特許第6060610号(P6060610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060610
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】屋外タンクの防水施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/00 20060101AFI20170106BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   E04D5/00 D
   E04D5/14 K
   E04D5/14 E
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-227968(P2012-227968)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-80754(P2014-80754A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】塩野 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 剛
(72)【発明者】
【氏名】山口 久治
(72)【発明者】
【氏名】依田 昌弘
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−198384(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/032728(WO,A1)
【文献】 特開2012−153129(JP,A)
【文献】 特開2006−052384(JP,A)
【文献】 特開2000−320085(JP,A)
【文献】 特開2000−273419(JP,A)
【文献】 特開2008−231812(JP,A)
【文献】 特開昭56−064978(JP,A)
【文献】 特開昭58−011689(JP,A)
【文献】 特開平05−098241(JP,A)
【文献】 特開2010−143976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
E04D 5/14
B32B 25/00−25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート、モルタル、アスファルトコンクリート、アスファルトモルタル又はアスファルトサンドにて形成された土台上に設置した屋外タンクの底部と前記土台との境界部分を、防水シートの粘着層を屋外タンクから土台にまたがって貼着することにより被覆する屋外タンクの防水施工方法であって、前記防水シートが基材ゴム層とその上に形成された粘着層とを備え、前記基材ゴムがJIS−Aの硬さが25〜80で、かつ引張り強さが5MPa以上、伸びが200〜700%、クレセント形引裂き強さが7kN/m以上のシリコーンゴムからなり、粘着層が
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:30〜90質量部、
(B)R3SiO1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基であるが、Rはアルケニル基を含む)とSiO2単位とを主成分とし、R3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比が0.5〜1.5である樹脂質共重合体:10〜70質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である)
(C)珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.5〜30質量部、
(D)付加反応触媒:(A)、(B)成分の合計量に対し0.5〜1,000ppm
を含有する付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物から形成され、
該粘着層の硬さがアスカーC硬度で1〜40であり、
該粘着層が前記境界部分を前記屋外タンクから土台にまたがって液密に貼着、被覆することを特徴とする屋外タンクの防水施工方法。
【請求項2】
粘着層のガラスに対する粘着力が0.5〜10N/25mmである請求項1記載の屋外タンクの防水施工方法。
【請求項3】
基材ゴムの厚さが0.2〜5mmであり、粘着層の厚さが0.3〜3mmである請求項1又は2記載の屋外タンクの防水施工方法。
【請求項4】
複数の防水シートを並設して前記境界部分を液密に被覆すると共に、互に隣接する防水シートを重なり部分の幅を5mm以上として液密に重ね合せて貼着するようにした請求項1〜3のいずれか1項記載の屋外タンクの防水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外タンク、特に主に製油所などに多く設置されている大型タンクの底部側と土台部分との境界部分への雨水の浸入を防止するのに有効に用いられる屋外タンクの防水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外タンク、主に製油所などに多く設置されている大型タンクには、その底部側と土台部分との境界部分への雨水の浸入の点で問題があった。この問題の対策として大型タンクの底部側と、土台部分である、例えばコンクリートとの境界部分をブチル系粘着ゴムシートで覆うことで雨水の浸入を防止することが行われていた。しかし、ブチル系粘着ゴムシートは耐候性、耐熱性、耐寒性に問題があり、雨水の浸入を長期間防止することができずに、屋外タンク底部に錆が発生しタンクが破損する危険性があった。
なお、本発明に関連する先行技術としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−198384号公報
【特許文献2】特許第4076673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、長期に亘って物性の低下をきたすことなく使用することができ、長期間に亘って防水性を有する、屋外タンクと土台部分との境界部分に配設、施工するのに好適な屋外タンクの防水施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の屋外タンクの防水施工方法を提供する。
〔1〕
コンクリート、モルタル、アスファルトコンクリート、アスファルトモルタル又はアスファルトサンドにて形成された土台上に設置した屋外タンクの底部と前記土台との境界部分を、防水シートの粘着層を屋外タンクから土台にまたがって貼着することにより被覆する屋外タンクの防水施工方法であって、前記防水シートが基材ゴム層とその上に形成された粘着層とを備え、前記基材ゴムがJIS−Aの硬さが25〜80で、かつ引張り強さが5MPa以上、伸びが200〜700%、クレセント形引裂き強さが7kN/m以上のシリコーンゴムからなり、粘着層が
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:30〜90質量部、
(B)R3SiO1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基であるが、Rはアルケニル基を含む)とSiO2単位とを主成分とし、R3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比が0.5〜1.5である樹脂質共重合体:10〜70質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である)
(C)珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.5〜30質量部、
(D)付加反応触媒:(A)、(B)成分の合計量に対し0.5〜1,000ppm
を含有する付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物から形成され、
該粘着層の硬さがアスカーC硬度で1〜40であり、
該粘着層が前記境界部分を前記屋外タンクから土台にまたがって液密に貼着、被覆することを特徴とする屋外タンクの防水施工方法。
〔2〕
粘着層のガラスに対する粘着力が0.5〜10N/25mmである〔1〕記載の屋外タンクの防水施工方法。
〔3〕
基材ゴムの厚さが0.2〜5mmであり、粘着層の厚さが0.3〜3mmである〔1〕又は〔2〕記載の屋外タンクの防水施工方法。
〔4〕
複数の防水シートを並設して前記境界部分を液密に被覆すると共に、互に隣接する防水シートを重なり部分の幅を5mm以上として液密に重ね合せて貼着するようにした〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の屋外タンクの防水施工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防水シートは、長期に亘って物性の低下をきたすことなく使用することができて、長期間に亘って防水性を有する防水シートを提供できる。特に、基材ゴムの物性を規定することによって長期間の使用に耐えうる防水シートとなり得る。本発明に係る屋外タンクの防水施工方法によれば、簡単な施工法により確実に屋外タンクの底部側を防水できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る防水シートの一実施例を示す断面図である。
図2】屋外タンクの設置状態を示す概略断面図である。
図3】本発明に係る防水施工方法の一実施例を示す一部省略断面図である。
図4】本発明に係る防水施工方法の他の実施例を示す一部省略断面図である。
図5】本発明に係る防水施工方法の別の実施例を示し、(A)は屋外タンク、土台及びその境界部分を防水シートで覆って配置した状態の一部省略平面図、(B)は重なり部分の断面図である。
図6】本発明に係る防水施工方法の更に別の実施例を示し、防水シートの外周縁をシーリング材で接着した状態の一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の防水シートは、基材ゴムの片面に粘着層が積層されてなるもので、通常粘着層上にはカバーフィルムが剥離可能に積層され、使用時にカバーフィルムを剥離し、粘着層を所用個所に貼着するものである。
図1は、かかる防水シート40の一実施例を示すもので、1が基材ゴム、2が粘着層、3がカバーフィルムである。
【0009】
ここで、上記基材ゴムを構成するゴム基体としては、耐熱性、耐候性、耐寒性を有する点からシリコーンゴムを使用する。シリコーンゴムとしては、JIS K 6249に規定されるデュロメーターA硬度計による硬さが15〜90で、かつ引張り強さが3MPa以上、伸びが100〜800%、クレセント形引裂き強さが3kN/m以上であるシリコーンゴムを用いることが、弾力性及びゴム強度、更には施工時の作業性や施工後の耐久性において必要である。これらのゴム特性とシートの特性は複合的であり、硬さや引張強さ、伸び、引裂き強さが上記範囲を外れている場合には、施工時あるいは施工後に不具合が生じる。すなわち、硬さが低い、伸びが大きい場合には、シートは変形しやすくなり、施工時の貼り付け作業がやりにくい、シートを貼り付けた後もずれやすいといった問題が生じる。
【0010】
一方、硬さが高い、伸びが小さい場合には、施工時の貼り付け作業でシートに自在性がないために位置決めに精度が要求されるために作業効率が低下する、施工後に外気温で熱膨張と熱収縮を繰返すタンクに追従せずにずれが生じるといった問題が生じる。
また、引張り強さや引裂き強さが低い場合には、施工時の施工面の凹凸により生じるシートにかかる応力に対応しきれず、切れ、裂け等の損傷を生じやすいといった問題が生じる。
【0011】
基材ゴムのゴム物性について詳しく述べる。JIS K 6249は未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法に規定されており、各引用規格よりなるもので、硬さはJIS K 6253に規定されているデュロメータータイプAによる。本発明の防水シートの基材ゴムの硬さは15〜90であるが、20〜85がより好ましく、25〜80が更に好ましい。
【0012】
引張り強さと伸び(切断時伸び)はJIS K 6251に規定されている試験方法による。上記基材ゴムの引張り強さは3MPa以上であるが、4MPa以上がより好ましく、5MPa以上が更に好ましい。また、伸びは100〜800%であるが、150〜750%がより好ましく、200〜700%が更に好ましい。
【0013】
引裂き強さはJIS K 6252に規定されている試験方法による。本発明の目的には、施工面の凹凸により生じるシートにかかる応力により、シート面に切れ、裂け等の外観の損傷が生じることが考えられるため、クレセント形試験片による引裂き強さを考慮することが望ましい。クレセント形引裂き強さは3kN/m以上であるが、5kN/mがより好ましく、7kN/m以上が更に好ましい。
【0014】
上記シリコーンゴム組成物としては、上記物性を与えるものであれば、いずれの硬化型のものでもよいが、成形が加熱により短時間でできる点から付加(ヒドロシリル化)反応硬化型のシリコーンゴム組成物又は有機過酸化物硬化型のシリコーンゴム組成物から得られたものが好ましい。この付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、ビニル基に代表されるアルケニル基を1分子中に2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、SiH基を2個以上、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(通常、アルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5〜4となる量)と、白金又は白金化合物に代表される白金族金属系付加反応触媒(通常、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに対し白金族金属として1〜1,000ppm)とを含有するものが用いられる。また、有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物としてアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンに硬化剤として有機過酸化物を硬化有効量(通常、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対し1〜10質量部)配合したものが用いられる。有機過酸化物についても、特に限定されないが、パラ−メチルベンゾイルパーオキサイド、オルト−メチルベンゾイルパーオキサイドに代表されるアシル系有機過酸化物や、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサンに代表されるアルキル系有機過酸化物や、パーカーボネート系有機過酸化物、パーオキシケタール系有機過酸化物等が挙げられる。
【0015】
上記シリコーンゴム組成物としては、市販品を用いてもよく、例えば付加反応硬化型シリコーンゴム組成物として、信越化学工業株式会社製KE−541−U、KE−1990−50等が、有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物として、信越化学工業株式会社製KE−971−U、KE−675−U等が用いられる。
【0016】
粘着層は、粘着性を有するシリコーン樹脂又はゲルにて構成されるが、特に、付加硬化型の組成物とすることで、一定のゴム硬度及びゴム強度を有しながら、基材や各種部品と密着し、固定できる粘着性をも有するものとすることができる。
【0017】
ここで、粘着層は、次の(A)〜(D)の成分を含有してなる、硬化物が表面粘着性を有する付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物から形成することが好ましい。
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)R3SiO1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基であるが、Rはアルケニル基を含む)とSiO2単位とを主成分とする樹脂質共重合体、
(C)珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)付加反応触媒
この場合、この付加硬化型シリコーンゴム組成物は、必要により、更に
(E)R'3SiO1/2単位(式中、R'は非置換又は置換の1価炭化水素基であるが、R'はアルケニル基を含まないか、含んでも(B)成分のアルケニル基含有量より少ない量である)とSiO2単位とを主成分とする樹脂質共重合体を含有してもよい。
【0018】
上記付加硬化型シリコーンゴム組成物の(A)成分は、1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、この(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)
1aSiO(4-a)/2 (1)
で示されるものが用いられる。
【0019】
式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。ここで、上記R1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0020】
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、全有機基(即ち、上記の非置換又は置換の1価炭化水素基)R1中、0.0001〜20モル%、好ましくは0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端の珪素原子に結合したアルケニル基を含有するものが好ましい。
【0021】
重合度については特に制限なく、常温で液状のものから生ゴム状のものまで使用できるが、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の平均重合度が50〜20,000、好ましくは100〜10,000、より好ましくは100〜2,000程度のものが好適に使用される。
【0022】
また、このオルガノポリシロキサンの構造は基本的には主鎖がジオルガノシロキサン単位(R12SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R13SiO1/2)又はヒドロキシジオルガノシロキシ基((HO)R12SiO1/2)で封鎖された直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0023】
(B)成分の樹脂質共重合体(即ち、三次元網状構造の共重合体)は、R3SiO1/2単位及びSiO2単位を主成分とする。ここで、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、Rで示される1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0024】
(B)成分の樹脂質共重合体は、上記R3SiO1/2単位及びSiO2単位のみからなるものであってもよく、また必要に応じ、R2SiO単位やRSiO3/2単位(Rは上記の通り)をこれらの合計量として、全共重合体質量に対し、50%以下、好ましくは40%以下の範囲で含んでよいが、R3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R3SiO1/2/SiO2]は0.5〜1.5、特に0.5〜1.3が好ましい。このモル比が0.5より小さくても、1.5より大きくても十分なゴム硬度・強度が得られなくなってしまう。更に、(B)成分の樹脂質共重合体は、好ましくは1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基の含有量が0.0001mol/g以上であり、好ましくは0.0001〜0.003mol/gであり、更に好ましくは0.0002〜0.002mol/gの範囲である。アルケニル基の含有量が0.0001mol/gより少ないと、十分なゴム物性が得られなくなってしまい、0.003mol/gより多いと、硬度が高くなりすぎて粘着力が低下してしまうおそれがある。
【0025】
上記樹脂質共重合体は、常温(25℃)で流動性を有する液状(例えば10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上)のものでも、流動性のない固体状のものであってもよい。この樹脂質共重合体は、通常適当なクロロシランやアルコキシシランを当該技術において周知の方法で加水分解することによって製造することができる。
【0026】
上記(A)、(B)成分の配合量は、(A)、(B)成分の合計を100質量部とした場合、(A)成分は20〜100質量部、特に30〜90質量部であり、(B)成分は0〜80質量部、特に10〜70質量部である。(A)成分が少なすぎると、ゴム弾性がなくなり脆くなってしまい、多すぎると、粘着性、強度が不十分になってしまう。(B)成分が多すぎると、粘着性も低下し、ゴム物性も著しく低下してしまう。
【0027】
本発明においては、(B)成分の樹脂質共重合体に加えて、更に必要により(E)成分の樹脂質共重合体を配合することができる。(E)成分の樹脂質共重合体(即ち、三次元網状構造の共重合体)は、R'3SiO1/2単位及びSiO2単位を主成分とする。ここで、R'は非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、R'で示される1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0028】
(E)成分の樹脂質共重合体は、上記R'3SiO1/2単位及びSiO2単位のみからなるものであってもよく、また必要に応じ、R'2SiO単位やR'SiO3/2単位(R'は上記の通り)をこれらの合計量として、全共重合体質量に対し、50%以下、好ましくは40%以下の範囲で含んでよいが、R'3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R'3SiO1/2/SiO2]が0.5〜1.5、特に0.5〜1.3が好ましい。このモル比が0.5より小さくても、1.5より大きくても粘着性が低下してしまう。更に、(E)成分の樹脂質共重合体は、アルケニル基の含有量が0.0001mol/g未満(即ち、0〜0.0001mol/g)であること、好ましくは0.00005mol/g以下(即ち、0〜0.00005mol/g)であること、より好ましくはアルケニル基を含有しないことである。アルケニル基を0.0001mol/gより多く含有すると、十分な粘着力が得られなくなってしまう。
【0029】
なお、上記樹脂質共重合体は、常温(例えば25℃)で流動性のある液状でも流動性のない固体状のものでもよいが、硬化物の粘着性の点で常温で固体状のものが好ましい。この樹脂質共重合体は、通常適当なクロロシランやアルコキシシランを当該技術において周知の方法で加水分解することによって製造することができる。
【0030】
上記(E)成分を配合する場合、その配合量は(A)、(B)成分の合計量100質量部に対して0〜400質量部、特に0〜300質量部とすることが好ましい。(B)成分が多すぎると、粘着性が低下し、ゴム物性も低下するおそれがある。
【0031】
なお、(B)成分の樹脂質共重合体と(E)成分の樹脂質共重合体との合計中におけるアルケニル基の含有量としては、ゴム物性及び粘着性等の点から0.00001〜0.002mol/g、特に0.00005〜0.001mol/gであることが好ましい。
【0032】
(C)成分は、珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、分子中のSiH基が前記(A)成分、(B)成分及び(E)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個(通常2〜200個)、好ましくは3〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子結合水素原子を有するものが好適に用いられる。ここで、R2の1価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0033】
また、上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの代りに、又はこれに加えてR''2HSiO1/2単位とSiO2単位とを主成分とする樹脂質共重合体、又はR''2HSiO1/2単位とR''3SiO1/2単位とSiO2単位とを主成分とする樹脂質共重合体を用いることができる。ここで、R''は非置換又は置換の1価炭化水素基で、R'と同様なものが例示され、アルケニル基を含まないものが好ましい。上記樹脂質共重合体はR''2HSiO1/2単位又はR''2HSiO1/2単位とR''3SiO1/2単位及びSiO2単位のみからなるものであってもよく、また必要に応じて、R''HSiO2/2単位、R''2SiO2/2単位、HSiO3/2単位、R''SiO3/2単位を合計で全共重合体質量に対し50%以下、好ましくは40%以下の範囲で含んでもよいが、R''2HSiO1/2単位、R''3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[(R''2HSiO1/2+R''3SiO1/2)/SiO2]が0.5〜1.5、特に0.5〜1.3であることが好ましい。
【0034】
上記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0035】
この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)、(B)成分の合計100質量部に対して0.5〜30質量部、特に0.6〜20質量部である。配合量が少なすぎても多すぎても、十分なゴム強度が得られなくなってしまう。また、この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)、(B)、(E)成分中に含まれる珪素原子に結合したアルケニル基に対する(C)成分中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)の量がモル比で、0.2〜1.5、より好ましくは0.25〜1.2、更に好ましくは0.3〜0.9となる量で配合する。
【0036】
(D)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、塩化白金酸とビニルシロキサン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常白金族金属として(A)、(B)、(E)成分の合計量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0037】
上記粘着層の硬さは、基材ゴムの硬さより小さいもので、アスカーC硬度で60以下の正数であることが好ましく、より好ましくは1〜55の範囲であり、更に好ましくは2〜40の範囲である。1未満ではゴムとしての強度が劣る場合があり、60を超えると粘着性が低下してしまう場合がある。
【0038】
また、JIS Z 0237に準拠し、ガラス(日本板硝子株式会社、FL2.0)に粘着し、剥離速度300mm/minで180°ピール試験を行った場合の粘着力が0.5〜10N/25mm、特に0.7〜8N/25mmであることが好ましい。0.5N/25mm未満では粘着層を所用の被貼着部に貼着する場合、被貼着部に対する粘着力が低く、貼り付けに問題があり、10N/25mmを超えると、リワーク性や再付着性に支障をきたす場合がある。実際に施工する場合、タンクの材質例として鋼板、土台の材質例として、コンクリート、アスファルト、モルタル等が挙げられる。防水シートを敷設する材質がガラスである事例は殆どないと考えるが、粘着性の指標として、粘着力を測定するのに測定値が安定していることと、他の材質における粘着性の強弱とガラスに対する粘着力の数値の大小に相関が見られるため、ここで規定する。
【0039】
なお、上記基材ゴム層及び粘着層を形成する組成物には、上述した成分に加え、必要に応じて、その他の成分として、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤や、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤等の充填剤を配合してもよい。更に、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することは、架橋反応を阻害しない限り、任意とされる。
【0040】
上記基材ゴムの厚さは、0.2〜5mm、好ましくは0.5〜5mm、特に0.5〜3mmである。0.2mm未満では、シートの弾性を生かすのに不十分な場合があり、5mmを超えると、重量が高くなり、貼り付けに影響を及ぼし、またコスト的に不利になってしまう場合が生じる。また、粘着層の厚さは、0.3〜3mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜2mmの範囲である。0.3mm未満では粘着層が貼り付ける被貼着部の表面凹凸を吸収できなくなり、3mmを超えると貼り付け面のゴム強度が粘着層に依存してしまいゴム破壊を起こす可能性がある。
【0041】
本発明の防水シートを形成する場合は、まず基材ゴムを形成する。この場合、基材ゴムは、シリコーンゴム組成物等のゴム組成物を用いて単一層として形成してもよく、金属や各種樹脂との複合層として形成してもよく、例えば圧縮成形や注入成形、射出成形等により直接シートを得る方法や、インサート成形により金属基板、樹脂基板、樹脂フィルム上にシートを成形する方法、あるいはディッピング、コーティング、カレンダー成形、スクリーン印刷等により、他の基材と一体化したゴムシートを得る方法等がある。この場合、カレンダー成形が好適に使用できるので好ましい。
【0042】
上記基材ゴム上に粘着層を積層するが、上記基材ゴムを形成する組成物を硬化して基材ゴムを形成した後に粘着層を形成するようにしてもよいし、基材ゴムを形成する組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上にカレンダー成形して分出しして、未加硫の状態で粘着層を形成する組成物を積層してもよい。
【0043】
粘着層を形成する組成物は、基材ゴム層を形成する組成物上に、ディッピング、コーティング、スクリーン印刷等する方法で積層シートを得る方法があり、コーティング成形が好適に使用できるので好ましい。なお、これらの硬化条件としては、80〜250℃で10秒〜1時間の範囲が好ましい。更に、低分子シロキサンを除く等の目的で120〜250℃で1〜100時間程度のアフターキュアを行ってもよい。
【0044】
なお、本発明の防水シートは、通常、図1に示すように、粘着層2上にポリエチレンテレフタレート(PET)シート等のカバーフィルム3が剥離可能に積層されており、使用時にカバーフィルム3を剥離除去し、粘着層2を所用被貼着部に貼着するものである。
【0045】
ここで、本発明の防水シートは、屋外タンクの底部側と土台部分との境界部分における両水浸入防止の目的で敷設、使用することができる。その方法の一例について図2〜4を参照して説明すると、図2は土台20に支持されて設置された屋外タンク30で、この屋外タンク30内には、例えば石油類、アスファルト、種々のガス類等の内容物が収容されている。この屋外タンク30は、通常円柱形をしており、直径10〜80m、高さ10〜50mの大きさで、上記のように土台20に設置されている。なお、図2において、10は地面である。屋外タンク30のタンク底部はアニュラープレート31にて構成され、土台20とアニュラープレート31との境界部分が屋外タンクと土台との境界部分32である。この境界部分32への雨水侵入を防ぎ、タンク底部の錆、タンクの破損を防止する方法の実施形態を以下に記す。
【0046】
なお、土台20はコンクリート、モルタル、アスファルトコンクリート、アスファルトモルタル、アスファルトサンドのいずれかあるいはその組み合せからなる土台と相性のよい防水シート40を用いて施工することが好ましい。
【0047】
防水シートで屋外タンク、土台との境界部分を露出させることなく、その境界部分を完全に覆うことで雨水の浸入を長期間防止することができ、屋外タンク底部すなわちアニュラープレートに錆が発生せず、タンクの破損を防止できる。防水シートで境界部分を覆う一例について図3を参照して説明すると、土台20とアニュラープレート31との境界部分32を覆うように防水シート40を施工する。また、図4のように防水シート40は屋外タンクの側面を覆うように施工してもよい。
【0048】
ここで、防水シートは、通常、複数枚を用い、これら複数枚を前記境界部分に沿って並設し、境界部分全部を防水シートにて被覆するが、この場合、屋外タンクと土台との境界部分で露出しやすい部分は隣り合う防水シート同士の部分である。図5を参照して説明すると、隣り合う防水シートは重ね合わさることが好ましく、その防水シートの重なり部分50の幅は5mm以上が好ましく、10mm以上が更に好ましく、20mm以上がよりいっそう好ましい。防水シートの重なり部分の幅が5mmより小さい場合は施工中に剥がれが生じることがあり、境界部分32を完全に覆うことができず雨水の侵入が発生するおそれがある。防水シート同士が重なり部分が大きくなる、例えば50mm以上の場合は境界部分32全てを覆うための防水シートの必要量が多くなり、コスト高となる。
【0049】
なお、上記防水シートにおいて、土台及びアニュラープレート(屋外タンク)と貼着される防水シートの粘着層の粘着力が、屋外タンクと防水シートとでは0.5〜10N/25mmであり、土台と防水シートとでは0.5〜10N/25mmである防水シートを用いて施工を行うことが好ましい。上記粘着力を有する防水シートを使用することで、屋外タンクと防水シートとの境界、土台と防水シートとの境界からの雨水の侵入を長期間防止することができる。上記粘着力より小さい場合は剥がれが生じやすく、その剥がれの部分から雨水の侵入が発生する。上記粘着力より大きい場合は境界部分を完全に覆うために必要となる施工中の部分的な覆い直しの作業がしづらくなり施工時間がかかってしまう。更に上記粘着力がより大きい場合は覆い直しができなくなり境界部分を完全に覆うことができなくなってしまう。
【0050】
更に、図6に示したように、防水シート40の屋外タンク30側の端縁部及び土台20側に端縁部をシーリング材60にて接着施工することが好ましい。これにより、防水施工がより確実になされる。また、図5(B)に示したように、上記重なり部分50を覆ってシーリング材60にて施工することも好ましい。
シーリング材は公知のシリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系等のいずれのものも使用できるが、シリコーンシーリング材を用いた施工方法が好適である。このようなシーリング材としては、信越化学工業株式会社製のシーラントマスター300、シーラント70、シーラント701等を使用できる。
【0051】
この場合、本発明の防水シートを用いることにより、プライマーレスでの施工が可能になり、大幅に工期を短縮することができる。
即ち、上述したように、製油所などに多く設置されているアニュラープレートとタンク土台部分は法定で定められた雨水防水装置が必要とされている。
【0052】
このため多くは、ブチルゴムを敷き詰めた防水装置が一般的であるが、気候による寒暖の差や、天候、特に雨雪など水分が多く結露などが発生する場合、施工面が乾燥するまで施工できないといった問題点があったが、本発明の防水シートを用いることにより、プライマーレスで施工できるため、接着面に水分が残っていても、ウエス等で十分拭き取るだけで施工が可能となり、天候回復後直ちに施工が開始できるという画期的な特徴を有している。製油所などに設置されている石油系の危険物を保管する大型タンクは数年に一度、消防の保全タンクの検査を受ける。その際に雨水防止装置部分を剥がし、接着部分の確認を行うが、現行のブチルゴム系シートや、シーリング材料、石油系の防水シート等は施工時にプライマーを使用しているため、接着しており、剥がして内部を確認するのに困難であった。
【0053】
本発明による防水シートは粘着力にて防水機能を発揮しているため、シート端部の固定用シール部分を除去するだけで簡単に剥がし内部を観察することができる。
また、再度粘着力で防水機能を発揮できることが大きな特徴である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は質量部、%は質量%を示す。
【0055】
[実施例1]
基材ゴム層に、ミラブル型ジメチルシリコーンゴムコンパウンドKE−675−U(信越化学工業株式会社製100部に、付加(ヒドロシリル化)反応系加硫剤C−19A/B(信越化学工業株式会社製)をそれぞれ0.5/2.5部添加して二本ロールで混練したジメチルシリコーンゴム組成物をカレンダー成形にて、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層に両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が1,000であるジメチルポリシロキサン(1)75部、室温(25℃)で固体の(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、(CH33SiO1/2単位及びSiO2単位からなる樹脂質共重合体(2)[((CH2=CH)(CH32SiO1/2単位+(CH33SiO1/2単位)/SiO2単位(モル比)=0.85、CH2=CH−基含有量:0.0008mol/g]25部を含む50%トルエン溶液を撹拌混合器に入れ、30分混合した後、トルエンを完全に留去した。このシリコーンゴムベース100部に、架橋剤として(CH32HSiO1/2単位とSiO2単位を主成分としたSiH基を有する樹脂質共重合体(4)(SiH基量0.0090mol/g)を0.9部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、粘着剤組成物を得た。
【0056】
上記の基材ゴム層上に、コンマコータを使用して上記粘着剤組成物を1.0mmになるように積層コーティングし、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて2層の積層硬化シートを得た。なお、基材ゴムの硬さはデュロメータータイプA硬度68であり、粘着層の硬さはアスカーC硬度15であった。
得られた積層シートについて基材側PETを剥離して、下記に示す各方法により評価した結果を表1に示す。
なお、防水性の評価には、上記のようにして得た縦30cm×長さ100cmの防水シートを用い、上記の防水シートを屋外タンクの土台との境界部分に図5のように多数連続して敷設した。その際、シーラントはシーラントマスター300を使用し、各防水シートの外周より2cmまでタンク又は土台と接着した。
【0057】
[実施例2]
基材ゴム層に、ミラブル型ジメチルシリコーンゴムコンパウンドKE−675−U(信越化学工業株式会社製100部に、有機過酸化物加硫剤C−23N(信越化学工業株式会社製)を1.0部添加して二本ロールで混練したジメチルシリコーンゴム組成物をカレンダー成形にて、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層の調整、積層方法など以降の手順は実施例1と同様に行なった。
【0058】
[実施例3]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.625モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.350モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ(商品名アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)10部、分散剤として平均重合度4のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン8部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドAを調製した。
上記コンパウンドA100部に対し、付加(ヒドロシリル化)反応系加硫剤C−19A/B(信越化学工業株式会社製)をそれぞれ0.5/2.5部添加して二本ロールで混練したジメチルシリコーンゴム組成物をカレンダー成形にて、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層の調整、積層方法など以降の手順は実施例1と同様に行なった。
【0059】
[実施例4]
基材ゴム層に、ミラブル型ジメチルシリコーンゴムコンパウンドKE−541−U(信越化学工業株式会社製100部に、付加(ヒドロシリル化)反応系加硫剤C−19A/B(信越化学工業株式会社製)をそれぞれ0.5/2.5部添加して二本ロールで混練したジメチルシリコーンゴム組成物をカレンダー成形にて、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層の調整、積層方法など以降の手順は実施例1と同様に行なった。
【0060】
[実施例5]
液状シリコーンKE−1990−50A及びKE−1990−50B(信越化学工業株式会社製)各100部をミキサーで15分間混合した。この液状シリコーン組成物をコンマコータを使用して、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層の調整、積層方法など以降の手順は実施例1と同様に行なった。
【0061】
[比較例1]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.922モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.053モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ(商品名アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)10部、分散剤として平均重合度4のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン15部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドBを調製した。
上記コンパウンドB100部に対し、有機過酸化物加硫剤C−23N(信越化学工業株式会社製)を1.0部添加して二本ロールで混練したジメチルシリコーンゴム組成物をカレンダー成形にて、100μmのシボ付のPETフィルム上に厚さ0.7mmのシート状に成形し、連続して、加熱炉で140℃、10分間加熱硬化させて、PETフィルム上に基材ゴム層が積層されたシートを得た。
粘着層の調整、積層方法など以降の手順は実施例1と同様に行なった。
得られた積層シートについて基材側PETを剥離して、下記に示す各方法により評価した結果を表2に示す。
【0062】
[比較例2]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.150モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ(商品名アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)60部、分散剤として平均重合度4のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン15部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドC−Mを調製した。
上記コンパウンドC−M100部に対し、珪藻土(商品名セライトSF、)70部、分散剤として平均重合度15のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン1部を二本ロールにて添加しコンパウンドCを調製した。
シート成形の方法、粘着層の調整、積層方法など以降の手順は比較例1と同様に行なった。
【0063】
[比較例3]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.892モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.083モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積130m2/gのヒュームドシリカ(商品名アエロジル130、日本アエロジル株式会社製)5部、分散剤として平均重合度4のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン1部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドDを調製した。
シート成形の方法、粘着層の調整、積層方法など以降の手順は比較例1と同様に行なった。
【0064】
[比較例4]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.540モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.435モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、カーボンブラック(商品名デンカブラック、デンカ株式会社製)50部、結晶性シリカ(商品名クリスタライトVX−ST、製)140部、分散剤としてヒドロキシ末端メチルビニルシロキサン1部を添加し、加圧ニーダーにて混練りしてコンパウンドEを調製した。
シート成形の方法、粘着層の調整、積層方法など以降の手順は、コンパウンドEの加硫剤に付加(ヒドロシリル化)反応系加硫剤C−19A/B(信越化学工業株式会社製)をそれぞれ0.5/2.5部を添加する以外は比較例1と同様に行なった。
【0065】
[比較例5]
ジメチルシロキサン単位((CH32SiO2/2)99.930モル%、メチルビニルシロキサン単位((CH2=CH)(CH3)SiO2/2)0.045モル%、ジメチルビニルシロキシ単位((CH2=CH)(CH32SiO1/2)0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積210m2/gの処理シリカ(商品名アエロジルR976、日本アエロジル株式会社製)20部、分散剤として平均重合度4のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン1部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドFを調製した。
シート成形の方法、粘着層の調整、積層方法など以降の手順は比較例1と同様に行なった。
【0066】
各評価項目
・粘着性
得られたシートを幅25mm,長さ10cmに切断し、JIS Z 0237に準拠して日本板硝子株式会社製ガラスFL2.0をアルコールで脱脂し、風乾した4mm厚のガラス板にシートの粘着層側を貼り付け、室温にて300mm/minの速度にて180°ピールでガラスと粘着層とを剥離し、その粘着力を測定した。
・長期貼り付け安定性
4mmの厚さのガラス基板上に、上記作製した粘着シートを幅25mm,長さ10cmに切断し、粘着層側を貼り付けて、室温,50%RHの湿度で1ヶ月保存した後、室温にて300mm/minの速度にて180°ピールでガラスと粘着層とを剥離し、その粘着力を測定した。
・再剥離性
4mmの厚さのガラス基板上に、上記作製した粘着シートを幅25mm,長さ10cmに切断し、粘着層側を貼り付けて、室温,50%RHの湿度で1ヶ月保存した後、室温にて300mm/minの速度にて180°ピールでガラスと粘着層とを剥離し、ガラス面に粘着成分が移行したかどうかを確認した。粘着成分の移行するものは×、移行しないものは○とした。
・変形に対する弾力性
積層フィルムを180°に曲げたときに、積層シートに対するダメージの有無を確認した。変化のないものは○、亀裂・変形のあるものは×とした。
・防水性
初期:施工後1ヶ月間で雨水の浸入がないものは○、雨水の浸入があるものは×とした。
長期:施工後6ヶ月間で雨水の浸入がないものは○、雨水の浸入があるものは×とした。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】
【符号の説明】
【0069】
1 基材ゴム
2 粘着層
3 カバーフィルム
10 地面
20 土台
30 屋外タンク
31 アニュラープレート(屋外タンクの一部)
32 屋外タンクと土台との境界部分
40 防水シート
50 重なり部分
60 シーリング材
図1
図2
図3
図4
図5
図6