(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058487
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】吊具の位置測定用ターゲット
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20161226BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
B66C13/46 A
G01B11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-141098(P2013-141098)
(22)【出願日】2013年7月4日
(62)【分割の表示】特願2012-243575(P2012-243575)の分割
【原出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91631(P2014-91631A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年4月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】笠井 大至
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−520738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/46,13/22
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリに設置されたレーザ距離計と吊具に設置されたターゲットとを有していて前記トロリに懸吊された前記吊具の位置を測定する位置測定装置の位置測定用ターゲットにおいて、
前記ターゲットが傾斜部を備えていて、
前記傾斜部が、レーザ光を反射した前記傾斜部の少なくとも一つの測定ポイントの位置座標から、前記傾斜部の上端又は下端の境界部分までの長さを導き出せる予め定めた形状を有していて、
前記ターゲットが、前記傾斜部の上端又は下端の前記境界部分を介して配置された水平部を有していることを特徴とするターゲット。
【請求項2】
前記ターゲットが、傾斜した平板状の前記傾斜部を有していることを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
前記ターゲットが、凸又は凹となるような湾曲面を備えた前記傾斜部を有していることを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項4】
前記ターゲットが、前記吊具の上面よりも高い位置となる直方体状の水平部と、この水平部から前記吊具の上面に向かって下るように傾斜した2つの平板状の傾斜部と、を有しており、且つ前記ターゲットが2つの前記境界部分を有していることを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの荷役を行うクレーン
の吊具の位置を測定する位置測定
用ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナターミナル等で、岸壁クレーン、門型クレーン及びストラドルキャリア等によりコンテナの荷役が行われている。これらのクレーンでコンテナの荷役を行う際、コンテナの振れ止めや荷役の自動化のために、吊具(以下、スプレッダという)の位置等をレーザ距離計で測定する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8に、レーザ距離計によりスプレッダの位置を測定する方法の概略を示す。特許文献1に記載のクレーンは、ガーダ13等に沿って走行するトロリ8と、トロリ8からワイヤロープ11を介して懸吊されたスプレッダ7を有している。また、クレーンは、トロリ8に設置されたレーザ距離計9を有している。このレーザ距離計9は、ミラーの回転等により放射状(扇形状)にレーザを順番に複数回射出し、その反射光を検知し、その経過時間tからレーザ光が反射した測定ポイントまでの距離を算出する構成を有している。ここで、d及びd’は、隣接するレーザ光の間隔を示している。また、Hは、地表面からレーザ距離計9までの高さHを示している。
【0004】
次に、レーザ距離計9によるスプレッダ7の位置測定方法について説明する。まず、レーザ距離計9が、スプレッダ7に向けてレーザ光の軌跡が扇形を形成するように順次照射し、それぞれの反射光を検知するまでの経過時間tを測定する。レーザ距離計9は、各レーザ光の射出角度αnと、経過時間tnから算出される距離Lnを、レーザ光が反射した各測定ポイントPnの極座標(Ln、αn)として取得する。その後、この各測定ポイントPnの極座標から、スプレッダ7の位置を推定する。なお、スプレッダ7に衝突しなかったレーザ光は、地表面12等で反射され、レーザ距離計9に戻っていく。
【0005】
ここで、射出角度αnは、垂線に対するレーザ光のなす角度を示している。また、距離Lnは、レーザ距離計9の下端部から、レーザ光が反射された測定ポイントPnまでの距離を示している。更に、Lsは、トロリ8(又はレーザ距離計9)からスプレッダ7までの距離(以下、基準高さLsという)を示している。
【0006】
なお、レーザ距離計9は、例えば0.125〜1.000度程度の角度分解能を有している。つまり、レーザ距離計9は、レーザ光の射出角度αnを例えば0.125度ずつずらしながら照射することができる。そのため、レーザ光の間隔d’は、以下の式で求めることができる。
【数1】
【0007】
ここで、タンジェントの中の角度は、隣接するレーザ光の射出角度αnの差を示している。例えば、クレーンが岸壁クレーンである場合は、H=100mとし、角度分解能を最も高性能な0.125度とすると、レーザ光の間隔d’は、約218mmとなり、角度分解能を1.0度とすると間隔d’は約1750mmとなる。クレーンが門型クレーンの場合は、H=30mとし、角度分解能を最も高性能な0.125度とすると、レーザ光の間隔d’は、約65mmとなり、角度分解能を1.0度とすると間隔d’は約523mmとなる。
【0008】
図9に、従来の位置測定方法により測定を行っている際の様子を示す。具体的には、スプレッダ7にレーザ光が照射される様子の概略を示す。レーザ光は、スプレッダ7に衝突し、各測定ポイントP1〜P4で反射され、レーザ距離計9(図示しない)に戻っていく。また、スプレッダ7に衝突しなかったレーザ光は、地表面等で反射され(測定ポイントP5)、レーザ距離計9に戻っていく。
【0009】
図10に、レーザ距離計9により得られた測定データの例を示す。
図10のグラフは、レーザ距離計9で取得した各測定ポイントPnの極座標(Ln、αn)を、直交座標(Lnsinαn、Lncosαn)に変換して示したものである。
図10からわかるように、スプレッダ7上の測定ポイントP1〜P4は、高さ(Lncosαn)がほぼ一定の値(基準高さLs)を取る。また、スプレッダ7上で反射されなかった場合は、その測定ポイントP5の高さ(Lncosαn)が大きく異なる。そのため、スプレッダ7の側方端部(エッジとも言う)は、測定ポイントのP4とP5の間に位置することがわかる(
図10破線参照)。
【0010】
以上より、レーザ距離計9は、スプレッダ7の位置を推定することができる。クレーンは、このスプレッダ7の位置情報により、スプレッダ7の振れ止め制御や、トロリ8による荷役の自動化等を実現している。
【0011】
しかしながら、上記のレーザ距離計9によるスプレッダ7の位置測定方法は、いくつかの問題点を有している。第1に、測定精度が低いという問題を有している。これは、スプレッダ7等で反射されるレーザ光には、射出角度αnの影響を受けた間隔dが生じ、この間隔dが測定誤差となってしまうからである。つまり、この位置測定方法では、
図10に破線で示すように、スプレッダ7の側方端部(エッジ)が測定ポイントP4とP5の間のどの位置に存在するかを、知ることができない。
【0012】
第2に、レーザ距離計9からスプレッダ7までの距離が離れるほど、測定精度が低下してしまうという問題を有している。これは、
図8に示すように、放射状のレーザ光は、その進む距離に応じてその間隔dがd’へと大きくなってしまうからである。一般的に、レーザ距離計9からスプレッダ7までの距離が離れているときほど、スプレッダ7の振れは発生しやすく、振れ止め等の制御が必要とされる。そのため、レーザ距離計9は、最も必要とされるときに、その測定精度が最も低下してしまう。具体的には、岸壁クレーンに最も角度分解能の高いレーザ距離計を使用した場合であっても、d’は約220mmとなる。
【0013】
第3に、スプレッダ7の振れ止め制御、及び自動荷役制御等を高精度且つ安全に行うことが困難であるという問題を有している。これは、数十cm程度の間隔で載置されているコンテナの荷役を自動化するには、前述の測定精度では不十分となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−312521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、吊具(スプレッダ)の位置を測定する位置測定
用ターゲットにおいて、スプレッダの位置を測定する測定精度を向上し、特にレーザ距離計からスプレッダが離れている場合であっても、測定精度を維持することができる位置測定
用のターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係る吊具の位置測定用ターゲットは、トロリに設置されたレーザ距離計と吊具に設置されたターゲットとを有していて前記トロリに懸吊された前記吊具の位置を測定する位置測定装置の位置測定用ターゲットにおいて、前記ターゲットが傾斜部を備えていて、前記傾斜部が、レーザ光を反射した前記傾斜部の少なくと
も一つの測定ポイントの位置座標から、前記傾斜部の上端又は下端の境界部分までの長さを導き出せる予め定めた形状を有してい
て、前記ターゲットが、前記傾斜部の上端又は下端の前記境界部分を介して配置された水平部を有していることを特徴とする。
【0017】
この構成により、位置測定装置の測定精度を向上することができる。これは、レーザ距離計により傾斜部上の測定ポイントの位置座標を測定し、この傾斜部の測定ポイントの高さを求め、この高さから境界部分の位置を正確に算出することができるからである。特に、レーザ距離計と吊具(スプレッダ)の距離が離れている場合であっても、位置測定装置の測定精度を維持することができる。
【0019】
ターゲットが、傾斜した平板状の傾斜部を有している構成にすることができる。またはターゲットが、凸又は凹となるような湾曲面を備えた傾斜部を有している構成にすることができる。
【0020】
ターゲットが、吊具の上面よりも高い位置となる直方体状の水平部と、この水平部から吊具の上面に向かって下るように傾斜した2つの平板状の傾斜部と、を有しており、且つターゲットが2つの境界部分を有している構成にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による吊具の位置測定
用ターゲットによれば、スプレッダの位置を測定する測定精度を向上し、特にレーザ距離計からスプレッダが離れている場合であっても、測定精度を維持することができる位置測定
用ターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
位置測定装置の構成の概略を示した図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態の位置測定
用ターゲットの断面を示した図である。
【
図3】
位置測定装置により取得されるデータの例を示した図である。
【
図4】本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲットの概略を示した図である。
【
図5】本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲットの概略を示した図である。
【
図6】本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲットの概略を示した図である。
【
図7】本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲットの断面を示した図である。
【
図8】従来の位置測定方法の構成の概略を示した図である。
【
図9】従来の位置測定方法よる測定時の様子を示した図である。
【
図10】従来の位置測定方法により取得されるデータの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の吊具の位置測定
用ターゲットについて、図面を参照しながら説明する。
図1に、
位置測定装置1の構成の概略を示す。位置測定装置1は、トロリ8に設置されたレーザ距離計9と、吊具(以下、スプレッダという)7に設置された少なくとも1つの
本発明のターゲット2を有している。また、位置測定装置1は、レーザ距離計9に信号線(図示しない)で接続された演算装置3を有している。このレーザ距離計9のレーザ光は、例えばx軸方向に広がるように照射される。更に、このターゲット2は、スプレッダ7の予め定めた位置に正確に設置されることが望ましい。
【0027】
図2に、ターゲット2の断面の概略を示す。スプレッダ7に固定されたターゲット2は、平板状の水平部21と、例えば角柱状の断面を有する傾斜部22を有している。この傾斜部22は、水平部21に対して予め定めた角度θの傾きを有するように形成される。ここで、23は、傾斜部22の下端部の境界部分23(エッジともいう)を示している。水平部21は、傾斜部22の下端部の境界部分23を介して配置されている。
【0028】
ここで、x軸方向における水平部21の長さD1及び傾斜部22の長さD2は、スプレッダ7の位置測定が必要な領域において、レーザ光の少なくとも1つを反射できる長さとなるように決定される(D1>d、D2>d)。前述の数1に示した計算式によると、例えば、H=100mの岸壁クレーンで、角度分解能が0.125度のレーザ距離計を使用した場合は、レーザ光の間隔d’は220mm程度となるため、長さD1及びD2は、220mmを超える長さにすることが望ましい。また、例えば、ターゲット2のy軸方向(
図2の紙面手前奥方向)の長さは800〜1000mm程度、z軸方向の高さは100〜150mm程度とすることができる。なお、ターゲット2の大きさは上記に限られず、スプレッダ7の位置測定を行う際に、レーザ光が少なくとも傾斜部22で反射されるように構成されていればよい。
【0029】
次に、位置測定装置1によるスプレッダ7の位置測定方法について説明する。まず、
図2に示すように、レーザ距離計9(図示しない)が、ターゲット2に対してレーザ光を照射する。このレーザ光は、各測定ポイントP1〜P5(以下、総称する場合は測定ポイントPnという)で反射される。レーザ距離計9は、ターゲット2やスプレッダ7上の測定ポイントPnまでの距離Lnと、レーザ光の射出角度αnから、各測定ポイントPnの位置座標(極座標)を取得する(位置座標取得ステップ)。この各測定ポイントPnの位置座標は、随時、演算装置3に送られる。
【0030】
図3に、レーザ距離計9で取得した各測定ポイントPnの極座標(Ln、αn)を、直交座標(Lnsinαn、Lncosαn)に変換して示したものである。
図3のP1は、スプレッダ7上の測定ポイントP1の位置座標を示し、P2及びP3は、ターゲット2の水平部21上にある測定ポイントP2及びP3の位置座標を示している。また、測定ポイントP4は、傾斜部22上でレーザ光を反射した部分の座標を示している。更に、測定ポイントP5は、地表面にてレーザ光を反射した部分の座標を示している。
【0031】
ここで、Lsは、スプレッダ7の上面の高さ又はターゲット2の水平部21の高さと同じ高さとなる基準高さを表わしている。この基準高さLsは、スプレッダ7のワイヤロープの繰り出し量を測定するエンコーダ等から得ることができる。以上より得られた基準高さLsは、演算装置3に送られる(基準高さ取得ステップ)。
【0032】
次に、演算装置3による演算処理について説明する。まず、演算装置3は、レーザ距離計9により得られた複数の測定ポイントPnの位置座標と、エンコーダ等で得られた基準高さLsを比較する(比較ステップ)。この比較により、基準高さLsに比較的近い距離に位置する測定ポイントP1〜P3は、水平部21上又はスプレッダ7上にあると推定できる。また、この水平部21上にある測定ポイントに対して、その距離が最初に大きく変化した測定ポイントP4は、傾斜部22上にあると推定できる。つまり、測定ポイントP3とP4の間に、水平部21と傾斜部22の境界部分23(
図2参照)が存在することが推定できる(ポイント絞込みステップ)。
【0033】
なお、基準高さLsの取得は、エンコーダ等を利用しない方法でも可能である。例えば、仮の基準高さLs’を任意に決定し、この仮の基準高さLs’に対して、上記の比較ステップ及びポイント絞込みステップを実行する。その過程で、水平部21上又はスプレッダ7上にあると推定された測定ポイントの有する高さ(Lncosαn)を、基準高さLsとして利用する。この場合は、P1〜P3の平均値を基準高さLsとしたり、水平部21のみ高さを抽出し基準高さLsとしたりすることができる。
【0034】
この構成により、位置測定装置1の測定精度を向上することができる。これは、測定誤差の小さいレーザ距離計9により測定した水平部21又はスプレッダ7の高さを、基準高さLsとして利用するからである。なお、エンコーダ等を利用した場合は、ワイヤロープ11の伸び等の影響で、若干ではあるが測定誤差が生じてしまう。これに対して、レーザ距離計9の測定誤差は、極めて小さいものとなる。
【0035】
次に、演算装置3は、
図2に示すように、例えば水平部21の上面の高さに決定された基準高さLsと、傾斜部22上の少なくとも1つの測定ポイントP4の位置座標から、測定ポイントP4の高さδを算出する(傾斜部高さδ算出ステップ)。ここで算出された高さδを、演算装置3に予め入力されているターゲット2の傾斜部22の形状関数に代入する。具体的には、
図2に示すようにターゲット2の傾斜部22が、水平部21に対して角度θで傾いている場合、傾斜部22の形状関数は、以下の式で表わすことができる。
【数2】
【0036】
上記の式により、P4から境界部分(エッジ)23までの水平方向(x軸方向)の距離xが求められる(境界部分算出ステップ)。以上より、高い精度で求められた境界部分23の位置座標を求めることができ、この境界部分23の位置座標から、スプレッダ7の位置を正確に測定することができる。
【0037】
上記の構成により、本発明のスプレッダの位置測定
用ターゲット2は、以下の作用効果を得ることができる。第1に、位置を測定する測定精度を向上することができる。これは、レーザ距離計9により傾斜部22上の測定ポイントPnの位置座標を測定し、基準高さLsに対する傾斜部の測定ポイントPnの高さδを求め、この高さδからエッジ23の位置を正確に算出することができるからである。
【0038】
このとき、エッジ23の位置は、従来の測定誤差であったレーザ光の間隔d(例えば100〜300mm程度)の長さに比べると、格段に高い精度で決定することができる。具体的には、エッジ23の位置を測定する際の誤差は、レーザ距離計9による測定誤差(±数mm程度)、及びターゲット2をスプレッダ7に固定する際の寸法誤差の影響を受ける程度である。
【0039】
第2に、位置測定装置1は、スプレッダ7の位置がレーザ距離計9から大きく離れた場合であっても、高い測定精度を実現することができる。これは、位置測定装置1の測定精度が、レーザ光の間隔dの影響を受けない構成を有しているためである。
【0040】
第3に、スプレッダ7の位置を測定する測定精度の向上により、スプレッダ7が振れている際のその振れの方向及び加速度を、高い精度で測定することができる。これは、スプレッダ7の位置の変化を、誤差をほとんど含まずに測定できるためである。
【0041】
図4に、本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲット2Aの概略を示す。ターゲット2Aは、スプレッダ7の上面よりも高い位置となる直方体状の水平部21Aと、水平部21Aからスプレッダ7の上面に向かって下るように傾斜した平板状の傾斜部22Aを有している。23は、演算装置3により位置を測定されるエッジ23を示している。
【0042】
このとき、基準高さLsは、水平部21Aの上面に設定することができる。この基準高さLsは、エンコーダ等で得られたスプレッダ7の上面の高さに、水平部21Aの高さを加えて求めてもよく、水平部21Aの上面の測定ポイントPnの位置座標から推定してもよい。また、傾斜部22Aが水平面に対してなす角θを有する場合、このターゲット2Aの形状関数は、前述の数2と同様の式で表わすことができる。
【0043】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲット2Bの概略を示す。ターゲット2Bは、平板状の水平部21Bと、水平部21Bから凸となるような湾曲面を備えた傾斜部22Bを有している。この傾斜部22Bは、例えば円柱を軸方向に4等分した形状を有している。傾斜部22Bが、半径rで中心角90度の扇型である場合、形状関数は以下の式で表わすことができる。
【数3】
【0044】
ここで、xは、傾斜部22B上の測定ポイントからエッジ23までの水平方向(x軸方向)の距離xを表わしている。
【0045】
同様に、
図6に、本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲット2Cの概略を示す。ターゲット2Cは、平板状の水平部21Cと、水平部21Cから凹となるような湾曲面を備えた傾斜部22Cを有している。傾斜部22Cが、直方体から半径rで中心角90度の扇型をくり貫いた形状である場合、形状関数は以下の式で表わすことができる。
【数4】
【0046】
ここで、xは、傾斜部22C上の測定ポイントからエッジ23までの水平方向(x軸方向)の距離xを表わしている。
【0047】
以上のように、ターゲットの傾斜部は、基準高さLsに対する傾斜部上の測定ポイントの高さδと予め定められた形状関数から、エッジ23までの距離xを求めることができる。そのため、傾斜部は、高さδに対して距離xが一義的に決定することができる形状を有していればよい。具体的には、傾斜部の角度が途中で変化するような不連続な形状でも、高さδに対して距離xが1つ導き出せる形状であればよい。なお、基準高さLsは、傾斜部の上端から下端までの間のいずれかの高さに設定すればよいが、傾斜部の上端又は下端の高さに設定することが望ましい。この構成により、境界部分の位置を求める演算を簡略化することができるからである。
【0048】
なお、ターゲット2、2A、2B、2Cは、y軸方向に長手方向を有するように図示しているが、本発明の位置測定
用ターゲット2は、この構成に限られない。ターゲット2は、x軸方向に長手方向を有するようにスプレッダ7に設置してもよく、例えばx軸方向に対して45度傾いた方向に、長手方向を有するように設置してもよい。
【0049】
また、ターゲット2の設置個数は、スプレッダ7に少なくとも1つ設置すればよいが、スプレッダ7の位置、姿勢等の必要とする情報に応じて適宜変更することができる。つまり、ターゲット2の設置個数を増やし、レーザ距離計9からスプレッダ7までの距離Lに加えて、スプレッダ7の旋回方向の傾き(垂直軸zを中心とする回転)や、水平面に対する傾斜(x軸及びy軸を中心とする回転)を測定することができる。
【0050】
図7に、本発明に係る異なる実施の形態の位置測定
用ターゲット2Dの概略を示す。ターゲット2Dは、スプレッダ7の上面よりも高い位置となる直方体状の水平部21Dと、水平部21Dからスプレッダ7の上面に向かって下るように傾斜した2つの平板状の傾斜部22Dを有している。つまり、ターゲット2Dは、2つのエッジ23を有するように構成されている。
【0051】
このとき、基準高さLsは、水平部21Dの上面の高さとすることができる。また、この水平部21Dの上面の測定ポイントの座標から、それぞれの傾斜部22D上の測定ポイントを特定することができる。
【0052】
この構成により、スプレッダ7の位置を測定する際のエラーの発生を防止することができる。これは、例えば、一方の傾斜部22Dに付着した雨等の水滴により、十分にレーザ光の反射光が得られなかった場合であっても、他方の傾斜部22Dからの反射光により、スプレッダ7の位置を測定することができるからである。
【0053】
また、ターゲット2Dを採用した位置測定装置は、スプレッダ7が、軸zを中心に回転し傾きを有する場合であっても、その傾きを測定することができる。これは、2つのエッジ23の間の予め定められた距離と、位置測定装置により測定された見かけ上の2つのエッジ23の間の距離の比較から、スプレッダ7の傾きを算出することができるからである。
【0054】
なお、レーザ距離計9は、レーザ光の軌跡が扇形を形成する二次元レーザ距離計の他に、レーザ光の軌跡が円錐形を形成する三次元レーザ距離計等を利用することもできる。このレーザ距離計に合わせて、ターゲットを、例えば円錐台形等に形成し、三次元へ拡張することもできる。この構成により、レーザ距離計及びターゲットの設置個数を増やさずに、スプレッダの回転等の詳細を測定することが可能となる。
【0055】
また、ターゲット2の水平部21は、スプレッダ7の天面等を利用する構成としてもよい。つまり、スプレッダ7の平板状の天面に、傾斜部22のみを有するターゲット2を設置する構成としてもよい。この場合、境界部分(エッジ)23は、傾斜部22の上端又は下端となる。この構成により、ターゲットの製造コストを抑制することができる。このとき、スプレッダ7の天面の高さを抽出し基準高さLsとすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 位置測定装置
2、2A、2B、2C、2D ターゲット
3 演算装置
7 スプレッダ
8 トロリ
9 レーザ距離計
21、21A、21B、21C、21D 水平部
22、22A、22B、22C、22D 傾斜部
23 境界部分(エッジ)
Ln (レーザ距離計から測定ポイントまでの)距離
Ls 基準高さ
Pn、P、P1、P2、P3、P4 測定ポイント
δ (傾斜部の測定ポイントの)高さ
d (レーザ光の)間隔