特許第6061753号(P6061753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6061753-防風通聖散配合製剤 図000009
  • 特許6061753-防風通聖散配合製剤 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061753
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】防風通聖散配合製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K36/18
   A61K47/22
   A61P3/04
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-71965(P2013-71965)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196254(P2014-196254A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】竹野 隆太
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−071965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 47/22
A61P 3/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防風通聖散と酪酸リボフラビンを含むことを特徴とする、防風通聖散配合製剤。
【請求項2】
防風通聖散に酪酸リボフラビンを組み合わせることを特徴とする、防風通聖散の甘味増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風通聖散を含有する製剤に関する。防風通聖散は、特有の苦味や漢方臭さなど独特な風味を有するため服用しづらい漢方製剤である。本発明は、かかる防風通聖散について、その甘味を増強することで、服用感を改善した防風通聖散配合製剤に関する。また本発明は、防風通聖散について、その甘味を増強し服用感を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生薬配合製剤は、一般に、配合されている各生薬の独特な苦味や漢方臭さを有し、飲みにくい医薬品とされている。
【0003】
生薬配合製剤について苦味を低減し服用感を改善する方法としては、たとえば特許文献1および2に記載されているように、多くの場合、甘味剤の配合による苦味のマスキングにとどまっている。
【0004】
しかし、甘味剤の配合は、カロリーの増加を招くため、特に肥満症の予防および改善を目的に使用される防風通聖散に対しての使用は好ましいものではない。
【0005】
そこで、甘味剤配合以外の方法で、防風通聖散の苦味や漢方臭さをマスキングし、服用感を改善する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2508555号公報
【特許文献2】特開平9−110708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述するように、防風通聖散は、特有の苦味や漢方臭さなど独特な風味を有するため服用しづらい漢方製剤である。本発明は、かかる防風通聖散について、その甘味を増強することで服用感を改善した防風通聖散配合製剤を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、防風通聖散について、その甘味を増強し服用感を改善する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねていたところ、防風通聖散にビタミンBの一種である酪酸リボフラビン(リボフラビン酪酸エステル)を添加することで、酪酸リボフラビンには甘味がないにも拘わらず、その添加量に依存して防風通聖散の甘味が増強し、それに伴い、防風通聖散を服用したときに感じる苦味、辛味(刺激)及び/又は漢方臭さが低減して飲みやすくなること、また防風通聖散服用後に後味として残留する苦味及び口腔内のしびれ(ヒリヒリ感)も和らぎ、服用感が総合的に改善することを見出した。
【0010】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を含むものである。
【0011】
(I)防風通聖散配合製剤
(I-1)防風通聖散と酪酸リボフラビンを含むことを特徴とする、防風通聖散配合製剤。
(I-2)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して、少なくとも0.05重量部であることを特徴とする、(I-1)に記載する防風通聖散配合製剤。
(I-3)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して、0.1〜20重量部であることを特徴とする、(I-1)に記載する防風通聖散配合製剤。
(I-4)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して、0.2〜10重量部であることを特徴とする、(I-1)に記載する防風通聖散配合製剤。
【0012】
(II)防風通聖散の甘味増強方法
(II-1)防風通聖散に酪酸リボフラビンを組み合わせることを特徴とする、防風通聖散の甘味増強方法。
(II-2)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して少なくとも0.05重量部であることを特徴とする、(II-1)に記載する防風通聖散の甘味増強方法。
(II-3)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して少なくとも0.1重量部であることを特徴とする、(II-1)に記載する防風通聖散の甘味増強方法。
(II-4)防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合(乾燥重量比)が、防風通聖散の乾燥エキス含量100重量部に対する割合に換算して少なくとも0.2重量部であることを特徴とする、(II-1)に記載する防風通聖散の甘味増強方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防風通聖散にビタミンBの一種である酪酸リボフラビンを配合することで、防風通聖散の甘味を量依存的に増強させることができる。またこうした酪酸リボフラビンによる防風通聖散の甘味増強作用によれば、甘味の増強により、防風通聖散特有の苦味や漢方臭さが低減され風味や服用感が改善された防風通聖散配合製剤を提供することができる。
【0014】
一般に、生薬は長期間継続して服用することが要求される医薬品であるが、本発明の防風通聖散配合製剤は、風味がよく飲みやすいため、かかる継続的服用を無理なく実施でき、服薬コンプライアンスを高めるという点でも有用な製剤である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】試験例1で使用したアンケート用紙を示す。
図2】試験例2で使用したアンケート用紙を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(I)防風通聖散配合製剤
本発明は、防風通聖散と酪酸リボフラビンを含む製剤である。
【0017】
防風通聖散は、例えば「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)によれば、その成分及び分量は、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2〜3、カッセキ3〜5とされており、原則として、これを、その20倍重量(従って560〜620重量部)の湯で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたもの(抽出液)が用いられる。
【0018】
なお、書簡によっては、上記成分中、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)や、上記分量中、1.2 をすべて1.5 としているもの(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)など、成分や成分比が多少異なるものもある。また、防風通聖散エキスの作り方として、ボウショウ以外の上記各成分に水400重量部を加え、200重量部まで煎じて、かすを除き、次いでボウショウを加えるとしているもの(例えば「和漢薬ハンドブック」、久保道徳、森山健三共著、保育社発行)のように、作り方が上記と多少異なるものもある。本発明の防風通聖散には、これらの差異は特に制限されず、いずれもが包含される。
【0019】
本発明でいう防風通聖散には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、前述する現在汎用されている漢方関係の書簡に記載されている漢方処方(生薬配合物)やこれらの漢方処方から得られるエキスが包含される。通常、エキスを常法により製剤化した、いわゆるエキス製剤としての防風通聖散がむしろ便宜に使用される。かかるエキス製剤の製法としては、例えば、上記各成分の混合物に対し、約10〜20倍量の水を加え、80〜100℃程度で1〜3時間程度撹拌抽出し、温時遠心分離もしくは、ろ過して抽出液を得、これを減圧下で濃縮し、スプレードライ法により乾燥エキスとするか、或いはエキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法が挙げられる。
【0020】
上記防風通聖散に配合して用いられる酪酸リボフラビン(リボフラビン酪酸エステル)は、ビタミンBとして、コレステロールの生合成抑制および排泄促進作用などにより血液中のコレステロール値を下げることが知られている化合物である。従来から、高コレステロール血症の治療、ビタミンB欠乏症の予防及び治療、ビタミンB欠乏症の予防または代謝障害が関与すると思われる口角炎や口唇炎などの治療に用いられており、製剤としてまた原末として商業的に入手可能なものである。
【0021】
本発明の防風通聖散配合製剤における防風通聖散と酪酸リボフラビンとの配合比は、防風通聖散の甘味が増強し、防風通聖散の不快な風味が低減され、服用感が改善する割合であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。なお、防風通聖散に酪酸リボフラビンを配合することで防風通聖散の甘味が強くなるか否かは、VAS (Visual Analogue Scale)法により評価し決定することができる。VAS法とは、特定の感覚や感情の強度を評価する際に用いられる手法であり、味などの評価にも応用できる。味の強度などを、決められた直線上に印をつけることで定量化する。具体的には、防風通聖散に酪酸リボフラビンを配合していない「試料A」(非添加区)と、防風通聖散に酪酸リボフラビンを配合した「試料B」(添加区)のそれぞれを官能試験員(パネル)に呈示して服用してもらい、「試料A」を基準として「試料B」の甘味の強度を数値として評価することができる。評価方法としては、後述する試験例で示す方法を採用することができ、具体的には「試料A」(非添加区)の甘味を基準値「3」とし、これに比べて「試料B」(添加区)の甘味の強さを5段階(甘味が弱い場合は弱くなる順に2及び1、甘味が同じ場合は3、甘味が強い場合は強くなる順に4及び5)で評価した場合の各パネルの得点の平均点を算出し、平均点が3を超えている場合に、酪酸リボフラビンの配合により防風通聖散の甘味が強くなったと判断することができる。また、このときの数値について統計学的処理を行い、「試料B」のほうが「試料A」の甘味と比較して有意に大きい場合に、酪酸リボフラビンの配合により防風通聖散の甘味が強くなったと判断することができる。このとき用いる官能試験員(パネル)は「試料A」、「試料B」の特性を感知し、評価できる者が望ましい。
【0022】
通常、防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの割合としては、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対する割合に換算して、少なくとも0.05重量部を挙げることが出来る。好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上、特に好ましくは1重量部以上である。甘味増強という効果を奏する限り、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは、防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの割合として、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対する割合に換算して20重量部を挙げることができる。しかし、酪酸リボフラビンは、その量依存的に防風通聖散の甘味を増強し、防風通聖散の不快な風味を低減し服用感を改善するものの、反面、酪酸リボフラビンの配合量が多すぎると銀杏様の不快な風味が発現する傾向がある。このため、防風通聖散配合製剤そのものの風味や服用感を改善するという目的からは、防風通聖散100重量部に対する酪酸リボフラビンの割合は、上記20重量部を上限として、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは2重量部以下を例示することができる。より詳細に規定するとすれば、防風通聖散(防風通聖散の乾燥エキスに換算)100重量部に対する酪酸リボフラビンの配合量は0.05〜20重量部の範囲で適宜設定することができ、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.4〜2重量部、特に好ましくは1〜2重量部である。
【0023】
また、製剤中の防風通聖散の配合割合は、特に限定されないが、5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは30〜80重量%である。製剤中の酪酸リボフラビンの配合割合についても特に限定されず、防風通聖散に対して前記比率で配合すればよいが、好ましくは0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
【0024】
上記の割合及び範囲で酪酸リボフラビンを用いることで、酪酸リボフラビンの配合量に依存して防風通聖散の甘味が増強し、防風通聖散を服用した時に感じる苦味、辛味(刺激)及び/又は漢方臭さが低減する。また、防風通聖散を服用した後に口腔内に残留する苦味及び/又は口腔内のしびれ(ヒリヒリ感)が低減し、総じて防風通聖散配合製剤の服用感を改善することができる。
【0025】
本発明において、防風通聖散配合製剤の1日当たりの投与量は、防風通聖散の乾燥エキスの量に換算すると、通常1〜10g、好ましくは1.5〜8gである。本発明の製剤は、通常一日1回もしくは2〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻は、特に限定されないが、食前または食間が好ましい。
【0026】
製剤の形態としては、経口投与形態であれば粉末、顆粒、錠剤、カプセル等のいずれでもよく、また、製剤化に際しては、常法により、適宜、賦形剤、展着剤(結合剤)および滑沢剤などの添加剤を各々任意に使用することができる。
【0027】
(II)防風通聖散の甘味増強方法
本発明の防風通聖散の甘味増強方法は、防風通聖散に酪酸リボフラビンを併用することで実施することができる。
【0028】
使用する防風通聖散及び酪酸リボフラビンの形態や調製方法等は(I)に記載した通りであり、当該記載はここに援用することができる。
【0029】
防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合は、防風通聖散の甘味が増強する割合であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。なお、防風通聖散に酪酸リボフラビンを配合することで防風通聖散の甘味が強くなるか否かは、(I)に記載するように、VAS 法で評価し決定することができる。当該記載もここに援用することができる。
【0030】
防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの配合割合は、制限はされないものの、通常、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対する割合に換算して、少なくとも0.05重量部を挙げることができる。好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上、特に好ましくは1重量部以上である。甘味増強という効果を奏する限り、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは、防風通聖散に対する酪酸リボフラビンの上限割合として、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対して20重量部を挙げることができる。好ましくは10重量部である。より詳細に規定するとすれば、防風通聖散(防風通聖散の乾燥エキスに換算)100重量部に対する酪酸リボフラビンの配合量は0.05〜20重量部の範囲で適宜設定することができ、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.4〜2重量部、特に好ましくは1〜2重量部である。
【0031】
上記の割合及び範囲で防風通聖散に酪酸リボフラビンを併用することで、酪酸リボフラビンの配合量に依存して防風通聖散の甘味が増強するという効果を得ることができ、またそれに伴って、防風通聖散を服用した時に感じる苦味、辛味(刺激)及び/又は漢方臭さが低減する。また、防風通聖散を服用した後に口腔内に残留する苦味及び/又は口腔内のしびれ(ヒリヒリ感)が低減し、総じて防風通聖散配合製剤の服用感を改善することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明およびその効果を、試験例および実施例を用いてより明確に説明する。ただし、本発明はかかる試験例および実施例になんら制限されるものではない。なお、下記の実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
【0033】
なお、下記の試験例および実施例で用いた「防風通聖散」は、漢方薬「防風通聖散」の1例として、防風通聖散料乾燥エキス(当帰1.2部、芍薬1.2部、センキュウ1.2部、山梔子1.2部、連翹1.2部、薄荷葉1.2部、生姜0.3部、荊芥1.2部、防風1.2部、麻黄1.2部、大黄1.5部、芒硝(硫酸ナトリウム十水塩)1.5部、白朮2.0部、桔梗2.0部、オウゴン2.0部、甘草2.0部、石膏2.0部、滑石3.0部より、水20部を用いて約100℃、1時間で抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下濃縮してスプレードライを用いて乾燥したエキス)である。スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
また、酪酸リボフラビンとして、リボフラビン酪酸エステル(第一ファインケミカル株式会社製)を用いた。
【0035】
試験例1
防風通聖散の味に対する酪酸リボフラビンの影響について評価を行った。なお、風味の評価は、防風通聖散の苦味、刺激、漢方臭さ等の不快な風味、および酪酸リボフラビンの銀杏様の不快な風味が感知できることを予め確認した、風味に敏感なパネル8名によって行った。これらのパネルに、表1に示す試験製剤(散剤)(比較例1〜2、実施例1〜5)を服用してもらい、図1に示すアンケート用紙を用いて、味に関する項目(飲んだ時の苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、および飲んだ後の苦味/甘味/口腔内のしびれ感(ひりひり感)/酪酸リボフラビンの臭み/全体の味の好み)について評価してもらった。
【0036】
なお、アンケート用紙(図1)中、「サンプルB」は、酪酸リボフラビンを配合していない防風通聖散製剤(非添加区)(比較例1)を、「サンプルR」は酪酸リボフラビン(比較例2)を意味する。
【0037】
<試験製剤> 表1参照
比較例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g
比較例2:酪酸リボフラビン50g
実施例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.1g
実施例2:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.2g
実施例3:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.5g
実施例4:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン1g
実施例5:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン5g
【0038】
【表1】
【0039】
これらの製剤を服用したときの風味(苦味、辛味(刺激)、甘味、漢方臭さ)及び飲みやすさを表2に、また服用した後に感じる風味(苦味、しびれ(ヒリヒリ感)、甘味、酪酸リボフラビンの臭み)、及び全体の風味や服用感に関する総合評価を表3にそれぞれ示す。結果は、計8名のパネルの評価点の平均値を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
結果からわかるように、防風通聖散に酪酸リボフラビンを併用すると、防風通聖散の甘味が酪酸リボフラビンの配合割合に依存して増強した。また甘味の増強とともに、防風通聖散配合製剤を服用したときの苦み、辛味(刺激)及び漢方臭さも弱まり、その結果、飲みやすくなった(服用感の改善)。さらに、甘味の増強とともに、防風通聖散配合製剤を服用した後に感じる苦みや口腔内のしびれ(ヒリヒリ感)も低減し、総合的に防風通聖散配合製剤の風味及び服用感が改善された。しかし、酪酸リボフラビンの配合割合が多くなると、酪酸リボフラビンに特有の銀杏様の臭みが生じ、それが強まる傾向がみられた。このため、実施例5の防風通聖散配合製剤は、実施例4と比べて、全体の風味や服用感に関する総合評価に若干の低下がみられた。
【0043】
以上のことから、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対して、酪酸リボフラビンを0.2〜10重量部、好ましくは0.4〜2重量部、より好ましくは1〜2重量部の割合で配合することにより、甘味が増強し、それに伴い防風通聖散の苦味及び辛味が減弱して風味が改善され、飲みやすくなる結果が得られた。
【0044】
試験例2
比較のため、防風通聖散の味に対するリン酸リボフラビンナトリウムの影響について評価を行った。なお、リン酸リボフラビンナトリウムは酪酸リボフラビンと同じくビタミンBに属するビタミン製剤である。
【0045】
なお、風味の評価は、試験例1と同じく防風通聖散の苦味、刺激、漢方臭さ等の不快な風味、および酪酸リボフラビンの銀杏様の不快な風味が感知できることを予め確認した、風味に敏感なパネル5名にて行った。具体的には、各パネルに、表4に示す試験製剤(散剤)(比較例1〜8)を服用してもらい、図2に示すアンケート用紙を用いて、味に関する項目(飲んだときの苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、飲んだ後の苦味/甘味/しびれ感/酪酸リボフラビンの臭み、全体の味の好み)を評価してもらった。なお、アンケート用紙(図2) 中、「サンプルB」は防風通聖散製剤(比較例1)を、「サンプルQ」は酪酸リボフラビン(比較例2)を、「サンプルR」はリン酸リボフラビンナトリウム(比較例3) を意味する。
【0046】
<試験製剤> 表 参照
比較例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g
比較例2:酪酸リボフラビン50g
比較例3:リン酸リボフラビンNa50g
比較例4:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.1g
比較例5:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.2g
比較例6:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.5g
比較例7:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa1.0g
比較例8:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa5.0g
【0047】
【表4】
【0048】
これらの製剤を服用したときの風味(苦味、辛味(刺激)、甘味、漢方臭さ)及び飲みやすさを表5に、また服用した後に感じる風味(苦味、しびれ(ヒリヒリ感)、甘味、酪酸リボフラビンの臭み)、及び全体の風味や服用感に関する総合評価を表6にそれぞれ示す。結果は、計5名のパネルの評価点の平均値を示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
これらの結果からわかるように、防風通聖散にリン酸リボフラビンナトリウムを併用した場合、配合量に依存して甘味が弱まり、またそれに伴って飲んだ時に感じる苦味や辛味も増強した。また、漢方臭さも増強し、飲みやすさも低減する結果となった。さらに、リン酸リボフラビンナトリウムを併用すると、防風通聖散の甘みが弱まると共に、飲んだ後に後味として感じる苦味やしびれが強まり、全体の風味や服用感も総合的に低減する結果となった。
【0052】
以上の結果から、同じリボフラビン類(ビタミンB類)であっても、リン酸リボフラビンナトリウムと酪酸リボフラビンとでは、防風通聖散に対する風味改善効果が相違することがわかった。
【0053】
処方例1〜9
表7に記載する処方例1〜9に従って、各組成からなる散剤及び錠剤をそれぞれ常法に従って調製した(処方例1〜9に応じて、それぞれ散剤1〜9及び錠剤1〜9を調製)。
【0054】
そのうち、処方例1、3、4、及び6の処方からなる各散剤について試験例1と同様にして、風味(飲んだときの苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、及び飲んだ後の苦味/甘味/しびれ感/酪酸リボフラビンの臭み、並びに、全体の味の好み)について試験を行った結果、いずれの製剤も酪酸リボフラビンの配合により、それを含まない防風通聖散(比較例1)と比べて甘味が増強しており、それに伴い苦味、辛味および漢方臭さが低減して、全体として飲みやすくなっていた。
【0055】
【表7】
図1
図2