(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の配合割合(重量比)が、ノコギリヤシエキス100重量部に対するヒハツの乾燥エキスの割合に換算して、3〜15重量部であることを特徴とする、請求項1記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来から問題であったノコギリヤシエキスの色調の変化、つまり変色が抑制されてなる耐変色性のノコギリヤシエキス配合製剤を提供することを目的とする。また、本発明は、ノコギリヤシエキスについて、その変色を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねていたところ、ヒハツ、具体的にはヒハツエキス等のヒハツ加工物にノコギリヤシエキスの変色を抑制する作用があることを見出し、ノコギリヤシエキスに当該ヒハツ加工物に併用することで、従来の問題であったノコギリヤシエキスの変色が抑制でき、変色によるノコギリヤシエキス配合製剤の品質及び外観の低下が予防できることを確認した。さらに思いがけずに、ヒハツ加工物にも認められる経時的変色が、ノコギリヤシエキスを併用することで抑制できることを見出し、本発明の効果である変色抑制効果は、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物とが相俟って得られる総合的な効果であることを確認した。また、本発明者は、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物とを併用することによって得られる変色抑制効果は、さらにこれらに長命草加工物を併用することで、より一層増強することを確認した。
【0010】
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を含むものである。
【0011】
(I)ノコギリヤシエキス配合製剤
(I-1)ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物を含むことを特徴とする、ノコギリヤシエキス配合製剤。
(I-2)ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の配合割合(重量比)が、ノコギリヤシエキス100重量部に対するヒハツの乾燥エキスの割合に換算して、3〜15重量部、好ましくは5〜12重量部であることを特徴とする、(I-1)記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
(I-3)さらに長命草加工物を含有する、(I-1)または(I-2)に記載するノコギリヤシエキス配合製剤。
(I-4)長命草加工物を、長命草の乾燥粉末の割合に換算して1〜70重量%の割合で含有する、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
(I-5)ノコギリヤシエキスに対する長命草加工物の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対する長命草の乾燥粉末の割合に換算して、10〜80重量部であることを特徴とする、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載のノコギリヤシエキス配合製剤。
【0012】
(II)ノコギリヤシエキスの変色抑制方法
(II-1)ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合することを特徴とする、ノコギリヤシエキスの変色抑制方法。
(II-2)ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物の両方の変色を抑制する方法である、(II-1)記載する変色抑制方法。
(II-3)ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の配合割合(重量比)が、ノコギリヤシエキス100重量部に対するヒハツの乾燥エキスの割合に換算して、3〜15重量部、好ましくは5〜12重量部であることを特徴とする、(II-1)または(II-2)に記載する変色抑制方法。
(II-4)さらに長命草加工物を配合する、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する変色抑制方法。
(II-5)ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を含有する組成物に対する長命草加工物の配合割合が、長命草の乾燥粉末の割合に換算して5〜35重量%である、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する変色抑制方法。
(II-6)ノコギリヤシエキスに対する長命草加工物の配合割合が、ノコギリヤシエキス100重量部に対する長命草の乾燥粉末の割合に換算して、10〜80重量部であることを特徴とする、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する変色抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノコギリヤシエキスの変色、特に保存によって経時的に生じる変色を抑制することができる。また、本発明によれば、ノコギリヤシエキスとともに、ヒハツ加工物の変色、特に保存によって経時的に生じる変色を抑制することができる。本発明によれば、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物を併用することで、また更にこれらに長命草加工物を併用することで、品質及び外観の低下が有意に抑制されたノコギリヤシエキス配合製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)ノコギリヤシエキス配合製剤
本発明は、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物を含む製剤である。当該製剤は、さらに長命草加工物を配合していてもよい。
【0015】
以下、まずこれらノコギリヤシエキス、ヒハツ加工物、及び長命草加工物について説明し、ついで本発明のノコギリヤシエキス配合製剤について説明する。
【0016】
(1)ノコギリヤシエキス
ノコギリヤシ(Serenoa repens又はSerenoa serrulata)は別名ソウ・パルメット(Saw palmetto)とも呼ばれ、ヤシ科に属する植物である。当該植物は、北米南部地域に分布しており、その果実に含まれる油性物質には、5α−リダクターゼ阻害、前立腺肥大抑制、排尿障害緩和、利尿促進、抗炎症等の作用を有することが知られている。
【0017】
ノコギリヤシの抽出部位としては、特に制限されないが、好ましくは上記各種作用を有する油性物質を含む果実である。本発明が対象とするノコギリヤシエキスは、好ましくは当該油性物質を含む油性のエキスであり、未熟あるいは完熟の果実をそのまま又は乾燥後、適宜に細断してノルマルヘキサン、アセトン、エーテル、エタノール等の親油性有機溶媒を用いて抽出するか、または二酸化炭素、プロパン、窒素等を用いて超臨界状態下で抽出することにより製造することができる。抽出物の安全性や品質面から超臨界炭酸ガス抽出法が好適である。なお、この抽出物は必要に応じて常法により脱色処理や脱臭処理を施してもよい。
【0018】
前記抽出物として得られる油性物質はカプロン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の炭素数6〜18の飽和及び不飽和脂肪酸類を主成分として、オクタコサノール、トリアコンタノール等の脂肪族長鎖アルコール類、β−シトステロール、カンペステロール等の植物ステロール類を含み、アルコール類に僅かに溶解するが、水にはほとんど溶けない。
【0019】
ノコギリヤシエキスは、上記の方法でノコギリヤシ、特に果実(好ましくは熟した果実)から抽出調製することができるが、簡便には市販のノコギリヤシエキスを用いることもできる。かかるノコギリヤシエキスとしては、インデナ社(イタリア)またはその日本法人(インデナジャパン(株))の商品名「サバルセレクト」(超臨界抽出法により製造されたもの)などを例示することができる。斯くして調製されるノコギリヤシエキス、並びに商業的に入手されるノコギリヤシエキスは、通常、油性の液体の形態を有している。
【0020】
(2)ヒハツ加工物
ヒハツはコショウ科コショウ属に属する常緑の蔓性植物である。本発明が対象とするヒハツ加工物には、ヒハツ植物の全草またはその一部(果穂、根、葉、茎、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、ヒハツ植物の果穂または果穂を含む部位の加工物であり、加工物として好ましくは抽出液(エキス)またはその乾燥物(乾燥エキス)を挙げることができる。
【0021】
ヒハツエキスを得るための抽出の方法としては、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法を使用することができる。例えば、抽出に使用する溶媒(抽出溶媒)を入れた槽内にヒハツの抽出対象部位を入れ、静置若しくは必要に応じて撹拌しながら、可溶性成分を抽出することができる。また、前述する二酸化炭素、プロパン、窒素等を用いた超臨界抽出法を用いて抽出することもできる。得られた抽出物は、ろ過などにより固液分離し、固形分を除去して使用される。
【0022】
抽出溶媒としては、例えば、水若しくは親水性有機溶媒、又はこれらの混合物(含水親水性有機溶媒)を挙げることができる。ここで、水としては、制限されないが、精製水、イオン交換水、生理食塩水やそれらから調製される緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、又はリン酸緩衝生理食塩水)などを使用することができる。
【0023】
また、親水性有機溶媒としては、例えば炭素数1〜6の低級アルコール、好ましくは炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4の低級脂肪族ケトン、及び炭素数2〜5の多価アルコール等を挙げることができる。ここで炭素数1〜4の低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びブタノールを挙げることができる。好ましくはエタノール、プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコールであり、より好ましくはエタノールである。炭素数1〜4の低級脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトンを挙げることができる。炭素数2〜4の多価アルコールとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができる。
【0024】
抽出溶媒として含水親水性有機溶媒を用いる場合、抽出効率の観点から、含水親水性有機溶媒における親水性有機溶媒の含有率は10〜90容量%が好ましく、40〜70容量%がより好ましい。
【0025】
抽出温度としては、抽出効率の点から、20℃以上、使用する抽出溶媒の沸点温度以下の範囲内を挙げることができ、例えば抽出溶媒として水を用いる場合には、50〜95℃を挙げることができ、この場合1〜4時間程度で抽出物を得ることができる。また、抽出溶媒として含水エタノールを用いる場合には、例えば40〜75℃を挙げることができ、この場合30分〜4時間程度で抽出物を得ることができる。但し、これらの条件に制限されるものではない。
【0026】
なお、抽出物は、必要に応じて、その後、精製されてもよく、精製方法としては、例えば、活性炭、吸着樹脂、又はイオン交換樹脂等を用いた精製方法を挙げることができる。
【0027】
また、ヒハツエキスの乾燥物(乾燥エキス)は、例えば、上記の方法で得られた抽出液を、濃縮、及び/又は乾燥(好ましくは減圧下での乾燥)する方法や、あらかじめ吸湿性を改善する目的でデキストリン、又はシクロデキストリン等のキャリア(賦形剤)を添加した後に乾燥する方法などにより得ることができる。なお、乾燥方法は定法に従って行うことができ、例えば噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥、減圧下乾燥等が例示される。
【0028】
斯くして調製されるヒハツ加工物には、(2E,4E,8E)−N−[9−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2,4,8−ノナトリエノイル]ピペリジン、1−[(2E,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジン、または1−[(2Z,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジンなどのピペリン類が含まれている。これらのピペリン類は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法など当業者に周知の方法によって分析(定性、定量)することができる。制限はされないものの、本発明が対象とするヒハツ加工物には、ピペリン類を400〜1,500ppmの割合で含むものが好ましい。
【0029】
ヒハツ加工物は上記の方法でヒハツ、特に果穂または果穂を含む部位から調製することができるが、簡便には市販のヒハツ加工物を用いることもできる。かかるヒハツ加工物としては、ヒハツエキス(乾燥エキス)として市販されている丸善製薬株式会社の商品名「ヒハツエキスパウダーMF」を入手して使用することができる。当該商品は、ヒハツ果穂の水抽出物とデキストリンの混合製剤(ヒハツ果穂の水抽出物:デキストリン=1:9)である。
【0030】
(3)長命草加工物
長命草は、セリ科カワラボウフウ属に属し、ボタンボウフウとも呼ばれる多年草植物である、日本では関東・石川県以西の本州、四国、九州、及び沖縄諸島に分布・生息しているが、特に、沖縄地方では、伝統的な野菜として刺身の添え物としてや、ヤギ汁と共に食されている。
【0031】
本発明が対象とする長命草加工物には、長命草の全草またはその一部(葉、茎、根、花等)をそのまま乾燥したもの、乾燥後に破砕若しくは粉砕するか又は破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物、乾燥粉砕物)、搾汁またはその乾燥物、及び抽出物またはその乾燥物(エキス、乾燥エキス)が含まれる。好ましくは、長命草の葉、茎、若しくは根(好ましくは葉若しくは根)、またはこれらを含む部位の加工物であり、加工物として好ましくは乾燥粉砕物、または搾汁若しくはその乾燥物を挙げることができる。
【0032】
長命草エキスまたはその乾燥物は、前述するヒハツエキス及びその乾燥物と同様の方法で調製することができる。乾燥破砕または粉砕物は、長命草の全草またはその一部を天日乾燥、または加熱乾燥(熱風乾燥、回転加熱乾燥等)した後に破砕または粉砕するか、または長命草の全草またはその一部を破砕または粉砕した後に上記の乾燥方法で乾燥処理することで調製することができる。搾汁若しくはその乾燥物は、長命草の全草またはその一部から搾り出した汁をそのまま使用するか、またはそれを濃縮するか、噴霧乾燥(スプレードライ)または凍結乾燥(フリーズドライ)することで調製することができる。長命草加工物として、好ましくは乾燥破砕物または乾燥粉砕物を挙げることができる。
【0033】
長命草加工物は上記の方法で長命草、特に葉や根を含む部位から調製することができるが、簡便には市販の長命草加工物を用いることもできる。かかる長命草加工物としては、長命草の全草の乾燥粉末として市販されている日本ランチェスター工業株式会社の商品を入手して使用することができる。
【0034】
(4)ノコギリヤシエキス配合製剤
本発明のノコギリヤシエキス配合製剤の一態様として、前述するノコギリヤシエキスとヒハツ加工物を含む製剤を挙げることができる。
【0035】
当該製剤に含まれるノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物との配合比は、ヒハツ加工物との併用により、ノコギリヤシエキスについて経時的に生じる変色が抑制できる範囲であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。好ましくはヒハツ加工物についても生じる経時的変色をも抑制できる割合である。なお、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合することで経時的変色が抑制できるか否かは、後述する試験例に示すように、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合した製剤(併用区)とノコギリヤシエキス単独またはヒハツ加工物単独(単独区)とで、加速試験(例えば50℃で3〜5日間放置)を行い、それぞれ加速試験前後で色調の変化を測定し、単独区の色調変化と併用区での色調変化とを対比することで行うことができる。この場合、単独区の色調変化に比べて併用区での色調変化の程度が低い場合に、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合することで、ノコギリヤシエキス(及びヒハツ加工物)の経時的変色が抑制できると判断することができる。
【0036】
ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物との配合比としては、例えば、ノコギリヤシエキス100重量部に対するヒハツの乾燥エキスの割合に換算して3〜15重量部、好ましくは5〜12重量部を挙げることができる。この配合割合を換算するうえでの基準となるノコギリヤシエキスは、抽出溶媒を実質的に含まない油性液状のノコギリヤシエキスである。当該抽出溶媒を実質的に含まないノコギリヤシエキスは、ノコギリヤシの所定部位から超臨界抽出することによって簡便に得ることができるし、親油性溶媒で抽出する場合は、当該溶媒を蒸発除去させることで調製することができる。
【0037】
なお、ノコギリヤシエキス配合製剤中のノコギリヤシエキスの割合は特に制限されないものの、0.1〜99.5重量%の範囲から適宜設定することができる。
【0038】
本発明のノコギリヤシエキス配合製剤の他の一態様として、前述するノコギリヤシエキスとヒハツ加工物に加えて、さらに長命草加工物を含む製剤を挙げることができる。
【0039】
当該製剤に含まれるノコギリヤシエキスに対する長命草加工物との配合比は、長命草加工物との併用により、ノコギリヤシエキスまたはノコギリヤシエキスについて経時的に生じる変色が抑制できる範囲であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。好ましくは、ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を含む製剤に配合することで、当該製剤について得られる変色抑制効果を一層増強することのできる割合である。なお、ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を含む製剤に長命草加工物を配合することで、当該製剤の変色抑制効果が一層増強できるか否かは、後述する試験例に示すように、ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を配合した製剤(2種併用区)と、ノコギリヤシエキス、ヒハツ加工物及び長命草加工物を配合した製剤(3種併用区)とで、加速試験(例えば50℃で3〜5日間放置)を行い、それぞれ加速試験前後で色調の変化を測定することで行うことができる。この場合、2種併用区の色調変化に比べて3種併用区での色調変化の程度が低い場合は、長命草加工物を併用することで、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合することによる変色抑制効果が一層増強すると判断することができる。
【0040】
ノコギリヤシエキスに対する長命草加工物との配合比としては、例えば、ノコギリヤシエキス100重量部に対する長命草の乾燥粉末の割合に換算して、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部を挙げることができる。
【0041】
なお、ノコギリヤシエキス配合製剤中の長命草加工物の配合割合は特に制限されないものの、長命草の乾燥粉末の割合に換算して、1〜70重量%の範囲から適宜設定することができる。好ましくは5〜35重量%、より好ましくは15〜35重量%である。
【0042】
前述する割合及び範囲で、ノコギリヤシエキスに対して、ヒハツ加工物またはヒハツ加工物及び長命草加工物を用いることで、ノコギリヤシエキスの経時的変色を抑制することができる。また同時にヒハツ加工物の経時的変色をも抑制することができる。
【0043】
本発明が対象とするノコギリヤシエキス配合製剤は、少なくともノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を成分として含有し、本発明の効果に基づいて、商品の品質、特に外観の低下が抑制できるという利点が享受できるものであればよく、その限りにおいて、製剤の形態、使用態様、及び用途を特に限定するものではない。
【0044】
例えば、経口組成物、口腔用組成物、及び外用組成物を挙げることができ、経口組成物には経口医薬組成物、経口医薬部外品、及び食品組成物(食品添加剤を含む)が;口腔用組成物には口腔医薬組成物、及び口腔医薬部外品、口腔化粧組成物が;外用組成物には外用医薬組成物、外用医薬部外品、及び化粧組成物が含まれる。
【0045】
本発明の製剤を経口医薬組成物とする場合、上述したノコギリヤシエキス配合製剤をそのまま経口医薬組成物としてもよいし、医薬品の分野において許容される担体や添加剤と共に様々な剤型に調製してもよい。経口医薬組成物の剤型は、特に制限されないが、例えば、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、ドライシロップ剤等の固形剤、またはシロップ剤などの液剤が挙げられる。好ましくは固形剤である。また、薬効成分の放出性を制御した製剤形態を有するものであってもよい(例えば、速放性製剤、徐放性製剤等)。また、好ましくは錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)である。このような剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。また上記成分の他、本発明の効果が減殺されない範囲であれば、通常医薬品の添加物として許容される安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、湿潤剤、粘稠剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤等の任意成分を所望に応じて添加することもできる。
【0046】
上記の経口医薬組成物の投与量は、製剤の用途、患者の年齢、性別、治療すべき症状の程度、及び投与方法により左右されるが、経口医薬組成物に含まれているノコギリヤシエキスの量に換算して、成人に対する1日あたりの投与量が通常100〜1000mg程度となる割合を挙げることができる。この投与範囲であれば、1日に1〜数回に分けて投与することもできる。
【0047】
本発明の製剤を食品組成物とする場合、当該食品組成物は、ノコギリヤシ、ヒハツ(または長命草)の生理作用に基づいて、各種の健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品等の機能性食品として調製することもできる。このような食品として調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒剤、散剤、フィルム、タブレット、カプセル(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤等を含む)、丸剤、飲料(ドリンク剤)等の形態で調製することが望ましく、なかでもカプセル剤、錠剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましい。当該食品組成物も、上述した食品の分野で許容される担体を用いて、常法に従って適宜調製することができる。
【0048】
本発明の製剤を外用医薬組成物とする場合、上述したノコギリヤシエキス配合製剤をそのまま外用医薬組成物としてもよく、通常、医薬品の分野において許容される担体や添加剤と共に様々な形態に調製すればよい。本発明の外用医薬組成物の剤型は、特に制限されないが、例えば、液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製剤;軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等の半固形製剤;パップ剤が挙げられる。好ましくは半固形製剤及びパップ剤である。このような剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。また上記成分の他、本発明の効果が減殺されない範囲であれば、通常医薬品の添加物として許容される安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、湿潤剤、粘稠剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤等の任意成分を所望に応じて添加することもできる。
【0049】
上記の外用医薬組成物は、上述の製剤として調製され、投与することができ、その投与量は、患者の年齢、性別、治療すべき症状の程度、及び投与方法により左右されるが、外用医薬組成物に含まれているノコギリヤシエキスの量に換算して、成人に対する1日あたりの投与量が通常100〜1000mg程度となる割合を挙げることができる。
【0050】
本発明の製剤を化粧料組成物の形態とする場合、上述したノコギリヤシエキス配合製剤をそのまま化粧料組成物としてもよく、通常、化粧品の分野において許容される担体や添加剤と共に様々な化粧料の形態に調製すればよい。化粧料組成物の形状については特に制限されないが、例えば、ペースト状、ローション状、ムース状、ジェル状、ゼリー状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状等が挙げられる。また、当該化粧料組成物の形態についても、制限されるものではないが、例えば、ファンデーション、頬紅、白粉等のメイクアップ化粧料;化粧水、乳液、クリーム、ローション、オイル及びパック等の基礎化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の皮膚洗浄料;マッサージ剤、清拭剤;清浄剤;入浴剤等が挙げられる。
【0051】
(II)ノコギリヤシエキスの変色抑制方法
本発明のノコギリヤシエキスの変色抑制方法は、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を併用することで実施することができる。
【0052】
使用するノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物の形態や調製方法等は(I)に記載した通りであり、当該記載はここに援用することができる。
【0053】
ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の配合割合は、ノコギリヤシエキスの経時的変色が抑制される割合であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。なお、ノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を配合することでノコギリヤシエキスの変色が抑制できるか否かは、(I)に記載するように、加速試験法を実施し、試験前後の色調変化からヒハツ加工物併用の効果を評価することで決定することができる。当該記載もここに援用することができる。
【0054】
ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の配合割合は、制限はされないものの、通常、ノコギリヤシエキス100重量部に対するヒハツの乾燥エキスの割合に換算して、3〜15重量部を挙げることが出来る。好ましくは5〜12重量部である。
【0055】
上記の割合及び範囲でノコギリヤシエキスにヒハツ加工物を併用することで、ノコギリヤシエキスの経時的変色が抑制できるという効果を得ることができ、また同時にヒハツ加工物の経時的変色をも抑制することができる。
【0056】
さらにノコギリヤシエキスの経時的変色の抑制効果は、ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物に加えて、長命草加工物を併用することで一層増強させることができる。ここで長命草加工物の配合割合は、ノコギリヤシエキス100重量部に対する長命草の乾燥粉末の割合に換算して、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部を挙げることができる。またノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物を含有するノコギリヤシエキス配合製剤100重量%中の割合として、長命草の乾燥粉末として5〜35重量%、好ましくは15〜35重量%の割合を挙げることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明およびその効果を、試験例および実施例を用いてより明確に説明する。ただし、本発明はかかる試験例および実施例になんら制限されるものではない。なお、下記の実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
【0058】
なお、下記の試験例および実施例で用いたノコギリヤシエキス、ヒハツ加工物、及び長命草加工物は下記の通りである。
・ノコギリヤシエキス(インデナジャパン株式会社製)
・ヒハツ加工物:ヒハツエキス粉末(丸善製薬株式会社製)
・長命草加工物:長命草粉末(日本ランチェスター工業株式会社製)
【0059】
試験例1
(1)被験製剤の調製
表1に記載する処方に従って、被験製剤(実施例1〜12、比較例1〜2)を調製した。具体的には、まず、ノコギリヤシエキス(実施例1〜12、比較例1)またはサラダ油(比較例2)のオイル成分にグリセリン脂肪酸エステル及びミツロウを混合し、80℃まで加温した。グリセリン脂肪酸エステル及びミツロウが完全に溶解したのを確認した後、撹拌しながら30℃程度まで室温で冷ました。これに大豆レシチンを添加した後、ヒハツ加工物(実施例1〜12、比較例2)を添加混合し、さらに実施例10〜12には長命草加工物を添加混合した。その後、均質になるまで室温で撹拌を続け、ペースト状の被験製剤(実施例1〜12、比較例1〜2)を調製した。
【0060】
(2)試験方法(加速試験)
上記で調製した被験製剤(実施例1〜12、比較例1〜2)の色調を、室温条件下で分光色彩計にて測定した。ついで、各被験製剤を蓋のできる透明容器に充填し、50℃に設定した恒温器に入れて3日間静置した。3日間静置後、温度を室温に戻した後、再び色調を分光色彩計で測定した。加温前後の色調から、Labの変化量(ΔL+Δa+Δb)を求め、これを変色評価の指標とした。
【0061】
(3)試験結果
試験結果を表1に併せて示す。Labの変化量(ΔL+Δa+Δb)が小さいほど、変色の程度が少ないことを意味する。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の比較例1及び2の結果に示すように、ノコギリヤシエキス及びヒハツ加工物は、それぞれ加速試験により、いずれも顕著な変色が発生した。これに対して、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物とを併用した被験製剤(実施例1〜9)はいずれもこの変色が抑制されていた。特に、ノコギリヤシエキスに対するヒハツ加工物の割合を、ノコギリヤシ乾燥エキス100重量部に対するヒハツ乾燥エキスの割合に換算して3〜15重量部、特に5〜12重量部とすることで、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物の両方の変色が有意に抑制され、変色の少ない経時的に安定した製剤が調製できることが確認された。また、実施例10〜12に示すように、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物の混合物にさらに長命草加工物を配合することで、ノコギリヤシエキスとヒハツ加工物の両方の変色が格段に抑制され、変色の少ない経時的に安定した製剤が調製できることが確認された。
【0064】
実施例13〜16、比較例3および4 ソフトカプセル剤
表2に記載する処方に従って、各組成からなるソフトカプセル剤をそれぞれ常法に従って調製した(実施例13〜16、比較例3および4)。これを試験例1の方法に従って加速試験を行い、加速試験前(製剤調製直後)と加速試験後に色調の変化を目視試験(官能評価)により、下記の基準で評価した。
(色調判定基準)
○:色調の変化が軽微で使用者が加速試験前後の試験品を同一のものと判断した。
×:色調の変化が顕著で使用者が加速試験前後の試験品を異なったものと判断した。
【0065】
結果を表2に併せて示す。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例17〜20、比較例5および6 外用クリーム剤
表3に記載する処方に従って、各組成からなる外用クリーム剤をそれぞれ常法に従って調製した(実施例17〜20、比較例5および6)。具体的には、まず表3に記載するA成分とC成分を別々に加温溶解し、Aを撹拌しながらCを徐々に加え乳化した。得られた乳化物を撹拌しながら冷却し、これにB成分を添加して更に均質になるまで撹拌し、外用クリームを得た。これを試験例1の方法に従って加速試験を行い、加速試験前(製剤調製直後)と加速試験後に色調の変化を目視試験(官能評価)により、実施例13〜16と同じ基準で評価した。
【0068】
結果を表3に併せて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例21〜24、比較例7および8 パップ剤
表4に記載する処方に従って、各組成からなるパップ剤をそれぞれ常法に従って調製した(実施例21〜24、比較例7および8)。具体的には、まず表4に記載するB成分を混合し、加温しながら均質になるまで混練した。ついで、混練しながら室温まで冷却し、これにA成分を添加して、室温で均質になるまで更に混練して、これを不織布からなる支持体に伸展してパップ剤を得た。これを試験例1の方法に従って加速試験を行い、加速試験前(製剤調製直後)と加速試験後に色調の変化を目視試験(官能評価)により、実施例13〜16と同じ基準で評価した。
【0071】
結果を表4に併せて示す。
【0072】
【表4】