(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記円弧状画線領域は、前記微小円弧状画線領域を第一の方向、かつ、第一のピッチにより規則的に複数配列した微小円弧状画線領域群を、第二の方向、かつ、前記第一のピッチと同一又は異なる第二のピッチにより複数配列して形成したことを特徴とする請求項1記載の立体表示形成体。
前記仮想領域作製工程において、前記仮想要素を第一の方向、かつ、第一のピッチにより規則的に複数配列した仮想要素群を、第二の方向、かつ、前記第一のピッチと同一又は異なる第二のピッチにより複数配列し、前記曲画線領域作製工程において、前記曲画線を、前記第一の方向、かつ、第三のピッチにより複数配列した曲画線群を、前記第二の方向、かつ、前記第三のピッチと同一又は異なる第四のピッチにより規則的に複数配列したことを特徴とする請求項3記載の立体表示形成体の作製方法。
前記曲画線領域作製工程において、前記円弧状の曲画線を前記仮想要素と異なるピッチでマトリクス状に配列した第一の曲画線領域と、前記円弧状の曲画線をミラー反転した第二の曲画線を前記仮想要素と異なるピッチでマトリクス状に配列した第二の曲画線領域を前記第一の曲画線領域に隣接して配置し、前記合成領域作製工程において、各々の前記仮想要素の一部に各々の前記曲画線の一部が重なるように前記仮想領域と前記各曲画線領域を配置して第一の合成領域と第二の合成領域を作製することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の立体表示形成体の作製方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0023】
図1は、本発明における立体表示形成体(1)が付与された偽造防止媒体(A1)の平面図である。紙及びプラスチックカード等の一般的な印刷に用いられる基材(2)や、シート状のアルミ又はパールインキが塗工された用紙等の光輝性を有する基材(2)上に、店舗名及び券種等の情報が、シアン及びマゼンタ等の一般的に用いられるインキにより付与されている。偽造防止媒体(A1)は、基材(2)上における少なくとも一部に、立体表示形成体(1)を備えている。立体表示形成体(1)は、拡大図に示すように、基材(2)に対して所定の角度から観察した場合に、立体的に視認される虚像(3)を有する。
【0024】
図2は、立体表示形成体(1)を示す平面図である。
図2に示すように、本発明の立体表示形成体(1)は、光輝性を有する凹状又は凸状の円弧状画線(7a)を有する微小円弧状画線領域(7b)を規則的なピッチでマトリクス状に配列した円弧状画線領域(7)を有する。本発明におけるマトリクス状とは、微小円弧状画線領域(7b)を規則的に配列したものである。また、微小円弧状画線領域(7b)を配列するピッチは、規則的なピッチであれば、同一又は異なっていても良いが、同一のピッチで配列することが望ましい。同一ピッチでの配列とすることで、虚像(3)の表出が鮮明となる。
【0025】
また、「B」の文字から成る虚像(3)は、複数の円弧状画線(7a)により形成される。複数の円弧状画線(7a)は、虚像(3)の原図柄のパーツの一つであり、かつ、上下左右に隣接する微小円弧状画線領域(7b)の円弧状画線(7a)同士が、原図柄の最も近い部位であるため、形状のそれぞれ異なる複数の円弧状画線(7a)のモアレ拡大現象により虚像(3)が形成される。
【0026】
図3は、円弧状画線領域(7)を示す一例図である。円弧状画線(7a)を有する微小円弧状画線領域(7b)を第一の方向(S1)、かつ、第一のピッチ(P1)により複数配列した微小円弧状画線領域群(7A)を、第二の方向(S2)、かつ、第二のピッチ(P2)により複数配列した円弧状画線領域(7)を示す平面図である。円弧状画線(7a)は、虚像(3)の原図柄(4)のパーツ(5)の一つであり、パーツ(5)は、隣接するパーツ同士(5)が、原図柄(4)の異なる部位、かつ、原図柄(4)の最も近い部位をサンプリングして隣接する微小円弧状画線領域(7b)に配置される。また、虚像(3)は、円弧状画線(7a)により形成された複数のパーツ(5)により形成される。なお、円弧状画線(7a)を有する微小円弧状画線領域(7b)を配列する各々のピッチ(P1及びP2)及び大きさは、後述する立体表示形成体を作製する仮想要素(6a)と曲画線(8a)により適宜定まるため、説明の便宜上、円弧状画線(7a)と、仮想要素(6a)及び曲画線(8a)の関係について併せて説明する。
【0027】
図4は、円弧状画線(7a)と仮想要素(6a)の関係を示す一例図である。
図4に示すように、仮想領域(6)は、横幅(W1)、縦幅(W2)の大きさから成る、虚像(3)の原図柄と同一形状の「B」の文字の仮想要素(6a)を第一の方向(S1)、かつ、第一のピッチ(P1)に複数配列した仮想要素群(6A)を、第二の方向(S2)、かつ、第二のピッチ(P2)により規則的に複数配列して成る。さらに、各々の円弧状画線(7a)は、各仮想要素(6a)内に配置されて成る。各仮想要素(6a)内に配置される円弧状画線(7a)は、虚像(3)の原図柄(4)のパーツ(5)の一つである。パーツ(5)は、隣接するパーツ同士(5)が、原図柄(4)の異なる部位、かつ、原図柄(4)の最も近い部位であるため、各々の円弧状画線(7a)の形状は異なる。
【0028】
まず、仮想要素(6a)と複数の仮想要素(6a)により形成された仮想領域(6)について説明する。
図5は、仮想領域(6)を示す一例図である。
図5に示すように、仮想領域(6)は、横幅(W1)、縦幅(W2)の大きさから成る、虚像(3)の原図柄と同一形状の「B」の文字の仮想要素(6a)を第一の方向(S1)、かつ、第一のピッチ(P1)に複数配列した仮想要素群(6A)を、第二の方向(S2)、かつ、第二のピッチ(P2)により規則的に複数配列して成る。複数の円弧状画線(7a)により虚像(3)が形成される。
【0029】
虚像(3)を形成する原図柄(4)の形状は、特に限定されず、文字、図形及び記号等を使用することができる。仮想要素(6a)の横幅(W1)及び縦幅(W2)は、それぞれ5〜1000μmである。仮想要素(6a)の第一のピッチ(P1)及び第二のピッチ(P2)は、5〜1000μmである。各幅(W1及びW2)又は各ピッチ(P1及びP2)が5μm未満の場合は、後述する円弧状画線(7a)の形成が困難となる。また、各幅(W1及びW2)又は各ピッチ(P1及びP2)が1000μmを超える場合には、虚像(3)を立体的に視認する際の視認性が低下する。なお、本発明における仮想要素(6a)は、後述するパーツ(5)の関連を明確にするため、便宜上設けた仮想的な要素であり、実際に存在するものではない。なお、第一のピッチ(P1)と第二のピッチ(P2)は、同一又は異なるピッチでも良い。
【0030】
図6は、仮想要素(6a)内に配列された円弧状画線(7a)と、パーツ(5)の関係を示す一例図である。
図6(a)に示すように、円弧状画線(7a)は、虚像(3)の原図柄のパーツの一つであり、かつ、上下左右に隣接する円弧状画線(7a)同士が、原図柄の異なる部位、かつ、原図柄の最も近い部位である。よって、パーツ(5)は、隣接するパーツ(5)同士が、原図柄(4)の異なる部位、かつ、原図柄(4)の最も近い部位である。また、虚像(3)は、仮想領域(6)に配置された複数のパーツ(5)から成るモアレ拡大現象により、一つの虚像(3)が形成される。各々のパーツ(5)は、
図6(b)に示すように、光輝性を有する凹状又は凸状の円弧状画線(7a)から成り、円弧状画線(7a)を規則的に複数配列して形成した微小円弧状画線領域群(7A)により虚像(3)が発現する。
【0031】
次に、円弧状画線(7a)について、説明する。
図7(a)に示すように、円弧状画線(7a)は、横幅(W4)及び縦幅(W5)の大きさを有する画線幅(W3)の曲画線(8a)を、第一の方向(S1)、かつ、第三のピッチ(P3)により複数配列して形成した曲画線群(8A)が、
図7(b)に示すように、各々の仮想要素(6a)上の少なくとも一部に一つの曲画線(8a)が配置されて、曲画線(8a)と仮想要素(6a)が重なる部分でのみ形成される。
【0032】
円弧状画線(7a)は、虚像(3)を形成する曲画線(8a)と仮想要素(6a)と関連して適宜定まり、円弧状画線(7a)が凸形状の場合の高さは、5〜1000μmの範囲内で適宜設定することができる。高さが1000μm以上である場合には、基材(2)に対して、凹形状又は凸形状の画線として作製しづらくなる。また、円弧状画線(7a)の深さ又は高さ方向の形状は、蒲鉾形状、半円形状又は半楕円形状等の滑らかな曲面を有することが好ましい。円弧状画線(7a)の深さ又は高さ方向の断面形状が、前述した形状を取ることにより、輝点の動き方が曲面に沿うことにより滑らかとなる。
【0033】
次に、円弧状画線(7a)を形成する曲画線(8a)について説明する。
図8(a)に示すように、曲画線(8a)は、第一の方向(S1)、かつ、第三のピッチ(P3)により配列して形成した曲画線群(8A)を、さらに、第二の方向(S2)、かつ、第四のピッチ(P4)により規則的に複数配列した曲画線領域(8)を形成する。曲画線(8a)の第三のピッチ(P3)は、5〜1000μmの範囲内において、第一のピッチ(P1)と異なるピッチで適宜設定される。また、第四のピッチ(P4)は、5〜1000μmの範囲内において、第二のピッチ(P1)と異なるピッチで適宜設定される。各々のピッチが同一な場合には、モアレが出現しないため、虚像を形成することができない。各々のピッチ(P3、P4)が5μm未満である場合には、基材(2)上に円弧状画線(7a)を形成しづらくなり、好ましくない。各々のピッチ(P3、P4)が1000μmを超える場合には、隣り合う円弧状画線(7a)間の光輝性を有しない領域が肉眼で視認可能となる。それにより、虚像(3)内において、光輝性を有しない面積が存在し、虚像(3)を立体的に視認する際の視認性が低下することから、好ましくない。なお、第三のピッチ(P3)と第四のピッチ(P4)は、同一又は異なるピッチでも良い。
【0034】
曲画線(8a)の横幅(W4)及び縦幅(W5)は、各々のピッチ(P3、P4)を考慮し、5〜3000μmの範囲内で適宜設定される。横幅(W4)及び縦幅(W5)が5μm未満である場合には、基材(2)上に円弧状画線(7a)を形成しづらいため、好ましくない。横幅(W4)及び縦幅(W5)が3000μm以上である場合には、横幅(W4)及び縦幅(W5)に対応して仮想要素(6a)の形状も大きくする必要がある。仮想要素(6a)を大きくした際には、両眼視差により虚像(3)が立体視しづらくなり、好ましくない。曲画線(8a)の画線幅(W3)は、5〜100μmの範囲内で適宜設定される。画線幅(W3)が5μm未満の場合は、虚像(3)の発現性に欠ける。一方、100μmを超えた場合には、虚像(3)が立体視しづらくなる。
【0035】
図8(c)は、曲画線(8a)の一つを拡大した図である。曲画線(8a)は、始点(U)、頂点(T)及び終点(D)を有する円弧状の画線である。
【0036】
本発明の立体視可能な画像は、詳細については後述するが、基材(2)に対する観察角度を変化させることで、動的に視認することが可能である。動的に視認される理由は、基材(2)に対する観察角度を変化させることで、観察角度の変化に伴い、光輝性を有する曲画線(8a)の照明光を反射する箇所が変化するためである。曲画線(8a)を円弧状とすることで、曲画線(8a)の照明光を反射する箇所は、連続的に画線上を変化していくため、虚像(3)が連続的に動いているように視認される。
【0037】
曲画線(8a)において、始点(U)と終点(D)を結ぶ直線を基準線(H1)とした場合、始点(U)において、基準線(H1)に対する円弧状の曲画線(8a)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)は、2〜90度の範囲内で、適宜設定することが可能である。
【0038】
曲画線(8a)の始点(U)と終点(D)間とにおいて、光源からの入射光は、両眼視差が可能な範囲内で異なる方向に反射するため、虚像(3)として視認される。始点(U)において、基準線(H1)に対する円弧状の曲画線(8a)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)が2度未満である場合には、光源からの反射光が、ほぼ同じ方向に反射するため、適当な観察距離において両眼視差が不可能となり、好ましくない。
【0039】
反対に、始点(U)において、基準線(H1)に対する円弧状の曲画線(8a)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)が90度を超える場合には、始点(U)側と、終点(D)側とで、異なる方向に入射光は反射するが、両眼視差可能な範囲外となるため、好ましくない。
【0040】
また、終点(D)において、基準線(H1)に対する円弧状の曲画線(8a)の接線である立ち下がり線(H3)が成す角度(θ2)においても、前述の始点(U)側と同様の理由から、2〜90度の範囲内で、適宜設定することが可能である。
【0041】
曲画線(8a)は、始点(U)において、基準線(H1)と基準線(H1)に対する曲画線(8a)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)とは、全ての曲画線(8a)において、同じであることが好ましい。また、終点(D)において、基準線(H1)と基準線(H1)に対する曲画線(8a)の接線である立ち下がり線(H3)が成す角度(θ2)も、全ての曲画線(8a)において、同じ角度とすることが、好ましい。
【0042】
前述のとおり、曲画線(8a)は、虚像(3)を両眼視差により立体視する際に、始点(U)側の角度(θ1)と、終点(D)側の角度(θ2)が同じ角度である場合、曲画線(8a)からの反射光の方向は、全ての曲画線(8a)において、同一方向となる。よって、肉眼において、明瞭に虚像(3)を視認することが可能となる。一方、
図8(d)に示すように、始点(U)側の角度(θ1)と、終点(D)側の角度(θ2)が異なる角度である場合、曲画線(8a)からの反射光の方向にバラつきが生じる。それにより、虚像(3)がぼやけた画像として視認され、好ましくない。
【0043】
また、円弧状画線(7a)を形成する曲画線(8a)の本数は、
図9(a)に示すように、一本に限定されず、複数の同一周期の曲画線(8a)を隣接又は近接することにより形成しても良い。同一周期の曲画線(8a)を隣接又は近接させて形成することで、曲画線(8a)による光の反射量が増加し、虚像が明瞭となる。ただし、一つの円弧状画線(7a)を形成する曲画線(8a)の合計幅は、前述した5〜100μmの範囲内で適宜設定する必要がある。また、曲画線(8a)は、一例に挙げた円弧状の画線に限定されず、
図9(b)に示す円形状の画線、
図9(c)に示す一定の周期を有する波線、
図9(d)に示す楕円等を使用することができる。なお、曲画線(8a)に円形状の画線を使用する場合は、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)のピッチが異なるため、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)の重なる部分が徐々にずれていき、隣接する複数の仮想要素(6a)に一つの曲画線(8a)が重なる場合が生じる。この場合には、観察時に虚像(3)にノイズが生じてしまうため、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)が重なる部分を全て抽出する場合、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)の配列ピッチを考慮し、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)が一対一として重なる部分のみを抽出して円弧状画線(7a)を作製する。
【0044】
パーツ(5)を形成する光輝性を有する凹状又は凸状の円弧状画線(7a)において、円弧状画線(7a)が凸状の場合は、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料を使用し、凹版印刷、スクリーン印刷及びフレキソ印刷等の盛り上がりのある画線を形成する方法を使用する。なお、明暗フリップフロップ性とは、観察角度の変化により明度の変化が生じることであり、カラーフリップフロップ性とは、観察角度の変化により色相の変化が生じることである。
【0045】
また、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料には、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄等の一般的な金属粉顔料や、虹彩色パール顔料又は鱗片状顔料等の一般的なパール顔料を含むインキや、透明インキ又はグロス系のインキがある。
【0046】
また、凹状の円弧状画線(7a)を形成する場合には、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料から成る基材(2)に用いる。明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料には、アルミ又はステンレス等の一般的な金属材料や、フィルム又はプラスチック等の樹脂材料の他に、パールインキや、平滑な表面を形成可能な塗料等が塗工された基材(2)がある。なお、基材(2)を凸形状又は凹形状に変形させて形成する方法としては、光輝性を有する基材(2)を、エンボス加工又はレーザ加工等により基材(2)を変形させることが可能な公知の加工機を使用する。
【0047】
また、光輝性を有しない基材(2)を用いた際においても、凹形状又は凸形状に変形させた後、基材(2)における変形箇所上に、光輝性を有するインキを印刷により付与することで円弧状画線(7a)を形成することが可能である。例えば、公知の抄紙機を用いてすき入れにより基材(2)を、凹形状又は凸形状に変形させて後、変形箇所上に、光輝性を有するインキをベタ印刷により付与することで、円弧状画線を形成する。なお、本実施の形態において説明した円弧状画線の形状、画線幅、高さ又は深さ等の数値は、株券、有価証券、証紙、商品券等の金券類、旅券、通帳類、運転免許証又は身分証明書等の偽造防止が必要な印刷物に対して良好な数値の一例であり、看板又はポスター類等の大型の印刷物に使用する場合には、前述した円弧状画線の形状、画線幅、高さ又は深さ等の数値を、使用する目的の印刷物の大きさに応じて比例して拡大すれば良い。
【0048】
(視認原理)
本発明の立体表示形成体(1)は、基材(2)に対する観察角度を変化させることで、動的に視認することが可能である。動的に視認される理由は、基材(2)に対する観察角度を変化させることで、観察角度の変化に伴い、光輝性を有する凸形状又は凹形状の円弧状画線(7a)の照明光を反射する箇所が変化するためである。パーツ(5)を円弧状とすることで、照明光を反射する箇所は、連続的に円弧状の画線上に従って変化していく。
【0049】
図10は、本発明の立体表示形成体(1)の視認原理を示す模式図である。
図10に示すように、円弧状画線(7a)を形成する、光輝性を有する材料は、光源(S)からの入射光を反射する。円弧状画線(7a)に光を照射すると、円弧状画線(7a)で反射光(V1、V2、V3、V4及びV5)が散乱する。近傍で散乱された光同士は干渉して、円弧と直交する面の方向を主成分(強度が最大)として、光が円弧状画線(7a)から方向性をもって反射される。この光は、方向性を持っているが、光源が白色光であることと、円弧状画線(7a)の散乱が完全ではないことが加わり、ある程度の角度範囲で広がった分布を有する。円弧状画線(7a)に光を照射することにより、円弧状画線(7a)における全ての点が光を散乱しているが、それぞれの点で散乱された光(V1、V2、V3、V4及びV5)は、前述の方向性を持って放射されている。目を空間のある位置に置いた場合、円弧のいろいろな位置で散乱された光の中で、最大強度で目に散乱光を届けることができる円弧の円周上の点の位置は、
図11のようになる。
【0050】
図11は、光源と目が円弧の中心に対して同一方向にある場合について、光源の位置:S、観測位置(目):G、円弧の中心:O、円弧上の輝点:m1、m2との位置関係を示している。円弧上で明るく見える輝点:m1、m2は、三角形Gom1を含む平面と、基板上の円弧が交わる点である。目を移動させると、それに伴い、輝点は円弧上を移動する。輝点は、円弧上ならばどこでも光ることが可能であるが、前述の三角形で決まる特定の2点だけが明るく見える。いろいろな場所から同時に円弧を観察しても、その位置に対応した場所だけが明るく見えるため、輝点の動き方は、滑らかとなる。なお、円弧状画線(7a)の深さ又は高さ方向の形状は、蒲鉾形状、半円形状又は半楕円形状等の滑らかな曲面を有することが好ましい。円弧状画線(7a)の深さ又は高さ方向の断面形状が、前述した形状を取ることにより、輝点の動き方が曲面に沿うことにより滑らかとなる。
【0051】
図12(a)に示すように、観察者の左目(L)の視野角度はθLであることから、左目(L)には、視野角度θL内にある反射光(V1及びV2)は視認される。一方、反射光(V3、V4及びV5)は、視野角度θLの範囲外であることから、視認されない。よって、円弧状画線(7a)は、観察者の左目(L)において、
図12(b)に示すように、視野角度θL内となる始点(U)側の点線部は、光輝性を有して視認されるが、視野角度θL外となる終点(D)側の実線部は、光輝性を有しない画線として視認される。
【0052】
一方、観察者の右目(R)の視野角度はθRであることから、右目(R)には、視野角度θR内にある反射光(V4及びV5)が視認される。一方、反射光(V1、V2及びV3)は、視野角度θRの範囲外であることから、視認されない。よって、円弧状画線(7a)は、観察者の右目(R)において、
図12(c)に示すように、視野角度θR内となる終点(D)側の点線部は光輝性を有して視認されるが、視野角度θR外となる始点(U)側の実線部は、光輝性を有しない画線として視認される。
【0053】
図12(b)に示す左目(L)で視認される円弧状画線(7a)の光輝性を有して視認される箇所と、
図12(c)に示す右目(R)で視認される円弧状画線(7a)の光輝性を有して視認される箇所は、始点(U)と終点(D)を結ぶ直線である基準線(H1)に対して、左右に位相差を持った画線として視認される。よって、同一画像を複数並んで形成しなくもて、観察者には、
図12(d)に示すように、両眼視差により円弧状画線(7a)が立体画線として視認される。
【0054】
(作製方法)
次に、本実施の形態による立体表示形成体(1)を作製するシステムについて、その構成を示した
図13を用いて説明する。本システムは、入力部(100)、処理部(101)及び出力部(103)を少なくとも備えている。入力部(100)は、本実施の形態の立体表示形成体(1)の作製に必要なデータを入力し、処理部(101)に与える。処理部(101)は、立体表示形成体(1)の作製に必要な演算処理及び画像処理等を画像処理装置で行い、得られた結果を出力部(103)に与える。出力部(103)は、処理部(101)から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてないレーザ彫刻機又は印刷機等に出力する。なお、与えられたデータ及び作製したデータを記録する記憶部(102)を有していても良い。
【0055】
このようなシステムを用いて、本実施の形態による立体表示形成体(1)を作製する方法について、その手順を示した
図14から
図21を用いて説明する。本発明の立体表示形成体(1)の作製方法は、
図14に示すように、仮想要素作製工程(T1)と、仮想領域作製工程(T2)と、曲画線作製工程(T3)と、曲画線領域作製工程(T4)と、合成領域作製工程(T5)と、微小円弧状画線領域群作製工程(T6)と、円弧状画線領域作製工程(T7)から成る。
【0056】
仮想要素作製工程(
T1)は、原図柄に対応するデータを入力部(100)から入力されたデータを基に作製するか、又は処理部(101)において仮想要素(6a)を作製する。仮想領域作製工程(T2)は、仮想要素(6a)を第一の方向、かつ、第一のピッチにより規則的に複数配列した仮想要素群(6A)を、第二の方向、かつ、第一のピッチと同一又は異なる第二のピッチにより複数配列した仮想領域(6)を処理部(101)において作製する。曲画線作製工程(T3)は、所定の画線幅を有する曲線に対するデータを入力部(100)から入力されたデータを基に作製するか、又は処理部(101)において曲画線(8a)を作製する。曲画線領域作製工程(T4)は、曲画線(8a)を、第一の方向、かつ、第三のピッチにより複数配列した曲画線群(8A)を、第二の方向、かつ、第三のピッチと同一又は異なる第四のピッチにより規則的に複数配列した曲画線領域(8)を処理部(101)において作製する。合成領域作製工程(T5)は、各々の仮想要素(6a)の一部に各々の曲画線(8a)の一部が重なるように仮想領域(6)と曲画線領域(8)を配置して合成領域(9)を処理部(101)において作製する。微小円弧状画線領域群作製工程(T6)は、合成領域(9)から、各々の曲画線(8a)と各々の仮想要素(6a)が重なる部分の複数の円弧状画線(7a)を抽出した微小円弧状画線領域群(7A)を処理部(101)によって作製する。円弧状画線領域作製工程(T7)は、微小円弧状画線領域群(7A)を基にレーザ加工装置又は印刷機等の出力部(103)により、基材の表面に凸状又は凹状の光輝性を有する円弧状画線領域(7)を作製する。
【0057】
次に、各工程について詳細に説明する。仮想要素作製工程(T1)は、
図15に示すように、虚像に対応する仮想要素(6a)を処理部(101)が作製するか、又は外部から入力部(100)により入力した仮想領域(6)を形成する基となる原図柄(4)を入力し、処理部(101)により横幅(W1)及び縦幅(W2)の虚像と同一形状の仮想要素(6a)を作製する。
【0058】
仮想領域作製工程(T2)は、
図16に示すように、作製した横幅(W1)及び縦幅(W2)の大きさを有する仮想要素(6a)を、処理部(101)により第一の方向(S1)、かつ、第一のピッチ(P1)に設定して複数配列した仮想要素群(6A)を、第二の方向(S2)、かつ、第二のピッチ(P2)により規則的に複数配列した仮想領域(6)を処理部(101)により設定して作製する。
【0059】
曲画線作製工程(T3)は、
図17(a)に示すように、円弧状又は円形の形状を有する曲画線(8a)を処理部(101)が作製するか、又は外部から入力部(100)により円弧状又は円形の形状の曲線を入力し、処理部(101)により横幅(W4)及び縦幅(W5)の大きさを有する画線幅(W3)の曲画線(8a)を作製する。
【0060】
曲画線領域作製工程(T4)は、
図17(b)に示すように、作製した曲画線(8a)を処理部(101)により第一の方向(S1)、かつ、第三のピッチ(P3)により設定して複数配列した曲画線群(8A)を第二の方向(S2)、かつ、第四のピッチ(P4)により規則的に複数配列した曲画線領域(8)を処理部(101)により設定して作製する。なお、曲画線領域(8)の大きさは、先述した仮想領域(6)と同一又は略同一であることが望ましい。曲画線領域(8)と仮想領域(6)の大きさが同一又は略同一の場合は、仮想領域(6)の中心を基準として、曲画線領域(8)の中心を合わせることにより、後述する合成領域(9)の作製が容易となる。
【0061】
合成領域作製工程(T5)は、
図18に示すように、作製した仮想領域(6)と曲画線領域(8)を基に、各々の仮想要素(6a)の一部に各々の曲画線(8a)の一部が重なるように仮想領域(6)上に曲画線領域(8)を重ね合わせて合成領域(9)を処理部(101)により設定して作製する。なお、合成領域作製工程(T5)の一例としては、仮想領域(6)及び曲画線領域(8)の各領域が共通する位置における任意の少なくとも三つの点を、各領域におけるそれぞれの基準点に設定する。
【0062】
図19は、仮想領域(6)と曲画線領域(8)における、それぞれの基準点を示す模式図である。基準点を設定する際には、仮想領域(6)における任意の三つの点を選ぶ。仮想領域(6)においては、まず、一つ目の基準点(K1)を設定したのち、一つ目の基準点(K1)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(K2)とし、さらに、一つ目の基準点(K1)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(K3)とした。このように、K1、K2及びK3を、仮想領域(6)における基準点に設定した。次に、仮想領域(6)で設定した三つの基準点と共通する位置に、曲画線領域(8)の基準点を設定する。
【0063】
曲画線領域(8)においては、まず、一つ目の基準点(K1´)を設定したのち、仮想領域(6)と同様に、一つ目の基準点(K1´)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(K2´)とする。さらに、一つ目の基準点(K1´)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(K3´)とした。それぞれの各領域における、三つの基準点間の距離は、同一である。このように、仮想領域(6)と曲画線領域(8)が共通する位置における任意の三つの点を、それぞれの基準点とする。
【0064】
なお、各領域が同じ大きさである場合には、各領域における四隅のうち、少なくとも三隅を基準点とすることで、各領域における共通する位置に基準点を設定することが可能である。
【0065】
微小円弧状画線領域群作製工程(T6)は、
図20に示すように、作製した合成領域(9)を基に、処理部(101)により各々の曲画線(8a)と各々の仮想要素(6a)が重なる部分の円弧状画線(7a)のみを複数抽出し、微小円弧状画線領域群(7A)を作製する。
【0066】
基材に円弧状画線領域を形成する工程(T7)は、
図21に示すように、作製した微小円弧状画線領域群(7A)を基に、レーザ加工装置又は印刷機等の出力部(103)により、基材の表面に凸状又は凹状の光輝性を有する円弧状画線領域(7)を形成する。
【0067】
次に、曲画線(8a)が、円形状の場合の一例について説明する。なお、前述した作製方法と同様の構成については説明を省略し、異なる部分のみ説明するものとする。
図22は、前述した(0062)段落から(0065)段落に示す方法により、仮想要素(6a)を複数配列して作製した仮想領域(6)と、円形状の曲画線(8a)を複数配列して作製した曲画線領域(8)を基に形成した合成領域(9)の一例図であり、拡大図に示すように、一つの曲画線(8a)が、二つの仮想要素(6a)に重なる部分(10)を有する。これは、曲画線(8a)が円形の場合には、仮想要素(6a)と各曲画線(8a)のピッチが異なるため、各仮想要素(6a)と各曲画線(8a)の重なる部分が徐々にずれ、円形画線の大きさによっては二つの仮想要素(6a)に重なる部分(10)が生じる。この場合には、観察時に虚像(3)にノイズが生じることがあるため、微小円弧状画線領域群作製工程(T6)において、二つの仮想要素(6a)に重なる部分(10)から、円弧状画線(7a)が形成されない仮想要素(6a)が存在しないように、一つの円弧状画線(7a)を選択することが望ましい。一つの仮想要素(6a)から一つの円弧状画線(7a)のみを抽出した場合に虚像(3)が鮮明となる。
【0068】
重なる部分(10)においては、
図23に示すように、円弧状画線(7a)を形成しない曲画線(8a)が存在しないように、二つの仮想要素(6a−1及び6a−2)に重なる部分(10)から、二つの仮想要素(6a−1及び6a−2)のうち、一つを選択した仮想要素(6a−1)から円弧状画線(7a)を抽出し、他方の仮想要素(6a−2)から円弧状画線(7a)の抽出は、行わないようにすることによって、微小円弧状画線領域群(7A)を作製する。抽出した後、段落(0066)と同様の手段により、
図24に示すように、作製した微小円弧状画線領域群(7A)を基に、レーザ加工装置又は印刷機等の出力部(103)により、基材(2)の表面に凸状又は凹状の光輝性を有する円弧状画線領域(7)を形成する。
【0069】
次に、曲画線(8a)が、円弧状の画線をミラー反転(円弧状の画線の向きを左右又は上下に反転)した曲画線を含む一例について説明する。なお、前述した作製方法と同様の構成については説明を省略し、異なる部分のみ説明するものとする。
図25は、前述した(0062)段落から(0065)段落に示す方法により、仮想要素(6a)を複数配列して作製した仮想領域(6)と、二つの円弧状の曲画線(8a−1及び8a−2)とを複数配列して作製した曲画線領域(8)を基に形成した合成領域(9)の一例図であり、拡大図に示すように、合成領域(9)は、第一の曲画線(8a−1)が仮想要素(6a)とに重なる第一の合成領域(9a−1)と、第一の曲画線(8a−1)をミラー反転して形成した第二の曲画線(8a−2)が仮想要素(6a)に重なる第二の合成領域(9a−2)を有する。
【0070】
第一の合成領域(9a−1)と第二の合成領域(9a−2)は、
図26に示すように、曲画線領域作製工程(T4)において、曲画線作製工程(T3)により入力又は作製された第一の曲画線(8a−1)を、仮想要素(6a)と異なるピッチでマトリクス状に配列した第一の曲画線領域(8−1)と、第一の曲画線(8a−1)をミラー反転して形成した第二の曲画線(8a−2)を仮想要素(6a)と異なるピッチでマトリクス状に配列した第二の曲画線領域(8−2)を作製する。
【0071】
次に、
図27に示すように、前述した(0062)段落から(0065)段落に示す方法により、作製した仮想領域(6)と各曲画線領域(8−1及び8−2)を基に、各々の仮想要素(6a)の一部に各々の曲画線(8a−1及び8a−2)の一部が重なるように仮想領域(6)上に各曲画線領域(8−1及び8−2)を重ね合わせて、第一の合成領域(9a−1)と第二の合成領域(9a−2)を処理部(101)により設定して作製する。次に、作製した合成領域(9)を基に、処理部(101)により各々の曲画線(8a−1及び8a−2)と各々の仮想要素(6a)が重なる部分の円弧状画線(7a−1、7a−2)のみを複数抽出し、微小円弧状画線領域群(7A)を作製する。
【0072】
段落(0066)と同様の手段により、
図28に示すように、作製した微小円弧状画線領域群(7A)を基に、レーザ加工装置又は印刷機等の出力部(103)により、基材(2)の表面に凸状又は凹状の光輝性を有する円弧状画線領域(7)を形成する。
【0073】
なお、
図29に示すように、本形態の場合は、二つの虚像(3a及び3b)がそれぞれ異なる方向に視認される。
【0074】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した立体表示形成体(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
(円弧+文字)
実施例1として、
図30に示した立体表示形成体(1´)を作製した。立体表示形成体(1´)は、基材(2´)の上に、「B」の文字から成る虚像(3´)を観察することができるように形成した。基材(2´)は、一般的なカード状のステンレス板(SUS302)を使用した。各データの入力及び処理には、画像処理装置を使用した。
【0076】
立体表示形成体(1´)を形成する仮想領域(6´)を
図31に示す。仮想領域(6´)は、
図31に示すように、横幅(W1)0.38mm及び縦幅(W2)0.38mmのアルファベットの「B」の形状で仮想要素(6a´)を第一の方向(水平方向)、かつ、第一のピッチ(P1)を0.5mmとして規則的に配列して仮想要素群(6A´)を形成し、仮想要素群(6A´)を第二の方向(垂直方向)、かつ、第二のピッチ(P2)を0.5mmとして複数配列し、仮想要素(6a´)をマトリクス状に複数(水平方向21個、垂直方向17個)配列した仮想領域(6´)を作製した。
【0077】
立体表示形成体(1´)の曲画線領域(8´)を
図32に示す。曲画線領域(8´)は、
図32に示すように、横幅(W4)0.28mm及び縦幅(W5)0.09mm、画線幅0.04mmの曲画線(8a´)を第一の方向(水平方向)、かつ、第三のピッチ(P3)を0.524mmとして規則的に配列した曲画線群(8A´)を、第二の方向(垂直方向)、かつ、第四のピッチ(P4)を0.524mmとして複数配列し、曲画線(8a´)をマトリクス状に複数(水平方向21個、垂直方向17個)配列し、仮想領域(6´)と略同一の大きさの曲画線領域(8´)を作製した。なお、全ての曲画線(8a´)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)と、立ち下がり線(H3)の成す角度(θ2)は、両端をいずれも45度とした。
【0078】
立体表示形成体(1´)の合成領域(11´)を
図33に示す。合成領域(11´)は、
図33に示すように、仮想領域(6´)に設定した三つの基準点(K1−1、K2−1及びK3−1)と共通する位置に、曲画線領域(8´)に三つの基準点(K1´−1、K2´−1及びK3´−1)を設定し、仮想要素(6a´)の中心(o´)と、曲画線領域(8´)の中央に配置した曲画線(8a´)の中心(o´´)を合わせて、各々の仮想要素(6a´)と各々の曲画線(8a´)が重なるように合成領域(11´)を作製した。また、拡大図に示すように、仮想要素(6a´)の一部に曲画線(8a´)の一部が重なるように配置した。
【0079】
立体表示形成体(1´)の微小円弧状画線領域群(7A´)を
図34に示す。微小円弧状画線領域群(7A´)は、合成領域(11´)を基に、各仮想要素(6´)と各曲画線(8´)が重なる部分の複数の円弧状画線(7a´)を抽出して、微小円弧状画線領域群(7A´)を作製した。
【0080】
次に、
図35に示すように、微小円弧状画線領域群(7A´)をレーザマーカ(キーエンス製 MD−V9600)により、基材(2´)上にレーザ加工することで光輝性を有する凹形状の円弧状画線領域(7´)を形成した。
【0081】
以上の構成で形成した立体表示形成体(1´)の効果について、
図36を用いて説明する。
図36(a)に示すように、実施例1にて作製した立体表示形成体(1´)を、円弧状画線領域(7´)が光輝性を有する画線群として視認することができる観察領域において、仮想要素(6a´)と同一形状の虚像(3´)が、仮想要素(6a´)と重なる縦16個横16個の曲画線(8a´)から構成されるモアレ拡大現象により横幅約8mm縦幅約8mmで視認することができた。
【0082】
さらに、上記観察領域において、
図36(b)に示すように、観察角度を水平方向(観察方向(E1)から観察方向(E2))に変化して観察した場合には、モアレ拡大された仮想要素がほぼ水平方向に約2.4mmの範囲で動いているように視認され、両眼視差により立体的な画像として視認することができた。
【実施例2】
【0083】
(円+文字)
実施例2として、
図37に示した立体表示形成体(1´´)を作製した。立体表示形成体(1´´)は、基材(2´´)の上に、「PB」の文字から成る虚像(3´´)を観察することができるように形成した。基材(2´´)は、一般的なカード状のステンレス板(SUS302)を使用した。各データの入力及び処理には、画像処理装置を使用した。
【0084】
立体表示形成体(1´´)を形成する仮想領域(6´´)を
図38に示す。仮想領域(6´´)は、
図38に示すように、横幅(W1)0.51mm及び縦幅(W2)0.52mmのアルファベットの「P」の形状で仮想要素(6a´´−1)を第一の方向(水平方向)、かつ、第一のピッチ(P1)を0.625mmとして規則的に配列して形成した仮想要素群(6A´´−1)を、第二の方向(垂直方向)、かつ、第二のピッチ(P2)を0.625mmとして複数配列し(水平方向37個、垂直方向18個)、さらに、横幅(W1)0.51mm及び縦幅(W2)0.52mmのアルファベットの「B」の形状で仮想要素(6a´´−2)を第一の方向(水平方向)、かつ、第一のピッチ(P1)を0.625mmとして規則的に配列して形成した仮想要素群(6A´´ −2)を、第二の方向(垂直方向)、かつ、第二のピッチ(P2)を0.625mmとして複数配列(水平方向37個、垂直方向18個)マトリクス状に複数配列した
図39に示す仮想領域(6´´)を作製した。
【0085】
立体表示形成体(1´´)の曲画線領域(8´´)を
図40に示す。曲画線領域(8´´)は、
図40に示すように、横幅(W4)0.51mm及び縦幅(W5)0.51mm、画線幅0.04mmの円形の曲画線(8a´´)を第一の方向(水平方向)、かつ、第三のピッチ(P3)を0.6575mmとして規則的に配列して曲画線群(8A´´)を形成し、第二の方向(垂直方向)、かつ、第四のピッチ(P4)を0.6575mmとして複数配列し、曲画線(8a´´)をマトリクス状に複数(水平方向36個、垂直方向36個)配列した曲画線領域(8´´)を作製した。
【0086】
立体表示形成体(1´´)の合成領域(11´´)を
図41に示す。合成領域(11´´)は、
図41に示すように、仮想領域(6´´)に設定した三つの基準点(K1−2、K2−2及びK3−2)と共通する位置に、曲画線領域(8´´)に三つの基準点(K1´−2、K2´−2及びK3´−2)を設定し、仮想領域(6´´)の中央に配置した仮想要素(6a´´−1及び6a´´−2)の中心(o´)と、曲画線領域(8´´)の中央に配置した曲画線(8a´)の中心(o´´)を合わせて、各々の仮想要素(6a´´−1及び6a´´−2)と各々の曲画線(8a´´)が重なるように合成領域(11´´)を作製した。また、拡大図に示すように、仮想要素(6a´´−1、6a´´−2)の一部に曲画線(8a´´)の一部が重なるように配置した。
【0087】
立体表示形成体(1´´)の微小円弧状画線領域群(7A´´)を
図42に示す。微小円弧状画線領域群(7A´´)は、合成領域(11´´)を基に、各仮想要素(6a´´−1、6a´´−2)と各曲画線(8a´´)が重なる部分の複数の円弧状画線(7a´´)を抽出した微小円弧状画線領域群(7A´´)を作製した。なお、二以上の仮想要素に曲画線(8a´´)が重なった部分は、段落(0067)で述べた方法により、円弧状画線(7a´´)を抽出した。
【0088】
次に、
図43に示すように、微小円弧状画線領域群(7A´´)をレーザマーカ(キーエンス製 MD−V9600)により、基材(2´´)上にレーザ加工することで光輝性を有する凹形状の円弧状画線領域(7´´)を形成した。
【0089】
以上の構成で形成した立体表示形成体(1´´)の効果について、
図44を用いて説明する。
図44(a)に示すように、実施例2にて作製した立体表示形成体(1´´)を、円弧状画線領域(7´´)が光輝性を有する画線群として視認される観察領域において、「P」と「B」の二つの仮想要素(6a´´−1及び6a´´−2)と同一形状の虚像(3´´)が、仮想要素(6a´´−1及び6a´´−2)と重なる縦18個横18個の曲画線(8a´´)から構成されるモアレ拡大現象により横幅約11.8mm縦幅約11.8mmで視認することができた。
【0090】
さらに、上記観察領域において、
図44(b)に示すように、観察角度を水平方向(観察方向(E1)から観察方向(E2)に変化して観察した場合には、二つのモアレ拡大された仮想要素(6a´´−1及び6a´´−2)である「P」と「B」が、円弧状画線領域(7´´)の中央を中心として円形に動いているように視認され、両眼視差により立体的な画像として視認することができた。