特許第6056725号(P6056725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

特許6056725混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置
<>
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000002
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000003
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000004
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000005
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000006
  • 特許6056725-混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056725
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 7/04 20060101AFI20161226BHJP
   B01F 3/18 20060101ALI20161226BHJP
   C22B 19/30 20060101ALN20161226BHJP
   C22B 7/02 20060101ALN20161226BHJP
   C22B 5/10 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
   B01F7/04 B
   B01F3/18
   !C22B19/30
   !C22B7/02 A
   !C22B5/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-205626(P2013-205626)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66533(P2015-66533A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】寺田 尚人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智洋
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宣幸
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−233695(JP,A)
【文献】 特開2009−061431(JP,A)
【文献】 米国特許第06293694(US,B1)
【文献】 実開昭61−004735(JP,U)
【文献】 実開昭62−174626(JP,U)
【文献】 特開2010−188626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/00 − 7/32
B29B 7/00 − 7/94
B02C 13/00 − 13/31
B01F 1/00 − 5/26
B65G 33/00 − 33/38
E21D 1/00 − 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混錬装置用の攪拌翼であって、
前記攪拌翼の母材の先端部外周面には、少なくともその一部が該先端部外周面に露出する態様で、該先端部外周面の長辺方向に沿って直列に、一定の間隔毎に埋設されている複数の同一形状の耐摩耗性ブロックによって、耐摩耗性強化部が形成されていて、
前記先端部外周面において前記耐摩耗性強化部が占める面積割合が55%以上95%以下であり、
前記先端部外周面には、前記耐摩耗性ブロックが突出している部分である凸部と、前記母材が露出している部分である凹部とからなる凹凸が形成されていて、前記凸部と前記凹部との高低差が、1mm以上15mm以下である攪拌翼。
【請求項2】
前記耐摩耗性ブロックが、直方体のプレートタイプのブロックである請求項1に記載の攪拌翼。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌翼が配置されている混錬装置。
【請求項4】
前記混錬装置が、二軸不等速スクリューコンベアである請求項に記載の混錬装置。
【請求項5】
請求項又は4に記載混錬装置を用いた被混錬物の混錬方法であって、
前記被混錬物が、ビッカーズ硬度が略50以上の鉱物を含有する粉体である混錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置に関する。より詳しくは、摩耗作用を有する被混錬物の混錬において、優れた混錬性能と高い耐摩耗性とを備える混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、還元焙焼炉で電炉ダストから亜鉛を回収する工程において、還元焙焼炉内での還元反応を促進するために、還元焙焼炉に投入する前の電炉ダストを、コークスと混錬する前処理が行われる。この前処理を行う混錬装置として、例えば、図1に示すようなスクリューコンベア100が広く用いられている。このスクリューコンベア100は、図1及び図2に示す通り、電気駆動部5の動力により回転する回転軸2の外周上に攪拌翼1が螺旋状に配置されているものである。被混錬物は投入口8から投入され、ケーシング4内を攪拌翼1によって攪拌されながら搬送され、十分に混錬された状態で排出口9から排出される。
【0003】
スクリューコンベア100においては、通常、コークスや電炉ダスト等の摩耗作用を有する被混錬物を混錬する。よって攪拌翼1については、十分な混錬性能に加えて高い耐摩耗性を有することが要求される。例えば、スクリューコンベア100の操業の継続に伴って、攪拌翼1の先端部の摩耗が進行した場合には、攪拌翼1の先端部とケーシング4との間にクリアランスとして設けられている隙間(w)(図2参照)が序々に拡大する。この隙間(w)の大きさが一定以上に達すると、混錬及び搬送能力の低下、或いは、フラッシング現象の発生等、スクリューコンベア100を用いた操業に様々な支障をきたすこととなる。
【0004】
このような事態を回避するために、例えば、攪拌翼の各部を耐摩耗性の異なる材料で形成し、耐摩耗性の低い一部分だけを、容易に交換できる構成とすることによって、攪拌翼の摩耗進行時の交換作業の作業負担を軽減したスクリューコンベアが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
又、攪拌翼表面の略全面を覆う態様で、各種形体のセラミックス製部材を適宜組合せて設置することにより、耐摩耗性を向上させた攪拌翼も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−336489号公報
【特許文献2】特開2010−94646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、摩耗の進行に応じた攪拌翼の交換の要否を判断するためには、スクリューコンベアを完全に停止して、パドルの摩耗度合いを点検口等から直接測定する必要がある。この点については、特許文献1に記載のスクリューコンベアであっても、従来のスクリューコンベアと何ら変わるところはない。このため、特許文献1に記載のスクリューコンベアにおいては、操業の一時的停止の頻度を下げて、生産性を向上するためには、攪拌翼の更なる対磨耗性の向上が、尚、解決すべき課題として残っていた。
【0008】
又、特許文献2に記載の攪拌翼は、耐摩耗性のみならず専ら腐食性を有する被混錬物をその対象として想定しているものであるため、攪拌翼の表面の略全面を定形パーツ化されたL字型等のセラミックス部材で覆う構成としているものである。このため、必要なセラミック部材が多くなり材料費が嵩む点において好ましくない。
【0009】
又、攪拌翼先端部の表面形状は必然的に平坦な形状に限定されるため、例えば、図5及び図6の攪拌翼のように、例えば、攪拌能力の向上を目的として攪拌翼先端部に任意の凹凸を形成する追加的な加工は望みえない。
【0010】
本発明は、上記各従来技術における未解決の課題を解決し、優れた攪拌能力と高い耐摩耗性とを兼ね備える混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、混錬装置用の攪拌翼を、その先端部外周面に、耐摩耗性ブロックを埋設した構造とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) 混錬装置用の攪拌翼であって、前記攪拌翼の先端部外周面には、母材に埋設されている耐摩耗性ブロックによって、耐摩耗性強化部が形成されている攪拌翼。
【0013】
(2) 複数の前記耐摩耗性ブロックが前記母材に埋設されている(1)に記載の攪拌翼。
【0014】
(3) 前記耐摩耗性ブロックがいずれも同一形状である(2)に記載の攪拌翼。
【0015】
(4) 前記先端部外周面において前記耐摩耗性強化部が占める面積割合が55%以上95%以下である(1)から(3)のいずれかに記載の攪拌翼。
【0016】
(5) 前記先端部外周面には、前記耐摩耗性ブロックが突出している部分である凸部と、前記母材が露出している部分である凹部とからなる凹凸が形成されていて、前記凸部と前記凹部との高低差が、1mm以上15mm以下である(1)から(4)のいずれかに記載の攪拌翼。
【0017】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の攪拌翼が配置されている混錬装置。
【0018】
(7) 前記混錬装置が、二軸不等速スクリューコンベアである(6)に記載の混錬装置。
【0019】
(8) (6)又は(7)の装置を用いた被混錬物の混錬方法であって、前記被混錬物が、ビッカーズ硬度が略50以上の鉱物を含有する粉体又は粒体である混錬方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた混錬性能と高い耐摩耗性とを兼ね備える混錬装置用の攪拌翼及びそれを用いた混錬装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の混錬装置の一実施形態であるスクリューコンベアの構造を模式的に示す正面図である。
図2図1のA断面におけるスクリューコンベアの内部構造と本発明の攪拌翼の配置態様を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の攪拌翼の斜視図である。
図4】本発明の攪拌翼の平面図である。
図5】本発明の攪拌翼の正面図である。
図6】本発明の攪拌翼の他の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の混錬装置用の攪拌翼1、及びそれを用いた混錬装置の好ましい一例であるスクリューコンベア100の実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<攪拌翼>
本発明の混錬装置用の攪拌翼1は、図1及び図2に示す通り、スクリューコンベア100に被混錬物の攪拌を目的として設置される部材である。攪拌翼1は、スクリューコンベア100の回転軸2の外周上に、被混錬物を攪拌及び搬送可能な態様で配置される。攪拌翼1を配置する混錬装置としては、攪拌翼1によって被混錬物を攪拌する機能を有する混錬装置であれば特に限定されないが、スクリューコンベアを好ましく用いることができる。又、中でも、2軸不等速スクリューコンベアを、攪拌翼1を配置する混錬装置として、特に好ましく用いることができる。本実施形態のスクリューコンベア100は、2軸不等速スクリューコンベアである。混錬装置の詳細は後述する。
【0024】
図3図6に示す通り、攪拌翼1は、いわゆるパドルタイプの板羽根状の部材である。攪拌翼1は、耐摩耗性ブロック12が母材11に埋設されている。耐摩耗性ブロック12は、少なくともその一部が母材11の先端部外周面111に露出する態様で埋設されており、この耐摩耗性ブロック12の露出部分によって、先端部外周面111に耐摩耗性強化部が形成されている。そして、母材11は、取付用台座部13上に溶接等により強固に固着されている。
【0025】
耐摩耗性強化部を構成する耐摩耗性ブロック12は、各操業毎に投入される被混錬物の硬度等によって規定される摩耗性の強弱に応じて、母材11の先端部外周面111に、所望の耐摩耗性を付与しうるために必要とされる態様で埋設されればよい。これにより、必ずしも母材11のその他の部分を覆うことなく、最小限の部材の追加により、被混錬物との摩擦による摩耗が問題となる先端部外周面111の耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0026】
母材11に埋設する耐摩耗性ブロック12の個数は限定されないが、2以上の複数であることが好ましい。又、その場合における複数の耐摩耗性ブロック12は、いずれも同一形状であることが更に好ましい。複数の同一形状の耐摩耗性ブロック12を複数埋設する構造とすることにより、母材11の形状に関わらず、汎用品として入手容易な各種の定形ブロックの組合せによって耐摩耗性ブロックを自在に構成することができる。これにより、様々な形状の攪拌翼1を、従来品よりも低コストで製造することができる。同一形状の耐摩耗性ブロックの具体例としては、図3〜5に例示される直方体のプレートタイプのブロックや図6に例示される円柱又は角柱状のピンタイプのブロックをあげることができる。
【0027】
先端部外周面111において、必要とされる耐摩耗性は、被混錬物の摩耗性によって変動するため、必ずしも一義的に限定されるものではない。但し、先端部外周面111において耐摩耗性ブロック12が露出している部分である耐摩耗性強化部が占める面積割合が55%以上95%以下であることが好ましい。耐摩耗性強化部が占める面積割合が55%以上であることにより、摩耗性を有するカーボン等を含む被混錬物を対象とする場合において、母材の摩耗を十分に防ぐことができる。母材11の材質にもよるが、95%を超えても母材11の耐摩耗性の向上率は逓減し、埋設にかかる母材の破損リスクが上回るため上記面積比は95%以下であることが好ましい。
【0028】
又、先端部外周面111には、耐摩耗性ブロック12が突出してなる凸部141と、耐摩耗性ブロック12の間の隙間部分である凹部142とからなる凹凸14が形成されていることがより好ましい。この場合における凸部141と凹部142との高低差h(図5参照)は、1mm以上15mm以下であることが好ましい。先端部外周面111にこのような凹凸14が形成されていることにより、特に、攪拌の対象となる被混錬物の小塊の分解促進や、内壁等に付着した小塊の掻き取り促進等の効果を発揮しうる。これにより、先端部外周面111が平坦な場合よりも一段の攪拌性能の向上が可能である。
【0029】
一般的には、攪拌翼は、混錬装置内で摩耗作用を有する被混錬物を攪拌する際に、その本体略全面に被混錬物からの摩耗作用を受ける。但し、混錬装置がスクリューコンベアである場合には、攪拌翼1の各部のうちでも、特に先端部外周面111近傍において他の部分よりも相対的に強い摩耗作用を受け、その結果、先端部外周面111近傍において特に摩耗が早く進行する傾向がある。そして、混錬装置が二軸不等速スクリューコンベアである場合には、この傾向は更に顕著となる。
【0030】
本発明は、先端部外周面111に、耐摩耗性ブロック12を埋設することによって、特に、先端部近傍の耐摩耗性を大きく向上させたものである。よって、混錬装置がスクリューコンベアである場合に好ましく用いることができるものであり、混錬装置が二軸不等速スクリューコンベアである場合に特に好ましく用いることができるものである。
【0031】
母材11の材料としては、加工性に優れ、セラミックス製の耐摩耗性ブロック12と、ろう付けなどの接着方法で取り付け可能である炭素鋼又はステンレス鋼等の材料とすることが好ましい。母材11の形状については、被混錬物を、十分に攪拌可能な形状であり、又、操業中に被混錬物から受ける圧力に耐えるだけの強度を備えうる形状であればよい。例えば、図3及び図4に示すように、平面視においてテーパー状の外周に囲まれた平坦な表面及び裏面を有する板羽根状のパネルを母材11として好ましく用いることができる。
【0032】
耐摩耗性ブロック12の材料は、耐摩耗性を有する材料を適宜用いることができるが、加工性や経済性も勘案した上での総合的な観点から、セラミック製材料の他、超硬合金、工具鋼、高速度鋼等の材料を用いることができる。部材であることが好ましい。又、耐摩耗性ブロック12の形状と大きさは、図3図4及び図5に示すように、母材11に埋設可能であればよく、単独若しくは複数の組合せによって、耐摩耗性強化部の面積割合を、上述の通り、55%以上95%以下とすることができる形状と大きさであることが好ましい。
【0033】
具体的な耐摩耗性ブロック12の形状としては、所定の厚さを有するパネル形体、直方体、若しくはそれに近似する6面体形状のものを含む。例えば、耐摩耗性ブロック12がパネル形体である場合の上記の「所定の厚さ」については、母材11の厚さ(w)(図4参照)に対する、耐摩耗性ブロック12の厚さ(w)(図4参照)の比が、概ね60%〜95%の範囲となる厚さであればよい。
【0034】
又、複数の耐摩耗性ブロック12を組合せて母材11埋設する場合には、母材11の先端部外周面111に、先端部外周面111の長辺方向に沿って直列に、一定の間隔毎に埋設されることが好ましい。上記の「一定の間隔」については、耐摩耗性ブロック12間の隙間部分の幅(w)(図4参照)が、20mm程度以下であることがより好ましい。
【0035】
<混錬装置>
図1及び図2は、本発明の攪拌翼1を用いたスクリューコンベア100の構造を模式的に示す正面図と断面図である。図1及び図2に示す通り、スクリューコンベア100は、中空の管状外殻部であるケーシング4と、ケーシング4の内部空間に配置される搬送スクリュー3、及び、電気駆動部5等の回転駆動装置や、軸受け6等の支持部材等により構成される。電気駆動部5及び軸受け6等の支持部材は、機械ベース7に強固に固定されている。
【0036】
搬送スクリュー3は、被混錬物を攪拌しながらケーシング4内を搬送することのできるスクリューである。搬送スクリュー3は、回転軸2に攪拌翼1を螺旋状に設置したものである。攪拌翼1は、取付用台座部13に形成されている攪拌翼取付穴131にボルトを通して回転軸2に強固に、且つ、着脱可能に固定されている。
【0037】
回転軸2は一組の軸受け6に軸回転可能な態様で支持されている。そして、この回転軸2を電気駆動部5によって回転駆動させることにより、ケーシング4内の被混錬物を攪拌翼1で攪拌しながら、スクリューコンベア100の長軸方向に搬送する。この搬送によって、投入口8から投入された被混錬物は、排出口9の方向へ押し出される。
【0038】
ケーシング4は単一の部材で形成してもよいし、或いは、攪拌翼1の保守性を高めるために、複数の部材をボルト等で着脱可能に連結したものであってもよい。
【0039】
スクリューコンベア100においては、被混錬物の搬送を円滑、且つ、効率よく行うために、通常、攪拌翼1の先端部外周面111とケーシング4の内周面との間に、摩擦等防止のためのクリアランスとして、隙間(w)を持たせるようにしている。この隙間(w)の好ましい幅については、ケーシングの内径や、投入する粉体の粒径等によっても異なるが、例えば、標準的なサイズであるケーシング4の内径が500mmであるスクリューコンベア100においては、隙間(w)の幅は、3mm以上10mm以下程度であることが好ましく、この隙間(w)の大きさが、上記の被混錬物との衝突による攪拌翼1への摩耗作用の負荷による先端部外周面111の摩耗の進行により、凡そ10mmを超えた場合には、混錬物の搬送効率の低下や、フラッシング現象が多発するようになる。
【0040】
スクリューコンベア100は、特に攪拌翼1の特に先端部外周面111における耐摩耗性を著しく向上させたものである。よって、特に攪拌翼の先端部に強い摩耗作用による負荷がかかる場合において、上記の先端部の摩耗の進行を顕著に抑制することができる。攪拌翼1に強い摩耗作用による負荷を与える被混錬物としては、鉄鋼ダスト、カーボン、各種澱物、RPF、その他鉱物等、主にカーボンを含有する粉体を、代表的な具体例として挙げることができる。
【0041】
攪拌翼1を備えたスクリューコンベア100を用いる混錬方法においては、上記の通り、鉄鋼ダスト、カーボン、各種澱物、RPF、その他鉱物等、主にカーボンを含有する粉体を好ましい態様において、混錬することができる。又、被混錬物が、ビッカーズ硬度略50以上の鉱物を含有する粉体であれば、上記のカーボンを含有する粉体に限らず、攪拌翼1を備えたスクリューコンベア100を用いる混錬方法を好ましく用いることができる。ビッカーズ硬度略50以上の鉱物の具体例としては、カーボンの他に、バライト、ケイ石、カッ石、石膏、やソーダガラス等が挙げられる。
【0042】
又、攪拌翼1を備えたスクリューコンベア100は、上記の被混錬物を、還元焙焼工程等の加熱工程に投入する前段階で行う前処理を行うための手段として、好ましく用いることができる。好ましい具体例として、鉄鋼ダストとカーボンを混錬してペレット化する処理等を挙げることができる。
【0043】
以上の攪拌翼1及びそれを用いた混錬装置(スクリューコンベア100)によれば、以下のような効果を奏する。
【0044】
(1) 混錬装置用の攪拌翼1を、混錬装置用の攪拌翼であって、前記攪拌翼1の先端部外周面111には、母材11に埋設されている耐摩耗性ブロック12によって、耐摩耗性強化部が形成されている構成とした。これにより、被混錬物による摩耗作用、特に高い摩耗作用を受ける先端部付近の耐摩耗性を重点的に向上させた。よって、攪拌翼1は、攪拌翼の寿命の延長を低コストで実現することにより、混錬装置を用いた操業の生産性の向上に寄与することができる。
【0045】
(2) 更に、攪拌翼1を、複数の耐摩耗性ブロック12が母材11に埋設されている構成とした。これにより、複数の耐摩耗性ブロック12の組合せで、様々なサイズや形状の母材にも適応して、攪拌翼を自在に構成することができる。よって、攪拌翼の生産性が向上する。
【0046】
(3) 更に、(2)の攪拌翼1において、耐摩耗性ブロック12がいずれも同一形状である構成とした。これにより、(2)の攪拌翼1の生産性向上効果がより顕著となる。
【0047】
(4) 更に、攪拌翼1を、先端部外周面111において耐摩耗性強化部が占める面積割合が55%以上95%以下である構成とした。
【0048】
(5) 更に、攪拌翼1を、先端部外周面111には、耐摩耗性ブロック12が突出している部分である凸部141と、母材11が露出している部分である凹部142とからなる凹凸14が形成されていて、凸部141と凹部142との高低差が、1mm以上15mm以下である構成とした。これにより、被混錬物中の不要な塊を適度にほぐすことが可能であり、攪拌翼1の攪拌性能を更に向上させることができる。
【0049】
(6) 混錬装置を、(1)から(5)のいずれかに記載の攪拌翼1が配置されている混錬装置とした。これにより、混錬装置を、保守性と耐摩耗性、更には、混錬性能においても優れたものとすることができる。
【0050】
(7) 更に、混錬装置を、二軸不等速スクリューコンベアとした。これにより、攪拌翼の先端部に特に高い負荷がかかる二軸不等速スクリューコンベアの操業において、上記(6)の効果を更に有効に発現させることができる。
【0051】
(8) (6)又は(7)の装置を用いた被混錬物の混錬方法を、被混錬物が、ビッカーズ硬度が略50以上の鉱物を含有する粉体である構成とした。これによって、カーボンに代表される強い摩耗作用を有する被混錬物を投入する際において、上記(1)から(7)のいずれかの発明の奏する効果が、より顕著な効果として発現する。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。又、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 攪拌翼
11 母材
111 先端部外周面
12 耐摩耗性ブロック
13 取付用台座部
14 凹凸
141 凸部
142 凹部
2 回転軸
3 搬送スクリュー
4 ケーシング
5 電気駆動部
6 軸受け
7 機械ベース
8 投入口
9 排出口
100 スクリューコンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6