(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されているキャリア芯材では、製造工程における炭酸塩等のガス化によって粒子内に空孔を形成しているため、作製されたキャリア芯材の空孔は細孔を介して外部と繋がっており、画像形成速度の速い装置に用いた場合、キャリア芯材の割れや欠けが発生するおそれがある。また、キャリア芯材を樹脂で被覆する際、被覆樹脂が粒子内に浸み込む量が多くなり経済性が悪くなる。さらに、キャリア芯材の製造工程において高抵抗化を目的として表面酸化処理をする場合、粒子内部まで酸化されてしまい磁気特性が大幅に低下する。
【0008】
また、特許文献3で提案のキャリア芯材では、中空形状のコア材の表面を、磁性微粒子を分散させた樹脂バインダで被覆しているため、残留磁化及び保磁力が高くなり過ぎるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低比重であって、画像形成速度が速くなっても割れや欠けが生じることがなく、また回転トルクが大きくならず、さらに所定の磁気特性を有するキャリア芯材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、組成式M
XFe
3−XO
4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X≦1)で表される
焼結粒子である第1キャリア芯材と、前記組成式で表され中空体を内包する焼結粒子である第2キャリア芯材とを含有し、前記第2キャリア芯材を20個数%以上有することを特徴とするキャリア芯材が提供される。
【0011】
ここで、水銀圧入法で測定した、細孔径4μm以下の細孔容積は0.005mL/g以下であるのが好ましい。
【0012】
また、キャリア芯材の粒径Dに対する前記中空体の粒径dの比d/Dの平均値としては、0.10〜0.75の範囲であるのが好ましい。
【0013】
見掛け密度としては2.2g/cm
3以下であるのが好ましい。
【0014】
そしてまた、粒子密度としては3.0g/cm
3〜4.7g/cm
3の範囲であるのが好ましい。
【0015】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0016】
さらに本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【0017】
そしてまた本発明によれば、キャリア芯材原料を湿式粉砕後に、混合スラリー中に中空体を添加して撹拌し、スプレードライヤーで造粒することを特徴とする電子写真用キャリア芯材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るキャリア芯材は、低比重であって、しかも現像器の撹拌速度等が速くなっても割れが効果的に抑制される。また、キャリア芯材を樹脂で被覆する場合、被覆樹脂が粒子内に浸み込む量が少なくなる。さらに、キャリア芯材を表面酸化処理した場合に粒子表面のみが酸化されるので、キャリア芯材の磁力低下を、内部に空孔を有さない中実のキャリア芯材と同程度に小さく抑えながら高抵抗化が図れる。
【0019】
また、本発明に係る電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤によれば、画像形成速度の高速化及び高画質化が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るキャリア芯材は、組成式M
XFe
3−XO
4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X≦1)で表される
焼結粒子である第1キャリア芯材と、前記組成式で表され中空体を内包する焼結粒子である第2キャリア芯材とを含有し、前記第2キャリア芯材を20個数%以上有することを特徴とする。
第2キャリア芯材が中空体を内包することにより、キャリア芯材の見掛け密度を小さくしながら、粒子強度の低下を抑えることができるようになる。なお、中空体を内包する
第2キャリア芯材が20個数%未満であると、粒子強度は確保できるものの見掛け密度を小さくできない。
【0022】
本発明で使用する中空体に特に限定はなく、従来公知のものが使用できる。例えば、外殻成分がガラス、シリカ、シラスなどの無機系材料からなる無機質中空体、熱可塑性樹脂やカーボン等の有機系材料からなる有機質中空体が挙げられる。代表的なものとしては、樹脂バルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、フェノールバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーンなどが挙げられる。ただし、キャリア芯材が焼成することによって製造される場合は、中空体を構成する材料は融点が焼成温度以上である必要がある。この場合、シリカバルーンが好適に使用される。
【0023】
また、中空体の平均粒径は、
第2キャリア芯材の平均粒径との兼ね合いから適宜決定すればよいが、一般に、5μm〜50μmの範囲が好ましい。また、
第2キャリア芯材の粒径Dに対する中空体の粒径dの比d/Dの平均値は0.10〜0.75の範囲が好ましい。粒径比d/Dの平均値が0.10未満であると、
第2キャリア芯材の見掛け密度を十分に小さくできない一方、粒径比d/Dの平均値が0.75を超えると
第2キャリア芯材の強度が低下するおそれがある。より好ましい粒径比d/Dの平均値は0.40〜0.75の範囲である。
【0024】
本発明のキャリア芯材では、割れの起点となるような、外部と繋がる細孔が存在せず、キャリア芯材に内包されている中空体に位置の偏りがないので、割れが効果的に抑制される。キャリア芯材に内包される中空体の個数に限定はないが、1つのキャリア芯材に対して1つの中空体が内包されているのが好ましい。このとき、中空体はキャリア芯材の略中心に位置しているのが好ましい。また、中空体の形状は球状が好ましい。
【0025】
また、本発明のキャリア芯材では、外部と繋がる細孔が存在しないので、高抵抗化を目的としてキャリア芯材に表面酸化処理をした場合に、粒子内部は酸化されず磁力低下が小さく抑えられる。また、キャリア芯材を樹脂で被覆してキャリアとする際、被覆樹脂が粒子内に浸み込むのが抑えられ、被覆樹脂が必要以上に消費されるのが防止される。本発明のキャリア芯材における、水銀圧入法で測定した、細孔径4μm以下の細孔容積は0.005mL/g以下であるのが好ましい。
【0026】
本発明のキャリア芯材の好ましい電気抵抗は、印加電圧1000Vにおいて1.0×10
7Ω・cm〜1.0×10
10Ω・cmの範囲である。電気抵抗が1.0×10
7Ω・cm未満であると、電荷リークの発生するおそれがある一方、電気抵抗が1.0×10
10Ω・cmを超えると、エッジ効果が大きくなり画像濃度の低下を招くおそれがある。キャリア芯材のより好ましい電気抵抗は、1.0×10
7Ω・cm〜1.0×10
9Ω・cmの範囲である。
【0027】
本発明のキャリア芯材の見掛け密度(比重)としては、2.2g/cm
3以下であるのが好ましい。見掛け密度が2.2g/cm
3よりも高いと撹拌に要する動力を充分には軽減できない。より好ましい見掛け密度は2.0g/cm
3以下である。
【0028】
また、本発明のキャリア芯材の粒子密度としては、4.7g/cm
3以下であるのが好ましい。粒子密度が4.7g/cm
3よりも高いと撹拌に要する動力を充分には軽減できない。より好ましい粒子密度は4.0g/cm
3以下である。
【0029】
本発明のキャリア芯材の粒径に特に限定はないが、平均粒径で数十μm程度が好ましく、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
【0030】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0031】
まず、Fe成分原料とM成分原料、そして必要により添加剤とを秤量して分散媒中に投入し混合してスラリーを作製する。なお、MはMg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Ni等の2価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。Fe成分原料としては、Fe
2O
3等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO
3、Mn
3O
4等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)
2、MgCO
3が好適に使用できる。また、Ca成分原料としては、CaO、Ca(OH)
2、CaCO
3等から選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用される。
【0032】
本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記Fe成分原料、M成分原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50〜90wt%の範囲が望ましい。また、Fe成分原料、M成分原料を分散媒に投入する前に、必要により、粉砕混合の処理をしておいてもよい。
【0033】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は50μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0034】
そして、湿式粉砕されたスラリーに所定量の中空体を配合する。キャリア芯材中の、中空体を内包した粒子の割合、及びキャリア芯材1粒子中に内包される中空体の個数が調整されるため、中空体の配合量に限定はないが、1wt%〜10wt%の範囲が望ましい。
【0035】
次いで、中空体が配合されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
【0036】
次に、造粒物を800℃以上に加熱した炉に投入して、キャリア芯材を合成するための一般的な手法で焼成することにより、キャリア芯材を生成させる。焼成温度が800℃未満であると焼結が進行しない。焼成温度の好ましい上限値は1500℃である。焼成温度が1500℃以上であると、キャリア芯材同士の過剰焼結が起こり、異形粒子が発生することがあるからである。したがって、焼成温度としては800℃〜1500℃の範囲が好ましい。
【0037】
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行う。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。
【0038】
その後、必要に応じて、分級後の粉末(焼成物)を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してキャリア芯材の高抵抗化を図ってもよい(表面酸化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200℃〜800℃の範囲が好ましく、250℃〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間〜5時間の範囲が好ましい。
【0039】
前述のように、このときキャリア芯材内部には中空体のみが存在しており細孔を持たないので、粒子内部は酸化されず粒子表面のみが酸化される。これにより、キャリア芯材の電気抵抗が高められ且つ磁力低下が小さく抑えられる。
【0040】
以上のようにして作製した本発明のキャリア芯材は、そのまま電子写真現像用キャリアとして用いることもできるが、帯電性等の観点からは、キャリア芯材の表面を樹脂で被覆して用いるのが好ましい。
【0041】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0042】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に塗布すればよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001〜30wt%、特に0.001〜2wt%の範囲内にあるのがよい。
【0043】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0044】
キャリアの平均粒子径は、一般に、体積平均粒子径で10μm〜200μmの範囲、特に10μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0045】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1wt%〜15wt%の範囲が好ましい。トナー濃度が1wt%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15wt%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3wt%〜10wt%の範囲である。
【0046】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0047】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm〜15μmの範囲が好ましく、7μm〜12μmの範囲がより好ましい。
【0048】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
実施例1
Mnフェライトからなるキャリア芯材を下記方法で作製した。出発原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)1179gと、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)461gとを純水360g中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を10g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0052】
この混合スラリーに日本フィライト社製のシリカバルーン「フィライト200/7」を分級して平均粒径23.9μmとしたもの16.4g(1wt%)を添加し十分に撹拌した。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、粒径100μmを超える粗粒は篩網を用いて除去した。
【0053】
この造粒物を、窒素雰囲気下(酸素分圧P
O2=10
−3atm)の電気炉に投入し1050℃まで2時間かけて昇温し、その後1050℃で3時間保持し焼成を行った。そして、常温まで冷却した。得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級した。そして、さらに大気雰囲気下において温度450℃で1時間表面酸化処理を行い平均粒径35.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の見掛け密度、粒子密度、細孔容積、磁気特性、粒子強度を下記に示す方法でそれぞれ測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、
図1に粒子断面のSEM写真を示す。
【0054】
(見掛け密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0055】
(粒子密度)
Quantachrome社製のウルトラピクノメーター「Ultrapycnometer」を用いて下記条件で粒子密度を測定した。
サンプルセル:中
サンプル量:60g
繰返し測定:10回
パージモード:Flow
パージ時間:1分
【0056】
(細孔容積)
Quantachrome社製のポロシメーター「PoremasterGT60」を用いて下記条件で微分細孔容積分布を測定した。そして、測定した微分細孔容積分布から細孔容積を求めた。
ガラスセル:外容積3.2cm
3 浸入容積0.5cm
3
サンプル量:1g
低圧側測定
・脱気
・水銀充填(0〜50psi(0〜345kPa))
高圧側測定
・水銀圧入(20psi〜30000psi(139kPa〜207MPa))
水銀の表面張力:480dyn/cm
水銀の接触角 :141.3°
【0057】
(磁気特性の変化量)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10
4A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、79.58×10
3A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ
1k(Am
2/kg)を、表面酸化処理前後のキャリア芯材についてそれぞれ測定した。そして、その変化量を算出した。
【0058】
(粒子強度)
作製したキャリア芯材40g程度を網目25μmの篩を用いて、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)で測定したときの14μm以下の累積粒子頻度が0.10%以下となるように調整する。そして、調整した試料30gをサンプルミルに投入し、回転数12,500rpmで1分間撹拌する。次いで、マイクロトラック粒度分析計を用いて14μm以下の累積粒子頻度を測定する。サンプルミルによって処理した後の累積粒子頻度と処理する前の累積粒子頻度との差を算出し、これを微粉発生量として粒子強度の指標とした。評価基準は下記のとおりである。
○:0.00〜1.50%
△:1.50〜3.00%
×:3.00%以上
【0059】
(中空体を内包する粒子の割合)
得られたキャリア芯材を熱硬化性樹脂中に分散させた後、加熱により樹脂を硬化させた。この硬化物の表面を日本電子社製のクロスセクションポリッシャ「SM-09010」を用いて研磨した。研磨面を日本電子社製の走査電子顕微鏡「JSM-6510LA」を用いて観察し、粒子の断面写真を倍率250倍で複数視野について撮影した。撮影した粒子断面写真から、500粒子中に存在する中空体を内包している粒子の個数を求め、その割合を算出した。
【0060】
(キャリア芯材と中空体との粒径比d/D)
前記と同様に粒子の断面写真を倍率1000倍で撮影した。撮影した粒子断面写真から、中空体を内包する粒子のみランダムに100粒子選択し、Media Cybernetics社製の画像解析ソフト「Image-Pro PLUS」を用いて、キャリア芯材粒径(最大直径)Dと中空体の粒径(最大直径)dとを測定した。キャリア芯材粒径の測定時には、穴を埋めるモードを選択した。測定された値から粒径比d/Dを求め、平均値を算出した。なお、粒子断面は必ずしも芯材粒子の中心部を観察できるものではなく、中心部からずれたところを観察する可能性があるので注意が必要である。
【0061】
実施例2〜7,比較例1〜3
表1に示す出発原料及び配合量、焼成温度で実施例1と同様にしてキャリア芯材を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表2に測定結果をまとめて示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
※ Δσ
1k=σ
1k(処理後)−σ
1k(処理前)
【0064】
表2から明らかなように、実施例1〜7のキャリア芯材は、中空体を20個数%以上内包し、見掛け密度は2.20g/cm
3以下と低かった。しかも、粒子強度は比較例1の中実のキャリア芯材と同程度の高い強度を有していた。また、表面酸化処理の前後で、磁化σ
1k(Am
2/kg)の低下は1.9Am
2/kg以下と小さく抑えられていた。
【0065】
これに対し、中実である比較例1のキャリア芯材、及び中空体を内包する粒子の割合が5個数%の比較例2のキャリア芯材では、粒子強度等は良好であったものの、見掛け密度が2.42g/cm
3及び2.43g/cm
3と高かった。また、焼成工程におけるガス発生で空孔を形成した比較例3のキャリア芯材では、見掛け密度は1.92g/cm
3と低かったものの、表面酸化処理による磁化σ
1k(Am
2/kg)の低下が大きく、粒子強度も低かった。