微粒子間の導電経路を阻害する程度が変わるため、黒色膜の導電性が変化する。導電性の黒色膜を得たい場合には膜中の金属粒子の体積分率を高く、絶縁性の黒色膜を得たい場合には膜中の金属粒子の体積分率を低くすればよい。
【0094】
例えば、固体撮像素子の反射防止膜には絶縁性を求められる場合がある。この場合、黒色膜中の金属粒子の体積分率を2体積%以上かつ50体積%以下にすれば、可視光及び近赤外光領域の遮光性を保ちながら、例えば表面抵抗値で10
11Ω/□以上、より好ましくは10
12Ω/□以上、さらに好ましくは10
13Ω/□以上、特に好ましくは10
15Ω/□以上の黒色膜を得ることができる。本実施形態に係る金属粒子は、可視域及び近赤外域の遮光性が優れているため、膜中の金属微粒子の体積分率が低くても、膜厚の増加を図ることなく、可視光及び近赤外光領域の遮光性に優れた黒色膜、すなわち前記光学濃度を有する黒色膜を得ることができる。
【0095】
また、分散液の場合と同様、黒色膜中の金属粒子の平均粒子径は平均分散粒子径と同意である。このことから、黒色膜中の黒色材料即ち金属粒子の平均分散粒子径は3nm以上かつ300nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上かつ60nm以下がさらに好ましく、10nm以上かつ40nm以下が特に好ましい。
【0096】
また、絶縁性の黒色膜を得るためには、金属粒子の膜中の平均粒子径は3nm以上200nm以下であることが好ましい。本実施形態においては、用いられる金属粒子(金属微粒子)の平均一次粒子径を1nm以上としているから、平均粒子径が3nm未満では粒子として存在することが難しく、一方、平均粒子径が200nmを超えると黒色膜中での金属粒子の凝集による導電パスが生じやすくなるために、所望の表面抵抗値の確保が困難となる上、金属粒子の凝集が著しい場合には、遮光性も低下する。
絶縁性の黒色膜を得るための金属粒子の膜中の平均粒子径は5nm以上200nm以下であればより好ましく、5nm以上100nm以下がさらに好ましく、5nm以上かつ60nm以下が特に好ましい。
【0097】
また、前記黒色膜を周波数1kHzで測定した比誘電率は15以下であることが好ましい。可視近赤外光遮蔽黒色膜を素子駆動用の配線と接触した構造で用いる場合に、前記黒色膜の比誘電率が15を上回ると、配線間が短絡を起こしやすくなり、TFT素子の動作不良等を起こしやすくなるためである。
この黒色膜の比誘電率は12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましく、6以下であることが特に好ましい。黒色膜の比誘電率は低いほど好ましく、その下限は特に制限はない。
なお、比誘電率の測定は、例えば市販のLCRメータ等により測定することができる。
【0098】
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜の膜厚は5μm以下であることが好ましい。例えば固体撮像素子用カラーフィルターでは遮光性の向上と薄膜化の両立が求められており(例えば、特開2010−008655号公報参照)、5μmを上回ることは好ましくない。当該膜厚は3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の黒色材料は、可視光及び近赤外光領域の遮光性が優れており、よって本実施形態の黒色膜も可視光及び近赤外光領域の遮光性が優れているため、膜厚が薄くても、可視光及び近赤外光領域の遮光性を優れたものにすることができる。
【0099】
(可視近赤外光遮蔽黒色膜の作製方法)
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜は、本実施形態の黒色塗料を基板上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を乾燥・硬化することにより、得ることができる。
黒色塗料の塗布方法(塗布膜形成方法)も特に限定されるものではないが、スピンコート法、フローコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、バーコート法、スリットコート法、スリット&スピンコート法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0100】
得られた塗布膜を硬化あるいは溶剤を揮発除去させること等により、可視近赤外光遮蔽黒色膜を得ることができる。なお、上記硬化により黒色膜を得るに際し、黒色塗料中に溶剤を含む場合には、初めに塗布膜中の溶剤を除去して塗布乾燥膜(溶媒が除去されることにより固体の膜状になっているが、樹脂成分の重合硬化はほとんど起こっておらず、溶剤と接触させることにより再度溶剤中への溶解が可能な状態の膜)を形成後、塗布膜を硬化させる。
硬化方法としては、樹脂成分原料のモノマー、オリゴマー、プレポリマーが熱重合を開始する温度で加熱してもよく、また反応開始剤を添加した場合には、反応開始剤に対応した熱や光の印加を行えばよい。また、両方を併用してもかまわない。なお、上記塗布膜中の溶剤除去をより完全に行う(具体的には溶媒除去をより高温で行う)ことにより、溶媒への再溶解性を減じることで、硬化に代えることもある。
【0101】
次に、前記光(紫外線)感光性を有する樹脂形成成分を含む黒色塗料を用いた塗布膜に対して、紫外線照射(露光)、現像を行って、固体撮像素子用遮光膜や樹脂ブラックマトリクス等の複雑な形状を得る方法(パターニング工程)について、簡単に説明する。
露光、現像などのパターニング工程については公知の方法を使用でき特段の限定はないが、例えば露光方式において平面形状のものであれば、市販の紫外線露光装置とフォトマスクとを使用することで、容易に露光を行うことができる。また、光源として紫外線レーザーを用い、微細なレーザービームをスキャンすることで塗布乾燥膜に直接パターンを書き込む、いわゆる直接描画(直描)を行うこともできる。
現像方式にも特段の制限はなく、ディップ式やパドル式等の通常の方法を用いればよい。また、これら露光や現像の条件は、使用する樹脂形成成分や要求する形状に合わせて、適宜選択・調整すればよい。さらに、必要に応じてポスト露光やポストベークなどの他の工程や硬化処理工程等を行うことができる。
なお、このような露光、現像などのパターニング工程については、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとしては、特開2006−251095号公報の段落番号0096から0106に記載の方法や、特開2006−251237号公報の段落番号0116から0126に記載の遮光画像の形成方法が、本実施形態においても好適に用いることができる。
【0102】
[可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材]
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材(以下、単に「黒色膜付き基材」ということがある)は、基材上に上述の本実施形態の黒色膜を設けて構成されたものである。具体的には、例えば光透過性基材の上に、本実施形態の黒色塗料を用いて上述したように形成した層を、必要に応じてパターニングすることで作製される。
【0103】
前記基材としては、可視近赤外光遮蔽黒色膜の使用方法や使用形態に合わせて選択すればよく、特に限定されるものではないが、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)等を挙げることができる。また、その形状としては、平板、フィルム状、シート状等が挙げられる。また、上記のプラスチック基材としては、プラスチックシート、プラスチックフィルム等が好適である。なお、基材の光透過性を問わない場合には、シリコンウェハー等の半導体基板も用いることができる。
【0104】
前記ガラス基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ソーダガラス、アルカリガラス、無アルカリガラス等から適宜選択することができる。
前記プラスチック基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ、フェノキシ、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン(PES)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアクリレート等から、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。この内、アクリル(ポリアクリレート)基板、ポリカーボネート基板のように硬度の高い基板を使用すれば、可視近赤外光遮蔽黒色膜を有する構造体を得ることができ、PET、PEN、PES、TAC等の高分子フィルム等を使用すれば、可撓性を有する可視近赤外光遮蔽黒色膜を得ることもできる。
【0105】
また、前記黒色塗料を用いて形成した層をパターニングする方法は、特に限定はされないが、上述のように黒色塗料中にアルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和化合物を含ませ、この黒色塗料を塗布して光(紫外線)感光性を持たせた塗膜を形成し、該塗膜を上述のようにパターン状に露光した後現像して黒色膜を形成すればよい。さらに、必要に応じてポスト露光やポストベークなどの他の工程や硬化処理工程等を設けてもよい。
【0106】
また、前記黒色塗料を使用し、インクジェット法を用いて、基材上に直接パターンが形成された層を作製する方法もある。この場合、黒色塗料の塗膜には光感光性を与える必要は無いが、黒色塗料においては、微小なインクジェットノズルからの吐出性(吐出量や吐出方向の安定性)に優れるとともに、吐出され基材に付着した塗料は、流出や変形しないように高粘度状態となるようにする必要がある。このため、黒色塗料の粘度を調整したり、チクソトロピーを与えるための助剤を添加する等の方法が用いられる。
この工程についても公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2008−116895号公報の段落番号0029から0031に記載の方法を用いることができる。
【0107】
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材は、可視光及び近赤外光領域の両範囲に渡って遮蔽性を有することから、固体撮像素子用カラーフィルターに用いられるブラックマトリクス(遮光膜)が設けられたブラックマトリクス基板としても、好適に用いることができる。
固体撮像素子用カラーフィルター用ブラックマトリクス基板としたときの、可視近赤外光遮蔽黒色膜の膜厚は0.2μm以上かつ5.0μm以下が好ましく、0.2μm以上かつ4.0μm以下がより好ましい。また、ブラックマトリクス基板における黒色膜は、本実施形態の黒色膜を使用しているので、薄膜でも高い光学濃度を有する。
【0108】
[固体撮像素子]
本実施形態の固体撮像素子は、本実施形態の可視近赤外遮蔽黒色膜を有するか、又は本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材を有してなる。
固体撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子が代表的であるが、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜及び可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材は、これらの固体撮像素子を始めとする各種固体撮像素子において、好適に用いることができる。
【0109】
固体撮像素子は、通常、光電変換素子であるフォトダイオード(受光部)が二次元配列されたシリコン等の半導体基板と、各フォトダイオードの上方に二次元配列されたレッド(R)色、グリーン(G)色、ブルー(B)色のカラーフィルターと、カラーフィルター上に設けられ、入射光をフォトダイオードに集光させるためのオンチップマイクロレンズとから構成されている。
そして、固体撮像素子の撮像部(有効画素領域)の周縁領域には、暗電流の低減、ダイナミックレンジの低下防止、周辺回路の動作安定を図ることで、ノイズの発生やイメージセンサとしての画質低下を防止するための遮光膜が設けられている。また、隣接するカラーフィルター間相互の影響を低減し、画質を向上させるため、カラーフィルターにブラックマトリックスを設けられる場合もある。
【0110】
本実施形態の黒色膜は、黒色度が高く可視光から近赤外光領域の光に対して遮光性が高いこと、その高い遮光性ゆえに薄膜化が可能なことから、固体撮像素子用の遮光膜、すなわち撮像部の周縁領域に設けられる遮光膜や、カラーフィルターのブラックマトリックスとして、好適に用いることができる。すなわち、画素の微小化に伴う、光電変換素子の上面からオンチップマイクロレンズの下面までの有効光学機能層の厚さを薄くすることに対応して遮光膜やブラックマトリックスを薄くしても、十分な遮光性を確保することができる。また、含まれる金属粒子(黒色粒子)の粒径が小さくかつ分散性が良いことにより、膜の均質性が高く、表面の平坦性も良好であるから、遮光膜やブラックマトリックスを薄くしても遮光むらや膜表面荒れによる画質の低下が生じることもなく、固体撮像素子用の遮光膜として用いることに対してより好適である。
【0111】
さらに、含まれる金属粒子(黒色材料)の黒色度が高いことから、黒色膜中の黒色材料粒子量を減ずることができ、また粒径が小さく分散性が良いことにより、高い表面抵抗値と低い比誘電率を示すことから、黒色膜を設けるために新たに絶縁層を形成させる必要がない。また、例えばブラックマトリックスと撮像素子自体が直接接した場合でも、撮像素子間の短絡等による動作不良といった問題が発生することもない。
さらにまた、黒色膜中の黒色材料粒子量が少ない、すなわち、黒色膜中の樹脂成分比率を低下させることがないことから、パターニングにより得られる複雑な形状の黒色膜においても、膜硬化が不十分であったり、膜強度が不足したり、微細パターンの形成が不十分になることがない。従って、微細で正確な形状の固体撮像素子カラーフィルター用ブラックマトリックスを得ることができるから、固体撮像素子の特性をより高めることができる。
【0112】
(画像表示装置)
本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜及び可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材は、可視光領域の光に対する遮光性も良好であることから、固体撮像素子用としてだけではなく、各種画像表示装置において好適に用いることができる。画像表示装置としては、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置等の自発光型表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置等が挙げられ、中でも液晶表示装置やEL表示装置に用いた場合に、本実施形態の可視近赤外光遮蔽黒色膜及び可視近赤外光遮蔽黒色膜付き基材の黒色膜の効果が顕著に発揮される。ここで、液晶表示装置の種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
【0113】
本実施形態の黒色膜は、黒色度が高くかつ高い表面抵抗値を有していることから、その遮光性(光の無反射性)と抵抗値を利用した画像表示装置用部材として、好適に用いることができる。これらの部材としては、液晶表示素子や自発光型表示装置におけるブラックマトリックスとそれを用いたカラーフィルターやブラックストライプ、液晶表示装置や自発光型表示装置において各色の画素間を分離する遮光壁、液晶表示装置において液晶を充填する基板間のスペーサー等を挙げることができる。
【0114】
ここで、ブラックマトリックスとそれを用いたカラーフィルターへの適用においては、黒色度が高いことからブラックマトリックスの厚さを減じることができ、結果として得られるカラーフィルターの平坦性が高いため、このカラーフィルターを備えた液晶表示装置は、カラーフィルターと基板との間にセルギャップムラが発生せず、色ムラ等の表示不良の発生が改善される。
さらに表面抵抗値が高く比誘電率が低いことから、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や自発光型表示装置のように、ブラックマトリックスと画素駆動用の配線とが接触する場合においても、配線の短絡等による素子の駆動不良をおこすおそれがない。
【0115】
また、遮光壁やスペーサーへの適用においても、表面抵抗値が高いことから、各画素間の配線が短絡する虞がなく、従って素子の駆動不良をおこすことがない。さらに黒色度が高いことから、遮光壁の厚さを減じることができ、各画素における発光領域の拡大によるコントラストの向上、あるいは画素間隔の減少に伴う発光素子の高密度化等をはかることができる。
さらには、高い光吸収性を利用して、コントラスト増強フィルム等へ応用することも可能である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0117】
[測定・評価方法]
始めに、本実施例及び比較例における黒色材料、黒色材料分散液及び黒色膜の特性を求めるための測定及び評価方法を示す。
【0118】
・黒色材料
(含まれる黒色材料(金属粒子)の同定)
後述する黒色材料の水分散液から粒子を分離、乾燥して粉末試料とし、XRD(X線回折装置)により結晶相を同定するとともに、圧粉体をEPMA(電子線マイクロアナライザー)で定性及び定量分析することにより、結晶相と組成比(含有比率)から含まれる金属粒子種を確認した。
【0119】
[XRD測定による結晶相同定]
粉末試料をガラス製試料ホルダーに詰め、X線回折装置X’Pert PRO(PANalytical製)により、CuKα線を用いて測定した。得られたXRDプロファイルの回折角2θ=38°付近および44°付近のピークを銀、2θ=34.7°付近および39.7°付近のピークを銀錫金属間化合物(Ag
3Sn及び/又はAg
4Sn)、2θ=30.7°付近および32°付近のピークを錫、2θ=30°付近および43°付近のピークを銅錫合金の結晶相ピークとして同定することにより、含まれる金属粒子種の結晶相を確認した。
【0120】
[EPMA測定による定性・定量分析]
黒色材料粉末の圧粉体を電子線マイクロアナライザーJXA8800(日本電子社製)にて分析した。波長分散型X線分光器を用いた定性ならびに定量分析によって粉末中の金属元素(銀、錫、銅)の存在及び含有量を測定し、得られた値から粉末中の銀と他の金属との含有比率(銀元素量/金属元素量:質量比)を算出した。
【0121】
[XRD測定とEPMA測定からの微粒子種の同定]
XRD測定で同定された結晶相に対して、その結晶相を構成する元素が十分な量存在することをEPMA測定で確認することにより、微粒子種を同定した。
すなわち、XRD測定で銀錫金属間化合物の結晶相が確認された試料については、EPMA測定で銀及び錫の存在を確認することで、微粒子種が銀錫金属間化合物を含むと同定し、XRD測定で錫の結晶相が確認された試料については、EPMA測定で錫の存在を確認することで、微粒子種が錫を含むと同定し、XRD測定で銀の結晶相が確認された試料については、EPMA測定で銀の存在を確認することで、微粒子種が銀を含むと同定し
、XRD測定で銅錫合金の結晶相が確認された試料については、EPMA測定で銅および錫の存在を確認することで、微粒子種が銅錫合金を含むと同定した。
【0122】
(平均一次粒子径、粒子形状)
後述する黒色材料分散液を希釈して試料を作製し、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)により観察して、観察視野像から一次粒子径、粒子形状を求めた。
平均一次粒子径は、観察視野から任意の一次粒子100個を選び、それぞれの粒子像を円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径としてその平均を算出した。また、その粒子像中の最も長い部分の長さを長辺Lとし、該長辺Lに対して直角方向の長さを短辺Wとして、該粒子のアスペクト比L/W値の平均を算出した。
【0123】
(平均凝集粒子径、粒子形状)
後述する黒色膜試料を用い、「膜中の黒色材料の存在状態」と同様の方法を用いて求めた。すなわち、黒色膜試料をFIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)により観察し、観察視野から任意の凝集粒子100個を選び、それぞれの粒子像を円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径としてその平均を算出した。また、その粒子像中の最も長い部分の長さを長辺Lとし、該長辺Lに対して直角方向の長さを短辺Wとして、該粒子のアスペクト比L/W値の平均を算出した。
なおここでは、凝集粒子の選択基準も「膜中の黒色材料の存在状態」と同様、観察視野から任意に選択した金属粒子像において、一次粒子が重なるないしは連なって見える場合を凝集粒子とした。
【0124】
・黒色材料分散液
(分散液の吸光度)
後述する黒色材料分散液(有機溶媒分散液)を、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で、黒色材料が0.0005体積%になるように希釈した。希釈した液の吸光度を自記分光光度計UV−3150(島津製作所社製)で光路長10mmのセルを用いて測定した。
測定は、400nmから1300nmまで1nmごとに行い、得られた各測定波長の吸光度値から、400nmから1300nmまでの平均吸光度、400nmから800nmまでの平均吸光度を算出した。また、555nm、1300nmにおける吸光度を個別に記録した。
【0125】
(分散液中の粒度分布)
黒色材料分散液の粒度分布を、粒度分布測定装置Microtrac 9340−UPA(日機装社製)を用いて測定した。この装置は動的光散乱法により粒度分布を測定するものである。得られた分布結果(体積基準)より体積平均粒子径(MV値)を算術平均により求め、その値を平均分散粒子径とした。なお、この値は粒度分布指標である累積50%径(D50%)と同一である。また、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)を求め、粒度分布指標D90%とした。
【0126】
・黒色膜
(膜の光学濃度(膜の遮光性))
黒色膜付きガラス基板の透過率を分光光度計V−570(ジャスコエンジニアリング製)を用いて1nm間隔で測定した。測定した透過率を、
光学濃度=−log
10T (T:透過率)
の式によって光学濃度に換算した。
1nm間隔で換算した波長400nmから1300nmの光学濃度を平均し、400nmから1300nmまでの平均光学濃度とした。また、555nm、1300nmにおける光学濃度を個別に記録した。
【0127】
(膜の反射率)
黒色膜付きガラス基板の反射率を分光光度計V−570(ジャスコエンジニアリング製)で1nm間隔で測定し、波長400nmから800nmまでの反射率を平均したものを可視光の平均反射率とした。
【0128】
(黒色膜の表面抵抗値)
ガラス基板上に形成した黒色膜の表面抵抗値を、絶縁抵抗計:超高抵抗/微小電流計R8340A(エーディーシー社製)を用いて測定した。測定条件はDC100Vとした。
【0129】
(黒色膜の比誘電率)
ガラス基板上に形成した黒色膜の比誘電率を、LCRメーター4284A(Agilent社製)により測定した。測定条件は1kHz・1Vとした。
【0130】
(膜中の黒色材料の存在状態)
作製した黒色膜試料を、FIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)により観察し、観察視野像から黒色材料(金属粒子)の分類、粒子径、アスペクト比及び体積を求め、その分布を算出した。
まず、観察視野から任意の金属粒子(黒色材料)を選び、その粒子像において一次粒子が重なるないしは連なって見える場合には当該粒子は凝集粒子とし、一次粒子が単独で存在している場合には当該粒子は一次粒子(粒子が凝集していない)とした。その粒子像を円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径とした。また、その粒子像中の最も長い部分の長さを長辺Lとし、該長辺Lに対して直角方向の長さを短辺Wとして、該粒子のアスペクト比L/W値を算出した。
次に、これらの結果を基に、当該粒子が、
(1)平均一次粒子径が1nm以上30nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子(一次粒子)。
(2)平均一次粒子径が30nmを超えかつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属微粒子(一次粒子)。
(3)平均一次粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属微粒子(一次粒子)。
(4)金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が30nm以上かつ300nm以下かつアスペクト比が2未満の金属凝集粒子。
(5)金属一次粒子が凝集してなり、その平均凝集粒子径が1nm以上300nm以下かつアスペクト比が2以上の金属凝集粒子。
のいずれに該当するかを求めた。
【0131】
次に、当該粒子の体積を以下のようにして求めた。まず、アスペクト比が2未満の粒子については、粒子は球状であるとした上で、上記のように粒子像から求めた近似円の寸法(半径)から粒子体積を算出した。また、アスペクト比が2以上の粒子については、粒子は楕円球状であるとした上で、上記のように粒子像から求めた長辺Lと短辺Wの長さから、粒子体積を、
粒子体積=(4/3)π(L/2)(W/2)
2・・・(式−2)
として算出した。
以上のようにして得られた粒子の分類、粒子径、アスペクト比及び体積について、観察視野像から選んだ任意の粒子100個について求め、その結果を総合して黒色膜中の黒色材料の存在状態を判定した。
【0132】
[実施例1]
(略球状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A1−1液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム二水和物314gを純水に溶解し、これに1質量%に希釈したポリビニルピロリドン(PVP)液360gを加えて混合し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B1−1液)を調製した。次いで、B1−1液中にA1−1液を滴下して混合した後、これに水素化ホウ素ナトリウム10gを純水に溶解し500gとした水溶液を滴下して混合し、C1−1液を得た。
【0133】
次いで、錫コロイドA(平均一次粒子径:20nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)150g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記C1−1液を滴下して混合した。さらに酒石酸180gを純水に溶解し2180gとした水溶液を錫微粒子分散液とC1−1液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D1−1液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−1液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は10nmであった。
【0134】
(略棒状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A2−1液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物78gを純水に溶解し、これに1質量%に希釈したPVP液60gを加えて混合し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B2−1液)を調製した。次いで、B2−1液中にA2−1液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム0.1gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合し、さらにアスコルビン酸18gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下、混合してC2−1液を得た。
【0135】
次いで、錫コロイドA(平均一次粒子径:20nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)150g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記C2−1液を滴下、混合した。さらに酒石酸180gを純水に溶解し2180gとした水溶液を錫微粒子分散液とC2−1液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D2−1液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−1液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は30nmであった。
【0136】
(黒色材料分散液の作製)
次いで、上記D1−1液30g、D2−1液70g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びメチルエチルケトン(MEK)34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−1粉)を得た。
次いで、上記E−1粉29gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−1液、固形分:25質量%)を得た。
なお、
図1に実施例1の黒色材料分散液の黒色材料のTEM写真(40万倍)を、
図2に実施例1の黒色材料分散液の吸光度スペクトルを示す。
【0137】
(黒色膜の作製)
黒色材料分散液(F−1液)、多官能性アクリレートを樹脂形成成分とするレジスト(分散媒:PGMEA)及び溶媒としてのPGMEAを、固形分体積比(黒色微粒子:レジスト)が7.5:92.5となるように混合し、超音波処理により分散して黒色塗料(G−1塗料)とした。なお、上記固形分体積比は仕込比である。
次いで、厚さ0.7mmのガラス基板上に、前記調製したG−1塗料をスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃にて2分間プリベークし、さらに230℃で30分間ポストベークし、実施例1の黒色膜(H−1膜)付きガラス基板を得た。ポストベーク後の黒色膜の膜厚は1μmとし、その膜厚は触針式表面形状測定器P−10(KLAテンコール社製)により確認した。なお、
図3に、実施例1の黒色膜の一部を、FIBを用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)により観察した結果(40万倍)を示す。
黒色膜試料をFIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)により観察し
【0138】
(評価)
上記で得られた黒色材料、黒色膜について、前記の条件にしたがって微粒子の組成、膜中の粒子形状、アスペクト比、分散粒子径、光学濃度等の測定を行った。結果を表1(表1−1〜1−3)に示す。
【0139】
[実施例2]
実施例1で用いたD1−1液30g、D2−1液70g、櫛形ウレタン系高分子分散剤2.5g及びMEK22.5gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−2粉)を得た。
次いで、上記E−2粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−2液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例2の黒色膜(H−2膜)を作製した。
作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0140】
[実施例3]
実施例1で用いたD1−1液10g、D2−1液90g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びメチルエチルケトン34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びメチルエチルケトンを蒸発させて、乾燥粉(E−3粉)を得た。
次いで、上記E−3粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−3液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例3の黒色膜(H−3膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0141】
[実施例4]
実施例1で用いたD1−1液50g、D2−1液50g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びMEK34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−4粉)を得た。
次いで、上記E−4粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−4液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例4の黒色膜(H−4膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0142】
[実施例5]
実施例1で用いたD1−1液90g、D2−1液10g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びMEK34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−5粉)を得た。
次いで、上記E−5粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−5液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例5の黒色膜(H−5膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0143】
[
参考例6]
実施例1で用いたD2−1液100g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びMEK34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−6粉)を得た。
次いで、上記E−6粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−6液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、
参考例6の黒色膜(H−6膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0144】
[実施例7]
(略棒状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A2−7液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物78gを純水に溶解し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B2−7液)を調製した。次いで、B2−7液中にA2−7液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム0.025gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合し、さらにアスコルビン酸18gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下、混合してC2−7液を得た。
【0145】
次いで、錫コロイドA150g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記C2−7液を滴下、混合した。さらに酒石酸180gを純水に溶解し2180gとした水溶液を錫微粒子分散液とC2−7液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D2−7液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−7液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は100nmであった。
【0146】
(黒色材料分散液の作製)
次いで、実施例1で用いたD1−1液30g、上記D2−7液70g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びMEK34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−7粉)を得た。
次いで、上記E−7粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−7液、固形分:25質量%)を得た。
【0147】
(黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例7の黒色膜(H−7膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0148】
[実施例8]
実施例1で用いたD1−1液10g、実施例7で用いたD2−7液90g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びMEK34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−8粉)を得た。
次いで、上記E−8粉29gと、PGMEA71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−8液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例8の黒色膜(H−8膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0149】
[
参考例9]
(略球状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A1−9液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物314gを純水に溶解し、これに1質量%に希釈したPVP液360gを加えて混合し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B1−9液)を調製した。次いで、B1−9液中にA1−9液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム25gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合してC1−9液を得た。
その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D1−9液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−9液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比が2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は30nmであった。
【0150】
(略棒状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A2−9液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物78gを純水に溶解し、これに1質量%に希釈したPVP液60gを加えて混合し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B2−9液)を調製した。次いで、B2−9液中にA2−9液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム0.1gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合し、さらにアスコルビン酸36gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下、混合してC2−9液を得た。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D2−9液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−9液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は120nmであった。
【0151】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
次いで、黒色微粒子の水分散液として上記D1−9液30g及び上記D2−9液70gを用いたことを除いては実施例1と同様にして、乾燥粉(E−9粉)及び黒色材料分散液(F−9液、固形分:25質量%)を得た。
さらに実施例1と同様にして、F−9液より
参考例9の黒色膜(H−9膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0152】
[
参考例10]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、錫コロイドAの量を75gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−10液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−10液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は10nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、錫コロイドAの量を75gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−10液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−10液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は30nmであった。
【0153】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、
参考例10の乾燥粉(E−10粉)、黒色材料分散液(F−10液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−10膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0154】
[実施例11]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、錫コロイドAの量を225gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−11液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−11液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は10nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、錫コロイドAの量を225gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−11液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−11液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は30nmであった。
【0155】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例11の乾燥粉(E−11粉)、黒色材料分散液(F−11液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−11膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0156】
[実施例12]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、水素化ホウ素ナトリウムを添加せず、錫コロイドAの量を450gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−12液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−12液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は10nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、水素化ホウ素ナトリウムの量を0.02g、アスコルビン酸の量を3.6g、錫コロイドAの量を450gにした以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−12液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−12液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は30nmであった。
【0157】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例12の乾燥粉(E−12粉)、黒色材料分散液(F−12液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−12膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0158】
[実施例13]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB(平均一次粒子径:30nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)375gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−13液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−13液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は10nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB(平均一次粒子径:30nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)375gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−13液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−13液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は40nmであった。
【0159】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例13の乾燥粉(E−13粉)、黒色材料分散液(F−13液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−13膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0160】
[実施例14]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB450gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−14液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−14液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は15nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB450gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−14液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−14液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は40nmであった。
【0161】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例14の乾燥粉(E−14粉)、黒色材料分散液(F−14液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−14膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0162】
[実施例15]
(略球状粒子の合成)
実施例1の略球状粒子の合成において、水素化ホウ素ナトリウムの量を5gとし、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB600gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D1−15液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−15液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は15nmであった。
(略棒状粒子の合成)
実施例1の略棒状粒子の合成において、水素化ホウ素ナトリウムの量を0.05g、アスコルビン酸の量を9gとし、錫コロイドAの代わりに錫コロイドB600gを用いた以外は実施例1と同様にして、黒色微粒子の水分散液(D2−15液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD2−15液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2以上の略棒状粒子であり、その平均一次粒子径は40nmであった。
【0163】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例14の乾燥粉(E−15粉)、黒色材料分散液(F−15液、固形分:25質量%)、及び黒色膜(H−15膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0164】
[実施例16]
(略板状粒子の合成)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A2−16液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物39gを純水に溶解し、これに1質量%に希釈したPVP液60gを加えて混合し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B2−16液)を調製した。次いで、臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム3600gを40℃の純水に溶解してB2−16液に加えた。次いで、臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加えたB2−16液中にA2−16液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム0.1gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合し、さらにアスコルビン酸18gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下、混合してC2−16液を得た。
【0165】
次いで、錫コロイドA150g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記C2−16液を滴下、混合した。さらに酒石酸180gを純水に溶解し2180gとした水溶液を錫微粒子分散液とC2−16液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D2−16液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−16液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略板状(三角板状)粒子であり、その平均一次粒子径は100nmであった。
【0166】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
次いで、黒色微粒子の水分散液として実施例1で用いたD1−1液30g及び上記D2−16液70gを用いたことを除いては実施例1と同様にして、乾燥粉(E−16粉)及び黒色材料分散液(F−16液、固形分:25質量%)を得た。
さらに実施例1と同様にして、F−16液より実施例15の黒色膜(H−16膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0167】
[実施例17]
実施例1で用いたD1−1液30g、D2−1液70g、櫛形ウレタン系高分子分散剤1.88g及びMEK17gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びMEKを蒸発させて、乾燥粉(E−17粉)を得た。
次いで、上記E−17粉29gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−17液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例17の黒色膜(H−17膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0168】
[実施例18]
(略球状粒子の合成)
錫コロイドB200g及び純水を混合し、2200gの錫微粒子分散液であるA1−18液を作製した。また、硫酸銅(II)五水和物(CuSO
4・5H
2O)50g、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)二水和物70gに純水3000gを加え、B1−18液を作製した。次いで、このB1−18液をA1−18液に混合して攪拌し、さらに希硝酸を添加して中和反応を行った。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D1−18液、固形分:25質量%)を調製した。なお、得られたD1−18液中の黒色微粒子は、一次粒子形状がアスペクト比2未満の略球状粒子であり、その平均一次粒子径は25nmであった。また、結晶相は銅錫合金相であった。
【0169】
(黒色材料分散液及び黒色膜の作製)
次いで、黒色微粒子の水分散液として上記D1−18液30g及び実施例1のD2−1液70gを用いたことを除いては実施例1と同様にして、乾燥粉(E−18粉)及び黒色材料分散液(F−18液、固形分:25質量%)を得た。
さらに実施例1と同様にして、F−18液より実施例18の黒色膜(H−18膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0170】
[実施例19]
黒色材料の水分散液として、実施例18のD1−18液50g及び実施例1のD2−1液50gを用いたことを除いては実施例1と同様にして乾燥粉(E−19粉)及び黒色材料分散液(F−19液、固形分:25質量%)を得た。さらに実施例1と同様にして、F−19液より実施例19の黒色膜(H−19膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0171】
[実施例20]
黒色材料の水分散液として、実施例18のD1−18液70g及び実施例1のD2−1液30gを用いたことを除いては実施例1と同様にして乾燥粉(E−20粉)及び黒色材料分散液(F−20液、固形分:25質量%)を得た。さらに実施例1と同様にして、F−20液より実施例20の黒色膜(H−20膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0172】
[比較例1]
参考例9で用いたD1−9液100g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びメチルエチルケトン34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びメチルエチルケトンを蒸発させて、乾燥粉(E−21粉)を得た。
次いで、上記E−21粉29gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−21液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、比較例1の黒色膜(H−21膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0173】
[比較例2]
実施例1で用いたD1−1液100g、櫛形ウレタン系高分子分散剤3.75g及びメチルエチルケトン34gを混合した後、エバポレーターを用いて混合物から水分及びメチルエチルケトンを蒸発させて、乾燥粉(E−22粉)を得た。
次いで、上記E−22粉29gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F−22液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、比較例2の黒色膜(H−22膜)を作製した。作製した黒色微粒子、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0174】
[比較例3]
カーボンブラック(Nipex35、デグサ社製)25g、櫛形ウレタン系高分子分散剤を固形分換算で3.75g、アルカリ可溶性樹脂1.25g、及びPGMEA70gを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、カーボンブラック分散液(F−23液、固形分:25質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして比較例3の黒色膜(H−23膜)を作製した。作製した黒色微粒子分散液、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0175】
[比較例4]
チタンブラック(13M−T、ジェムコ製)25g、櫛形ウレタン系高分子分散剤を固形分換算で2.5g、アルカリ可溶性樹脂7.5g、PGMEA65gを混合し、次いでビーズミルを用いて分散させ、黒色微粒子分散液(F−24液、固形分:30質量%)を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、比較例4の黒色膜(H−24膜)を作製した。作製した黒色微粒子分散液、黒色膜の物性を実施例1と同様に評価した。これらの結果を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
【表3】