(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の静電荷像現像剤は、結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤を含む着色樹脂粒子、並びに外添剤を含む静電荷像現像剤であって、前記外添剤として、個数平均一次粒径が36〜300nmであり、且つ球形度が1.00〜1.20である球形無機微粒子A、及び、平均長径が200〜1,500nmであり、且つアスペクト比が3〜20である針状酸化亜鉛微粒子を含有することを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の静電荷像現像剤(以下、「トナー」と称することがある。)について説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本発明に用いられる着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
【0016】
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0017】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0018】
本発明の着色樹脂粒子は、湿式法、または乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
【0019】
(A)懸濁重合法
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、及び帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
【0020】
本発明で重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
【0021】
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
【0022】
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いることが望ましい。
【0023】
本発明では、着色剤を用いるが、カラートナーを作製する場合、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
【0024】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
【0025】
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、及び213等が挙げられる。
【0026】
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、237、238、251、254、255、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0027】
本発明では、各着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部である。
【0028】
本発明においては、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。本発明のトナーは、正帯電性トナーであることが好ましい。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
【0029】
定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
【0030】
上記離型剤は、エステルワックス及び炭化水素系ワックスの少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられる。
【0031】
本発明において離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
【0032】
上記離型剤の他にも、例えば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
【0033】
その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0034】
(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤、及び帯電制御剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0035】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジエチルアセテート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0036】
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0037】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
【0038】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0039】
本発明において、水系媒体とは、水を主成分とする媒体のことを言う。
【0040】
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られるトナーが画像を鮮明に再現することができ、且つ環境安定性が優れたものとなる。
【0042】
(A−3)重合工程
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0043】
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0044】
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0045】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0046】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0047】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0048】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0049】
(A−4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
【0050】
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0051】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0052】
(B)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
【0053】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0054】
結着樹脂としては、他にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
【0055】
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
【0056】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4〜12μmであり、更に好ましくは5〜10μmである。Dvが4μm未満である場合には、トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、画像濃度が低下したりする場合がある。Dvが12μmを超える場合には、画像の解像度が低下する場合がある。
【0057】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.3であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。Dv/Dnが1.3を超える場合には、転写性、画像濃度及び解像度の低下が起こる場合がある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
【0058】
本発明の着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
【0059】
本発明において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0060】
3.トナーの製造方法
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
【0061】
本発明においては、外添剤として、個数平均一次粒径が36〜300nmである球形無機微粒子Aを含有する。
球形無機微粒子Aの個数平均一次粒径が36nm未満である場合には、スペーサー効果が低下し、カブリの発生など印字性能に悪影響を及ぼす。一方、球形無機微粒子Aの個数平均一次粒径が300nmを超える場合には、トナー粒子の表面から、当該球形無機微粒子Aが遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす。
球形無機微粒子Aの個数平均一次粒径は、40〜200nmであることがより好ましく、50〜120nmであることがさらに好ましい。
【0062】
本発明に使用される球形無機微粒子A、並びに本発明に好適に使用される無機微粒子B及び脂肪酸金属塩微粒子の個数平均一次粒径は、例えば、以下のように測定できる。まず、これら外添剤の個々の粒子について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)や走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)等により粒径を測定する。このように30個以上の外添剤粒子の粒径を計測し、その平均値を、その粒子の個数平均一次粒径とする。
また、本発明に使用されるこれら外添剤の個数平均一次粒径の他の測定方法としては、外添剤粒子を水などの分散媒中に分散させ、当該分散液を粒度分布測定装置(日機装製、商品名:マイクロトラック3300EXII)等により測定する方法により、個数平均一次粒径を測定する方法等が挙げられる。
【0063】
球形無機微粒子Aは、その球形度(Sc/Sr)が1.0〜1.20であり、より好ましくは1.0〜1.15、さらに好ましくは1.0〜1.12である。球形無機微粒子Aの球形度(Sc/Sr)が1.20を超える場合には、得られるトナーが細線再現性に劣る。
本発明において球形度とは、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を、粒子の実質投影面積(Sr)で除した値として定義される。
なお、球形無機微粒子Aの球形度(Sc/Sr)は、電子顕微鏡で撮影された球形無機微粒子Aの写真を、画像処理解析装置により、Sc及びSrを解析し、球形度(Sc/Sr)を算出し、算術平均して求められる値である。
球形無機微粒子Aの球形度の測定には、公知の方法を用いることができる。球形無機微粒子Aの球形度の測定例としては、球形無機微粒子Aの電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置((株)ニレコ製、商品名:ルーゼックスIID)により測定する方法により、球形度を測定する方法等が挙げられる。
【0064】
球形無機微粒子Aとしては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、若しくは酸化セリウム、又はこれら無機物の混合物等からなる球形無機微粒子が挙げられる。これらの中でも、球形シリカ微粒子、及び球形酸化チタン微粒子が好ましく、球形シリカ微粒子がより好ましく、球形コロイダルシリカ微粒子がさらに好ましい。
【0065】
球形無機微粒子Aの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.2〜3.0質量部であることが好ましく、0.4〜2.0質量部であることがより好ましい。
球形無機微粒子Aの含有量が0.2質量部未満の場合には、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、球形無機微粒子Aの含有量が3.0質量部を超える場合には、トナー粒子の表面から、当該球形無機微粒子Aが遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、他の外添剤の種類や含有量、またその他の外添条件等にもよるが、球形無機微粒子Aの含有量が多いほど、印字耐久性及び細線再現性が向上し、球形無機微粒子Aの含有量が少ないほど、低温定着性に優れ且つトナー漏れの抑制効果が高くなる傾向にある。
【0066】
球形無機微粒子Aは疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理剤としては、シランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の疎水化処理剤が挙げられ、高画質が得られるという観点から、シランカップリング剤、及びシリコーンオイルがより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のジシラザン;環状シラザン;トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等のアルキルシラン化合物、並びにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物;等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
疎水化処理剤は、上記のうち、1種のみを用いてもよく、又は2種以上用いてもよい。
正帯電性の現像剤を得る場合、良好な正帯電性を持つ現像剤が得られ易いことから、アミノシラン化合物やアミノ変性シリコーンオイル等のアミノ基を含有するケイ素化合物を用いることがさらに好ましい。
【0067】
球形無機微粒子Aとしては、種々の市販品を用いることができ、例えば、キャボット社製のEP−C321(:商品名、個数平均一次粒径:70nm、球形度:1.09)及びTG−C190(個数平均一次粒径:115nm、球形度:1.09);電気化学工業社製のUFP−30H(個数平均一次粒径:110nm、球形度:1.13);信越化学工業社製のX−24−9163A(個数平均一次粒径:140nm、球形度:1.12)、及びKMPX100(個数平均一次粒径:100nm、球形度:1.12);堺化学工業社製のSciqasシリーズのGRADE0.1μm(個数平均一次粒径:100nm、球形度:1.13)等が挙げられる。
【0068】
本発明においては、外添剤として、平均長径が200〜1,500nmである針状酸化亜鉛微粒子をさらに含有する。針状酸化亜鉛微粒子の平均長径が200nm未満である場合には、後述する比較例4に示すように、低温定着性に劣り、トナー漏れが増大する。一方、針状酸化亜鉛微粒子の平均長径が1,500nmを超える場合には、トナー表面から酸化亜鉛微粒子が遊離しやすくなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
針状酸化亜鉛微粒子の平均長径は、300〜1,200nmであることがより好ましく、500〜1,000nmであることがさらに好ましい。
なお、針状酸化亜鉛微粒子の長径とは、針状酸化亜鉛微粒子の延伸方向の長さのことを指し、平均長径とは当該長径の平均のことを指す。
【0069】
針状酸化亜鉛微粒子は、そのアスペクト比が3〜20である。針状酸化亜鉛微粒子のアスペクト比が3未満の場合には、後述する比較例6に示すように、細線再現性に劣り、トナー漏れが増大する。また、針状酸化亜鉛微粒子のアスペクト比が20を超える場合には、トナー表面から酸化亜鉛微粒子が遊離しやすくなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
針状酸化亜鉛微粒子のアスペクト比は、8〜18であることがより好ましく、10〜16であることがさらに好ましい。
なお、針状酸化亜鉛微粒子のアスペクト比とは、針状酸化亜鉛微粒子の平均長径を、針状酸化亜鉛微粒子の延伸方向に対し垂直な方向の平均長さ(針状酸化亜鉛微粒子の平均短径)により除した比のことを指す。
【0070】
本発明に使用される針状酸化亜鉛微粒子の平均長径及びアスペクト比は、例えば、以下のように測定できる。まず、個々の針状酸化亜鉛微粒子について、TEMやSEM等により、長径及び短径を測定する。このように30個以上の針状酸化亜鉛微粒子の長径及び短径を計測し、それぞれの平均値を、その針状酸化亜鉛微粒子の平均長径又は平均短径とする。算出された平均長径を平均短径により除した値を、その針状酸化亜鉛微粒子のアスペクト比とする。
【0071】
針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積は1〜50m
2/gであることが好ましい。針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積が1m
2/g未満である場合には、トナー表面から酸化亜鉛微粒子が遊離しやすくなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼすおそれがある。針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積が50m
2/gを超える場合には、低温定着性に劣り、トナー漏れが増大するおそれがある。
針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積は、5〜40m
2/gであることがより好ましく、10〜30m
2/gであることがさらに好ましい。
針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積の測定には、公知の方法を用いることができる。針状酸化亜鉛微粒子のBET比表面積の測定例としては、BET比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名:Macsorb HM model−1208)等を用いて、窒素吸着法(BET法)により測定する方法等が挙げられる。
【0072】
針状酸化亜鉛微粒子の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.05〜1.0質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることがより好ましい。針状酸化亜鉛微粒子の含有量が0.05質量部未満の場合、針状酸化亜鉛微粒子を添加する効果が十分享受できず、トナー漏れが増大するおそれがある。一方、針状酸化亜鉛微粒子の含有量が1.0質量部を超える場合、低温定着性に劣るおそれがある。
なお、他の外添剤の種類や含有量、またその他の外添条件等にもよるが、針状酸化亜鉛微粒子の含有量が多いほど、印字耐久性及び細線再現性が向上し且つトナー漏れの抑制効果が高くなり、一方、針状酸化亜鉛微粒子の含有量が少ないほど、低温定着性に優れる傾向にある。
【0073】
針状酸化亜鉛微粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、堺化学工業社製のNZ Series(Large Particle)(:商品名、平均長径:900nm、平均短径:60nm、アスペクト比:15、BET比表面積:10m
2/g);等が挙げられる。
【0074】
本発明のように、球形無機微粒子と、針状酸化亜鉛微粒子とを組み合わせることにより、低温定着性に加えて、トナー漏れを抑制することが可能となった。球形無機微粒子は添加することにより、トナーに高い流動性を付与することができ、印字耐久性や細線再現性の高いトナーを得ることができるが、一方で流動性が高くなることで、シール部からの漏れが悪化する。また、針状酸化亜鉛微粒子は添加することにより、定着性や印字耐久性を阻害することなく、シール部からの漏れを抑制する効果がある。更に、この漏れ抑制効果は流動性が高いトナーにおいて高い効果を発現する。そのため、2つの外添剤を併用することで、印字耐久性、細線再現性、及びトナー漏れ抑止の効果を備えたトナーを得ることができる。
【0075】
本発明においては、外添剤として、更に個数平均一次粒径が7〜35nmの無機微粒子Bを含有することが好ましい。無機微粒子Bの個数平均一次粒径が7nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該無機微粒子Bが埋没し易くなり、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、無機微粒子Bの個数平均一次粒径が35nmを超える場合には、トナー粒子の表面に対して、当該無機微粒子Bが占める割合(被覆率)が低下するため、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができない場合がある。
無機微粒子Bの個数平均一次粒径は、8〜30nmであることがより好ましく、12〜25nmであることがさらに好ましい。また、無機微粒子Bは疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理剤は、球形無機微粒子Aに用いたものと同様のものを用いることができる。
【0076】
無機微粒子Bとしては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、若しくは酸化セリウム、又はこれら無機物の混合物等からなる無機微粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ微粒子、及び酸化チタン微粒子が好ましく、シリカ微粒子がより好ましい。
【0077】
無機微粒子Bの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、0.2〜1.5質量部であることがより好ましい。
無機微粒子Bの含有量が0.1質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性や耐久性が低下したりする場合がある。一方、無機微粒子Bの含有量が2.0質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該無機微粒子Bが遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する場合がある。
【0078】
無機微粒子Bとしては、種々の市販品を用いることができ、例えば、クラリアント社製のHDK2150(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);日本アエロジル社製のNA50Y(:商品名、個数平均一次粒径:35nm)、R504(:商品名、個数平均一次粒径:12nm)、RA200HS(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);テイカ社製のMSP−012(:商品名、個数平均一次粒径:16nm)、MSP−013(:商品名、個数平均一次粒径:12nm);キャボット社製のTG−7120(:商品名、個数平均一次粒径:20nm)、TG−820F(:商品名、個数平均一次粒径:7nm)等が挙げられる。
【0079】
本発明においては、外添剤として、更に個数平均一次粒径が0.05〜5μmである脂肪酸金属塩微粒子を含有することが好ましい。脂肪酸金属塩微粒子の個数平均一次粒径が0.05μm未満である場合には、トナーの帯電性が低下し、カブリが発生する場合がある。一方、脂肪酸金属塩微粒子の個数平均一次粒径が5μmを超える場合には、印字画像に白抜けが発生する場合がある。
脂肪酸金属塩微粒子の個数平均一次粒径は、0.1〜3μmであることが好ましく、0.3〜2μmであることがより好ましい。
【0080】
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn等が挙げられる。
【0081】
脂肪酸金属塩の脂肪酸部位(R−COO
−)に対応する脂肪酸(R−COOH)とは、カルボキシル基(−COOH)を持つカルボン酸(R−COOH)のうち、鎖式構造をもつものを全て含む。本発明においては、脂肪酸部位は、アルキル基(R−)の炭素数が多い高級脂肪酸から誘導されたものであることが好ましい。
【0082】
上記高級脂肪酸(R−COOH)としては、例えば、ラウリン酸(CH
3(CH
2)
10COOH)、トリデカン酸(CH
3(CH
2)
11COOH)、ミリスチン酸(CH
3(CH
2)
12COOH)、ペンタデカン酸(CH
3(CH
2)
13COOH)、パルミチン酸(CH
3(CH
2)
14COOH)、ヘプタデカン酸(CH
3(CH
2)
15COOH)、ステアリン酸(CH
3(CH
2)
16COOH)、アラキジン酸(CH
3(CH
2)
18COOH)、ベヘン酸(CH
3(CH
2)
20COOH)、及びリグノセリン酸(CH
3(CH
2)
22COOH)等が挙げられる。
【0083】
脂肪酸金属塩としては、具体的に、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウムなどのラウリン酸金属塩;ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウムなどのミリスチン酸金属塩;パルミチン酸リチウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸バリウムなどのパルミチン酸金属塩;ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、及びステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸金属塩;等が代表的に挙げられ、これら中でもステアリン酸金属塩が好ましく、ステアリン酸亜鉛が更に好ましい。
【0084】
脂肪酸金属塩粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、堺化学工業社製のSPL−100F(:商品名、ステアリン酸リチウム、個数平均一次粒径:0.71μm)、SPX−100F(:商品名、ステアリン酸マグネシウム、個数平均一次粒径:0.72μm)、SPC−100F(:商品名、ステアリン酸カルシウム、個数平均一次粒径:0.51μm)、SPZ−100F(:商品名、ステアリン酸亜鉛、個数平均一次粒径:0.5μm)等が挙げられる。
【0085】
外添処理を行う攪拌機は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させることができる攪拌装置であれば特に限定されず、例えば、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、ホソカワミクロン社製)、及びメカノミル(:商品名、岡田精工社製)等の混合攪拌が可能な攪拌機を用いて外添処理を行うことができる。
【0086】
4.本発明のトナー
本発明のトナーは、優れた低温定着性を発揮し、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久性及び細線再現性に優れ、且つ、トナー漏れの発生が極めて少ないトナーである。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0088】
1.静電荷像現像剤の製造
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン75部とn−ブチルアクリレート25部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25B)5部を、メディア型乳化分散機を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:アクリベース FCA−161P)1部、離型剤としてエステルワックス(日油社製、商品名:WEP7)5部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.6部を添加した後、混合及び溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
【0089】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0090】
上記水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌した。そこへ重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)4.4部を投入した後、インライン型乳化分散機を用いて、15,000rpmの回転数で10分間高速剪断攪拌して分散を行い、重合性単量体組成物の液滴形成を行った。
【0091】
上記重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が、ほぼ100%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、及びイオン交換水10部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名:VA−086、水溶性)0.3部を添加し、90℃で4時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子の水分散液を得た。
【0092】
上記着色樹脂粒子の水分散液を、室温下で、硫酸を攪拌しながら滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄、濾過、及び脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、体積平均粒径(Dv)が7.8μm、個数平均粒径(Dn)が6.9μm、粒径分布(Dv/Dn)が1.13及び平均円形度が0.987である着色樹脂粒子を得た。
【0093】
上記で得られた着色樹脂粒子100部に、外添剤として、球形無機微粒子Aとしての球形シリカ微粒子a1(キャボット社製、商品名:EP−C321、個数平均一次粒径:70nm、球形度:1.09)1部、針状酸化亜鉛微粒子1(堺化学工業社製、商品名:NZ Series(Large Particle)、平均長径:900nm、平均短径:60nm、アスペクト比:15、BET比表面積:10m
2/g)0.2部、無機微粒子Bとしてのシリカ微粒子b(キャボット社製、商品名:TG−7120、個数平均一次粒径:20nm)0.6部、及び脂肪酸金属塩微粒子としてのステアリン酸亜鉛微粒子(堺化学工業社製、商品名:SPZ−100F、個数平均一次粒径:0.5μm)0.2部を添加し、高速攪拌装置(日本コークス工業社製、商品名:FMミキサー)を用いて、攪拌翼の周速40m/秒、外添処理時間300秒で混合攪拌して外添処理を行い、実施例1の静電荷像現像剤を得た。試験結果を表1に示す。
【0094】
[実施例2]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1の添加量を0.2部から0.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0095】
[実施例3]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1の添加量を0.2部から0.1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0096】
[実施例4]
実施例1において、球形シリカ微粒子a1の添加量を1部から0.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0097】
[実施例5]
実施例1において、球形シリカ微粒子a1の添加量を1部から1.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0098】
[実施例6]
実施例1において、球形無機微粒子Aとして、球形シリカ微粒子a1(キャボット社製、商品名:EP−C321、個数平均一次粒径:70nm、球形度:1.09)1部を添加する替わりに、球形シリカ微粒子a2(キャボット社製、商品名:TG−C190、個数平均一次粒径:115nm、球形度:1.09)1.5部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0100】
[比較例2]
実施例1において、球形シリカ微粒子a1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0101】
[比較例3]
実施例1において、球形無機微粒子Aとして球形シリカ微粒子a1(キャボット社製、商品名:EP−C321、個数平均一次粒径:70nm、球形度:1.09)1部を添加する替わりに、シリカ微粒子a3(クラリアント社製、商品名:HDK H05TA、個数平均一次粒径:50nm、球形度:1.24)1部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0102】
[比較例4]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1(堺化学工業社製、商品名:NZ Series(Large Particle)、平均長径:900nm、平均短径:60nm、アスペクト比:15、BET比表面積:10m
2/g)0.2部を添加する替わりに、針状酸化亜鉛微粒子2(堺化学工業社製、商品名:NZ Series(Small Particle)、平均長径:100nm、平均短径:20nm、アスペクト比:5、BET比表面積:30m
2/g)0.2部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0103】
[比較例5]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1(堺化学工業社製、商品名:NZ Series(Large Particle)、平均長径:900nm、平均短径:60nm、アスペクト比:15、BET比表面積:10m
2/g)0.2部を添加する替わりに、酸化亜鉛微粒子3(シーアイ化成社製、商品名:NanoTek ZnO、平均粒径:34nm、不定形、BET比表面積:30m
2/g)0.2部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0104】
[比較例6]
実施例1において、針状酸化亜鉛微粒子1(堺化学工業社製、商品名:NZ Series(Large Particle)、平均長径:900nm、平均短径:60nm、アスペクト比:15、BET比表面積:10m
2/g)0.2部を添加する替わりに、酸化亜鉛微粒子4(ハクスイテック社製、商品名:Zinc Oxide 23−K、平均粒径:200nm、不定形、BET比表面積:4〜10m
2/g)0.2部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の静電荷像現像剤を作製し、試験に供した。
【0105】
2.静電荷像現像剤の評価
上記実施例1〜実施例6、及び比較例1〜比較例6の静電荷像現像剤について、外添剤特性、着色樹脂粒子特性、トナーの定着性、及びトナーの印字特性を調べた。詳細は以下の通りである。
【0106】
2−1.外添剤特性
(a)酸化亜鉛微粒子の平均長径及びアスペクト比の測定
針状酸化亜鉛微粒子1〜2、及び酸化亜鉛微粒子3〜4について以下の測定を行った。
超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、商品名:SU9000)を用いて、各酸化亜鉛微粒子のSEM画像を撮影し、その画像の中から粒子を30個無作為に選定した。選定した各粒子について長径及び短径を測定した後、30個の粒子における平均長径と平均短径を算出した。算出した平均長径及び平均短径から、アスペクト比を算出した。
【0107】
(b)BET比表面積の測定
針状酸化亜鉛微粒子1〜2、及び酸化亜鉛微粒子3〜4について、全自動BET比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名:Macsorb HM model−1208)を用いて、窒素吸着法(BET法)によりBET比表面積を測定した。
【0108】
(c)球形無機微粒子Aの平均粒径測定
球形シリカ微粒子a1〜a2及びシリカ微粒子a3について以下の測定を行った。
各シリカ微粒子を水に分散させ、その微粒子の水分散液をレーザー式粒度分布測定装置(日機装製、商品名:マイクロトラック3300EXII)により測定し、平均粒径を求めた。
【0109】
(d)球形無機微粒子Aの球形度測定
球形シリカ微粒子a1〜a2及びシリカ微粒子a3について以下の測定を行った。
シリカ微粒子の絶対最大長を長径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)により除して得られる球形度(Sc/Sr)は、各粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置((株)ニレコ製、商品名:ルーゼックスIID)により、フレーム面積に対する粒子の面積率:最大2%、トータル処理粒子数:100個の条件で測定し、計算した100個についての平均値を球形度とした。
【0110】
2−2.着色樹脂粒子特性
(a)着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び粒径分布(Dv/Dn)
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10〜30mL加え、20W(Watt)の超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)を測定し、粒径分布(Dv/Dn)を算出した。
【0111】
(b)着色樹脂粒子の平均円形度
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、更に測定試料(着色樹脂粒子)0.02gを加え、超音波分散機で60W(Watt)、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度が3,000〜10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000〜10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名:FPIA−2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式1に示され、平均円形度は、その平均をとったものである。
計算式1:(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲
長)
【0112】
2−3.トナーの定着性
(a)定着温度
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷速度:20枚/分)の定着ロールの温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を5℃刻みで変化させ、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定した。
定着率は、改造プリンターで試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。即ち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、次式から算出することができる。
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分(黒ベタ領域)に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、反射型濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて測定した。
この定着試験において、定着率が80%以上になる最低定着ロール温度をトナーの最低定着温度とした。
【0113】
2−4.トナーの印字特性
(a)印字耐久性
印字耐久性試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ20枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で15,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND−1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。尚、当該連続印刷枚数が10,000枚以上であることが、トナーに求められる印字耐久性である。
尚、表1中、「15000<」とあるのは、15,000枚の時点においても、印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3以下の画質を維持できたことを示す。
【0114】
(b)トナー漏れ性
上記「(a)印字耐久性」の評価と併せて、トナーの漏れ性の評価も実施した。
印字耐久性試験中に現像器の周囲を確認し、トナー漏れが発生しているかも併せて確認を行った。確認のタイミングは印字耐久性評価と同じく500枚毎に現像器のサイドシール部を目視で確認し、漏れの有無を下記判定基準により判定した。
尚、下記評価基準において、レベル2までがトナー漏れが許容できるレベルである。
但し、上記の印字耐久性の評価が著しく悪化した結果途中で終了した場合は、その時点でトナー漏れ性の評価を中止した。
【0115】
評価基準
レベル0:15,000枚印字しても、サイドシールからトナー漏れなし。
レベル1:10,001〜15,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル2:5,001〜10,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル3:1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れあり。
レベル4:1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから大量のトナー漏れあり。
【0116】
(c)細線再現性
細線再現性試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ20枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、2×2ドットライン(幅約85μm)で連続して線画像を形成し、10,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、印字評価システム(YA−MA社製、商品名:RT2000)を用いて線画像の濃度分布データを採取した。
採取した線画像の濃度分布データより、濃度の最大値の半値における線画像の線の全幅を線幅とし、1枚目に採取した印字用紙に形成された線幅を基準にして、当該線幅の差を10μm以下に維持できる連続印刷枚数を調べた。
なお、表1中、「10000<」とあるのは、10,000枚の時点においても、線幅の差を10μm以下に維持できたことを示す。
【0117】
実施例1〜実施例6、及び比較例1〜比較例6の静電荷像現像剤の測定及び評価結果を、酸化亜鉛微粒子及び無機微粒子Aの平均粒径等と併せて表1に示す。なお、表1中、酸化亜鉛微粒子の「平均長径又は平均粒径」の項目については、針状酸化亜鉛微粒子1及び針状酸化亜鉛微粒子2については平均長径を、酸化亜鉛微粒子3及び酸化亜鉛微粒子4については平均粒径を、それぞれ指すものとする。
【0118】
【表1】
【0119】
3.静電荷像現像剤(トナー)の評価
以下、表1を参照しながら、トナーの評価結果について検討する。
表1より、比較例1のトナーは、酸化亜鉛微粒子を含有しないトナーである。表1より、比較例1のトナーは、最低定着温度が145℃、印字耐久性試験における連続印刷枚数が15,000枚を超え、細線再現性試験における連続印刷枚数が10,000枚を超える。したがって、比較例1のトナーは、少なくとも低温定着性、印字耐久性、及び細線再現性に問題は見られない。
しかし、比較例1のトナーにおいては、1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから大量のトナー漏れが見られた(トナー漏れ性:レベル4)。比較例1のトナー漏れ性は、実施例1〜実施例6、及び比較例1〜比較例6中、最も悪い結果である。
したがって、酸化亜鉛微粒子を含有しない比較例1のトナーは、連続印字後におけるトナー漏れが極めて生じやすいことが分かる。
【0120】
表1より、比較例2のトナーは、球形無機微粒子Aを含有しないトナーである。表1より、比較例2のトナーは、最低定着温度が140℃、トナー漏れ性の評価がレベル1である。したがって、比較例2のトナーは、少なくとも低温定着性、及びトナー漏れ性に問題は見られない。
しかし、比較例2のトナーにおいては、印字耐久性試験における連続印刷枚数が5,000枚と極めて少なく、細線再現性試験における連続印刷枚数が1,000枚と極めて少ない。これら試験における比較例2の連続印刷枚数は、実施例1〜実施例6、及び比較例1〜比較例6中、最も少ない。
したがって、個数平均一次粒径が36〜300nmであり、且つ球形度が1.00〜1.20である球形無機微粒子Aを含有しない比較例2のトナーは、印字耐久性及び細線再現性に極めて劣ることが分かる。
【0121】
表1より、比較例3のトナーは、球形度が1.24であるシリカ微粒子a3を含有するトナーである。表1より、比較例3のトナーは、最低定着温度が150℃、印字耐久性試験における連続印刷枚数が15,000枚を超え、トナー漏れ性の評価がレベル0である。したがって、比較例3のトナーは、少なくとも低温定着性、印字耐久性、及びトナー漏れ性に問題は見られない。
しかし、比較例3のトナーにおいては、細線再現性試験における連続印刷枚数が3,000枚と少ない。
したがって、球形度が1.20を超える無機微粒子を含有する比較例3のトナーは、細線再現性に劣ることが分かる。
【0122】
表1より、比較例4のトナーは、平均長径が100nmである針状酸化亜鉛微粒子2を含有するトナーである。表1より、比較例4のトナーは、最低定着温度が155℃であり、印字耐久性試験における連続印刷枚数が15,000枚を超え、細線再現性試験における連続印刷枚数が10,000枚を超える。したがって、比較例4のトナーは、少なくとも低温定着性、印字耐久性、及び細線再現性に問題は見られない。
しかし、比較例4のトナーにおいては、1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れが見られた(トナー漏れ性:レベル3)。
したがって、平均長径が200nm未満である針状酸化亜鉛微粒子を含有する比較例4のトナーは、連続印字後におけるトナー漏れが生じやすいことが分かる。
【0123】
表1より、比較例5のトナーは、平均粒径が34nmの不定形の酸化亜鉛微粒子3を含有するトナーである。表1より、比較例5のトナーは、印字耐久性試験における連続印刷枚数が15,000枚を超え、細線再現性試験における連続印刷枚数が10,000枚を超える。したがって、比較例5のトナーは、少なくとも印字耐久性、及び細線再現性に問題は見られない。
しかし、比較例5のトナーは、最低定着温度が160℃と極めて高い。これは、実施例1〜実施例6、及び比較例1〜比較例6中、最も高い温度である。また、比較例5のトナーにおいては、1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れが見られた(トナー漏れ性:レベル3)。
したがって、平均粒径が200nm未満の不定形の酸化亜鉛微粒子を含有する比較例5のトナーは、低温定着性に極めて劣り、連続印字後におけるトナー漏れが生じやすいことが分かる。特に低温定着性の悪化については、酸化亜鉛微粒子の平均粒径が極めて小さいため、着色樹脂粒子1つ当たりに付着する酸化亜鉛微粒子の数が多くなったためであると考えられる。
【0124】
表1より、比較例6のトナーは、平均粒径が200nmの不定形の酸化亜鉛微粒子4を含有するトナーである。表1より、比較例6のトナーは、最低定着温度が150℃であり、印字耐久性試験における連続印刷枚数が15,000枚を超え、細線再現性試験における連続印刷枚数が9,000枚である。したがって、比較例5のトナーは、少なくとも低温定着性、印字耐久性、及び細線再現性に問題は見られない。
しかし、比較例6のトナーにおいては、1〜5,000枚印字した時点でサイドシールから少量のトナー漏れが見られた(トナー漏れ性:レベル3)。
したがって、平均粒径が200nmの不定形の酸化亜鉛微粒子を含有する比較例6のトナーは、連続印字後におけるトナー漏れが生じやすいことが分かる。
【0125】
一方、表1より、実施例1〜実施例6のトナーは、個数平均一次粒径が70nmであり且つ球形度が1.09である球形シリカ微粒子a1、又は個数平均一次粒径が115nmであり且つ球形度が1.09である球形シリカ微粒子a2を含有し、さらに、平均長径が900nmであり且つアスペクト比が15である針状酸化亜鉛微粒子1を含有するトナーである。表1より、実施例1〜実施例6のトナーは、最低定着温度が155℃以下と低く、印字耐久性試験における連続印刷枚数が13,000枚以上と多く、細線再現性試験における連続印刷枚数が9,000枚以上と多く、トナー漏れ性の評価がレベル0〜2の範囲内である。
よって、外添剤として、個数平均一次粒径が36〜300nmであり且つ球形度が1.00〜1.20である球形無機微粒子A、及び、平均長径が200〜1,500nmであり且つアスペクト比が3〜20である針状酸化亜鉛微粒子を含有する実施例1〜実施例6のトナーは、優れた低温定着性を発揮し、常温常湿(N/N)環境下における印字耐久性や細線再現性に優れ、且つ、トナー漏れの発生が極めて少ないトナーであることが分かる。
【0126】
以下、外添剤の含有量等が、トナー特性に与える影響について検討する。
まず、針状酸化亜鉛微粒子1の含有量の条件のみが異なる実施例1(含有量:0.2部)、実施例2(含有量:0.4部)、実施例3(含有量:0.1部)、及び比較例1(含有量:0部)を比較する。
表1より、実施例2のトナーは、実施例1のトナーと比較して、最低定着温度がやや高い。また、実施例3のトナーは、実施例1のトナーと比較して、トナー漏れの可能性がやや高い。さらに、比較例1のトナーは、トナー漏れが極めて生じやすい。
以上の結果から、針状酸化亜鉛微粒子の含有量が多いほど、針状酸化亜鉛微粒子の効果であるトナー漏れの抑制効果が高くなる一方、低温定着性にやや劣ることになり、その逆として、針状酸化亜鉛微粒子の含有量が少ないほど、低温定着性に優れる一方、トナー漏れの抑制効果がやや小さくなると推測される。
【0127】
次に、球形シリカ微粒子a1の含有量の条件のみが異なる実施例1(含有量:1部)、実施例4(含有量:0.5部)、実施例5(含有量:1.5部)、及び比較例2(含有量:0部)を比較する。
表1より、実施例5のトナーは、実施例1のトナーと比較して、最低定着温度がやや高く、トナー漏れの可能性がやや高い。また、実施例4のトナーは、実施例1のトナーと比較して、印字耐久性及び細線再現性にやや劣る。さらに、比較例2のトナーは、印字耐久性及び細線再現性に極めて劣る。
以上の結果から、球形シリカ微粒子Aの含有量が多いほど、印字耐久性及び細線再現性に優れる一方、低温定着性にやや劣り且つトナー漏れもやや発生しやすくなり、その逆として、球形シリカ微粒子Aの含有量が少ないほど、低温定着性に優れ且つトナー漏れの抑制効果も高くなる一方、印字耐久性及び細線再現性にやや劣ると推測される。
【0128】
続いて、球形シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径の条件のみが異なる実施例5(個数平均一次粒径:70nm)、及び実施例6(個数平均一次粒径:115nm)を比較する。
表1より、実施例6のトナーは、実施例5のトナーと比較して、印字耐久性にやや劣るものの、トナー漏れの可能性がやや低い。
以上の結果から、球形シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径が大きいほど、トナー漏れの抑制効果が高くなる一方、印字耐久性にやや劣り、その逆として、球形シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径が小さいほど、印字耐久性に優れる一方、トナー漏れもやや発生しやすくなると推測される。