特許第6057002号(P6057002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

特許6057002逆浸透膜用スケール防止剤及び逆浸透膜処理方法
<>
  • 特許6057002-逆浸透膜用スケール防止剤及び逆浸透膜処理方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6057002
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】逆浸透膜用スケール防止剤及び逆浸透膜処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/08 20060101AFI20161226BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20161226BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20161226BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20161226BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B01D65/08
   C02F5/00 610F
   C02F5/00 620B
   C02F5/10 620A
   C02F5/10 620B
   C02F5/10 620E
   C02F5/10 620F
   C02F1/44 C
   B01D61/10
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-59888(P2016-59888)
(22)【出願日】2016年3月24日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石井 一輝
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/114953(WO,A1)
【文献】 特開平02−031894(JP,A)
【文献】 特開2012−206044(JP,A)
【文献】 特開昭59−179196(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/116296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C02F 5/00
C02F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜処理における炭酸カルシウムスケールの防止剤であって、下記(A)成分と(B)成分を含む、逆浸透膜用スケール防止剤。
(A)成分:マレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルのターポリマー
(B)成分:カルボン酸のホモポリマー
【請求項2】
請求項1において、(B)成分が、ポリアクリル酸、及び/又はポリマレイン酸である逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項3】
請求項1又は2において、(A)成分のマレイン酸含有率が50mol%以上である逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、(A)成分の質量平均分子量が3000以下である逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、(B)成分の質量平均分子量が10000以下である逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、(A)成分と(B)成分の含有質量比が(A)成分:(B)成分=10:1〜1:30である逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記逆浸透膜処理で得られる濃縮水のカルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lである逆浸透膜用スケール防止剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の逆浸透膜用スケール防止剤を逆浸透膜の給水に添加して逆浸透処理する逆浸透膜処理方法。
【請求項9】
請求項8において、前記給水中の(A)成分の濃度が0.01〜50mg/Lで、(B)成分の濃度が0.01〜50mg/Lとなるように前記逆浸透膜用スケール防止剤を添加する逆浸透膜処理方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記逆浸透膜処理で得られる濃縮水のカルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lである逆浸透膜処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆浸透膜(RO膜)処理における炭酸カルシウムスケールの析出を抑制するスケール防止剤と、このスケール防止剤を用いたRO膜処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な水供給の不足において、海水、かん水の淡水化また排水回収系でRO膜システムを用いた水回収率向上による節水対策が積極的に行われている。高回収率でRO膜システムを運転した場合、スケール成分の濃縮によりスケール障害が発生する。生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛および塩基性炭酸亜鉛等がある。特に排水回収システムにおいては、高濃度のMアルカリ度が存在する場合があり、RO膜システムの高回収率運転時において炭酸カルシウムスケールの発生が問題となってくる。
【0003】
一般的に、RO膜処理でのカルシウム系スケールに対するスケール防止剤として、分子量が比較的小さく、スケール防止効果が高いことから、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ等の無機ポリリン酸類、アミノメチルホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸等のホスホン酸類といった、リンを含むスケール防止剤が使用されている。
【0004】
しかし、近年、排水中のリン濃度が規制されることに伴い、リンを含まないスケール防止剤が望まれている。
従来、リンを含有しない炭酸カルシウムスケール防止剤として、例えば、特許文献1には、マレイン酸とイソブチレンのコポリマー、又はマレイン酸と酢酸ビニルエチルとエチルアクリレートのターポリマーが提案されている。
また、特許文献2には、AA(アクリル酸)−AMPS(2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸)コポリマーとPMA(ポリマレイン酸)との併用が提案されている。
【0005】
特許文献1には、本発明で用いる(A)成分に該当するターポリマーが記載され、このターポリマーと併用し得る他のスケール防止剤としてポリアクリル酸が例示されているが、これを併用した具体的な実施例はなく、適用条件や効果等の検証もない一般的な記載にとどまっている。
【0006】
特許文献2には、PMAとAA−AMPSポリマーを併用することで、高いスケール防止効果が得られる旨の記載があるが、本発明で用いる(A)成分の示唆はない。
【0007】
特許文献3には、ポリマレイン酸(分子量580)と、マレイン酸−エチルアクリレート−酢酸ビニル(分子量850)とを併用した実施例が記載されている。特許文献3では、その適用対象水系について、「本発明に従って処理することのできる水性系に関して、興味深い系は、冷却水系、蒸気発生系、海水蒸発系、逆浸透装置、瓶洗浄プラント、バルブおよび紙製造装置、砂糖蒸発装置、土地かんがい系、静水圧がま、ガス洗浄系、閉回路加熱系、水ベースの冷凍系、産油および掘削系である。」旨記載されているが、特に逆浸透膜に適用されることが想定されているとはいえず、RO膜用スケール防止剤としての実質的な開示はない。そのため、RO膜において適用可能な水質や具体的なRO膜処理に適した具体的なポリマーの条件や組成については何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2012/114953号パンフレット
【特許文献2】特表2013−531705号公報
【特許文献3】特開平2−280897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、排水中のリン濃度を増加させることなく、RO膜処理において生成する炭酸カルシウムの析出を効果的に抑制することができ、カルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lというような高いMアルカリ度の濃縮水が得られる給水をRO膜処理する場合においても適用可能なRO膜用スケール防止剤と、このスケール防止剤を用いたRO膜処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特定の(A)成分と(B)成分を併用することにより、高いMアルカリ度の水系であってもRO膜処理における炭酸カルシウムスケールを効果的に抑制することができることを見出した。
【0011】
本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 逆浸透膜処理における炭酸カルシウムスケールの防止剤であって、下記(A)成分と(B)成分を含む、逆浸透膜用スケール防止剤。
(A)成分:マレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルのターポリマー
(B)成分:カルボン酸のホモポリマー
【0013】
[2] [1]において、(B)成分が、ポリアクリル酸、及び/又はポリマレイン酸である逆浸透膜用スケール防止剤。
【0014】
[3] [1]又は[2]において、(A)成分のマレイン酸含有率が50mol%以上である逆浸透膜用スケール防止剤。
【0015】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、(A)成分の質量平均分子量が3000以下である逆浸透膜用スケール防止剤。
【0016】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、(B)成分の質量平均分子量が10000以下である逆浸透膜用スケール防止剤。
【0017】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、(A)成分と(B)成分の含有質量比が(A)成分:(B)成分=10:1〜1:30である逆浸透膜用スケール防止剤。
【0018】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、前記逆浸透膜処理で得られる濃縮水のカルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lである逆浸透膜用スケール防止剤。
【0019】
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の逆浸透膜用スケール防止剤を逆浸透膜の給水に添加して逆浸透処理する逆浸透膜処理方法。
【0020】
[9] [8]において、前記給水中の(A)成分の濃度が0.01〜50mg/Lで、(B)成分の濃度が0.01〜50mg/Lとなるように前記逆浸透膜用スケール防止剤を添加する逆浸透膜処理方法。
【0021】
[10] [8]又は[9]において、前記逆浸透膜処理で得られる濃縮水のカルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lである逆浸透膜処理方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のRO膜用スケール防止剤によれば、以下のような優れた効果が達成される。
(1)リンを含まないため、排水中のリン濃度を増加させることなく、RO膜処理において生成する炭酸カルシウムの析出を効果的に抑制することができる。
(2)カルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lというような高いMアルカリ度の濃縮水が得られる給水をRO膜処理する場合においても適用可能であり、(A)成分と(B)成分とを併用することによるスケール防止効果の相乗効果で炭酸カルシウムスケールの生成を十分に抑制することができる。
【0023】
従って、このような本発明のRO膜用スケール防止剤を用いる本発明のRO膜処理方法によれば、高Mアルカリ度の給水を高回収率でRO膜処理する場合であってもスケール障害を引き起こすことなく、安定な処理を長期に亘って継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1〜4および比較例1〜7におけるフラックスの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明におけるポリマーの「質量平均分子量」とは、ポリアクリル酸ナトリウムを標準物質として用い、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定した値である。
【0026】
[RO膜用スケール防止剤]
本発明のRO膜用スケール防止剤は、RO膜処理における炭酸カルシウムスケールの析出を抑制するスケール防止剤であって、下記(A)成分と(B)成分を含むことを特徴とする。
(A)成分:マレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルのターポリマー
(B)成分:カルボン酸のホモポリマー
【0027】
<(A)成分>
(A)成分は、マレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルとのターポリマーである。
【0028】
アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルエステル部分の炭酸数が1〜8のものが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。(A)成分には、これらのアクリル酸アルキルエステルの2種以上が含まれていてもよい。
【0029】
(A)成分のターポリマー中のマレイン酸含有率(ターポリマーを構成するモノマー由来の全構成単位に対するマレイン酸に由来する構成単位の含有率)は、50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましい。マレイン酸含有率が50mol%未満であると、アニオン基であるカルボキシル基量が少なくなりゲル化し易くなる上に炭酸カルシウムスケールの抑制効果も低くなる傾向がある。マレイン酸含有率の上限は、他の共重合成分の含有率を確保する観点から90mol%であることが好ましい。
【0030】
(A)成分のターポリマー中の酢酸ビニル含有率(ターポリマーを構成するモノマー由来の全構成単位に対する酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率)は1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることが好ましい。酢酸ビニル含有率が上記下限よりも少ないと、重合が困難となってしまう。酢酸ビニル含有率の上限は、他の共重合成分の含有率を確保する観点から40mol%であることが好ましい。
【0031】
(A)成分のターポリマー中のアクリル酸アルキルエステル含有率(ターポリマーを構成するモノマー由来の全構成単位に対するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有率)は1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることが好ましい。アクリル酸アルキルエステル含有率が上記下限よりも少ないと、分子量の調整が困難である。アクリル酸アルキルエステル含有率の上限は、他の共重合成分の含有率を確保する観点から40mol%であることが好ましい。
【0032】
(A)成分のマレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルのターポリマーの質量平均分子量(以下「分子量(Mw)」と記す。)が大き過ぎるとスケール抑制効果が低下する傾向にあり、また、ポリマーが高粘性となって、RO膜面に付着してフラックスを低下させる要因となるおそれがある。(A)成分の分子量(Mw)が小さ過ぎると、スケール抑制効果を十分に得ることができない。
このようなことから(A)成分の分子量(Mw)は3000以下であることが好ましく、1200〜1800の範囲であることがより好ましい。
【0033】
<(B)成分>
(B)成分は、カルボン酸のホモポリマーであり、好ましくはポリアクリル酸及び/又はポリマレイン酸である。
【0034】
(B)成分のカルボン酸のホモポリマーの質量平均分子量(分子量(Mw))が大き過ぎるとスケール抑制効果が低下する傾向にあり、また、ポリマーが高粘性となって、RO膜面に付着してフラックスを低下させる要因となるおそれがある。(B)成分の分子量(Mw)が小さ過ぎると、スケール抑制効果を十分に得ることができない。
このようなことから(B)成分の分子量(Mw)は10000以下であることが好ましく、1000〜8000の範囲であることがより好ましい。
【0035】
[(A)成分と(B)成分の含有量比]
(A)成分と(B)成分とを併用することによる相乗効果を有効に得る上で、(A)成分と(B)成分とは、(A)成分:(B)成分=10:1〜1:30の質量比で用いることが好ましい。例えば、(B)成分としてポリアクリル酸やポリメタクリル酸を用いる場合には、(A)成分:(B)成分=2:1〜1:30の質量比で用いることが好ましく、特に1.5:1〜1:20、とりわけ1:1〜1:10の質量比となるように用いることが好ましい。また、(B)成分としてポリマレイン酸を用いる場合、ポリマレイン酸はゲル化し易いため、上記質量比の範囲において、例えば、(A)成分:(B)成分=10:1〜2:1の範囲で用いることが好ましい。従って、本発明のRO膜用スケール防止剤は、(A)成分と(B)成分とを上記の質量比で含むことが好ましい。
【0036】
なお、本発明のRO膜用スケール防止剤は、(A)成分と(B)成分とが別々に供給されるものであってもよく、これらが予め混合されて一剤化されたものであってもよい。
通常、(A)成分及び(B)成分は、これらを合計して10〜100,000mg/Lの濃度で含む水溶液としてRO膜処理の給水に添加される。
【0037】
[RO膜処理方法]
本発明のRO膜処理方法は、上記の本発明のRO膜用スケール防止剤をRO膜処理の給水(以下「RO給水」と称す。)に添加してRO膜処理を行うものである。
【0038】
RO給水へのRO膜用スケール防止剤の添加量は、RO給水の水質やRO膜処理の回収率(濃縮倍率)に応じた炭酸カルシウムスケールの析出傾向によっても異なるが、一般的には、(A)成分がRO給水中に0.01〜50mg/L、特に1〜20mg/Lの濃度となるように、また、(B)成分が0.01〜50mg/L、特に1〜20mg/Lの濃度となるように、前述の好適質量比でRO給水に添加することが好ましい。
【0039】
(A)成分及び(B)成分の添加量が少な過ぎるとスケール抑制効果を十分に得ることができない場合があり、多過ぎるとRO膜に付着してフラックスを低下させるおそれがある。
【0040】
本発明によれば、上記特定の(A)成分と(B)成分とを併用することによる優れた相乗効果で、RO膜処理における炭酸カルシウムスケールの析出を十分に抑制することができるため、カルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lというような、炭酸カルシウムスケールの析出傾向が大きいRO濃縮水が得られる、高Mアルカリ度のRO給水を、高回収率で得るRO膜処理においても、その効果を有効に発揮することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下において、各モノマーの略字は次の通りである。
MA:マレイン酸
IB:イソブチレン
VA:酢酸ビニル
EA:エチルアクリレート
AA:アクリル酸
SA:スルホン酸
【0042】
[使用ポリマー]
以下の実施例および比較例で用いたポリマーの詳細は以下の通りである。
<(A)成分>
ポリマーA−1:マレイン酸/酢酸ビニル/エチルアクリレートターポリマー
MA/VA/EA=75/12.5/12.5(mol%)
分子量(Mw)=1900
【0043】
<(B)成分>
ポリマーB−1:ポリアクリル酸
AA=100(mol%)
分子量(Mw)=2000
ポリマーB−2:ポリアクリル酸
AA=100(mol%)
分子量(Mw)=5500
ポリマーB−3:ポリアクリル酸
AA=100(mol%)
分子量(Mw)=8000
【0044】
<その他>
ポリマーC−1:アクリル酸/スルホン酸コポリマー
AA/SA=80/20(mol%)
分子量(Mw)=2000
ポリマーC−2:アクリル酸/スルホン酸コポリマー
AA/SA=80/20(mol%)
分子量(Mw)=5500
ポリマーC−3:アクリル酸/スルホン酸コポリマー
AA/SA=80/20(mol%)
分子量(Mw)=2200
【0045】
[RO膜通水試験]
以下の実施例および比較例では、以下の試験条件でRO膜通水試験を行い、回収率75%となるように圧力を調整し、膜面透過流束(フラックス)を流量×温度補正×圧力補正のように、温度、圧力を補正し算出した。
【0046】
<試験条件>
RO給水:塩化カルシウム(100mg/L)、炭酸水素ナトリウム(2100mg/L)、表1A,1Bに示すスケール防止剤(有効成分であるポリマーとして)20mg/Lを含有する水溶液を調製し、更に、少量の水酸化ナトリウム水溶液又は硫酸水溶液でpHを8.0〜8.1に調整してRO給水とした。
RO膜の種類:ポリアミドRO膜(日東電工社製 ES20)
温度:30℃±1℃
RO回収率:75%
4倍濃縮であるため、RO濃縮水中の塩化カルシウム濃度は400mg/L(カルシウム硬度360mg/L−CaCO)、炭酸水素ナトリウム濃度8400mg/L(Mアルカリ度4800mg/L−CaCO)となる。
【0047】
【表1】
【0048】
結果を図1に示す。
図1より、(A)成分と(B)成分とを併用した実施例1〜4では、フラックスの低下が少なく長期に亘り安定に処理することができており、炭酸カルシウムスケールの析出が抑制されていることが分かる。
これに対して、(A)成分又は(B)成分のみを用いた比較例1〜4や、AA/SAコポリマーを用いた比較例5,6では、炭酸カルシウムスケールを十分に抑制できていないため、経時によるフラックスの低下が大きい。(A)成分であるMA/VA/EAターポリマーとAA/SAコポリマーを併用した比較例7でも通水30時間を経過するとフラックスが急激に低下している。
【要約】
【課題】排水中のリン濃度を増加させることなく、RO膜処理において生成する炭酸カルシウムの析出を効果的に抑制することができ、カルシウム硬度が100〜600mg/L−CaCOで、Mアルカリ度が1000〜16000mg−CaCO/Lというような高いMアルカリ度の濃縮水が得られる給水をRO膜処理する場合においても適用可能なRO膜用スケール防止剤を提供する。
【解決手段】
RO膜処理における炭酸カルシウムスケールの防止剤であって、下記(A)成分と(B)成分を含む、逆浸透膜用スケール防止剤。このRO膜用スケール防止剤をRO給水に添加するRO膜処理方法。
(A)成分:マレイン酸とアクリル酸アルキルエステルと酢酸ビニルのターポリマー
(B)成分:カルボン酸のホモポリマー
【選択図】図1
図1