特許第6061261号(P6061261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061261三次元プリンティングシステム、三次元プリンティング方法、成形装置、繊維入りオブジェクト及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061261
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】三次元プリンティングシステム、三次元プリンティング方法、成形装置、繊維入りオブジェクト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20170106BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALN20170106BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALN20170106BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALN20170106BHJP
【FI】
   B29C67/00
   !B33Y30/00
   !B33Y10/00
   !B33Y80/00
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-523543(P2016-523543)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2015065300
(87)【国際公開番号】WO2015182675
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-109509(P2014-109509)
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】上田 政人
(72)【発明者】
【氏名】平野 義鎭
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮介
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0061974(US,A1)
【文献】 米国特許第05936861(US,A)
【文献】 特開平11−207828(JP,A)
【文献】 特開2000−254975(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/072147(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有し、樹脂を含む第1連続材料と繊維を含む第2連続材料とが個別にフィードされるヘッドと、
前記ノズルの出口からの、前記第1及び第2連続材料に基づくプリント材料が積層されるプラットフォームと、
少なくとも前記繊維を切断可能な切断装置と、
前記ヘッドと前記プラットフォームと前記切断装置との少なくとも1つに関する動作装置を制御するコントローラと、
を備え、
前記第1連続材料は、連続的に延在した線状の樹脂を含み、
前記動作装置は、少なくとも前記第1連続材料を前記ノズルに向けて駆動するフィーダと、前記フィーダと前記ノズルの出口との間の結合位置で前記線状の樹脂に前記繊維が導入されるように前記線状の樹脂を軟化させる加熱ユニットと、を含む、三次元プリンティングシステム。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記第1連続材料に対して前記第2連続材料が交差する角度で、前記第1連続材料に対して前記第2連続材料を案内する案内部を有する、
請求項1に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項3】
前記加熱ユニットは、少なくとも前記線状の樹脂を加熱する第1加熱ユニットと、前記第1加熱ユニットとは別に設けられ、前記繊維を加熱する第2加熱ユニットとを有する、 請求項1又は請求項2に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項4】
前記切断装置は、前記結合位置に対して、後方に配される後方切断位置、及び前方に配される前方切断位置の少なくとも1つを有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項5】
前記フィーダは、前記第1連続材料のための第1フィーダと、前記第2連続材料のための第2フィーダとを含み、
前記コントローラは、前記第1フィーダと前記第2フィーダとを個別に制御する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項6】
前記フィーダは、前記第1連続材料に対して前記第2連続材料が交差した状態で前記第1連続材料に対して前記第2連続材料がフィードされるように、前記第2連続材料を案内する案内部を含み、
前記コントローラは、前記案内部を介した前記交差状態が変化している状態で前記プリント材料が前記ヘッドから前記プラットフォームに向けてフィードされるように、前記動作装置を制御する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記繊維の配合状態が互いに異なる第1部分と第2部分とを有する積層物が形成されるように、前記動作装置を制御する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項8】
前記配合状態は、(a)単位体積当たりの樹脂に含まれる繊維の量、(b)繊維の連続長さ、(c)繊維の向き、(d)繊維の組織構造、(e)繊維に対する樹脂の含浸率、及び(f)ボイド率、の少なくとも1つを含む、
請求項7に記載の三次元プリンティングシステム。
【請求項9】
(a)三次元モデルデータを用意する工程と、
(b)三次元モデルデータに基づいて、プリント材料を積層する工程であり、
(b1)樹脂を含む第1連続材料と繊維を含む第2連続材料とを、個別に、ノズルを有するヘッドにフィードする工程と、
(b2)前記樹脂を軟化させる工程と、
(b3)前記ノズルの出口からの、前記第1及び第2連続材料に基づくプリント材料をプラットフォーム上に積層する工程と、
(b4)少なくとも前記繊維を切断する工程と、
を有する前記工程と、
を含み、
前記第1連続材料は、連続的に延在した線状の樹脂を含み、
フィーダによって少なくとも前記第1連続材料が前記ノズルに向けて駆動され、
前記フィーダと前記ノズルの出口との間の結合位置で前記線状の樹脂に前記繊維が導入されるように前記線状の樹脂が軟化する、三次元プリンティング方法。
【請求項10】
前記第2連続材料は、サポート部材に前記繊維が巻かれた構造を有する、
請求項9に記載の三次元プリンティング方法。
【請求項11】
三次元プリンティングシステムを用いて形成された積層構造を有し、
前記積層構造は、サポート部材に繊維が巻かれた構造を含む樹脂層を有する、繊維入りオブジェクト。
【請求項12】
三次元モデルデータを用意する工程と、
前記三次元モデルデータに基づいて、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の三次元プリンティングシステムを用いて積層物を形成する工程と、
を含む、繊維入りオブジェクトの製造方法。
【請求項13】
支持部材と、
前記支持部材の上にプリント材料を連続して配置した後、固化させることによって構造物を形成する成形装置において、
連続的に延在した線状の樹脂をノズルに押し込む樹脂押込装置と、
前記線状の樹脂内に連続的に形成された繊維を導入する繊維導入装置と、
前記樹脂押込装置と前記ノズルの出口との間の結合位置で前記線状の樹脂内に前記繊維が導入されるように前記線状の樹脂を軟化させる加熱装置と、
前記繊維を切断する切断装置と、を有することを特徴とする成形装置。
【請求項14】
前記線状の樹脂に対して前記繊維が交差する角度で、前記線状の樹脂に対して前記繊維を案内する案内部をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の成形装置。
【請求項15】
前記繊維導入装置は、前記繊維を送る繊維送り装置を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の成形装置。
【請求項16】
前記構造物において、前記繊維が導入される繊維部と、前記樹脂のみにて形成される樹脂部とが設けられるように、前記切断装置を制御する制御装置を有することを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を配置した後に固化させることによって構造物を形成する成形装置に関し、特に、三次元プリンティングシステム(三次元プリンター)、三次元プリンティング方法、繊維入りオブジェクト及びその製造方法に関する。
本願は、2014年5月27日に出願された特願2014−109509号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、立体的な形状を有する物体を造形する装置として、3D(三次元)プリンタなどの成形装置が知られている(例えば特許文献1参照)。3Dプリンタは、比較的高いコストのかかる金型や治具などを必要とせずに三次元形状の物体を容易に造形することができ、また、既存技術では形成が難しい三次元形状の物体も造形することができる。3Dプリンタの中でも、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていく熱溶解積層法方式を用いた3Dプリンタは、装置の製造コストが比較的低いため、製造業において部品の試作などに使用されている。
【0003】
一方で、金属材料よりも比剛性や比強度に優れる炭素繊維強化プラスチック(Carbon-fiber-reinforced plastic,CFRP)や、炭素繊維強化熱可塑プラスチック(Carbon-fiber-reinforced thermoplastics,CFRTP)は、例えば、燃費削減のために軽量化が求められる自動車への適用が進められている。
【0004】
非特許文献1には、連続繊維を用いたCFRTPの成形方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−531439号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Andreas Fischer, Steve Rommel, Thomas Bauernhansl,「New Fiber Matrix Process with 3D Fiber Printer」, Digital Product and Process Development Systems IFIP Advances in Information and Communication Technology, Volume 411, 2013, ドイツ, Springer Berlin Heidelberg, 2013年, Volume 411, 167-175ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3Dプリンタを用いて、CFRTP部品等の繊維強化プラスチックの部品を成形することができれば、成形コストの削減を図ることはもちろん、複雑形状の造形も可能となる。
【0008】
本発明にかかる態様の目的は、繊維に基づく機能が付加されたオブジェクトを形成可能な三次元プリンティングシステム、三次元プリンティング方法、及び成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、樹脂を含む第1連続材料と繊維を含む第2連続材料とがフィードされるヘッドと、前記ヘッドからの、前記第1及び第2連続材料に基づくプリント材料が積層されるプラットフォームと、少なくとも前記繊維を切断可能な切断装置と、前記ヘッドと前記プラットフォームと前記切断装置との少なくとも1つを含む動作装置を制御するコントローラと、を備える、三次元プリンティングシステムが提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、三次元モデルデータを用意する工程と、三次元モデルデータに基づいて、プリント材料を積層する工程であり、樹脂を含む第1連続材料と繊維を含む第2連続材料とをヘッドにフィードする工程と、前記ヘッドからの、前記第1及び第2連続材料に基づくプリント材料をプラットフォーム上に積層する工程と、少なくとも前記繊維を切断する工程と、を有する前記工程と、を含む、三次元プリンティング方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、三次元プリンティングシステムを用いて形成された積層構造を有し、前記積層構造は、前記繊維の配合状態が互いに異なる第1部分と第2部分とを有する、繊維入りオブジェクトが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、三次元モデルデータを用意する工程と、前記三次元モデルデータに基づいて、上記の三次元プリンティングシステムを用いて積層物を形成する工程と、を含む、繊維入りオブジェクトの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、成形装置は、支持部材と、前記支持部材の上に線状の樹脂を連続して配置した後、固化させることによって構造物を形成する成形装置において、前記線状の樹脂内に連続的に形成された繊維を導入する繊維導入装置と、前記繊維を切断する切断装置と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記成形装置において、前記線状の樹脂を押し込む樹脂押込装置と、前記樹脂押込装置の下流側に配置され、前記線状の樹脂を加熱する加熱装置と、を有し、前記繊維導入装置は、前記繊維を前記樹脂押込装置と前記加熱装置との間から導入するように構成してもよい。
上記成形装置において、前記繊維導入装置は、前記繊維を送る繊維送り装置を有する構成としてもよい。
【0015】
また、前記構造物において、前記繊維が導入される繊維部と、前記樹脂のみにて形成される樹脂部とが設けられるように、前記切断装置を制御する制御装置を有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる態様によれば、繊維に基づく機能が付加されたオブジェクトを形成することができる。
【0017】
一実施形態において、樹脂内に繊維を導入して構造物を成形することによって、構造物の強度を向上させることができる。また一実施形態において、切断装置を用いて繊維を切断することによって、線状の樹脂において繊維の含まれない部分を設けることができる。即ち、構造物に含まれる繊維の量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の成形装置(三次元プリンティングシステム)の概略構成図である。
図2】一実施形態の炭素繊維の概略図である。
図3】炭素繊維の他の例を示す模式断面図である。
図4】炭素繊維の他の例を示す模式断面図である。
図5】炭素繊維の他の例を示す模式断面図である。
図6A】成形装置の変形例を示す概略構成図である。
図6B】成形装置の変形例を示す概略構成図である。
図6C】成形装置の変形例を示す概略構成図である。
図7】三次元プリンティング方法の一例を示すフローチャート図である。
図8】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図9】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図10】積層プロセスの一例を示す模式図である。
図11】積層プロセスの一例を示す模式図である。
図12】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図13】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図14】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図15】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図16】成形装置によって成形される構造物の一例である。
図17】成形装置の変形例を示す概略構成図である。
図18】成形装置の変形例を示す概略構成図である。
図19】切断装置の他の例を示す模式断面図である。
図20】繊維の案内部の一例を示す模式図である。
図21】繊維の案内部の一例を示す模式図である。
図22】繊維の案内部の一例を示す模式図である。
図23】成形装置の変形例を示す模式図である。
図24】成形装置の変形例を示す模式図である。
図25】成形装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態において、成形装置は、線状(糸状)の熱可塑性樹脂であるフィラメントを板状の支持部材であるプラットフォームの上に連続的に配置することによって構造物を形成する装置である。一例において、成形装置は、フィラメント(プリント材料)を軟化状態でプラットフォームに積層した後、固化させることによって、主に三次元構造物を形成する装置(3Dプリンタ、三次元プリンティングシステム)である。
【0020】
構造物の原材料となるフィラメントは、例えば、PLA樹脂(polylactic acid、ポリ乳酸)、ABS樹脂、ナイロン樹脂、PET樹脂(polyethylene terephthalate)、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を線状に形成したものである。上記以外の熱可塑性樹脂もフィラメントとして適用可能である。フィラメントは、例えば、2mm程度の直径を有する。例えば、所定のリール(ボビン)に巻回された収容状態からフィラメントが取り出される。フィラメントのサイズは、上記に限定されない。フィラメントの直径は、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10mmにできる。また、フィラメントの直径は、0.5mm未満であってもよく、10mm以上であってもよい。フィラメントは、中心軸に沿って連続的に延在した連続材料である。一例において、フィラメントは、軸方向の全体にわたり同じ断面形状を有する。他の例において、フィラメントは、部分的に異なる断面形状を有することができる。後述するように、フィラメントは、帯状又はフィルム状などの他の形状を有することができる。後述するように、フィラメントの断面形状として、円(又は楕円)に限定されず、様々な形状が適用可能である。フィラメントの収容状態は、巻回タイプに限定されない。
【0021】
本実施形態において、図1に示すように、成形装置1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置されたプラットフォーム(支持部材、パッド)3と、プラットフォーム3にフィラメントFLを供給するヘッド(プリンタヘッド)4と、制御装置(コントローラ)5と、を主な構成要素として有している。図1において、矢印Zは鉛直方向(上下方向)を示し、矢印Xは水平方向の一方向を示し、矢印Yは水平方向であってZ方向及びX方向に直交する方向を示している。
【0022】
ヘッド4は、ノズル7と、ノズル7にフィラメント(樹脂材料、ベース材料、樹脂を含む第1連続材料)FLをフィードする材料フィード装置(樹脂押込装置、材料フィーダ、第1フィーダ)8と、連続的に形成された炭素繊維(炭素繊維束、繊維、機能材料、繊維を含む第2連続材料)FBをフィラメントFLに供給する繊維導入装置(繊維ガイドユニット、繊維フィーダ、第2フィーダ)9とを有している。また、本実施形態において、成形装置1は、炭素繊維FBを切断する切断装置(切断ユニット、カッター)10と、フィラメントFLを加熱するフィラメント加熱装置(樹脂軟化ユニット、ヒータ、第1加熱ユニット)21とをさらに有している。一例において、フィラメント加熱装置21の少なくとも一部がノズル7に設けられている。一例において、材料フィード装置8は、ノズル7にフィラメントFLを押し込みながらフィラメントFLをフィードするように構成される。
【0023】
ケーシング2は、箱形状の筐体である。一例において、ケーシング2の前面に、作業用の窓(開口)が設けられる。ケーシング2内には、プラットフォーム3、ヘッド4などが収容されている。ケーシング2は、必要に応じて室内の環境を制御する環境制御ユニット(不図示)を備えることができる。
【0024】
本実施形態において、プラットフォーム3は、ケーシング2の底面2aと平行な矩形板(ベースプレート)を有する。プラットフォーム3は、ヘッド4の下方であって、ケーシング2の底部近傍に配置されている。一例において、プラットフォーム3は、プラットフォーム駆動装置11によってZ軸方向(鉛直方向)に沿って上下移動可能に駆動される。一例において、プラットフォーム3には、配置されたフィラメントFLを加熱するためのプラットフォーム加熱装置(図示せず)が設けられる。換言すれば、プラットフォーム3は、プラットフォーム3上に配置されたフィラメントFLを加熱する機能を有している。プラットフォーム加熱装置として、プレートヒータ、面ヒータ等の他、プラットフォーム上の樹脂の温度を制御可能な様々な機構が適用可能である。
【0025】
本実施形態において、ヘッド4は、プラットフォーム3上の任意の位置にフィラメントFLを配置する射出装置(押出装置)としての機構を備える。ヘッド4において、フィラメントFLと炭素繊維FBとがフィードされる。ヘッド4は、ヘッド駆動装置13によってプラットフォーム3に平行な平面に沿って少なくとも二次元に移動可能に構成されている。プラットフォーム3が上下動自在であることによって、ヘッド4のノズル7とプラットフォーム3との距離(及び相対位置関係)は自在に調整可能である。
【0026】
ヘッド駆動装置13は、プラットフォーム3と平行な面上の任意の位置にヘッド4が移動可能となるように、ヘッド4を駆動する。本実施形態において、プラットフォーム3は、Z軸方向(鉛直方向)に直交する支持面を有しているため、ヘッド駆動装置13は、ヘッド4を水平方向に移動させる。
【0027】
ヘッド駆動装置13は、ヘッド4をプラットフォーム3と平行な面上に沿う第一方向に移動させるX軸駆動装置14と、ヘッド4をプラットフォーム3と平行な面上に沿う第一方向と直交する第二方向に移動させるY軸駆動装置15とを有する。一例において、X軸駆動装置14とY軸駆動装置15とは、ステッピングモータと、ボールねじなどの直動機構を組み合わせた構成を有することができる。
【0028】
ヘッド駆動装置13は、様々なタイプを適用できる。例えば、ヘッド駆動装置13は、ロボットアームを有することができる。一例において、ロボットアームを用いて、ヘッド4がプラットフォーム3と平行な面に沿って移動可能である。別の一例において、ヘッド4は、三次元に移動可能、あるいは6自由度(X、Y、Z、θX、θY、θZ)に移動可能に構成できる。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向におけるヘッド4とプラットフォーム3との相対的な位置関係に加え、傾き及び回転角度の少なくとも一部に関する姿勢が調整可能となるように、ヘッド4を構成できる。
【0029】
ヘッド4は、糸状のフィラメントFLをフィラメント加熱装置21によってフィラメントの融点近傍まで加熱した後、ノズル7を用いて、軟化状態のフィラメントFLを所定の太さで射出するように構成される。
【0030】
ノズル7は様々な形状を適用可能である。本実施形態において、ノズル7は、円筒状を有する筒部22と、筒部22の一端に設けられた先端部23とを有している。先端部23には、フィラメントFLを射出する開口(ノズル開口、出口開口)が設けられている。ノズル開口は、射出するフィラメントFLの目標太さに応じて設定される。例えば、ノズル7を別のノズルに交換することで、ノズル開口を変更することができる。ノズル開口の大きさ(ノズル径)は例えば、0.9mmである。ノズル開口の大きさ(ノズル径)は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmにできる。ノズル開口の大きさ(ノズル径)を、0.1mm未満としてもよく、10mm以上としてもよい。追加的及び/又は代替的に、複数のノズル7を1つのヘッド4に設けることができる。ヘッド4における入口(入口ポート)の数と出口(出口ポート)の数は同じでもよく異なってもよい。
【0031】
フィラメント加熱装置21は様々なタイプが適用可能である。一例において、フィラメント加熱装置21は、その少なくとも一部が筒部22の外周面に固定されている。フィラメント加熱装置21の加熱方法としては、例えば、熱板加熱(面ヒータ、プレートヒータ、アルミ箔ヒーター)、高周波加熱、誘導加熱、超音波加熱、レーザ加熱などが挙げられる。
【0032】
材料フィード装置8は、フィラメントFLをフィードするように構成される。一例において、材料フィード装置8は、フィラメントFLをノズル7の入口ポートに押し込むように構成される。一例において、材料フィード装置8は、一対のフィラメント駆動ローラ(ギア)16と、フィラメント駆動ローラ16のうち少なくとも1つを駆動するモータ17と、を有している。駆動ローラ16の1つをプッシャーピン(不図示)に置換してもよく、又は補助的にプッシャーピンを設けてもよい。一例において、モータ17として、ステッピングモータが適用される。別の一例において、モータ17として、フィラメント駆動ローラ16を任意の速度で駆動可能な、サーボモータなど他の様々なモータが適用可能である。追加的及び/又は代替的に、材料フィード装置8は、1つのヘッド2に対して、複数のフィラメント(複数の第1連続材料)FLをフィードするように構成できる。
【0033】
一例において、フィラメント駆動ローラ16は、タイヤ形状のローラと、ローラの外周面に形成された周方向に延びるフィラメント保持溝とを有することができる。一対のフィラメント駆動ローラ16の一対のフィラメント保持溝によってフィラメントFLのためのギャップが形成される。そのギャップ内に配置されたフィラメントFLが一対のローラ16に挟まれるように、フィラメント駆動ローラ16が配置される。フィラメント駆動ローラ16の回転速度は、例えば、ヘッド4のノズル7から供給されるフィラメントFLの供給量に応じて制御される。
【0034】
繊維導入装置9は、炭素繊維FBをフィードするように構成される。一例において、繊維導入装置9を介して炭素繊維FBがノズル7の入口に案内される。繊維導入装置9は、材料フィード装置8のフィラメント押込構造と同様の繊維押込構造を有することができる。一例において、繊維導入装置9は、繊維を送るフィーダとして機能する一対の繊維駆動ローラ(ギア)18と、一対の繊維駆動ローラ18の少なくとも1つを駆動するモータ19と、を有している。制御装置5は、材料フィード装置8と繊維導入装置9とを個別に制御するように構成される。駆動ローラ18の1つをプッシャーピンに置換してもよく、又は補助的にプッシャーピンを設けてもよい。他の例において、材料フィード装置8の駆動力によって炭素繊維FBがフィードされる場合、モータ19を省く構成とすることができる。炭素繊維FBにおける繊維要素としては、例えば、アクリル繊維を使用した炭素繊維であるPAN系(Polyacrylonitrile)炭素繊維を採用することができる。繊維の種類は、上記に限定されない。追加的及び/又は代替的に、繊維導入装置9は、1つのヘッド2に対して、複数の繊維FB(複数の第2連続材料)FBをフィードするように構成できる。追加的に、繊維導入装置9は、繊維FB(又は繊維要素CF)の流れを整えるように配置された櫛部材(不図示)を有することができる。一例において、櫛部材は、繊維FB(又は繊維要素CF)の捻じれを緩和する又は解消するように配置される、あるいは、複数の繊維FB(又は複数の繊維要素CF)を揃える又は纏めるように配置される。
【0035】
本実施形態において、繊維導入装置9は、材料フィード装置8とフィラメント加熱装置21との間から炭素繊維FBを導入するように構成されている。この場合、ノズル7に対して後方位置(上流位置)において、フィラメントFLと炭素繊維FCとが結合される。なお、炭素繊維FBを導入する位置(結合位置)は、これに限定されない。例えば、ノズル7とプラットフォーム3との間(ノズル7に対して前方位置(下流位置))にて炭素繊維FBを導入する構成としてもよい。
【0036】
一例において、図2に示すように、炭素繊維(複合繊維)FBは、複数の繊維要素CFとサポート部材25とを有する。サポート部材25の周面に、複数の繊維要素CFが巻かれている。複数の繊維要素CFが線状のサポート部材25によって支持されている。一例において、複数の炭素繊維CFがサポート部材25の外周面に接着剤などによって固定されている。サポート部材25の材料としては、例えば、樹脂(合成樹脂、フッ素樹脂を含む)、金属、複数要素からなる複合材などが挙げられる。一例において、サポート部材25は、POM(ポリアセタール樹脂)などのプラスチックによって形成される。サポート部材25を形成する材料としては、弾性を有するものが好ましく、金属製のワイヤなどの採用も可能である。なお、サポート部材25は、プリント材料PMの一部としてプラットフォーム3上にフィードされてもよい。あるいは、プリント材料PM(繊維要素CF)からサポート部材25を分離して、サポート部材25がプラットフォーム3上にフィードされないようにしてもよい。
【0037】
別の例において、図3(a)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、複数の繊維要素CFと複数のサポート部材25とが一緒に撚糸された構造を有することができる。あるいは、図3(b)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、複数の繊維要素CFと、中空タイプのサポート部材25とを有する構造を有することができる。あるいは、図3(c)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、複数の繊維要素CFと、多層型のサポート部材25とを有する構造を有することができる。
【0038】
さらに別の例において、図4(a)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、サポート部材25の内側に繊維要素CFが収容された構造、又は繊維要素CFがサポート部材(コーティング材)25で覆われた構造を有することができる。あるいは、図4(b)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、サポート部材25の内側に複数の繊維要素CFが収容された構造、又は複数の繊維要素CFがサポート部材(コーティング材)25で覆われた構造を有することができる。
【0039】
さらに別の例において、図5(a)及び(b)の断面図に示すように、炭素繊維FBは、サポート部材を省いた構造を有することができる。図5(a)において、炭素繊維FBは、複数の繊維要素CFの比較的密な撚糸構造を有する。図5(b)において、炭素繊維FBは、複数の繊維要素CFの比較的疎な撚糸構造を有する。
【0040】
図6A及び図6Bにおいて、切断装置10は、繊維導入装置9によって導入される炭素繊維FBを切断する切断ユニット(第1カッター)10A又は切断ユニット(第2カッター)10Bを有する。図6Aにおいて、切断装置10は、繊維導入装置9の下流側かつノズル7の上流側に配置された切断ユニット10Aを有する。切断ユニット10Aは、フィラメントFLと炭素繊維FBとが結びつく結合位置(例えばノズル7)に対して後方(上流側)に配される後方切断位置(上流切断位置)を有する。切断ユニット10Aは、繊維導入装置9からフィードされる(例えば、押し込まれる)炭素繊維FBを切断するように構成されている。切断ユニット10Aは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、炭素繊維FBを切断することができる。図6Bにおいて、切断装置10は、ノズル7の下流側に配置された切断ユニット10Bを有する。切断ユニット10Bは、フィラメントFLと炭素繊維FBとが結びつく結合位置(例えばノズル7)に対して前方(下流側)に配される前方切断位置(下流切断位置)を有する。切断ユニット10Bは、ノズル7から押し出される、プリント材料PMを切断するように構成されている。切断ユニット10Bは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、炭素繊維FBを含むプリント材料PM又は炭素繊維FBを含まないプリント材料PMを切断することができる。
【0041】
図6Cにおいて、切断装置10は、後方切断位置(上流切断位置)を有する第1切断ユニット10Aと、前方切断位置(下流切断位置)を有する第2切断ユニット10Bとの両方を有する。第1切断ユニット10Aは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、炭素繊維FBを切断することができる。第2切断ユニット10Bは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、炭素繊維FBを含むプリント材料PM又は炭素繊維FBを含まないプリント材料PMを切断することができる。制御装置5は、炭素繊維FBの切断に際し、第1切断ユニット10A及び第2切断ユニット10Bのいずれかを選択的に使用する。あるいは、制御装置5は、炭素繊維FBの切断に際し、第1切断ユニット10A及び第2切断ユニット10Bの両方を実質的同時に使用する。
【0042】
切断装置10(切断ユニット10A、10B)としては、炭素繊維FBを切断可能な様々なタイプが適用可能である。一例において、切断装置10(切断ユニット10A、10B)は、YAGレーザなどのレーザを用いたレーザ切断装置を適用できる。別の例において、切断装置10(切断ユニット10A、10B)は、鋸(電動丸鋸など)又はブレードを有する機械的な構成(カッター、ローラカッター)を適用できる。さらに別の例において、切断装置10(切断ユニット10A、10B)は、超音波切断機を適用できる。さらに別の例において、切断装置10(切断ユニット10A、10B)は、ガス切断、アーク切断、プラズマ切断等を適用できる。アーク切断の一例において、炭素繊維FBに近接した電極に電圧が与えられ、電極と炭素繊維の間にアークが発生する。アークの熱エネルギーにより炭素繊維FBを切断することができる。一例において、切断時の熱エネルギーの一部を、フィラメントFLの加熱などの加熱プロセスに再利用する構成を適用できる。なお、炭素繊維FB(プリント材料PM)の切断において、後述するように、ノズル7とプラットフォーム3の間の相対速度差を利用してもよい。
【0043】
制御装置5は、ヘッド4(ヘッド駆動装置13)、及びプラットフォーム3(プラットフォーム駆動装置11)、切断装置10などの要素を含む動作装置を統括的に制御を行うように構成されたコンピュータを有する。具体的には、制御装置5は、ヘッド4などを含む動作装置を制御する制御プログラム、構造物の3Dデータなどを記憶する記憶装置、及び制御プログラムを実行するためのプロセッサ(processor, processing circuitry, circuitry)を有する。
【0044】
次に、成形装置1の動作について説明する。
本実施形態において、成形装置1の使用にあたっては、図7のフローチャート図に示すように、使用者は、構造物の三次元データを用意する(ステップ101)。三次元データは、構造物の形状を指定するパラメータに加え、炭素繊維を含有させる位置などを含む、フィラメントと炭素繊維との配合状態を指定するための様々なパラメータ(配合パラメータ)を含むことができる。
【0045】
使用者は、制御装置5の記憶装置に、構造物の形状データをインプットする。形状データは三次元データ(三次元モデルデータ)であり、制御プログラムによってスライスされ、二次元データを積層したものに変換される。さらに、制御プログラムによって、各層の二次元データにおける印刷行程が決定される。制御プログラムは、決定された二次元データに基づいて、ノズル7の走行経路を決定する。
【0046】
次に、制御装置5は、フィラメントFLと炭素繊維FBとをフィードし、プラットフォーム3上で材料を積層する(ステップ102)。すなわち、制御装置5は、決定されたノズル7の走行経路に従って、ヘッド駆動装置13を制御して、ヘッド4を移動させる。同時に、ヘッド4の材料フィード装置8、及び繊維導入装置9を制御して、フィラメントFLを射出するとともに炭素繊維FBをフィラメントFLに含浸させる。この際、フィラメントFLはフィラメント加熱装置21によって軟化可能である。
【0047】
一方、繊維導入装置9は、材料フィード装置8と同期するように制御され、軟化されたフィラメントFLがノズル7の筒部22に導入された炭素繊維FBに含浸する。その結果、ノズル7の先端からは、炭素繊維を含んだフィラメントFL(軟化状態のプリント材料)が射出される。プラットフォーム3に配置されたフィラメントFLは、図示しないプラットフォーム加熱装置によって加熱され、フィラメントFLの軟化状態が保たれる。
【0048】
また、制御装置5は、炭素繊維を必要としない部位に炭素繊維FBが供給されないように、切断装置10を制御する。具体的には、炭素繊維を含有させる位置が指定された三次元データに基づいて、繊維導入装置9から導入される炭素繊維FBを切断するとともに、炭素繊維FBの導入を停止する。これにより、形成される構造物は、炭素繊維FBが導入される繊維部CPと、樹脂のみにて形成される樹脂部RPと、を含むものとなる。積層プロセスで形成された積層構造物を固化させることによって、三次元構造物(繊維入りオブジェクト)が形成される(ステップ103)。
【0049】
上記実施形態によれば、フィラメントFL内に炭素繊維FBを導入して構造物を成形することによって、構造物の強度を向上させることができる。即ち、構造物を形成する材料を炭素繊維によって強化された樹脂とすることができる。
【0050】
また、切断装置10を用いて炭素繊維FBを切断することによって、例えば、供給されるフィラメントFLにおいて炭素繊維の含まれない部分を設けることができる。即ち、構造物に含まれる炭素繊維の量を調整して、単位体積当たりに含まれる炭素繊維の量を変更することができる。このように、炭素繊維の含有量を変更することで、成形される構造物の部位によって弾性などの特性を変更することができる。
【0051】
また、フィラメントFLに対して炭素繊維FBを導入する構成としたことによって、樹脂と繊維の組み合わせを自由に選択することができる。即ち、フィラメントFLを構成する材料や、繊維を構成する材料を任意に選ぶことができる。
【0052】
また、炭素繊維FBを、炭素繊維CFがサポート部材25によって保持されている構造としたことによって、炭素繊維CFがばらけることなく、安定して炭素繊維をフィラメントFLに導入することができる。
【0053】
また、繊維との結合により、ヘッド4(ノズル7)でのフィラメントFLの目詰まりが防止される。
【0054】
本実施形態において、制御装置5によって動作装置に含まれる様々な制御要素を制御することにより、樹脂に対する繊維の配合状態が異なる第1部分と第2部分とを有する構造物(積層物、三次元オブジェクト、繊維入りオブジェクト)を形成することができる。配合状態としては、単位体積当たりの樹脂に含まれる繊維の量、繊維の連続長さ、繊維の向き、繊維の組織構造、繊維に対する樹脂の含浸率、及びボイド率、などが挙げられる。
【0055】
制御要素(パラメータ、制御パラメータ、動作パラメータ)としては、切断装置10(切断ユニット10A、10B)の切断条件(切断位置、切断のオン・オフ、切断条件(出力など)など)、材料フィード装置8の駆動条件(フィード速度(フィラメントの供給量)など)、繊維導入装置9の駆動条件(フィード速度(繊維の供給量)など)、ヘッド4(ノズル7)とプラットフォーム3との間の相対的な条件(相対速度、相対移動方向、相対的な姿勢(傾き、回転角度)、相対移動距離)、フィラメント加熱装置21の加熱条件(加熱位置、加熱距離、出力(温度)、時間、回数、加熱方法など)などが挙げられる。
【0056】
切断プロセスにおいて、切断ユニット10Aを用いることにより、積層プロセス中に、プラットフォーム3上にフィラメントFLを供給しつつ、炭素繊維FBのみを切断することができる。フィラメントFLだけが供給されることにより、炭素繊維FBを含まない部位が形成される。こうした積層プロセスは、例えば、オブジェクトの軽量化に用いることができる。
【0057】
一方、切断プロセスにおいて、切断ユニット10Bを用いることにより、積層プロセス(印刷プロセス、描画プロセス)中に、プリント材料PM(炭素繊維FB及びフィラメントFL)の全体を切断することができる。この際、材料フィード装置8及び繊維導入装置9を制御することにより、フィラメントFL及び炭素繊維FBのフィードが停止される又は低速度となる。プリント材料PMの切断により、プラットフォーム3上へのプリント材料PMの供給が実質的に一時停止される。そして、ヘッド4及び/又はプラットフォーム3を移動させた後に、積層プロセスを再開することができる。その結果、積層プロセスにおける各連続処理(各連続描画)を任意の位置で開始及び終了できる。すなわち、印刷パターン(描画パターン)が一筆書きに限定されないなど、印刷パターンの多様化が図られる。
【0058】
ここで、繊維と樹脂との供給量の比率を制御することにより、樹脂に対する繊維の含有率(繊維含有率)を制御できる。一例において、フィラメントFLのフィード速度を一定のまま、炭素繊維FBのフィード速度を変えることにより、繊維含有率が変化する。あるいは、フィラメントFLのフィード速度を一定のまま、ノズル7の移動速度(ヘッド4とプラットフォーム3との間の相対速度)を変えることにより、繊維含有率が変化する。なお、一例において、ノズル7の移動速度(ヘッド4とプラットフォーム3との間の相対速度)が炭素繊維FBのフィード速度と一致するように自動制御することができる。
【0059】
積層プロセスの一例において、繊維の供給量がゼロのとき、対応積層箇所における繊維含有率はゼロとなる。フィラメントFLのフィード速度と炭素繊維FBのフィード速度が同じとき、対応積層箇所における繊維含有率が最大となる。なお、処理速度を上げる場合は、例えば、フィラメントFLのフィード速度と、炭素繊維FBのフィード速度を同じ比率で上げるとよい。
【0060】
このように、上記実施形態では、制御要素が多く、積層プロセスの選択肢の幅が広い。したがって、様々な構造の繊維入りオブジェクトを形成することができる。
【0061】
なお、三次元データを予め用意することに代えて、三次元プリンティングシステム1(制御装置5)が学習機能を有する構成を採用できる。一例において、オペレータの操作によってフィラメントFLと繊維FBとがフィードされ、プラットフォーム3上でプリント材料PMが積層される。積層プロセスにおける操作において、オペレータは、システム1における制御要素(パラメータ、制御パラメータ、動作パラメータ)の少なくとも一部を入力することができる。制御装置5は、積層プロセスにおける制御要素を記憶する。新たなオブジェクトの作成において、システム1は、記憶された制御要素を使用することができる。このように、学習機能を利用することにより、オペレータの操作によって作成したサンプルと実質的に同じ三次元オブジェクトを自動的に形成することができる。
【0062】
代替的に、オペレータは、積層プロセスに際して、層ごとにサンプルモデルを選択することができる。各サンプルモデルにおいて、繊維含有率や繊維の配列方向などの諸仕様が定められている。オペレータは、サンプルモデルを選択するとともに、その他のパラメータ(形状、サイズ等)を入力できる。システム1は、サンプルモデルに基づくパラメータと、オペレータにより入力されたパラメータとに基づいてプリントプロセスを実行する。こうしたプリントプロセスを層ごとに繰り返し実行することにより、三次元データを予め用意することなく、三次元オブジェクトを形成することができる。この他、上記以外の様々な方法を用いて、三次元データを予め用意することなく、三次元オブジェクトを形成することが可能である。
【0063】
次に、本実施形態の成形装置1によって形成される構造物(繊維入りオブジェクト)について説明する。
図8は、成形装置1によって形成される構造物の一例であり、ハニカム構造のコア材を板状の部材でサンドイッチした、ハニカムボードHBである。このハニカムボードHBは、成形装置1を用いて一体的に形成されている。即ち、板状の部位Bと、ハニカム構造Hの部位は別体として張り合わせた構造とはされておらず、強度的に優れた構造となっている。
【0064】
また、このハニカムボードHBは、その一部がCFRTPによって形成されている。具体的には、板状の部位BのみがCFRTPによって形成されている。換言すれば、ハニカムボードHBの板状の部位Bを構成する樹脂には補強材として炭素繊維が含まれている。このような構造のハニカムボードHBを形成するために、成形装置1のヘッド4は、板状の部位Bの成形過程においてはフィラメントFLとともに炭素繊維FBを供給し、ハニカム構造Hの部位の成形過程においては、フィラメントFLのみを供給するために炭素繊維FBを切断して炭素繊維FBの導入を停止する。これにより、ハニカムボードHBの板状の部位Bは繊維部CPによって形成され、ハニカム構造Hの部位は樹脂部RPによって形成される。
【0065】
また、上記構造物は、ある部位で炭素繊維を導入して繊維部CPとし、その他の部位では炭素繊維を導入せず樹脂部RPとする構成としたが、これに限ることはない。例えば、図9に示すように、板状の部材Dにおいて、徐々に炭素繊維CFの割合を変化させるようにしてもよい。これにより、繊維部CPに対する樹脂部RPの割合が徐々に変化する板状の部材Dとすることができる。即ち、構造物の強度を徐々に変化させるような構造とすることもできる。
【0066】
また、その他の例として、ネジ孔(雌ネジ)の山部(又は雄ネジの山部)を強化するために局部的に炭素繊維を配置することもできる。
【0067】
図10に示すように、積層プロセスにおいて、互いに重なる2つの層における繊維の配列状態を互いに異なるようにできる。図10(a)に示す例では、積層プロセスにおいて、第1層ML1の上に、繊維の延在方向が第1層ML1のそれとは90°異なる第2層ML2が重ねられる。また、第2層ML2の上に、繊維の延在方向が第2層ML2のそれとは90°異なる第3層ML3が重ねられる。層間のシフト角は、任意に設定可能である。図10(b)に示す例では、積層プロセスにおいて、第1層ML1の上に、繊維の延在方向が第1層ML1のそれとは45°異なる第2層ML2が重ねられる。また、第2層ML2の上に、繊維の延在方向が第2層ML2のそれとは45°異なる第3層ML3が重ねられる。図10(c)に示す例では、積層プロセスにおいて、枠状に繊維が配置された第1層ML1の上に、一面全的に均一な条件で繊維が配置された第2層ML2が重ねられる。また、第2層ML2の上に、枠状に繊維が配置された第3層ML3が重ねられる。
【0068】
図11に示すように、積層プロセスにおいて、姿勢が互いに異なる複数の積層構造を組み合わせることができる。図11において、第1積層構造MS1に対して、第1積層構造MS1の積層方向とは90°異なる積層方向で第2積層構造MS2が形成される。構造間でのシフト角(姿勢シフト量)は、任意に設定可能である。
【0069】
図12に示すように、予め用意された物体に対して、繊維入りの積層構造を形成することができる。図12において、樹脂等の所定の材料からなる板状の物体POBの表面上に繊維入りの積層構造MS1が形成される。
【0070】
図13に示すように、パラメータを適切に制御することにより、曲面を有する層を積み重ねることも可能である。図13において、例えば、予め用意された物体POBの表面の曲率と同じ曲率を有する複数の層ML1、ML2、ML3がその物体POBの表面上に順に重ねられる。
【0071】
図14に示すように、繊維密度が部分的に異なるオブジェクトを作成することができる。図14において、パラメータを適切に制御することにより、中央での繊維密度が比較的低く、外表面近傍の繊維密度が比較的高い積層層構造MS1を有するオブジェクトが作成される。
【0072】
図15に示すように、部分的に低強度部を有するオブジェクトを作成することができる。図15において、枠状に配置された繊維に囲まれた複数の領域MA1、MA2、MA3、MA4が設けられ、それらの領域の間の部分に低強度部LS1、LS2が設けられる。
【0073】
図16に示すように、弾性指向性を有するオブジェクトを作成することができる。図16において、板状の積層体MS1における繊維FBの配列構造を適切に制御することにより、所定の軸の周りに比較的湾曲しやすい板状オブジェクトが作成される。
【0074】
次に、上記した実施形態の変形例について説明する。
一変形例において、図17に示すように、成形装置1は、フィラメント加熱装置21とは別に設けられ、主に炭素繊維FBを加熱するための繊維加熱ユニット(プレヒータ、第2加熱ユニット)51を有することができる。
【0075】
繊維加熱ユニット51は様々なタイプが適用可能である。加熱方法としては、例えば、熱線加熱、高周波加熱、誘導加熱、超音波加熱、レーザ加熱などが挙げられる。一例において、繊維加熱ユニット51において、電熱線(ニクロム線など)を用いて炭素繊維FBを加熱することができる。あるいは、炭素繊維FBに接する部品を電極とし、その部品を介して炭素繊維FBを通電加熱する。例えば、繊維導入装置9のローラ18(図1参照)と、別のローラ(不図示)とをペア電極とし、それらのローラを介して炭素繊維FBに電流を印加することができる。あるいは、レーザユニットからのレーザ光を炭素繊維FBに照射する。レーザ光の熱エネルギーを用いて、炭素繊維FBを加熱することができる。なお、このレーザユニットは、出力を制御することにより、炭素繊維FBの切断ユニット10Aとして流用することが可能である。なお、繊維加熱ユニット51は、加熱後の炭素繊維FBを保温するための保温装置をさらに備えることができる。
【0076】
図6Aに戻り、ノズル7の開口(出口開口)の形状は、円、楕円、矩形、多角形、又は任意の形状にできる。一例において、矩形状のノズル開口を用いることにより、積層構造におけるボイド率の低減化を図ることができる。この場合、例えば、印刷ピッチ(配列ピッチ、シフト距離)がノズル開口幅と同程度に設定される。
【0077】
また、ノズル7の内部通路の形状は、軸方向に沿って全体的に同じ径を有してもよく、軸方向に沿って変化する径を有してもよい。内部通路の適切な径変化は、フィラメントFL及び炭素繊維FBの挿通性の向上や、繊維含有率の向上に役立つ。また、一例において、炭素繊維FBにおける繊維要素の数を減らすことで、繊維FBに対するフィラメントFLの樹脂の含浸率の向上を図ることができる。あるいは、ノズル7の開口(出口開口)の小径化により、含浸率の向上を図ることができる。
【0078】
スリット状のノズル開口は、帯状(シート状)のプリント材料PMをプラットフォーム3上に配置することを可能にする。帯状のプリント材料PMによる積層プロセスにより、積層構造におけるボイド率の低減化を図ることができる。この場合、層間の隙間の最小化を目的として、例えば、1つの連続的な帯が別の連続的な帯に部分的に重なるように積層プロセスを実行することができる。
【0079】
フィラメントFLの断面形状は、円、楕円、矩形、多角形、又は任意の形状にできる。一例において、薄い帯状のフィラメントFLを用いることができる。例えば、帯状のフィラメントFLが炭素繊維FBの周りに巻かれながら、フィラメントFLと炭素繊維FBとがノズル7に挿入されて互いに結合される。これにより、炭素繊維FBがフィラメントFLで覆われ、繊維に対する樹脂の含浸率の向上が図られる。
【0080】
フィラメントFLと炭素繊維FBとの結合に際し、加熱ローラを用いてフィラメントFLに炭素繊維FBを押圧することができる。この場合、フィラメントFLは、帯状などの押圧処理に適した形状を有するのが好ましい。押圧処理を用いた結合により、繊維に対する樹脂の含浸率の向上が図られる。
【0081】
炭素繊維FBのフィードに際し、適切な張力が炭素繊維FBに提供されるのが好ましい。一例において、比較的前方位置(下流位置)での駆動力と比較的後方位置(上流位置)での駆動力に差を設けることができる。あるいは、比較的後方位置(上流位置)において炭素繊維FBに対して適切なブレーキを提供する。炭素繊維FBが適切な張力を有してフィードされることにより、炭素繊維FBのねじれが防止される。また、案内ローラの周面に炭素繊維FBを当接させることによっても、炭素繊維FBのねじれが防止される。
【0082】
なお、上記実施形態では、フィラメントFL及び炭素繊維FBの三次元的な配置を可能とするために、プラットフォーム3を上下移動自在とするとともに、ヘッド4を水平移動自在とする構成とした。他の例において、フィラメントFL及び炭素繊維FBの三次元的な配置を可能とするために、ヘッド4を、例えばロボットアームにより、上下移動及び水平移動自在とする一方で、プラットフォーム3を固定するような構成とすることができる。プラットフォーム3とヘッド4との相対的な位置及び姿勢(傾き、回転角度など)を自在に制御可能なユニットとして、様々な構成が適用可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、フィラメントFLを含浸させる繊維として炭素繊維を採用したが、強化材として機能する繊維であればこれに限ることはない。例えば、ガラス繊維、樹脂繊維の採用も可能である。繊維は、互いに材質が異なる第1繊維と第2繊維を含むことができる。繊維は、材質は同様でかつ形状及び/又は構造や撚糸条件が互いに異なる第1繊維及び第2繊維を含むことができる。繊維は、3種類以上の繊維要素を含むこともできる。
【0084】
また、繊維導入装置9を複数設けて、フィラメントFLに複数の炭素繊維FBを導入する構成としてもよい。この場合、一方の繊維導入装置9から炭素繊維FBを導入し、他方の繊維導入装置9からガラス繊維を導入する構成としてもよい。このような構成とすることによって、例えば、剛性が要求される部位に炭素繊維を導入するとともに、延性が要求される部位にガラス繊維を導入することができる。
【0085】
図18に示すように、炭素繊維FBが収容されている所定のリール(ボビン)61の回転(駆動力、制動力)を制御することによっても、炭素繊維FBの張力を制御できる。すなわち、ノズル7内又はその近傍で、フィラメントFLと炭素繊維FBとが結合しているとき、ノズル7内又はその近傍において炭素繊維FBに保持力が作用する。この状態において、例えば、リール61の回転を固定する、又はリール61の制動力を適切に制御することにより、炭素繊維FBの張力が維持される。この場合、切断ユニット10Bを用いてプリント材料PMを切断した後であっても、炭素繊維FBの先端位置を維持可能である。再び、フィラメントFLがフィードされる際に、リール61における先の固定制御を解除する。その結果、フィラメントFLのフィードに伴い、炭素繊維FBもフィードされる。なお、固定制御の解除を行わない場合には、後述するように、炭素繊維FBはフィードが防止され、フィラメントFLのみがプラットフォーム3上に供給される。あるいは、炭素繊維FBに強い張力が作用して繊維FBが切断される。
【0086】
一例において、繊維FBとフィラメントFLとの結合状態が比較的弱い場合、リール61の角速度(リール61の回転に伴って繊維FBがフィードされる速度)をフィラメントFLのフィード速度に比べて少し小さくしておくことにより、繊維FBに継続的に所定の張力が提供された状態を維持することが可能である。炭素繊維FBが適切な張力を有してフィードされることにより、炭素繊維FBのねじれが防止される。
【0087】
一例において、繊維FBとフィラメントFLとの結合状態が比較的強い場合、通常のモードにおいて、ノズル7の移動速度(ヘッド4とプラットフォーム3との間の相対速度)が炭素繊維FBのフィード速度と一致するように制御することができる。一方、繊維FBのフィード速度がノズル7の移動速度に比べて低い場合、繊維供給不足に伴って繊維FBに強い張力が提供されて繊維FBが切断される。
【0088】
この場合、図19に示すように、ノズル7の先端近傍にブレード71を配置することにより、繊維FBの切断が促進される。一例において、ブレード71は、ノズル7を覆うように配置される筒体73の一端に設けられる。ブレード71は、周方向にわたって鋭角が設けられた角部(刃部)を有する。この形態では、ブレード71による切断の促進により、切断時の張力が比較的低く設定され、切断時の強い張力に伴う繊維FBの不具合の発生が防止される。また、この形態では、構成部品が少なく、切断装置の構成の簡素化が図られる。
【0089】
図18に戻り、繊維FBとフィラメントFLとの結合状態が比較的弱い場合、炭素繊維FBが収容されているリール61の回転(駆動力、制動力)を制御することにより、樹脂に対する繊維の含有率(繊維含有率)を調整可能である。積層プロセスの一例において、リール61の角速度(リール61の回転に伴って繊維FBがフィードされる速度)がゼロのとき、繊維FBとフィラメントFLとの結合状態が解けて、ノズル7からフィラメントFLだけがプラットフォーム3上に供給される。その結果、対応積層箇所における繊維含有率はゼロとなる。リールの角速度がフィラメントFLのフィード速度と同じとき、対応積層箇所における繊維含有率が最大となる。
【0090】
なお、上記実施形態で製造される繊維入りオブジェクトは、少なくとも一部が繊維により強化されたプラスチックにできる。繊維強化プラスチックとして、例えば、CFRP(Carbon-fiber-reinforced plastic)、CFRTP(Carbon-fiber-reinforced thermoplastics)、FRP(Fiber-reinforced plastic、GFRP(Glass fiber-reinforced plastic))、AFRP(Aramid fiber-reinforced plastic)、BFRP(Boron fiber-reinforced plastic)などが挙げられる。
【0091】
繊維は強化材として機能することに限定されない。繊維により付加/制御される機能として、例えば、物理的機能(剛性、重量、柔軟性、靱性、伸び性、弾力性、曲げ強さ、部分的な補強(密度、組織構造による強度)、耐摩耗性など)、電気的機能(帯電性、導電性など)、光学的機能(透過性、光沢、色彩、紫外線カット、反射、文字、柄、外観性など)、化学的機能(難燃性、抗菌性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、物質吸収性、金属吸着性、耐候性、熱特性、保温性、保冷性など)が挙げられる。
【0092】
また、上記実施形態では、フィラメントFLを構成するベース材としての樹脂として熱可塑性樹脂を用いたが、人為的に軟化状態と硬化状態とを制御することができれば、他の樹脂の採用も可能である。例えば、光硬化性樹脂を採用して、軟化状態の樹脂を光エネルギーの作用で硬化させてもよい。ベース材としての樹脂は、互いに材質が異なる第1樹脂と第2樹脂を含むことができる。また、ベース材としての樹脂は、材質は同様でかつ形状及び/又は構造が互いに異なる第1樹脂及び第2樹脂を含むことができる。ベース材としての樹脂は、3種類以上の樹脂要素を含むこともできる。
【0093】
また、上記の実施形態では、第1連続材料としてのフィラメントFLと第2連続材料としての炭素繊維FBが個別にヘッド4にフィードされ、ノズル7の内部又はその近傍でフィラメントFLと炭素繊維FBが結合される。別の実施形態において、結合位置をヘッド4に対して後方(上流)で結合する構成を適用できる。あるいは、予めフィラメントFLと炭素繊維FBとが結びついた連続材料がヘッド4にフィードされる構成を適用できる。
【0094】
図20に示すように、システム1は、フィラメントFLに対して繊維FBが交差した状態で、フィラメントFL(第1連続材料)に対して繊維FB(第2連続材料)がフィードされるように繊維FBを案内する案内部(conductor, fiber conductor, interlacer, entangler, engager, enlace member)81をさらに有することができる。一例において、1つの連続するフィラメントFLに対して、1つの連続する繊維、又は複数の連続する繊維が供給される。フィラメントFLに対する繊維FB(第1繊維FB1、第2繊維FB2)の交差角度α、βは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90°、又はそれ以上にできる。図20(c)に示すように、フィラメントFLに対する、第1繊維FB1の交差角度αと、第2繊維FB2の交差角度βとは、実質的に同じにできる。図20(d)に示すように、フィラメントFLに対する、第1繊維FB1の交差角度αと、第2繊維FB2の交差角度βとは、異なるようにできる。交差状態での繊維FBのフィードは、フィラメントFLに対する繊維FBの係合や、フィラメントFLによる繊維FBの保持の安定化に有利である。
【0095】
一実施形態において、フィラメントFLに対して繊維FBが絡むように案内部81を構成できる。あるいは、フィラメントFLに対して繊維FBが縫い付けられるように又は編み込まれるように案内部81を構成できる。あるいは、フィラメントFLに対して繊維FBの係合を促すように案内部81を構成できる。
【0096】
図21(a)において、案内部81は、フィラメントFLを通す孔171が設けられた部材172において入口ポート173に設けられた斜面(傾斜周面、又は湾曲面(傾斜曲面))174を有する。一例において、斜面174に沿って繊維FBが案内される。斜面174に沿った繊維FBがフィラメントFLに対して交差した状態で、フィラメントFLに対して繊維FBがフィードされる。図21(b)において、案内部81は、ノズル部材172において入口ポート173の近傍に設けられた溝175を有する。一例において、溝175の底面に沿って繊維FBが案内される。図21(c)において、案内部81は、ノズル部材172において入口ポート173の近傍に設けられた孔176を有する。一例において、孔176に沿って繊維FBが案内される。
【0097】
図22(a)において、案内部81は、フィラメントFLに対して繊維FBの一部を留める(タックする)ように構成されたタッカー181を有する。一例において、タッカー181は、タックピン(又はタックブレード)182と、タックピン182を駆動するドライバ183とを有する。必要に応じて、タッカー181は、タックピン182の少なくとも一部を加熱するヒータ184を有することができる。繊維FBの一部がフィラメントFLに埋め込まれることにより、繊維FBの一部がフィラメントFLに留められる。こうしたタックプロセスにより、フィラメントFLに対する繊維FBの係合が促される。追加的に、フィラメントFLの表面上の繊維FBの一部の上に樹脂ピースを載せることもできる。その樹脂ピースをタックピン182で押圧することにより、フィラメントFLに対する繊維FBの係合がさらに促される。また、ヒータ184によってフィラメントFL(及び/又は樹脂ピース)を一時的に軟化/溶融させることにより、フィラメントFLに対する繊維FBの係合がさらに促される。追加的及び/又は代替的に、接着剤を用いて、フィラメントFLに対する繊維FBの係合を促すことができる。
【0098】
図22(b)において、案内部81は、フィラメントFLに繊維FBを絡ませるように構成されたインターレーサ(interlacer, entangler, engager, enlace member)191を有する。一例において、インターレーサ191は、フィラメントFLにフック孔及び/又はフック溝を設けるための針192と、針192を駆動するドライバ193とを有する。必要に応じて、インターレーサ191は、針192の少なくとも一部を加熱するヒータ194を有することができる。また、インターレーサ191は、繊維FBを案内する案内部材195、針192に繊維FBを通すスレッダ196、及び針192に対して繊維FBを保持するホルダ197の少なくとも1つを有することができる。また、インターレーサ191は、針192を介して供給される繊維FB1(FB)と組み合わされる別の繊維FB2(FB)を供給するフック(例えばロータリフック)198を有することができる。
【0099】
図23(a)の一例において、フィラメントFLを軸方向にフィードしながら、案内部81の少なくとも一部(部材172)をフィラメントFLの軸周りで回転させることができる。こうした相対移動(相対位置関係の変化)により、繊維FBとフィラメントFLとの案内部81を介した交差状態が変化する。本例において、交差状態の変化に伴い、繊維FBがフィラメントFLに巻きつけられる。制御装置5は、案内部81を介した交差状態が変化している状態でプリント材料PMがヘッド4からプラットフォーム3に向けてフィードされるように、部材172用のドライバ178を含む動作装置を制御する。フィラメントFLと繊維FBとの結合と、繊維FBを含むプリント材料PMの供給とが同時に実行される。繊維FBがフィラメントFLに巻きつきながらノズル7にフィードされる。繊維FBを含むプリント材料PMがノズル7からプラットフォーム3上にフィードされる。フィラメントFLのフィード速度に対して、相対移動の速度を調整することにより、フィラメントFLのフィード速度に対する繊維FBのフィード速度が変化する。その結果、樹脂に対する繊維の含有率(プリント材料PMにおける繊維含有率)を変化させることができる。
【0100】
図23(b)の一例において、フィラメントFLを軸方向にフィードしながら、案内部81の少なくとも一部(針192)のフィラメントFLに対する位置(少なくとも、フィラメントFLの軸方向と直交する方向の位置)を変化させることができる。こうした相対移動(相対位置関係の変化)により、繊維FBとフィラメントFLとの案内部81を介した交差状態が変化する。本例において、交差状態の変化に伴い、繊維FBがフィラメントFLに織り込まれる。制御装置5は、案内部81を介した交差状態が変化している状態でプリント材料PMがヘッド4からプラットフォーム3に向けてフィードされるように、針192用のドライバ193を含む動作装置を制御する。フィラメントFLと繊維FBとの結合と、繊維FBを含むプリント材料PMの供給とが同時に実行される。繊維FBがフィラメントFLに織り込まれながらノズル7にフィードされる。繊維FBを含むプリント材料PMがノズル7からプラットフォーム3上にフィードされる。フィラメントFLのフィード速度に対して、相対移動の速度を調整することにより、フィラメントFLのフィード速度に対する繊維FBのフィード速度が変化する。その結果、プリント材料PMにおける繊維含有率を変化させることができる。
【0101】
図24(a)の一例に示すように、システム1は、1つのフィラメント(第1連続材料)FLに対して、複数の繊維(複数の第2連続材料)FB1、FB2をフィードするように構成できる。図24(b)に示すように、システム1は、1つのノズル7に対して、複数のフィラメント(複数の第1連続材料)FL1、FL2、FL3をフィードするように構成できる。
【0102】
図25(a)に示すように、システム1は、2つのノズル7A,7Bを有するヘッド4を有することができる。一例において、ノズル7Aの近傍には、前方切断位置(下流切断位置)を有する切断ユニット10BAが配置されている。ノズル7Bの近傍には、前方切断位置(下流切断位置)を有する切断ユニット10BBが配置されている。一例において、ノズル7Aから繊維を含むプリント材料PM1がフィードされ、ノズル7Bから繊維を含まないプリント材料PM2がフィードされる。切断ユニット10BA、10BBは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、個別にプリント材料PM1、PM2を切断することができる。代替的に、1つのヘッドに設けられるノズルの数は3以上にできる。
【0103】
図25(b)に示すように、システム1は、ノズル7A,7Bをそれぞれ有する2つのヘッド4A、4Bを有することができる。一例において、ノズル7Aの近傍には、前方切断位置(下流切断位置)を有する切断ユニット10BAが配置されている。ノズル7Bの近傍には、前方切断位置(下流切断位置)を有する切断ユニット10BBが配置されている。一例において、ノズル7Aから繊維を含むプリント材料PM1がフィードされ、ノズル7Bから繊維を含まないプリント材料PM2がフィードされる。切断ユニット10BA、10BBは、制御装置5からの指示に基づくタイミングで、個別にプリント材料PM1、PM2を切断することができる。代替的に、1つのシステム1におけるヘッドの数は3以上にできる。
【0104】
以上、代表的な様々な実施形態の内容について開示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、添付の請求の範囲に規定された、本発明の精神と範囲内にあるすべての変形、代替、及び等価物を含むものとする。
【符号の説明】
【0105】
1…成形装置(3Dプリンタ、三次元プリンティングシステム)、2…ケーシング、3…プラットフォーム(支持部材)、4…ヘッド(プリンタヘッド)、5…制御装置(コントローラ)、7…ノズル、8…材料フィード装置(樹脂押込装置)、9…繊維導入装置、10…切断装置(切断ユニット)、11…プラットフォーム駆動装置、13…ヘッド駆動装置、14…X軸駆動装置、15…Y軸駆動装置、16…フィラメント駆動ローラ、17…モータ、18…繊維駆動ローラ(繊維送り装置)、19…モータ、21…フィラメント加熱装置、22…筒部、23…先端部、25…サポート部材、B…板状の部位、H…ハニカム構造、FB…炭素繊維(繊維)、CF…炭素繊維、CP…繊維部、FL…フィラメント(線状の樹脂)、RP…樹脂部
図1
図2
図3
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図5
図6A
図6B
図6C
図7
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