(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)下記(a)〜(c)のオルガノハイドロジェンシロキサンの何れか1つを含むオルガノハイドロジェンシロキサンと下記一般式(5)で示されるアルケニル基含有アルコキシシランとをヒドロシリル化反応させて得られるオルガノシロキサン、
及び、
(B)有機金属触媒
を含有することを特徴とする低温硬化性コーティング剤組成物。
(a)下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン。
【化1】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
(b)下記一般式(2)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン。
【化2】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3及びR
4は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
(c)下記一般式(3)で示されるアルキルシランと下記一般式(4)で示されるヒドロシランの加水分解縮合物。
【化3】
(式中、mは0、1又は2、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
1はクロル原子又はOR
5で表されるアルコキシ基であり、R
5は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化4】
(式中、nは0、1又は2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
2はクロル原子又はOR
6で表されるアルコキシ基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化5】
(式中、pは0〜3の整数、qは0、1又は2、R
7及びR
8は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な反応性を有すると共に、耐アルカリ性、耐クラック性に優れた硬化被膜となる低温硬化性コーティング剤組成物及びその硬化物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(i)一分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基(Si−H基)及び一分子中に少なくとも2個の特定の炭素鎖(炭素数3以上のアルキル鎖)を含有するシロキサン化合物(オルガノハイドロジェンシロキサン)と(ii)オレフィン部分及びアルコキシシリル基を含有するシラン化合物とを反応させることにより得られた、一分子中に複数のアルコキシシリル基及び特定の炭素鎖(炭素数3以上のアルキル鎖)を含有するオルガノシロキサン(A)と、有機金属触媒(B)とを含むコーティング剤組成物が、低温硬化性を示し、またその硬化被膜が耐アルカリ性、耐クラック性を有することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の低温硬化性コーティング剤組成物及びその硬化物品を提供する。
〔1〕
(A)下記(a)〜(c)のオルガノハイドロジェンシロキサンの何れか1つを含むオルガノハイドロジェンシロキサンと下記一般式(5)で示されるアルケニル基含有アルコキシシランとをヒドロシリル化反応させて得られるオルガノシロキサン、
及び、
(B)有機金属触媒
を含有することを特徴とする低温硬化性コーティング剤組成物。
(a)下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン。
【化1】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
(b)下記一般式(2)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン。
【化2】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3及びR
4は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
(c)下記一般式(3)で示されるアルキルシランと下記一般式(4)で示されるヒドロシランの加水分解縮合物。
【化3】
(式中、mは0、1又は2、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
1はクロル原子又はOR
5で表されるアルコキシ基であり、R
5は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化4】
(式中、nは0、1又は2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
2はクロル原子又はOR
6で表されるアルコキシ基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化5】
(式中、pは0〜3の整数、qは0、1又は2、R
7及びR
8は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
〔2〕
オルガノハイドロジェンシロキサンが、上記一般式(1)で示される環状シロキサンであることを特徴とする〔1〕記載の低温硬化性コーティング剤組成物。
〔3〕
(A)オルガノシロキサンが、下記一般式(6)で示されることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の低温硬化性コーティング剤組成物。
【化6】
(式中、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、rは2〜5の整数である。)
〔4〕
(A)オルガノシロキサンが、下記一般式(7)で示されることを特徴とする〔3〕記載の低温硬化性コーティング剤組成物。
【化7】
〔5〕
(B)有機金属触媒がチタンを含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の低温硬化性コーティング剤組成物。
〔6〕
実質的に溶剤を含有しないことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の低温硬化性コーティング剤組成物。
〔7〕
使用直前に(A)オルガノシロキサンと(B)有機金属触媒と
を混合
することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の低温硬化性コーティング剤組成物
の製造方法。
〔8〕
〔1〕〜〔
6〕のいずれかに記載の低温硬化性コーティング剤組成物の硬化物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の低温硬化性コーティング剤組成物によれば、その構成成分であるオルガノハイドロジェンシロキサン(i)と、オレフィン部分及びアルコキシシリル基を含有するシラン化合物(ii)とを反応させて得たオルガノシロキサン(A)が、一分子中に複数のアルコキシシリル基及び特定の炭素鎖(炭素数3以上のアルキル鎖)を含有することから、本発明のコーティング剤組成物を基材上に塗布し、硬化させる際に優れた低温硬化性を有すると共に、耐アルカリ性及び耐クラック性に優れた硬化膜を与える。また、上記オルガノシロキサン(A)が環状シロキサン構造を有する場合にはより顕著な低温硬化性を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る低温硬化性コーティング剤組成物は、
(A)下記(a)〜(c)のオルガノハイドロジェンシロキサンの何れか1つを含むオルガノハイドロジェンシロキサンと下記一般式(5)で示されるアルケニル基含有アルコキシシランとをヒドロシリル化反応させて得られるオルガノシロキサン、
及び、
(B)有機金属触媒
を含有することを特徴とするもので、以下に本発明に係る低温硬化性コーティング剤組成物について具体的に説明する。
【0013】
[オルガノシロキサン(A)]
本発明のコーティング剤組成物に含まれるオルガノシロキサンは、
(i)下記(a)〜(c)のオルガノハイドロジェンシロキサンの何れか1つを含むオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(a)下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン、
(b)下記一般式(2)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン、
(c)下記一般式(3)で示されるアルキルシランと下記一般式(4)で示されるヒドロシランの加水分解縮合物、
(ii)下記一般式(5)で示されるアルケニル基含有アルコキシシランと、
をヒドロシリル化反応触媒、例えば白金錯体触媒存在下においてヒドロシリル化して得られる。
【0014】
【化8】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化9】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3及びR
4は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化10】
(式中、mは0、1又は2、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
1はクロル原子又はOR
5で表されるアルコキシ基であり、R
5は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化11】
(式中、nは0、1又は2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
2はクロル原子又はOR
6で表されるアルコキシ基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化12】
(式中、pは0〜3の整数、qは0、1又は2、R
7及びR
8は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【0015】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において、反応温度は15〜150℃であり、好ましくは40〜130℃、より好ましくは70〜120℃である。温度が低すぎると反応が進行しない又は著しく反応速度が低いため、生産性に欠ける場合がある。一方、150℃を超える場合には、熱分解又は意図しない副反応が生じるおそれがある。
【0016】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において、反応時間は10分〜24時間である。反応の進行により原料が十分に消費されるような時間であればよいが、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間である。反応時間が短すぎると原料消費が不十分なおそれがあり、反応時間が長すぎると既に原料が完全に消費されていて不要な工程となり生産効率が低下してしまう場合がある。
【0017】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において、適宜反応溶媒を使用してもよい。原料と非反応性並びに反応に使用する白金錯体の触媒毒とならないようなものであれば特に限定されないが、代表的にはヘキサン、ヘプタンといった脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールといったアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系溶媒が挙げられる。
【0018】
前記オルガノハイドロジェンシロキサン(i)は、下記(a)〜(c)のオルガノハイドロジェンシロキサンの何れか1つを含むオルガノハイドロジェンシロキサン、
(a)下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン、
(b)下記一般式(2)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン、
(c)下記一般式(3)で示されるアルキルシランと下記一般式(4)で示されるヒドロシランの加水分解縮合物
であれば特に限定されず、シロキサン結合が直鎖状、分岐状、環状構造といった何れの構造を有してもよいが、後述する低温硬化性及び得られるコーティング膜の耐アルカリ性の観点から下記一般式(1)で示される環状シロキサンであることが好ましい。
【0019】
【化13】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化14】
(式中、a及びbは各々独立に2〜4の整数、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2及びR
3及びR
4は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化15】
(式中、mは0、1又は2、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、R
2は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
1はクロル原子又はOR
5で表されるアルコキシ基であり、R
5は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【化16】
(式中、nは0、1又は2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、X
2はクロル原子又はOR
6で表されるアルコキシ基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)
【0020】
該オルガノハイドロジェンシロキサン(1)の具体的な例としては、1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジブチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジペンチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジヘキシルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジヘプチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジノニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−ジデシルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジプロピルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジブチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジペンチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジヘキシルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジヘプチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジオクチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジノニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジデシルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリブチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリペンチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリヘキシルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリヘプチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリオクチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリノニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリスデシルシクロペンタシロキサン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。環状シロキサンのユニット数は分布を持つものであっても問題ないが、より好ましくは熱力学的に安定であり、原料シロキサンの製造が容易なシロキサン4量体が好ましい。
【0021】
該オルガノハイドロジェンシロキサン(2)の具体的な例としては、メチルシロキサンユニットとメチルプロピルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルブチルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルペンチルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルヘキシルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルヘプチルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルオクチルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルノニルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルデシルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0022】
該オルガノハイドロジェンシロキサンは、アルキルシラン(3)とヒドロシラン(4)の共加水分解縮合反応によって調製することもできる。加水分解縮合法としては公知の手法を用いることができ、特に制限されるものではないが、アルキルシラン(3)とヒドロシラン(4)との混合物に、加水分解・縮合反応用触媒及び水を添加して共縮合させることにより調製できる。
【0023】
該アルキルシラン(3)の具体的な例としては、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘプチルメチルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、ノニルメチルジメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、プロピルフェニルジメトキシシラン、ブチルフェニルジメトキシシラン、ペンチルフェニルジメトキシシラン、ヘキシルフェニルジメトキシシラン、ヘプチルフェニルジメトキシシラン、オクチルフェニルジメトキシシラン、ノニルフェニルジメトキシシラン、デシルフェニルジメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、ヘプチルメチルジエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、ノニルメチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、プロピルフェニルジエトキシシラン、ブチルフェニルジエトキシシラン、ペンチルフェニルジエトキシシラン、ヘキシルフェニルジエトキシシラン、ヘプチルフェニルジエトキシシラン、オクチルフェニルジエトキシシラン、ノニルフェニルジエトキシシラン、デシルフェニルジエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ペンチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘプチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、ペンチルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、ノニルメチルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、プロピルフェニルジクロロシラン、ブチルフェニルジクロロシラン、ペンチルフェニルジクロロシラン、ヘキシルフェニルジクロロシラン、ヘプチルフェニルジクロロシラン、オクチルフェニルジクロロシラン、ノニルフェニルジクロロシラン、デシルフェニルジクロロシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0024】
該ヒドロシラン(4)の具体的な例としては、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0025】
上記オルガノハイドロジェンシロキサンの中でも、原料の入手の容易さ、及び後述する低温硬化性及び得られるコーティング膜の耐アルカリ性の観点から1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジプロピルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルプロピルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサンが好ましく、1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサンが最も好ましい。
【0026】
前記アルケニル基含有アルコキシシラン(ii)は、下記一般式(5)で示される。
【化17】
【0027】
一般式(5)において、R
7及びR
8は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、アルキル基としては直鎖状、分岐状、環状であってよく、代表的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等がアルキル基として挙げられ、フェニル基、ナフチル基等がアリール基として挙げられる。その中でも原料製造の容易さ、加水分解性のバランスからメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0028】
また、前記式(5)中、pは0〜3、好ましくは0〜1の整数、qは0、1又は2であるが、オルガノハイドロジェンシロキサン及びアルケニル基含有アルコキシシラン同士を白金錯体触媒存在下においてヒドロシリル化して得られるオルガノシロキサンの加水分解性、並びに該オルガノシロキサンを含むコーティング剤組成物を塗布形成してなる硬化物品の耐アルカリ性の観点から、qは0であることが好ましく、またpは0かつqは0であることがより好ましい。
【0029】
本発明における反応原料の使用比率は、オルガノハイドロジェンシロキサン中のSi−H基1モルに対してアルケニル基含有アルコキシシラン0.9〜1.5モルが好ましく、より好ましくは1.1〜1.3モルである。0.9モル未満であると原料消費が不十分なおそれがあり、1.5モルより多い場合には高沸点成分である未反応のアルケニル基含有アルコキシシランを減圧留去によって生成物から完全に除去することが困難となる、又は完全に除去するために高度な減圧条件を要するなど不要な工程が生じ生産効率が低下してしまう場合がある。
【0030】
本発明におけるヒドロシリル化反応触媒は、公知の技術として知られている白金(Pt)及び/又は白金(Pt)を中心金属とする錯体化合物が好ましい。具体的には、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体並びに該錯体を中和処理した化合物や、中心金属の酸化数がPt(II)やPt(0)の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。好ましくは中心金属の酸化数がPt(IV)以外の錯体であることが付加位置選択性の点から望ましく、特にPt(0)、Pt(II)であることが好ましい。
【0031】
本発明におけるヒドロシリル化反応触媒の使用量は、ヒドロシリル化反応の触媒効果が発現する量であれば特に限定されないが、好ましくはアルケニル基含有アルコキシシラン1モルに対して0.000001〜1モルであり、より好ましくは0.0001〜0.01モルである。0.000001モル未満である場合には十分な触媒効果が発現しないおそれがあり、1モルより多い場合には効果が飽和するため生産コストが高くなり不経済になってしまうおそれがある。
【0032】
本発明において、前記オルガノハイドロジェンシロキサンとアルケニル基含有アルコキシシランとを白金錯体触媒等のヒドロシリル化反応触媒の存在下においてヒドロシリル化して得られるオルガノシロキサンの具体的な例としては、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−メチルジメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−メチルジメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジブチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジブチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジブチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジブチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジペンチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジペンチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジペンチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジペンチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘキシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘキシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘキシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘキシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘプチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘプチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘプチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジヘプチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジノニルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジノニルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジノニルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジノニルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジデシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジデシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジデシルシクロテトラシロキサン、ビス−トリエトキシシリルプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−ジデシルシクロテトラシロキサン、トリス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジプロピルシクロペンタシロキサン、トリス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジプロピルシクロペンタシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン、ビス−トリメトキシシリルプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルプロピルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサンとビニルトリメトキシシランとのヒドロシリル化反応生成物、メチルシロキサンユニットとメチルプロピルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサンとアリルトリメトキシシランとのヒドロシリル化反応生成物、プロピルトリメトキシシランとトリメトキシシランの共加水分解縮合反応生成物等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。この中でも原料の入手の容易さ、後述する低温硬化性及び得られるコーティング膜の耐アルカリ性の観点から、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、トリス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−ジプロピルシクロペンタシロキサン、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン、メチルシロキサンユニットとメチルプロピルシロキサンユニットから構成されるポリシロキサンとビニルトリメトキシシランとのヒドロシリル化反応生成物、プロピルトリメトキシシランとトリメトキシシランの共加水分解縮合反応生成物が好ましく、ビス−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサンが最も好ましい。
【0033】
本発明のコーティング剤組成物中に含有される(A)オルガノシロキサンは、構造単位として下記一般式(6)で示される環状シロキサン骨格かつ一分子中に複数のアルコキシシリル基及び特定の炭素鎖(炭素数3以上のアルキル鎖)を含む場合に特に良好な低温硬化性、耐アルカリ性、耐クラック性を発揮する。
【化18】
【0034】
一般式(6)において、R
1は炭素数3〜10のアルキル基、rは炭素鎖スペーサーの炭素数を示す。rは2〜5の整数の範囲であればよく、原料の入手の容易さ、及び後述する低温硬化性及び得られるコーティング膜の耐アルカリ性の観点から特に2〜3の整数の範囲であることが好ましく、またR
1はプロピル基かつrは2であることがより好ましい。
【0035】
即ち、(A)オルガノシロキサンの構造単位として、下記一般式(7)で示される環状シロキサン骨格かつ一分子中に複数のアルコキシシリル基及びプロピル基を含む場合に特に良好な低温硬化性、耐アルカリ性、耐クラック性を発揮する。
【化19】
【0036】
[(B)有機金属触媒]
本発明のコーティング剤組成物に含まれる有機金属触媒は、一般的な湿気縮合硬化型組成物の硬化に用いられる硬化触媒であれば特に限定されない。有機金属触媒としては、チタン系、アルミニウム系、スズ系、ジルコニウム系、ビスマス系等の触媒が好適に使用できる。チタン系触媒の具体的な例としては、オルトチタン酸テトラブチル、オルトチタン酸テトラメチル、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラプロピル等のオルトチタン酸テトラアルキル、それらの部分加水分解物が挙げられる。アルミニウム系触媒としては、三水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、アルミニウムアシレートの塩、アルミノシロキシ化合物、アルミニウム金属キレート化合物等が挙げられる。スズ系触媒としては、ジオクチルチンジオクテート、ジオクチルチンジラウレート等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。この中でもより反応性に優れるオルトチタン酸テトラアルキルが好ましく、その中でもオルトチタン酸テトラプロピル、オルトチタン酸テトラブチルが最も好ましい。
【0037】
有機金属触媒の添加量は、(A)オルガノシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0038】
本発明の低温速硬化性コーティング剤組成物は、(A)オルガノシロキサンと(B)有機金属触媒を混合したものであるが、実質的に溶剤を含有しないことが好ましい。ここで、「実質的に」とは、組成物中に含まれる溶剤が1質量%以下、特に0.1質量%以下であることを意味する。なお、ここでの溶剤とは、(A)オルガノシロキサンの製造時に使用した反応溶媒であり減圧留去によって完全に除去できなかったものなど、該低温速硬化性コーティング剤組成物中に意図的に添加した成分ではないものを指す。
【0039】
本発明のコーティング剤組成物は、固体基材の表面に塗布され、硬化物品として被覆固体基材を与える。かかる被覆固体基材は特に限定されず、使用し得る固体基材としては、多くの場合、ポリカーボネート類及びポリカーボネートブレンド、ポリ(メタクリル酸メチル)を始めとするアクリル系樹脂類、ポリ(エチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンテレフタレート)のようなポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルのブレンド、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレン等のポリマー基材が含まれる。更に、固体基材には金属基材、塗料塗布面、ガラス、セラミック、コンクリート、スレート板及びテキスタイルも包含される。但し、本発明のコーティング剤組成物は、好ましくはアクリル系樹脂の被覆に使用される。
【0040】
前記コーティング剤組成物を基材に塗布すると、低温硬化性、即ち25℃,50%RHで20分以内に硬化が進行し、対応する硬化物品が得られる。特に、組成物中に含まれる(A)オルガノシロキサンとして下記一般式(7)で示される一分子中に複数のアルコキシシリル基及びプロピル基を含有する環状シロキサンを用いた場合、同温度下15分以内で硬化が進行し、またハジキ、硬化に伴うクラック、基材からの剥がれといった外観不良を生じることなく、更に耐アルカリ性が良好な硬化物品を得ることができる。
ここで「硬化」とは、塗膜表面がタックフリー(指触乾燥状態、硬化が進んで塗膜が指先に付着しなくなった状態)となったことを指す。
【化20】
【0041】
また、混合すると比較的短時間で硬化することから、使用直前に(A)オルガノシロキサンと(B)有機金属触媒とを混合してコーティング剤組成物とするとよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例、比較例を挙げてより具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
実施例1では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシランとしてビニルトリメトキシシランを用い、下記処方に基づいて合成を行った。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、ビニルトリメトキシシラン575質量部、トルエン333質量部、白金錯体(Pt(0)の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)のトルエン溶液を、Si−H基1モルに対して白金錯体が0.00002モル(白金換算)に相当する量を納め撹拌混合した。その後、加熱して内温75℃となったところで1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を2時間かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が75℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が90℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱をしながら反応液を1時間熟成した後に、反応液のIR並びに水素ガス発生量測定を行いSi−H基の残存が無いことを確認した。その後、減圧留去(80℃、5mmHg)によりトルエンを除去することで対応するオルガノシロキサンを得た。
入手したオルガノシロキサンを100質量部と、有機金属触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを5質量部とを撹拌機を用いて均一に混合並びに脱泡し、コーティング剤組成物を得た。
【0044】
[実施例2]
実施例2では、有機金属触媒として実施例1のオルトチタン酸テトラブチル5質量部に代えてジ−n−ブトキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム5質量部を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0045】
[実施例3]
実施例3では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて1,3,5,7−テトラメチル−ジオクチルシクロテトラシロキサン820質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0046】
[実施例4]
実施例4では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて1,3,5,7,9−ペンタメチル−トリプロピルシクロペンタシロキサン753質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0047】
[実施例5]
実施例5では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて平均構造式がM
2D
H2D
Pr2で表される鎖状シロキサン(ここで、Mは末端トリメチルシロキサンユニットを意味し、D
Hはメチルシロキサンユニットを意味し、D
Prはメチルプロピルシロキサンユニットを意味し、各数字は該当する各ユニットの構成数を意味する)860質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0048】
[実施例6]
実施例6では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えてプロピルトリメトキシシランとトリメトキシシランの共加水分解縮合反応生成物525質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0049】
[比較例1]
比較例1では、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン100質量部と、有機金属触媒として実施例1と同じオルトチタン酸テトラブチル5質量部とを撹拌機を用いて均一に混合並びに脱泡し、コーティング剤組成物を得た。
【0050】
[比較例2]
比較例2では、テトラメトキシシラン100質量部と、有機金属触媒として実施例1と同じオルトチタン酸テトラブチル5質量部とを撹拌機を用いて均一に混合並びに脱泡し、コーティング剤組成物を得た。
【0051】
[比較例3]
比較例3では、トリメトキシメチルシラン100質量部と、有機金属触媒として実施例1と同じオルトチタン酸テトラブチル5質量部とを撹拌機を用いて均一に混合並びに脱泡し、コーティング剤組成物を得た。
【0052】
[比較例4]
比較例4では、トリメトキシメチルシランの部分加水分解オリゴマー100質量部と、有機金属触媒として実施例1と同じオルトチタン酸テトラブチル5質量部とを撹拌機を用いて均一に混合並びに脱泡し、コーティング剤組成物を得た。
【0053】
[比較例5]
比較例5では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて、平均構造式がD
2D
H2で表される環状シロキサン(ここで、Dはジメチルシロキサンユニットを意味し、D
Hはメチルシロキサンユニットを意味し、各数字は該当する各ユニットの構成数を意味する)475質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0054】
[比較例6]
比較例6では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン212質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0055】
[比較例7]
比較例7では、オルガノハイドロジェンシロキサンとして実施例1の1,3,5,7−テトラメチル−ジプロピルシクロテトラシロキサン600質量部に代えて、平均構造式がM
2D
H3D
1で表される鎖状シロキサン(ここで、Mは末端トリメチルシロキサンユニットを意味し、D
Hはメチルシロキサンユニットを意味し、Dはジメチルシロキサンユニットを意味し、各数字は該当する各ユニットの構成数を意味する)490質量部(Si−H基1モルに対してアルケニル基が1.1モルに相当する量)を用いた以外は実施例1と同様の手順で組成物を調製した。
【0056】
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた組成物を25℃,50%RHの空気下でバーコーターNo.14を用いてアクリル板(三菱レイヨン(株)製、アクリライトEX#001無色2mm厚)に塗布し、後述する各種評価を実施した。
【0057】
〔低温硬化性試験〕
上記塗布方法にて実施例1〜6及び比較例1〜7に記載の組成物を基材(アクリル板)に塗布後、タックフリータイム(指触乾燥時間、硬化が進んで塗膜が指先に付着しなくなるまでの時間)を確認した。評価結果を下記表1、2に示す。
【0058】
〔耐アルカリ性〕
上記塗布方法にて実施例1〜6及び比較例1〜7に記載の該組成物を基材(アクリル板)に塗布し硬化して得られる硬化被膜の耐アルカリ性を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたスポット試験により確認した。具体的な試験方法としては、塗布後、25℃,50%RHの条件で一週間静置し十分に硬化させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を膜に一滴垂らし、それを計5箇所行って室温(25℃)下1時間静置し、その後に水で洗い流して乾燥させ、硬化被膜の溶解や水滴の痕跡を目視で確認した。水滴の痕跡が全く観測されなかった場合には、耐アルカリ性に優れるものとして「○」と評価した。水滴の痕跡が観測された場合、又は膜が溶解した場合には「×」と評価した。評価結果を下記表1、2に示す。
【0059】
〔外観評価〕
上記塗布方法にて実施例1〜6及び比較例1〜7に記載の該組成物を基材(アクリル板)に塗布し硬化して得られる硬化被膜の外観を確認した。具体的には、硬化に伴うクラック並びに基材からの剥がれ(表中、「耐クラック性」と表記)の有無といった外観不良に着目した。これらの外観不良が全く観測されなかった場合には、外観に優れるものとして「○」と評価した。これらの外観不良が僅かに観測された場合には「△」と評価した。これらの外観不良が顕著に観測された場合には「×」と評価した。評価結果を下記表1、2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
上記の結果は、実施例1〜6に記載の該組成物を基材に塗布すると、低温硬化性、即ち25℃,50%RHで20分以内に硬化が進行することを実証するものである。特に実施例1のように、組成物中に含まれるオルガノシロキサンとして、前記一般式(7)で示される一分子中に複数のアルコキシシリル基及びプロピル基を含有する環状シロキサンを用いた場合、同温度下15分以内で硬化が進行し、またハジキ、硬化に伴うクラック、基材からの剥がれといった外観不良を生じることなく、更に耐アルカリ性が良好な硬化物品を得ることができることを示す。ここで「硬化」とは、塗膜表面がタックフリー(指触乾燥状態、硬化が進んで塗膜が指先に付着しなくなった状態)となったことを指す。
【0063】
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。