【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィド、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、水酸化マグネシウム及び断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤を配合し、更に必要に応じて離型剤を配合するポリアリーレンスルフィド系組成物は、優れた耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、溶融流動性、金型離型性、成形品外観、寸法安定性に特に優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)20〜50重量%、下記の一般式(1)で示されるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であるビニルアルコール系共重合体(B)0.5〜20重量%、水酸化マグネシウム(C)20〜69.5重量%並びに断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)10〜50重量%からな
り、ASTM D−790 Method−1を準拠し測定した曲げ強度が150MPa以上、かつASTM D−638を準拠し測定した引張強度が90MPa以上を有すると共に、射出成形により長さ70mm、幅70mm、厚さ2mmの平板試験片を作製し、該試験片より求めた幅方向の収縮率と長さ方向の収縮率から幅方向成形収縮率/長さ方向成形収縮率として表される成形収縮率の異方性が2.0以下である、ことを特徴とする高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物に関するものである。
【0012】
【化1】
(ここで、x、zはいずれもが0を超え、yが0以上、x+y+z=1であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0013】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)20〜50重量%、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)0.5〜20重量%、水酸化マグネシウム(C)20〜69.5重量%及び断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)10〜50重量%からなるものである。
【0014】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)としては、ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよく、その中でも、得られるポリアリーレンスルフィド系組成物が特に機械的強度、成形加工性に優れたものとなることから測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを用いて高化式フローテスターで測定した溶融粘度が50〜3000ポイズのポリアリーレンスルフィドが好ましく、特に60〜1500ポイズであるものが好ましい。
【0015】
該ポリアリーレンスルフィド(A)としては、その構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましい。また、他の構成単位として、例えばm−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等を含有していてもよく、中でもポリ(p−フェニレンスルフィド)が好ましい。
【0016】
該ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば一般的に知られている重合溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応する方法により製造することが可能であり、アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びそれらの混合物が挙げられ、これらは水和物の形で使用しても差し支えない。これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基とを反応させることによっても得られ、ジハロ芳香族化合物の重合系内への添加に先立ってその場で調製されても、また系外で調製されたものを用いても差し支えない。また、ジハロ芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニル等が挙げられる。また、アルカリ金属硫化物及びジハロ芳香族化合物の仕込み比は、アルカリ金属硫化物/ジハロ芳香族化合物(モル比)=1.00/0.90〜1.10の範囲とすることが好ましい。
【0017】
重合溶媒としては、極性溶媒が好ましく、特に非プロトン性で高温でのアルカリに対して安定な有機アミドが好ましい溶媒である。該有機アミドとしては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素及びその混合物、等が挙げられる。また、該重合溶媒は、重合によって生成するポリマーに対し150〜3500重量%で用いることが好ましく、特に250〜1500重量%となる範囲で使用することが好ましい。重合は200〜300℃、特に220〜280℃にて0.5〜30時間、特に1〜15時間攪拌下にて行うことが好ましい。
【0018】
さらに、該ポリアリーレンスルフィド(A)は、直鎖状のものであっても、酸素存在下高温で処理し、架橋したものであっても、トリハロ以上のポリハロ化合物を少量添加して若干の架橋または分岐構造を導入したものであっても、窒素等の非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。
【0019】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)の配合量は、20〜50重量%である。ここで、該ポリアリーレンスルフィド(A)の配合量が20重量%未満である場合、得られる組成物は機械的強度、溶融流動性、金型離型性、成形品外観に劣るものとなる。一方、該ポリアリーレンスルフィド(A)の配合量が50重量%を越える場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。
【0020】
本発明を構成する上記の一般式(1)で示されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)は、高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物の耐トラッキング性を向上させるために用いられるものである。そして、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)は、上記の一般式(1)において、x、zはいずれもが0を超え、yは0以上、x+y+z=1であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基からなるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
【0021】
ここで、xが0である場合、得られる組成物は耐熱性に劣るものとなる。また、zが0である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。そして、特に高い耐トラッキング性と良好な機械的強度を併せ持つ高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物となることから、x=0.25〜0.94、y=0〜0.15、z=0.02〜0.75の範囲であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましく、また、x、y、zはいずれもが0を超えるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、特にx=0.69〜0.94、y=0.01〜0.15、z=0.02〜0.30の範囲であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。
【0022】
また、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等を挙げることができる。ここで、炭素数10を超えるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体である場合、得られる組成物は機械的強度に劣るものとなる。
【0023】
該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の製法は特に制限はなく、例えばエチレン単量体、脂肪酸ビニルエステル単量体及びビニルアルコール単量体を共重合する方法;エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体を部分鹸化する方法、等により得ることが可能であり、中でもエチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体を部分鹸化し得られるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体は工業的に入手が容易であることから好ましく、中でもエチレン−酢酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、工業的に入手が容易であること、特に耐トラッキング性に優れるポリアリーレンスルフィド系組成物となることから最も好ましい。
【0024】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成する該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量は、0.5〜20重量%である。該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量が0.5重量%未満である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。一方、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量が20重量%を越える場合、得られる組成物は機械的強度、成形品外観に劣るものとなる。
【0025】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成する水酸化マグネシウム(C)としては、水酸化マグネシウムと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも、得られる高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物が、耐トラッキング性、溶融流動性に優れ、かつ高い機械的強度を有するものとなることから、化学式Mg(OH)
2で示される水酸化物を80重量%以上含む比較的純度の高い水酸化マグネシウムが好ましく、化学式Mg(OH)
2で示される水酸化物を80重量%以上、CaO含有量5重量%以下、塩素含有量1重量%以下である水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)
295重量%以上、CaO含有量1重量%以下、塩素含有量0.5重量%以下である水酸化マグネシウムが更に好ましく、Mg(OH)
298重量%以上、CaO含有量0.1重量%以下、塩素含有量0.1重量%以下の高純度水酸化マグネシウムが最も好ましい。
【0026】
該水酸化マグネシウム(C)は、特に耐トラッキング性、溶融流動性、成形品外観にも優れた高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D
50)が0.3〜10μmの範囲を有するものであることが好ましく、特に0.5〜3μmの範囲を有するものであることが好ましい。また、該水酸化マグネシウム(C)の比表面積は、特に耐トラッキング性、溶融流動性にも優れた高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物となることから、10m
2/g以下であることが好ましい。
【0027】
該水酸化マグネシウム(C)としては、例えば表面処理が施されていない水酸化マグネシウム(以下、表面未処理水酸化マグネシウム(C1)と記す。)、高級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸の金属塩、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等で表面処理が施された水酸化マグネシウム(以下、表面処理水酸化マグネシウム(C2)と記す。)、等が挙げられる。そして、表面処理水酸化マグネシウムの表面被覆処理剤について特に制限はなく、高級脂肪酸及びその金属塩としては、例えばステアリン酸、オレイン酸等、及びそのアルカリ金属塩等;アニオン系界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル等;リン酸エステルとしては、例えばオルトリン酸と高級アルコールのエステル類等;シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等;チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等;アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等;多価アルコールと脂肪酸のエステル類としては、例えばグリセリンモノステアレート等、が挙げられる。そして、これら水酸化マグネシウム(C)の中でも特に機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド系組成物となることから、表面処未理水酸化マグネシウム(C1)、シラン系カップリング剤で表面処理が施された表面処理水酸化マグネシウム(C2)及びこれらの混合物が好ましい。
【0028】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成する水酸化マグネシウム(C)の配合量は20〜69.5重量%である。該水酸化マグネシウム(C)の配合量が20重量%未満である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。一方、該水酸化マグネシウム(C)の配合量が69.5重量%を越える場合、得られる組成物は機械的強度、溶融流動性、金型離型性、成形品外観に劣るものとなる。
【0029】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成する断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)は、該高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物の機械的強度、靭性及び寸法安定性を向上させるために配合されるものである。該断面の形状が偏平であるガラス繊維充填剤としては、特に機械的強度と寸法安定性のバランスに優れる高強度ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、繊維断面における長径と短径の比(長径/短径)が2〜20のものであることが好ましい。ここで、断面の形状が偏平でない、つまり断面の形状が円形、正方形等のガラス繊維状充填剤である場合、得られるポリアリーレンスルフィド系組成物は、機械的強度、靭性、寸法安定性に劣るものとなる。そして、該断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)は、該高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物の機械的強度がより優れるものとなることから、イソシアネート系化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ化合物等で表面処理したものであることが好ましい。
【0030】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物を構成する断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)の配合量は、10〜50重量%である。該断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)の配合量が10重量%未満である場合、得られる組成物は機械的強度に劣るものとなる。一方、該断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)の配合量が50重量%を越える場合、得られる組成物は溶融流動性、成形品外観に劣るものとなる。
【0031】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、得られる成形品の金型離型性や外観をより優れるものとするために離型剤(E)を配合してなることが好ましい。該離型剤(E)としては離型剤として知られている範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばカルナバワックス(E1)、ポリエチレンワックス(E2)、ポリプロピレンワックス(E3)、ステアリン酸金属塩(E4)、酸アマイド系ワックス(E5)等を挙げることができ、その中でも特に得られる成形品の金型離型性、成形品外観に優れる高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物となることからカルナバワックス(E1)であることが好ましい。
【0032】
該カルナバワックス(E1)としては、一般的な市販品を用いることができ、例えば(商品名)精製カルナバ1号粉(日興ファインプロダクツ製)等を挙げることができる。
【0033】
該離型剤(E)の配合量は、特に金型離型性、成形品外観に優れる高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物となることからポリアリーレンスルフィド(A)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)、水酸化マグネシウム(C)及び断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤(D)の合計量100重量部に対し、0.05〜5重量部であることが好ましい。
【0034】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、非繊維状充填剤を配合していてもよく、非繊維状充填剤としては、例えばワラストナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、タルク、アルミナシリケート等の珪酸塩;酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物;ガラスフレーク、ガラスビーズ等を例示でき、その中でも、マイカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズが好ましい。また、該非繊維状充填剤は、イソシアネート系化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ化合物等で表面処理したものであってもよい。
【0035】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、断面の形状が偏平であるガラス繊維状充填剤以外の繊維状充填剤を配合していてもよく、繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等が例示でき、その中でも、炭素繊維が好ましい。
【0036】
さらに、本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の1種以上を混合して使用することができる。
【0037】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
【0038】
さらに、本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
【0039】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、ASTM D−790 Method−1を準拠し測定した曲げ強度150MPa以上を有するものであることがこのまく、また、ASTM D−638を準拠し測定した引張強度90MPa以上を有するものであることが好ましい。
【0040】
本発明の高強度ポリアリーレンスルフィド系組成物は、パワーモジュール、各種端子板、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバータ、多極ロッド、電気部品キャビネット、ライトソケット、プラグ、コンデンサ封口板などの用途に特に好適に使用できる。