特許第6056469号(P6056469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056469
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20161226BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   G03G9/08 375
   G03G9/08 372
   G03G9/08 384
【請求項の数】3
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-287185(P2012-287185)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130198(P2014-130198A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】千葉 尊
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101953(JP,A)
【文献】 特開2008−174430(JP,A)
【文献】 特開2008−273757(JP,A)
【文献】 特開2004−240194(JP,A)
【文献】 特開2012−203360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤(但し、極性基含有共重合体樹脂5〜50質量部で被覆させてなる樹脂被覆無機微粒子を除く。)を含有する静電荷現像用トナーの製造方法において、
湿式法により製造してなる着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行う工程を有し、
前記外添処理の条件が、容量1〜50Lの攪拌装置を用い、攪拌翼の回転数を3,000〜10,000rpm、かつ外添処理時間を3分間〜1時間とする条件であり、
前記外添剤として、
個数平均一次粒径が36〜100nmである無機微粒子A、
個数平均一次粒径が15〜35nmである無機微粒子B、
個数平均一次粒径が6〜14nmの無機微粒子C、及び
個数平均一次粒径が0.3〜2.0μmの脂肪酸亜鉛粒子を用い、かつ、
前記静電荷現像用トナーにおいて、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法
【請求項2】
着色樹脂粒子100質量部に対して
前記無機微粒子Aを0.1〜2.5質量部、
前記無機微粒子Bを0.1〜2.0質量部、
前記無機微粒子Cを0.05〜2.0質量部、及び
前記脂肪酸亜鉛粒子を0.05〜2.0質量部用いることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法
【請求項3】
前記基本流動性エネルギー(BFE)の値は、前記安定性試験において、前記粉体流動性分析装置が備えるブレードを、前記静電荷像現像用トナーの粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和であり、
前記圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値は、前記圧縮試験において、前記粉体流動性分析装置が備えるブレードを、10kPaで加圧後の前記静電荷像現像用トナーの圧縮粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該圧縮粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、及びプリンター等の、電子写真法を利用した画像形成装置の現像に用いることが出来る静電荷像現像用トナーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置、及び静電印刷装置等の画像形成装置においては、感光体上に形成される静電潜像を、静電荷像現像用トナーで現像することで所望の画像を形成する画像形成方法が広く実施され、複写機、プリンター、ファクシミリ、及びこれら複合機等に適用されている。
【0003】
例えば、電子写真法を用いた電子写真装置では、一般に、光導電性物質からなる感光体の表面を種々の手段で一様に帯電させた後、当該感光体上に静電潜像を形成する。次いで当該静電潜像を、トナーを用いて現像し、用紙等の記録材にトナー画像を転写した後、加熱等により定着し複写物を得るものである。
【0004】
近年、電子写真装置は、高画質化や高速印刷化に対応するものが強く望まれており、それに伴って、トナーに対する要求も多岐に亘っている。
それらのトナーを評価するために様々な分析機器が開発され、その特性を規定した提案も数多くなされている。トナー評価用の分析機器として粉体流動性分析装置が知られており、その内の1つはパウダーレオメーターの商品名で市販されている。パウダーレオメーターを使用してトナーの測定を行い、測定されたトナー特性を規定した提案も幾つかなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、現像剤補給式の現像方法において、パウダーレオメーターを用いて回転翼の先端スピード100mm/sec、回転翼の進入角度−5°における通気の有無のトータルエネルギー差が特定範囲にある現像剤を用いた現像方法が開示され、これによりカブリの発生を抑制し、現像器からのトナー噴出しがないことも開示されている。特許文献2には、縦型現像装置に用いられる非磁性一成分現像用トナーであって、パウダーレオメーターを用いて5Nの荷重を与えたトナー粉体層中にスクリューブレードを回転させながら進入させたときに発生するトルクと荷重から算出されるトータルエネルギーがブレード回転数100mm/sのときに特定範囲にあり、移送性指数が特定範囲にあるトナーが開示され、これにより画像濃度ムラが抑制されて、画質が均一な高画質画像が得られることも開示されている。
【0006】
特許文献3には、トナー粒子と無機微粉体を有する非磁性トナーであって、フローテスターによる100℃における粘度が特定範囲にあり、パウダーレオメーターで測定したプロペラ型ブレードの周速を100mm/secとしてトナー層中に進入させたときに得られる回転トルクと垂直荷重の総和が特定範囲にあり、100mm/secでトナー層中に進入させたときと10mm/secでトナー層中に進入させたときとの回転トルクと垂直荷重の総和の比が特定範囲にあるトナーが開示され、これにより低温定着性を達成しつつ、長期耐久性に優れることも開示されている。特許文献4には、トナー像形成部と現像剤補給部とを備える現像装置において、補給用現像剤は、トナー粒子と弱付着外添剤とを含有する補給用トナーを含み、補給用トナーは通気流量80ml/min、回転翼の先端スピード100mm/sec、回転翼の進入角度5°の条件でパウダーレオメーターによって測定したときの通気流動性エネルギーと、通気流量0ml/minの条件で測定したときの比ARが特定範囲にあることが開示され、画像形成時のプロセス速度が高速であっても、低帯電トナーの増加が起こり難く、高流動性の補給用トナーを用いた場合でもカブリの発生がないことも開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献のトナーでは、長期の印字によってトナーがストレスを受けて、シール部で圧縮され漏れ出すトナー漏れや現像器にトナーが充填され圧密した状態で高温放置した際のトナー劣化により発生する高温放置後噴出しといった、印字品質に対する設計が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−86532号
【特許文献2】特開2007−248913号
【特許文献3】特開2008−102395号
【特許文献4】特開2009−109726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、印字耐久性に優れ、トナー漏れや高温放置後のトナー噴出しの発生が少なく抑えられたトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、粉体流動性分析装置を用いて求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値と、圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値との比から算出される圧縮指標CI(EAC/BFE)の値を特定範囲とすることにより、上述の問題を解決出来ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明によれば、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷現像用トナーにおいて、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2であることを特徴とする第1の静電荷像現像用トナーが提供される。
【0012】
本発明においては、前記外添剤として、個数平均一次粒径が36〜100nmである無機微粒子A、個数平均一次粒径が15〜35nmである無機微粒子B、及び個数平均一次粒径が6〜14nmの無機微粒子Cを含有することが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記外添剤として、更に個数平均一次粒径が0.3〜2.0μmの無機微粒子Dを含有することがより好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷現像用トナーにおいて、着色樹脂粒子100質量部に対して、外添剤として、個数平均一次粒径が36〜100nmである無機微粒子Aを0.1〜2.5質量部、個数平均一次粒径が15〜35nmである無機微粒子Bを0.1〜2.0質量部、個数平均一次粒径が6〜14nmである無機微粒子Cを0.05〜2.0質量部、及び個数平均一次粒径が0.3〜2.0μmである無機微粒子Dを0.05〜2.0質量部含有し、且つ、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2であることを特徴とする第2の静電荷像現像用トナーが提供される。
【0015】
本発明(第1及び第2の静電荷像現像用トナー)においては、前記基本流動性エネルギー(BFE)の値は、前記安定性試験において、前記粉体流動性分析装置が備えるブレードを、前記静電荷像現像用トナーの粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和であり、前記圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値は、前記圧縮試験において、前記粉体流動性分析装置が備えるブレードを、10kPaで加圧後の前記静電荷像現像用トナーの圧縮粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該圧縮粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和である。
【発明の効果】
【0016】
上記の如き本発明の静電荷像現像用トナーによれば、圧縮指標CIを特定の範囲内とすることにより、印字耐久性に優れ、且つ、トナー漏れの発生や、高温条件下に放置した後のトナーの噴出しが極めて少ないトナーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷現像用トナーにおいて、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷現像用トナーにおいて、着色樹脂粒子100質量部に対して、外添剤として、個数平均一次粒径が36〜100nmである無機微粒子Aを0.1〜2.5質量部、個数平均一次粒径が15〜35nmである無機微粒子Bを0.1〜2.0質量部、個数平均一次粒径が6〜14nmである無機微粒子Cを0.05〜2.0質量部、及び個数平均一次粒径が0.3〜2.0μmである無機微粒子Dを0.05〜2.0質量部含有し、且つ、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第1及び第2の発明は、「結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷現像用トナーにおいて、粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により求められる基本流動性エネルギー(BFE)の値に対する、当該粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により求められる圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値の比である圧縮指標CI(EAC/BFE)の値が、1.5〜3.2である」点において共通している。すなわち、本発明の第2の発明は、第1の発明においてさらに外添剤の組成の詳細を規定した発明に相当する。
以下、本発明の第1の発明について説明する。なお、外添剤の組成の説明は、第2の発明の説明をも兼ねるものとする。
【0020】
以下、本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)について説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本発明に用いられる着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
【0021】
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0022】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0023】
本発明の着色樹脂粒子は、湿式法、または乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
【0024】
(A)懸濁重合法
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
【0025】
本発明で重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
【0026】
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
【0027】
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いることが望ましい。
【0028】
本発明では、着色剤を用いるが、カラートナーを作製する場合、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
【0029】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
【0030】
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、及び213等が挙げられる。
【0031】
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、237、238、251、254、255、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0032】
本発明では、各着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部である。
【0033】
定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
【0034】
上記離型剤は、エステルワックス及び炭化水素系ワックスの少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもグリセリンエステル化合物が好ましく、ヘキサグリセリンエステルがより好ましい。
【0035】
本発明において離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
【0036】
上記離型剤の他にも、例えば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いることが好ましい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
【0037】
その他の添加物として、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。本発明のトナーは、正帯電性トナーであることが好ましい。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
【0038】
また、その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0039】
(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本発明では、少なくとも重合性単量体、及び着色剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)、高速乳化分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0040】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジエチルアセテート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0041】
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0042】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
【0043】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0044】
本発明において、水系媒体とは、水を主成分とする媒体のことを言う。
【0045】
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られるトナーが画像を鮮明に再現することができ、且つ環境安定性が優れたものとなる。
【0047】
(A−3)重合工程
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0048】
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0049】
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0050】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0051】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0052】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0053】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0054】
(A−4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
【0055】
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0056】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0057】
(B)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
【0058】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0059】
結着樹脂としては、他にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
【0060】
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
【0061】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4〜12μmであり、更に好ましくは5〜10μmである。Dvが4μm未満である場合には、トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、画像濃度が低下したりする場合がある。Dvが12μmを超える場合には、画像の解像度が低下する場合がある。
【0062】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.3であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。Dv/Dnが1.3を超える場合には、転写性、画像濃度及び解像度の低下が起こる場合がある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名「マルチサイザー」)等を用いて測定することができる。
【0063】
本発明の着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
【0064】
本発明において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0065】
3.トナーの製造方法
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
【0066】
本発明においては、外添剤として、個数平均一次粒径が36〜100nmである無機微粒子Aを含有していることが好ましい。
無機微粒子Aの個数平均一次粒径が36nm未満である場合には、スペーサー効果が低下し、カブリの発生など印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、無機微粒子Aの個数平均一次粒径が100nmを超える場合には、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Aが遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
無機微粒子Aの個数平均一次粒径は、40〜80nmであることがより好ましく、45〜70nmであることがさらに好ましい。また、無機微粒子Aは疎水化処理されていてもよい。
【0067】
無機微粒子Aの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2.5質量部であることが好ましく、0.3〜2.0質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることがさらに好ましい。
無機微粒子Aの含有量が0.1質量部未満の場合には、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、無機微粒子Aの含有量が2.5質量部を超える場合には、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Aが遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、他の外添剤の種類や添加量、またその他の外添条件等にもよるが、後述する実施例に示すように、無機微粒子Aの含有量が少ないほどトナーの圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がる傾向があり、一方、無機微粒子Aの含有量が多いほど、トナーの圧縮指標CIが上がって耐久性が向上する傾向がある。
【0068】
本発明においては、外添剤として、個数平均一次粒径が15〜35nmである無機微粒子Bを含有していることが好ましい。
無機微粒子Bの個数平均一次粒径が15nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該無機微粒子Bが埋没し易くなり、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、無機微粒子Bの個数平均一次粒径が35nmを超える場合には、トナー粒子の表面に対して、当該無機微粒子Bが占める割合(被覆率)が低下するため、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができない場合がある。
無機微粒子Bの個数平均一次粒径は、17〜30nmであることがより好ましく、20〜25nmであることがさらに好ましい。また、無機微粒子Bは疎水化処理されていてもよい。
【0069】
無機微粒子Bの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、0.2〜1.5質量部であることがより好ましく、0.3〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
無機微粒子Bの含有量が0.1質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性や耐久性が低下したりする場合がある。一方、無機微粒子Bの含有量が2.0質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Bが遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する場合がある。
なお、他の外添剤の種類や添加量、またその他の外添条件等にもよるが、後述する実施例に示すように、無機微粒子Bの含有量が少ないほどトナーの圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がる傾向があり、一方、無機微粒子Bの含有量が多いほど、トナーの圧縮指標CIが上がって耐久性が向上する傾向がある。
【0070】
本発明においては、外添剤として、個数平均一次粒径が6〜14nmである無機微粒子Cを含有していることが好ましい。
無機微粒子Cの個数平均一次粒径が6nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該無機微粒子Cが埋没し易くなり、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、無機微粒子Cの個数平均一次粒径が14nmを超える場合には、トナー粒子の表面に対して、当該無機微粒子Cが占める割合(被覆率)が低下するため、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができない場合がある。
無機微粒子Cの個数平均一次粒径は、6.5〜12nmであることがより好ましく、7〜10nmであることがさらに好ましい。また、無機微粒子Cは疎水化処理されていてもよい。
【0071】
無機微粒子Cの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.05〜2.0質量部であることが好ましく、0.1〜1.5質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
無機微粒子Cの含有量が0.05質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性が低下したりする場合がある。一方、無機微粒子Cの含有量が2.0質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Cが遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する場合がある。
なお、他の外添剤の種類や添加量、またその他の外添条件等にもよるが、後述する実施例に示すように、無機微粒子Cの含有量が多いほどトナーの圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がる傾向があり、一方、無機微粒子Cの含有量が少ないほど、トナーの圧縮指標CIが上がって耐久性が向上する傾向がある。
【0072】
本発明のトナーは、無機微粒子A〜Cのうちいずれか1つを含むことが好ましく、いずれか2つを含むことがより好ましく、3つとも含むことがさらに好ましい。無機微粒子A〜Cをいずれも含み、無機微粒子A〜Cの粒径や添加量を適宜調節することにより、本発明のトナーは特定範囲の圧縮指標CIの値となるように調製される。
【0073】
無機微粒子A〜Cの例としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、及び酸化セリウム等が挙げられる。無機微粒子A〜Cは、互いにその材質が異なっていてもよいが、いずれも同じ材料からなることが好ましい。無機微粒子A〜Cは、いずれもシリカ及び/又は酸化チタンを含むことが好ましく、いずれもシリカからなることがより好ましい。
【0074】
無機微粒子Aとしては、種々の市販のシリカ微粒子を用いることができ、例えば、日本アエロジル社製のVPNA50H(:商品名、個数平均一次粒径:40nm);クラリアント社製のH05TA(:商品名、個数平均一次粒径:50nm);等が挙げられる。
無機微粒子Bとしては、種々の市販のシリカ微粒子を用いることができ、例えば、日本アエロジル社製のNA50Y(:商品名、個数平均一次粒径:35nm);テイカ社製のMSP−012(:商品名、個数平均一次粒径:16nm);キャボット社製のTG−7120(:商品名、個数平均一次粒径:20nm)等が挙げられる。
無機微粒子Cとしては、種々の市販のシリカ微粒子を用いることができ、例えば、クラリアント社製のHDK2150(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);日本アエロジル社製のR504(:商品名、個数平均一次粒径:12nm)、RA200HS(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);テイカ社製のMSP−013(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);キャボット社製のTG−820F(:商品名、個数平均一次粒径:7nm)等が挙げられる。
【0075】
外添剤として、無機微粒子A〜Cに加えて、更に個数平均一次粒径が0.3〜2.0μmの無機微粒子Dを含有することがより好ましい。
無機微粒子Dの個数平均一次粒径が上記範囲内である場合、感光体へのフィルミングが起こり難く、経時的に安定した帯電性をトナー粒子に付与し、多枚数の連続印刷を行っても、カブリ等による画質の劣化が起こり難く、特に高温高湿環境(HH環境)下においても画質の劣化が起こり難いトナーが得られる。
無機微粒子Dの個数平均一次粒径は、0.4〜1.5μmがより好ましく、0.5〜1.0μmがさらに好ましい。
【0076】
なお、本発明に使用される外添剤粒子の個数平均一次粒径は、例えば、以下のように測定できる。まず、外添剤の個々の粒子について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)等により粒径を測定する。このように200個以上の外添剤粒子の粒径を計測し、その平均値を、その粒子の個数平均一次粒径とする。
【0077】
無機微粒子Dの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.05〜2.0質量部であることが好ましく、0.07〜1.5質量部であることがより好ましく、0.1〜1.2質量部であることがさらに好ましい。
無機微粒子Dの含有量が0.05質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する場合がある。一方、無機微粒子Dの含有量が2.0質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Dが遊離し易くなり、流動性が低下する場合がある。
なお、他の外添剤の種類や添加量、またその他の外添条件等にもよるが、後述する実施例に示すように、無機微粒子Dの含有量が少ないほどトナーの圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がる傾向があり、一方、無機微粒子Dの含有量が多いほど、トナーの圧縮指標CIが上がって耐久性が向上する傾向がある。
【0078】
無機微粒子Dとしては、上述した無機微粒子A〜Cと同様の材料を用いてもよいが、脂肪酸亜鉛粒子を用いることが好ましい。
脂肪酸亜鉛粒子の脂肪酸部位(R−COO)に対応する脂肪酸(R−COOH)とは、カルボキシル基(−COOH)1個を持つカルボン酸(R−COOH)のうち、鎖式構造をもつものを全て含む。本発明においては、脂肪酸部位は、アルキル基(R−)の炭素数が多い高級脂肪酸から誘導されたものであることが好ましい。
【0079】
高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸(CH(CH10COOH)、トリデカン酸(CH(CH11COOH)、ミリスチン酸(CH(CH12COOH)、ペンタデカン酸(CH(CH13COOH)、パルミチン酸(CH(CH14COOH)、ヘプタデカン酸(CH(CH15COOH)、ステアリン酸(CH(CH16COOH)、アラキジン酸(CH(CH18COOH)、ベヘン酸(CH(CH20COOH)、リグノセリン酸(CH(CH22COOH)等が挙げられる。脂肪酸のアルキル基の炭素数は12〜24であることが好ましく、14〜22であることがより好ましく、16〜20であることが更に好ましい。これらの脂肪酸亜鉛粒子を構成する脂肪酸は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができるが、均一な特性を得る点から単独で用いることが好ましい。
【0080】
外添処理を行う攪拌機は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させることができる攪拌装置であれば特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、細川ミクロン社製)、及びメカノミル(:商品名、岡田精工社製)等の混合攪拌が可能な攪拌機を用いて外添処理を行うことができる。
【0081】
後述する実施例において示すように、攪拌条件や処理時間等の外添処理条件を変えることによっても圧縮指標CIを調節することができる。例えば、攪拌条件をより緩くしたり攪拌時間を短くしたりするほど、トナーの圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がる傾向があり、一方、攪拌条件をより厳しくしたり攪拌時間を長くしたりするほど、トナーの圧縮指標CIが上がって耐久性が向上する傾向がある。もっとも、トナーの圧縮指標CIは上述した外添剤の組成等からも影響を受けるため、上記傾向は必ずしも全てのトナーについて当てはまるものではない。
所望の圧縮指標CIを得るための好適な外添処理条件としては、例えば、1〜50L程度のスケールの攪拌装置を用いる場合、攪拌翼の回転数を3,000〜10,000rpm、外添処理時間を3分〜1時間とする条件が挙げられる。もっとも、当該条件は反応スケールが異なる場合には必ずしも適用できるとは限らない。
【0082】
4.本発明のトナー
本発明のトナーは、圧縮指標CI(Consolidation Index)により規定されるトナーである。
圧縮指標CIは、粉体流動性分析装置を用いた圧縮試験により測定される圧縮後トータルエネルギー(Total Energy After Compression:EAC)の値を、当該粉体流動性分析装置を用いた安定性試験により測定される基本流動性エネルギー(Basic Flowability Energy:BFE)の値で除した値である。
【0083】
基本流動性エネルギー(BFE)とは、安定性試験の最終回におけるトータルエネルギーのことを指す。ここで、トータルエネルギー(流動エネルギー)とは、ブレードを粉体中で螺旋動作させブレードに作用するトルクと垂直荷重から算出される仕事量であって、粉体を流動させるために必要なエネルギーのことである。トータルエネルギーの中でも、基本流動性エネルギー(BFE)は、動的試験における粉体の流動エネルギーの代表値として取り扱われる物理量である。
本発明における基本流動性エネルギー(BFE)の値は、安定性試験において、粉体流動性分析装置が備えるブレードを、静電荷像現像用トナーの粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和であることが好ましい。
【0084】
圧縮後トータルエネルギー(EAC)とは、一定の加圧を行って圧縮した後の粉体のトータルエネルギー(流動エネルギー)のことを指す。圧縮後トータルエネルギー(EAC)は、通常、基本流動性エネルギー(BFE)以上の値となり、圧縮されやすい粉体や、圧縮により流動しにくくなる粉体ほど、両エネルギーの差は大きくなる。したがって、圧縮指数CI(=EAC/BFE)が高い粉体ほど、圧縮されやすく、流動しにくく詰まりやすい性質を有するものと考えられる。
本発明における圧縮後トータルエネルギー(EAC)の値は、圧縮試験において、粉体流動性分析装置が備えるブレードを、10kPaで加圧後の静電荷像現像用トナーの圧縮粉体層中に先端速度100mm/秒で侵入させて、当該ブレードが当該圧縮粉体層中を移動することにより発生する回転トルク及び垂直荷重の総和であることが好ましい。
【0085】
本発明のトナーについて安定性試験及び/又は圧縮試験を行う場合には、粉体流動性分析装置に関する公知文献等を参照することができ、例えば、「粉体流動性分析装置 パウダーレオメータ FT−4 学術資料」(シスメックス株式会社 科学計測事業部 発行、2007年9月1日初版発行)等の公知文献(特に6〜7頁及び10頁)を参照することができる。ただし、本発明における安定性試験及び圧縮試験は、必ずしも上記公知文献に記載された内容のみに限定されるものではない。
【0086】
粉体流動性分析装置(以下、分析装置と称する場合がある。)としては、例えば、パウダーレオメーター FT4(:商品名、Freeman Technology社製)を使用することができる。
【0087】
安定性試験の典型例は以下の通りである。まず、測定容器にトナー試料を所定量加えた後、分析装置が備えるブレードの先端速度を所定の速度とし、且つブレードの進入角度を所定の角度として、測定容器内を上から下に通過させてコンディショニングを行う。コンディショニング後、適宜トナーケーキ層を形成する。次いで、ブレードの先端速度を所定の速度とし、且つブレードの進入角度を所定の角度として、測定容器内に形成したトナーケーキ層に対しブレードを上から下に通過させて、回転トルクと垂直荷重の総和を測定する。この回転トルクと垂直荷重の総和を基本流動性エネルギー(BFE)とする。
コンディショニング以降の操作は複数回行ってもよいが、基本流動性エネルギー(BFE)の値は、そのうち最終回に測定した回転トルクと垂直荷重の総和から求めるものとする。
【0088】
圧縮試験の典型例は以下の通りである。まず、測定容器にトナー試料を所定量加えた後、測定容器を加圧装置にセットし、所定の加圧条件下でトナー試料を加圧する。加圧装置は、分析装置に備え付けの装置であってもよいし、分析装置と異なる装置であってもよい。加圧後、トナーケーキ層の上に必要であればトナー試料を追加し、さらに加圧する。このトナー試料の追加及び加圧の操作を必要であれば数回繰り返し、圧縮トナーケーキ層を形成する。次いで、分析装置が備えるブレードの先端速度を所定の速度とし、且つブレードの進入角度を所定の角度として、測定容器内に形成した圧縮トナーケーキ層に対しブレードを上から下に通過させて、回転トルクと垂直荷重の総和を測定する。この回転トルクと垂直荷重の総和を圧縮後トータルエネルギー(EAC)とする。
【0089】
本発明のトナーは、圧縮指標CI(=EAC/BFE)の値が1.5〜3.2であるトナーである。
圧縮指標CIが1.5未満である場合には印字耐久性に極めて劣る。これは、上述した外添剤によるスペーサー効果等が発現しにくくなったり、外添条件が厳しすぎたりすることによるものと考えられる。一方、圧縮指標CIが3.2を超える場合には、トナー漏れや噴出しが極めて生じやすくなる。特にトナー漏れは、トナーの流動性が悪くなる結果、現像器内において流動しているトナー部分と流動していないトナー部分の差が大きくなることにより生じると考えられる。トナーは、一度圧密すると、再度流動化させるのが難しい。特に、現像器のシール部付近のトナーは循環しにくいため、トナー漏れが生じやすい。一方、トナーの噴出しは、トナーの流動性が悪く且つ高温放置した後に印刷した場合に生じやすい。このような場合には、現像器内の端部のトナーが特に流動化しにくくなり、そのようなトナーの循環不良及び高温環境によってトナーの帯電量が低下してしまうため、主に印字開始初期に噴出しが発生するためと考えられる。
本発明のトナーは、圧縮指標CIの値が1.8〜3.0であることが好ましく、2.0〜2.8であることがより好ましく、2.2〜2.7であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0091】
1.静電荷像現像用トナーの製造
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン75部及びn−ブチルアクリレート25部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25B」)5部を、インライン型乳化分散機(荏原製作所社製、商品名「エバラマイルダー」)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名「アクリベース FCA−161P」)1部、離型剤としてヘキサグリセリンオクタベヘネート(融点70℃)5部、パラフィンワックス(融点68℃)5部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.6部を添加し、混合、溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
【0092】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0093】
上記水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌した。そこへ重合開始剤としてt−ブチルパーオキシジエチルアセテート4.4部を投入した後、インライン型乳化分散機(荏原製作所社製、商品名「エバラマイルダー」)を用いて、15,000rpmの回転数で10分間高速剪断攪拌して分散を行い、重合性単量体組成物の液滴形成を行った。
【0094】
上記重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が、ほぼ100%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、及びイオン交換水10部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名「VA−086」、水溶性)0.3部を添加し、90℃で4時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子の水分散液を得た。
【0095】
上記着色樹脂粒子の水分散液を、室温下で、硫酸を攪拌しながら滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、体積平均粒径(Dv)が7.8μm、個数平均粒径(Dn)が6.9μm、粒径分布(Dv/Dn)が1.13及び平均円形度が0.987である着色樹脂粒子を得た。
【0096】
上記により得られた着色樹脂粒子100部に、外添剤として、無機微粒子Aとして個数平均一次粒径50nmのシリカ微粒子(クラリアント社製、商品名「H05TA」)を1.0部、無機微粒子Bとして個数平均一次粒径20nmのシリカ微粒子(キャボット社製、商品名「TG−7120」)を0.8部、無機微粒子Cとして個数平均一次粒径7nmのシリカ微粒子(キャボット社製、商品名「TG−820F」)を0.2部、及び無機微粒子Dとして個数平均一次粒径0.5μmのステアリン酸亜鉛微粒子(堺化学工業社製、商品名「SPZ−100」)を0.1部添加し、冷却用ジャケットを有する容量10Lのラボスケールの高速攪拌装置(日本コークス製、商品名「FMミキサー」)を用いて、攪拌翼の回転数4,000rpm、外添処理時間5.0分の条件下で混合攪拌して外添処理を行い、実施例1の静電荷像現像用トナーを製造した。試験結果を表1に示す。
【0097】
[実施例2]
実施例1の外添処理において、攪拌翼の回転数を4,000rpmから3,000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0098】
参考例3]
実施例1の外添処理において、外添処理時間を5.0分から2.5分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、参考例3の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0099】
[実施例4]
実施例1の外添処理において、外添処理時間を5.0分から25分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0100】
参考例5]
実施例1において、無機微粒子Aを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、参考例5の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0101】
[実施例6]
実施例1において、無機微粒子Aの添加量を1.0部から0.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0102】
[実施例7]
実施例1において、無機微粒子Aの添加量を1.0部から2.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0103】
参考例8]
実施例1において、無機微粒子Dを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、参考例8の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0104】
[実施例9]
実施例1において、無機微粒子Dの添加量を0.1部から0.2部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0105】
[実施例10]
実施例1において、無機微粒子Dの添加量を0.1部から0.8部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0106】
[実施例11]
実施例1において、無機微粒子Bの添加量を0.8部から1.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0107】
参考例12]
実施例1において、無機微粒子Bを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、参考例12の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0108】
[実施例13]
実施例1において、無機微粒子Cの添加量を0.2部から0.1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0109】
参考例14]
実施例1において、無機微粒子Bを添加せず、且つ、無機微粒子Cの添加量を0.2部から1.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、参考例14の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0110】
参考例15]
実施例1において、無機微粒子Cを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、参考例15の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0111】
[実施例16]
実施例1において、無機微粒子Cの添加量を0.2部から2.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例16の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0112】
[比較例1]
実施例1の外添処理において、攪拌翼の回転数を4,000rpmから2,500rpmに変更し、且つ、外添処理時間を5.0分から1.0分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0113】
[比較例2]
実施例1において、無機微粒子Aを添加せず、且つ、無機微粒子Bの添加量を0.8部から0.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0114】
[比較例3]
実施例1において、無機微粒子Aの添加量を1.0部から3.0部に変更し、且つ、無機微粒子Cを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0115】
[比較例4]
実施例1において、無機微粒子Aの添加量を1.0部から0.5部に変更し、且つ、無機微粒子Bの添加量を0.8部から0.4部に変更し、且つ、無機微粒子Cの添加量を0.2部から0.4部に変更し、且つ、無機微粒子Dを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0116】
[比較例5]
実施例1において、無機微粒子Cを添加せず、且つ、無機微粒子Dの添加量を0.1部から1.2部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
【0117】
2.静電荷像現像用トナーの評価
上記実施例1〜実施例2、参考例3、実施例4、参考例5、実施例6〜実施例7、参考例8、実施例9〜実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜参考例15、実施例16及び比較例1〜比較例5の静電荷像現像用トナーについて、着色樹脂粒子特性及びトナー特性、並びに印字特性を調べた。詳細は以下の通りである。
【0118】
2−1.着色樹脂粒子特性及びトナー特性
2−1−1.着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び粒径分布(Dv/Dn)
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名「ドライウエル」)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10〜30mL加え、20W(Watt)の超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名「マルチサイザー」)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)を測定し、粒径分布(Dv/Dn)を算出した。
【0119】
2−1−2.着色樹脂粒子の平均円形度
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、更に測定試料(着色樹脂粒子)0.02gを加え、超音波分散機で60W(Watt)、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度が3,000〜10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000〜10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名「FPIA−2100」)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式1に示され、平均円形度は、その平均をとったものである。
計算式1:(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0120】
2−1−3.トナーの圧縮指標CI
(1)安定性試験(基本流動性エネルギー(BFE)の測定)
以下の測定は、粉体流動性分析装置(Freeman Technology社製、商品名「パウダーレオメーター FT4」)を用いて行った。
クランプを取り付けた50mm×160mLの測定容器と50mm×85mLの付属容器をスプリッタで連結し、測定容器の容量を超える様に評価するトナーを90g程度充填した後、測定に使用するブレードを装着した分析装置に測定容器をセットし、ブレードの先端速度を60mm/秒、ブレードの進入角度を反時計回りに5°にして、測定容器内を上から下に通過させてコンディショニングを行った。
コンディショニング後、評価するトナーの容量を合わせる為に、測定容器のみにトナーが充填される様にスプリッタを用いてトナーケーキ層を作製した。次いで、ブレードの先端速度を100mm/秒、ブレードの進入角度を時計回りに5°にして、測定容器内に作製したトナーケーキ層を上から下に通過させて、回転トルクと垂直荷重の総和を測定した。
コンディショニング以降の操作を6回実施し(合計7回測定)、7回目の回転トルクと垂直荷重の総和を基本流動性エネルギー(BFE)とした。
【0121】
(2)圧縮試験(圧縮後トータルエネルギー(EAC)の測定)
クランプを取り付けた50mm×160mLの測定容器と50mm×85mLの付属容器をスプリッタで連結し、測定容器の容量を超える様になるための1/4程度を目途として評価するトナーを25g程度充填した後、圧縮用のピストンを装着した分析装置に測定容器をセットし、粉体が安定した後に10kPaの圧力で30秒間、評価するトナーを加圧した。
圧縮したトナーケーキ層の上に更にトナーを25g程度充填し、粉体が安定した後に10kPaの圧力で30秒間、評価するトナーを加圧した。この操作を更に2度繰り返し、トナーが100g程度充填された圧縮トナーケーキ層を形成した。次いで、評価するトナーの容量を合わせる為に、測定容器のみにトナーが充填される様にスプリッタを用いて測定用の圧縮トナーケーキ層を作製した。
圧縮用のピストンからブレードに取り替えた後、ブレードの先端速度を100mm/秒、ブレードの進入角度を時計回りに5°にして、測定容器内に作製した圧縮トナーケーキ層を上から下に通過させて、回転トルクと垂直荷重の総和を測定し、この測定値を圧縮後トータルエネルギー(EAC)とした。
【0122】
(3)圧縮指標CI
圧縮指標CIは、安定性試験で測定した基本流動性エネルギー(BFE)と圧縮試験で測定した圧縮後トータルエネルギー(EAC)との値から下記の式に基づき算出した。
圧縮指標CI=圧縮後トータルエネルギー(EAC)/基本流動性エネルギー(BFE)
【0123】
2−2.印字特性
2−2−1.印字耐久性
印字耐久性試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(HL−4570CDW)を用いた。現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で15,000枚まで連続印刷を行った。500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名「RD918」)を用いて黒ベタ画像の中央の印字濃度を3点測定し、その平均値を印字濃度とした。
更に、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名「スコッチメンディングテープ810−3−18」)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名「ND−1」)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値(%)とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。
尚、表1及び表2中、「15000<」とあるのは、15,000枚の時点においても、印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できたことを示す。
但し、下記のトナー漏れ性の評価が著しく悪化した場合は途中で評価を中止した。
【0124】
2−2−2.トナー漏れ性
上記「2−2−1.印字耐久性」の評価と併せて、トナーの漏れ性の評価も実施した。
印字耐久中に現像器の周囲を確認し、トナー漏れが発生しているかも併せて確認を行った。確認のタイミングは印字耐久性評価と同じく500枚毎に現像器のサイドシール部を目視で確認し、漏れの有無を下記評価基準により判定した。
尚、下記評価基準において、レベル2までがトナー漏れが許容できるレベルである。
但し、上記の印字耐久性の評価が途中で終了した場合は、その時点でトナー漏れ性を評価した。
【0125】
評価基準
レベル0:15,000枚印字しても、サイドシールからトナー漏れなし。
レベル1:10,001〜15,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル2:5,001〜10,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル3:1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル4:1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから大量のトナー漏れあり。
【0126】
2−2−3.高温放置後噴出し
高温放置後噴出し試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(HL−4570CDW)を用いた。現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、そのトナーカートリッジを50℃の乾燥機に120時間放置し、取り出したカートリッジと印字用紙をプリンターにセットして、連続印刷を行った。
連続印字は常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で実施し、印刷は印字濃度30%でハーフトーン印字を5枚行い、トナーカートリッジより印刷用紙に噴出したトナーによって、0.3×0.3mm以上の斑点がハーフトーン上にあるか否かを確認した。
斑点が見られた場合には、更に45枚印字を実施し、斑点が消えるか確認を行った。斑点が見られない場合、印字を中止し、印字した現像器を確認して実際に噴出しているか確認を行って、高温放置後噴出しを下記評価基準により判定した。
尚、下記評価基準において、レベル2までが高温放置後噴出しが許容できるレベルである。
【0127】
評価基準
レベル0:印字物上に斑点の発生はない。トナーカートリッジを確認しても噴出しが見られない。
レベル1:印字物上に斑点の発生はない。トナーカートリッジを確認すると少量に噴出しが見られる。
レベル2:斑点が発生しているが、印字5枚目までに消える。
レベル3:斑点が発生しているが、印字50枚目までに消える。
レベル4:50枚以上印字しても、噴出しによる斑点が消えない。
【0128】
実施例1〜実施例2、参考例3、実施例4、参考例5、実施例6〜実施例7、参考例8、実施例9〜実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜参考例15、実施例16、及び比較例1〜比較例5の静電荷像現像用トナーの測定及び評価結果を、外添剤の組成及び外添条件と併せて表1及び表2に示す。
なお、下記表2中、比較例2及び比較例4のトナーの漏れは、いずれもトナーの耐久性が悪すぎるため、評価しなかった。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
3.トナーの評価
以下、表1及び表2を参照しながら、静電荷像現像用トナーの評価結果について検討する。
表2より、比較例1のトナーは、圧縮指標CIが3.27のトナーである。表2より、比較例1のトナーは、印字耐久試験における連続印刷枚数が15,000枚を超える。したがって、比較例1のトナーは、少なくとも印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例1のトナーは、トナー漏れ評価がレベル3であり、高温放置後噴出し評価がレベル4である。したがって、圧縮指標CIが3.2を超える比較例1のトナーは、比較的少ない印刷枚数で少量のトナー漏れが生じ、且つ、噴出しによる斑点が消えづらいことが分かる。
【0132】
表2より、比較例2のトナーは、圧縮指標CIが1.41のトナーである。表2より、比較例2のトナーは、高温放置後噴出し評価がレベル0である。したがって、比較例2のトナーは、比較的少ない印刷枚数においては、高温放置後噴出しの問題は見られない。
しかし、圧縮指標CIが1.5未満の比較例2のトナーは、上述したようにトナーの耐久性が悪すぎ、印字耐久試験における連続印刷枚数は5,000枚に留まる。この連続印刷枚数は、実施例1〜実施例2、参考例3、実施例4、参考例5、実施例6〜実施例7、参考例8、実施例9〜実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜参考例15、実施例16、及び比較例1〜比較例5中、最も少ない。
【0133】
表2より、比較例3のトナーは、圧縮指標CIが3.29のトナーである。表2より、比較例3のトナーは、印字耐久試験における連続印刷枚数が15,000枚を超える。したがって、比較例3のトナーは、少なくとも印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例3のトナーは、トナー漏れ評価及び高温放置後噴出し評価がいずれもレベル3である。したがって、圧縮指標CIが3.2を超える比較例3のトナーは、比較的少ない印刷枚数で少量のトナー漏れが生じ、且つ、噴出しによる斑点が比較的長く残ることが分かる。
【0134】
表2より、比較例4のトナーは、圧縮指標CIが1.39のトナーである。表2より、比較例4のトナーは、高温放置後噴出し評価がレベル0である。したがって、比較例4のトナーは、比較的少ない印刷枚数においては、高温放置後噴出しの問題は見られない。
しかし、圧縮指標CIが1.5未満の比較例4のトナーは、上述したようにトナーの耐久性が悪すぎ、印字耐久試験における連続印刷枚数は6,000枚に留まる。
【0135】
表2より、比較例5のトナーは、圧縮指標CIが3.29のトナーである。表2より、比較例5のトナーは、印字耐久試験における連続印刷枚数が14,000枚である。したがって、比較例5のトナーは、少なくとも印字耐久性に問題は見られない。
しかし、比較例5のトナーは、トナー漏れ評価及び高温放置後噴出し評価がいずれもレベル3である。したがって、圧縮指標CIが3.2を超える比較例5のトナーは、比較的少ない印刷枚数で少量のトナー漏れが生じ、且つ、噴出しによる斑点が比較的長く残ることが分かる。
【0136】
一方、表1及び表2より、実施例1〜実施例2、参考例3、実施例4、参考例5、実施例6〜実施例7、参考例8、実施例9〜実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜参考例15及び実施例16のトナーは、圧縮指標CIが1.5〜3.2の範囲内のトナーである。表1及び表2より、これらのトナーは、トナー漏れ性評価及び高温放置後噴出し評価がいずれもレベル0〜2の範囲内に留まり、且つ、印字耐久試験における連続印刷枚数が10,000枚以上である。
よって、圧縮指標CIが1.5〜3.2の範囲内であるこれらのトナーは、印字耐久性に優れ、且つ、トナー漏れの発生や、高温条件下に放置した後のトナーの噴出しが極めて少ないトナーであることが分かる。
【0137】
以下、トナーの外添条件が、圧縮指標CI及びトナー特性に与える影響について検討する。
まず、攪拌翼の回転数の条件のみが異なる実施例1(回転数:4,000rpm)及び実施例2(回転数:3,000rpm)を比較する。実施例1の圧縮指標CIは実施例2の圧縮指標CIよりも小さく、また、実施例1のトナー漏れ評価は実施例2のトナー漏れ評価よりもよい。これらの結果から、攪拌翼の回転数を上げることにより、圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できると推測される。
【0138】
次に、外添処理時間のみが異なる実施例1(外添処理時間:5.0分)、参考例3(外添処理時間:2.5分)、及び実施例4(外添処理時間:25分)を比較する。外添処理時間は、実施例4、実施例1、参考例3の順に長い。また、圧縮指標CIは、実施例4、実施例1、参考例3の順に小さい。また、これらのトナーの中で、トナー漏れ評価については参考例3がやや悪く、実施例4は耐久性にやや劣る。これらの結果から、外添処理時間を延ばすほど、圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できる一方、耐久性にやや劣ると推測される。また、これらの結果から、外添処理時間を短くするほど、圧縮指標CIが上がって耐久性は向上するが、流動性が下がるためトナー漏れのおそれがあると推測される。
【0139】
なお、トナーの外添条件について、実施例1(攪拌翼の回転数:4,000rpm、外添処理時間:5.0分)と比較例1(攪拌翼の回転数:2,500rpm、外添処理時間:1.0分)とを比較すると、比較例1は実施例1よりも攪拌翼の回転数が少なすぎ、且つ外添処理時間が短すぎる。したがって、比較例1のトナーは、圧縮指標CIが上がり過ぎてトナーの流動性に乏しくなる結果、トナー漏れ及び高温放置後の噴出しの問題が生じると考えられる。
【0140】
以下、トナーの外添剤の組成が、圧縮指標CI及びトナー特性に与える影響について検討する。
まず、無機微粒子Aの添加量の条件のみが異なる実施例1(添加量:1.0部)、参考例5(添加量:0部)、実施例6(添加量:0.5部)、及び実施例7(添加量:2.0部)を比較する。無機微粒子Aの添加量は、参考例5、実施例6、実施例1、実施例7の順に少ない。また、圧縮指標CIは、参考例5、実施例6、実施例1、実施例7の順に小さい。また、これらのトナーの中で、トナー漏れ評価及び高温放置後噴出し評価については実施例7がやや悪く、参考例5及び実施例6は耐久性にやや劣る。これらの結果から、無機微粒子Aの添加量が少ないほど、圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できる一方、耐久性にやや劣ると推測される。また、これらの結果から、無機微粒子Aの添加量が多いほど、圧縮指標CIが上がって耐久性は向上するが、流動性が下がるためトナー漏れ及びトナー噴出しのおそれがあると推測される。
【0141】
次に、無機微粒子Bの添加量の条件のみが異なる実施例1(添加量:1.0部)、実施例11(添加量:1.5部)、及び参考例12(添加量:0部)を比較する。無機微粒子Bの添加量は、参考例12、実施例1、実施例11の順に少ない。また、圧縮指標CIは、参考例12、実施例1、実施例11の順に小さい。また、これらのトナーの中で、高温放置後噴出し評価については実施例11がやや悪く、参考例12は耐久性にやや劣る。これらの結果から、無機微粒子Bの添加量が少ないほど、圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できる一方、耐久性にやや劣ると推測される。また、これらの結果から、無機微粒子Bの添加量が多いほど、圧縮指標CIが上がって耐久性は向上するが、流動性が下がるためトナー漏れのおそれがあると推測される。
【0142】
なお、無機微粒子A及びBの添加量の条件について、実施例1(無機微粒子Aの添加量:1.0部、無機微粒子Bの添加量:0.8部)と比較例2(無機微粒子Aの添加量:0部、無機微粒子Bの添加量:0.5部)とを比較すると、比較例2は実施例1よりも無機微粒子A及びBの添加量がいずれも少ない。したがって、比較例2のトナーは、圧縮指標CIが下がり過ぎる結果、印字耐久性が特に悪くなると考えられる。
【0143】
続いて、無機微粒子Cの添加量の条件のみが異なる実施例1(添加量:0.2部)、実施例13(添加量:0.1部)、参考例15(添加量:0部)、及び実施例16(添加量:2.5部)を比較する。無機微粒子Cの添加量は、参考例15、実施例13、実施例1、実施例16の順に少ない。また、圧縮指標CIは、実施例16、実施例1、実施例13、参考例15の順に小さい。また、これらのトナーの中で、トナー漏れ評価については実施例13及び参考例15がやや悪く、高温放置後噴出し評価については実施例13、参考例15、及び実施例16がやや悪い。これらの結果から、無機微粒子Cの添加量が多いほど、圧縮指標CIが下がると推測される。また、これらの結果から、無機微粒子Cの添加量が少ないほど、圧縮指標CIが上がって耐久性は向上するが、流動性が下がるためトナー漏れのおそれがあると推測される。
【0144】
なお、無機微粒子A及びCの添加量の条件について、実施例1(無機微粒子Aの添加量:1.0部、無機微粒子Cの添加量:0.2部)と比較例3(無機微粒子Aの添加量:3.0部、無機微粒子Cの添加量:0部)とを比較すると、比較例3は実施例1よりも無機微粒子Aの添加量が多い一方、無機微粒子Cの添加量が少ない。したがって、比較例3のトナーは、圧縮指標CIが上がり過ぎてトナーの流動性に乏しくなる結果、トナー漏れ及び高温放置後の噴出しの問題が生じると考えられる。
【0145】
また、無機微粒子B及びCの添加量の条件について、実施例1(無機微粒子Bの添加量:0.8部、無機微粒子Cの添加量:0.2部)と参考例14(無機微粒子Bの添加量:0部、無機微粒子Cの添加量:1.5部)とを比較すると、参考例14は実施例1よりも無機微粒子Bの添加量が少ない一方、無機微粒子Cの添加量が多い。したがって、参考例14のトナーは、圧縮指標CIが実施例1よりも小さくなる結果、トナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できる一方、実施例1よりも耐久性にやや劣る。
【0146】
次に、無機微粒子Dの添加量の条件のみが異なる実施例1(添加量:0.1部)、参考例8(添加量:0部)、実施例9(添加量:0.2部)、及び実施例10(添加量:0.8部)を比較する。無機微粒子Dの添加量は、参考例8、実施例1、実施例9、実施例10の順に少ない。また、圧縮指標CIは、参考例8、実施例1、実施例9、実施例10の順に小さい。また、これらのトナーの中で、トナー漏れ評価及び高温放置後噴出し評価については実施例9及び実施例10がやや悪く、参考例8は耐久性にやや劣る。これらの結果から、無機微粒子Dの添加量が少ないほど、圧縮指標CIが下がってトナーの流動性が上がり、トナーの適度な循環によりトナー漏れの可能性が低減できる一方、耐久性にやや劣ると推測される。また、これらの結果から、無機微粒子Dの添加量が多いほど、圧縮指標CIが上がって耐久性は向上するが、流動性が下がるためトナー漏れのおそれがあると推測される。
【0147】
なお、無機微粒子C及びDの添加量の条件について、実施例1(無機微粒子Cの添加量:0.2部、無機微粒子Dの添加量:0.1部)と比較例5(無機微粒子Cの添加量:0部、無機微粒子Dの添加量:1.2部)とを比較すると、比較例5は実施例1よりも無機微粒子Cの添加量が少ない一方、無機微粒子Dの添加量が多い。したがって、比較例5のトナーは、圧縮指標CIが上がり過ぎてトナーの流動性に乏しくなる結果、トナー漏れ及び高温放置後の噴出しの問題が生じると考えられる。
【0148】
また、外添剤の添加量が4種類とも異なる実施例1及び比較例4を比較すると、比較例4は実施例1よりも無機微粒子A、B、及びDの添加量が少ない一方、無機微粒子Cの添加量が多い。したがって、比較例4のトナーは、圧縮指標CIが下がり過ぎる結果、印字耐久性が特に悪くなると考えられる。