特許第6061098号(P6061098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061098重合性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061098
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】重合性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/30 20060101AFI20170106BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20170106BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20170106BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20170106BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20170106BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20170106BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/34
   C09K19/42
   C09K19/38
   C09K19/54 Z
   G02F1/13 500
【請求項の数】25
【全頁数】79
(21)【出願番号】特願2013-538498(P2013-538498)
(86)(22)【出願日】2012年10月1日
(86)【国際出願番号】JP2012075382
(87)【国際公開番号】WO2013054682
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-225024(P2011-225024)
(32)【優先日】2011年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】古里 好優
(72)【発明者】
【氏名】松隈 真依子
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−259129(JP,A)
【文献】 特開2007−086399(JP,A)
【文献】 特開2002−155113(JP,A)
【文献】 特開平09−133923(JP,A)
【文献】 特開2001−048904(JP,A)
【文献】 特開平10−319377(JP,A)
【文献】 特開平08−092561(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/085851(WO,A1)
【文献】 特開2006−259558(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084810(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/131600(WO,A1)
【文献】 R.Yamaguchi et al,Liquid crystal alignment surface with two easy axes induced by unidirectional rubbing,Applied Physics Letters,2003年,82(25),pp. 4450-4452
【文献】 Y. Makita et al,Photoalignment materials with high sensitivity to near-UV light,Journal of Photopolymer Science and Technology,1998年,11(2),pp. 187-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/00−69/96
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。

ここで、AおよびAは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基であり;Aは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基、または単結合であり;Zは、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または、−C(=R)−であり;Zは独立して、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または−C(=R)−であり;RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から10のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から10のアルキルであり;
は式(R−1)で表される基の群から選択された基であり;

は独立して、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から6のアルキルであり;Lは独立して、ハロゲン、−CF、−C≡N、または炭素数1から6のアルキルであり;PおよびPは独立して、式(P−1)から式(P−11)で表される基の群から選択された基であり;YおよびYは独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンであり;Yは、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CF、または−C≡Nであり;


SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から6のアルキレンであり、このアルキレンの少なくとも1つの水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられていてもよく、少なくとも1つの隣接していない−CH−は、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく;mおよびmは0から5の整数であり、mは0から4の整数であり、mとmとの和が1から10の整数であり;nは1から8の整数であり;pは0から4の整数である。
【請求項2】
式(1)において、PおよびPが式(P−1)で表される基の群から選択された基であり;SpおよびSpが単結合である請求項1に記載の液晶組成物
【請求項3】
第一成分が式(1−1)から式(1−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1または2に記載の液晶組成物

ここで、RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から4のアルキルであり;Xは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;LおよびLは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり、;YおよびYは独立して、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CF、または−C≡Nであり;Y、Y、Y、およびYは独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンであり;mおよびmは0から5の整数であり、mとmとの和が3から10であり;mおよびmは0から5の整数であり;nは1から4の整数であり;rは0から3の整数である。
【請求項4】
式(1−1)から式(1−4)において、YおよびYが独立して、水素または−CHであり;Y、Y、Y、およびYが水素であり;mおよびmが0から3の整数であり、mとmの和が3または4である請求項3に記載の液晶組成物
【請求項5】
第一成分を除く液晶組成物100重量部に対して、第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲である請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Cは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;sは、1、2、または3であり;tは0または1であり、そして、sとtとの和が3以下である。
【請求項7】
第二成分が式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項に記載の液晶組成物。



ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項8】
第二成分が、請求項記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
第二成分が、請求項記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
第二成分が、請求項記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
第二成分が、請求項記載の式(2−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項12】
第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である請求項から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Eおよび環Fは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;uは、1、2、または3である。
【請求項14】
第三成分が式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項15】
第三成分が請求項14記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の液晶組成物。
【請求項16】
第三成分が、請求項14記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項13に記載の液晶組成物。
【請求項17】
第三成分が、請求項14記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項13に記載の液晶組成物。
【請求項18】
第三成分が、請求項14記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項13に記載の液晶組成物。
【請求項19】
第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第三成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である請求項13から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項20】
重合開始剤をさらに含有する請求項から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
重合禁止剤をさらに含有する請求項から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項22】
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である請求項から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項23】
少なくとも一方の基板に電極層を有する2つの基板から構成され、この2つの基板の間に請求項から22のいずれか1項に記載の液晶組成物を配置する事を特徴とする液晶表示素子。
【請求項24】
液晶表示素子の動作モードが、TNモード、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項23に記載の液晶表示素子。
【請求項25】
請求項から22のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光または熱により重合する重合性化合物および重合性化合物を含有する液晶組成物に関する。また、その液晶組成物を基板間に封入し、液晶層に印加する電圧を調整しながら液晶組成物に含有されている重合性化合物を重合して液晶の配向を固定化する液晶表示素子に関する。
本発明の技術分野は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物、およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が負の液晶組成物に関し、この組成物を含有するIPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、またはPSA(polymer sustained alignment)モードの素子などに関する。VAモードには、MVA(multi-domain vertical alignment)モード、PVA(patterned vertical alignment)モードなどが含まれる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、PSA(polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。VAモードまたはPSAモードの素子では約0.30μmから約0.40μmの範囲、IPSモードの素子では約0.20μmから約0.30μmの範囲である。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における絶対値の大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、絶対値の大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、大きな電圧保持率に寄与し、素子における大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。一方、VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。負の誘電率異方性を有する液晶組成物の例は次の特許文献1〜6などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−131704号公報
【特許文献2】特開2009−102639号公報
【特許文献3】国際公開第2009/030318号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/030322号パンフレット
【特許文献5】中国出願公開第101045866号明細書
【特許文献6】特開2009−132718号公報
【0008】
望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。
PSAモードのディスプレイでは、少量(約0.3重量%〜約1重量%)の重合性化合物(RM)が液晶組成物に添加され、液晶表示セルに導入後、電極間に電圧を印加した状態で通常UV照射下に重合性化合物のみを重合させ、素子内でポリマー構造を形成する。RMとしては重合性のメソゲン性または液晶性化合物が液晶組成物添加モノマーとして特に適していることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、上述のPSAモードは、TNモード、IPSモードなどに比べて、応答時間が短いという長所を有している。しかし、近年のディスプレイの性能向上への要求から、PSAモードにもさらなる応答時間短縮が求められている。本発明の一つの目的は、応答時間の短い新規のRMおよびそれらを含む液晶組成物、そして、このような組成物を含有する液晶表示素子を提供することである。また、一般的にRMとしては,重合体が紫外線および熱に対する安定性に優れるなどの理由から2官能(メタ)アクリル酸エステルが用いられている。昨今、液晶組成物に対して、重合体が紫外線および熱に対する安定性に優れたRMへのさらなる改善が求められている。本発明の他の目的は、一般的に、その重合体が紫外線および熱に対する安定性に非常に優れることが知られている3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルの液晶組成物添加モノマーとしての適用である。別の目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。別の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、小さな光学異方性、または大きな光学異方性である適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、適切なプレチルト、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
驚くべきことに、2つ以上の共役環同士の共役系が結合基でつながった構造を有するRMを用いることにより、応答時間を短縮することが見出せた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)で表される化合物、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。

ここで、AおよびAは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基であり;Aは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基、または単結合であり;Zは、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または、−C(=R)−であり;Zは独立して、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または−C(=R)−であり;RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から10のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から10のアルキルであり;
は式(R−1)で表される基の群から選択された基であり;

は独立して、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から10のアルキルであり;Lは独立して、ハロゲン、−CF、−C≡N、または炭素数1から6のアルキルであり;PおよびPは独立して、式(P−1)から式(P−11)で表される基の群から選択された基であり;YおよびYは独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンであり;Yは、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CF、または−C≡Nであり;


SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から6のアルキレンであり、このアルキレンの少なくとも1つの水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられていてもよく、少なくとも1つの隣接していない−CH−は、−O−、−S−、-NH−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく;mおよびmは0から5の整数であり、mは0から4の整数であり、mとmとの和が1から10の整数であり;nは1から8の整数であり;pは0から4の整数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、重合性メソゲン性または液晶性化合物の重合体について、紫外線または熱に対する高い安定性である。本発明の他の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、紫外線または熱に対する安定性の高い重合性化合物であり、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、適切なプレチルト、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。本発明の液晶組成物または本発明の液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。この有用な化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。光学活性な化合物および重合可能な化合物は組成物に添加されることがある。これらの化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは添加物として分類される。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「置き換えられた」の「少なくとも1つの」は、位置だけでなく個数についても、自由に選択できることを示す。
【0013】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した測定方法で得られた値を用いる。第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、第一成分を除く液晶組成物の重量を100としたときの第一成分の重量比率(重量部)で表す。「第二成分の割合」は、第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいた第二成分の重量百分率(重量%)で表す。「第三成分の割合」は「第二成分の割合」と同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(ppm)で表す。
【0014】
成分化合物の化学式において、Rの記号を複数の化合物に用いた。これらのうちの任意の2つの化合物において、Rで選択されるものは、同じであっても、異なってもよい。例えば、化合物(2−1)のRがエチルであり、化合物(2−2)のRがエチルであるケースがある。化合物(2−1)のRがエチルであり、化合物(2−2)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、R、Yなどにも適用される。
【0015】
本発明は、下記の項などである。
1. 式(1)で表される化合物。

ここで、AおよびAは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基であり;Aは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基、または単結合であり;Zは、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または、−C(=R)−であり;Zは独立して、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または−C(=R)−であり;RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から10のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から10のアルキルであり;
は式(R−1)で表される基の群から選択された基であり;

は独立して、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素に置き換えられた炭素数1から10のアルキルであり;Lは独立して、ハロゲン、−CF、−C≡N、または炭素数1から6のアルキルであり;PおよびPは独立して、式(P−1)から式(P−11)で表される基の群から選択された基であり;YおよびYは独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンであり;Yは、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CF、または−C≡Nであり;

SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から6のアルキレンであり、このアルキレンの少なくとも1つの水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられていてもよく、少なくとも1つの隣接していない−CH−は、−O−、−S−、-NH−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく;mおよびmは0から5の整数であり、mは0から4の整数であり、mとmとの和が1から10の整数であり;nは1から8の整数であり;pは0から4の整数である。
【0016】
2. 式(1)において、PおよびPが式(P−1)で表される基の群から選択された基であり;SpおよびSpが単結合である項1に記載の化合物。
【0017】
3. 式(1−1)から式(1−4)で表される項1または2に記載の化合物。

ここで、RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から4のアルキルであり;Xは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;LおよびLは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり、;YおよびYは独立して、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CF、または−C≡Nであり;Y、Y、Y、およびYは独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンであり;mおよびmは0から5の整数であり、mとmとの和が3から10であり;mおよびmは0から5の整数であり;nは1から4の整数であり;rは0から3の整数である。
【0018】
4. 式(1−1)から式(1−4)において、YおよびYが独立して、水素または−CHであり;Y、Y、Y、およびYが水素であり;mおよびmが0から3の整数であり、mとmとの和が3または4である項3に記載の化合物。
【0019】
5. 項1から4のいずれか1項に記載の化合物の単独重合または共重合によって得られるホモポリマーまたはコポリマー。
【0020】
6. 第一成分として、項1から4のいずれか1項に記載の化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【0021】
7. 第一成分を除く液晶組成物100重量部に対して、第一成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲である項6に記載の液晶組成物。
【0022】
8. 第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する項6または7に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Cは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;sは、1、2、または3であり;tは0または1であり、そして、sとtとの和が3以下である。
【0023】
9. 第二成分が式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項8に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0024】
10. 第二成分が、項9記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項8に記載の液晶組成物。
【0025】
11. 第二成分が、項9記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項8に記載の液晶組成物。
【0026】
12. 第二成分が、項9記載の式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項8に記載の液晶組成物。
【0027】
13. 第二成分が、項9記載の式(2−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項8に記載の液晶組成物。
【0028】
14. 第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である項8から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0029】
15. 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項6から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Eおよび環Fは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;uは、1、2、または3である。
【0030】
16. 第三成分が式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項15に記載の液晶組成物。

ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0031】
17. 第三成分が項16記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項15に記載の液晶組成物。
【0032】
18. 第三成分が、項16記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項15に記載の液晶組成物。
【0033】
19. 第三成分が、項16記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項15に記載の液晶組成物。
【0034】
20. 第三成分が、項16記載の式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(3−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項15に記載の液晶組成物。
【0035】
21. 第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第三成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である項15から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0036】
22. 重合開始剤をさらに含有する項6から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0037】
23. 重合禁止剤をさらに含有する項6から22のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0038】
24. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である項6から23のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
25. 少なくとも一方の基板に電極層を有する2つの基板から構成され、この2つの基板の間に項6から24のいずれか1項に記載の液晶組成物を配置する事を特徴とする液晶表示素子。
【0040】
26. 液晶表示素子の動作モードが、TNモード、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である項25に記載の液晶表示素子。
【0041】
27. 項6から24のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【0042】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物、3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、VA、またはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0043】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0044】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)から選ばれた液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。その他の液晶性化合物の中で、シアノ化合物は熱または紫外線に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。シアノ化合物のさらに好ましい割合は0重量%である。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。この化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0045】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物および不純物を含有してもよいが、これらの化合物と異なる液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0046】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がゼロに近いことを意味する。
【0047】
【0048】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(2)は、誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(3)は、粘度を下げる、または上限温度を上げる。
【0049】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第三成分、および第一成分+第二成分+第三成分である。
【0050】
第一成分の好ましい割合は、第一成分を除く液晶組成物100重量部に対して、液晶分子を配向させるために約0.05重量部以上であり、表示不良を防ぐために約10重量部以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量部から約2重量部の範囲である。
【0051】
第二成分の好ましい割合は、第一成分を除く液晶組成物に基づいて、誘電率異方性の絶対値を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0052】
第三成分の好ましい割合は、第一成分を除く液晶組成物に基づいて、粘度を下げるため、または上限温度を上げるために約10重量%以上であり、誘電率異方性の絶対値を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0053】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から10のアルキル、またはフルオロアルキルである。RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から4のアルキルである。好ましいR、R、R、またはRは光反応性を上げるために、水素、フッ素、または炭素数1から3のアルキルである。
は式(R−1)で表される基の群から選択された基である。

式(R−1)の波線は、基として結合する部位を示す。
【0054】
、R、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、紫外線に対する安定性などを上げるため、または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性の絶対値を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。好ましいRまたはRは、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。
【0055】
第一成分において、好ましいアルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロヘキシル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、2−エチル−1−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、4−メチル−1−ペンテニル、1−ヘキシニル、フェニル、ナフチル、アントリル、ベンジル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、2−メチルシクロプロピルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ、シクロペンチルオキシ、またはシクロヘキシルオキシである。さらに好ましいアルキルは、光反応性を上げるために、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、またはイソプロピルオキシである。
【0056】
第二成分および第三成分において、好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0057】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。さらに好ましいアルコキシは、粘度を下げるために、メトキシまたはエトキシである。
【0058】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるために、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐状よりも直鎖状のアルケニルが好ましい。
【0059】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために、2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0060】
およびAは独立して、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基である。好ましいAまたはAは、炭素数12以下の芳香環基および炭素数20以下の縮合芳香環基であり、これらが1または2個以上のヘテロ原子、特にN、O、SiおよびSから選択されるヘテロ原子を含んだ複素芳香環基でもよく、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい。さらに好ましいAまたはAは、ベンゼン環である。
【0061】
は、少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい芳香環基、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい複素芳香環基、または単結合である。mが2以上のときの任意の2つのAは同じであっても異なってもよい。好ましいAは、単結合または炭素数12以下の芳香環基または炭素数20以下の縮合芳香環基であり、これらが1つ以上のヘテロ原子、特にN、O、SiおよびSから選択されるヘテロ原子を含んだ複素芳香環基でもよく、または少なくとも1つの水素がLに置き換えられていてもよい。さらに好ましいAは、ベンゼン環である。
【0062】
この芳香環基および複素芳香環基は、整数価の芳香環および複素芳香環をコアとする構造ユニットである。具体的には、芳香環および複素芳香環から整数個の結合手が出ている整数価の連結基のことである。例えば、mが0のときは、Aは1価の連結基となり、mが1のときは、Aは2価の連結基となり、mが2のときは、Aは3価の連結基となる。mとAとの関係も同様である。芳香環および複素芳香環としては、例えば、べンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、シロール環、ナフタレン環、ペンタレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、ピレン環、アクリジン環、ペリレン環、ベンゾピレン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニレン環、カルバゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンズイミダゾリノン環、ベンゾシクロペンテン環、ベンゾシクロヘキセン環、ベンゾシクロヘプテン環、ベンゾシクロオクテン環、1,3−ベンゾシクロヘキサジエン環、ジュロリジン環などの単環または縮合環由来の基が挙げられる。
【0063】
環Bおよび環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。sが2または3の時の任意の1つの環Bは同じであっても、異なってもよい。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、

テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは左右が非対称である。しかしながら、これらの環が定義された方向のみならず、前記のように左右逆である方向にも位置することができるものと定義する。この定義は左右が非対称な環において、その一方のみが定義されたその他の環にも適用する。
【0064】
環Cは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり、sが2または3である時の任意の2つの環Bは同じであっても、異なってもよい。好ましい環Bまたは環Dは、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンである。好ましい環Cは、粘度を下げ、誘電率異方性の絶対値を上げるために、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0065】
環Eおよび環Fは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、uが2または3である時の任意の2つの環Eは同じであっても、異なってもよい。好ましい環Eまたは環Fは、粘度を下げるために1,4−シクロヘキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるために、シスよりもトランスが好ましい。「2−フルオロ−1,4−フェニレン」などは、左側を1位とした環で表し、「2−フルオロ−1,4−フェニレン」と「3−フルオロ−1,4−フェニレン」とは、フッ素の位置の違いがあることを示している。
【0066】
は、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または、−C(=CR)−である。Zは独立して、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または−C(=R)−である。mが2以上である時の任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZまたはZは、重合性化合物の重合反応性を上げ、素子の応答時間を短縮する特性を得るために、−CO−CR=CR−、−CR=CR−CO−、−CR=CR−、−C(=CR)−、または−C(=R)−である。
このZおよびZは、共役環同士の共役系を繋げるタイプの結合基である。化合物(1)のZおよびZにおける二重結合の立体配置は、シス体、トランス体、またはシス体とトランス体の混合物である。化合物(1−1)、化合物(1−2)、化合物(1−3)、化合物(1−4)などにおける結合基の二重結合の立体配置についても同様である。
【0067】
、Z、およびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、sが2または3である時の任意の2つのZは同じであっても、異なってもよく、uが2または3である時の任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZまたはZは、粘度を下げるために単結合であり、誘電率異方性の絶対値を上げるためにメチレンオキシである。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。
【0068】
Lは独立して、ハロゲン、−CF、−C≡N、または炭素数1から6のアルキルである。L、Lは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルである。好ましいL、L、またはLは、フッ素または炭素数1から3のアルキルである。具体的なLのアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環式炭化水素基などが挙げられる。
【0069】
は独立して、ハロゲン、炭素数1から6のアルキル、またはフルオロアルキルである。Xは独立して、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルである。好ましいX、Xは、フッ素または炭素数1から3のアルキルである。
【0070】
、Y、およびYは独立して、水素、−CH、−C、ハロゲン、−CFまたは−C≡Nであり、Y、Y、Y、Y、Y、およびYは互いに独立して、水素、−CH、−C、またはハロゲンである。好ましいY、Y、またはYは、水素または−CHであり、好ましいY、Y、Y、Y、Y、またはYは水素である。
【0071】
およびPは重合性官能基であり、独立して、式(P−1)から式(P−11)で表される基の群から選択された基である。好ましいPまたはPは、光反応性を上げるためにアクリロイルまたはメタクリロイルである。mが2以上ある時の任意の2つのPは同じであっても、異なってもよく、mが2以上ある時の任意の2つのPは同じであっても、異なってもよい。

式(P−1)から式(P−10)の波線は、基として結合する部位を示す。
【0072】
SpおよびSpはスペーサー基であり、独立して、単結合または炭素数1から6のアルキレンであり、ただしハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられていてもよく、少なくとも1つの隣接していない−CH−は、−O−、−S−、-NH−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよい。mが2以上ある時の任意の2つのSpは同じであっても、異なってもよく、mが2以上ある時の任意の2つのSpは同じであっても、異なってもよい。スペーサー基については当業者には既に良く知られ、Tschierske,C.et al, Angew.Chem, Vol.116,6340,2004などの文献に記載されている。好ましいSpまたはSpは、光反応性を上げるために単結合である。
【0073】
およびmは0から5の整数であり、mとmとの和が1から10の整数である。mおよびmは0から5の整数であり、mとmとの和が3から10の整数である。好ましいm、m、mまたはmは、光反応性を上げるために1から3の整数であり、好ましいmとmとの和またはmとmとの和は、光反応性を上げるために3または4である。
【0074】
は0から4の整数である。好ましいmは、光反応性を上げるために0である。
およびmは0から5の整数である。好ましいmまたはmは、光反応性を上げるために0から2の整数である。さらに好ましいmまたはmは、0である。
【0075】
は1から8の整数である。nは1から4の整数である。好ましいnまたはnは、光反応性を上げるために1または2である。
pは0から4の整数である。rは0から3の整数である。好ましいpまたはrは、光反応性を上げるために0から2の整数である。さらに好ましいpまたはrは、0である。
【0076】
sは、1、2、または3であり、tは0または1であり、そして、sとtとの和が3以下である。好ましいsは、下限温度を下げるために1である。好ましいtは、粘度を下げるために0である。
uは、1、2、または3である。好ましいuは、粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために3である。
【0077】
化合物(1)は、単独重合、または他の重合性化合物との共重合によって、ホモポリマー、またはコポリマーを形成できる。
【0078】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R10は、直鎖状の炭素数1から12のアルキルまたは直鎖状の炭素数1から12のアルコキシである。R11およびR12は独立して、直鎖状の炭素数1から12のアルキルまたは直鎖状の炭素数1から12のアルケニルである。
【0079】
好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1−1)、化合物(1−1−2−1)、化合物(1−2−1−1)、化合物(1−2−2−1)、化合物(1−4−1−1)、および化合物(1−4−2−1)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1−1)および化合物(1−1−2−1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−19−1)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)、化合物(2−2−1)、化合物(2−4−1)、化合物(2−6−1)、化合物(2−8−1)、化合物(2−11−1)、化合物(2−13−1)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)、化合物(2−4−1)、化合物(2−6−1)、化合物(2−8−1)、および化合物(2−13−1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−13−1)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)、化合物(3−3−1)、化合物(3−5−1)、化合物(3−7−1)、および化合物(3−9−1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)、化合物(3−5−1)、および化合物(3−7−1)である。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(4−1)から化合物(4−4)である。光学活性な化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0086】
【0087】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。
【0088】
酸化防止剤の好ましい例は、vが1から9の整数である化合物(5)などである。化合物(5)において、好ましいvは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいvは1または7である。vが1である化合物(5)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。vが7である化合物(5)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0089】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0090】
GH(guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。
【0091】
泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0092】
本発明の液晶組成物は、重合可能な化合物を含んでいるので、PSA(polymer sustained alignment)モードの素子に適合している。組成物は化合物(1)以外の重合可能な化合物をさらに含んでもよい。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。特に好ましい例は、アクリレート、またはメタクリレートの誘導体である。重合可能な化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocure1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。好ましい光重合開始剤の割合は、重合可能な化合物の約0.1重量%から約5重量%の範囲であり、さらに好ましくは約1重量%から約3重量%の範囲である。液晶表示素子における2つの基板の間に、重合可能な化合物を含む液晶組成物を配置し、これらの基板の相対する電極層の間に電圧を印加しながら重合可能な化合物を重合する工程を経てもよいし、液晶表示素子における2つの基板の間に予め重合させた化合物を含む液晶組成物を配置してもよい。
【0093】
第七に、第一成分化合物の合成法を説明する。第一成分化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された既知の有機合成化学の手法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0094】
例えば、本発明の化合物(1−1)は以下のような既知の有機合成法によって合成できる。以下のスキームにおいて、R、R、L、L、Y、Y、Y、Y、Y、Y、m、m、mおよびmは、前記項3の記載と同一の定義である。Miyashitaらの方法(Miyashita,M.et al, J.Org.Chem., Vol.42,3772,1977)の手法により、ピリジニウムp-トルエンスルホナート(PPTS)存在下、化合物(a)に3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を作用させて、化合物(b)を得る。Miyashitaらの方法(Miyashita,M.et al, J.Org.Chem., Vol.42,3772,1977)の手法により、PPTS存在下、化合物(c)にDHPを作用させて、化合物(d)を得る。そして、Chimentiらの方法(Chimenti, F.et al, J.Med.Chem., Vol.52,2818,2009、Idem., Eur.J.Med.Chem., Vol.43,2262,2008)のアルドール縮合反応により化合物(b)と化合物(d)から化合物(e)を得た後、Brenadyらの方法(Brenady,K.F.et al, J.Org.Chem., Vol.44,1438,1979)で脱保護し、化合物(f)を得る。次に、Olsenらの方法(Olsen,R.K.et al, J.Org.Chem., Vol.60,6025,1995)に従い、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)存在下での化合物(g)または/および化合物(h)と化合物(f)との脱水縮合により、化合物(1−1)を得ることができる。
【0095】
【0096】
例えば、化合物(1−2)は以下のような既知の有機合成法によって合成できる。以下のスキームにおいて、L、L、X、Y、Y、Y、Y、Y、Y、r、m、m、m、mおよびnは前記項3の記載と同一の定義である。Leisersonらの方法(Leiserson,J.L.et al, Org.Synth.III,183,1955)での化合物(i)と化合物(j)のフリーデルクラフツ反応によって、化合物(k)を得る。Duanらの方法(Duan,X-F.et al, J.Org.Chem., Vol.71,9873,2006)に準じた亜鉛、四塩化チタン存在下での化合物(l)と化合物(k)の反応で化合物(m)を得たのち、McOmieらの方法(McOmie,J.F.W.et al, Tetraheron, Vol.24,2289,1968)に従った脱保護により、化合物(n)を得る。Olsenらの方法(Olsen,R.K.et al, J.Org.Chem., Vol.60,6025,1995)に従った4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)存在下での化合物(g)または/および化合物(h)と化合物(n)との脱水縮合により、化合物(1−2)を得ることができる。
【0097】
【0098】
例えば、化合物(1−3)は、前記化合物(1−2)の合成方法の化合物(l)を化合物(o)に変えることにより合成できる。以下の式において、R、R、L、L、Y、Y、Y、Y、Y、Y、m、m、mおよびmは前記項3の記載と同一の定義である。

【0099】
例えば、化合物(1−4)は以下のような既知の有機合成法によって合成できる。以下のスキームにおいて、R、R、L、L、Y、Y、Y、Y、Y、Y、m、m、mおよびmは前記項3の記載と同一の定義である。Drapoらの方法(Drapo,J.R.et al, Syn.Comm., Vol.39,85,2009)に準じた化合物(p)と化合物(q)との縮合反応によって、化合物(r)を得たのち、McOmieらの方法(McOmie,J.F.W.et al, Tetrahedron, Vol.24,2289,1968)に従った脱保護により、化合物(s)を得る。Olsenらの方法(Olsen,R.K.et al, J.Org.Chem., Vol.60,6025,1995)に従った4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)存在下での化合物(g)または/および化合物(h)と化合物(s)との脱水縮合により、化合物(1−4)を得ることができる。

【0100】
次に、液晶組成物に含有されるこの他の液晶性化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(2−1−1)は、特開2000−053602号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1−1)および化合物(3−5−1)は、特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(5)のvが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。vが7である化合物(5)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0101】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0102】
最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0103】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。PSAモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【0104】
本発明の液晶表示素子は、少なくとも一方の基板に電極層を有する2つの基板から構成され、この2つの基板の間に本発明の液晶組成物、または本発明の化合物が重合した化合物を含む液晶組成物を配置する事を特徴とする。例えば、アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つのガラス基板からなり、それぞれのガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)、画素、着色層などが形成される。ガラス基板には、例えば、アルミノケイ酸ガラスまたはアルミノホウケイ酸ガラスが用いられる。電極層は、酸化インジウム−錫(Indium-Tin Oxide)や酸化インジウム−亜鉛(Indium-Zinc Oxide)が、一般的に使用される。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。
【0106】
合成によって得られた化合物は、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、紫外/可視分光度法(UV/Vis)などにより同定した。化合物の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。まず、各分析方法について説明をする。
【0107】
H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン製)を用いた。測定は、実施例などで製造したサンプルを、CDClなどのサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回などの条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0108】
HPLC分析:測定装置は、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリル/水(容量比:80/20)を用い、流速は1mL/分に調整した。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。
試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μLを試料室に導入した。
記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。得られたクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0109】
HPLCより得られたクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。クロマトグラムにより液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をより正確に求めるには、クロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶性化合物成分(被検成分)と基準となる液晶性化合物(基準物質)を同時にHPLCにより測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をクロマトグラムより正確に求めることができる。
【0110】
UV/Vis分析:測定装置は、島津製作所製のPharmaSpec UV‐1700を用いた。検出波長は190nmから700nmとした。
試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0111】
DSC測定:パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、融点を決定した。
【0112】
[実施例1]
下記の経路により、化合物(1−1−1−1)を合成した。
【0113】
第1工程:化合物(T−1)の合成
窒素雰囲気下、p−アセトフェノール(10.0g)、ピリジニウムp-トルエンスルホナート(PPTS)(0.44g)、ジクロロメタン(300mL)の混合物に氷冷下、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)(18.5g)のジクロロメタン(20mL)溶液を滴下した。滴下終了後、室温で16時間撹拌した。反応溶液を水洗し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、化合物(T−1)を無色結晶として定量的に得た。
【0114】
第2工程:化合物(T−2)の合成
窒素雰囲気下、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(10.0g)、PPTS(0.87g)、ジクロロメタン(300mL)の混合物に氷冷下、DHP(36.5g)のジクロロメタン(20mL)溶液を滴下した。滴下終了後、室温で16時間撹拌した。反応溶液を水洗し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、化合物(T−2)を油状物として定量的に得た。
【0115】
第3工程:化合物(T−3)の合成
窒素雰囲気下、(T−1)(10.0g)、(T−2)(13.9g)、水酸化バリウム八水和物(14.3g)、メタノール(200mL)を40℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液を減圧下溶媒留去し、残渣に水を加え1M塩酸で中和した。有機層を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、化合物(T−3)を油状物として定量的に得た。
【0116】
第4工程:化合物(T−4)の合成
窒素雰囲気下、(T−3)(24.0g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS)(0.22g)、メタノール(200mL)を室温で16時間撹拌した。反応溶液の溶媒を減圧下留去した後、残渣に水を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。有機層を酢酸エチルで抽出、次いで水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=5:5(容量比))で精製し、化合物(T−4)を黄色結晶(5.2g)として得た。
【0117】
第5工程:化合物(1−1−1−1)の合成
窒素雰囲気下、(T−4)(2.85g)、メタクリル酸(3.39g)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.40g)、ジクロロメタン(120mL)の混合物に氷冷下、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(8.12g)のジクロロメタン(30mL)溶液を滴下し、15時間撹拌した。反応溶液中の析出物をろ過後、有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容量比))で精製後、トルエンとエタノールの混合溶媒より再結晶し、化合物(1−1−1−1)を淡黄色結晶(1.84g)として得た。
融点:116℃
H−NMR(CDCl;δ ppm):8.08(d,2H),7.79(d,1H),7.57(d,1H),7.55(dd,1H),7.48(d,1H),7.34(d,1H),7.28(d,2H),6.39(s,1H),6.33(s,1H),6.31(s,1H),5.81(t,1H),5.77(t,1H),5.76(t,1H),2.09(s,3H),2.03(s,3H),2.02(s,3H).
【0118】
[実施例2]
下記の経路により、化合物(1−1−2−1)を合成した。
【0119】
第1工程:化合物(1−1−2−1)の合成
メタクリル酸をアクリル酸(4.05g)に変更した他は、実施例1の第5工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−1−2−1)を淡黄色結晶(1.82g)として得た。
融点:160℃
H−NMR(CDCl;δ ppm):8.08(d,2H),7.78(d,1H),7.56−7.55(m,2H),7.47(d,1H),7.34(d,1H),7.30(d,2H),6.67−6.58(m,3H),6.38−6.25(m,3H),6.09−6.03(m,3H).
【0120】
[実施例3]
実施例1および実施例2の方法に従い、化合物(1−1−1−1)から化合物(1−1−1−12)、化合物(1−1−2−1)から化合物(1−1−2−12)、化合物(1−1−3−1)、化合物(1−1−4−1)、および化合物(1−1−4−2)を製造する。実施例1で示した化合物(1−1−1−1)および実施例2で示した化合物(1−1−2−1)も再掲する。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
[実施例4]
下記の経路により、化合物(1−2−1−1)を合成した。
【0130】
第1工程:化合物(T−5)の合成
窒素雰囲気下、1,2−ジメトキシベンゼン(10.0g)、ジクロロメタン(150mL)の混合物に氷冷下、塩化アルミニウム(9.65g)を加え撹拌した。次に4−メトキシベンゾイルクロリド(12.4g)のジクロロメタン(100mL)を加えた後、氷浴をはずし、室温にて16時間撹拌した。反応溶液を氷水に注ぎ、有機層をジクロロメタンで抽出し、水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容量比))で精製し、化合物(T−5)を無色結晶(18.9g)として得た。
【0131】
第2工程:化合物(T−6)の合成
窒素雰囲気下、亜鉛(18.0g)とテトラヒドロフラン(THF)(600mL)の混合物中、−10℃で四塩化チタン(25.8g)を滴下した後、2.5時間加熱還流した。室温まで放冷し、(T−5)(10.0g)とシクロヘキサノン(3.60g)のTHF(100mL)溶液を加え、4時間加熱還流した。反応溶液を10%炭酸カリウム水溶液に注ぎ、有機層を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容量比))で精製し、化合物(T−6)を無色結晶として定量的に得た。
【0132】
第3工程:化合物(T−7)の合成
窒素雰囲気下、(T−6)(10.1g)のジクロロメタン(100mL)溶液に−60℃で1Mの三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(100mL)を滴下し、室温にて16時間撹拌した。反応溶液を氷水に注ぎ、有機層を酢酸エチルで抽出した後、水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=5:5(容量比))で精製し、化合物(T−7)をオレンジ色固体(3.80g)として得た。
【0133】
第4工程:化合物(1−2−1−1)の合成
(T−4)を(T−7)(2.80g)に変更した他は、実施例1の第5工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−2−1−1)を無色結晶(1.82g)として得た。
融点:119℃
H−NMR(CDCl;δ ppm):7.16(d,1H),7.13(d,2H),7.04(d,2H),7.02−7.00(m,2H),6.33(s,1H),6.27−6.26(m,2H),5.75−5.74(m,1H),5.71−5.70(m,2H),2.31−2.29(m,2H),2.25−2.23(m,2H),2.06(s,3H),2.00−1.99(m,6H),1.65−1.54(m,6H).
【0134】
[実施例5]
実施例4および実施例2の方法に従い、化合物(1−2−1−1)から化合物(1−2−1−8)、化合物(1−2−2−1)から化合物(1−2−2−8)、化合物(1−3−1−1)から化合物(1−3−1−6)、および化合物(1−3−2−1)から化合物(1−3−2−6)を製造する。実施例4で示した化合物(1−2−1−1)も再掲する。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
[実施例6]
下記の経路により、化合物(1−4−2−1)を合成した。
【0144】
第1工程:化合物(T−8)の合成
窒素雰囲気下、亜鉛(36.5g)とTHF(600mL)の混合物中、−5℃で四塩化チタン(53.0g)を滴下後、室温まで昇温し0.5時間撹拌し、さらに2.5時間加熱還流した。反応溶液を−5℃に冷却し、ピリジン(11.1g)を添加し、10分間撹拌した。次に4’メトキシアセトフェノン(10.1g)と3',4’−ジメトキシアセトフェノン(10.1g)のTHF(300mL)溶液を加え、10時間加熱還流した。反応溶液を10%炭酸カリウム水溶液に注ぎ、有機層を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容量比))で精製し、化合物(T−8)を無色油状物(7.98g)として得た。
【0145】
第2工程:化合物(T−9)の合成
(T−6)を(T−8)(6.00g)に変更した他は、実施例4の第3工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(T−9)を茶色結晶(3.15g)として得た。
【0146】
第3工程:化合物(1−4−2−1)の合成
(T−7)を(T−9)(3.30g)に、メタクリル酸をアクリル酸に変更した他は、実施例1の第5工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−4−2−1)を無色油状物(1.14g)として得た。
H−NMR(CDCl;δ ppm):7.27−7.24(m,3H),7.19−7.17(m,2H),7.14(d,2H),6.64−6.57(m,3H),6.37−6.24(m,3H),6.04−6.00(m,3H),1.93(d,3H),1.89(d,3H).
【0147】
[実施例7]
実施例6および実施例1の第5工程に記載の方法に従い、化合物(1−4−1−1)から化合物(1−4−1−9)、および化合物(1−4−2−1)から化合物(1−4−2−9)を製造する。実施例6で示した化合物(1−4−2−1)も再掲する。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
[比較例1]
特開平5−320083号公報および実施例1の第5工程に記載の方法に従い、化合物(A−1)を合成した。
【0153】
組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。測定目的物が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0154】
母液晶の成分とその割合は下記のとおりである。
【0155】
特性値の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association以下JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0156】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0157】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0158】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0159】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0160】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0161】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。
【0162】
電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0163】
電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0164】
電圧保持率(VHR−3;25℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、紫外線を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH−500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR−3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。VHR−3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0165】
電圧保持率(VHR−4;25℃で測定;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR−4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0166】
応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に、15Vの電圧を印加しながら25mW/cmの紫外線(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製のEXECURE4000−D型ランプ)を400秒間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率0%から90%に変化するのに要した立ち上がり時間(rise time;ミリ秒)である。
【0167】
比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0168】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0169】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0170】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。
【0171】
比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、第一成分を除く液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0172】
【0173】
[比較例2]
この組成物は本発明の第一成分を含有していない液晶組成物である。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−10−1) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11−1) 6%
5−DhH1OB(2F,3F)−O2 (2−12−1) 3%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−14−1) 5%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4
(2−15−1) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
3−HH−4 (3−1−1) 5%
1−BB−3 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−3 (3−5−1) 3%
V−HHB−1 (3−5−1) 3%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
NI=83.8℃;Tc<−20℃;Δn=0.121;Δε=−4.0;Vth=2.07V;τ=8.0ms;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.2%.
【0174】
[比較例3]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−10−1) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11−1) 6%
5−DhH1OB(2F,3F)−O2 (2−12−1) 3%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−14−1) 5%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4
(2−15−1) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
3−HH−4 (3−1−1) 5%
1−BB−3 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−3 (3−5−1) 3%
V−HHB−1 (3−5−1) 3%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に、比較例1で合成した下記化合物(A−1)を0.3重量部添加した。

NI=83.6℃;Tc<−20℃;Δn=0.121;Δε=−4.0;Vth=2.05V;τ=7.3ms;VHR−1=99.2%;VHR−2=98.1%.
【0175】
[実施例8]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−10−1) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11−1) 6%
5−DhH1OB(2F,3F)−O2 (2−12−1) 3%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−14−1) 5%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4
(2−15−1) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
3−HH−4 (3−1−1) 5%
1−BB−3 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−3 (3−5−1) 3%
V−HHB−1 (3−5−1) 3%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1−1)を0.3重量部添加した。

NI=83.5℃;Tc<−20℃;Δn=0.121;Δε=−4.0;Vth=2.04V;τ=5.7ms;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.2%.
【0176】
[実施例9]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 19%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 15%
5−HH2B(2F,3F)−O2 (2−7−1) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 10%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 4%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (2−16−1) 3%
3−HBB(2F,3CL)−O2 (2−17−1) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 25%
3−HHEH−3 (3−4−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
3−HBB−2 (3−6−1) 3%
3−HB(F)HH−5 (3−10−1) 3%
5−HBBH−3 (3−11−1) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−1−1)を0.3重量部添加した。

NI=81.3℃;Tc<−20℃;Δn=0.090;Δε=−2.8;Vth=2.38V;τ=5.4ms;VHR−1=99.2%;VHR−2=97.6%.
【0177】
[実施例10]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 20%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 15%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9−1) 7%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−10−1) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 9%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 5%
3−H1OCro(7F,8F)−5 (2−18−1) 3%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 3%
V−HH−3 (3−1−1) 18%
1V−HH−3 (3−1−1) 5%
3−HHB−O1 (3−5) 3%
3−HHEBH−3 (3−9−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (3−12−1) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−2−2−1)を0.3重量部添加した。

NI=77.5℃;Tc<−20℃;Δn=0.106;Δε=−3.5;Vth=2.14V;τ=4.8ms;VHR−1=99.3%;VHR−2=97.9%.
【0178】
[実施例11]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 20%
1V2−H2B(2F,3F)−O2 (2−2−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6−1) 8%
3−HHB(2F,3F)−1 (2−6−1) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11−1) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 6%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 10%
3−HH−4 (3−1−1) 10%
1V−HH−3 (3−1−1) 8%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−4−2−1)を0.4重量部添加した。

NI=79.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.095;Δε=−3.8;Vth=2.08V;τ=5.1ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.2%.
【0179】
[実施例12]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 9%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 21%
V−HH−3 (3−1−1) 28%
3−HB−O2 (3−2) 5%
1−BB−3 (3−3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1−1)を0.4重量部添加した。

NI=74.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.100;Δε=−3.1;Vth=2.22V;τ=3.8ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=97.9%.
【0180】
[実施例13]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 10%
V−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 10%
V−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1) 8%
1V2−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1) 4%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 6%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−13−1) 10%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19−1) 5%
3−HH1OB(2F,3F,6Me)−O2
(2) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
VFF−HH−3 (3−1) 6%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13−1) 4%
1O1−HBBH−5 (−) 3%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−4−1−1)を0.2重量部添加した。

NI=85.4℃;Tc<−20℃;Δn=0.106;Δε=−3.8;Vth=1.94V;τ=6.1ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=97.8%.
【0181】
[実施例14]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 7%
3−B(2F,3F)B(2F,3F)−O2
(2−5−1) 3%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 12%
2−HH−3 (3−1−1) 20%
3−HH−4 (3−1−1) 9%
3−HH−O1 (3−1) 3%
3−HB−O2 (3−2) 3%
V2−BB−1 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 3%
1−BB(F)B−2V (3−8−1) 5%
3−HHEBH−4 (3−9−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−1−1)を0.15重量部、

および下記化合物(1−1−2−1)を0.15重量部添加した。

NI=76.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.100;Δε=−2.9;Vth=2.24V;τ=4.0ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.1%.
【0182】
[実施例15]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3−1) 6%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 5%
2O−B(2F,3F)B(2F,3F)−O6
(2−5) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6−1) 8%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 7%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 10%
2−HH−3 (3−1−1) 22%
3−HH−4 (3−1−1) 8%
3−HH−O1 (3−1) 5%
V2−BB−1 (3−3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
2−BB(F)B−3 (3−8−1) 4%
3−HHEBH−4 (3−9−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−2−1)を0.3重量部添加した。

NI=77.2℃;Tc<−20℃;Δn=0.092;Δε=−3.0;Vth=2.28V;τ=3.9ms;VHR−1=99.2%;VHR−2=97.9%.
【0183】
[実施例16]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 9%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 21%
V−HH−3 (3−1−1) 26%
3−HB−O2 (3−2) 7%
1−BB−3 (3−3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−2−8)を0.3重量部添加した。

NI=74.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.102;Δε=−3.1;Vth=2.21V;τ=3.9ms;VHR−1=99.0%;VHR−2=97.8%.
【0184】
[実施例17]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 9%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 21%
V−HH−3 (3−1−1) 26%
3−HB−O2 (3−2) 7%
1−BB−3 (3−3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−4−1)を0.3重量部添加した。

NI=74.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.102;Δε=−3.1;Vth=2.20V;τ=4.1ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=97.8%.
【0185】
[実施例18]
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 9%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4−1) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8−1) 21%
V−HH−3 (3−1−1) 28%
3−HB−O2 (3−2) 5%
1−BB−3 (3−3−1) 7%
3−HHB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
5−B(F)BB−2 (3−7−1) 4%
上記組成物100重量部に下記化合物(1−1−4−2)を0.4重量部添加した。

NI=73.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.100;Δε=−3.1;Vth=2.24V;τ=4.0ms;VHR−1=99.0%;VHR−2=98.0%.
【0186】
実施例8から実施例18の組成物は、比較例2のそれと比べて短い応答時間を有する。さらに、実施例8から実施例18の組成物は、比較例3のそれと比べて短い応答時間を有する。従って、本発明の式(1−1−1−1)、式(1−1−2−8)、式(1−1−4−1)、式(1−1−4−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−2−1)、式(1−4−1−1)、式(1−4−2−1)に代表される共役環同士の共役系をつなげる接続基を有する重合性化合物およびその重合性化合物を用いた液晶組成物は、応答時間の短縮に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。このような組成物を含有する液晶表示素子は、短い応答時間、適切なプレチルト、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子となるので、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いることができる。