(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施した1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す光コネクタ10は、本発明に係る光ファイバ接続器を具現化した1実施形態である。
図1に示す光コネクタ10は、フェルール31の後側(前端の接合端面31aとは反対の側。
図1において右側)にクランプ部33が組み立てられた構成のクランプ部付きフェルール30を、スリーブ状のハウジング20に収納した構成になっている。
【0014】
図1、
図2に示すように、クランプ部付きフェルール30は、前記フェルール31と、該フェルール31に形成されたファイバ孔31bに内挿固定された光ファイバである内蔵光ファイバ32(第1光ファイバ)と、クランプ部33とを具備して構成されている。
図1、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32はフェルール31の後側に延出された部分を有している。また、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32のフェルール31の後側に延出された部分の先端面(後端面32a)には、光透過性の高分子材料からなる固形屈折率整合材321が付設されている。
光ファイバ(内蔵光ファイバ32)の後端面32aに固形屈折率整合材321を付設したものを、以下、整合材付き光ファイバ320とも言う。
【0015】
図1、
図2に示すように、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、細長形状のベース側素子35(ベース部材)と該ベース側素子35に沿って延在する押さえ素子36(押さえ部材)とからなる半割り構造の素子部331を、金属板を加工してなる断面C形あるいはコ字形(図示例では断面C形)で延在するばね37の内側に収納保持した構成になっている。ばね37は、押さえ素子36をベース側素子35に向かって弾性付勢する付勢部材として機能する。
【0016】
図1に示す整合材付き光ファイバ320のフェルール31から後側に延出された部分を、以下、後側延出部322とも言う。整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は固形屈折率整合材321を含む。
図1に示すように、整合材付き光ファイバ320の後側延出部322(固形屈折率整合材321を含む)の後端部は、クランプ部33のベース側素子35と押さえ素子36との間に配置されている。
図1では後側延出部322の固形屈折率整合材321を含むほぼ全長がベース側素子35と押さえ素子36との間に配置されている。
整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、フェルール21からクランプ部付きフェルール30前後方向(フェルール31のファイバ孔31bの中心軸線方向)に沿って延在されている。
なお、本明細書において、整合材付き光ファイバ320の後側延出部322後端部は、整合材付き光ファイバ320の後端部として扱う。
【0017】
図1に示すように、内蔵光ファイバ32には、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36(ベース側素子35と押さえ素子36)間に挿入された別の光ファイバ1(第2光ファイバ)を固形屈折率整合材321を介して光接続させることができる。
図4(a)に示すように、光コネクタ10のクランプ部33の素子35、36間は、該素子35、36間に介挿されたプレート状の介挿部材40によって僅かに押し開かれている。
図1、
図2に示すように、介挿部材40によって押し開かれた素子35、36間には、そのフェルール側(前側)とは反対の後側から、内蔵光ファイバ32に光接続する光ファイバ1を挿脱可能である。このときのクランプ部33の状態を、以下、開放状態と言う。また、クランプ部33の一対の素子35、36に介挿部材40を割り込ませてある光コネクタ10を、以下、介挿部材付き光コネクタとも言う。
介挿部材40は、クランプ部33の素子35、36間を押し開いて、素子35、36間への光ファイバ1の挿脱を可能する開放手段として機能する。
【0018】
内蔵光ファイバ32に光接続する光ファイバ1を、以下、挿入光ファイバとも言う。
挿入光ファイバ1は、開放状態のクランプ部33の素子間35、36にクランプ部33後側から挿入して、その先端を整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321に突き当てることで、整合材付き光ファイバ320と光接続できる。整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321に先端を突き当てた挿入光ファイバ1は、固形屈折率整合材321を介して内蔵光ファイバ32と光接続される。
【0019】
図2、
図4(a)に示すように、ここで説明する光コネクタ10は、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませた介挿部材40を含む。つまり、光コネクタ10は、介挿部材付き光コネクタである。
クランプ部33の素子35、36間に割り込ませた介挿部材40は、ばね37の弾性によって素子35、36間に挟み込まれている。但し、介挿部材40は、手動で素子35、36間から抜き去り可能である。
【0020】
挿入光ファイバ1先端を固形屈折率整合材321に突き当てたとき、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間には、挿入光ファイバ1先端部と整合材付き光ファイバ320後端部とが配置されている。
クランプ部付きフェルール30の開放状態のクランプ部33は、挿入光ファイバ1先端を固形屈折率整合材321に突き当てた状態を保ったまま介挿部材40を抜き去ることで、挿入光ファイバ1先端部と整合材付き光ファイバ320後端部とをばね37の弾性によって素子35、36間に把持固定する。その結果、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、光ファイバ1、32同士の光接続状態を維持する。
【0021】
クランプ部付きフェルール30は、光ファイバ1、32同士を光接続するための光ファイバ接続器として機能する。
また、このクランプ部付きフェルール30をハウジング20に収納した光コネクタ10も光ファイバ接続器として扱うことができる。
【0022】
なお、
図4(a)、(b)に示す介挿部材40は、クランプ部33の素子35、36間に挿脱可能である。
クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の押さえ素子36は、ベース側素子35と押さえ素子36との間への介挿部材40の挿脱によって開閉できる。
【0023】
図1、
図2に例示したクランプ部付きフェルール30のフェルール31(フェルール本体)は、例えばジルコニアセラミックス、ガラス等からなるキャピラリ状の単心用フェルールである。このフェルール31のファイバ孔31bは、該フェルール31の内側を貫通する貫通孔である。
このフェルール31としては、例えばSC形光コネクタ(SC形光コネクタ(JIS
C 5973に制定されるF04形光コネクタ。SC:Single fiber Coupling opticalfiber connector)、MU形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるF14形光コネクタ。MU:Miniature-Unit coupling optical fiber connector))等の単心用光コネクタに用いられるフェルールを使用できる。
【0024】
図1、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32(ここでは裸光ファイバ)は、フェルール31前端の突き合わせ接合用の接合端面31aに位置合わせされた前端面を有する。内蔵光ファイバ32前端面は、フェルール31の接合端面31aとともに研磨済みである。
内蔵光ファイバ32は、ファイバ孔31bに内挿された部分を接着剤による接着等によってフェルール31に固定して設けられている。
フェルール31は、クランプ部付きフェルール30において、内蔵光ファイバ32(第1光ファイバ)を固定するファイバ固定部として機能する。
【0025】
図1、
図2に示すように、クランプ部付きフェルール30の押さえ素子36は、第1押さえ素子361と、この第1押さえ素子361を介して前記フェルール31及びフランジ部34とは反対の側(後側)に配置された第2押さえ素子362とによって構成されている。以下、第1押さえ素子361を前側素子、第2押さえ素子362を後側素子とも言う。
これら押さえ素子(前側素子361及び後側素子362)は、該押さえ素子とベース側素子35との間に挿入された光ファイバ1、32をばね37の弾性によってベース側素子35に押さえ込む押さえ部材として機能する。
【0026】
整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、クランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に挿入されている。整合材付き光ファイバ320の後端は、クランプ部付きフェルール30前後方向(
図1、
図3において左右方向)における前側素子361中央部に対応する位置に配置されている。
内蔵光ファイバ32は、クランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に配置された後端から、フェルール31の接合端面31aに位置合せされた前端面まで延在する短尺の光ファイバである。
【0027】
図1〜
図3に例示したクランプ部33のベース側素子35は、フェルール31の後端部に外挿固定されたリング状のフランジ部34から後側(
図1、
図3において右側)に延出された延出部である。
整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、ベース側素子35の押さえ素子36に対向する対向面35fにクランプ部付きフェルール30前後方向に延在形成された調心溝38aに収納されている。整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、内蔵光ファイバ32の剛性によって調心溝38aへの収納状態を維持できる。
【0028】
図5(a)〜(c)に示すように、調心溝38aには、内蔵光ファイバ32のその光軸に垂直の断面(以下、横断面とも言う)方向の一部が収納される。内蔵光ファイバ32のその横断面方向において調心溝38aに収納されない部分は、ベース側素子35から前側素子361側に突出する。
【0029】
挿入光ファイバ1としては、光ファイバ心線、光ファイバ素線といった、裸光ファイバに樹脂被覆材をコーティング(被着)した構成の被覆光ファイバが採用される。
挿入光ファイバ1(被覆光ファイバ)は、その先端部の被覆を除去して裸光ファイバ1a(以下、挿入側裸光ファイバとも言う)を露出させた状態で、ハウジング20の後側(フェルール31の接合端面31aが位置する前側とは反対側の端部)からクランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間に挿入される。
【0030】
クランプ部33の素子35、36間に挿入した挿入光ファイバ1は、例えば
図1に示すように、その先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)を固形屈折率整合材321に突き当てることで、固形屈折率整合材321を介して内蔵光ファイバ32と光接続される。
挿入光ファイバ1の内蔵光ファイバ32に対する光接続は、具体的には、内蔵光ファイバ32と挿入側裸光ファイバ1aとの光接続である。
【0031】
クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、整合材付き光ファイバ320後端部と、内蔵光ファイバ32に光接続した挿入光ファイバ1の先端部とを、ばね37の弾性によって素子35、36間に把持固定することで、内蔵光ファイバ32と挿入光ファイバ1との光接続状態を安定維持できる。整合材付き光ファイバ320後端部と挿入側裸光ファイバ1aとは、ベース側素子35と前側素子361との間に把持固定される。
【0032】
挿入側裸光ファイバ1aは、クランプ部33後側からの素子35、36間への挿入光ファイバ1の送り込みによって、ベース側素子35の調心溝38a(
図3、
図4(a),(b)参照)に挿入する。ベース側素子35の調心溝38aは、整合材付き光ファイバ320後端部と内蔵光ファイバ32に光接続した挿入光ファイバ1の先端部とをばね37の弾性によって素子35、36間に把持固定したときに、挿入側裸光ファイバ1a先端の光軸1p(
図6参照)を内蔵光ファイバ32後端の光軸32bに高精度に位置合わせするべく、整合材付き光ファイバ320後端部と挿入側裸光ファイバ1aとを精密に位置決め調心する。
【0033】
調心溝38aに挿入された挿入側裸光ファイバ1aは、調心溝38aによって、整合材付き光ファイバ320の後側延出部322後端に対して突き合わせ接続可能に位置決めされる。
調心溝38aは、整合材付き光ファイバ320の後側延出部322後端と挿入側裸光ファイバ1a先端とを互いに突き合わせ接続可能に位置決め調心する役割も果たす。
【0034】
図3、
図6等に例示した固形屈折率整合材321は、内蔵光ファイバ後端面32a全体を覆う部分球状に形成されている。
また、固形屈折率整合材321は、内蔵光ファイバ後端面32aに沿って延在して内蔵光ファイバ後端面32aを覆う層状に形成されている。また、この固形屈折率整合材321の外面(内蔵光ファイバ後端面32aに接する面を除く面)は部分球面状に形成されている。
【0035】
内蔵光ファイバ32後端(
図6、
図7参照)における内蔵光ファイバ光軸32b(以下、内蔵光ファイバ後端光軸とも言う)に垂直の仮想面を、以下、内蔵光ファイバ32後端仮想垂直面とも言う。内蔵光ファイバ後端光軸32bに垂直の内蔵光ファイバ後端面32aは、内蔵光ファイバ32後端仮想垂直面(第1光ファイバ先端仮想垂直面)に一致する。
【0036】
図6、
図7において、固形屈折率整合材321の、内蔵光ファイバ32後端仮想垂直面からの距離が最大の頂点は、内蔵光ファイバ後端面32a(第1光ファイバ先端面)中央部を内蔵光ファイバ後端光軸32b方向に延長した仮想延長上に位置する。
内蔵光ファイバ32後端仮想垂直面から固形屈折率整合材321頂点までの距離は、部分球面状の固形屈折率整合材321外面の湾曲半径よりも小さい。
【0037】
固形屈折率整合材321頂点の、内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長に対する許容ずれ量(内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長に対するその垂直方向の離隔距離)は、径125μmの第1光ファイバ(内蔵光ファイバ32)に対して例えば10〜20μmの範囲である。
【0038】
図6、
図7に示す内蔵光ファイバ32及び挿入側裸光ファイバ1aはシングルモード光ファイバである。内蔵光ファイバ32のモードフィールド径は1〜15μmである。
図6、
図7において、固形屈折率整合材321頂点は、内蔵光ファイバ後端面32aにおける内蔵光ファイバ32のコア部32c(あるいはモードフィールド)を内蔵光ファイバ後端光軸32b方向に延長した仮想延長内に位置する。
図3、
図6、
図7に例示した固形屈折率整合材321の頂点は、具体的には、内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長上に高精度に位置合わせされている。
なお、
図6、
図7において、符号32dは内蔵光ファイバ32のクラッド部、符号1fは挿入側裸光ファイバ1aのクラッド部を示す。
【0039】
内蔵光ファイバ32としてはシングルモード光ファイバ以外の光ファイバも採用可能である。例えば、内蔵光ファイバ32としてマルチモード光ファイバを採用したときも、固形屈折率整合材321の頂点は、内蔵光ファイバ後端面32a(第1光ファイバ先端面)中央部を内蔵光ファイバ後端光軸方向に延長した仮想延長上に位置する。
【0040】
固形屈折率整合材321は屈折率整合性を有することが必要である。この場合の屈折率整合性とは、接続用光透過性材料(固形屈折率整合材321)の屈折率と光ファイバ(挿入光ファイバ1の裸光ファイバ及び内蔵光ファイバ)の屈折率との近接の程度をいう。
【0041】
固形屈折率整合材321の屈折率は、光ファイバの屈折率に近いものであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面から、光ファイバとの屈折率差は±0.1以内であることが好ましく、さらに好ましくは±0.05以内である。なお、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aと内蔵光ファイバ32の屈折率とが互いに異なる場合には、これら光ファイバの屈折率の平均値と、固形屈折率整合材321の屈折率との差が上記範囲内にあることが望ましい。
【0042】
内蔵光ファイバ後端面32aに固形屈折率整合材321を設ける手法としては特には限定は無い。
固形屈折率整合材321としては、例えば液状高分子材料を内蔵光ファイバ後端面32aに塗布(印刷、吹き付け、静電塗布等を含む)した塗膜を固化させた樹脂膜、CVD法(化学気相蒸着。CVD: Chemical Vapor Deposition)又はPVD法(物理気相蒸着。PVD:Physical Vapor Deposition)によって形成した蒸着膜(樹脂膜)等であっても良い。
また、層状の固形屈折率整合材321は、フィルム母材(高分子フィルム)から内蔵光ファイバ後端面32aに適合するサイズに切り出した小片を内蔵光ファイバ後端面32aに接着したものであっても良い。内蔵光ファイバ後端面32aへの部分球状の固形屈折率整合材321の付設のために、例えば部分球状の部分が多数形成されたフィルム母材から切り出した部分球状の小片の使用も可能である。
また、静電塗布等による内蔵光ファイバ後端面32aへの液状高分子材料の塗布は、フィルム母材から切り出した小片の内蔵光ファイバ後端面32aに対する精密な位置決めを解消でき、しかも、部分球状の固形屈折率整合材321の形成も可能である。
【0043】
固形屈折率整合材321の材質としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系などの高分子材料を挙げることができる。
前記高分子フィルムとしては、このような高分子材料からなる粘着材をフィルム状にしたものを使用することができ、中でも耐環境性、接着性の面からは一般的にシリコーン系、アクリル系のものを好適に用いることができる。
【0044】
挿入側裸光ファイバ1a、内蔵光ファイバ32は石英系光ファイバである。
固形屈折率整合材321は石英系光ファイバに比べて格段に硬度が低い軟質層である。
固形屈折率整合材321は、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1a先端を突き当てたときに、突き当てによる衝撃力を緩和して、内蔵光ファイバ32後端及び挿入側裸光ファイバ1a先端の欠け等の損傷を防ぐクッション層として機能する。
【0045】
図9に示すように、固形屈折率整合材321のショア硬度E(JIS K 6253に準拠)は、30〜85(30以上、85以下)が好ましい。
固形屈折率整合材321のショア硬度Eは、低すぎれば(例えば
図9の領域R3内では)、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによる衝撃力緩和効果を充分に得られなくなる。ショア硬度Eが30以上であれば、これを防ぐことができる。
ショア硬度Eが30以上であれば、例えば、調心溝19a内での光ファイバ2,22端部の位置調整や、温度や湿度の変動によって、固形屈折率整合材321に大きな力が加えられた場合でも、内蔵光ファイバ後端面32aへの入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによる衝撃力緩和効果を充分に得られ、内蔵光ファイバ32後端及び挿入側裸光ファイバ1a先端の欠け等の損傷を防ぐことができる。
また、固形屈折率整合材321のショア硬度Eを30以上とすれば、固形屈折率整合材321に損失増加の原因となる皺形成などの変形が起こることを防止できる利点もある。
【0046】
固形屈折率整合材321のショア硬度Eは、高すぎれば(例えば領域R4では)、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに凹凸がある場合に、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対する追従変形が不充分となり、固形屈折率整合材321に挿入側裸光ファイバ先端面1cにおけるモードフィールド部分から離隔した箇所が発生しやすくなる。
固形屈折率整合材321は、そのショア硬度Eを85以下とすれば、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対して充分な追従変形が可能となり、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド部分(コア部1eを含む)に対する密着を容易に実現できる。また、ショア硬度E85以下の固形屈折率整合材321は、挿入側裸光ファイバ先端面1cに追従変形させて密着させることで、温度や湿度の変動があっても、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド部分から離隔しにくく、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド部分に対する密着を安定に保つことができる。
【0047】
固形屈折率整合材321(JIS K 6253準拠のショア硬度Eが30〜85)の厚みD(
図6参照)は、10μmより大きいことが望ましい。固形屈折率整合材321の厚みDは20〜60μm(20μm以上、60μm以下)が好ましい。
固形屈折率整合材321の厚みDは、より具体的には、固形屈折率整合材321の、内蔵光ファイバ32のその後端面32aにおける光軸32bの延長上に位置する部分のクランプ部付きフェルール30前後方向の寸法である。
なお、クランプ部付きフェルール30前後方向は、内蔵光ファイバ32のその後端面32aにおける光軸方向に一致する。また、
図1等に例示したクランプ部付きフェルール30において、内蔵光ファイバ32のその後端面32aにおける光軸方向は、内蔵光ファイバ32のその前端面における光軸方向に一致する。固形屈折率整合材321の厚みDは、内蔵光ファイバ後端面32aの光軸延長上に位置する固形屈折率整合材321の被り厚を指す。
【0048】
図9に示すように、固形屈折率整合材321は、薄すぎれば(例えば領域R5では)、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによって内蔵光ファイバ後端面32aに作用する衝撃力の緩和効果を充分に発揮できないが、厚みDを20μm以上とすれば、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当て時の衝撃力を緩和するクッション層としての機能を充分に発揮できる。
また、厚みを20μm以上とすることによって、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対して充分な追従変形が可能となり、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対する密着に有利である。
【0049】
固形屈折率整合材321は、厚すぎれば(例えば
図9の領域R6では)、挿入側裸光ファイバ1a先端を押し当てた固形屈折率整合材321の変形が大きく、挿入側裸光ファイバ1a先端の内蔵光ファイバ後端面32aに対するその光軸に垂直方向の位置や向きが安定しにくく、内蔵光ファイバ32後端に対する調心精度が低下する傾向がある。また、固形屈折率整合材321が厚すぎれば、挿入側裸光ファイバ1a先端を固形屈折率整合材321に押し当てた後も、光コネクタ10に作用した振動等の外力や温度変化等によって、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度が変動しやすくなる。
固形屈折率整合材321の厚みDが20〜60μmであれば、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向き、調心精度の安定性を保つ点で有利である。
【0050】
内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向きの安定性は、固形屈折率整合材321の硬度の影響も受ける。
図9において、ショア硬度E85かつ厚み40μmの点P1と、ショア硬度E30かつ厚み60μmの点P2とを結ぶ直線を直線LPとすると、直線LPより厚みが大きい側の領域(領域R7等)に比べ、直線LPを含めこれより厚みが小さい側の領域(領域R1等)では、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向きの不安定化が起こりにくい。
【0051】
固形屈折率整合材321は、ショア硬度Eが30〜85、厚みDが20〜60μm以下であり、しかも
図9において、領域R7を除く領域(領域R1)のショア硬度E及び厚みDであるものを好適に用いることができる。すなわち、固形屈折率整合材321は、
図9において、(ショア硬度E;30、厚み;20μm)、(ショア硬度E;85、厚み;20μm)、(ショア硬度E;85、厚み;40μm)、(ショア硬度E:30、厚み:60μm)で囲まれる範囲内にあるものを好適に用いることができる。
【0052】
挿入光ファイバ1(具体的には、挿入側裸光ファイバ1a)としては、空孔付き光ファイバ1A(
図10参照)も採用可能である。
図10は空孔付き光ファイバ1Aの長手方向(光軸方向)に垂直の断面構造の一例を示す。
図10に示すように、空孔付き光ファイバ1Aは、導波方向に対して連続した空孔1gを複数有する光ファイバである。空孔付き光ファイバ(Holey Fiber、HF)としては、空孔アシストファイバ(Hole-Assisted Fiber、HAF)などがある。
図10に例示した空孔付き光ファイバ1Aは、コア部1hと、その周囲を囲むクラッド部1iとを備え、クラッド部1iに複数の空孔1gが形成されている。複数の空孔1gはコア部1iの周囲に均等配置されている。
【0053】
内蔵光ファイバ後端面32aは、
図6、
図7に示すような内蔵光ファイバ32後端の光軸32bに垂直の平坦面以外に、PC研磨(PC:Physical Contact)したものも採用可能である。PC研磨された内蔵光ファイバ後端面32aの場合も、
図9に示す領域R1の固形屈折率整合材321の使用が好適である。
【0054】
図1〜
図4(a)、(b)に例示したクランプ部付きフェルール30のクランプ部33のベース側素子35は、前記フランジ部34と一体に形成されたプラスチック製あるいは金属製の部材である。但し、クランプ部付きフェルール30としては、例えば、金属製のフランジ部34にプラスチック製のベース側素子35がインサートモールド成形、接着固定、嵌合固定等によって一体化された構成になっていても良い。
【0055】
図1、
図2に示すように、ばね37は、その延在方向を長手方向とする細長形状に形成されている。
図1、
図2に示すばね37の長手方向(延在方向)の中央部にはスリット37aが形成されている。
図1、
図2に示すばね37は、スリット37aから前側(フェルール31側)の前側ばね部37bと、スリット37aから後側の後側ばね部37cとを有する構成となっている。
【0056】
図2に示すように、ばね37にはその長手方向全長にわたって延在する側部開口部37dが形成されている。前記スリット37aはばね37の前記側部開口部37dに臨む両端から、ばね37においてその内側の素子部331を介して前記側部開口部37dとは反対に位置する部分(背側連続部37e)に向かってばね37の周方向に沿って延在するようにして2本形成されている。ばね37の前側ばね部37bと後側ばね部37cとは、2本のスリット37aの間に確保された背側連続部37eのみを介して繋がっており、それぞれ独立したばねとして機能する。
【0057】
図1、
図2に示すように、押さえ素子36を構成する2つの素子(前側素子361と後側素子362)のうち、後側素子362は、その全体がばね37の後側ばね部37cの内側に収納されて後側ばね部37cの弾性によってベース側素子35の後端部と一括保持されている。一方、前側素子361は、ばね37の前側ばね部37bの内側と後側ばね部37cの内側とに収納されて、ばね37の弾性によってベース側素子35と一括保持されている。
なお、クランプ部33としては、前側素子と後側素子との境界部がばね37のスリット37aに位置し、前側素子が前側ばね部37b内側のみに収納された構成も採用可能である。
【0058】
図1、
図2に示すように、挿入光ファイバ1の被覆材によって被覆された部分を、以下、被覆部1bと言う。
図1、
図3に示すように、ベース側素子35の対向面35fには、既述の調心溝38aと、挿入光ファイバ1の被覆部1bを収納して位置決めするための被覆部収納溝38bとからなるファイバ位置決め溝38が形成されている。調心溝38aは、ベース側素子35の対向面35fの前側素子361に対向する部分に形成されている。被覆部収納溝38bは調心溝38a後端から後側へ延在形成されている。
ファイバ位置決め溝38には、挿入光ファイバ1をハウジング20の後端開口部から送り込んで挿入できる。また、この送り込みによって、挿入光ファイバ1に予め口出ししておいた挿入側裸光ファイバ1aを調心溝38aへ挿入することができる。
【0059】
調心溝38aは、前記フェルール31を貫通するファイバ孔31bに連続するようにしてベース側素子35の前端(
図3においてベース側素子35の左端)からその延在方向(長手方向)に沿って延在形成されている。整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は調心溝38aに収納されている。整合材付き光ファイバ320の後端(固形屈折率整合材321)は、調心溝38aの長手方向中央部(図示例では、長手方向中央から前側(フェルール31側)に若干ずれた位置)に配置されている。
被覆部収納溝38bは、前記調心溝38aの後端(フェルール31側の前端とは反対の側の端部)からベース側素子35の延在方向に沿って該ベース側素子35の後端まで延在形成されている。
【0060】
図4(a)、(b)に示すように、図示例の調心溝38aはV溝であるが、これに限定されず例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝等も採用可能である。
【0061】
図3に示すように、被覆部収納溝38bは、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aよりも太い被覆部1bを収納して位置決めするために調心溝38aに比べて溝幅及び深さを大きくしてある。
図1、
図3に示すように、図示例の光コネクタ10のクランプ部33は、後側素子362の対向面362fにも被覆部収納溝38cが形成された構成になっている。後側素子362の対向面362fに形成された被覆部収納溝38cは、ベース側素子35の被覆部収納溝38bと対応する位置に形成されている。
【0062】
被覆部収納溝38b、38cの前端部は前側へ行くに従って溝幅及び深さが小さくなる先細りのテーパ状に形成されている。
被覆部収納溝38b、38c前端部は、クランプ部33後側からファイバ位置決め溝38に挿入された挿入光ファイバ1先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)を調心溝38aに円滑に導入する機能を果たす。
【0063】
図3に示すように、被覆部収納溝38b、38cの後端部38b2、38c2は、被覆部収納溝38b、38cの前端部及び後端部の間の主溝部38b1、38c1の後端から後側へ行くに従って溝幅及び深さが大きくなるテーパ状に形成されている。
被覆部収納溝38b、38c後端部38b2、38c2は、素子部331後端に開口するテーパ状開口部とされている。
【0064】
被覆部収納溝38b、38cのうち、挿入光ファイバ被覆部1bを収納して位置決めするのは主溝部である。
被覆部収納溝38b、38cの前端部は、主溝部前端から前側へ行くに従って溝幅及び深さが小さくなる先細りのテーパ状に形成されている。
【0065】
なお、クランプ部としては、ベース側素子35の対向面、後側素子362の対向面の一方又は両方に被覆部収納溝が形成されている構成を採用できる。クランプ部の素子35、352の被覆部収納溝38b、38cは、いずれもクランプ部33の後端に開口するように形成される。また、被覆部収納溝38b、38cとしては、ここではV溝であるが、これに限定されず、例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝、角溝等も採用可能である。
【0066】
図4(a)に示すように、光コネクタ10のクランプ部33の一対の素子35、36(ベース側素子35と押さえ素子36)間は、該素子35、36間に介挿されたプレート状の介挿部材40によって僅かに押し開かれており、挿入光ファイバ1の口出し済みの裸光ファイバ1a及び被覆部1bをクランプ部33後側からファイバ位置決め溝38に挿入(押し込み)可能になっている。このときのクランプ部33の状態を、以下、開放状態と言う。また、クランプ部33の一対の素子35、36に介挿部材40を割り込ませてある光コネクタ10を、以下、介挿部材付き光コネクタとも言う。
【0067】
図2、
図4(a)に示すように、光コネクタ10のクランプ部33の一対の素子35、36(ベース側素子35と押さえ素子36)間に割り込ませた介挿部材40は、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持する機能を果たす。クランプ部33の素子35、36間に割り込ませた介挿部材40は、クランプ部33のばね37の弾性によって、クランプ部33の素子35、36間に把持されている。
【0068】
図4(a)、(b)に示すように、以下、クランプ部33について、その前後方向に垂直の横断面において、ばね37の側部開口部37d側を開口側(
図4(a)、(b)の右側)、開口側とは反対の側を奥側とも言う。また、開口側から見て奥側に対する進退方向、すなわち
図4(a)、(b)の左右方向を奥行き方向とも言う。
クランプ部33の素子35、36は、該素子35、36間に配置された光ファイバをクランプ部33横断面において奥行き方向に直交する上下方向両側から把持するべく、クランプ部33上下方向に並べて配置されている。
【0069】
図4(a)に示すように、この介挿部材40は、クランプ部33開口側から素子35、36間に割り込ませるようにして挿入されている。また、この介挿部材40は、光コネクタ10のスリーブ状のハウジング20(
図1参照)の肉厚を貫通する介挿部材挿通孔(図示略)に挿入され、その先端部40a(
図4(a)参照)をクランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある。
図4(a)、(b)に示すように、介挿部材40は、クランプ部33の素子35、36間に、クランプ部33奥行き方向において素子35のファイバ位置決め溝38に到達しない差し込み深さで挿入され、ファイバ位置決め溝38への挿入光ファイバ1の挿入作業の支障にならない。
【0070】
図2に示すように、介挿部材40は、押さえ素子36の2つの素子(前側素子361と後側素子362)に対応して、前側素子361とベース側素子35との間、及び後側素子362とベース側素子35との間にそれぞれ介挿されている。つまり、前記介挿部材40は、押さえ素子36の2つの素子361、362に対応して、クランプ部付きフェルール30の前後方向(
図1左右方向)において互いに異なる位置にてクランプ部33の一対の素子35、36間に計2本が介挿されている。
図2において、前側素子361とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材40に符号41、後側素子362とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材40に符号42を付記する。
【0071】
図2、
図4(a)、(b)に示すように、クランプ部付きフェルールのクランプ部33の素子35、36には、介挿部材40の先端部40aが挿脱可能に挿入される介挿用凹所35a、36aが形成されている。介挿用凹所35a、36aは、前側素子361の対向面361f及びベース側素子35の対向面35fの互いに対応する位置と、後側素子362の対向面362f及びベース側素子35の対向面35fの互いに対応する位置とに、素子35、36の対向面から窪ませて形成されている。クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子部331には、素子35、36の対向面の互いに対応する位置に形成された介挿用凹所35a、36aの対が、クランプ部付きフェルール30前後方向の2箇所に形成されている。
【0072】
図2、
図4(a)、(b)に示すように、各介挿用凹所35a、36aは、ばね37の側部開口部37dに臨む素子35、36の側面(以下、開口側側面とも言う)からファイバ位置決め溝38に向かって延在形成されている。介挿用凹所35a、36aは、素子35、36の対向面35f、361f、362fのクランプ部33開口側端部に形成されている。また、介挿用凹所35a、36aは、素子35、36の開口側側面に開口させて形成されている。
2本の介挿部材41、42は、それぞれ、素子35、36の対向面の互いに対応する位置の介挿用凹所35a、36aの対に挿脱可能に挿入されている。
【0073】
図3、
図4(a)、(b)に示すクランプ部33のベース側素子35について、その対向面35fにおける調心溝38a延在方向に垂直の方向(
図3上下方向)を幅方向と言う。また、押さえ素子361、362について、その対向面361f、362fにおける調心溝38a延在方向に垂直の方向(
図3上下方向)を幅方向と言う。
クランプ部33の素子35、36は、その幅方向一端がクランプ部33開口側、幅方向他端がクランプ部33奥側の向きでばね37内側に収納されている。
ファイバ位置決め溝38は、ベース側素子35の幅方向中央部にクランプ部付きフェルール30前後方向に延在形成されている。
【0074】
ベース側素子35の介挿用凹所35aは、ファイバ位置決め溝38に達しないように、ベース側素子35幅方向におけるクランプ部33開口側から奥側への延在寸法が設定されている。押さえ素子361、362の介挿用凹所36aは、ベース側素子35の介挿用凹所35aのクランプ部奥側の端部に対向する位置からクランプ部開口側へ延在形成されている。
【0075】
介挿部材40は、先端部40aとは反対の基端側に、ハウジング20(
図1参照)の外側に突出された部分を有し、該部分を、光コネクタ10から介挿部材40を引き抜くための抜き去り操作用の抜き去り操作部として使用できる。
クランプ部33の素子35、36間は、素子35、36間への介挿部材40の挿脱(詳しくは介挿用凹所35a、36aの対への介挿部材40の挿脱)によって開閉できる。
【0076】
なお、介挿部材40としては、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持することができ、かつ一対の素子35、36間からの抜き去り操作が可能な構成であれば良く、プレート状のものに限定されず、例えば柔軟なシート状のものや、ロッド状のものであっても良い。
【0077】
光コネクタ10は現場組立形光コネクタである。
この光コネクタ10を挿入光ファイバ1の先端部に取り付け(組み立て)るには、
図2、
図4(a)に示すように、クランプ部33をその素子35、36間に割り込ませた介挿部材40によって開放状態(すなわち介挿部材付き光コネクタの状態)としておく。そして、裸光ファイバ1aを口出し済みの挿入光ファイバ1をハウジング20の後端開口部からクランプ部33の素子部331のファイバ位置決め溝38へ送り込むことで、挿入側裸光ファイバ1aを調心溝38aへ挿入し、挿入側裸光ファイバ1a先端を整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321に突き当てる。次いで、挿入側裸光ファイバ1a先端の固形屈折率整合材321に対する突き当て状態を維持したまま、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませてある介挿部材40を全て抜き去る(
図4(b)参照)。
【0078】
これにより、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とが、互いに光接続状態で、クランプ部33のばね35の弾性によってクランプ部33の素子35、36間に把持固定された光ファイバ接続構造が得られる。また、その結果、挿入光ファイバ1のクランプ部33からの引き抜きが規制されることで、挿入光ファイバ1の先端部に光コネクタ10を取り付け(組み立て)ることができる。
クランプ部33について、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とを一対の素子35、36間に把持固定した状態を、以下、ファイバ把持状態とも言う。
【0079】
挿入光ファイバ1は、現場にてその先端部の被覆除去(裸光ファイバ1aの口出し)及びカットを行ってからファイバ位置決め溝38に挿入する。
挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの口出し長L(
図1参照)は、整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321への突き当てに必要な長さだけ挿入光ファイバ1をファイバ位置決め溝38へ送り込んだときに、裸光ファイバ1aがファイバ位置決め溝38の調心溝38aに収納され、被覆部1bが素子部331の被覆部収納溝38b、38cに収納されるように確保する。したがって、整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321に突き当てた後、クランプ部33から介挿部材40を抜き去りクランプ部33をファイバ把持状態としたときには、挿入側裸光ファイバ1aは整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とともに前側素子361とベース側素子35との間に把持固定され、挿入光ファイバ被覆部1bは後側素子362とベース側素子35との間に把持固定される。
【0080】
押さえ素子36のベース側素子35の対向面351に対面する対向面(ここでは前側素子361の対向面361f。
図3参照)の調心溝38aに対面する部分は、高い平面度が確保された平坦面になっている。開放状態のクランプ部33から介挿部材40を抜き去ったときには、挿入側裸光ファイバ1aと整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とは、クランプ部33のばね35の弾性によって調心溝38aに押し付けられ、調心溝38aによって精密に位置決め(調心)される。その結果、挿入側裸光ファイバ1aと整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とは、互いに光接続された状態で前側素子361とベース側素子35との間に把持固定される。
【0081】
挿入光ファイバ1としては、裸光ファイバ1a外径が、内蔵光ファイバ32外径と同じであるものを採用する。
なお、整合材付き光ファイバ320の固形屈折率整合材321は、例えば、内蔵光ファイバ32のその後端面32aと内蔵光ファイバ32側面(周面)との間に面取り部が形成されている場合は、内蔵光ファイバ後端面32a以外に面取り部にも設けて良い。但し、固形屈折率整合材321は内蔵光ファイバ32側面には設けない。また、内蔵光ファイバ32側面よりも後側に設ける固形屈折率整合材321の設置範囲は、内蔵光ファイバ32側面の仮想延長の範囲内に限定する。
【0082】
挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cは、その光軸1p(
図6参照)に垂直の平坦面以外に、凹凸が存在する場合もある。
図1に示すように、挿入側裸光ファイバ1a先端を固形屈折率整合材321に突き当てて内蔵光ファイバ32に光接続する構成では、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに凹凸が存在していても、固形屈折率整合材321が挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに密接することで低損失での光接続を実現できる。
固形屈折率整合材321は、内蔵光ファイバ後端面32a及び挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド部分同士間を隙間無く埋め込む。
【0083】
図4(a)、(b)に示すように、クランプ部33の押さえ素子361、362は、該押さえ素子361、362とベース側素子35との間への介挿部材40の挿脱によって、ベース側素子35に対して、クランプ部33奥側の端部(以下、奥側端部とも言う)を中心とする回転によって開閉する。
押さえ素子361、362は、その奥側端部が、ベース側素子35奥側端部に直接当接したとき、ベース側素子35に対して、クランプ部付きフェルール30前後方向に延在する回転軸線を以て回転可能である。
【0084】
図4(a)、(b)に示す介挿部材40について、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませた状態において、クランプ部33奥行き方向及びクランプ部付きフェルール30前後方向に垂直の方向の寸法を、以下、厚み寸法とも言う。
プレート状の介挿部材40については、その厚み方向の寸法(
図4(a)においては上下方向の寸法)が厚み寸法である。
また、前側素子361とベース側素子35との間に割り込ませる介挿部材41について、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませる先端部40aの厚み寸法に符号tを付記する(
図4(b)参照)。
【0085】
図4(a)、(b)に示す介挿部材40は、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませる先端部40aの基端側に、先端部40aに比べて厚み寸法が大きい基部40bを有する。この介挿部材40は、先端部40aと基部40bとの間の境界部に位置する段差面40cが素子部331に当接する位置(挿入限界位置)まで素子35、36間に挿入できる。
【0086】
図4(a)の角度θは、前側素子361及びベース側素子35のクランプ部33奥側端部同士が当接し、前側素子対向面361fがベース側素子対向面35fに傾斜した状態にあるときの、前側素子361のベース側素子35に対する開き角を示す。この開き角θは、具体的には、前側素子対向面361fのベース側素子対向面35fに対する開き角を指す。
開放状態のクランプ部33の押さえ素子361,362のベース側素子35に対する開き角(具体的には押さえ素子対向面361f、362fのベース側素子対向面35fに対する開き角)は、介挿部材先端部40aの厚み寸法tの選択によって変更できる。また、この開き角は、介挿部材先端部40aのクランプ部33奥行き方向の挿し込み深さによって変わる。
【0087】
図4(b)に示すように、前側素子361は、ベース側素子35との間に介挿部材40が無く、ベース側素子35との間に内蔵光ファイバ32を把持したときに、内蔵光ファイバ32を中心とする回転によってベース側素子35に対して傾動可能である。
図4(b)は、前側素子対向面361fがベース側素子対向面35fに平行な状態を示している。但し、前側素子361は、その幅方向におけるクランプ部33奥側端部がベース側素子35の奥側端部に当接し、かつ対向面361fが内蔵光ファイバ32に当接し、対向面361fがベース側素子対向面35fに傾斜した状態も採り得る。このときの前側素子361の状態を傾斜把持状態とも言う。
【0088】
図4(a)、(b)に示すように、ベース側素子35の介挿用凹所35aの底面35bは、ベース側素子35の対向面35fに平行に形成されている。前側素子361の介挿用凹所36aの底面36bは、前側素子361の対向面361fに平行に形成されている。
傾斜把持状態の前側素子361の介挿用凹所36aの底面36bは、前側素子対向面361fのベース側素子対向面35fに対する開き角θと同じ角度で、ベース側素子35の介挿用凹所35aの底面35bに対して傾斜する。
また、前側素子361は、ベース側素子35との間に内蔵光ファイバ32とともに挿入側裸光ファイバ1aをも把持したときも、既述の傾斜把持状態を採り得る。
【0089】
素子35、361において、素子35、361間に挿脱される介挿部材41先端部40aと接触する領域を、以下、介挿部材接触領域とも言う。介挿部材接触領域は、素子35、361の互い対向する部分に存在する。
この実施形態に係るクランプ部33における素子35、361の介挿部材接触領域は、具体的には、傾斜把持状態の前側素子361の介挿用凹所底面36b及びベース側素子35の介挿用凹所底面35bに確保される。
【0090】
前側素子361とベース側素子35との間に介挿する介挿部材41の先端部40aの厚み寸法tは、傾斜把持状態の前側素子361の介挿部材接触領域と、ベース側素子35の介挿部材接触領域との間の離隔距離の最小値よりも大きく設定される。
この実施形態の介挿部材41先端部40aの厚み寸法tは、傾斜把持状態の前側素子361の介挿用凹所底面36bの介挿部材接触領域とベース側素子35の介挿用凹所底面35bの介挿部材接触領域との間の離隔距離の最小値よりも大きく設定される。
なお、クランプ部33としては、素子35、36の両方に介挿用凹所が形成された構成に限定されず、素子35、36の両方に介挿用凹所が存在しない構成、素子35、36の片方のみに介挿用凹所が存在する構成も採用可能である。
【0091】
図4(a)に示すように、前側素子361の幅方向におけるクランプ部33奥側端部がベース側素子35の奥側端部に当接し、前側素子対向面361fがベース側素子対向面35fに傾斜した状態にあるときの、前側素子361とベース側素子35との間の離隔距離Cは、前側素子対向面361fとベース側素子対向面35fとの間の中間の仮想中間平面(及びその仮想延長)に対する直交方向における前側素子361とベース側素子35との間の離隔距離を指す。
傾斜把持状態の前側素子361の介挿用凹所底面36bの介挿部材接触領域とベース側素子35の介挿用凹所底面35bの介挿部材接触領域との間の離隔距離も、前側素子対向面361fとベース側素子対向面35fとの間の離隔距離Cに該当する。
【0092】
図4(a)、
図6に示すように、開放状態のクランプ部33の素子35、36間に挿入された挿入側裸光ファイバ1aは、素子35、36間にて遊動可能に配置される。
クランプ部33について、前側素子361及びベース側素子35に対して介挿部材41を挿入限界位置に挿入した状態を、以下、最大開放状態とも言う。
最大開放状態のクランプ部33の前側素子361のベース側素子35に対する開き角θは、調心溝38a内面と前側素子361(具体的にはその対向面361f)との間からの挿入側裸光ファイバ1aの脱落を規制でき、かつ素子35、361間での挿入側裸光ファイバ1aの遊動を許可する大きさに設定される。但し、この実施形態の光コネクタ10の最大開放状態のクランプ部33は、前側素子361とベース側素子35との間における挿入側裸光ファイバ1aの先端の、内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長に対するその垂直方向の変位可能量を、内蔵光ファイバ32径(クラッド径)の50%以下に制限した構成である。
【0093】
図5(a)〜(c)に示すように、開放状態のクランプ部33の前側素子361及びベース側素子35間に挿入された挿入側裸光ファイバ1aの先端の、内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長に対する該仮想延長に垂直の方向の変位可能量を、以下、許容変位量ΔHとも言う。
図5(a)〜(c)において、許容変位量ΔHは、具体的には、挿入側裸光ファイバ1a先端の光軸1pの内蔵光ファイバ後端光軸32b仮想延長に対する該仮想延長に垂直方向の許容ずれ量(許容軸ずれ量)である。
図5(a)、(c)に示すように、この実施形態の光コネクタ10のクランプ部33は、最大開放状態にて、前側素子361とベース側素子35との間に挿入された挿入側裸光ファイバ1aに、内蔵光ファイバ32径(クラッド径)の50%以下の許容変位量ΔH(許容軸ずれ量)を以て遊動を許可する。
【0094】
つまり、介挿部材付き光コネクタの状態の光コネクタ10のクランプ部付きフェルール30は、前側素子361とベース側素子35との間における挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔH(許容軸ずれ量)を、内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成となっている。
図5(a)は、前側素子361とベース側素子35との間における挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔH(許容軸ずれ量)を、内蔵光ファイバ32径の50%に設定した状態を示す。
図5(c)は、挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔH(許容軸ずれ量)を、内蔵光ファイバ32径の50%よりも小さく設定した状態を示す。
【0095】
図5(b)は、対比例を説明する図である。
挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔH(許容軸ずれ量)が内蔵光ファイバ32半径に比べて大きすぎれば(
図5(b)参照)、
図7に示すように、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1c外周のエッジ部が、固形屈折率整合材321のその頂点から調心溝38a溝底とは反対の側にて、固形屈折率整合材321のその頂点から大きくずれた位置に当接する状態が生じ得る。
【0096】
図7に示す状態にてクランプ部33から介挿部材41を抜き去ったときに、挿入側裸光ファイバ1aは、クランプ部33のばね37の弾性によってベース側素子35に接近する前側素子361に調心溝38a溝底に向かって押圧される。本発明者は、
図7に示す状態から前側素子361に調心溝38a溝底に向かって押圧された挿入側裸光ファイバ1aの先端が固形屈折率整合材321を調心溝38a溝底に向かって押圧し、これが固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aからの剥れの原因となることを把握した。また、本発明者は、固形屈折率整合材321が
図7に示す状態から調心溝38a溝底に向かって押圧された挿入側裸光ファイバ1a先端から作用する押圧力によって内蔵光ファイバ後端面32aから剥がれなくても、固形屈折率整合材321に挿入側裸光ファイバ先端面1cとの間の気泡巻き込みの原因となる破損を生じ得ることを把握した。
【0097】
これに対して、
図5(a)、(c)に示すように、前側素子361とベース側素子35との間における挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを、内蔵光ファイバ32径(クラッド径)の50%以下に制限した構成では、開放状態のクランプ部33から介挿部材41を抜き去ったときに、クランプ部33のばね37の弾性によってベース側素子35に接近する前側素子361に押圧される挿入側裸光ファイバ1aの先端(先端面1c)を、固形屈折率整合材321に摺動させながら調心溝38a溝底に向かって円滑に変位させることができる。その結果、前側素子361とベース側素子35との間に挿入側裸光ファイバ1a先端を把持固定するにあたり、固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aからの剥れや、挿入側裸光ファイバ先端面1cとの間の気泡巻き込みの原因となる破損を防止できる。
このため、この実施形態では、内蔵光ファイバ32及び挿入側裸光ファイバ1aのモードフィールド部分同士の間をクッション層として機能する軟質の固形屈折率整合材321によって埋め込むことができ、光ファイバ32、1a同士の低損失での光接続を確実に実現できる。
【0098】
挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成では、開放状態のクランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に挿入した挿入側裸光ファイバ1a先端を、固形屈折率整合材321に対してその頂部(頂点あるいはその近傍)に当接させることができる。
固形屈折率整合材321の挿入側裸光ファイバ1a先端を突き当てた部分は、挿入側裸光ファイバ先端面1cに沿って変形する。挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成では、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによって変形した固形屈折率整合材321に、挿入側裸光ファイバ1a先端部側面に当接する部分は存在しないか、存在してもごく僅かである。また、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによって変形した固形屈折率整合材321には、ベース側素子35と前側素子361との間に介挿されている介挿部材41の抜き去りによって、調心溝38a内面から離隔した位置から調心溝38a溝底に向かって変位する挿入側裸光ファイバ1a先端部の側面に当接可能な部分は存在しないか、存在してもごく僅かである。挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成では、固形屈折率整合材321が、調心溝38a溝底に向かう挿入側裸光ファイバ1a先端の変位の支障になることはない。
【0099】
このため、挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成では、ベース側素子35と前側素子361との間に介挿されている介挿部材41を抜き去ったときの、調心溝38a内面から離隔した位置から調心溝38a溝底に向かう挿入側裸光ファイバ1aの変位は、挿入側裸光ファイバ1a先端と固形屈折率整合材321との摺動によって円滑に実現される。
その結果、ベース側素子35と前側素子361との間に介挿されている介挿部材41の抜き去りによって、固形屈折率整合材321に突き当て状態の挿入側裸光ファイバ1a先端に調心溝38a内面から離隔した位置から調心溝38a溝底に向かう変位が生じても、固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aからの剥れや破損の発生を回避できる。
【0100】
整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、内蔵光ファイバ32の剛性によって調心溝38a内面に当接させて、調心溝38aに沿って延在配置されている。
挿入側裸光ファイバ1a先端の許容変位量ΔHを内蔵光ファイバ32径の50%以下に制限した構成において、開放状態のクランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に挿入した挿入側裸光ファイバ1aの先端が固形屈折率整合材321に対してその頂点からずれた位置に当接されるのは、固形屈折率整合材321頂点位置が内蔵光ファイバ後端光軸32bの仮想延長に対して調心溝38a溝底側へ僅かにずれているときである。このとき、挿入側裸光ファイバ1a先端は固形屈折率整合材321に対してその頂点、あるいは頂点から押さえ素子36側に僅かにずれた位置に当接する。
但し、固形屈折率整合材321に対する挿入側裸光ファイバ1a先端当接位置に固形屈折率整合材321頂点からのずれが存在していても、そのずれ量(固形屈折率整合材321頂点からのずれ量)は僅かに留まる。ベース側素子35と前側素子361との間に介挿されている介挿部材41を抜き去ったときの、固形屈折率整合材321に突き当て状態の挿入側裸光ファイバ1a先端の調心溝38a内面から離隔した位置から調心溝38a溝底に向かう変位は、固形屈折率整合材321との摺動によって円滑に実現される。挿入側裸光ファイバ1a先端の変位に起因する、固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aからの剥れや破損は生じない。
【0101】
最大開放状態のクランプ部33の前側素子361のベース側素子35に対する開き角θは5度以下であることが好ましい。
【0102】
(別実施形態)
図8(a)、(b)は、本発明に係る他の実施形態の光ファイバ接続器70を示す。
図8(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70はいわゆるメカニカルスプライスである。
光ファイバ接続器70は、細長形状のベース側素子71(ベース部材)と、このベース側素子71長手方向に沿って1列に配列設置された3つの押さえ素子81、82、83(押さえ部材)とを、金属板を加工してなる断面C形あるいはコ字形(図示例では断面C形)で延在するばね76の内側に収納保持した構成になっている。ばね76は、押さえ素子81、82、83をベース側素子35に向かって弾性付勢する付勢部材として機能する。
【0103】
図8(b)に示す3つの押さえ素子81、82、83は、それぞれ、ベース側素子71との間に配置された光ファイバ(後述の整合材付き光ファイバ720、第2光ファイバ73)をばね76の弾性によってベース側素子71に押さえ込む押さえ部材として機能する。
以下、押さえ素子81、82、83を押さえ素子とも言う。
【0104】
図8(b)に示すように、光ファイバ接続器70は、例えば互いの先端同士を突き合わせた光ファイバ720、73を押さえ素子81、82、83とベース側素子71との間に把持固定することで、光ファイバ720、73同士の光接続状態を維持できる。光ファイバ720、73は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の中央に位置する第2押さえ素子82とベース側素子71との間にその先端を互いに光接続可能に配置して、互いに光接続される。
【0105】
図8(a)、(b)は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の片端に位置する第1押さえ素子81とベース側素子71との間に光ファイバ72(以下、第1光ファイバとも言う)の先端部を把持固定した状態を示す。第1押さえ素子81は、ばね76の弾性によってベース側素子71との間に第1光ファイバ72を把持固定する。
第1押さえ素子81とベース側素子71との間に配置された第1光ファイバ72の先端には固形屈折率整合材321が付設されている。
図8(b)に例示した固形屈折率整合材321は部分球状に形成されている。
以下、光ファイバ(第1光ファイバ72)先端に固形屈折率整合材321が付設されたものを、整合材付き光ファイバ720とも言う。
【0106】
図8(b)において、整合材付き光ファイバ720先端の固形屈折率整合材321は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の中央に位置する第2押さえ素子82とベース側素子71との間に配置されている。
【0107】
3つの押さえ素子81〜83は、ベース側素子71との間への介挿部材40の挿脱によって、ベース側素子71に対して個別に開閉可能である。
図8(a)において、第1押さえ素子81とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号411、第2押さえ素子82とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号412、第3押さえ素子83とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号413を付記している。
【0108】
整合材付き光ファイバ720は、介挿部材41、42を用いて第1、第2押さえ素子81、82をベース側素子71に対して開いた状態にて、第1、第2押さえ素子81、82とベース側素子71との間に挿脱できる。
整合材付き光ファイバ720に光接続する第2光ファイバ73(別の光ファイバ。以下、挿入光ファイバとも言う)の先端部は、第2、第3押さえ素子82、83とベース側素子71との間に配置される。第2光ファイバ73は、介挿部材42、43を用いて第2、第3押さえ素子82、83をベース側素子71に対して開いた状態にて、第2、第3押さえ素子82、83とベース側素子71との間に挿脱できる。
【0109】
図8(a)、(b)において、第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73は、具体的には単心の光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆光ファイバである。
第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73は、その先端部の被覆材を除去して裸光ファイバ72a、73aを口出しした状態でベース側素子71と押さえ素子81〜83との間に挿入される。
第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73の先端部に口出しされた裸光ファイバ72a、73aは、光ファイバ接続器70の第2押さえ素子82とベース側素子71との間に配置される。光ファイバ接続器70の第1押さえ素子81とベース側素子71との間には、第1光ファイバ72の裸光ファイバ72aが被覆材によって覆われた部分である被覆部72bが配置される。光ファイバ接続器70の第3押さえ素子81とベース側素子71との間には、第2光ファイバ73の裸光ファイバ73aが被覆材によって覆われた部分である被覆部73bが配置される。
【0110】
また、整合材付き光ファイバ720の固形屈折率整合材321は、具体的には、第1光ファイバ72先端部に口出しされた裸光ファイバ72aの先端面に付設されている。
部分球状の固形屈折率整合材321は、裸光ファイバ72a先端面からの突出寸法が最大の部分である頂点を、裸光ファイバ72aのその先端面中央部の、裸光ファイバ72a先端光軸方向の仮想延長上に位置させて裸光ファイバ72a先端に設けられている。
【0111】
図8(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70は、ベース側素子71長手方向を長手方向として延在する、全体として細長形状に形成されている。
図8(b)に示すように、ベース側素子71の第2押さえ素子82に対向する面には、調心溝75が接続器長手方向に延在形成されている。
整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321は、調心溝75に収納されている。挿入光ファイバ73に口出しされた裸光ファイバ73aは、調心溝75に収納して、その先端を整合材付き光ファイバ72先端(固形屈折率整合材321)に突き当てる。調心溝75は、挿入光ファイバ73の裸光ファイバ73aを、整合材付き光ファイバ720先端に対して突き合わせ接続可能に位置決め調心できる。
【0112】
光ファイバ接続器70について、第1、第2押さえ素子81、82とベース側素子71との間に挿入された整合材付き光ファイバ720先端部を第1押さえ素子81とベース側素子71との間に把持固定したものを、以下、ピグテイル付き接続器70Aとも言う。
光ファイバ接続器70を用いて整合材付き光ファイバ720に第2光ファイバ73を光接続する方法(光ファイバ接続部の組み立て方法)としては、ピグテイル付き接続器70Aを用いる方法を挙げることができる。
ピグテイル付き接続器70Aは、第1押さえ素子81とベース側素子71との間に把持固定した第1光ファイバ72の裸光ファイバ72aに、第2押さえ素子82とベース側素子71との間に別途挿入された第2光ファイバ73の裸光ファイバ73aを光接続するための光ファイバ接続器として機能する。
【0113】
この光ファイバ接続部の組み立て方法では、ピグテイル付き接続器70Aのベース側素子71と介挿部材42、43を用いてベース側素子71に対して開いた第2、第3押さえ素子82、83との間に第2光ファイバ73を挿入し、この第2光ファイバ73の先端を整合材付き光ファイバ720先端(固形屈折率整合材321)に突き当てる。次いで、この突き当て状態を保ったまま、第2押さえ素子82及び第3押さえ素子83とベース側素子71との間から介挿部材40を抜き去る。
【0114】
これにより、整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321と挿入光ファイバ73先端部の裸光ファイバ73aとを、第2押さえ素子82及び第3押さえ素子83とベース側素子71との間に把持固定できる。その結果、光ファイバ接続器70は、整合材付き光ファイバ720と挿入光ファイバ73との光接続状態を維持した光ファイバ接続構造を実現できる。
挿入光ファイバ73は、整合材付き光ファイバ72先端の固形屈折率整合材321を介して第1光ファイバ72と光接続される。
【0115】
この光ファイバ接続部の組み立て方法において、ピグテイル付き接続器70Aの第1押さえ素子81とベース側素子71とは、第1光ファイバ72の把持固定を維持する。
図8(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70のばね76は、接続器長手方向を長手方向として延在する細長形状に形成されている。このばね76は、その長手方向2箇所に形成されたスリット76aによって、それぞれ押さえ素子(押さえ素子)をベース側素子71に向かって弾性付勢するばねとして機能する3つの領域(個別ばね領域)に区分けされている。スリット76aは、ばね76のその長手方向に垂直のC形又はコ字形の横断面における開口部に臨む両端のそれぞれからばね76周方向に延在形成されている。ばね76の3つの個別ばね領域は、3つの押さえ素子81、82、83に対応させて確保されている。3つの押さえ素子81、82、83は、それぞれ独立にベース側素子71に対して開閉できる。
このため、ピグテイル付き接続器70Aの第1押さえ素子81は、ベース側素子71に対する第2、第3押さえ素子82、83の開閉の影響を受けることなく、第1光ファイバ72をベース側素子71との間に把持固定した状態を安定維持できる。
【0116】
ピグテイル付き接続器70Aの、その接続器長手方向(光ファイバ接続器70長手方向)において第2押さえ素子82から第1押さえ素子81側の部分は、整合材付き光ファイバ720(具体的には第1光ファイバ72)を把持固定するファイバ固定部74として機能する
図8(a)、(b)に示すピグテイル付き接続器70Aのファイバ固定部74は、具体的には、第1光ファイバ72の被覆部72bを把持固定する。
整合材付き光ファイバ720のファイバ固定部74に把持された部分はベース側素子71に対して固定される。
【0117】
また、接続器長手方向において、光ファイバ接続器70のファイバ固定部74から第2押さえ素子82側の部分は、挿入光ファイバ73先端部を、整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321とともに把持固定可能なクランプ部77として機能する。
第2光ファイバ73と第1光ファイバ72とは固形屈折率整合材321を介して光接続可能である。
【0118】
以下、第1光ファイバ72の裸光ファイバ72aを第1裸光ファイバ72a、第2光ファイバ73の裸光ファイバ73aを第2裸光ファイバ73aとも言う。
第1裸光ファイバ72a先端面は、第1裸光ファイバ72a先端の光軸に垂直の平坦面、あるいはPC研磨された湾曲面である。
整合材付き光ファイバ720先端部における第1裸光ファイバ72a先端部と固形屈折率整合材321との関係は、既述の光コネクタ10における内蔵光ファイバ32後端部と固形屈折率整合材321との関係と同様である。
例えば、第1裸光ファイバ72a先端の光軸に対するその垂直方向の固形屈折率整合材321頂点の許容ずれ量は、既述の光コネクタ10における内蔵光ファイバ32後端部と固形屈折率整合材321との関係と同様である。また、第1裸光ファイバ72a先端光軸の延長上における固形屈折率整合材321の厚みは、既述の光コネクタ10における固形屈折率整合材321の厚みDと同様である。
【0119】
ピグテイル付き接続器70Aは、介挿部材42によって第2押さえ素子82がベース側素子71に対して開かれた状態において、第2押さえ素子82とベース側素子71との間の第2裸光ファイバ73a先端の第1裸光ファイバ72a先端の光軸の仮想延長に対する許容変位量(許容軸ずれ量)を、第1裸光ファイバ72a径(第1光ファイバ72のクラッド径)の50%以下とした構成のものである。
このため、ピグテイル付き接続器70は、光ファイバ72、73同士の光接続において、第1裸光ファイバ72a先端の固形屈折率整合材321の、第1裸光ファイバ72a先端からの剥がれや破損を防止できる。その結果、ピグテイル付き接続器70は、第1裸光ファイバ72a先端及び第2裸光ファイバ73a先端のモードフィールド部分同士間を固形屈折率整合材321によって隙間無く埋め込むことを確実に実現でき、光ファイバ72、73同士を低損失で光接続できる。
【0120】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0121】
図3、
図5(a)、(b)、(c)では、内蔵光ファイバ32として、その後端の光軸に垂直の後端面32a(後側延出部322の先端面。以下、垂直後端面とも言う)を形成したものを採用している。
図8(b)に示す第1光ファイバの後端面も、その中央の光軸に垂直に形成されている。
光コネクタの内蔵光ファイバ、ピグテイル付き接続器の第1光ファイバといった、固形屈折率整合材を取り付ける光ファイバを、以下、整合材付設対象光ファイバとも言う。整合材付設対象光ファイバの固形屈折率整合材が取り付けられる先端面は、例えば、その中央の光軸に垂直の仮想垂直面(第1光ファイバ先端仮想垂直面)に対して7〜9度程度傾斜する傾斜面(平坦面。以下、傾斜先端面とも言う)であっても良い。
傾斜先端面に付設する場合の部分球状の固形屈折率整合材の頂点は、固形屈折率整合材において第1光ファイバ先端仮想垂直面に対する突出寸法が最大の位置を指す。この場合も、固形屈折率整合材の頂点は、整合材付設対象光ファイバの先端面中央部の整合材付設対象光ファイバ先端光軸方向の仮想延長内に設けられる。
但し、固形屈折率整合材の整合材付設対象光ファイバ先端面に対する厚みD(
図9の「整合材の厚み」)は、固形屈折率整合材の整合材付設対象光ファイバ先端光軸の延長上に位置する被り厚を指す。
【0122】
整合材付設対象光ファイバに光接続する第2光ファイバの先端面は、整合材付設対象光ファイバ先端面が第1光ファイバ先端仮想垂直面に一致する面あるいはPC研磨された部分球面状の場合、その中央の第2光ファイバ光軸に垂直に形成する。また、整合材付設対象光ファイバ先端面が傾斜先端面である場合、第2光ファイバの先端面は、整合材付設対象光ファイバの傾斜先端面のその中央の光軸に垂直の仮想垂直面に対する傾斜角度と概ね一致する傾斜角度を以て、第2光ファイバ先端の光軸に垂直の仮想面に対して傾斜する平坦な傾斜面とすることが好ましい。
固形屈折率整合材321は、整合材付設対象光ファイバの先端面の構成に依らず、
図9に示す領域R1のものを好適を使用できる。
【0123】
光ファイバ接続器のファイバ固定部としては、第1光ファイバをベース部材に対して固定可能なものであれば良く、上述の実施形態にて説明したものに限定されない。
【0124】
図1の光コネクタ10の前側素子361、
図8(b)の光ファイバ接続器70の第2押さえ素子82のように、第2光ファイバ先端に口出しされた裸光ファイバを第1光ファイバ先端に口出しされている裸光ファイバとともにベース側素子(ベース部材)に押さえ込む押さえ部材(押さえ素子)を、以下、接続部押さえ部材とも言う。
光ファイバ接続器としては、第2光ファイバの被覆部をベース部材に押さえ込む押さえ部材と接続部押さえ部材とが別部材ではなく、同一の1部材である構成も採用可能である。
例えば、
図1のクランプ部付きフェルール30のクランプ部33について、前側素子361及び後側素子362の2部材からなる押さえ素子36とによって構成されるものに限定されず、押さえ素子として1部材からなるものを採用することも可能である。
また、光ファイバ接続器としては、調心溝がベース部材に形成されている構成に限定されず、接続部押さえ部材に前記調心溝が形成されている構成も採用可能である。
【0125】
クランプ部付きフェルールを収納する光コネクタのハウジングとしては特には限定は無い。このハウジングとしては、例えば、SC形光コネクタ、いわゆるSC2形光コネクタ(SC形光コネクタからつまみを省略したもの)、MU形光コネクタと同様のハウジングに介挿部材挿通孔を形成したもの等を採用できる。
【0126】
上述の実施形態では、光コネクタとして、予め素子間に介挿部材が介挿され素子間を開放状態とした構成の光コネクタ(介挿部材付き光コネクタ)を例示したが、光コネクタとしてはこれに限定されない。光コネクタとしては、クランプ部付きフェルールのクランプ部の素子間に介挿部材が挿入されておらず、素子間への挿入光ファイバの挿入作業を行う際に、素子間に介挿部材を挿入して素子間を開放状態とする作業を行えるようにした構成も採用可能である。
但し、光ファイバ接続器としては(光コネクタを含む)、クランプ部と、その接続部押さえ部材及びベース部材の間に介挿された介挿部材とによって、開放状態の接続部押さえ部材とベース部材との間の第2裸光ファイバ先端の第1裸光ファイバ先端の光軸の仮想延長に対する許容変位量(許容軸ずれ量)が、第1裸光ファイバ径(第1光ファイバのクラッド径)の50%以下とされた構成とする。
【0127】
クランプ部付きフェルール自体も光コネクタとして用いることができる。
光コネクタとしては、必ずしもクランプ部付きフェルールを収容するハウジングを有する構成のものに限定されない。
光コネクタとしては、クランプ部付きフェルールを収容するハウジングを有しておらず、クランプ部付きフェルール自体からなる構成も採用可能である。
【0128】
既述の実施形態では、ベース部材(ベース側素子)と、該ベース部材とは別体の押さえ部材(押さえ素子)とを有する構成のクランプ部を例示した。
但し、クランプ部としては、例えば、ベース部材と、このベース部材にヒンジ部を介して連結されベース部材に対して回転によって開閉する押さえ部材とを有する構成のものも採用可能である。
また、押さえ部材をベース部材に向かって押圧する手段(押圧手段)としては、既述のクランプ部のばねに限定されない。押さえ部材をベース部材に向かって押圧する押圧手段としては、例えば、ベース部材及び押さえ部材を収納する枠状に形成され、ベース部材及び押さえ部材に対してスライド移動可能に設けられたスライド部材(スライド押圧部材)も採用可能である。スライド押圧部材を採用したクランプ部としては、スライド押圧部材を、ベース部材及び押さえ部材に対するスライド移動によって、ベース部材及び押さえ部材の一方又は両方のその対向面とは反対の側に突設された凸部に乗り上げさせることで、スライド押圧部材によって押さえ部材をベース部材に向かって押圧する構成を挙げることができる。スライド押圧部材は、ベース部材及び押さえ部材に対するスライド移動によって、凸部に対する乗り上げを解除することで、ベース部材に対する押さえ部材の押圧解除、開放を許容する。
また、スライド押圧部材を採用したクランプ部としては、ヒンジ部を介して互いに連結され互いの対向面同士を対向させて開閉可能に設けられたベース部材及び押さえ部材を収納するスライド押圧部材を、ベース部材及び押さえ部材に対するスライド移動によってヒンジ部の回転中心からの離隔距離を増大させることで、スライド押圧部材によって押さえ部材をベース部材に向かって押圧する構成も採用可能である。