(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウェネルト電極を有する熱電子銃から放出された電子ビームの一部がそれぞれ複数の開口部を通過することによって形成されたマルチビームの電流密度分布を取得する工程と、
前記電流密度分布を参照して、前記マルチビームのうち、電流密度が閾値以上の少なくとも1つのビームを選択する工程と、
前記熱電子銃のウェネルト電極に印加する電圧を可変にして、前記電流密度が閾値以上の少なくとも1つのビームの電流値をそれぞれ測定して、前記ウェネルト電極に印加する電圧と前記少なくとも1つのビームの電流値との相関関係を取得する工程と、
ステージに配置された試料にパターンを描画している途中であって、前記試料の描画領域を短冊状に仮想分割したストライプ領域の描画が終了する毎に、前記少なくとも1つのビームが前記ステージに配置された電流検出器に入射可能な位置に前記ステージを移動させる工程と、
前記ステージを移動させた後、前記マルチビームのうち、電流密度が閾値よりも小さいビームを遮蔽した状態で、前記少なくとも1つのビームを前記電流検出器に入射させ、前記ストライプ領域の描画が終了する毎に、前記少なくとも1つのビームの電流値を測定する工程と、
前記相関関係を用いて、測定された電流値が目標電流値になるためのウェネルト電極に印加する目標電圧値を演算する工程と、
前記目標電圧値を前記ウェネルト電極に印加する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチビームの電流調整方法。
ウェネルト電極を有する熱電子銃から放出された電子ビームの一部がそれぞれ複数の開口部を通過することによって形成されたマルチビームの電流密度分布を取得する工程と、
前記電流密度分布を参照して、前記マルチビームのうち、電流密度が閾値以上の少なくとも1つのビームを選択する工程と、
前記マルチビームのうち、電流密度が閾値よりも小さいビームを遮蔽した状態で、電流密度が閾値以上の前記少なくとも1つのビームの電流値を測定する工程と、
前記熱電子銃のウェネルト電極に印加する電圧と前記少なくとも1つのビームの電流値との相関関係を用いて、測定された電流値が目標電流値になるためのウェネルト電極に印加する目標電圧値を演算する工程と、
前記目標電圧値を前記ウェネルト電極に印加する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチビームの電流調整方法。
試料にパターンを描画している途中であって、前記試料の描画領域を短冊状に仮想分割したストライプ領域の描画が終了する毎に、前記少なくとも1つのビームの電流値が測定されることを特徴とする請求項2記載のマルチビームの電流調整方法。
試料にパターンを描画している途中であって、所定の時間が経過する毎に、前記少なくとも1つのビームの電流値が測定されることを特徴とする請求項2記載のマルチビームの電流調整方法。
前記熱電子銃のウェネルト電極に印加する電圧を可変にして、前記少なくとも1つのビームの電流値をそれぞれ測定して、前記相関関係を取得する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項2〜4いずれか記載のマルチビームの電流調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、アパーチャ部材203、ブランキングプレート204、縮小レンズ205、制限アパーチャ部材206、対物レンズ207、及び、偏向器214が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。また、XYステージ105上には、試料101が配置される位置とは異なる位置にファラディーカップ106が配置される。
【0017】
また、縮小レンズ205と対物レンズ207は、共に、電磁レンズで構成され、磁場が逆方向で励磁の大きさが例えば等しくなるように配置される。縮小レンズ205と対物レンズ207によって縮小光学系が構成される。
【0018】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、制御回路120、電子銃電源回路130、アンプ132、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、制御回路120、電子銃電源回路130、アンプ132、及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0019】
制御計算機110内には、描画制御部50、個別ビーム電流(Ik)測定部52、電流密度(J)分布作成部54、設定部56、参照領域ビーム電流(Is)測定部58、相関データ取得部60、目標電圧演算部62、設定部64、判定部66、及び描画データ処理部68が配置される。描画制御部50、Ik測定部52、J分布作成部54、設定部56、Is測定部58、相関データ取得部60、目標電圧演算部62、設定部64、判定部66、及び描画データ処理部68といった各機能は、プログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機ユニット110内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ112に記憶される。また、描画制御部50、Ik測定部52、J分布作成部54、設定部56、Is測定部58、相関データ取得部60、目標電圧演算部62、設定部64、判定部66、及び描画データ処理部68の少なくとも1つがソフトウェアで構成される場合には、CPU或いはGPUといった計算器が配置される。
【0020】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0021】
図2は、実施の形態1における電子銃と電子銃電源回路の内部構成を示す図である。
図2において、電子銃201は、熱電子銃(熱放出型電子銃)であって、電子銃201内には、カソード40と、ウェネルト42(ウェネルト電極)と、アノード44と、が配置される。カソード40として、例えば、六ホウ化ランタン(LaB
6)結晶等を用いると好適である。ウェネルト42は、カソード40とアノード44との間に配置される。また、アノード44は、接地され、電位がグランド電位に設定されている。電子銃201には、電子銃電源装置130が接続される。
【0022】
電子銃電源装置120内では、加速電圧電源回路132とバイアス電圧電源回路134とフィラメント電力供給回路136(フィラメント電力供給部)と、電流検出器137,138が配置される。加速電圧電源回路132の陰極(−)側が電子鏡筒102内のカソード40に接続される。加速電圧電源回路132の陽極(+)側は、電子鏡筒102内のアノード44に接続されると共に接地(グランド接続)されている。また、加速電圧電源回路132の陰極(−)は、バイアス電圧電源回路134の陽極(+)にも分岐して接続され、バイアス電圧電源回路134の陰極(−)は、ウェネルト42に電気的に接続される。言い換えれば、バイアス電圧電源回路134は、加速電圧電源回路132の陰極(−)とウェネルト42との間に電気的に接続されるように配置される。また、カソード40の電子放出面とは反対側の部分は図示しないヒータ部材に覆われている。そして、フィラメント電力供給回路136は、かかるカソード40のヒータ部材に接続される。加速電圧電源回路132は、カソード40とアノード44間に加速電圧を印加することになる。バイアス電圧電源回路134は、ウェネルト42にバイアス電圧を印加することになる。そして、フィラメント電力供給回路136は、ヒータ部材を介してカソード40にフィラメント電力を供給し、加熱することになる。電流検出器137は、カソード40のヒータ部材とフィラメント電力供給回路136との回路に直列に接続されている。電流検出器138は、加速電圧電源回路132の陽極(+)側とグランドとの間に直列に接続されている。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるアパーチャ部材の構成を示す概念図である。
図3(a)において、アパーチャ部材203には、縦(y方向)m列×横(x方向)n列(m,n≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2(a)では、例えば、512×8列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。ここでは、y方向の各列について、x方向にAからHまでの8つの穴22がそれぞれ形成される例が示されている。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、縦横(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、縦横(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図3(a)にように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。
図3(b)に示すように、例えば、縦方向(y方向)1段目の列と、2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)2段目の列と、3段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0024】
図4は、実施の形態1におけるブランキングプレートの構成を示す概念図である。ブランキングプレート204には、アパーチャ部材203の各穴22の配置位置に合わせて通過孔が形成され、各通過孔には、対となる2つの電極24,26の組(ブランカー:第1の偏向器)が、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立にかかる対となる2つの電極24,26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、複数のブランカーが、アパーチャ部材203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0025】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直にアパーチャ部材203全体を照明する。アパーチャ部材203には、矩形の複数の穴(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴が含まれる領域を照明する。複数の穴の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかるアパーチャ部材203の複数の穴をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a〜eが形成される。かかるマルチビーム20a〜eは、ブランキングプレート204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビーム20を偏向する(ブランキング偏向を行う)。そして、ブランキングプレート204を通過したマルチビーム20a〜eは、縮小レンズ205によって、屈折させられ集光し、制限アパーチャ部材206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向された電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206(ブランキングアパーチャ部材)の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ部材206によって遮蔽される。一方、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向されなかった電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206の中心の穴を通過する。かかるブランカーのON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ部材206は、複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ部材206を通過したビームにより1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ部材206を通過したマルチビーム20のパターン像は、対物レンズ207により焦点が合わされ、偏向器214によって一括して偏向され、試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0026】
描画装置100は、XYステージ105が移動しながらショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。
【0027】
図5は、実施の形態1における電流密度分布の均一性と電子銃の動作時間の関係の一例を示すグラフである。可変成形型のシングルビーム方式の描画装置を用いて、マスク面上に分布する複数の30μm角の領域を、各測定領域として、かかる各測定領域の電流を測定することで、マスク面上の電流密度分布の均一性を測定した。具体的には、第1の成形アパーチャを通過したビーム全体を第2の成形アパーチャも通過させ、かかる第1の成形アパーチャ像をステージ上に照射する。その際、ステージ上に配置された、マスク面上で30μm角に相当する検出面積を持ったファラディーカップの位置を各測定領域の位置に移動させながら、各測定領域の位置でファラディーカップにより検出された電流を測定する。これにより、各測定領域の電流を測定できる。その際、マスク面の中心位置の測定領域を照射するビームにマスク面上の電流密度分布のピークが含まれるように光軸等を調整した。そして、かかる電流密度分布のピークが含まれる測定領域の電流を一定に維持すべく、数十分間隔でウェネルト電圧(バイアス電圧)を調整した。その結果、
図5に示すように、電流密度分布の均一性は、2000時間で約0.3%の変化しかないとの実験結果を得た。かかる結果から、マルチビーム描画においても、電流密度分布のピークが含まれる個別ビームの電流を一定に維持すべく、所定間隔でウェネルト電圧(バイアス電圧)を調整すれば、長期間にわたりマルチビーム全体での電流密度分布の均一性を高精度に保つことができることを見出した。
【0028】
図6は、実施の形態1におけるマルチビームの電流調整方法の要部工程を説明するためのフローチャート図である。
図6において、実施の形態1におけるマルチビームの電流調整方法は、開口部面積測定工程(S102)と、カソード温度及びウェネルト電圧設定工程(S104)と、個別ビーム電流(Ik)測定工程(S106)と、電流密度(J)分布作成工程(S108)と、原点穴及び参照領域設定工程(S110)と、参照領域ビーム設定工程(S112)と、参照領域ビーム電流(Is)測定工程(S114)と、相関データ取得工程(S116)と、描画開始後に、ストライプ領域毎のファラディーカップ移動工程(S118)と、参照領域ビーム設定工程(S120)と、参照領域ビーム電流(Is)測定工程(S122)と、目標電圧演算工程(S124)と、目標電圧設定工程(S126)と、判定工程(S128)という一連の工程を実施する。
【0029】
開口部面積測定工程(S102)として、アパーチャ部材203の各穴22を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮像し、撮像した像からマルチビームの各ビームを形成する開口部の開口面積Skを算出する。或いは、アパーチャ部材203の各穴22にレーザを照射し、穴22毎のレーザの透過光量を用いて各ビームを形成する開口部の開口面積Skを算出する。以下、kは、個別ビームの識別番号或いは座標(ベクトル)を示す。
【0030】
カソード温度及びウェネルト電圧設定工程(S104)として、描画制御部50は、電子銃201が良好に動作するカソード温度(フィラメント電力)をフィラメント電力供給回路136に設定する。また、描画制御部50は、電子銃201が良好に動作するウェネルト電圧をバイアス電圧電源回路134に設定する。
【0031】
個別ビーム電流(Ik)測定工程(S106)として、Ik測定部52は、マルチビームの各ビームの電流値ikを測定する。具体的には、以下のように動作する。測定対象のビームだけビームONとなり、他のビームはビームOFFになるようにブランキングプレート204内のブランカーにて偏向する。これにより、対象ビーム20だけをステージ上まで導くことができる。その際、ファラディーカップ106にかかる対象ビーム20が照射されるようにXYステージ105を移動させておく。これにより、対象ビーム20の電流値を検出できる。残りのビームは、制限アパーチャ部材206にて遮蔽される。よって、描画室103までビームが到達する前に遮蔽される。よって、ステージ105或いは試料101までビームが到達することはない。ファラディーカップ106で測定された情報は、アンプ132でデジタル信号に変換され、Ik測定部52に出力される。これにより、Ik測定部52は、対象ビームの電流ikを測定できる。かかる動作をすべてのビームについて実施する。これにより、ビーム毎のビーム電流ikを測定できる。
【0032】
電流密度(J)分布作成工程(S108)として、J分布作成部54は、測定された各ビーム電流ikをアパーチャ部材203の対応する穴22の開口面積Skで割ることで、各ビームの電流密度(J)を演算する。そして、J分布作成部54は、ビーム位置(ビーム形成した穴22の位置)毎に、演算された電流密度(J)を定義して、電流密度(J)分布を作成する。
【0033】
図7は、実施の形態1におけるマルチビームの電流密度分布の一例を示す図である。
図7に示すように、マルチビームの電流密度分布は、ピーク位置を基準にして放射状に分布する。そのため、マルチビームの電流密度分布では、電流密度の最大値を100%として、電流密度による等高線を描くことができる。
【0034】
以上のようにして、電子銃201から放出された電子ビームの一部がそれぞれアパーチャ部材203の複数の穴22を通過することによって形成されたマルチビームの電流密度分布を取得する。
【0035】
原点穴及び参照領域設定工程(S110)として、設定部56は、電流密度分布を参照して、原点穴及び参照領域を設定する。
【0036】
図8は、実施の形態1における参照領域の一例を示す図である。設定部56は、電流密度分布を参照して、マルチビームのうち、まず、最大電流密度となるビーム形成穴22(原点穴)を設定する。
図8の例では、電流密度Jが99%の領域内にある99%の等高線に重ならない1つの穴を原点穴に設定する。そして、設定部56は、電流密度分布を参照して、電流密度Jが閾値以上の領域を設定する。
図8の例では、例えば、閾値を99%に設定した場合には、原点穴だけが選択される。例えば、閾値を98%に設定した場合には、原点穴を含む98%の等高線内に位置する複数の穴23が選択される。その際、等高線に穴22の一部でも重なる場合には、その穴は含まれないようにする。以上のように選択された領域を参照領域25として設定する。閾値は適宜設定されればよい。
【0037】
参照領域ビーム設定工程(S112)として、設定部56は、電流密度分布を参照して、マルチビームのうち、電流密度Jが閾値以上の少なくとも1つのビームを選択する。具体的には、設定された参照領域25内の複数の穴23によって形成されるビーム群(参照ビーム)を選択し、設定する。
図8の例では、例えば、閾値を99%に設定した場合には、原点穴によって形成されるビームだけが参照ビームとして選択される。例えば、閾値を98%に設定した場合には、原点穴を含む98%の等高線内に位置する複数の穴22によって形成されるビーム群が参照ビームとして選択される。以上のようにして、設定部56は、少なくとも1つのビーム(参照ビーム)を選択する。かかる設定によって、描画制御部50は、参照領域内のビーム群(参照ビーム)だけビームONとなり、他のビームはビームOFFになるように制御回路120を介してブランキングプレート204内のブランカーを制御する。また、ファラディーカップ106にかかる参照領域内のビーム群(参照ビーム)が照射されるようにXYステージ105を移動させる。
【0038】
参照領域ビーム電流(Is)測定工程(S114)として、Is測定部58は、マルチビームのうち、参照ビームの電流値Isを測定する。具体的には、以下のように動作する。
【0039】
図9は、実施の形態1における参照領域ビーム電流を測定する手法を説明するための概念図である。参照ビーム20b,20c,20dだけビームONとなり、他のビーム20a,20eはビームOFFになるようにブランキングプレート204内のブランカーにて偏向する。これにより、参照ビーム20b,20c,20dだけをステージ上まで導くことができる。そして、ファラディーカップ106にかかる参照ビーム20b,20c,20dが照射され、参照ビーム20b,20c,20d全体の電流値を検出する。残りのビーム20a,20eは、制限アパーチャ部材206にて遮蔽される。よって、描画室103までビームが到達する前に遮蔽される。ファラディーカップ106で測定された情報は、アンプ132でデジタル信号に変換され、Is測定部58に出力される。これにより、Is測定部58は、参照ビーム20b,20c,20d全体の電流値Isを測定できる。参照ビームが例えば1本のビーム20cだけであれば、Is測定部58は、ビーム20cだけの電流値Isを測定することは言うまでもない。或いは、参照ビームが例えば1本のビーム20cだけであれば、上述した個別ビームの測定結果を流用してもよい。
【0040】
相関データ取得工程(S116)として、電子銃201のウェネルト電極42に印加するウェネルト電圧(バイアス電圧)を可変にして、参照ビームの電流値(参照電流)をそれぞれ測定する。
【0041】
図10は、実施の形態1における温度制限領域と空間電荷領域とを説明するための概念図である。
図10(a)には、温度制限領域が示されている。
図10(b)には、空間電荷領域が示されている。
図10(a)に示す温度制限領域内では、陰極(カソード)から出た電子は、陽極(アノード)方向に進む。この状態では、放出される電子数は陰極温度に大きく依存することになる。これに対して、カソード温度が高くなると、
図10(b)に示す空間電荷領域に移行する。空間電荷領域内では、カソード温度が高くなったために放出された電子数が増える。そのため、陰極前面に空間電荷と呼ばれる電子雲が形成される。そして、空間電荷によって陰極からの電子放出に負のフイードバック効果を及ぼすため、放出される電子数は陰極温度に依存しなくなる。ここで、実施の形態1では、陰極温度(カソード温度)に依存しない空間電荷領域で電子銃201を動作させる。
【0042】
図11は、実施の形態1におけるウェネルト電圧と参照電流との関係を説明するための図である。
図11に示すように、空間電荷領域の電子銃201の動作点の周辺では、参照電流がウェネルト電圧に実質的に比例する。描画装置100では、かかる空間電荷領域の電子銃201の動作点の周辺で可動させるので、相関データ取得工程(S116)では、電子銃201の動作点の前後を含む周辺電圧Cでの参照電流の変化を測定すればよい。
【0043】
図12は、実施の形態1におけるウェネルト電圧と参照電流との関係の一例を示す図である。
図12において、縦軸に参照電流Isを示す。横軸にウェネルト電圧Vwを示す。相関データ取得工程(S116)での測定の結果、
図12に示すように、実質的に一次比例の関係を得ることができる。以上のようにして、相関データ取得部60は、ウェネルト電極に印加する電圧と参照ビームの電流値との相関関係を取得する。そして、相関データを記憶装置142に格納しておく。ここでは、グラフで示しているが、相関データ取得部60は、プロットデータを近似して、相関関係式を求めても好適である。かかる場合、相関関係式、或いは相関関係式の係数を記憶装置142に格納しておく。
【0044】
以上までの各工程を実施することで、ウェネルト電圧と参照電流との関係を取得する。以降、かかる相関関係を用いて、描画対象の試料101に対して、実際の描画を行っている途中に電流調整を行っていく。よって、以上までの各工程を実施した後、描画対象の試料101に対して、実際の描画を開始する。
【0045】
描画工程として、まず、描画データ処理部68は、後述するストライプ領域毎に、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。そして、制御回路120は、ショットデータに沿って、描画部150の各構成の動作を制御する。
【0046】
図13は、実施の形態1における描画動作を説明するための概念図である。
図13(a)に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。かかる各ストライプ領域32は、描画単位領域となる。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば−x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で例えば連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を−y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、
図13(b)に示すように、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、−x方向にむかって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、−x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、
図13(c)に示すように、アパーチャ部材203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、各穴22と同数の複数のショットパターン36が一度に形成される。例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Aを通過したビームは、
図13(c)で示す「A」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。同様に、例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Bを通過したビームは、
図13(c)で示す「B」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。以下、C〜Hについても同様である。そして、各ストライプ32を描画する際、x方向に向かってXYステージ105が移動する中、偏向器の機能を兼ねた静電レンズ212,214,216の少なくとも1つによってすべてのビーム(マルチビーム)を一括して偏向しながら、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画する。
【0047】
ここで、描画装置100は、試料101をXYステージ105上に載置して、XYステージ105を連続移動させながら、或いはステップアンドリピート動作させながら試料101上にパターンを描画する。
【0048】
図14は、実施の形態1の比較例におけるカソードの蒸発に伴う電流密度分布の変化を説明するための図である。ここでは、実施の形態1の比較例として、カソード劣化に対して実施の形態1の手法を実施しない場合を示す。
図14(a)において、カソード劣化前の状態では、カソード(陰極)から放出された電子ビームは、クロスオーバーを形成した後、広がっていき、照明レンズ(コリメータレンズ)によってほぼ垂直なビームに屈折させられ、マスク(試料)面側へと進む。時間の経過によって、カソードが蒸発(劣化)してくると、カソードの放出面の面積が狭くなる。しかし、ウェネルト電圧は変化していないので、電流密度が高くなる。そのため、クロスオーバー後のビームの広がりも小さいものとなる。
図14(b)では、カソード劣化前後の各状態での電流密度分布を示している。カソード劣化前の状態に比べ、カソードが蒸発(劣化)してくると、上述したようにビームの広がりが小さくなり、電流密度分布のピーク値が高くなる。このように、カソード劣化前後では、電流密度分布の形状が大きく変化する。
【0049】
図15は、実施の形態1の比較例におけるカソードの蒸発前後の電流密度分布のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、実施の形態1の比較例として、カソード劣化に対して実施の形態1の手法を実施しない場合を示す。
図15において、縦軸に電流密度Jを示し、横軸に位置rを示している。
図15に示すように、カソード劣化前の電流密度分布Aに比べて、カソード劣化後の電流密度分布Bでは、分布の広がりが小さくなり、電流密度分布のピーク値が高くなっていることがわかる。
【0050】
そこで、実施の形態1では、以下のように、参照ビームのウェネルト電圧を定期的に調整することで、電流密度分布のピーク値が劣化後も高くならないように調整する。実施の形態1では、例えば、描画開始後、ストライプ領域32の描画終了毎に、参照ビームのウェネルト電圧を調整する。
【0051】
ストライプ領域毎のファラディーカップ移動工程(S118)として、描画制御部50は、制御回路120を介して、XYステージ105に配置された試料101にパターンを描画している途中であって、試料101の描画領域を短冊状に仮想分割したストライプ領域32の描画が終了する毎に、参照ビーム(参照領域内の少なくとも1つのビーム)がXYステージ105に配置されたファラディーカップ106(電流検出器)に入射可能な位置にXYステージ105を移動させる。
【0052】
参照領域ビーム設定工程(S120)として、設定部56は、電流密度分布を参照して、マルチビームのうち、電流密度Jが閾値以上の少なくとも1つのビーム(参照ビーム)を選択する。かかる設定によって、描画制御部50は、参照領域内のビーム群(参照ビーム)だけビームONとなり、他のビームはビームOFFになるように制御回路120を介してブランキングプレート204内のブランカーを制御する。
【0053】
参照領域ビーム電流(Is)測定工程(S122)として、Is測定部58は、ステージを移動させた後、マルチビームのうち、電流密度が閾値よりも小さいビームを遮蔽した状態で、電流密度Jが閾値以上の少なくとも1つのビーム(参照ビーム)をファラディーカップ106に入射させ、ストライプ領域32の描画が終了する毎に、参照ビームの電流値Isを測定する。測定手法は、上述した手法と同様で構わない。
【0054】
目標電圧演算工程(S124)として、目標電圧演算部62は、ストライプ領域32の描画が終了する毎に、相関関係を用いて、測定された参照電流の値Isが目標電流値Is
0になるためのウェネルト電極に印加する目標電圧値を演算する。例えば、
図12に示すように、測定された参照電流の値Is’に対応するウェネルト電極Vw’から目標電流値Is
0に対応するウェネルト電極Vw
0までの差分を演算する。かかる差分は、測定された参照電流の値Isが目標電流値Is
0になるためにウェネルト電極を小さくすべきときは、負の値として定義されればよい。また、測定された参照電流の値Isが目標電流値Is
0になるためにウェネルト電極を大きくすべきときは、正の値として定義されればよい。そして、現在、設定されているウェネルト電極Vwに対して得られた差分を加算した値を目標電圧として演算する。
【0055】
目標電圧設定工程(S126)として、設定部64は、目標電圧値をバイアス電圧電源回路134に設定する。そして、バイアス電圧電源回路134は、目標電圧値をウェネルト電極42に印加する。
【0056】
以上により、目標電流値のビームが参照ビームとして照射される。よって、参照領域内の電流密度が維持される。
【0057】
判定工程(S128)として、判定部66は、描画処理が終了したかどうを判定する。まだ描画が終了していない場合には、ストライプ領域毎のファラディーカップ移動工程(S118)に戻り、描画処理が終了するまで、ストライプ領域毎にファラディーカップ移動工程(S118)から判定工程(S128)までの各工程を繰り返す。
【0058】
図16は、実施の形態1におけるカソードの蒸発に伴う電流密度分布の変化を説明するための図である。
図16(a)において、カソード劣化前の状態では、カソード(陰極)から放出された電子ビームは、
図14(a)で示した状態と同様、クロスオーバーを形成した後、広がっていき、照明レンズ202(コリメータレンズ)によってほぼ垂直なビームに屈折させられ、マスク(試料)面側へと進む。時間の経過によって、カソードが蒸発(劣化)してくると、カソードの放出面の面積が狭くなる。しかし、実施の形態1では、ウェネルト電圧を調整しているので、ビームの強度を弱め、カソード劣化前とほぼ同様の強度にできる。その結果、カソード劣化前より上方の位置にクロスオーバーを形成させることができる。このため、クロスオーバー後のビームの広がりは、比較例に比べて広くでき、カソード劣化前とほぼ同様の広さにできる。言い換えれば、電流密度が高くなるのを抑制できる。そのため、クロスオーバー後のビームの広がりもカソード劣化前とほぼ同様にできる。そして、カソード劣化前とほぼ同様に広がった電子ビームは、照明レンズ202(コリメータレンズ)によってほぼ垂直なビームに屈折させられ、マスク(試料)面側へと進む。
図16(b)では、カソード劣化前後の各状態での電流密度分布を示している。カソード劣化前の状態に比べ、カソードが蒸発(劣化)しても、実施の形態1では、ビームの広がりも劣化前と同様に維持ができ、電流密度分布のピーク値が高くなるのを抑制できる。このように、実施の形態1では、カソード劣化前後において、実質的に同様の電流密度分布の形状を維持できる。
【0059】
図17は、実施の形態1におけるカソードの蒸発前後の電流密度分布のシミュレーション結果を示す図である。
図17において、縦軸に電流密度Jを示し、横軸に位置rを示している。
図17に示すように、カソード劣化前の電流密度分布Aに比べて、カソード劣化後の電流密度分布Bでは、分布の広がりの違いも比較例に比べて小さくなり、電流密度分布のピーク値が変化していないことがわかる。
【0060】
ここで、上述した例では、試料101にパターンを描画している途中であって、ストライプ領域32毎に電流調整を行っているが、これに限るものではない。試料101にパターンを描画している途中であって、所定の時間が経過する毎に、参照ビームの電流値が測定されるようにしてもよい。1つの試料(例えばマスク)を描画するためには、例えば、24時間以上必要となる場合が増えてきている。カソード40の温度を例えば1800K、ウェネルト電圧を−500V(加速電圧に加算前の値)で電子銃201を使用した場合、24時間で電流密度Jが1%変化する結果を得た。電流密度Jの誤差許容値を例えば0.1%とすると、24時間あたりに10回程度電流調整を行えばよい。よって、2.4時間毎、或いは、2.4未満の所定の間隔毎に電流調整を行っても好適である。電流調整を行う間隔は、電流密度Jの誤差と誤差許容値とに応じて適宜設定すればよい。なお、ストライプ領域数は、10個よりは大幅に多いので、電流密度Jの誤差が、上述した誤差許容値を上回ることを回避できる。
【0061】
図18は、実施の形態1におけるマルチビームとシングルビームとでの電流調整の違いを説明するための図である。例えば、可変成形方式のシングルビーム描画では、第1の成形アパーチャを通過したビームが描画に使用される。よって、かかる第1の成形アパーチャを通過したビーム1本について、電流量(電流量の積分値)が維持されれば足りる。そのため、
図18(a)に示すように、電子銃201から放出された電子ビームの電流密度分布のピークが、かかる第1の成形アパーチャを通過したビーム1本に含まれていない場合でも、かかるビーム1本について、電流量が維持されれば足りる。このように、シングルビームでは、カソード劣化前の電流密度分布Aからカソード劣化後の電流密度分布Bに変化してピーク値が変化した場合でもその影響は小さい。言い換えれば、シングルビームでは、電流密度分布のピークが使用するビームに含まれているかどうかを気にする必要がない。よって、単に、計測されるビームの電流量の維持を図れば足りることになる。これに対して、マルチビームでは、数多くのビームを形成するので、使用するビームの幅が広い。そのため、
図18(b)に示すように、電子ビームの電流密度分布のピークがアパーチャ部材203のいずれかの穴22を通過するビームに含まれる。そのため、マルチビームでは、カソード劣化前の電流密度分布Aからカソード劣化後の電流密度分布Bに変化してピーク値が変化した場合、その影響は大きい。よって、電流密度分布のピーク値を無視したシングルビームのような調整の仕方ではマルチビームの電流調整は困難となる。よって、実施の形態1では、電流密度分布のピーク値を含む参照ビームの電流量を維持するように調整することで、マルチビーム特有の問題を解決できる。
【0062】
実施の形態2.
実施の形態1では、マルチビームのうち、一部の1本以上のビームを参照ビームとする場合を説明した。しかし、これに限るものではない。実施の形態2では、マルチビームのすべてのビームを参照ビームとする場合を説明する。描画装置100の構成は、以下説明する点を除き
図1と同様である。また、実施の形態2におけるマルチビームの電流調整方法の要部工程は、
図6と同様である。以下、特に説明の無い内容は、実施の形態1と同様である。
【0063】
図19は、実施の形態2における参照領域ビーム電流を測定する手法の他の一例を説明するための概念図である。ここでは、電流密度の閾値を緩くして、マルチビームのすべてのビームを参照ビームとする場合を説明する。かかる場合には、マルチビームのすべてのビームの全電流値を測定する必要がある。よって、全ビームの検出が可能なサイズの入射面を持ったファラディーカップが必要となる。言い換えれば、全ビームの検出が可能なサイズの入射面を持ったファラディーカップ106を備えれば、マルチビームのすべてのビームを参照ビームにできる。かかる場合、参照ビーム20a,20b,20c,20d,20eがビームONとなるようにブランキングプレート204内のブランカーにて偏向する。そして、ファラディーカップ106にかかる参照ビーム20a,20b,20c,20d,20eが照射され、参照ビーム20a,20b,20c,20d,20e全体の電流値を検出する。ファラディーカップ106で測定された情報は、アンプ132でデジタル信号に変換され、Is測定部58に出力される。これにより、Is測定部58は、参照ビーム20a,20b,20c,20d,20e全体の電流値Isを測定できる。
【0064】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、XYステージ105に1つのファラディーカップ106を配置した構成について説明した。しかし、これに限るものではない。実施の形態3では、複数のファラディーカップ106をXYステージ105上に配置する場合を説明する。描画装置100の構成は、以下説明する点を除き
図1と同様である。また、実施の形態3におけるマルチビームの電流調整方法の要部工程は、
図6と同様である。以下、特に説明の無い内容は、実施の形態1と同様である。
【0065】
図20は、実施の形態3における個別ビーム電流を測定する手法の他の一例を説明するための概念図である。実施の形態3では、複数のファラディーカップ106a,b,cをXYステージ105上に配置する。これにより、個別ビーム電流(Ik)測定工程(S106)において、Ik測定部52は、同時に複数の個別ビームの電流値ikを測定できる。具体的には、以下のように動作する。測定対象の複数のビームだけビームONとなり、他のビームはビームOFFになるようにブランキングプレート204内のブランカーにて偏向する。これにより、測定対象の複数のビームだけをステージ上まで導くことができる。その際、複数のファラディーカップ106a,b,cにそれぞれ1本ずつのビーム20が照射されるようにXYステージ105を移動させておく。これにより、同時に複数の個別ビームの電流値ikを検出できる。残りのビームは、制限アパーチャ部材206にて遮蔽される。よって、描画室103までビームが到達する前に遮蔽される。個別ビーム電流を測定するには、ビーム本数が多いために時間がかかる。これに対して、実施の形態3によれば、同時に複数の個別ビームの電流値ikを検出できるので測定時間を大幅に短縮できる。
図20の例は、3本のビームを同時に検出しているが、これに限るものではない。2本でも、4本以上であってもよい。同時検出本数に合わせて、或いは、同時検出本数より多くのファラディーカップ106をXYステージ105上に配置すればよい。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述したラスタースキャン動作は一例であって、マルチビームを用いたラスタースキャン動作その他の動作方法であってもよい。
【0067】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0068】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置は、本発明の範囲に包含される。