特許第6061527号(P6061527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061527非水系洗浄剤及びケイ素基板のエッチング加工方法
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  • 特許6061527-非水系洗浄剤及びケイ素基板のエッチング加工方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061527
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】非水系洗浄剤及びケイ素基板のエッチング加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-157970(P2012-157970)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-22468(P2014-22468A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】原口 高之
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−283652(JP,A)
【文献】 特開2008−243923(JP,A)
【文献】 特開2010−212440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム水酸化物と、(C)有機溶剤とを含む、非水系洗浄液であって、
前記非水系洗浄液中の前記(B)四級アンモニウム水酸化物の含有量が0.5〜10質量%(ただし、10質量%は除く)であって、
前記(C)有機溶剤が、グリコール類、グリコールエーテル類、及び非プロトン性極性有機溶剤からなる群より選択される1種以上である、非水系洗浄液
【請求項2】
前記(A)フルオロアルカノールが下式(1)又は(2)で表される化合物である、請求項1に記載の非水系洗浄液。
H(CFCH−OH・・・(1)
F(CF(CH−OH・・・(2)
(式(1)及び(2)において、a、及びbは、それぞれ2〜6の整数であり、cは1〜2の整数である。)
【請求項3】
前記非水系洗浄液中の前記(A)フルオロアルカノールの含有量が0.1〜10質量%である、請求項1又は2に記載の非水系洗浄液。
【請求項4】
前記(C)有機溶剤が、グリコール類及びグリコールエーテル類から選択される溶媒と、非プロトン性極性有機溶媒との組み合わせである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系洗浄液。
【請求項5】
(A)フルオロアルカノールと、(C)有機溶剤を含み、
炭素数5以上の直鎖又は分岐構造のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物を含まず、
前記(C)有機溶剤がフッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤であり、
前記(C)有機溶剤が、グリコール類、グリコールエーテル類、及び非プロトン性極性有機溶剤からなる群より選択される1種以上である、非水系洗浄液。
【請求項6】
前記(A)フルオロアルカノールが下式(1)又は(2)で表される化合物である、請求項に記載の非水系洗浄液。
H(CFCH−OH・・・(1)
F(CF(CH−OH・・・(2)
(式(1)及び(2)において、a、及びbは、それぞれ2〜6の整数であり、cは1〜2の整数である。)
【請求項7】
前記非水系洗浄液がフルオロカーボン層の除去に用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系洗浄液。
【請求項8】
(A−I)ケイ素基板の表面に、所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層工程と、
(A−II)前記エッチングマスク層より露出する前記基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(A−III)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された前記基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)前記凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(A−IV)前記所定の深さの凹部の形成後に、前記フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
前記フルオロカーボン層除去工程において、前記洗浄液として請求項1〜の何れか1項に記載の洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法。
【請求項9】
(B−I)ケイ素基板表面にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(B−II)前記レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層形成工程と、
(B−III)前記エッチングマスク層より露出する前記基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(B−IV)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された前記基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)前記凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(B−V)前記所定の深さの凹部の形成後に、前記エッチングマスク層を洗浄液により除去する、エッチングマスク層除去工程と、
(B−VI)前記所定の深さの凹部の形成後に、前記フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
前記エッチングマスク層除去工程及び/又は前記フルオロカーボン層除去工程において、前記洗浄液として請求項1〜の何れか1項に記載の洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法。
【請求項10】
前記エッチングマスク層除去工程及び前記フルオロカーボン層除去工程において、前記洗浄液として請求項1〜の何れか1項に記載の洗浄液を用いる、請求項に記載のケイ素基板のエッチング加工方法。
【請求項11】
(C−I)ケイ素基板表面に無機ケイ素化合物膜を形成する、無機ケイ素化合物膜形成工程と、
(C−II)前記無機ケイ素化合物膜上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(C−III)前記レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのレジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
(C−IV)前記レジストパターンの開口部より露出する前記無機ケイ素化合物膜をエッチングして、所定のパターンの無機ケイ素化合物からなるエッチングマスク層を形成した後、前記レジストパターンを洗浄液により除去する、エッチングマスク層形成工程と、
(C−V)前記エッチングマスク層より露出する前記基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(C−VI)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された前記基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)前記凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(C−VII)前記所定の深さの凹部の形成後に、前記フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
前記エッチングマスク層形成工程及び/又は前記フルオロカーボン層除去工程において、前記洗浄液として請求項1〜の何れか1項に記載の洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法。
【請求項12】
前記エッチングマスク層形成工程及び前記フルオロカーボン層除去工程において、前記洗浄液として請求項1〜の何れか1項に記載の洗浄液を用いる、請求項11に記載のケイ素基板のエッチング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BOSCH法によるケイ素基板のエッチング加工方法において好適に使用される非水系洗浄剤と、前述の非水系洗浄剤を用いたケイ素基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の加工プロセスや、シリコン貫通電極(TSV,through−silicon via)の加工プロセス等では、ケイ素基板をエッチングにより深く掘り込む必要がある場合がある。このような場合、エッチング速度や、エッチングにより形成されるホールのアスペクト比のコントロールが容易であることから、BOSCH法と呼ばれるエッチングプロセスが採用されることが多い。
【0003】
BOSCH法は、エッチングにより掘り下げられた部分の内表面に、フルオロカーボンガスによりフルオロカーボン層を形成しながらケイ素基板を掘り進んでゆく方法である。このため、ケイ素基板に形成されるホールの内表面にはフルオロカーボン層が堆積している。よって、BOSCH法により、ケイ素基板にホールを形成する場合、ホールの内表面に堆積しているフルオロカーボン層を最終的に除去する必要がある。
【0004】
このため、BOSCH法により形成されたホールの内表面に堆積しているフルオロカーボン層を除去する、いくつかの方法が提案されている。具体的な方法としては、例えば、フルオロカーボン層を、専用の薬液として、エチルパーフルオロブチルエーテル(HFE−7200、住友スリーエム株式会社製)を用いて、洗浄除去する方法(非特許文献1)や、過酸化水素水と、テトラメチルアンモニウム水酸化物等の塩基性薬液と、水との混合液によりフルオロカーボン層を洗浄除去する方法(特許文献1)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−023339号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】江刺正喜、“Electronic Journal 第98回 Technical Seminar MEMSの基礎と応用 徹底解説”、第44〜第45頁、[online]、株式会社電子ジャーナル、[平成24年6月13日検索]、インターネット(URL:http://www.electronicjournal.co.jp/pdf/t_seminer/t098/01.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載される洗浄液は、揮発性が非常に高く、洗浄プロセスに使用した場合の揮発損失の改良が望まれるものである。また、MEMSやTSVの加工プロセスでは、ケイ素基板の深掘りエッチング以外の部分でもレジスト材料を用いた加工が行われるため、BOSCH法で形成されたホール内のフルオロカーボン層を除去する洗浄液により、レジスト材料の除去を行うこともできれば、プロセス上の大きなメリットとなる。しかし、非特許文献1に記載される洗浄液は、レジスト材料の除去性能に劣るものである。
【0008】
特許文献1に記載の洗浄液についても、フルオロカーボン層は除去できても、レジスト材料、特にネガ型レジスト材料を除去しにくい問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、フルオロカーボン層と、レジスト材料との双方を除去可能であり、洗浄プロセスに使用する場合の洗浄液成分の揮発損失が抑制された洗浄液を提供することを目的とする。また、本発明は、前述の洗浄液を用いるBOSCH法によるケイ素基板のエッチング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、非水系洗浄液に、フルオロアルカノールと、必要に応じて四級アンモニウム水酸化物を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
本発明の第一の態様は、(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム水酸化物と、(C)有機溶剤とを含む、非水系洗浄液である。
【0012】
本発明の第二の態様は、(A)フルオロアルカノールと、(C)有機溶剤を含み、(CC)有機溶剤がフッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤である、非水系洗浄液である。
【0013】
本発明の第三の態様は、
(A−I)ケイ素基板の表面に、所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層形成工程と、
(A−II)エッチングマスク層より露出する基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(A−III)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁及び底面にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(A−IV)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
フルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
【0014】
本発明の第四の態様は、
(B−I)ケイ素基板表面にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(B−II)レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層形成工程と、
(B−III)エッチングマスク層より露出する基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(B−IV)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(B−V)所定の深さの凹部の形成後に、エッチングマスク層を洗浄液により除去する、エッチングマスク層除去工程と、
(B−VI)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
エッチングマスク層除去工程及び/又はフルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
【0015】
本発明の第五の態様は、
(C−I)ケイ素基板表面に無機ケイ素化合物膜を形成する、無機ケイ素化合物膜形成工程と、
(C−II)無機ケイ素化合物膜上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(C−III)レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのレジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
(C−IV)レジストパターンの開口部より露出する無機ケイ素化合物膜をエッチングして、所定のパターンのケイ素化合物からなるエッチングマスク層を形成した後、レジストパターンを洗浄液により除去する、エッチングマスク層形成工程と、
(C−V)エッチングマスク層より露出する基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(C−VI)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(C−VII)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
エッチングマスク層形成工程及び/又はフルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フルオロカーボン層と、レジスト材料との双方を除去可能であり、洗浄プロセスに使用する場合の洗浄液成分の揮発損失が抑制された洗浄液を提供することができる。また、本発明によれば、前述の洗浄液を用いるBOSCH法によるケイ素基板のエッチング加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第三の態様に係るケイ素基板のエッチング加工方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一の態様に係る非水系洗浄液]
以下、本発明の第一の態様に係る非水系洗浄液について説明する。第一の態様に係る非水系洗浄液は、(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム水酸化物と、(CC)有機溶剤とを含む。以下、(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム塩と、(C)有機溶剤と、(D)その他の成分と、非水系洗浄液の製造方法とについて、順に説明する。
【0019】
〔(A)フルオロアルカノール〕
第一実施形態に係る非水系洗浄液は、アルカノール中の炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換された(A)フルオロアルカノール(以下(A)成分とも記す)を含有する。
【0020】
(A)フルオロアルカノールの構造は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、環状、及びこれらの構造を組み合わせた構造の何れであってもよい。(A)フルオロアルカノールの構造としては、入手が容易であり、得られる洗浄液のフルオロカーボン層の除去性能が優れることから、直鎖状が好ましい。
【0021】
(A)フルオロアルカノールが有する水酸基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)フルオロアルカノールとしては、フルオロアルカンモノオール又はフルオロアルカンジオールが好ましく、フルオロアルカンモノオールがより好ましい。
【0022】
(A)フルオロアルカノールの炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)フルオロアルカノールの炭素原子数は、3〜20が好ましく、3〜12がより好ましく、3〜8が特に好ましい。
【0023】
フルオロアルカノールは、フッ素置換された1価以上の炭化水素基を含む。フルオロアルカノールに含まれるフッ素置換された炭化水素基のフッ素原子による置換率は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、50%以上が好ましい。
【0024】
以上説明した、(A)成分の中では、下記式(1)又は式(2)で表される化合物が好ましい。
H(CFCH−OH・・・(1)
F(CF(CH−OH・・・(2)
(式(1)及び(2)において、a、及びbは、それぞれ2〜6の整数であり、cは1〜2の整数である。)
【0025】
上記式(1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の式(1−1)〜(1−3)の化合物が挙げられる。
H(CFCH−OH・・・(1−1)
H(CFCH−OH・・・(1−2)
H(CFCH−OH・・・(1−3)
【0026】
また、上記式(2)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の式(2−1)又は式(2−2)で表される化合物が挙げられる。
F(CF(CH−OH・・・(2−1)
F(CF(CH−OH・・・(2−1)
【0027】
以上説明したフルオロアルカノールは、2種以上を組み合わせて用いることができる。第一の態様に係る非水系洗浄液における(A)成分の含有量は、各成分が均一に溶解している非水系洗浄液を調製できる限り特に限定されない。第一の態様に係る非水系洗浄液における(A)成分の含有量は、非水系洗浄液の質量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0028】
〔(B)四級アンモニウム水酸化物〕
第一実施形態に係る非水系洗浄液は、(B)四級アンモニウム水酸化物(以下(B)成分とも記す)を含有する。(B)四級アンモニウム水酸化物は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(B)四級アンモニウム水酸化物は、従来からレジスト材料を用いる種々の基板の加工方法や、エッチングによる基板の加工方法において使用される洗浄液に用いられるものから適宜選択することができる。
【0029】
好適な(B)四級アンモニウム水酸化物としては、下式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
(上記式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)
【0030】
上記式(3)で表される化合物の中では、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、メチルトリプロピルアンモニウム水酸化物、メチルトリブチルアンモニウム水酸化物、及び(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム水酸化物が、入手しやすさの点からより好ましい。さらに、レジスト材料やフルオロカーボンを良好に洗浄できる非水系洗浄液を得やすい点で、テトラメチルアンモニウム水酸化物、及びテトラエチルアンモニウム水酸化物が、特に好ましい。
【0031】
第一の態様に係る非水系洗浄液における(B)成分の含有量は、各成分が均一に溶解している非水系洗浄液を調製できる限り特に限定されない。第一の態様に係る非水系洗浄液における(B)成分の含有量は、非水系洗浄液の質量に対して、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
【0032】
〔(C)有機溶剤〕
第一実施形態に係る非水系洗浄液は、(C)有機溶剤(以下(C)成分とも記す)を含有する。(C)有機溶剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(C)有機溶剤は、従来からレジスト材料を用いる種々の基板の加工方法や、エッチングによる基板の加工方法において使用される非水系洗浄液に用いられるものから適宜選択することができる。(C)有機溶剤としては、グリコール類、グリコールエーテル類、及び非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
【0033】
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールが好ましい。グリコールエーテル類としては、エチレングリコールエーテル類、ジエチレングリコールエーテル類、及びプロピレングリコールエーテル類が好ましい。また、グリコールエーテル類としては、グリコール類のアルキルエーテルが好ましく、グリコール類の炭素数1〜6のアルキルエーテルが好ましく、グリコール類の炭素数1〜4のアルキルエーテルが好ましい。
【0034】
グリコール類及びグリコールエーテル類の好適な例としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
【0035】
非プロトン性極性有機溶剤の好適な例としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類、等が挙げられる。これらの中では、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドンがより好ましい。
【0036】
(C)有機溶剤は、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、2種以上の(C)有機溶剤を用いる場合、グリコール類及びグリコールエーテル類と、非プロトン性極性有機溶剤とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0037】
〔(D)その他の成分〕
第一実施形態に係る非水系洗浄液は、本願発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、防食剤等の(D)その他の成分(以下、(D)成分とも記す)を含んでいてもよい。界面活性剤の種類は、特に限定されない。好適な界面活性剤としては、少なくとも炭素原子数10以上のアルキル基若しくはオキシアルキル基が置換したアミン系活性剤、アセチレンアルコール系活性剤、及び少なくとも1個以上の炭素原子数7以上のアルキル基が置換したジフェニルエーテル系活性剤等が挙げられる。
【0038】
防食剤は、ケイ素基板上に形成された銅等の金属材料の非水系洗浄液による腐食を抑制するために使用される。防食剤の好適な例としては、芳香族ヒドロキシ化合物(例えば、ピロカテコール、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、没食子酸、等)、トリアゾール系化合物(例えば、ベンゾトリアゾール、等)、メルカプト基含有化合物、糖アルコール系(例えば、キシリトール、ソルビトール等)等が挙げられる。これらの中では、金属等に対する防食効果の点から、メルカプト基含有化合物が好ましい。メルカプト基含有化合物としては、下式(4)及び(5)で表される化合物が好ましい。
【0039】
【化2】
(式(4)において、Rは、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のメルカプトアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基及びハロゲン原子からなる群より選択される基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、mが2又は3である場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【0040】
HS−(CH−OH・・・(5)
(式(5)において、xは3以上の整数である。)
【0041】
式(4)においてRが炭素数1〜4の水酸基を有していてもよいアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、(C)有機溶剤への溶解性が好適となるためメチル基、ヒドロキシメチル基、又はエチル基が好ましく、防食効果がより高まるためメチル基又はヒドロキシメチル基がより好ましい。
【0042】
式(4)においてRが炭素数1〜4のアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、及びtert−ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、(C)有機溶剤への溶解性が好適となるためメトキシ基、又はエトキシ基が好ましく、防食効果がより高まるためメトキシ基がより好ましい。
【0043】
式(4)においてRが炭素数1〜4のアルキルチオ基である場合の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、及びtert−ブチルチオ基が挙げられる。これらのアルキルチオ基の中では、(C)有機溶剤への溶解性が好適となるためメチルチオ基、又はエチルチオ基が好ましく、防食効果がより高まるためメチルチオ基がより好ましい。
【0044】
式(4)においてRが炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である場合の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキル基の中では、(C)有機溶剤への溶解性が好適となるため、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、又は1−ヒドロキシエチル基が好ましく、防食効果がより高まるためヒドロキシメチル基がより好ましい。
【0045】
式(4)においてRが炭素数1〜4のメルカプトアルキル基である場合の具体例としては、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基、1−メルカプトエチル基、3−メルカプト−n−プロピル基、4−メルカプト−n−ブチル基等が挙げられる。これらのメルカプトアルキル基の中では、(C)有機溶剤への溶解性が好適となるため、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基、又は1−メルカプトエチル基が好ましく、防食効果がより高まるためメルカプトメチル基がより好ましい。
【0046】
式(4)においてRが炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。Rが炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である場合の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1−クロロ−2−フルオロエチル基、3−クロロ−n−プロピル基、3−ブロモ−n−プロピル基、3−フルオロ−n−プロピル基、及び4−クロロ−n−ブチル基等が挙げられる。これらのハロゲン化アルキル基の中では、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、防食効果がより高まるためクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましい。
【0047】
Rがハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0048】
式(4)において、mは1〜3の整数であり、1がより好ましい。mが2又は3である場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
式(4)で表される化合物において、ベンゼン環上のRの置換位置は特に限定されない。高い防食効果を得やすい点から、ベンゼン環上のRの置換位置は−(CH−SHの結合位置に対してメタ位又はパラ位であるのが好ましい。
【0050】
式(4)で表される化合物としては、銅等の金属に対する防食性に優れ、且つ非水系洗浄液中での安定性に優れることから、Rとして、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を、少なくとも1つ有する化合物が好ましく、Rとして、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を1つ有する化合物がより好ましい。式(4)で表される化合物が、Rとして、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びメルカプトアルキル基からなる群より選択される基を1つ有する場合、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はメルカプトアルキル基のベンゼン環上の置換位置は、−(CH−SHの結合位置に対してメタ位又はパラ位であるのが好ましく、パラ位であるのがより好ましい。
【0051】
式(4)において、nは0〜3の整数である。化合物の調製や、入手が容易であることからnは0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0052】
式(4)で表される化合物の具体例としては、p−メルカプトフェノール、p−チオクレゾール、m−チオクレゾール、4−(メチルチオ)ベンゼンチオール、4−メトキシベンゼンチオール、3−メトキシベンゼンチオール、4−エトキシベンゼンチオール、4−イソプロピルオキシベンゼンチオール、4−tert−ブトキシベンゼンチオール、3,4−ジメトキシベンゼンチオール、3,4,5−トリメトキシベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、4−イソプロピルベンゼンチオール、4−n−ブチルベンゼンチオール、4−tert−ブチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、3−イソプロピルベンゼンチオール、3−n−ブチルベンゼンチオール、3−tert−ブチルベンゼンチオール、3,5−ジメチルベンゼンチオール、3,4−ジメチルベンゼンチオール、3−tert−ブチル−4−メチルベンゼンチオール、3−tert−4−メチルベンゼンチオール、3−tert−ブチル−5−メチルベンゼンチオール、4−tert−ブチル−3−メチルベンゼンチオール、4−メルカプトベンジルアルコール、3−メルカプトベンジルアルコール、4−(メルカプトメチル)フェノール、3−(メルカプトメチル)フェノール、4−フルオロベンゼンチオール、3−フルオロベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、3−クロロベンゼンチオール、4−ブロモベンゼンチオール、4−ヨードベンゼンチオール、3−ブロモベンゼンチオール、3,4−ジクロロベンゼンチオール、3,5−ジクロロベンゼンチオール、3,4−ジフルオロベンゼンチオール、3,5−ジフルオロベンゼンチオール、4−メルカプトカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メルカプトフェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシベンゼンチオール、4−ブロモ−3−メチルベンゼンチオール、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、3−(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4−メチルチオベンゼンチオール、4−エチルチオベンゼンチオール、4−n−ブチルチオベンゼンチオール、及び4−tert−ブチルチオベンゼンチオール等が挙げられる。これらの化合物の中では、銅等の金属に対する防食効果が高く、入手が容易であることから、p−メルカプトフェノール、p−チオクレゾール、m−チオクレゾール、4−(メチルチオ)ベンゼンチオール、4−メトキシベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、4−イソプロピルベンゼンチオール、4−フルオロベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、及び4−ブロモベンゼンチオールがより好ましい。また、銅等の金属に対する防食効果が高く、且つ洗浄液中での安定性に優れることから、4−メルカプトベンジルアルコール、及び4−(メルカプトメチル)フェノールも好ましい。
【0053】
式(5)において、xは3以上の整数であって、その上限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。非水系洗浄液による銅等の金属の腐食を良好に抑制できる点から、xは3以上10以下の整数であるのが好ましく、3以上9以下の整数であるのがより好ましい。
【0054】
式(5)で表される化合物の好適な例としては、
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;
HS−(CH−OH;、及び
HS−(CH10−OH、が挙げられる。
【0055】
非水系洗浄液における、防食剤の含有量は、非水系洗浄液の質量に対して、0.05〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
【0056】
〔非水系洗浄液の製造方法〕
第一の態様に係る非水系洗浄液の製造方法は特に限定されない。第一の態様に係る非水系洗浄液は、(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム塩と、(C)有機溶剤と、(D)その他の成分と、を混合した後、撹拌装置により混合して、各成分を均一に溶解させて調製することができる。
【0057】
以上説明した、第一の態様に係る非水系洗浄液は、BOSCH法で形成されるフルオロカーボン層と、レジスト材料との双方を除去可能であり、洗浄プロセスに使用する場合の洗浄液成分の揮発損失が抑制されている。第一の態様に係る非水系洗浄液は、特に、ネガ型及びポジ型ホトレジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なレジスト材料に対する洗浄に有利に使用できる。
【0058】
また、第一の態様に係る非水系洗浄液は、銅等の金属により配線等が形成された基板に対して使用される場合がある。この場合、例えば、従来知られる、過酸化水素水と塩基性薬液と水とを混合した洗浄液は、金属を腐食させやすい。一方、第一の態様に係る非水系洗浄液は、過酸化水素水と塩基性薬液と水とを混合した洗浄液よりも金属を腐食させにくい。
【0059】
[第二の態様に係る非水系洗浄液]
本発明の第二の態様に係る非水系洗浄液は、(A)フルオロアルカノールと、(C)有機溶剤を含み、(C)有機溶剤がフッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤である、非水系洗浄液である。以下、(A)フルオロアルカノールと、(C)有機溶剤と、(D)その他の成分とについて、順に説明する。
【0060】
〔(A)フルオロアルカノール〕
第二の態様に係る非水系洗浄液は、第一の態様に係る非水系洗浄液が含有する(A)フルオロアルカノールと同様のフルオロアルカノールを含有する。第二の態様に係る非水系洗浄液における、(A)フルオロアルカノールの含有量は、第一の形態に係る非水系洗浄液と同様である。
【0061】
〔(C)有機溶剤〕
第二の態様に係る非水系洗浄液は、フッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤を、(C)有機溶剤(以下、(C)成分とも記す)として含む。(C)有機溶剤は、フッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フッ素原子を含有しない非アミン系有機溶剤の好適な例としては、第一の態様の非水系洗浄液において、(C)有機溶剤として好適に使用される、グリコール類、グリコールエーテル類、及び非プロトン性極性有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤の好適な具体例も、(C)有機溶剤の好適な具体例と同様である。
【0062】
〔(D)その他の成分〕
第二の態様に係る非水系洗浄液は、第一の態様に係る非水系洗浄液が含有する(D)その他の成分を、必要に応じて含んでいてもよい。
【0063】
〔非水系洗浄液の製造方法〕
第二の態様に係る非水系洗浄液の製造方法は特に限定されない。第二の態様に係る非水系洗浄液は、(A)フルオロアルカノールと、(C)有機溶剤と、(D)その他の成分と、を混合した後、撹拌装置により混合して、各成分を均一に溶解させて調製することができる。
【0064】
以上説明した、第二の態様に係る非水系洗浄液は、BOSCH法で形成されるフルオロカーボン層と、レジスト材料との双方を除去可能であり、洗浄プロセスに使用する場合の洗浄液成分の揮発損失が抑制されている。第二の態様に係る非水系洗浄液は、特に、ネガ型及びポジ型ホトレジストを含めて有機溶剤で現像可能なレジスト材料に対する洗浄に有利に使用できる。
【0065】
また、第二の態様に係る非水系洗浄液は、第一の態様に係る非水系洗浄液と同様に、過酸化水素水と塩基性薬液と水とを混合した、従来知られる洗浄液よりも金属を腐食させにくい。
【0066】
[第三の態様に係るエッチング加工方法]
本発明の第三の態様は、
(A−I)ケイ素基板の表面に、所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層形成工程と、
(A−II)エッチングマスク層より露出する基板表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(A−III)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁及び底面にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(A−IV)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
フルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
以下、図1を参照して、第三の態様に係るエッチング加工方法について説明する。
【0067】
〔(A−I)エッチングマスク層形成工程〕
(A−I)エッチングマスク層形成工程では、図1−a及び図1−bに示されるように、ケイ素基板10の表面に、所定のパターンの開口部を有するエッチングマスク層11を形成する。エッチングマスク層11の材料は特に限定されない。エッチングマスク層11の好適な材料としては、種々のレジスト材料や、SiOやSiN等の無機ケイ素化合物であってもよい。エッチングマスク層11がレジスト材料からなる場合、エッチングマスク層11は、従来知られるフォトリソグラフィー法により形成される。エッチングマスク層11が無機ケイ素化合物である場合、エッチングマスク層11は、ケイ素基板10の表面に無機ケイ素化合物の薄膜を形成した後、無機ケイ素化合物の薄膜上にエッチングマスク層の開口部に相当する個所に開口を有するレジストパターンを形成し、レジストパターンの開口部から露出する無機ケイ素化合物の薄膜をエッチングにより剥離させ、次いで、レジストパターンを除去することにより形成することができる。
【0068】
また、エッチングマスク層11は、エッチングマスク層11に相当する個所に開口を有するレジストパターンを形成した後、CVD法により無機ケイ素化合物をレジストパターンの開口部に堆積させ、次いで、レジストパターンを除去する方法によっても形成することができる。
【0069】
(A−I)エッチングマスク層形成工程で、レジスト材料からなるレジストパターンをエッチングマスク層11とする場合、レジスト材料からなるエッチングマスク層11は、第一又は第二の態様の非水系洗浄液を用いて除去することができる。このとき、非水系洗浄液の組成は、レジスト材料の種類に応じて適宜選択される。
【0070】
〔(A−II)第一エッチング工程〕
(A−II)第一エッチング工程では、図1−b及び図1−cに示されるように、エッチングマスク層11より露出するケイ素基板10の表面をエッチングして凹部12を形成する。第一エッチング工程において、エッチングマスク層11より露出するケイ素基板10の表面をエッチングする方法は特に限定されない。BOSCH法では、通常SFガスを用いる等方性のプラズマエッチングにより、ケイ素基板10のエッチングを行う。
【0071】
〔(A−III)第二エッチング工程〕
(A−III)凹部形成工程では、図1−c及び図1−dに示されるように、(A−II)第一エッチング工程で形成された凹部12の側壁13及び底面14に、フルオロカーボン層15を形成する、(i)フルオロカーボン層形成工程と、図1−d及び図1−eに示される、フルオロカーボン層15が形成された凹部12の底面14をエッチングする、(ii)第二エッチング工程と、を所定回数繰り返して、ケイ素基板10に所定の深さの凹部12を形成する。
【0072】
(i)フルオロカーボン層形成工程において、凹部12の内表面にフルオロカーボン層15を形成する方法は特に限定されない。BOSCH法では、通常、Cガスを凹部内に流通させ、プラズマ重合させることにより、凹部12の内表面にフルオロカーボン層15を形成させる。
【0073】
(ii)第二エッチング工程におけるエッチング方法は特に限定されない。通常、(ii)第二エッチング工程では、第一エッチング工程と同様の方法により、凹部12の底面14がエッチングされる。
【0074】
(A−III)凹部形成工程では、図1−e、図1−f、及び図1−gに示されるように、凹部12の側壁13にフルオロカーボン層を形成して、側壁13がエッチングを受けにくくさせた後に、底面14のエッチングを行う、工程(i)及び(ii)を所定回数繰り返すことで、凹部12の径を広げることなく、深い凹部12を形成することができる。
【0075】
〔(A−IV)フルオロカーボン層除去工程〕
(A−IV)フルオロカーボン層除去工程では、図1−g、図1−h、及び図1−iに示されるように、第一又は第二の態様の非水系洗浄液16を用いて、凹部12の側壁13及び底面14に形成されたフルオロカーボン層15を除去する。非水系洗浄液16によりフルオロカーボン層を除去する方法は特に限定されないが、凹部12全体に非水系洗浄液16を接触させやすいことから、基板10を非水系洗浄液16に浸漬させる方法が好ましい。
【0076】
なお、フルオロカーボン層15の除去は、エッチングマスク層11の除去の前に行っても、後に行ってもよい。図1−hでは、エッチングマスク層11の除去の前にフルオロカーボン層15を除去する態様を示す。エッチングマスク層11がSiOやSiN等の無機ケイ素化合物からなる場合、例えば、フッ酸を含む洗浄液により、エッチングマスク層11を除去することができる。また、エッチングマスク層11がレジスト材料からなる場合、第一又は第二の態様の非水系洗浄液を用いることにより、フルオロカーボン層15とエッチングマスク層とを同時に除去することができる。
【0077】
エッチングマスク層11の除去と、(A−IV)フルオロカーボン層除去工程でのフルオロカーボン層15の除去とを行うことにより、図1−jに示される、所定の深さの凹部12を備えるケイ素基板10が得られる。
【0078】
[第四の態様に係るエッチング加工方法]
本発明の第四の態様は、
(B−I)ケイ素基板表面にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(B−II)レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのエッチングマスク層を形成する、エッチングマスク層形成工程と、
(B−III)エッチングマスク層より露出する基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(B−IV)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁及び底面にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(B−V)所定の深さの凹部の形成後に、エッチングマスク層を洗浄液により除去する、エッチングマスク層除去工程と、
(B−VI)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
エッチングマスク層除去工程及び/又はフルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
【0079】
〔(B−I)レジスト膜形成工程、及び(B−II)エッチングマスク層形成工程〕
第四の態様に係るエッチング加工方法では、(B−I)レジスト膜形成工程、及び(B−II)エッチングマスク層形成工程によって、ケイ素基板10の表面に、レジスト材料を用いてエッチングマスク層11を形成する。レジスト材料を用いてエッチングマスク層11を形成する方法は、特に限定されず、周知のフォトリソグラフィー法に従って行われる。
【0080】
〔(B−III)第一エッチング工程〕
第四の態様に係るエッチング加工方法では、第三の態様に係るエッチング加工方法における(A−II)第一エッチング工程と同様にして、(B−III)第一エッチング工程において、エッチングマスク層11より露出するケイ素基板10の表面をエッチングして凹部12を形成する。
【0081】
〔(B−IV)凹部形成工程〕
第四の態様に係るエッチング加工方法では、第三の態様に係るエッチング加工方法における(A−III)凹部形成工程と同様にして、(B−IV)凹部形成工程において、(B−III)第一エッチング工程で形成された凹部12の側壁13及び底面14に、フルオロカーボン層15を形成する(i)フルオロカーボン層形成工程と、フルオロカーボン層15が形成された凹部12の底面14をエッチングする(ii)第二エッチング工程と、を所定回数繰り返して、ケイ素基板10に所定の深さの凹部12を形成する。
【0082】
〔(B−V)エッチングマスク除去工程〕
第四の態様に係るエッチング加工方法では、ケイ素基板10の表面に形成されたレジスト材料からなるエッチングマスク層11を除去する。エッチングマスク層11を除去する方法は特に限定されないが、第一又は第二の態様の非水系洗浄液により除去する方法が好ましい。非水系洗浄液によりエッチングマスク層11を除去する場合、その方法は特に限定されず、周知の方法から適宜選択される。好適な方法の具体例としては、浸漬法、及びシャワー法等が挙げられる。
【0083】
〔(B−VI)フルオロカーボン層除去工程〕
第四の態様に係るエッチング加工方法では、所定の深さの凹部12の側壁13及び底面14に形成されたフルオロカーボン層15を除去する。フルオロカーボン層15を除去する方法は特に限定されないが、第一又は第二の態様の非水系洗浄液16により除去する方法が好ましい。フルオロカーボン層15を第一又は第二の態様の非水系洗浄液16により除去する場合、その方法は特に限定されないが、凹部12全体に非水系洗浄液16を接触させやすいことから、基板10を非水系洗浄液16に浸漬させる方法が好ましい。(B−V)エッチングマスク除去工程と、(B−VI)フルオロカーボン層除去工程は、同時に行ってもよい。例えば、第一又は第二の態様の非水系洗浄液16を用いる場合、前述の浸漬法により、エッチングマスク層11を除去すれば、フルオロカーボン層15も同時に除去される。
【0084】
なお、(B−V)エッチングマスク除去工程及び(B−VI)フルオロカーボン層除去工程では、少なくとも何れかの工程において、第一の態様又は第二の態様に係る非水系洗浄液を用い、双方の工程で第一の態様又は第二の態様に係る非水系洗浄液を用いるのが好ましい。
【0085】
[第五の態様に係るエッチング加工方法]
本発明の第五の態様は、
(C−I)ケイ素基板表面に無機ケイ素化合物膜を形成する、無機ケイ素化合物膜形成工程と、
(C−II)無機ケイ素化合物膜上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
(C−III)レジスト膜を露光及び現像して所定のパターンのレジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
(C−IV)レジストパターンの開口部より露出する無機ケイ素化合物膜をエッチングして、所定のパターンの無機ケイ素化合物からなるエッチングマスク層を形成した後、レジストパターンを洗浄液により除去する、エッチングマスク層形成工程と
(C−V)エッチングマスク層より露出する基板の表面をエッチングする、第一エッチング工程と、
(C−VI)下記工程(i)及び(ii);
(i)エッチングにより形成された基板表面の凹部の側壁にフルオロカーボン層を形成する、フルオロカーボン層形成工程、及び
(ii)凹部の底面をエッチングする、第二エッチング工程、
を所定回数繰り返し、ケイ素基板に、所定の深さの凹部を形成する、凹部形成工程と、
(C−VII)所定の深さの凹部の形成後に、フルオロカーボン層を洗浄液により除去する、フルオロカーボン層除去工程と、を含み、
エッチングマスク層除去工程及び/又はフルオロカーボン層除去工程において、洗浄液として、第一の態様の非水系洗浄液、又は第二の態様の非水系洗浄液を用いる、ケイ素基板のエッチング加工方法である。
【0086】
〔(C−I)無機ケイ素化合物膜形成工程〕
第五の態様に係るエッチング加工方法では、(C−I)無機ケイ素化合物膜形成工程において、ケイ素基板10の表面に、エッチングマスク層11の材料となるSiOやSiN等からなる無機ケイ素化合物膜を形成する。ケイ素基板10の表面に無機ケイ素化合物膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、CVD法等が挙げられる。
【0087】
〔(C−II)レジスト膜形成工程及び(C−III)レジストパターン形成工程〕
(C−II)レジスト膜形成工程及び(C−III)レジストパターン形成工程では、周知のフォトリソグラフィー法に従って、無機ケイ素化合物膜上に、エッチングマスク層11の開口部に相当する個所に開口部を有するレジストパターンを形成する。
【0088】
〔(C−IV)エッチングマスク層形成工程〕
(C−IV)エッチングマスク層形成工程では、(C−III)レジストパターン形成工程で形成されたレジストパターンの開口部より露出する無機ケイ素化合物膜をエッチングし、次いで、レジストパターンを除去する。レジストパターンを除去する方法は特に限定されないが、第一又は第二の態様に係る非水系洗浄液により除去するのが好ましい。第一又は第二の態様に係る非水系洗浄液によりレジストパターンを除去する場合、レジストパターンの除去は、第四の態様に係るエッチング加工方法の(B−V)エッチングマスク除去工程と同様に行われる。
【0089】
〔(C−V)第一エッチング工程〕
第五の態様に係るエッチング加工方法では、第三の態様に係るエッチング加工方法における(A−II)第一エッチング工程と同様にして、(C−V)第一エッチング工程において、エッチングマスク層11より露出するケイ素基板10の表面をエッチングして凹部12を形成する。
【0090】
〔(C−VI)凹部形成工程〕
第五の態様に係るエッチング加工方法では、第三の態様に係るエッチング加工方法における(A−III)凹部形成工程と同様にして、(C−VI)凹部形成工程において、(C−V)第一エッチング工程で形成された凹部12の側壁13及び底面14に、フルオロカーボン層15を形成する(i)フルオロカーボン層形成工程と、フルオロカーボン層15が形成された凹部12の底面14をエッチングする(ii)第二エッチング工程と、を所定回数繰り返して、ケイ素基板10に所定の深さの凹部12を形成する。
【0091】
〔(C−VII)フルオロカーボン層除去工程〕
第五の態様に係るエッチング加工方法では、第四の態様に係るエッチング加工方法における(B−VI)フルオロカーボン層除去工程と同様にして、所定の深さの凹部12の側壁13及び底面14に形成されたフルオロカーボン層15が除去される。第五の態様に係るエッチング加工方法では、第三の態様に係るエッチング加工方法と同様にして、エッチングマスク層11が除去される。
【0092】
なお、(C−IV)エッチングマスク層形成工程及び(C−VII)フルオロカーボン層除去工程では、少なくとも何れかの工程において、第一の態様又は第二の態様に係る非水系洗浄液を用い、双方の工程で第一の態様又は第二の態様に係る非水系洗浄液を用いるのが好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
実施例及び比較例では、(A)フルオロアルカノール、(B)四級アンモニウム水酸化物、及び(C)有機溶剤として以下のものを使用した。また、比較例では(A)フルオロアルカノールに類似する成分として、下記の(A’)含フッ素溶剤(F〜I)を用いた。表1及び2に、各非水系洗浄液の組成を記す。表1及び表2中の各成分の含有量は、非水系洗浄液の質量に対する質量%である。
【0095】
〔(A)フルオロアルカノール又は(A’)含フッ素溶剤〕
A−1:H(CF)CH−OH
A−2:H(CF)CH−OH
A−3:H(CF)CH−OH
A−4:F(CFCH−OH
A−5:F(CFCHCH−OH
A−6:COCH
A−7:COC
A−8:C13OCH
A−9:F−(CFCFO)−C(質量平均分子量:2700)
A−10:N(C
〔(B)四級アンモニウム水酸化物〕
テトラメチルアンモニウム水酸化物
〔(C)有機溶剤〕
PG:プロピレングリコール
SF:スルホラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン
【0096】
〔実施例1〜14及び比較例1〜6〕
表1に記載の組成に従って、実施例1〜14、及び比較例1〜6の非水系洗浄液を調製した。実施例1〜14、及び比較例1〜6の非水系洗浄液について、下記方法に従って、フルオロカーボン層の除去性と、レジスト材料の除去性とを確認した。以下の試験の結果を、表1に記す。
【0097】
<フルオロカーボン層除去試験>
常法に従って、BOSCH法によりケイ素基板をエッチングし、ケイ素基板に、側壁に厚さ100nmのフルオロカーボン層が堆積しているホールを形成した。この、ホールが形成された基板を、フルオロカーボン層除去試験用のテスト基板として用いた。洗浄液を80℃に加温した後、テスト基板片(2cm×4cm)を、加温された洗浄液に30分間浸漬させた。浸漬後、テスト基板片を洗浄液から取り出し、イソプロピルアルコールでテスト基板片を洗浄した後、純水でテスト基板片を洗浄した。純水での洗浄後、基板表面に窒素ガスを吹きつけて水を除去し、次いで、テスト基板片を100℃のホットプレートに載置して、テスト基板片を完全に乾燥させた。
【0098】
乾燥されたテスト基板のホール側壁の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、洗浄液のフルオロカーボン層の除去性を評価した。フルオロカーボン層が完全に除去されていた場合を○と評価した。また、フルオロカーボン層が完全に除去されていなかったものを×と評価した。
【0099】
<レジスト材料除去試験>
レジスト組成物に配合する樹脂として、下式で表される樹脂を用いた。下式において各単位の右下の数字は、樹脂100質量部中の各単位の質量部数である。また、下式で表される樹脂の質量平均分子量は20,000である。
【0100】
【化3】
【0101】
上記式で表される樹脂100質量部と、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(光重合開始剤、製品名イルガキュア651、チバ・ジャパン株式会社製)8質量部と、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体4質量部と、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(製品名アロニックスM−350、東亞合成株式社製)30質量部と、ポリエチレングリコールジアクリレート(製品名NKエステルA−200、新中村化学工業株式社製)10質量部と、N−ビニルピロリドン(製品名アロニックスM−150、東亞合成株式社製)10質量部と、メチルヒドロキノン(重合禁止剤)0.1質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとメチルイソブチルケトンとの質量比1:1の混合溶媒100質量部に溶解させて、レジスト組成物を得た。
【0102】
基板として2cm×4cmの銅基板を用いた。基板上に上記のレジスト組成物を塗布した後、基板を110℃で10分間加熱して、膜厚40μmのレジスト膜を形成した。形成されたレジスト膜を、露光装置、Canon PLA501F Hardcontact(キヤノン株式会社製)により露光量1000mJ/cmで露光した。得られた、露光されたレジスト膜を備える銅基板をテスト基板として用いた。
【0103】
洗浄液を60℃に加温した後、テスト基板片(2cm×4cm)を、加温された洗浄液に15分間浸漬させた。浸漬後、テスト基板片を洗浄液から取り出し、イソプロピルアルコールでテスト基板片を洗浄した後、純水でテスト基板片を洗浄した。純水での洗浄後、基板表面に窒素ガスを吹きつけて水を除去し、次いで、テスト基板片を100℃のホットプレートに載置して、テスト基板片を完全に乾燥させた。
【0104】
乾燥されたテスト基板の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、洗浄液のレジスト材料の除去性を評価した。レジスト膜が完全に除去されていた場合を○と評価した。また、レジスト膜が完全に除去されていなかったものを×と評価した。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例1〜14によれば、(A)フルオロアルカノールと、(B)四級アンモニウム水酸化物と、(C)有機溶剤とを含む、非水系洗浄液であれば、フルオロカーボン層と、レジスト材料との双方を良好に除去できることが分かる。
【0107】
比較例1によれば、非水系洗浄液が(A)フルオロアルカノールを含まない場合、フルオロカーボン層を除去しにくいことが分かる。
【0108】
比較例2〜6では、均一に溶解した非水系洗浄液を調製できなかった。このため、比較例2〜6では、フルオロカーボン層除去試験と、レジスト材料除去試験とを行わなかった。
【符号の説明】
【0109】
10 ケイ素基板
11 エッチングマスク層
12 凹部
13 側壁
14 底面
15 フルオロカーボン層
16 非水系洗浄液
図1