特許第6056759号(P6056759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6056759液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜、及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6056759
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20161226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】10
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-533717(P2013-533717)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2012073515
(87)【国際公開番号】WO2013039168
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-202229(P2011-202229)
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】作本 直樹
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−183907(JP,A)
【文献】 特開平11−149077(JP,A)
【文献】 特開平07−092468(JP,A)
【文献】 特開2011−107266(JP,A)
【文献】 特開2009−086685(JP,A)
【文献】 特開2011−095697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド及び該ポリイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体と有機溶媒とを含有する液晶配向剤を基板上に塗布、焼成して得られるイミド化した膜に、偏光された放射線を照射し、次いで、下記式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、及び式(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む溶液で接触処理することを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
【化1】
(式(A−1)において、Aは水素原子又はアセチル基であり、Aは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1又は2の整数である。式(A−2)において、Aは炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。式(A−4)において、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−5)において、Aは炭素数3〜6のアルキル基又はシクロアルキル基である。)
【請求項2】
前記有機溶媒が、沸点として100〜180℃を有する請求項1に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、1−メトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メトキシプロピオン酸メチル、又は3−エトキシプロピオン酸エチルである請求項1又は2に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項4】
前記重合体が、下記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
【化2】
(式(3)において、Xは下記式(X1−1)〜(X1−9)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、Yは2価の有機基であり、Rは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【化3】
(式(X1−1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、アルケニル基、又はフェニル基である。)
【請求項5】
前記重合体が、前記式(3)で表される構造単位を、全重合体1モルに対して、60モル%以上含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項6】
前記式(3)において、Xが前記式(X1−1)で表される請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項7】
前記式(3)において、Xが下記式(X1−10)及び(X1−11)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【化4】
【請求項8】
前記式(3)において、Yが下記式(4)及び(5)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【化5】
(式(5)において、Zは単結合、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、又は炭素数2〜10の2価の有機基である。)
【請求項9】
前記式(3)において、Yが前記式(4)で表される構造である請求項8に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項10】
ポリイミド及び該ポリイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体を含有する液晶配向剤を基版上に塗布、焼成して得られる膜に、偏光された放射線を照射してなる液晶配向膜の接触処理液であり、下記式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、及び式(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む溶液からなることを特徴とする液晶配向膜の接触処理液。
【化6】
(式(A−1)において、Aは水素原子又はアセチル基であり、Aは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1又は2の整数である。式(A−2)において、Aは炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。式(A−4)において、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−5)において、Aは炭素数3〜6のアルキル基又はシクロアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向法用の液晶配向膜の製造方法、この製造方法によって得られる液晶配向膜、及び得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶ディスプレイなどに用いられる液晶表示素子は、通常、液晶の配列状態を制御するための液晶配向膜が素子内に設けられている。
現在、工業的に最も普及している液晶配向膜は、電極基板上に形成されたポリアミック酸及び/又はこれをイミド化したポリイミドからなる膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。
液晶配向膜の配向過程における膜面のラビング処理は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。しかし、液晶表示素子の高性能化、高精細化、大型化への要求は益々高まり、ラビング処理によって発生する配向膜の表面の傷、発塵、機械的な力や静電気による影響、更には、配向処理面内の不均一性などの種々の問題が明らかとなってきている。
【0003】
ラビング処理に代わる方法としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法による液晶配向処理は、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したものなどが提案されている(非特許文献1参照)。
一方、ポリイミドを光配向用液晶配向膜に用いる場合、他に比べて高い耐熱性を有することからその有用性が期待されている。
特許文献1では、主鎖にシクロブタン環などの脂環構造を有するポリイミド膜を光配向法に用いることが提案されている。
【0004】
しかし、光配向法により得られる液晶配向膜は、ラビングによるものに比べて、高分子液晶配向膜の配向方向に対する異方性が小さいという問題がある。異方性が小さいと十分な液晶配向性が得られず、液晶表示素子とした場合に、残像が発生するなども問題が発生する。光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高める方法として、光照射後に、光照射によって前記ポリイミドの主鎖が切断され生成した低分子量成分を除去することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本特開平9−297313号公報
【特許文献2】日本特開2011−107266号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「液晶光配向膜」木戸脇、市村 機能材料 1997年11月号 Vol.17、 No.11 13〜22ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らが検討した結果、ポリイミド膜、又はポリイミド前駆体を塗布、焼成して得られるポリイミド膜に偏光された放射線を照射した後、水、又は有機溶媒中に浸漬するなどの処理をすることにより、得られる液晶配向膜の異方性が高くなることが確認された。しかし、これらの処理をした場合、得られる液晶配向膜にはムラが発生するなどの問題が発生し、液晶配向膜の特性を大きく棄損されることが見出された。
【0008】
本発明の目的は、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ処理する過程で発生するムラを抑制することができる液晶配向膜の製造方法、この液晶配向膜の製造方法によって得られる液晶配向膜、及びこの液晶配向膜の製造方法によって得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、ポリイミド膜、又はポリイミド前駆体を塗布、焼成して得られる膜に偏光された放射線を照射し、次いで、特定の有機溶媒を含む溶液を用いて浸漬などの接触処理することにより、得られる液晶配向膜の異方性を顕著に改善し、かつ上記した液晶配向膜に発生するムラの問題が解決し得ることを見出した。
【0010】
かくして、本発明は、下記を要旨とするものである。
1.ポリイミド及び該ポリイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体と有機溶媒とを含有する液晶配向剤を基板上に塗布、焼成して得られるイミド化した膜に、偏光された放射線を照射し、次いで、下記の式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、及び式(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む溶液で接触処理することを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
【化1】
(式(A−1)において、Aは水素原子又はアセチル基であり、Aは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1又は2の整数である。式(A−2)において、Aは炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。式(A−4)において、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。式(A−5)において、Aは炭素数3〜6のアルキル基又はシクロアルキル基である。)
2.前記有機溶媒が、沸点として100〜180℃を有する前記1に記載の液晶配向膜の製造方法。
3.前記有機溶媒が、1−メトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メトキシプロピオン酸メチル、又は3−エトキシプロピオン酸エチルである前記1又は2に記載の液晶配向膜の製造方法。
【0011】
4.前記重合体が、下記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する前記1〜3のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
【化2】
(式(3)において、Xは下記式(X1−1)〜(X1−9)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、Yは2価の有機基であり、Rは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【化3】
(式(X1−1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、アルケニル基、又はフェニル基である。)
5.前記重合体が、前記式(3)で表される構造単位を、全重合体1モルに対して、60モル%以上含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記4に記載の液晶配向膜の製造方法。
6.前記式(3)において、Xが前記式(X1−1)で表される前記4に記載の液晶配向膜の製造方法。
7.前記式(3)において、Xが下記式(X1−10)〜(X1−11)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【化4】
8.前記式(3)において、Yが下記式(4)及び(5)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【化5】
(式(5)において、Zは単結合、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、又は炭素数2〜10の2価の有機基である。)
9.前記式(3)において、Yが前記式(4)で表される構造である前記8に記載の液晶配向膜の製造方法。
【0012】
10.ポリイミド及び該ポリイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体を含有する液晶配向剤を基版上に塗布、焼成して得られる膜に、偏光された放射線を照射してなる液晶配向膜の接触処理液であり、前記式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、及び式(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む溶液からなることを特徴とする液晶配向膜の接触処理液。
11.前記1〜9のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法によって得られる液晶配向膜。
12.前記11に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶配向膜の製造方法によれば、光配向法で配向処理した高い異方性を有する液晶配向膜が得られ、同時に、得られる液晶配向膜は、膜ムラのない均質な膜が得られる。
かくして、本発明の製造方法による液晶配向膜は、異方性が高いために液晶配向規制力が高く、残像特性に優れ、液晶表示素子に用いた場合、高品位の液晶表示素子が得られる。
【0014】
本発明の液晶配向膜の製造方法により達成される上記の異方性の向上の効果や、処理時における膜ムラの発生の抑制の効果は、後記する実施例と比較例とを対比した「表1」から明らかなように、使用される溶媒によって大きな差異がある。
すなわち、後記する「表1」に見られるように、溶媒として、水、イソプロピルルコールなどを使用した場合は、得られる液晶配向膜の異方性の向上はほとんど見られず、同時に、これらの溶媒を使用した場合には、得られる液晶配向膜にムラも発生してしまう。
しかし、本発明における上記記式(A−1)〜(A−5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む溶液で接触処理した場合には、液晶配向膜の異方性の向上は大きく改善される、同時に、得られる液晶配向膜にムラの発生を顕著に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ポリイミド及び該ポリイミドの前駆体>
本発明において、偏光された放射線を照射することにより、異方性が付与されるポリイミド及び該ポリイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(以下、単に、重合体ともいう。)が使用される。この条件を満たすポリイミド、又はポリイミド前駆体であれば、その構造は特に限定されるものではない。
具体例を挙げるならば、得られる液晶配向膜の異方性が高いため、本発明に用いられる重合体としては、下記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体が好ましい。有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体が特に好ましい。
【化6】
式(3)において、Rは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0016】
は、下記式(X1−1)〜(X1−9)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【化7】
式(X1−1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、アルケニル基、又はフェニル基であり、同一でも異なってもよい。液晶配向性の観点から、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。Xは、さらに好ましくは、下記式(X1−10)及び(X1−11)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類である。
【化8】
【0017】
は、2価の有機基であり、その構造は特に限定されるものではない。得られる液晶配向膜の異方性が高いため、下記式(Y1−1)及び(Y1−2)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【化9】
式(5)において、Zは単結合、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、又は炭素数2〜10の2価の有機基である。
において、エステル結合としては、−C(O)O−、又は−OC(O)−で表される。アミド結合としては、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−NHC(O)−、又は−NRC(O)−で表される構造を示すことができる。Rは炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はこれらの組み合わせである。
【0018】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、CH=CH構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。
【0019】
チオエステル結合としては−C(O)S−、又は−SC(O)−で表される構造を示すことができる。
が炭素数2〜10の有機基である場合、下記式(6)の構造で表すことができる。
【化10】
式(6)において、Z4、Z、及びZは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−NR11−、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合である。R11は、水素原子、メチル基、又はt−ブトキシカルボニル基である。
、Z、及びZにおけるエステル結合、アミド結合、及びチオエステル結合については、前記のエステル結合、アミド結合、及びチオエステル結合と同様の構造を示すことができる。
【0020】
ウレア結合としては、−NH−C(O)NH−、又は−NR−C(O)NR−で表される構造を示すことができる。Rは炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はこれらの組み合わせであり、これらの基は前記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基と同様の例を挙げることができる。
カーボネート結合としては、−O−C(O)−O−で表される構造を示すことができる。
カルバメート結合としては、−NH−C(O)−O−、−O−C(O)−NH−、−NR−C(O)−O−、又は−O−C(O)−NR−で表される構造を示すことができる。Rは炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はこれらの組み合わせであり、これらの基は前記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基と同様の例を挙げることができる。
【0021】
式(6)中のR及びR10はそれぞれ独立して、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせた基から選ばれる構造である。R及びR10の何れかが単結合の場合、R又はR10の何れかは、炭素数2〜10の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせた基から選ばれる構造である。
上記アルキレン基としては、前記アルキル基から水素原子を1つ除いた構造が挙げられる。より具体的には、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,2−ペンチレン基、1,2−へキシレン基、2,3−ブチレン基、2,4−ペンチレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロへキシレン基などが挙げられる。
【0022】
アルケニレン基としては、前記アルケニル基から水素原子を1つ除いた構造が挙げられる。より具体的には、1,1−エテニレン基、1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンメチレン基、1−メチル−1,2−エテニレン基、1,2−エテニレン−1,1−エチレン基、1,2−エテニレン−1,2−エチレン基、1,2−エテニレン−1,2−プロピレン基、1,2−エテニレン−1,3−プロピレン基、1,2−エテニレン−1,4−ブチレン基、1,2−エテニレン−1,2−ブチレン基などが挙げられる。
アルキニレン基としては、前記アルキニル基から水素原子を1つ除いた構造が挙げられる。より具体的には、エチニレン基、エチニレンメチレン基、エチニレン−1,1−エチレン基、エチニレン−1,2−エチレン基、エチニレン−1,2−プロピレン基、エチニレン−1,3−プロピレン基、エチニレン−1,4−ブチレン基、エチニレン−1,2−ブチレン基などが挙げられる。
【0023】
アリーレン基としては、前記アリール基から水素原子を1つ除いた構造が挙げられる。より具体的には、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などが挙げられる。
に直線性が高い構造や剛直な構造を含有する場合、良好な液晶配向性を有する液晶配向膜が得られるため、Zの構造としては、単結合、又は下記式(A1−1)〜(A15−25)の構造がより好ましい。
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
の構造が剛直な構造であるほど、液晶配向性に優れた液晶配向膜が得られるため、Yの構造としては、上記式(4)で表される構造が特に好ましい。
上記式(3)で表される構造単位を含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体において、上記式(3)で表される構造単位の比率は、全重合体中の全構造単位1モルに対して、60〜100モル%が好ましい。上記式(3)で表される構造単位の比率が高いほど、良好な液晶配向性を有する液晶配向膜が得られるため、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の重合体成分は上記式(3)で表される構造単位以外に、下記式(7)で表される構造単位を含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体であってもよい。
【化13】
式(7)において、Rは上記式(3)のRと同様の定義である。
【0028】
は4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体的例を挙げるならば、下記式(X−9)〜(X−42)の構造が挙げられる。化合物の入手性の観点から、Xの構造は、X−17、X−25、X−26,X−27、X−28、X−32、又はX−39が好ましい。また、直流電圧により蓄積した残留電荷の緩和が早い液晶配向膜を得られるという観点からは、芳香族環構造を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、Xの構造としては、X−26,X−27、X−28、X−32、X−35、又はX−37がより好ましい。
【0029】
【化14】
【0030】
【化15】
【0031】
上記式(7)において、Yは2価の有機基であり、その構造は特に限定されない。Yの具体例を挙げるならば、下記記式(Y−1)〜(Y−74)の構造が挙げられる。
【化16】
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
【化20】
【0036】
重合体成分の有機溶媒に対する溶解性に優れるために、式(7)におけるYとしては、Y−8、Y−20、Y−21、Y−22、Y−28、Y−29、Y−30、Y−72、Y−73、又はY−74の構造を有する構造単位を含有することが好ましい。
重合体成分における上記式(7)で表される構造単位の比率が高い場合、液晶配向膜の液晶配向性を低下させるため、上記式(7)で表される構造単位の比率は、全構造単位1モルに対して0〜40モル%が好ましく、0〜20モル%がさらに好ましい。
【0037】
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶媒の存在下で−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0038】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましく、2〜4モル当量がより好ましい。
上記の反応に用いる有機溶媒は、重合体の溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
合成時における有機溶媒中の重合体の濃度は、重合体の析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0039】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶媒の存在下で−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0040】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましく、2〜3倍モルがより好ましい。
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及び重合体の溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
合成時における有機溶媒中の重合体濃度は、重合体の析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる有機溶媒は、できるだけ脱水されていることが好ましく、反応は窒素雰囲気中で行い、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0041】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶媒の存在下で0〜150℃、好ましくは0〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0042】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましく、2〜2.5倍モルがより好ましい。
【0043】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましく、2〜3倍モルがより好ましい。
前記有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0.1〜5倍モルが好ましく、2〜3倍モルがより好ましい。
【0044】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は(2)の合成法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられ、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが好ましい。
【0045】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及び重合体の溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
重合体の濃度は、重合体の析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられ、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが好ましい。
【0047】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。
ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0048】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
【0049】
イミド化反応を行うときの温度は、−20〜140℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5〜30倍モル、好ましくは2〜20倍モルである。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0050】
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0051】
イミド化反応を行うときの温度は、−20〜140℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はポリアミック酸基の0.5〜30倍モル、好ましくは2〜20倍モルであり、酸無水物の量はポリアミック酸基の1〜50倍モル、好ましくは3〜30倍モルである。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0052】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製された重合体の粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、2−プロパノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられ、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトンなどが好ましい。
【0053】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、重合体成分が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、5,000〜50,000である。
【0054】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2〜8質量%である。
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0055】
本発明に用いられる液晶配向剤は、重合体成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種上を併用してもよい。
【0056】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリアミック酸のイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加しても良い。
【0057】
<液晶配向膜の製造方法>
本発明の液晶配向膜の製造方法は、液晶配向剤を基板に塗布し、焼成する工程、得られた膜に偏光された放射線を照射する工程、放射線を照射した膜を特定の有溶媒で接触処理する工程を有する。
【0058】
(1)液晶配向剤を基板に塗布し、焼成する工程
上記のようにして得られた液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成することによりポリイミド膜、又はポリイミド前駆体がイミド化した膜が得られる。
本発明に用いられる液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。本発明に用いられる液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
【0059】
液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために、50〜120℃、好ましくは60〜100℃で1〜10分乾燥させ、その後150〜300℃、好ましくは200〜250で5〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
【0060】
(2)得られた膜に偏光された放射線を照射する工程
上記(1)の方法で得られた膜に、偏光された放射線を照射する(以下、光配向処理とも言う。)ことにより、偏光方向に対して垂直方向に異方性が付与される。
光配向処理の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏光した放射線を照射し、場合によっては、さらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線の波長としては、100〜800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。このうち、100〜400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200〜400nmの波長を有するものが特に好ましい。
前記放射線の照射量は、1〜10,000mJ/cmの範囲にあることが好ましく、100〜5,000mJ/cmの範囲にあることが特に好ましい。
【0061】
(3)放射線を照射した膜を有機溶媒を含む溶液で接触処理する工程
上記で、偏光された放射線を照射した膜は、次いで特定の有機溶媒を含む溶液で接触処理される。ここで用いられる有機溶媒は、下記の(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、及び式(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒又は有機溶剤である。
【化21】
式(A−1)において、Aは水素原子、又はアセチル基であり、Aは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1又は2の整数である。
式(A−2)において、Aは炭素数1〜4のアルキル基である。
式(A−3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。
式(A−4)において、A及びAは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。
式(A−5)において、Aは炭素数3〜6のアルキル基又はシクロアルキル基である。
【0062】
上記式(A−1)〜(A−5)の有機溶媒は、沸点が好ましくは、100〜180℃、より好ましくは、110〜160℃の水溶性のものが好適である。沸点が高い場合には、膜中に残存し、液晶配向膜の特性に悪影響を与えることになり、一方、沸点が低い場合には、揮発しやすいために膜にムラが発生しやすくなり好ましくない。
上記式(A−1)〜(A−5)の有機溶媒は、なかでも、異方性が高く、ムラのない液晶配向膜が得られ易いことから、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び酢酸シクロヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。特に、1−メトキシ−2−プロパノール及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0063】
接触処理に使用する有機溶剤を含む溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記式(A−1)〜(A−5)の有機溶媒以外の他の溶媒又は溶剤を含んでもよい。他の溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。特に、汎用性及び安全性の観点から水がより好ましい。
上記の他の溶媒を含有する場合にも、上記式(A−1)〜(A−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒の含有量は、接触処理に使用される溶液の全量に対して、10〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%が特に好ましい。
【0064】
本発明において、偏光された放射線を照射した膜と有機溶媒を含む溶液との接触処理は、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが好ましくは十分に接触するような処理で行なわれる。なかでも、有機溶媒を含む溶液中に膜を、好ましくは10秒〜1時間、より好ましくは1〜30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は常温でも加温してもよいが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜50℃で実施される。また、必要に応じて超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
上記接触処理の後に、使用した溶液中の有機溶媒を除去する目的で、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってよい。乾燥する場合の温度としては、80〜250℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。
【0065】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、本発明の製造方法によって得られ液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して液晶表示素子としたものである。
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0066】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル−ゲル法によって形成されたSiO−TiOからなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本発明の液晶配向膜を形成する。
次に、一方の基板に他方の基板を互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサを混入しておく。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。
【0067】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。この液晶表示素子は、液晶配向膜として本発明の液晶配向膜の製造方法により得られた液晶配向膜を使用していることから、残像特性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用可能である。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した化合物の略号、及び各特性の測定方法は、以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
IPA:2−プロパノール
PGMEA:1−メトキシ−2−プロパノールアセテート
PG:プロピレングリコール
MMP:メチル−3−メトキシプロピオネート
DE−1:下記式(DE−1)
DA−1:下記式(DA−1)
DA−2:下記式(DA−2)
DA−3:下記式(DA−3)
添加剤A:N−α―(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−τ−t−ブトキシカルボニル−L−ヒスチジン
【化22】
【0069】
以下に、分子量、配向膜の異方性、及び膜ムラの評価方法を示す。
[分子量]
ポリアミック酸エステルの分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、及びポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、及び150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルについて別々に行った。
【0070】
[配向膜の異方性]
配向膜の異方性の測定は以下のようにして行った。
島津製作所社製の紫外−可視−近赤外分光光度計(UV−3100PC)を用いて測定を行った。得られた配向膜の配向方向に対する吸光度(235nmの値)と配向方向の垂直方向に対する吸光度から異方性の大きさを測定した。
[膜ムラ]
膜ムラの評価は、浸漬処理後の膜付き基板を目視で観察し、以下のように分類した。
○ :ムラなし
△ :ムラが少し見られた
× :大きなムラや白化が見られた
【0071】
<合成例1>
撹拌装置付きの500mLの四つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、p−フェニレンジアミンを4.58g(42.4mmol)入れ、さらにDA−1を1.79g (4.71mmol)入れた後、NMPを84.7g、GBLを254g、及び塩基としてピリジン8.40g(106mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次に、このジアミン溶液を撹拌しながら、DE−1を14.4g(44.2mmol)添加し、15℃で一晩反応させた。一晩攪拌後、アクリロイルクロライドを1.23g (13.6mmol) 加えて、15℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸エステルの溶液を、1477gのIPAに撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、738gのIPAで5回洗浄し、乾燥することで白色のポリアミック酸エステル樹脂粉末17.3gを得た。収率は、96.9%であった。また、このポリアミック酸エステルの分子量はMn=14,288、Mw=29,956であった。
得られたポリアミック酸エステル樹脂粉末3.69gを100mL三角フラスコにとりGBLを33.2g加え、室温で24時間攪拌し溶解させて、ポリアミック酸エステル溶液とした。
【0072】
<合成例2>
攪拌子を入れた20mLサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸エステル溶液を5.26gとり、GBLを3.16g、BCSを2.11g、及び添加剤Aを0.19g加え、マグネチックスターラーで30分間攪拌し、液晶配向剤Aを得た。
【0073】
<合成例3>
撹拌装置付きの500mLの四つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、p−フェニレンジアミンを2.50g (23.1mmol)入れ、さらにDA−2を0.59g (1.22mmol)入れた後、NMPを42.8g、GBLを129g、及び塩基としてピリジン4.34g(54.9mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次に、このジアミン溶液を撹拌しながら、DE−1を7.44g(22.9mmol)添加し、15℃で一晩反応させた。一晩攪拌後、アクリロイルクロライドを0.63g (7.01mmol) 加えて、15℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸エステルの溶液を、574gのIPAに撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、382gのIPAで5回洗浄し、乾燥して白色のポリアミック酸エステル樹脂粉末8.82gを得た。収率は、97.8%であった。また、このポリアミック酸エステルの分子量は、Mn=16617、Mw=37387であった。
得られたポリアミック酸エステル樹脂粉末0.80gを100mL三角フラスコに採り、GBLを7.20g加えて、室温で24時間攪拌し、溶解させて、ポリアミック酸エステル溶液とした。
【0074】
<合成例4>
攪拌子を入れた20mLサンプル管に、合成例3で得られたポリアミック酸エステル溶液を8.00g採り、GBLを8.01g、BCSを4.00g、及び添加剤Aを0.28g加えて、マグネチックスターラーで30分間攪拌し、液晶配向剤Bを得た。
【0075】
<合成例5>
撹拌装置付きの500mLの四つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、p−フェニレンジアミンを1.23g(11.3mmol)入れ、さらに4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンを0.80g (3.77mmol)入れた後、NMPを27.0g、GBLを91.2g、及び塩基としてピリジン2.69g(34.0mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次に、このジアミン溶液を撹拌しながら、DE−1を4.61g(14.2mmol)添加し、15℃で一晩反応させた。一晩攪拌後、アクリロイルクロライドを0.39g (4.34mmol) 加えて、15℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸エステルの溶液を、384gのIPAに撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、256gのIPAで5回洗浄し、乾燥して白色のポリアミック酸エステル樹脂粉末5.11gを得た。収率は、89.6%であった。また、このポリアミック酸エステルの分子量は、Mn=14806、Mw=32719であった。
得られたポリアミック酸エステル樹脂粉末0.80gを100mL三角フラスコに採り、GBLを7.20g加えて、室温で24時間攪拌し、溶解させて、ポリアミック酸エステル溶液とした。
【0076】
<合成例6>
攪拌子を入れた20mLサンプル管に、合成例5で得られたポリアミック酸エステル溶液を8.01g採り、GBLを8.01g、BCSを4.00g、及び添加剤Aを0.28g加えて、マグネチックスターラーで30分間攪拌し、液晶配向剤Cを得た。
【0077】
<合成例7>
撹拌装置付きの500mLの四つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、p−フェニレンジアミンを2.80g(25.9mmol)入れ、さらにDA−3を1.45g (6.47mmol)入れた後、NMPを111g、及び塩基としてピリジン6.18g(78.1mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次に、このジアミン溶液を撹拌しながら、DE−1を9.89g(30.4mmol)添加し、15℃で一晩反応させた。一晩攪拌後、アクリロイルクロライドを0.38g (4.21mmol) 加えて、15℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸エステルの溶液を、1230gの水に撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、1230gのIPAで5回洗浄し、乾燥して白色のポリアミック酸エステル樹脂粉末10.2gを得た。収率は、83.0%であった。また、このポリアミック酸エステルの分子量は、Mn=20,786、Mw=40,973であった。
得られたポリアミック酸エステル樹脂粉末0.798gを100mL三角フラスコに採り、GBLを7.18g加え、室温で24時間攪拌し、溶解させて、ポリアミック酸エステル溶液とした。
【0078】
<合成例8>
攪拌子を入れた20mLサンプル管に、合成例7で得られたポリアミック酸エステル溶液を7.98g採り、GBLを8.03g、BCSを4.00g、及び添加剤Aを0.28g加えて、マグネチックスターラーで30分間攪拌し、液晶配向剤Dを得た。
【0079】
<合成例9>
撹拌装置及び窒素導入管付きの300mL四つ口フラスコ内に、p−フェニレンジアミンを46.0g(0.43mol)、DA−3を17.8g(0.075mol)、及びNMPを1389g入れて、撹拌して溶解させた。この溶液を撹拌しながら、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を107g(0.48mol)添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸(PAA−1)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は215mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=12629、Mw=29521であった。
【0080】
<合成例10>
撹拌子を入れた50mlサンプル管に、合成例9で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)11.0g、NMPを5.00g、BCSを4.01g、及び添加剤Aを0.15g採り、マグネチックスターラーで30分間撹拌し、液晶配向剤Eを得た。
【0081】
<合成例11>
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコ内に、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンを4.25g(20.0mmol)採り、NMPを70.9g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を3.82g(19.5mmol)添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸(PAA−2)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は156mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=13966、Mw=33163であった。
【0082】
<合成例12>
撹拌子を入れた20mlサンプル管に、合成例11で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を12.2g採り、NMPを5.12g、及びBCSを2.90g加えて、マグネチックスターラーで30分間撹拌し、液晶配向剤Fを得た。
【0083】
<合成例13>
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコ内に、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパンを5.17g(20.0mmol)採り、NMPを72.0g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を3.79g(19.3mmol)添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸(PAA−3)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は162mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=25902、Mw=40413であった。
【0084】
<合成例14>
撹拌子を入れた20mlサンプル管に、合成例13で得られたポリアミック酸溶液(PAA−3)を11.9g採り、NMPを3.98g、及びBCSを3.97g加えて、マグネチックスターラーで30分間撹拌し、液晶配向剤Gを得た。
【0085】
<実施例1>
合成例2で得られた液晶配向剤Aを1.0μmのフィルターで濾過した後、ガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で3分間の乾燥後、230℃で10分焼成し、膜厚100nmのポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を1.2J/cm照射した。
次いで、上記で得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし(濯ぎ)、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性を測定した結果、異方性の大きさは1.84であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0086】
<実施例2>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGMEA(沸点:146℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.51であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0087】
<実施例3>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME/水=1/1(体積比)混合溶媒に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.69であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0088】
<実施例4>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.9であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0089】
<実施例5>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、ブチルセロソルブ(沸点:169℃)に25℃にて10分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.69であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0090】
<実施例6>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:124℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、水で1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.82であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0091】
<実施例7>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、水で1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.84であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0092】
<実施例8>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、ジアセトンアルコール(沸点:169℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、水で1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.77であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0093】
<実施例9>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、MMP(沸点:145℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、水で1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.77であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0094】
<実施例10>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例4で得られた液晶配向剤Bを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.72であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0095】
<実施例11>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例4で得られた液晶配向剤Bを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは2.11であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0096】
<実施例12>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例6で得られた液晶配向剤Cを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.53であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0097】
<実施例13>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例6で得られた液晶配向剤Cを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.94であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0098】
<実施例14>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例8で得られた液晶配向剤Dを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.40であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0099】
<実施例15>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例8で得られた液晶配向剤Dを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.70であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0100】
<実施例16>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.37であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0101】
<実施例17>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.77であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0102】
<実施例18>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例10で得られた液晶配向剤Eを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.33であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0103】
<実施例19>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例10で得られた液晶配向剤Eを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.2であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0104】
<実施例20>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例12で得られた液晶配向剤Fを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.15であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0105】
<実施例21>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例12で得られた液晶配向剤Fを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.12であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0106】
<実施例22>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例14で得られた液晶配向剤Gを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PGME(沸点:120℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.11であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0107】
<実施例23>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例14で得られた液晶配向剤Gを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、エチルラクテート(沸点:154℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.10であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラは見られなかった。
【0108】
<比較例1>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.2であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0109】
<比較例2>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.25であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0110】
<比較例3>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、PG(沸点:187℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.45であった。また配向膜を目視で観察したところ、大きなムラや白化が見られた。
【0111】
<比較例4>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、GBL(沸点:204℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜は、膜が全て溶解し、異方性の測定及び膜厚の測定は不可能であった。
【0112】
<比較例5>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、NMP(沸点:202℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜は、膜が全て溶解し、異方性の測定及び膜厚の測定は不可能であった。
【0113】
<比較例6>
実施例1と同様にして、合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.18であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0114】
<比較例7>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例4で得られた液晶配向剤Bを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.19であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0115】
<比較例8>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例4で得られた液晶配向剤Bを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.17であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0116】
<比較例9>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例4で得られた液晶配向剤Bを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.12であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0117】
<比較例10>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例6で得られた液晶配向剤Cを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.12であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0118】
<比較例11>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例6で得られた液晶配向剤Cを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.16であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0119】
<比較例12>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例6で得られた液晶配向剤Cを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.11であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0120】
<比較例13>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例8で得られた液晶配向剤Dを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.19であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0121】
<比較例14>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例8で得られた液晶配向剤Dを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.19であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0122】
<比較例15>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例8で得られた液晶配向剤Dを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.12であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0123】
<比較例16>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.17であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0124】
<比較例17>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.17であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0125】
<比較例18>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例2で得られた液晶配向剤Aを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.12であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0126】
<比較例19>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例10で得られた液晶配向剤Eを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.11であった。また配向膜を目視で観察したところ、少しムラが見られた。
【0127】
<比較例20>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例10で得られた液晶配向剤Eを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.11であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0128】
<比較例21>
254nmの紫外線を0.5J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例10で得られた液晶配向剤Eを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.08であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0129】
<比較例22>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例12で得られた液晶配向剤Fを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.04であった。また配向膜を目視で観察したところ、ムラが見られた。
【0130】
<比較例23>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例12で得られた液晶配向剤Fを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.10であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0131】
<比較例24>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例12で得られた液晶配向剤Fを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.06であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0132】
<比較例25>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例14で得られた液晶配向剤Gを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、IPA(沸点:82.4℃)に25℃にて3分間浸漬させた後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.09であった。また配向膜を目視で観察したところ、ムラが見られた。
【0133】
<比較例26>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例14で得られた液晶配向剤Gを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に紫外線を照射して得られた膜付き基板を、水(沸点:100℃)に3分間浸漬させた後、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、液晶配向膜を得た。
得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.09であった。また液晶配向膜を目視で観察したところ、ムラが少し見られた。
【0134】
<比較例27>
254nmの紫外線を1.0J/cm照射した以外は、実施例1と同様にした。合成例14で得られた液晶配向剤Gを使用し、基板上に塗布、乾燥、焼成したポリイミド膜に、紫外線を照射して得られた膜付き基板上の液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさは1.07であった。液晶配向膜の膜ムラは観察しなかった。
【0135】
上記した実施例1〜22及び比較例1〜27について、用いた溶媒の種類、得られた液晶配向膜の異方性の大きさ、及び膜ムラを、表1にまとめて示した。
【0136】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の製造方法により得られる液晶配向膜は、高い異方性を有し、TN素子、STN素子、TFT液晶素子、更には、垂直配向型の液晶表示素子などに広く有用である。さらに、高い異方性が付与されることにより、液晶配向性に由来する残像、例えば、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する交流駆動による残像を低減することができ、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子や液晶テレビの液晶配向膜として特に有用である。
なお、2011年9月15日に出願された日本特許出願2011−202229号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。