【実施例】
【0032】
以下、本発明およびその効果を、試験例および実施例を用いてより明確に説明する。ただし、本発明はかかる試験例および実施例になんら制限されるものではない。なお、下記の実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
【0033】
なお、下記の試験例および実施例で用いた「防風通聖散」は、漢方薬「防風通聖散」の1例として、防風通聖散料乾燥エキス(当帰1.2部、芍薬1.2部、センキュウ1.2部、山梔子1.2部、連翹1.2部、薄荷葉1.2部、生姜0.3部、荊芥1.2部、防風1.2部、麻黄1.2部、大黄1.5部、芒硝(硫酸ナトリウム十水塩)1.5部、白朮2.0部、桔梗2.0部、オウゴン2.0部、甘草2.0部、石膏2.0部、滑石3.0部より、水20部を用いて約100℃、1時間で抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下濃縮してスプレードライを用いて乾燥したエキス)である。スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
また、酪酸リボフラビンとして、リボフラビン酪酸エステル(第一ファインケミカル株式会社製)を用いた。
【0035】
試験例1
防風通聖散の味に対する酪酸リボフラビンの影響について評価を行った。なお、風味の評価は、防風通聖散の苦味、刺激、漢方臭さ等の不快な風味、および酪酸リボフラビンの銀杏様の不快な風味が感知できることを予め確認した、風味に敏感なパネル8名によって行った。これらのパネルに、表1に示す試験製剤(散剤)(比較例1〜2、実施例1〜5)を服用してもらい、
図1に示すアンケート用紙を用いて、味に関する項目(飲んだ時の苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、および飲んだ後の苦味/甘味/口腔内のしびれ感(ひりひり感)/酪酸リボフラビンの臭み/全体の味の好み)について評価してもらった。
【0036】
なお、アンケート用紙(
図1)中、「サンプルB」は、酪酸リボフラビンを配合していない防風通聖散製剤(非添加区)(比較例1)を、「サンプルR」は酪酸リボフラビン(比較例2)を意味する。
【0037】
<試験製剤> 表1参照
比較例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g
比較例2:酪酸リボフラビン50g
実施例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.1g
実施例2:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.2g
実施例3:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン0.5g
実施例4:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン1g
実施例5:防風通聖散(乾燥エキス)50g+酪酸リボフラビン5g
【0038】
【表1】
【0039】
これらの製剤を服用したときの風味(苦味、辛味(刺激)、甘味、漢方臭さ)及び飲みやすさを表2に、また服用した後に感じる風味(苦味、しびれ(ヒリヒリ感)、甘味、酪酸リボフラビンの臭み)、及び全体の風味や服用感に関する総合評価を表3にそれぞれ示す。結果は、計8名のパネルの評価点の平均値を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
結果からわかるように、防風通聖散に酪酸リボフラビンを併用すると、防風通聖散の甘味が酪酸リボフラビンの配合割合に依存して増強した。また甘味の増強とともに、防風通聖散配合製剤を服用したときの苦み、辛味(刺激)及び漢方臭さも弱まり、その結果、飲みやすくなった(服用感の改善)。さらに、甘味の増強とともに、防風通聖散配合製剤を服用した後に感じる苦みや口腔内のしびれ(ヒリヒリ感)も低減し、総合的に防風通聖散配合製剤の風味及び服用感が改善された。しかし、酪酸リボフラビンの配合割合が多くなると、酪酸リボフラビンに特有の銀杏様の臭みが生じ、それが強まる傾向がみられた。このため、実施例5の防風通聖散配合製剤は、実施例4と比べて、全体の風味や服用感に関する総合評価に若干の低下がみられた。
【0043】
以上のことから、防風通聖散の乾燥エキス100重量部に対して、酪酸リボフラビンを0.2〜10重量部、好ましくは0.4〜2重量部、より好ましくは1〜2重量部の割合で配合することにより、甘味が増強し、それに伴い防風通聖散の苦味及び辛味が減弱して風味が改善され、飲みやすくなる結果が得られた。
【0044】
試験例2
比較のため、防風通聖散の味に対するリン酸リボフラビンナトリウムの影響について評価を行った。なお、リン酸リボフラビンナトリウムは酪酸リボフラビンと同じくビタミンB
2に属するビタミン製剤である。
【0045】
なお、風味の評価は、試験例1と同じく防風通聖散の苦味、刺激、漢方臭さ等の不快な風味、および酪酸リボフラビンの銀杏様の不快な風味が感知できることを予め確認した、風味に敏感なパネル5名にて行った。具体的には、各パネルに、表4に示す試験製剤(散剤)(比較例1〜8)を服用してもらい、
図2に示すアンケート用紙を用いて、味に関する項目(飲んだときの苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、飲んだ後の苦味/甘味/しびれ感/酪酸リボフラビンの臭み、全体の味の好み)を評価してもらった。なお、アンケート用紙(
図2) 中、「サンプルB」は防風通聖散製剤(比較例1)を、「サンプルQ」は酪酸リボフラビン(比較例2)を、「サンプルR」はリン酸リボフラビンナトリウム(比較例3) を意味する。
【0046】
<試験製剤> 表 参照
比較例1:防風通聖散(乾燥エキス)50g
比較例2:酪酸リボフラビン50g
比較例3:リン酸リボフラビンNa50g
比較例4:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.1g
比較例5:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.2g
比較例6:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa0.5g
比較例7:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa1.0g
比較例8:防風通聖散(乾燥エキス)50g+リン酸リボフラビンNa5.0g
【0047】
【表4】
【0048】
これらの製剤を服用したときの風味(苦味、辛味(刺激)、甘味、漢方臭さ)及び飲みやすさを表5に、また服用した後に感じる風味(苦味、しびれ(ヒリヒリ感)、甘味、酪酸リボフラビンの臭み)、及び全体の風味や服用感に関する総合評価を表6にそれぞれ示す。結果は、計5名のパネルの評価点の平均値を示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
これらの結果からわかるように、防風通聖散にリン酸リボフラビンナトリウムを併用した場合、配合量に依存して甘味が弱まり、またそれに伴って飲んだ時に感じる苦味や辛味も増強した。また、漢方臭さも増強し、飲みやすさも低減する結果となった。さらに、リン酸リボフラビンナトリウムを併用すると、防風通聖散の甘みが弱まると共に、飲んだ後に後味として感じる苦味やしびれが強まり、全体の風味や服用感も総合的に低減する結果となった。
【0052】
以上の結果から、同じリボフラビン類(ビタミンB
2類)であっても、リン酸リボフラビンナトリウムと酪酸リボフラビンとでは、防風通聖散に対する風味改善効果が相違することがわかった。
【0053】
処方例1〜9
表7に記載する処方例1〜9に従って、各組成からなる散剤及び錠剤をそれぞれ常法に従って調製した(処方例1〜9に応じて、それぞれ散剤1〜9及び錠剤1〜9を調製)。
【0054】
そのうち、処方例1、3、4、及び6の処方からなる各散剤について試験例1と同様にして、風味(飲んだときの苦味/甘味/辛味/風味/漢方臭さ/飲みやすさ、及び飲んだ後の苦味/甘味/しびれ感/酪酸リボフラビンの臭み、並びに、全体の味の好み)について試験を行った結果、いずれの製剤も酪酸リボフラビンの配合により、それを含まない防風通聖散(比較例1)と比べて甘味が増強しており、それに伴い苦味、辛味および漢方臭さが低減して、全体として飲みやすくなっていた。
【0055】
【表7】