(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056457
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】1,2−ジクロロエタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/02 20060101AFI20161226BHJP
C07C 19/045 20060101ALI20161226BHJP
B01J 27/122 20060101ALI20161226BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
C07C17/02
C07C19/045
B01J27/122 Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-281509(P2012-281509)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125438(P2014-125438A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今富 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】森 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】淺川 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 知一
(72)【発明者】
【氏名】小栗 元宏
【審査官】
黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−156625(JP,A)
【文献】
特開2010−142803(JP,A)
【文献】
特開2010−149115(JP,A)
【文献】
特開昭61−289050(JP,A)
【文献】
HELM, Lothar, et al.,Chem. Rev.,2005年,105,1923-1959
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシ塩素化触媒の存在下、エチレン、塩化水素及び空気によるオキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンを製造する際に、少なくとも2塔以上の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、該直列式オキシ塩素化触媒反応プロセスの最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、担体に少なくとも塩化銅並びに塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウムを含む中空形状のオキシ塩素化触媒(1)を充填し、該最下流側以外の少なくとも1つの固定床流通式触媒反応塔には、担体に少なくとも塩化銅並びに塩化カリウム及び/又は塩化セシウムを含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒(2)を充填し、オキシ塩素化反応を行うことを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項2】
オキシ塩素化触媒(1)が、少なくとも担体55〜91重量%、塩化銅8〜26重量%並びに塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウム1〜20重量%よりなるオキシ塩素化触媒であることを特徴とする請求項1に記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項3】
最下流側の固定床流通式触媒反応塔にてオキシ触媒化反応を行う際の分子状酸素/エチレン(モル比)が0.5以上の条件下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項4】
オキシ塩素化触媒(2)が、少なくとも担体55〜91重量%、塩化銅8〜26重量%並びに塩化カリウム及び/又は塩化セシウム1〜20重量%よりなるオキシ塩素化触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項5】
最下流側以外の固定床流通式触媒反応塔にてオキシ触媒化反応を行う際の分子状酸素/エチレン(モル比)が0.5未満の条件下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項6】
2つ固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、上流側の第1塔目の固定床流通式触媒反応塔に、オキシ塩素化触媒(2)として、担体に少なくとも塩化銅と塩化カリウム及び/又は塩化セシウムとを含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒を充填し、更に、下流側の第2塔目の固定床流通式触媒反応塔に、オキシ塩素化触媒(1)として、担体に少なくとも塩化銅と塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウムとを含む中空形状のオキシ塩素化触媒を充填することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項7】
3つ固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、上流側及び中流の第1塔目、第2塔目の固定床流通式触媒反応塔に、オキシ塩素化触媒(2)として、担体に少なくとも塩化銅と塩化カリウム及び/又は塩化セシウムとを含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒を充填し、更に、下流側の第3塔目の固定床流通式触媒反応塔に、オキシ塩素化触媒(1)として、担体に少なくとも塩化銅と塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウムとを含む中空形状のオキシ塩素化触媒を充填することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1,2−ジクロロエタンの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、エチレンから塩化ビニルモノマーの原料として有用な1,2−ジクロロエタンを高収率で製造する新規な1,2−ジクロロエタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルモノマー(VCMと記すこともある。)の製造法のうち、バランスド・オキシクロリネーション・プロセスと呼ばれる方法、即ち、(1)エチレンの直接塩素化反応による1,2−ジクロロエタン(EDCと記すこともある。)の製造、(2)EDCの熱分解反応によるVCMの製造、および(3)エチレンのオキシ塩素化反応によるEDCの製造、からなるプロセスが石油化学工業で広く採用されている。
【0003】
このうち、エチレンのオキシ塩素化反応によるEDCの製造法は、EDCの熱分解反応で副生した塩化水素をリサイクルして利用する他、ウレタン原料であるジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと記すこともある。)等のジイソシアネート製造時に副生した塩化水素をリサイクルすることが可能であり、ますます重要な製造法として位置づけられている。
【0004】
エチレンのオキシ塩素化反応は、酸素原料として空気を用いる空気法、空気に少量の分子状酸素を用いる酸素富化法、および酸素原料として分子状酸素を用いる酸素法が知られている。空気法および酸素富化法は、空気を用いていることから、窒素が過剰に含まれ、原料組成的にエチレンの組成を過剰にすることができない。そこで、連続的なオキシ塩素化反応では、反応の後半に分子状酸素が過剰に存在する条件になり、高価なエチレンが十分に転化できないことがある。
【0005】
そして、オキシ塩素化反応によるEDCの製造は、その製造設備の大型化が進んでおり、10万トンスケールでの大型装置が稼動している。このような大型装置での生産においては、生産効率上、1,2−ジクロロエタンの収率は重要なファクターであり、たとえ0.1%の1,2−ジクロロエタンの収率向上であってもその経済的価値は極めて大きなものとなる。
【0006】
このように1,2−ジクロロエタンを製造する方法としては、固定床流通式触媒反応塔からなるオキシ塩素化触媒反応プロセスで、エチレン、塩化水素および酸素原料としての空気から1,2−ジクロロエタンを製造する方法(例えば特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平05−007377号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1により提案された1,2−ジクロロエタンの製造方法は、エチレン過剰の条件では高いエチレン転化率を示すが、分子状酸素過剰条件ではエチレン転化率が低下し1,2−ジクロロエタンの収率が低くなるという課題を有するものであった。
【0009】
そこで、本発明は上記の課題の解決に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高収率で1,2−ジクロロエタンを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、オキシ塩素化触媒の存在下、エチレン、塩化水素及び酸素原料としての空気により1,2−ジクロロエタンを製造する際に、特定の直列式オキシ塩素化触媒反応プロセスを用い、最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、特定のオキシ塩素化触媒を充填し、オキシ塩素化反応を行うことにより1,2−ジクロロエタンを高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、オキシ塩素化触媒の存在下、エチレン、塩化水素及び空気によるオキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンを製造する際に、少なくとも2塔以上の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、該直列式オキシ塩素化触媒反応プロセスの最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、担体に少なくとも塩化銅
並びに塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネシウムを含む中空形状のオキシ塩素化触媒(1)を充填し、
該最下流側以外の少なくとも1つの固定床流通式触媒反応塔には、担体に少なくとも塩化銅並びに塩化カリウム及び/又は塩化セシウムを含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒(2)を充填し、オキシ塩素化反応を行うことを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法に関するものである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法は、オキシ塩素化触媒の存在下、エチレン、塩化水素及び酸素原料としての空気によるオキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンを製造するものである。そして、その際に、少なくとも2塔以上の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、該直列式オキシ塩素化触媒反応プロセスの最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、担体に少なくとも塩化銅及び298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1未満の金属カチオンのハロゲン化物を1種類以上含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒(1)を充填し、オキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンの製造を行うものである。ここで、最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、オキシ塩素化触媒(1)以外の触媒、例えば後述するオキシ塩素化触媒(2)を充填し、1,2−ジクロロエタンの製造を行った場合、1,2−ジクロロエタンの収率は低いものとなる。
【0014】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法において、最下流側の固定床流通式触媒反応塔に充填されるオキシ塩素化触媒(1)は、担体に、少なくとも塩化銅及び298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1未満の金属カチオンのハロゲン化物を1種類以上含み、中空円筒形状を有するオキシ塩素化触媒である。
【0015】
該オキシ塩素化触媒(1)を構成する担体としては、特に制限はなく、例えばアルミナ担体、シリカ担体、アルミナ−シリカ担体、マグネシア担体、カーボン担体等が挙げられ、その中でも良好な安定性を発現するオキシ塩素化触媒となることから、アルミナ単体であることが好ましい。また、担体は中空円筒形状を有するものであることが好ましい。
【0016】
該オキシ塩素化触媒(1)を構成する塩化銅としては、塩化銅と称される範疇に属するものであればよく、例えば塩化第一銅及び/又は塩化第二銅を挙げることができ、その中でも特に安定性、反応性に優れるオキシ塩素化触媒となることから塩化第二銅であることが好ましい。
【0017】
該オキシ塩素化触媒(1)は、298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1未満である金属カチオンのハロゲン化物を含んでなるものであり、該金属カチオンのハロゲン化物と該塩化銅とを併用することにより、従来のオキシ塩素化触媒が高い反応性を示すことが困難であった分子状酸素過剰条件下のオキシ塩素化反応においても、高い反応性、即ち、高い触媒活性を有するオキシ塩素化触媒となるものである。ここで、配位水交換速度とは、Chem.Rev., 2005,105,1923に記載のWater Exchange Rateとして記されるもので、金属カチオンへの水の配位速度および脱離速度を示すものである。
【0018】
298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1未満の金属カチオンとしては、例えばナトリウムカチオン、リチウムカチオン、ストロンチウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、テルビウムカチオン、ジスプロシウムカチオン、ホルミウムカチオン、エルビウムカチオン、ツリウムカチオン、インジウムカチオン、チタンカチオン、鉄カチオン、アルミニウムカチオン、ロジウムカチオン、亜鉛カチオン等を挙げることができ、298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1未満の金属カチオンのハロゲン化物としては、例えば塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、三塩化テルビウム、三塩化ジスプロシウム、三塩化ホルミウム、三塩化エルビウム、三塩化ツリウム、三塩化インジウム、三塩化チタン、三塩化鉄、塩化アルミニウム、三塩化ロジウム、三塩化インジウム、塩化亜鉛、臭化ナトリウム、臭化リチウム、臭化ストロンチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、三臭化テルビウム、三臭化ジスプロシウム、三臭化ホルミウム、三臭化エルビウム、三臭化ツリウム、三臭化インジウム、三臭化チタン、三臭化鉄、臭化アルミニウム、三臭化ロジウム、三臭化インジウム、および臭化亜鉛からなる群から選択される1種類以上が挙げられ、その中でも、特に、高い反応活性を示すオキシ塩素化触媒となることから、塩化ナトリウム及び/又は塩化マグネウムであることが好ましい。
【0019】
該オキシ塩素化触媒(1)における担体、塩化銅及び該金属カチオンのハロゲン化物の配合割合は、オキシ塩素化反応の触媒として作用する限りにおいて任意であり、その中でも特に活性に優れるオキシ塩素化触媒となることから担体55〜91重量%、塩化銅8〜25重量%、該金属カチオンのハロゲン化物1〜20重量%よりなるものであることが好ましく、特に担体70〜89重量%、塩化銅10〜20重量%、該金属カチオンのハロゲン化物1〜10重量%よりなるものであることが好ましい。また、塩化銅と該金属カチオンのハロゲン化物との割合は、オキシ塩素化触媒が触媒として作用する限りにおいて任意であり、その中でも触媒活性と安定性に優れるオキシ塩素化触媒となることから塩化銅1モルに対し該金属カチオンのハロゲン化物0.01〜3モルとすることが好ましく、特に0.1〜1モルとすることが好ましい
該オキシ塩素化触媒(1)は、中空円筒形状を有するものであり、中空円筒形状の範疇に属する形状であれば如何なる形状を有することも可能であり、その中でも、特に安定性、活性に優れるオキシ塩素化触媒となることから、外径2〜8mm、内径1〜7mm、長さ2〜8mm、肉厚0.5〜3.5mmの中空円筒形状であることが好ましく、特に外径3〜6mm、内径1〜3mm未満、長さ3〜6mm、肉厚0.5mm〜2.5mmの中空円筒形状であることが好ましい。ここで、中空円筒形状以外の形状、例えば球状、円柱状、角状等の形状である場合、得られる触媒は、オキシ塩素化反応の際の安定性、活性に劣るものとなる。
【0020】
該オキシ塩素化触媒(1)は、触媒活性が高いものとなることから、100〜300m
2/gの表面積を有するものであることが好ましく、特に120〜260m
2/gであることが好ましい。また、0.40〜0.70ml/gの全細孔容積を有するものであることが好ましく、特に0.56〜0.65ml/gであることが好ましい。また、特に強度に優れ、使用時の耐久性にも優れるものとなることから、該オキシ塩素化触媒の直径方向に対して5〜80Nの圧縮破壊強度を有するものであることが好ましく、特に10〜40Nであることが好ましい。なお、圧縮破壊強度は、木屋式強度計にて測定することができる。
【0021】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法は、オキシ塩素化触媒の存在下、エチレン、塩化水素及び酸素原料としての空気によるオキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンを製造するものである。そして、その際に、少なくとも2塔以上の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用い、該直列式オキシ塩素化触媒反応プロセスの最下流側の固定床流通式触媒反応塔に、該オキシ塩素化触媒(1)を充填し、オキシ塩素化反応を行い1,2−ジクロロエタンの製造を行うものである。その際の空気は、オキシ塩素化反応の原料である分子状酸素を含むものであり、空気そのもののほかに、空気に分子状酸素を加えたものであってもよい。
【0022】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法の好ましい態様のフローを
図1及び
図2に示す。
図1に示すフローは、2塔の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスであり、下流側に位置する第2塔目の固定床流通式触媒反応塔にオキシ塩素化触媒(1)を充填し、1,2−ジクロロエタンの製造を行うものである。また、
図2に示すフローは、3塔の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスであり、最下流側に位置する第3塔目の固定床流通式触媒反応塔にオキシ塩素化触媒(1)を充填し、1,2−ジクロロエタンの製造を行うものである。そして、これら1,2−ジクロロエタンの製造方法においては、分子状酸素濃度を制御するために第2塔目以降の固定床流通式触媒反応塔に空気及び/又は分子状酸素の供給を行うことができる。また、オキシ塩素化触媒(1)を充填する際には、除熱効果を高め安定した製造が可能となることから、希釈剤を共に充填することができ、該希釈剤としては、例えばシリカ、アルミナ、アルミナ−シリカ、マグネシア、カーボン等が用いられる。また、該希釈剤の形状としては、例えば球形状、円柱形状、円筒形状、ハニカム形状が挙げられる。さらに、希釈剤の寸法としては、オキシ塩素化触媒(1)と均一な充填が可能となることから、同様の寸法である外径2〜8mm、内径1〜7mm、長さ2〜8mmの円筒形状であることが好ましく、さらに外径3〜6mm、内径1〜3mm未満、長さ3〜6mmであることが好ましい。
【0023】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法においては、オキシ塩素化触媒が高い反応性を発現し、1,2−ジクロロエタンの収率に優れるものとなることから、最下流側の固定床流通式触媒反応塔における分子状酸素/エチレンのモル比を0.5以上とすることが好ましく、さらに0.5〜2.0とすることが好ましく、特に0.6〜0.9とすることが好ましい。この際の分子状酸素/エチレンのモル比は、原料として供給させる空気の体積に0.208を積算することで、分子状酸素の体積に換算され、さらにモル比として換算することができる。また、その際のエチレンと塩化水素の比率については、エチレンの高い転化率を維持し、効率的に1,2−ジクロロエタンを製造できることから、ガス容量比で、塩化水素/エチレン=1.0〜5.0であることが好ましく、特に2.0〜3.0であることが好ましい。
【0024】
さらに、エチレン、塩化水素、空気(分子状酸素)を供給する際は、そのままで用いても、不活性ガスで希釈して用いても良い。不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素の一種または混合ガスを用いることができる。また、空気としては、酸素富化空気を用いることができる。酸素を富化した空気の酸素含有量は好ましくは21〜60容量%、さらに好ましくは30〜35容量%である。
【0025】
最下流側の固定床流通式触媒反応塔における反応温度としては、1,2−ジクロロエタンへの転換が効率的になることから、100℃〜400℃が好ましく、特に150℃〜350℃であることが好ましい。また、反応圧力としては、例えば絶対圧で0.01〜2MPaであり、好ましくは0.05〜1MPaである。さらに、反応の際のガス時間空間速度(GHSV)は、1,2−ジクロロエタンが効率的に製造できることから、好ましくは10hr
−1〜10000hr
−1、さらに好ましくは30hr
−1〜8000hr
−1である。ここで、ガス時間空間速度(GHSV)とは、単位触媒体積当たりの単位時間(hr)に対するエチレンの供給量を表すものである。
【0026】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法における最下流側以外の固定床流通式触媒反応塔による1,2−ジクロロエタンの製造については、従来法のオキシ塩素化反応を用いることができる。そして、その中でも、特に1,2−ジクロロエタンの生産性に優れるものとなることから、担体に少なくとも塩化銅及び298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上の金属カチオンのハロゲン化物を1種類以上含む中空円筒形状のオキシ塩素化触媒(2)を充填し、オキシ塩素化反応を行うことが好ましい。
【0027】
該オキシ塩素化触媒(2)を構成する担体、塩化銅としては、オキシ塩素化触媒(1)において上記したものと同様のものを挙げることができる。
【0028】
該オキシ塩素化触媒(2)は、298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物を含んでなるものであり、298Kにおける配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物としては、例えば塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化バリウム、三塩化ガドリニウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化バリウム、および臭化ガドリニウムからなる群から選択される1種類以上のハロゲン物が挙げられ、これらのうち、オキシ塩素化触媒として高い反応性を発現することから、塩化カリウム及び/又は塩化セシウムが好ましい。
【0029】
該オキシ塩素化触媒(2)における担体、塩化銅及び該配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物の配合割合は、オキシ塩素化反応の触媒として作用する限りにおいて任意であり、その中でも特に活性に優れるオキシ塩素化触媒となることから担体55〜91重量%、塩化銅8〜25重量%、該配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物1〜20重量%よりなるものであることが好ましく、特に担体70〜89重量%、塩化銅10〜20重量%、該配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物1〜10重量%よりなるものであることが好ましい。また、塩化銅と該配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物との割合は、オキシ塩素化触媒が触媒として作用する限りにおいて任意であり、その中でも触媒活性と安定性に優れるオキシ塩素化触媒となることから塩化銅1モルに対し該配位水交換反応速度が1×10
9s
−1以上である金属カチオンのハロゲン化物0.01〜3モルとすることが好ましく、特に0.1〜1モルとすることが好ましい
該オキシ塩素化触媒(2)は、中空円筒形状を有するものであり、中空円筒形状の範疇に属する形状であれば如何なる形状を有することも可能であり、その中でも、特に安定性、活性に優れるオキシ塩素化触媒となることから、外径2〜8mm、内径1〜7mm、長さ2〜8mm、肉厚0.5〜3.5mmの中空円筒形状であることが好ましく、特に外径3〜6mm、内径1〜3mm未満、長さ3〜6mm、肉厚0.5mm〜2.5mmの中空円筒形状であることが好ましい。
【0030】
また、最下流側以外の固定床流通式触媒反応塔による1,2−ジクロロエタンの製造においても希釈剤を用いることができ、該希釈剤としては、上記したものを挙げることができる。
【0031】
また、1,2−ジクロロエタン製造時のホットスポットの出現を抑制するため、最下流側以外の固定床流通式触媒反応塔における分子状酸素/エチレンのモル比を0.5未満とすることが好ましく、特に0.1〜0.5未満とすることが好ましく、さらに0.2〜0.4とすることが好ましい。また、エチレンと塩化水素の比率としては、エチレンの転化率を維持し、効率的に1,2−ジクロロエタンを製造できることから、ガス容量比で塩化水素/エチレン=1.0〜5.0であることが好ましく、特に2.0〜3.0であることが好ましい。
【0032】
また、最下流側以外の固定床流通式触媒反応塔に供給されるエチレン、塩化水素、空気は、そのままで用いても、不活性ガスで希釈して用いても良い。不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素の一種または混合ガスを用いることができる。また、空気は、酸素富化空気を用いることができる。酸素を富化した空気の酸素含有量は好ましくは21〜60容量%、さらに好ましくは30〜35容量%である。また、その際の反応温度としては、1,2−ジクロロエタンへの転換が効率的になることから、100℃〜400℃が好ましく、特に150℃〜350℃であることが好ましい。また、反応圧力としては、例えば絶対圧で0.01〜2MPaであり、好ましくは0.05〜1MPaである。さらに、ガス時間空間速度(GHSV)は、1,2−ジクロロエタンへ効率的に転換できることから、好ましくは10hr
−1〜10000hr
−1、さらに好ましくは30hr
−1〜8000hr
−1である。
【0033】
本発明における1,2−ジクロロエタンの製造方法は、少なくとも2塔以上、特に1,2−ジクロロエタンの生産性に優れることから好ましくは3塔の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスを用いるものである。2塔以上の固定床流通式触媒反応塔を有することから、それぞれの固定床流通式触媒反応塔へ最適の原料の分割供給が可能となり、1,2−ジクロロエタンの生産性向上につながる。
【0034】
本発明の1,2−ジクロロエタンの製造方法の行う際の反応塔等の装置の材質に限定はなく、例えばニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、塩化水素への耐食性に優れることから、ニッケル及びニッケル合金であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の新規な1,2−ジクロロエタンの製造方法は、エチレンから塩化ビニルモノマーの原料として有用な1,2−ジクロロエタンを高収率で製造することが可能となり、工業的にも極めて有用である。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
以下に実施例に用いた測定方法および反応評価方法を示す。
【0038】
調製例1(オキシ塩素化触媒調製)
中空円筒形状のアルミナ担体(外径5.0mm、内径1.9mm、長さ4.7mm)に水を十分に吸収させた。CuCl
2=144mmol/l、それぞれの金属カチオンの塩化物(金属カチオン=Na
+、Mg
2+、K
+、Cs
+)=140mmol/lの濃度の浸漬液をそれぞれ用意し、それぞれの浸漬液81mlに前記のアルミナ担体30gを浸漬させた。室温で2時間浸漬した後、浸漬液からアルミナ担体を取り出し、マッフル炉を用いて100℃以上の温度で乾燥させた。その後、150〜400℃で5時間焼成し、外径5.0mm、内径1.9mm、長さ4.7mmを有する中空円筒形状のオキシ塩素化触媒をそれぞれ調製した。
【0039】
〜定量分析〜
金属成分の定量は蛍光X線(XRF、理学製、(商品名)ZSX PrimusII)を用い、管球Rh、管電圧50kV、管電流60mA、測定域はCuが45.00deg、Naが48.00deg、Mgが39.46deg、Kが136.64deg、Csが11.45degの測定条件で行った。調製したそれぞれのオキシ塩素化触媒の物性評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
〜反応ガス成分分析〜
充填剤として、(商品名)PorapakQ(Waters社製)および(商品名)MS−5A(GLサイエンス社製)を装着したガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−14B)により分析した。
【0041】
実施例1
1,2−ジクロロエタンの製造は
図1に示す2塔の固定床気相流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応装置において行った。
【0042】
該直列式オキシ塩素化反応装置は、2つのニッケル製固定床気相流通式触媒反応塔(内径21mm、長さ600mm)を直列に連結したものであり、上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔の中段に、調製例1で得られたアルミナ担体にCuCl
2−KClを含むオキシ塩素化触媒(2−1)を30cc充填した。また、下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔の中段に、調製例1で得られたアルミナ担体にCuCl
2−NaClを含むオキシ塩素化触媒(1−1)を30cc充填した。
【0043】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.40:1.92(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.40であり、第1塔目でのエチレン反応率は50.8%であった。
【0044】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.49:0.98:0.55:3.85(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は1.11であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は91.1%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に優れるものであった。
【0045】
実施例2
下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−MgCl
2を含むオキシ塩素化触媒(1−2)を30cc充填した以外は実施例1と同様の直列式オキシ塩素化反応装置とした。
【0046】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.40:1.92(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.40であった。第1塔目でのエチレン反応率は51.0%であった。
【0047】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.49:0.98:0.55:3.85(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は1.11であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は92.9%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に優れるものであった。
【0048】
実施例3
上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−CsClを含むオキシ塩素化触媒(2−2)を30cc充填した以外は実施例1と同様の直列式オキシ塩素化反応装置とした。
【0049】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.40:1.92(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.40であった。第1塔目でのエチレン反応率は46.8%であった。
【0050】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.53:1.06:0.57:3.85(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は1.06であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は90.5%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に優れるものであった。
【0051】
実施例4
上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−CsClを含むオキシ塩素化触媒(2−2)を30cc充填し、下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−MgCl
2を含むオキシ塩素化触媒(1−2)を30cc充填した以外は、実施例1と同様の直列式オキシ塩素化反応装置とした。
【0052】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.40:1.92(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.40であった。第1塔目でのエチレン反応率は46.2%であった。
【0053】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.54:1.08:0.57:3.85(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は1.06であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は91.9%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に優れるものであった。
【0054】
比較例1
下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−KClを含むオキシ塩素化触媒(2−1)を30cc充填した以外は実施例1と同様の直列式オキシ塩素化反応装置とした。
【0055】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.40:1.92(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.40であった。1塔目でのエチレン反応率は50.5%であった。
【0056】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際の塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.55:0.99:0.55:3.85(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は1.11であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は84.4%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に劣るものであった。
【0057】
実施例5
1,2−ジクロロエタンの製造は
図2に示す3塔の固定床気相流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応装置において行った。
【0058】
該直列式オキシ塩素化反応装置は、3つのニッケル製固定床気相流通式触媒反応塔(内径21mm、長さ600mm)を直列に連結したものであり、上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔及び中流の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔の中段に、調製例1で得られたアルミナ担体にCuCl
2−KClを含むオキシ塩素化触媒(2−1)を30cc充填した。また、下流側の第3塔目の固定床気相流通式触媒反応塔の中段に、調製例1で得られたアルミナ担体にCuCl
2−MgCl
2を含むオキシ塩素化触媒(1−2)を30cc充填した。
【0059】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.20:0.96(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度が230℃となるように制御を行い1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.20であった。第1塔目でのエチレン反応率は32.0%であった。
【0060】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を中流の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.68:1.36:0.24:1.92(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.35であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は70.0%であった。
【0061】
さらに、第2塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第3塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.30:0.60:0.25:2.88(容積比)であり、第3塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.83であった。第1塔目、第2塔目及び第3塔目の合計エチレン反応率は92.9%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に優れるものであった。
【0062】
比較例2
下流側の第3塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に調製例1により得られたアルミナ担体にCuCl
2−KClを含むオキシ塩素化触媒(2−1)を30cc充填した以外は、実施例5と同様の直列式オキシ塩素化反応装置とした。
【0063】
該直列式オキシ塩素化反応装置の上流側の第1塔目の固定床気相流通式触媒反応塔にエチレン、塩化水素及び空気(エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=1.00:2.00:0.20:0.96(容積比)に相当)で供給し、触媒層入口温度が230℃となるように制御を行い1,2−ジクロロエタンの製造を行った。第1塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.20であった。第1塔目でのエチレン反応率は32.2%であった。
【0064】
その後、第1塔目の反応ガスと等量の空気を中流の第2塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.68:1.36:0.24:1.92(容積比)であり、第2塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.35であった。第1塔目と第2塔目の合計エチレン反応率は70.1%であった。
【0065】
さらに、第2塔目の反応ガスと等量の空気を下流側の第3塔目の固定床気相流通式触媒反応塔に供給し、触媒層入口温度230℃で1,2−ジクロロエタンの製造を行った。その際のエチレン、塩化水素及び空気は、エチレン:塩化水素:分子状酸素:分子状窒素=0.30:0.60:0.25:2.88(容積比)であり、第3塔目の分子状酸素/エチレン(モル比)は0.83であった。第1塔目、第2塔目及び第3塔目の合計エチレン反応率は87.0%であり、1,2−ジクロロエタンの製造効率に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の新規な1,2−ジクロロエタンの製造方法は、エチレンから塩化ビニルモノマーの原料として有用な1,2−ジクロロエタンを高収率で製造することが可能となり、工業的にも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】;本発明の1,2−ジクロロエタンの製造を行う際の2塔の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスの概略図。
【
図2】:本発明の1,2−ジクロロエタンの製造を行う際の3塔の固定床流通式触媒反応塔を有する直列式オキシ塩素化反応プロセスの概略図。