特許第6058644号(P6058644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058644
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】液晶媒体および液晶ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20161226BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20161226BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20161226BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20161226BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20161226BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20161226BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20161226BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/30
   C09K19/34
   C09K19/38
   C09K19/54 Z
   G02F1/13 500
【請求項の数】11
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2014-513069(P2014-513069)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-522432(P2014-522432A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】EP2012001999
(87)【国際公開番号】WO2012163470
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】11004479.9
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】田中 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】リリッヒ,マルゴルザータ
(72)【発明者】
【氏名】ライフェンラート,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヤンゼン,アクセル
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5808565(JP,B2)
【文献】 国際公開第2010/131614(WO,A1)
【文献】 特開2003−176251(JP,A)
【文献】 特開2009−282534(JP,A)
【文献】 特表2011−514410(JP,A)
【文献】 特表2007−503487(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058681(WO,A1)
【文献】 特開2011−174070(JP,A)
【文献】 特表2012−533662(JP,A)
【文献】 特開2011−001342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IおよびIIで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含むメソゲン媒
【化1】
式中
は、HまたはFであり、
21〜L23は、互いに独立して、HまたはFであり、
およびRは、互いに独立して、アルキルであり、これは直鎖または分枝であり、非置換であるか、F、ClまたはCNにより単置換または多置換されており、およびここにおいて1つまたは2つ以上のCH基は、それぞれの場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NR01−、−SiR0102−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY01=CY02−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接的に結合しないように置き換えられていてもよく、
01およびY02は、互いに独立して、F、ClまたはCNであり、および代替的にそれらの1つはHであってもよく、
01およびR02は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルである
であって、
式IIIで表される1種または2種以上の化合物を含む
【化2】
式中、Rは上でRに対して示される意味を有する、
こと、および
ブルー相を有すること、
を特徴とする、前記媒体
【請求項2】
1種または2種以上の重合性化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
式IVおよびVで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の媒体。
【化3】
式中
およびRは、互いに独立して、アルキルであり、これは直鎖または分枝であり、1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、ClまたはCNにより単置換または多置換されており、およびここにおいて1つまたは2つ以上のCH基は、それぞれの場合において互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接的に結合しないように置き換えられていてもよく、
は、HまたはFであり、
【化4】
nおよびmは、互いに独立して、0または1である。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iで表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項5】
請求項1に記載の式IIで表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項6】
重合性化合物が以下の化合物の群から選択されることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の媒体。
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項7】
請求項2〜のいずれか一項に記載の媒体にその重合性成分の重合化を施すことを特徴とする、メソゲン媒体の安定化方法。
【請求項8】
請求項2〜のいずれか一項に記載の媒体の重合性成分を重合化することにより安定化された、メソゲン媒体。
【請求項9】
請求項1〜およびのいずれか一項に記載の媒体を含むことを特徴とする、光変調素子。
【請求項10】
請求項1〜およびのいずれか一項に記載の媒体を含むことを特徴とする、電気光学ディスプレイ。
【請求項11】
請求項1〜およびのいずれか一項に記載の媒体の、光変調素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、これらの化合物を含む媒体に、およびこれらの媒体を光変調媒体として含む電気光学ディスプレイに関する。好ましくは、本発明の化合物はメソゲン化合物であり、これらは好ましくは液晶媒体において使用される。特に、本発明による電気光学ディスプレイは、メソゲン変調媒体が光学的に等方相、好ましくはブルー相である温度において作動されるディスプレイである。
【背景技術】
【0002】
DE 102 17 273 Aには、電気光学ディスプレイおよびディスプレイにおいて作動される際に等方相であるメソゲン光変調媒体が記載されている。WO 2004/046 805には、電気光学ディスプレイ、およびディスプレイにおいて作動される際に光学的に等方なブルー相であるメソゲン光変調媒体が記載されている。
【0003】
WO 2010/058681 A1には、なかでもネマチック相を示す化合物
【化1】
およびまた、これらの化合物に加えて例えば
【化2】
などの他の化合物を含む光学的に等方相の液晶媒体が記されている。
【0004】
US 7,070,838には、2−ジ−またはトリフルオロメチル−1,4−フェニル環を含有する重合性化合物、ならびに重合性混合物、LCポリマーおよびコレステリック相を有するLCディスプレイにおけるおよび光学フィルムにおけるそれらの使用が記載されている。式1a−2−19で表される以下の構造を有する特定の化合物もまた開示されている。
【化3】
【0005】
しかし、LCディスプレイにおける使用上のこの化合物の特性は開示されていない。また、かかる化合物のブルー相の安定化のための使用またはPSAディスプレイにおける使用は、US 7,070,838には記載もなく、また該明細書からは自明ではない。
【0006】
JP 2005-015473 Aには、不飽和スペーサー基(アルキニレンまたはアルケニレン)を含有する重合性化合物が開示されている。式1−13−77〜1−13−84、1−13−134、1−13−135、1−56−9、1−56−10、1−56−23、1−56−24で表される、CFO架橋を介して結合したフェニル環を含有する特定の化合物もまた開示され、光学異方性フィルムの製造のためのこれらの使用および強誘電性媒体における使用も開示されている。例えば以下の構造を有する特定の化合物もまた開示されている。
【0007】
【化4】
しかし、かかる化合物のブルー相の安定化のための使用またはPSAディスプレイにおける使用は、JP 2005-015473 Aには記載もなく、また該公報からは自明でもない。
【0008】
US 2009/0265173およびUS 2010/0078593には、異方性フィルムのための液晶混合物における成分として負の誘電率異方性を有する環系を含有するジフルオロキシメチレン−架橋重合性化合物が特許請求されている。
【化5】
【0009】
しかし、これらの化合物のLCディスプレイにおける使用上の特性については開示されていない。また、かかる化合物のブルー相の安定化のための使用またはPSAディスプレイにおける使用は、記載もなく、これらの明細書からは自明でもない。
【0010】
これらの文献に記載されるメソゲン媒体およびディスプレイは、例えば、各種の改変されたねじれネマチック(twisted nematic)(TN)、超ねじれネマチック(super twisted nematic)(STN)、電気的制御複屈折(electrically controlled birefringence)(ECB)モードおよび面内スイッチング(in-plane switching)(IPS)モードで作動する液晶ディスプレイ(liquid crystal displays)(LCDs)などのネマチック相の液晶を使用する良く知られ広汎に使用されているディスプレイと比較して、いくつかの重要な利点を提供する。これらの利点の中で最も特筆すべきは、非常に早いスイッチング時間および顕著に広い光学的視野角である。
【0011】
一方、例えば、表面安定型強誘電体液晶ディスプレイ(surface stabilized ferroelectric liquid crystal displays)(SSF LCDs)におけるスメクチック相などにおける、別の液晶相におけるメソゲン媒体を使用するディスプレイと比較して、DE 102 17 273.0およびWO 2004/046 805のディスプレイははるかに容易に製造できる。例えば、それらは非常に狭いセル間隔を必要とせず、加えて電気光学効果がセル間隔の僅かな変化にさほど敏感ではない。
【0012】
しかし、依然として、これらの上述の特許出願に記載される液晶媒体は、いくつかの用途に対しては十分には低くない作動電圧を要する。さらに、これらの媒体の作動電圧は温度とともに変化し、ある温度において、温度上昇とともに電圧が急激に上昇することが一般に観測される。このため、ディスプレイ用途向けのブルー相での液晶媒体の利用可能性が制限される。これらの特許出願に記載されている液晶媒体の更なる欠点は、要求の厳しい用途には不十分な、それらの中程度の信頼性である。例えば、この中程度の信頼性は、電圧保持率(VHR)パラメーターで表すことができ、上記の液晶媒体では90%未満でありうる。
【0013】
いくつかの化合物および組成物はコレステリック相および等方相の間にブルー相を有することが報告されてきており、通常は光学顕微鏡で観測できる。ブルー相が観測されるこれらの化合物または組成物は、典型的には、高いキラリティを示す単一のメソゲン化合物または混合物である。しかし、一般的には観測されるブルー相は非常に狭い温度範囲に及ぶのみで、典型的には1℃未満の幅であり、および/またはブルー相は、なおさら不便な温度に存在する。
【0014】
しかし、WO 2004/046 805の新規な高速スイッチングディスプレイモードを作動させるためには、使用される光変調媒体が周囲温度を含む広い温度範囲にわたってブルー相でなければならない。よって、可能な限り広汎で、利便性良く存在するブルー相を有する光変調媒体が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、広い相範囲でのブルー相を有する変調媒体に対する強い要求があり、メソゲン化合物自体の適切な混合物によるか、または好ましくは、広い温度範囲にわたってブルー相を安定化する単一のドーパントまたはドーパントの混合物とともに適切なメソゲン特性のホスト混合物と混合することにより達成できる。
【0016】
総括すると、液晶ディスプレイにおいて作動でき、媒体がブルー相である温度で作動され、以下の技術上の向上:
− 低減された作動電圧、
− 低減された作動電圧の温度依存性、および
− 向上された信頼性、例えばVHR
を提供する液晶媒体に対する要求がある。
【0017】
本発明
驚くべきことに、式IおよびII
【化6】
【0018】
式中、
は、HまたはF、好ましくはFであり、
21〜L23は、互いに独立して、HまたはFであり、好ましくはL21およびL22はともにFでありおよび/またはL23はFであり、
【0019】
およびR〜Rは、互いに独立して、アルキルであり、これは直鎖または分枝であり、好ましくは1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、ClまたはCNにより、好ましくはFにより単置換または多置換されており、およびここにおいて1つまたは2つ以上のCH基は、それぞれの場合において互いに独立して、−O−、−S−、−NR01−、−SiR0102−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY01=CY02−または−C≡C−によりOおよび/またはS原子が互いに直接的に結合しないように任意に置き換えられており、好ましくは、1〜9個のC原子、好ましくは2〜5個のC原子を有するn−アルキル、n−アルコキシ、2〜9個のC原子、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシまたはアルコキシアルキル、またはハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニルまたはハロゲン化アルコキシ、好ましくは一フッ素化、二フッ素化またはオリゴフッ素化アルキル、アルケニルまたはアルコキシ、最も好ましくはn−アルキル、n−アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシまたはアルコキシアルキルであり、
【0020】
01およびY02は、互いに独立して、F、ClまたはCNであり、および代替的にそれらの1つはHであってもよく、
01およびR02は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルである、
【0021】
で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含むメソゲン媒体、またなかでもキラル化合物を包含するものは、許容可能に高い透明点および/または、温度および/またはUV負荷に対する、および特に後者に対する電圧保持率のかなり高度な安定性を有する媒体の実現を許容することが見出された。
【0022】
本発明の好ましい態様において、本発明による媒体は式IIIで表される化合物をさらに含む。
【化7】
式中
は、上の式IのもとでRに対し与えられる意味の1つを有する。
【0023】
好ましくは、本発明による媒体は、式IVおよびVで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物をさらに含む。
【化8】
【0024】
式中
およびRは、互いに独立して、アルキル、これは直鎖または分枝であり、好ましくは1〜20個のC原子を有し、非置換であるか、F、ClまたはCNにより、好ましくはFにより単置換または多置換されており、およびここにおいて1個または2個以上のCH基は、それぞれの場合において互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−により、Oおよび/またはS原子が互いに直接的に結合しないように任意に置き換えられており、好ましくは、1〜9個のC原子、好ましくは2〜5個のC原子を有するn−アルキル、n−アルコキシ、2〜9個のC原子、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、またはアルコキシアルキル、最も好ましくはn−アルキル、n−アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシまたはアルコキシアルキルであり、
は、HまたはF、好ましくはFであり、
【0025】
【化9】
nおよびmは、互いに独立して、0または1であり、好ましくはmは1である。
【0026】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は好ましくは、その従属式I−1およびI−2で表される、好ましくは式I−2で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の式Iで表される化合物を含む、
【化10】
式中、Rは上の式Iのもとで得られる意味を有し、および好ましくはn−アルキル、最も好ましくはエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシルである。
【0027】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は、式IIIで表されるもう1種の化合物、好ましくはRが、前記式IIIで与えられた意味を有し、より好ましくはn−アルキル、より好ましくはエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、および最も好ましくはn−ブチルである化合物を含む。
【0028】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は、式IIで表されるもう1種の化合物、好ましくは、その従属式II−1〜II−8、好ましくは式II−1〜II−4、最も好ましくは式II−3で表される化合物の群から選択される化合物を含み、
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
式中、Rは、前記式IIで与えられた意味を有し、好ましくはn−ブチルまたはn−ペンチルである。
【0031】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は、式IVで表されるもう1種の化合物、好ましくは、その従属式IV−1〜IV−4、好ましくは式IV−2で表される化合物の群から選択される化合物を含み、
【0032】
【化13】
式中、Rは、前記式IVで与えられた意味を有する。
【0033】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は、式Vで表されるもう1種の化合物、好ましくは、その従属式V−1およびV−2で表される化合物の群から選択される化合物、好ましくは1種または2種以上の式V−1で表される化合物および1種または2種以上の式V−2で表される化合物を含み、
【0034】
【化14】
式中、Rは、前記式Vで与えられた意味を有する。
【0035】
アルキルまたはアルコキシラジカル、すなわち末端CH基が−O−によって置き換えられたアルキルは、本出願において、直鎖または分枝であってもよい。好ましくは、直鎖であり、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有し、したがって好ましくは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシ、さらにノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0036】
オキサアルキル、すなわち末端ではないCH基が−O−によって置き換えられたアルキル基は、好ましくは、例えば、直鎖2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)または3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルあるいは2−、3−、4−、5−、6−,7−、8−または9−オキサデシルである。
【0037】
アルケニル基、すなわち1または2以上のCH基が−CH=CH−によって置き換えられたアルキル基は、直鎖または分枝であってもよい。好ましくは、直鎖であって、2〜10個のC原子を有し、したがって好ましくは、ビニル、プロパ−1−またはプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−またはブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−またはペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−またはヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−またはヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−またはオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−またはノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−またはデカ−9−エニルである。
【0038】
とりわけ好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個以下のC原子を有する基が通常好ましい。
【0039】
1つのCH基が−O−によって置き換えられ、1つのCH基が−CO−によって置き換えられたアルキルにおいて、これらのラジカルは好ましくは隣接している。したがって、これらのラジカルは一緒になって、カルボニルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を形成する。好ましくは、かかるアルキル基は直鎖であり、2〜6個のC原子を有する。
【0040】
したがって、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0041】
2または3以上のCH基が−O−および/または−COO−によって置き換えられているアルキル基、直鎖または分枝であることができる。好ましくは、直鎖であり、3〜12個のC原子を有する。したがって、それは好ましくは、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビスカルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0042】
CNまたはCFによって一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは直鎖である。CNまたはCFによる置換は任意の所望の位置であることができる。
【0043】
ハロゲンによって少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは直鎖である。ハロゲンは好ましくはFまたはClであり、多置換の場合は好ましくはFである。得られる基はまたパーフルオロ基も含む。一置換において、FまたはCl置換基は、任意の所望の位置であることができるが、好ましくはω位である。とりわけ好ましい末端F置換基を有する直鎖基の例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルである。しかし、他の位置のFが排除されるわけではない。
【0044】
ハロゲンは、F、Cl、BrおよびIを意味し、好ましくはFまたはCl、最も好ましくはFである。R〜RおよびRは、極性または非極性基であってもよい。極性基の場合は、好ましくはCN、SF、ハロゲン、OCH、SCN、COR、COORあるいはC原子を1〜4個有する単フッ素化、オリゴフッ素化または多フッ素化アルキルまたはアルコキシ基から選択される。Rは、1〜4個、好ましくは1〜3個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキルである。とりわけ好ましい極性基は、F、Cl、CN、OCH、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHF、CおよびOC、特にF、Cl、CN、CF、OCHFおよびOCFから選択される。非極性基の場合は、好ましくは15個までのC原子を有するアルキルまたは2〜15個のC原子を有するアルコキシである。
【0045】
〜Rのそれぞれは、アキラルまたはキラル基であってもよい。キラル基の場合は、好ましくは式Iで表され:
【化15】
【0046】
式中、
は、1〜9個のC原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシ基あるいは単結合であり、
は、1〜10個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基であり、無置換であるか、F、Cl、BrまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、また1または2以上の隣接していないCH基は置き換えられることができ、それぞれの場合において、互いに独立して、−C≡C−、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−または−CO−S−で、酸素原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、Br、CNまたはQで定義されたとおりのアルキルまたはアルコキシ基であるが、Qとは異なる。
【0047】
式IにおけるQがアルキレンオキシ基である場合において、O原子は好ましくはキラルC原子に隣接している。
【0048】
式Iで表される好ましいキラル基は、2−アルキル、2−アルコキシ、2−メチルアルキル、2−メチルアルコキシ、2−フルオロアルキル、2−フルオロアルコキシ、2−(2−エチン)−アルキル、2−(2−エチン)−アルコキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−アルキルおよび1,1,1−トリフルオロ−2−アルコキシである。
【0049】
特に好ましいキラル基Iは、例えば、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロルプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。非常に好ましくは、2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルおよび1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシである。
【0050】
加えて、例えば、結晶化する傾向が低減されるため、アキラルな分枝アルキル基を含む化合物は時に重要であり得る。この種の分枝基は、通常1つより多くの分枝を含有しない。好ましいアキラルな分枝基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3−メチルブチル)、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシおよび3−メチルブトキシである。
好ましくは、本発明による液晶媒体は、1種または2種以上の反応性化合物、個々に重合可能な化合物を含み、それぞれ1、2または3種以上の反応性基、個々に重合可能な基を含む。メソゲン材料は、好ましくはマトリックスまたはネットワークを形成するポリマーの形態によってブルー相において安定する。
【0051】
ディスプレイ用途における使用に対して、それ自身で純粋なブルー相(BP)を示す典型的な材料の温度範囲は、通常十分に広くはない。かかる材料は、典型的に、数度、例えば約3〜4°しかない狭い温度範囲に及ぶブルー相を有する。よって、ディスプレイなどの実用的な用途に適したかかる材料を作成するためには、ブルー相の温度範囲を拡張するさらなる安定化が必要とされる。
【0052】
ポリマーの形成によってブルー相を安定させるためには、配合したブルー相ホスト混合物を、適切なキラルドーパント(1種または2種以上の好適なキラル化合物)と、および1種または2種以上の反応性化合物、好ましくは反応性メソゲン化合物(RMs)と、都合よく組み合わせる。得られた混合物をLCセル、それぞれディスプレイパネルに充填する。その後、LCセル/パネルを、混合物がブルー相にある所定の温度で保持する。例えば所定の温度でブルー相が観察されるまで加熱または冷却する。この温度を全重合工程中維持する。典型的に、重合工程は、典型的な中圧水銀ランプのUV照射によって制御する。標準条件は、例えば380nmの波長での180秒間、3mW/cmの使用である。LC材料への損傷を避けるために、適切な光学フィルターをさらに使用することができる。
【0053】
得られたブルー相(BP)が安定化されたポリマーの安定性の基準を以下に簡潔に説明する。
【0054】
良質なポリマー安定化を保証することは、ディスプレイ用途におけるPS−BPの使用に対して重要である。ポリマー安定化の質はいくつかの基準によって判断される。光学検査は、良好な重合を保証する。テストセル/パネルで観察された欠陥、および/または曇りは、最適に至らない高分子安定化の指標である。様々な負荷/ストレス条件下での電気光学検査により、PS−BPの長時間安定性が保証される。典型的なディスプレイのパラメーターは、いわゆるメモリー効果(ME)である。メモリー効果は、1または2以上のスイッチングサイクルが実行された後の残留透過の規格化した測定値として、スイッチングオン間のコントラスト比およびスイッチングオフ間のコントラスト比の比として定義される。このメモリー効果の1.0という値は、優れたポリマー安定化の指標である。このメモリー効果の1.1よりも大きい値は、ブルー相の不十分な安定化を示す。
【0055】
本発明は、さらに、式I−T、I−NおよびIIならびに任意に式I−Eおよび任意に式IIIで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物、キラルドーパントおよび式P
−(Sps1−(A−Zn1−A−Q−A−(Z−An2−(Sps2−P
【0056】
式中、各ラジカルは以下の意味を有する:
、Pは、それぞれ互いに独立して重合性基であり、
Sp、Spは、それぞれ互いに独立してスペーサー基を示し、
s1、s2は、それぞれ互いに独立して0または1を示し、
n1、n2は、それぞれ互いに独立して0または1、好ましくは0を示し、
【0057】
は、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CH−、−CHCH−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CF−、−C≡C−、−O−、−CH−、−(CH−、−CF−、好ましくは−CFO−を示し、
61、Z62
、Zは、単結合、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CH−、−CHCH−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CF−、−C≡C−、−O−、−CH−、−(CH−、−CF−を示し、ここでZおよびQまたはZおよびQは同時に−CFO−および−OCF−から選択される基を示さず、
【0058】
、A、A、Aは、それぞれ互いに独立して以下の群から選択されるラジカルを示し:
a) トランス−1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンおよび1,4’−ビシクロヘキシレンからなる群、ここでさらに1または2以上の隣接しないCH基は、−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、さらに1または2以上のH原子はFによって置き換えられていてもよい
b) 1,4−フェニレンおよび1,3−フェニレンからなる群、ここでさらに1または2以上のCH基はNで置き換えらえてもよく、さらに1または2以上のH原子はLによって置き換えられていてもよい
【0059】
c) テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロフラン−2,5−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイルおよびセレノフェン−2,5−ジイルからなる群、このそれぞれはまた、Lで一置換または多置換されていてもよい
d) 飽和、部分飽和または完全不飽和であり、任意に置換されている、5〜20個の環状C原子を有する多環式ラジカルからなる群、ここでさらに1または2以上のC原子はヘテロ原子で置き換えられていてもよく、好ましくは、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、
【0060】
【化16】
からなる群から選択され、
【0061】
ここでさらに、これらのラジカルにおける1または2以上のH原子はLで置き換えられていてもよく、および/または1または2以上の二重結合は単結合で置き換えられていてもよく、および/または1または2以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、
【0062】
Lは、それぞれ存在する場合に、同一または異なって、F、Cl、CN、SCN、SFまたは各場合において任意にフッ素化された1〜12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを示し、
、R00は、それぞれ互いに独立してH、Fまたは1〜12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキルを示し、ここでさらに1または2以上のH原子はFによって置き換えられていてもよく、
【0063】
Mは、−O−、−S−、−CH−、−CHY−または−CY−を示し、および
およびYは、それぞれ互いに独立して前記R03で示された意味の1つを有し、あるいはClまたはCNを示し、およびあるいは、YおよびYは、−OCF、好ましくはH、F、Cl、CNまたはCFを示す、
【0064】
で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物を含むLC媒体に、ならびに1種または2種以上の式Pで表される化合物単独の重合によって、または1種または2種以上のさらなる重合性化合物の、それぞれの混合物からの組み合わせで得られるポリマー安定化システム、およびブルー相を有する電気光学ディスプレイにおける該安定化システムの使用に関する。
【0065】
本発明によって好ましく使用される式Pで表される化合物は、以下の式からなる群から選択される:
【化17】
【0066】
【化18】
【0067】
【化19】
【0068】
式中、
Lは、それぞれ存在する場合に、同一または異なって、本明細書中で示した意味の1つを有し、rは、0、1、2、3または4を示し、sは、0、1、2または3を示し、nは、1〜24、好ましくは1〜12、極めて特に好ましくは2〜8の整数を示し、ここでラジカルが単結合または二重結合の端に表示されていない場合、これは末端のCHまたはCH基である。
【0069】
式P1〜P24において、
【化20】
は、好ましくは以下の式:
【化21】
特に好ましくは
【化22】
からなる群から選択される基を示す。
【0070】
基A−Q−Aは、好ましくは式
【化23】
式中、少なくとも1つの環は、少なくとも1つの基L=Fで置換されている
で表される基を示す。
ここでのrは、それぞれの場合に独立して、好ましくは0、1または2である。
【0071】
式Pおよびその従属式で表される化合物において、PおよびPは、好ましくはアクリレートまたはメタクリレート、さらにはフルオロアクリレートを示す。
式Iおよびその従属式で表される化合物において、SpおよびSpは、好ましくは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−O−CO−および−(CHp1−O−CO−O−ならびにこれらの鏡像からなる群から選択されるラジカルを示し、ここでp1は、1〜12、好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1、2または3を示し、これらの基はO原子が直接隣接しないように、PおよびPに結合している。
【0072】
式Pで表される化合物のうち、特に好ましいものは、
− ラジカルPおよびPが、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド基からなる群から選択される、特に好ましくはアクリレートまたはメタクリレート基である、
【0073】
− ラジカルSpおよびSpは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−O−CO−および−(CHp1−O−CO−O−ならびにこれらの鏡像からなる群から選択され、ここでp1は1〜12、好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1、2または3を示し、これらのラジカルはO原子が直接隣接しないように、PまたはPに結合している、
化合物である。
【0074】
本発明の好ましい態様によって好ましく使用される式Pで表される化合物は、正確に2つの環を含むものであり(n1=n2=0)、これは好ましくは6員環である。極めて好ましくは以下の式から選択される化合物であり:
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
式中、P、P、Sp、Sp、s1およびs2は、前記式Pで定義されたとおりであり、好ましくは、Spa/bは、アルキレン−(CH−、式中nは、好ましくは3、4、5、6または7であり、およびPa/bは、好ましくはメタクリレートまたはアクリレート部分である。極めて好ましくは、式Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、PhおよびPiの群から選択される化合物、特には式Paで表される化合物である。
【0078】
式Pにおいて、部分「A−Q−A」は、好ましくは式
【化27】
式中、好ましくは2つのフェニル環の少なくとも1つが、少なくともHではない1つのLで置換され、rは、それぞれの環で独立しており、好ましくはそれぞれの環で0、1または2である、で表される部分である。
【0079】
式P、ならびにその従属式で表される化合物について、好ましくは、PおよびPは、互いに独立して、好ましくはアクリレートまたはメタクリレートであり、あるいはフルオロアクリレートでもあり、
SpおよびSpは、互いに独立して、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−O−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−、−CO−O−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−O−または−(CHp1−O−CO−O−であり、式中、p1は、1〜12、好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1、2または3であり、これらの部分は、O原子が直接別のO原子に隣接しないように、PまたはPに結合している。
【0080】
とりわけ好ましくは、式P、式中、
− PおよびPが、ビニルオキシ基、アクリレート基、メタクリレート基、フルオロアクリレート基、クロロアクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基、特に好ましくはアクリレートまたはメタクリレートであり、
【0081】
− SpおよびSpは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−O−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−、−CO−O−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−O−または−(CHp1−O−CO−O−であり、ここでp1は1〜12、好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1、2または3であり、これらの部位は、O原子が別のO原子に直接隣接しないように、PまたはPに結合している、で表される化合物の使用である。
【0082】
本発明によるポリマー安定化ディスプレイの生産のために、1つの化合物または2つ以上の化合物が、2または3種以上の重合性基を含む場合には、LCディスプレイの基板間のLC媒体中で、電圧を印加し、in-situ合成によって、重合性化合物を重合または架橋する。重合は1工程で行うことができる。また、まず第1のステップで電圧の印加により重合化を実行してプレチルト角を作り出し、次いで、第2の重合化ステップにおいて電圧印加なしに、第1のステップで反応しなかった化合物を重合化または架橋すること(「最終硬化」)も可能である。
【0083】
好適で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合、好ましくは光重合、特にUV光重合である。1または2以上の開始剤もまた任意に添加することができる。重合のための好適な条件および開始剤の好適なタイプおよび量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。フリーラジカル重合に好適なものは、例えば、市販の光開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba AG)である。開始剤を用いる場合、その割合は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。
【0084】
本発明による重合性化合物は開始剤のない重合にも好適であり、これは、例えば低い材料費および特に予想される残余量の開始剤またはその分解産物によるLC媒体の低コンタミネーションなどの大きな利点を伴う。したがって、重合は開始剤の添加なしでも行うことができる。よって、好ましい態様において、LC媒体は重合性開始剤を含まない。
【0085】
重合性成分またはLC媒体はまた、例えば貯蔵または輸送の間のRMsの不要な自然重合を防ぐために、1種または2種以上の安定剤を含んでもよい。安定剤の好適なタイプおよび量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。特に好適なものは、例えばIrganox(登録商標)(Ciba AG)シリーズからの市販の安定剤、例えばIrganox(登録商標)1076などである。安定剤を用いる場合、その割合は、RMsの全量または重合性成分の全量に基づいて、好ましくは10〜10,000ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0086】
本発明によって好ましく使用される式Pで表される重合性化合物は、個々に重合することができるが、2または3種以上の本発明による重合性化合物を含む混合物、あるいは1または2種以上の本発明による重合性化合物と好ましくはメソゲン性または液晶である1または2種以上のさらなる重合性化合物(コモノマー)とを含む混合物を重合することもできる。かかる混合物の重合の場合、コポリマーを形成する。好ましくは、本発明による2種または3種以上の混合物、あるいは1または2種以上の本発明による重合性化合物と1または2種以上のさらなる重合性化合物(コモノマー)を一緒に含む混合物が使用される。本発明は、さらに本明細書中に記す重合性混合物に関する。重合性化合物およびコモノマーはメソゲン性または非メソゲン性、好ましくはメソゲン性または液晶である。
【0087】
本発明によるポリマー安定化ディスプレイのためのポリマー前駆体に使用するための好適で好ましいコモノマーは、例えば以下の式から選択される:
【化28】
【0088】
【化29】
【0089】
【化30】
【0090】
【化31】
【0091】
式中、パラメーターは以下の意味を有する:
およびPは、それぞれ互いに独立して、重合性基、好ましくは本明細書中のPに対して与えられた意味の1つを有し、特に好ましくはアクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニルオキシ基またはエポキシ基であり、
SpおよびSpは、それぞれ互いに独立して、単結合またはスペーサー基、好ましくは本明細書中のSpに対して与えられる意味の1つを有し、特に好ましくは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−CO−O−または−(CHp1−O−CO−O−、ここでp1は1〜12の整数であり、最後に記した基は、O原子を介して環に結合しており、
【0092】
あるいはまた、1または2以上のP−Sp−およびP−Sp−はRaaであってもよく、但し、化合物に存在するP−Sp−およびP−Sp−の少なくとも1つはRaaではなく、
【0093】
aaは、H、F、Cl、CNあるいは1〜25個のC原子を有する直鎖または分枝アルキルであり、ここで1または2以上の隣接しない−CH−基は、互いに独立して、O原子もS原子も互いに隣接しないように、−C(R)=C(R00)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、およびここでまた、1または2個以上のH原子は、F、Cl、CNまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、特に好ましくは、直鎖または分枝の、任意に一フッ素化または多フッ素化されていてもよい、1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシであり、ここでアルケニル基およびアルキニル基は少なくとも2個のC原子を有し、および分枝基は少なくとも3個のC原子を有し、
【0094】
、R00は、それぞれ存在する場合に、互いに独立してHまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立して、H、F、CHまたはCFであり、
【0095】
は、−O−、−CO−、−C(R)−または−CFCF−であり、
およびZは、それぞれ互いに独立して、−CO−O−、−O−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−または−(CH−であり、ここでnは2、3または4であり、
Lは、それぞれ存在する場合に、互いに独立して、F、Cl、CN、SCN、SFあるいは直鎖または分枝の、任意に一フッ素化または多フッ素化された1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、好ましくはFであり、
L’およびL’’は、それぞれ互いに独立して、H、FまたはClであり、
【0096】
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2であり、および
xは、0または1である。
【0097】
本出願によるディスプレイに使用するための、メソゲン媒体がブルー相にある温度で作動できるおよび/または作動する好適で好ましいコモノマーは、例えば単反応性化合物の群から選択され、これはポリマー安定化システムの前駆体中に、1〜9重量%、特に好ましくは4〜7重量%の範囲の濃度で存在する。好ましい単反応性化合物は、式M1〜M29、式中、P−Sp−およびP−Sp−はRaa残基である、で表される化合物であり、該化合物は単一の反応性基を有するのみである。
【0098】
特に好ましい単反応性化合物は、以下の式
【化32】
式中、P、SpおよびRaaは、それぞれ前記で与えられた意味を有する
で表される化合物である。
【0099】
これらの中で、式
【化33】
式中、nは、1〜16、好ましくは2〜8の範囲の整数、好ましくは偶数の整数であり、
mは、1〜15、好ましくは2〜7の範囲の整数である、
で表される化合物がとりわけ好ましい。
【0100】
特に好ましいものは、LC媒体またはその中の重合性もしくは重合した成分が、式:
【化34】
式中、P、P、Sp、Sp、s1、s2およびLは、本明細書中に表示する意味を有し、rは、0、1、2、3または4を示し、およびZおよびZは、それぞれ互いに独立して、−CF−O−または−O−CF−を示し、好ましくはZは、−CF−O−でありおよびZは、−O−CF−でありあるいはその逆であり、および、最も好ましくは、Zが−CF−O−であり、およびZが−O−CF−である、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、LC媒体、LCディスプレイまたは本明細書に記載したとおりの使用である。
【0101】
式Iで表される化合物は、専門家に公知の通常の方法により入手できる。例えば出発材料は以下のタイプの化合物であってもよく、それは市販であるか、公開された方法により入手できるかのいずれかである。
好ましくは、本発明による液晶媒体は、式Iで表される化合物を含む、好ましくは主にこれらからなる、最も好ましくは完全にこれらからなる成分Aを含有する。
【0102】
本出願における「含む(comprising)」とは、組成物の文脈において、参照される実体、例えば媒体または成分が、問題となっている化合物(単数)または化合物(複数)を、好ましくは10%以上の、および最も好ましくは20%以上の総濃度で含有することを意味する。
本文脈において、「主に・・・からなる(predominantly consisting)」とは、参照される実体が、80%以上、好ましくは90%以上、および最も好ましくは95%以上の問題となっている化合物(単数)または化合物(複数)を含有することを意味する。
【0103】
本文脈において、「完全に・・・からなる(entirely consisting)」とは、参照される存在物が、98%以上、好ましくは99%以上、および最も好ましくは100.0%の問題となっている化合物(単数)または化合物(複数)を含有することを意味する。
本出願による媒体に含有される本出願による化合物の濃度は、好ましくは0.5%以上〜70%以下の範囲であり、より好ましくは1%以上〜60%以下の範囲であり、最も好ましくは5%以上〜50%以下の範囲である。
【0104】
好ましい態様において、本発明によるメソゲン変調媒体は、以下のものを含む。
− 式IおよびIIで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を、好ましくは1%〜25重量%の濃度で、
− 任意に、好ましくは必須で、式IVおよびVで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物
− ≧20μm−1のHTPを有する1種または2種以上のキラル化合物を、好ましくは1%〜20重量%の濃度で、および
− 重合化に際し、ブルー相の相範囲を安定化することができる、および好ましくは安定化せしめる、および/または電気光学効果の温度依存性を低下させる、反応性化合物を含む、好ましくは反応性メソゲンを含む、任意に、好ましくは必須の、ポリマー前駆体。
【0105】
本発明の混合物は好ましくは、式IおよびIIおよび任意にIIIで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を、好ましくは合計濃度で40%以上〜80%以下、好ましくは45%以上〜75%以下および最も好ましくは50%以上〜70%以下の範囲で含む。
【0106】
特に、本発明の混合物は好ましくは、式Iで表される1種または2種以上の化合物を、合計濃度で40%以上〜80%以下、好ましくは45%以上〜75%以下、および最も好ましくは50%以上〜70%以下の範囲で含む。
【0107】
本発明の混合物が式IIで表される1種または2種以上の化合物を含む場合、これらの化合物の合計濃度は好ましくは、1%以上〜15%以下、好ましくは2%以上〜10%以下、および最も好ましくは4%以上〜8%以下の範囲である。
【0108】
本発明の混合物が式IIIで表される1種または2種以上の化合物を含む場合、これらの化合物の合計濃度は好ましくは、1%以上〜20%以下、好ましくは2%以上〜15%以下、および最も好ましくは3%以上〜10%以下の範囲である。
【0109】
本発明の混合物が式IVで表される1種または2種以上の化合物を含む場合、これらの化合物の合計濃度は好ましくは、1%以上〜15%以下、好ましくは2%以上〜10%以下および、最も好ましくは、4%以上〜8%以下の範囲である。
【0110】
本発明の混合物が式Vで表される1種または2種以上の化合物を含む場合、これらの化合物の合計濃度は好ましくは、5%以上〜45%以下、好ましくは15%以上〜40%以下および最も好ましくは25%以上〜35%以下の範囲である。
【0111】
好適なキラル化合物は、20μm−1以上、好ましくは40μm−1以上および最も好ましくは60μm−1以上のらせんねじれ力の絶対値を有するものである。HTPは、20℃の温度で液晶媒体MLC−6260中で測定される。
【0112】
本発明によるメソゲン媒体は、メソゲン構造を有し、好ましくはそれ自身で1種類以上の中間相、特に少なくとも1つのコレステリック相を呈する1種類または2種以上のキラル化合物を好ましくは含む。メソゲン媒体に含まれる好ましいキラル化合物は、とりわけ、コレステリル−ノナノエート(CN)、R/S−811、R/S−1011、R/S−2011、R/S−3011、R/S−4011、R/S−5011、CB−15(Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ国)などの良く知られているキラルドーパント類である。好ましくは、1または2以上のキラル部位および1または2以上のメソゲン基を有するか、またはキラル部位と一緒にメソゲン基を構成する1種または2種以上の芳香族または脂環式部位を有するキラルドーパントである。より好ましくは、DE 34 25 503、DE 35 34 777、DE 35 34 778、DE 35 34 779、DE 35 34 780、DE 43 42 280、EP 01 038 941およびDE 195 41 820に開示されるキラル部位およびメソゲンキラル化合物であり、参照によりその開示が本出願に組み込まれる。特に好ましくは、EP 01 111 954.2に開示されるキラルビナフチル誘導体、WO 02/34739に開示されるキラルビナフトール誘導体、WO 02/06265に開示されるキラルTADDOL誘導体、ならびに、WO 02/06196およびWO 02/06195に開示される、少なくとも1つのフッ素化されたリンカーおよび1つの末端キラル構造成分または中央キラル構造成分を有するキラルドーパントである。
【0113】
本発明のメソゲン媒体は、約−30℃〜約90℃の範囲、特には約70℃または更に80℃までの範囲の特性温度、好ましくは透明点を有する。
本発明の混合物は、1種または2種以上(2種、3種、4種または5種以上)のキラル化合物をそれぞれ1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲で含有する。特に好ましくは、1種または2類以上のキラル化合物を合計で3〜15重量%含むものである。
【0114】
好ましい態様を以下に示す;
− 媒体が式Iで表される、好ましくは式I−2で表される1種、2種、3種、4種または5種以上の化合物を含む、および/または
− 媒体が、式IIで表される、好ましくは式II−3で表される1種、2種または3種以上の化合物を含む、および/または、
− 媒体が、式IIIで表される1種または2種以上の化合物を含む、および/または、
【0115】
− 媒体が、式IV、好ましくはIV−2で表される1種、2種または3種以上の化合物を含む、および/または、
− 媒体が、式Vで表される1種、2種、3種または4種以上の化合物を含む、および/または、
− 媒体が、20μm−1以上のらせんねじれ力を有する1種、2種、3種または4種以上のキラル化合物を含む、および/または、
− 媒体が、1種、2種または3種以上の反応性化合物、好ましくは式Pで表される化合物、好ましくは1種または2種以上のその従属式で表される化合物、ならびに/または式M1〜M29の群から選択される、好ましくはM16−Aおよび/またはM17−A、より好ましくは式M17−A’で表される、1種または2種以上の反応性メソゲン化合物を含む。
【0116】
式I−TおよびI−Nならびに任意に式I−Eで表される化合物を比較的少量の割合で、従来の液晶材料、特に、式IIおよびIIIで表される1種または2種以上の化合物と混合することで、作動電圧を低下させ、作動温度範囲を拡大させることが見出された。特に好ましくは、式I−TおよびI−Nならびに任意に式I−Eで表される1種または2種以上の化合物に加え、式IIIで表される化合物を1種または2種以上、特に、Rがn−ブチルである式IIIで表される化合物を含む混合物である。
式I−T、I−N、I−EおよびII〜Vで表される化合物は、無色で、安定であり、お互いにおよび他の液晶材料と容易に混和する。
【0117】
式I〜Vで表される化合物が無色である場合、安定でありならびに互いにおよび他の液晶材料とともに容易に混和する。
【0118】
式IおよびIIおよびIIIで表される化合物の最適な混合比は、所望の特性に、式I、IIおよび/またはIIIで表される成分の選択に、および存在しうる任意の他の成分の選択に実質的に依存する。上に示される範囲内での好適な混合比は、場合によって容易に決定することができる。
【0119】
本発明による混合物における式IおよびIIおよび任意にIIIで表される化合物の合計量は、多くの場合において重大でない。それゆえ混合物は、さまざまな特性の最適化の目的のために1つまたは2つ以上のさらなる成分を含むことができる。しかし、式IおよびIIおよび任意にIIIで表される化合物の合計濃度が高いほど、作動電圧および作動温度範囲への観察される効果は一般的により大きい。
【0120】
特に好ましい態様において、本発明による媒体は式IおよびIIおよび任意にIIIのそれぞれで表される1つまたは2つ以上の成分を含む。式Iで表される化合物での好ましい相乗効果により、特に有利な特性をもたらされる。特に、式Iで表されるおよび式IIで表されるおよび/または式IIIで表される化合物を含む混合物は、それらの低い作動電圧により識別される。
【0121】
本発明による媒体において用いることができる、式I、II〜III、IVおよびVで表される個々の化合物は、公知であるか、または公知の化合物と類似して製造できることができるかのいずれかである。
【0122】
偏光子、電極基板および表面処理電極からの本発明によるMLCディスプレイの構造は、この種のディスプレイに対する従来の構造に対応する。従来の構造なる用語は、本明細書では広範に及び、MLCディスプレイの全ての派生型および改変型を網羅し、特に、多結晶シリコンTFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子が挙げられるが、特に好ましくは、一方のみの基体の直上に電極を有する、すなわち、IPSディスプレイで使用されるようないわゆる櫛形(inter-digital)電極を有するディスプレイであり、好ましくは、確立された構造の1つである。
【0123】
しかし、本発明によるディスプレイと、ねじれネマチックセルに基づく従来のディスプレイとの間の重大な相違は、液晶層の液晶パラメーターの選択にある。
【0124】
本発明による媒体は、それ自身、従来の方法に従い調製される。一般に、成分を互いに、有利には高温で溶解する。好適な添加剤により、本発明による液晶相を、これまで開示されてきた液晶ディスプレイ素子の全ての種で使用できるように改変できる。この種の添加剤は当業者には既知であり、文献に詳細に記載されている(H.KelkerおよびR.Hatz、Handbook of Liquid Crystals、Verlag Chemie、Weinheim、1980)。例えば、多色性色素を着色ゲスト−ホスト系の調製のために添加でき、または誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するために物質を加えることができる。さらに、安定剤および抗酸化剤を加えることができる。
【0125】
本発明による混合物は、TN、STN、ECBおよびIPS用途および等方性スイッチングモード(isotropic switching mode)(ISM)用途に適している。それゆえ、本発明による化合物を少なくとも1種含む液晶媒体を含む電気光学デバイスにおける使用および電気光的デバイスは、本発明の主題である。
【0126】
本発明の混合物は、光学的等方状態で作動するデバイスに、非常に好適である。本発明の混合物は、驚くべきことに、それぞれの使用に非常に好適であることが見出される。
【0127】
光学的等方状態で作動されるまたは作動可能な電気光学装置は、最近、ビデオ、TVおよびマルチメディア用途に関して興味が持たれてきている。これは、液晶の物性に基づく電気光学効果を利用する従来の液晶ディスプレイが、前記の用途で好ましくない、より長いスイッチング時間を示すためである。更に、従来のディスプレイの殆どがコントラストの視野角依存性が著しく、つまりこの好ましくない特性を補償する方法が必要となってきている。
【0128】
等方状態における電気光学効果を利用する装置に関しては、例えば、独国特許出願DE 102 17 273 A1に、変調のためのメソゲン制御媒体が作動温度で等方相である光制御(光変調)素子が開示されている。これらの光制御素子は非常に短いスイッチング時間および良好なコントラストの視野角依存性を有している。しかし、前記素子の駆動または作動電圧は、いくつかの用途において、非常にしばしば不適当に高い。
【0129】
未公開の独国特許出願DE 102 41 301には、駆動電圧を著しく低下できる特定の電極構造が開示されている。しかし、これらの電極は、光制御素子の製造工程を更に複雑なものとする。
【0130】
さらに、例えば、DE 102 17 273 A1およびDE 102 41 301の両者で開示されている光制御素子は、顕著な温度依存性を示す。光学的等方状態の制御媒体における電場により誘発可能な電気光学効果は、制御媒体の透明点に近い温度で最も顕著となる。この範囲において光制御素子の特性電圧は最低値となり、よって最も低い作動電圧が要求される。温度が上昇すると、特性電圧およびそれゆえ作動電圧は著しく上昇する。この範囲での温度依存性の典型的な値は、単位温度当たり約数ボルトから単位温度当たり約十ボルト以上である。
【0131】
DE 102 41 301には等方状態で作動可能または作動される装置として各種の電極構造が記載されている一方で、DE 102 17 273 A1には、等方状態で作動可能または作動される光制御素子中で有益な各種の組成物の等方媒体が開示されている。これらの光制御素子中の閾値電圧の相対温度依存性は、透明点より1℃高い温度で約50%/℃である。温度依存性は温度の上昇に伴い減少し、透明点より5℃高い温度で約10%/℃となる。しかし、電気光学効果のこの温度依存性は、前記光制御素子を利用するディスプレイの多くの実用用途にとっては、高すぎる。対照的に、実用的な使用のためには、少なくとも数℃、好ましくは約5℃以上、より好ましくは約10℃以上、特には約20℃以上の温度範囲にわたって、作動電圧が作動温度に依存しないことが望ましい。
【0132】
本発明の混合物の使用は、上述およびDE 102 17 273 A1、DE 102 41 301およびDE 102 536 06に記載されるような光制御素子中の制御媒体として、前記電気光学作動の作動電圧における広い温度範囲において、非常に適していることが見出された。この場合、光学的等方状態またはブルー相は、殆ど完全または完全に作動温度に依存しない。
【0133】
この効果は、WO 2004/046 805に記載されているメソゲン制御媒体が少なくとも1つのいわゆる「ブルー相」を示す場合、さらにより明らかである。極度に高いキラルねじれを有する液晶は、1または2以上の光学的等方相を有する場合がある。その相がそれぞれのコレステリックピッチを有する場合、これらの相は、十分に広いセル間隔を有するセル中において帯青を呈することがある。それゆえ、それらの相は「ブルー相」とも呼ばれる(GrayおよびGoodby、「Smectic Liquid Crystals,Textures and Structures」、Leonhard Hill、米国、カナダ(1984))。ブルー相を示す液晶の電場の効果は、例えば、H.S.Kitzerow、「The Effect of Electric Fields on Blue Phases」、Mol.Cryst.Liq.Cryst.(1991)、202巻、51〜83頁に記載されており、これまでにブルー相のこれらのタイプは同定されており、即ちBP I、BP II、およびBP IIIであり、それらは電場のない液晶中で観測されることがある。ブルー相(単数)またはブルー相(複数)を示す液晶が電場にさらされる場合、更なるブルー相またはブルー相I、IIおよびIIIとは異なる他の相が出現しうるは特筆すべきことである。
【0134】
本発明の混合物は電気光学光制御素子中において使用でき、
− 1つまたは2つ以上、特に2つの基板;
− 電極アセンブリー;
− 光を偏光する1つまたは2つ以上の素子;および
− 前記制御媒体
を含み;
これにより、前記光制御素子は、それが駆動状態でない場合に制御媒体が光学的等方相である温度において作動される(または作動可能である)。
【0135】
本発明の制御媒体は、約−30℃〜約90℃の範囲内、特には約70℃〜80℃の特性温度、好ましくは透明点を有する。
【0136】
光制御素子の作動温度は、好ましくは、制御媒体の特性温度より高く、通常、前記温度は制御媒体がブルー相へ転移する温度であり;一般に、作動温度は前記特性温度より約0.1度〜約50度高い範囲内であり、好ましくは約0.1度〜約10度の範囲である。作動温度は制御媒体のブルー相への転移温度から制御媒体が等方相へ転移する温度、つまり透明点までの範囲内が非常に好ましい。しかしながら、光制御素子は、制御媒体が等方相である温度においても作動させることができる。
【0137】
(本発明の目的のために、用語「特性温度」は以下の通り定義される:
− 特性電圧が温度の関数として最小値を有する場合、この最小値の温度を特性温度として示し、
【0138】
− 特性電圧が温度の関数として最小値を有さず、制御媒体が1つ以上のブルー相を有する場合、ブルー相への転移温度を特性温度として示す;1つより多いブルー相が存在する場合は、ブルー相への最も低い転移温度を特性温度として示し、
− 特性電圧が温度の関数として最小値を有さず、制御媒体がブルー相を有さない場合、等方相への転移温度を特性温度として示す。
【0139】
本発明の文意において、用語「アルキル」は、本明細書および特許請求の範囲の中の他の所で異なった方法で定義されていない限り、直鎖および分岐の1〜15個の炭素原子を有する炭化水素(脂肪族)基を意味する。炭化水素基は無置換でもよく、F、Cl、Br、IまたはCNからなる群から独立して選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0140】
誘電体はまた、当業者に既知で文献に記載されるさらなる添加剤を含んでもよい。例えば、0〜5%の多色性色素、抗酸化剤または安定剤を添加することができる。
Cは結晶層、Sはスメクチック相、ScはスメクチックC相、Nはネマチック相、Iは等方相、およびBPはブルー相を表す。
【0141】
はX%透過の電圧を表す。よって、例えば、V10は10%透過の電圧を示し、V100は100%透過の電圧を表す(視野角は板表面に対して垂直)。それぞれのVmaxでV100の値に対応する作動電圧において、ton(それぞれのτon)はスイッチ−オン時間を表し、toff(それぞれのτoff)はスイッチ−オフ時間を表す。
【0142】
Δnは光学的異方性を示す。Δεは誘電異方性を示す(Δε=ε−ε、ここで、εは分子の長軸に平行な誘電定数を示し、εはそれに垂直な誘電定数を示す)。電気光学データは、他に明示的に記載されない限り、20℃における透過の一次最小値(すなわち、(d・Δn)値が0.5μm)でのTNセル中で測定される。光学的データは、他に明示的に記載されない限り、20℃で測定される。
【0143】
物性を調整するために、本発明による光変調媒体は更に液晶化合物を任意に含むこともできる。かかる化合物は、専門家に既知である。本発明による媒体中でのそれらの濃度は、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0%〜20%、および最も好ましくは5%〜15%である。
【0144】
好ましくは、本発明の媒体はブルー相の範囲を有するか、1つより多いブルー相が存在する場合は、ブルー相の合わされた範囲を有し、20°以上の、好ましくは40°以上の、より好ましくは50°以上の、最も好ましくは60°以上の幅である。
【0145】
好ましい態様において、この相は少なくとも10℃〜30℃の範囲であり、最も好ましくは少なくとも10℃〜40℃であり、最も好ましくは少なくとも0℃〜50℃であり、ここで、少なくともとは、好ましくは、相が下限より下の温度までに渡り、同時に上限の上までに渡ることを意味する。
【0146】
別の好ましい態様において、この相は少なくとも20℃〜40℃の範囲であり、最も好ましくは少なくとも30℃〜80℃であり、最も好ましくは少なくとも30℃〜90℃である。この態様は、エネルギーを放散し、よってディスプレイを加熱する強力なバックライトを有するディスプレイに特に適している。
【0147】
本出願において、誘電的に正の化合物との用語はΔε>1.5の化合物を記載し、誘電的に中性の化合物は−1.5≦Δε≦1.5の化合物であり、誘電的に負の化合物はΔε<−1.5の化合物である。成分に対しても同様である。Δεは1kHzおよび20℃で決定される。化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中のそれぞれの化合物の10%溶液の結果から決定される。これらの試験混合物の容量は、ホメオトロピックおよびホモジニアス配向有する両方のセル中で決定される。セルの両タイプのセル間隔は、ほぼ20μmである。印加される電圧は周波数1kHzの矩形波で、2乗平均平方根値は典型的には0.5V〜1.0Vであるが、それぞれの試験混合物の容量閾値より常に低く選択される。
【0148】
いずれもドイツ国メルク社製である混合物ZLI−4792が誘電的に正の化合物に対して、混合物ZLI−3086が誘電的に中性ならびに誘電的に負の化合物に対して、それぞれ、ホスト混合物として使用される。化合物の誘電体誘電率は、対象の化合物を加えた時のホスト混合物のそれぞれの値の変化より決定され、対象の化合物の濃度100%へと外挿する。
【0149】
測定温度である20℃でネマチック相を有する化合物はその様に測定され、その他全ては化合物のように扱う。
【0150】
他に明示的に記載しない場合、本出願における閾値電圧との用語は光学的閾値を指し、10%相対コントラスト(V10)で与えられ、飽和電圧との用語は光学的飽和を指し、90%相対コントラスト(V90)で与えられる。容量閾値電圧(V、フレデリクス閾値VFrとも呼ばれる)は、明示的に述べられる場合のみに使用される。
【0151】
本出願で与えられるパラメーターの範囲は、他に明示的に記載しない限り、全て限界値を含む。
【0152】
本出願を通して、他に明示的に記載しない限り、全ての濃度は質量%で与えられ、それぞれの完全混合物に関し、全ての温度は摂氏(セルシウス)度で与えられ、全ての温度差は摂氏度である。全ての物理的特性は「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals、Status、1997年11月、Merck KGaA、ドイツ国」に従って決定されたか、されるものであり、他に特記しない限り20℃の温度で与えられる。光学的異方性(Δn)は波長589.3nmで決定される。誘電異方性(Δε)は周波数1kHzで決定される。閾値電圧ならびに他の電気光学特性は、Merck KGaA、ドイツ国によって製造されたテストセルで決定された。
【0153】
Δεを決定するためのテストセルは22μmのセル間隔を有していた。電極は1.13cmの面積の循環ITOおよび保護リングを有するものであった。配向層はホメオトロピック配向(ε)にはレシチンであり、ホモジニアス配向(ε)には日本合成ゴム社製のポリイミドAL−1054であった。容量は周波数応答分析器Solatron1260により電圧0.3または0.1Vrmsの正弦波を用いて決定した。電気光学測定で使用した光は白色光であった。使用したセットは、大塚、日本国の商業的に入手可能な装置であった。特性電圧は垂直観測下で決定した。閾値電圧(V10)、中間灰色電圧(V50)および飽和電圧(V90)は、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストで決定した。
【0154】
メソゲン変調材料は、それぞれメルク社の設備で製造された電気光学テストセルに充填された。テストセルは一方の基体側に櫛形電極を有していた。電極の幅は10μm、隣接する電極間の距離は10μm、セルギャップも10μmであった。このテストセルを、直交偏光子の間で電気光学に検討した。
【0155】
低温において、充填されたセルはキラルネマチック混合物に典型的なテクスチャーを示し、電圧を印加しない直交偏光子間で光を透過した。加熱すると、第1温度(T)で混合物は光学的に等方的となり、直交偏光子間で暗くなった。これは、この温度で、キラルネマチック相からブルー相への転移を示す。第2温度(T)までは、セルは印加電圧下で電気光学効果を示し、典型的には数十ボルトで光学的透過が最大となる範囲の一定の電圧である。典型的には、高温では、可視的な電気光学効果に必要な電圧は強く増加し、この第2温度(T)でブルー相から等方相への転移を示している。
【0156】
ブルー相において最も有益に電気光学に混合物を使用できる温度範囲(ΔT(BP))は、T〜Tの範囲として示された。この温度範囲(ΔT(BP))は、本出願の例で与えられる温度範囲である。この温度範囲を超えた温度範囲、即ち、Tより高温でも、作動電圧が著しく上昇する以外は、電気光学ディスプレイを作動できる。
【0157】
本発明による液晶媒体は更なる添加剤およびキラルドーパントを通常の濃度で含むことができる。これらの更なる構成成分の総濃度は、混合物全体に基づいて0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲である。それぞれ使用される化合物それぞれの濃度は、好ましくは0.1〜3%の範囲である。これらおよび同様の添加剤の濃度は、液晶成分の濃度および本出願の液晶媒体の化合物の値および範囲には考慮されない。
【0158】
本発明により発明された液晶媒体は幾つかの化合物からなり、好ましくは3〜30種、より好ましくは5〜20種、最も好ましくは6〜14種である。これらの化合物は従来法により混合される。一般則として、より少量で使用される化合物の必要量を、より多量で使用される化合物に溶解する。温度がより高濃度で使用される化合物の透明点より高い場合、溶解の工程の完了を特に容易に観測できる。しかし、他の従来法により、例えば、いわゆる事前混合法を使用して媒体を調製することも可能であり、それは、例えば、化合物の相同または共晶混合またはいわゆるマルチボトルシステムを使用でき、それ自身で使用できる状態にある混合物の構成成分である。
【0159】
好適な添加剤を加えることで、本発明による液晶媒体を、液晶ディスプレイの全ての既知の種において、またはTN−、TN−AMD、ECB−、VAN−AMDおよび特にPDLD−、NCAP−およびPN−LCDなどの複合系および特にHPDLC中などの液晶媒体を使用することに適切なように改変できる。
【0160】
融点:T(K,N)、T(K,S)またはT(K,I)のそれぞれ、1つのスメクチック相(S)からもう1つのスメクチック相(S)への転移温度:T(S,S)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移温度T(S,N)、透明点:T(N,I)、適用できる場合、液晶のガラス転移温度:T、ならびに本出願を通して任意の他の温度は摂氏度(即ち、セルシウス)で与えられる。
【0161】
式Pおよびその従属式で表される化合物は、当業者に既知のプロセスおよび有機化学の標準作業書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie (有機化学の手法)、Thieme-Verlag、Stuttgartに記載のプロセスと同様に製造することができる。
【0162】
式Pおよびその従属式で表される化合物の、特に好適で好ましい製造方法は、一例として以下のスキームで示され、好ましくは1または2以上の以下に記載する工程を含む。
【0163】
当業者は、好適な方法で合成を改変することができ、およびこれにより本発明による化合物をさらに得ることができるであろう。アルコキシスペーサーまたは環に直接結合したアクリレートを含有する特に好ましい化合物は、例えばフェノール誘導体の反応、例えば化合物12のジチアニリウム塩13との反応などによって得ることができる。ここで最初に形成される化合物14は、化合物15に変換される。ヒドロキシル基は、続いて好適な方法、例えばメタクリル酸を用いたエステル化によって官能化される(スキーム1参照)。
【0164】
特に好ましい態様において本発明により使用される式P、式中、環は−CF−O−基によって結合されており、反応性基はアルキレンスペーサーを介して付加されている、で表される化合物は、以下のスキームにより製造することができる。
【0165】
スキーム1:C−C−単結合によって結合したスペーサーを有する式Pで表される化合物の例示的な合成
【化35】
【0166】
本発明においておよびとりわけ以下の例において、メソゲン化合物の構造は、頭文字とも呼ばれる略号で表示されている。これらの頭文字において、化学式は以下の表A〜Cに従って略されている。全ての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n−1、C2m−1およびC2l−1は、それぞれn、mおよびl個のC原子を有する直鎖のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1E−アルケニルを示す。表Aは化合物のコア構造の環要素に対して用いられるコードを羅列し、一方で表Bは結合基を示す。表Cは、左手側または右手側の末端基に対するコードの意味を与える。頭文字は、任意の結合基と環要素のコードから構成され、1番目のハイフンおよび左手側末端基のコード、2番目のハイフンおよび右手側末端基のコードが続く。表Dに化合物の例示構造をそれぞれの略号と共に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
表中、nおよびmはそれぞれ整数を示し、3つの点「…」は、この表中の他の略号のためのプレースホルダーである。
【0171】
以下の表に、それぞれの略号をともに有する例示構造を示す。これらは略号の規則性の意味を例示するために示す。これらは、さらに好ましく使用される化合物を表す。
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
表中、n(、mおよびl)は、好ましくは、互いに独立して、1〜7、好ましくは2〜6の整数を示す。
【0175】
以下の表、表Eは、本発明によるメソゲン媒体において安定剤として使用することができる例示化合物を示す。
【表8】
【0176】
【表9】
【0177】
【表10】
【0178】
【表11】
【0179】
本発明の好ましい態様において、メソゲン媒体は表Eの化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含む。
【0180】
以下の表、表Fには、本発明によるメソゲン媒体においてキラルドーパントとして好ましく使用することができる例示化合物を示す。
【表12】
【0181】
【表13】
【0182】
【表14】
【0183】
本発明の好ましい一態様において、メソゲン媒体は表Fの化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含む。
【0184】
本出願によるメソゲン媒体は、好ましくは、上記表からの化合物からなる群から選択される、2種または3種以上、好ましくは4種または5種以上の化合物を好ましく含む。
【0185】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、
− 7種または8種以上、好ましくは8種または9種以上の化合物、好ましくは表Dの化合物の群から選択される3種または4種以上、好ましくは4種または5種以上の異なる式を有する化合物、
を含む。
【0186】

以下の例は、本発明をいかようにも制限することなく説明する。
しかし、物性は当業者に、達成することができる特性および彼らが改変できる範囲を示している。したがって、特に、好ましく達成することができる様々な特性の組み合わせは、当業者に対して十分に定義される。
【0187】
以下の表に表示するとおりの組成物および特性を有する液晶混合物を調製し、調査する。
いわゆる「HTP」は、LC媒体中の光学的に活性なまたはキラル物質のらせんねじれ力(μm−1)を示す。他に明示的に示されない限り、HTPは、市販のネマティックLCホスト混合物MLC−6260(Merck KGaA)中で、20℃の温度で測定する。
【0188】
合成例1: アクリル酸6−(4−{[4−(6−アクリロイルオキシヘキシル)フェノキシ]−ジフルオロメチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキシル
1.1: 5−ブロモ−2−[(4−ブロモフェノキシ)ジフルオロメチル]−1,3−ジフルオロベンゼン
【化36】
【0189】
まず、92.0g(0.200mol)の2−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−ジチイン−1−イリウムトリフレートを600mlのジクロロメタンに投入し、200mlのジクロロメタン中の52.0g(0.300mol)の4−ブロモフェノールの溶液および45mlのトリエチルアミンを−70℃で添加する。添加が完了したら、混合物を−70℃で一時間撹拌し、160ml(1.00mol)のトリエチルアミントリスヒドロフルオリドを添加し、続いて200mlのジクロロメタン中の51.0ml(0.996mol)のブロミンの溶液を滴加する。1時間後、冷却物を除去し、−10℃まで加温した後、そのバッチを2lの氷水中の310mlの32%水酸化ナトリウム溶液に添加する。有機相を分離し、水で洗浄する。水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を合わせて、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を減圧下で除去し、残渣をヘプタンと共にシリカゲルを通してろ過し、黄色の油状として5−ブロモ−2−[(4−ブロモフェノキシ)−ジフルオロメチル]−1,3−ジフルオロベンゼンを得る。
【数1】
【0190】
1.2: 6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキサ−1−イニル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキサ−5−イナ−1−オール
【化37】
【0191】
まず、10.7g(25.8mmol)の5−ブロモ−2−[(4−ブロモフェノキシ)ジフルオロメチル]−1,3−ジフルオロベンゼンおよび8.00g(81.5mmol)のヘキサ−5−イナ−1−オールを、11.3mlのトリエチルアミンおよび500mlのトルエンに投入し、1.50g(2mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよび0.700g(3.68mmol)のヨウ化銅(I)を添加し、混合物を還流下で終夜加熱する。続いてそのバッチを水に添加し、2N塩酸を用いて中和し、トルエンで3回抽出する。有機相を合わせて、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、初めにトルエンで、次にトルエン/酢酸エチル(4:1)ヘプタンで、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、無色固体として6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキサ−1−イニル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキサ−5−イン−1−オールを得る。
【0192】
1.3: 6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキシル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキサン−1−オール
【化38】
【0193】
6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキサ−1−イニル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)−ヘキサ−5−イナ−1−オールを、THF中、パラジウム/活性炭触媒上で、完了するまで水素化する。触媒をろ別し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をトルエン/酢酸エチル(1:2)でシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、無色固体として6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキシル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキサン−1−オールを得る。
【数2】
【0194】
1.4: 6−(4−{[4−(6−アクリロイルオキシヘキシル)フェノキシ]ジフルオロメチル}−3,5−ジフルオロ−フェニル)ヘキシルアクリレート
【化39】
【0195】
まず、17.0g(37.2mmol)の6−(4−{ジフルオロ[4−(6−ヒドロキシヘキシル)フェノキシ]メチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキサン−1−オール、8.05g(112mmol)のアクリル酸および0.5gのDMAPを、300mlのジクロロメタン中に投入し、75mlのジクロロメタン中の17.3g(112mmol)のEDCの溶液を氷冷しながら滴加する。1h後、冷却物を除去し、そのバッチを室温において終夜撹拌する。溶媒の大部分を減圧で除去し、残渣をジクロロメタンでシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、6−(4−{[4−(6−アクリロイルオキシヘキシル)フェノキシ]ジフルオロメチル}−3,5−ジフルオロフェニル)ヘキシルアクリレートを無色油状として得る。
相挙動: T −71℃ K 13 I。
【0196】
【数3】
【0197】
同様に以下の反応性化合物が得られる。
【化40】
【0198】
【化41】
【0199】
【化42】
【0200】
例1
以下の液晶混合物M−1を調製し、その全般の物性に関して調査する。組成および特性を以下の表に示す。
【0201】
【表15】
【0202】
3.8%のキラル剤R−5011をアキラルな液晶混合物に溶解させ、IPS型セルにおける得られた混合物の電気光学応答を調査する。混合物を、片側の基板側上に櫛形電極を具備する電気光学テストセルに充填する。電極幅は10μmであり、隣接する電極間の距離は10μmであり、セルギャップもまた10μmである。このテストセルを交差偏光子間で電気光学的に評価する。
【0203】
適切な濃度の
a)キラルドーパントR−5011(Merck KGaA、ドイツ国)、
b)式RM−C
【化43】
で表される反応性メソゲンおよび
【0204】
c)式RM−1
【化44】
およびRM−2
【化45】
で表される2つの反応性メソゲン化合物の代替的に1つをそれぞれ、対象の混合物、ここではM−1に添加する。得られた混合物をテストセルに投入し、混合物がブルー相にある適切な温度まで加熱する。その後UV照射する。
【0205】
重合の前に下記に記載のとおり混合物を特性評価する。反応性成分を、その後ブルー相において、1回照射(180s)によって重合させ、得られた媒体を再特性評価する。
【0206】
重合の詳細な記載
サンプルを重合する前に、約10ミクロンの厚みおよび2×2.5cmの面積を有するテストセルにおいて媒体の相特性を決定する。毛細管現象によって75℃の温度で充填を行う。
【0207】
加熱ステージを備える偏光顕微鏡下で1℃/分の温度変化で、測定を行う。約3.0mW/cmの有効出力を有するUVランプ(Dymax、Bluewave200、365nm干渉フィルター)で180秒間の照射によって媒体の重合を行う。重合は、電気光学テストセル内において直接行う。
【0208】
まず、媒体がブルー相I(BP−I)である温度において重合を行う。複数の段階的工程で重合を行い、結果として徐々に重合が完了する。通常、重合中に、ブルー相の温度範囲が変化する。従って、それぞれの段階的工程間において、媒体が引き続きブルー相内にあるように温度を適合させる。実際には、このことは、それぞれ約5s以上の照射操作後に偏光顕微鏡下においてサンプルを観察することによって行うことができる。サンプルがより暗くなる場合、これにより等方相への転移が示される。それに応じて、次の段階的工程のための温度を下げる。
【0209】
示される照射強度において最大の安定化の結果となる全照射時間は、典型的には180秒である。さらには、最適化された照射/温度プログラムに従って、重合を行うことができる。
【0210】
あるいは、特に、重合前に既に広いブルー相が存在している場合、1回の照射工程で重合を行うこともできる。
【0211】
電気光学特性評価
上記のブルー相の重合および安定化後、ブルー相の相幅を決定する。引き続き、この範囲内、および、また所望により範囲外の種々の温度において、電気光学特性評価を行う。
【0212】
使用されるテストセルには、片側においてセル表面上に櫛形電極が取り付けられている。セルギャップ、電極間距離および電極幅は、典型的には、それぞれ10ミクロンである。以下では、この均一な寸法を「ギャップ幅」という。電極で覆われている面積は約0.4cmである。テストセルは配向層を有しない。
【0213】
電気光学特性評価のために、直交偏光フィルターの間にセルを配置する。ここで、電極の長軸は、偏光フィルターの軸に対して45°の角度をとる。セル平面に対して直角に、または、偏光顕微鏡上の高感度カメラを用い、DMS301(Autronic-Melchers)を使用して測定を行う。電圧を印加していない状態において、既述の配置は本質的に暗画像を与える(0%透過と定義)。
【0214】
テストセル上で最初に特性作動電圧、次いで応答時間を測定する。下記のとおり、セル電極における作動電圧は、交流正弦(周波数100Hz)および可変振幅の矩形電圧の様式で印加される。
【0215】
作動電圧を増加しながら、透過率を測定する。透過率の最大値の到達をもって、作動電圧の特性量V100と定義する。同等に、最大透過率の10%において、特性電圧V10を定義する。これらの値は、任意にブルー相の領域における種々の温度、どんな場合でも室温(20℃)で測定される。
【0216】
ブルー相の温度範囲の下限域において、比較的高い特性作動電圧V100が観測される。温度範囲の上限域(透明点に近い)においては、V100の値が著しく増加する。最小作動電圧の領域においては、温度と共に、V100のみが通常徐々に増加する。TおよびTによって限定されるこの温度範囲は、使用可能な平坦温度範囲(flat temperature range:FR)といわれる。この「平坦範囲(FR)」の幅は(T−T)であり、平坦範囲幅(width of the flat range:WFR)として既知である。TおよびTの正確な値は、V100/温度図において、平坦曲線部分FRと、隣接する急峻曲線部分とにおける接線の交点によって決定される。
【0217】
測定の第2段階において、スイッチのオンおよびオフの際の応答時間(τon、τoff)を決定する。応答時間τonは、選択された温度においてV100のレベルにおける電圧を印加後に90%強度を達成するのにかかる時間によって定義される。応答時間τoffは、電圧を0Vに低下後にV100における最大強度より出発して90%減少するのにかかる時間によって定義される。また、ブルー相の領域における種々の温度においても、応答時間を決定する。
【0218】
さらなる特性評価として、FR内の温度において、0VおよびV100の間で作動電圧を連続的に変化させて透過率を測定できる。2つの曲線間の相違はヒステリシスとして既知である。例えば、0.5V100における透過率の相違および50%透過における電圧の相違は特性ヒステリシス値であり、それぞれ、ΔT50およびΔV50として既知である。
【0219】
さらなる特性量として、スイッチングサイクルを経る前および後において電圧を印加していない状態での透過率の比を測定できる。この透過率比は「メモリー効果」と言及される。理想的な状態におけるメモリー効果の値は1.0である。1より高い値は、セルをスイッチオンおよびオフした後に過剰な残存透過の形式で、ある程度のメモリー効果が存在することを意味する。また、この値は、ブルー相の作動範囲(FR)内でも決定される。
【0220】
ポリマー前駆体の典型的な濃度は以下の通りである。
【表16】
【0221】
結果を以下の表に整理する。
【表17】
【0222】
ブルー相の温度範囲の下端における約30〜50℃の温度で、単一の照射ステップで重合性混合物を重合させる(詳細については上を参照)。
【0223】
ポリマー安定化液晶媒体は、広汎な温度範囲にわたってブルー相を呈する。
【0224】
本発明によるモノマー(1)を用いて製造したポリマー安定化媒体M1は、従来技術の慣用媒体と比較して、ヒステリシス(ΔV50)の減少およびスイッチオンおよびスイッチオフの際に良好なコントラストを示す。特に、本発明による媒体M1において、スイッチオンおよびスイッチオフの際のコントラストは接近しており、これはブルー相の非常に良好な安定性を意味する。
【0225】
このことから、特に高濃度のキラルドーパントを有する媒体の場合において、本発明によるモノマーはブルー相の安定化に、適していることがわかる。
【0226】
比較例1および2
以下の液晶混合物(C−1)を調製して、その全般の物性に関して調査する。組成および特性を以下の表に示す。
【0227】
【表18】
【0228】
この混合物を処理し、上記例1の下で詳細に記載したとおりに調査する。
結果は以下の表に従う。
【表19】
【0229】
例2
【表20】
【0230】
例3
【表21】
【0231】
例4
【表22】
【0232】
例5
【表23】
【0233】
ポリマー前駆体の典型的な濃度は以下のとおりである。
【表24】
【0234】
【表25】
【0235】
例6
【表26】
【0236】
ポリマー前駆体の典型的な濃度は以下のとおりである。
【表27】
【0237】
【表28】
【0238】
例7
【表29】
【0239】
例8
【表30】
【0240】
例9
【表31】
【0241】
【表32】