特許第6061924号(P6061924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061924
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】口腔内分散性製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20170106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K31/343
   A61P25/24
【請求項の数】24
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2014-517301(P2014-517301)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-528395(P2014-528395A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069535
(87)【国際公開番号】WO2013054582
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-227333(P2011-227333)
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】田上 寛
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山縣 豊
(72)【発明者】
【氏名】永原 直樹
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−255064(JP,A)
【文献】 特開2001−131057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 25/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.1mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
【請求項2】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項1の予防および/または治療薬。
【請求項3】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項1または2の予防および/または治療薬。
【請求項4】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項1〜3のいずれかの予防および/または治療薬。
【請求項5】
絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内である、請求項1の予防および/または治療薬。
【請求項6】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項5の予防および/または治療薬。
【請求項7】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項5または6の予防および/または治療薬。
【請求項8】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項5〜7のいずれかの予防および/または治療薬。
【請求項9】
双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.4mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
【請求項10】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項9の予防および/または治療薬。
【請求項11】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項9または10の予防および/または治療薬。
【請求項12】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項9〜11のいずれかの予防および/または治療薬。
【請求項13】
絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内である、請求項9の予防および/または治療薬。
【請求項14】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項13の予防および/または治療薬。
【請求項15】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項13または14の予防および/または治療薬。
【請求項16】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項13〜15のいずれかの予防および/または治療薬。
【請求項17】
双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
【請求項18】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項17の予防および/または治療薬。
【請求項19】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項17または18の予防および/または治療薬。
【請求項20】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項17〜19のいずれかの予防および/または治療薬。
【請求項21】
絶食状態において、化合物AのCmaxが約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内である、請求項17の予防および/または治療薬。
【請求項22】
口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、請求項21の予防および/または治療薬。
【請求項23】
双極性障害がI型双極性障害である、請求項21または22の予防および/または治療薬。
【請求項24】
双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、請求項21〜23のいずれかの予防および/または治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崩壊性の改善された製剤、薬剤の生物学的利用能の改善された製剤およびその製造方法等に関する。
(発明の背景)
【0002】
特許文献1には、平均粒子径が30μm以下の糖アルコールまたは糖類、活性成分および崩壊剤を含有する錠剤、平均粒子径が30μm以下の糖アルコールまたは糖類、活性成分および崩壊剤を含有する混合物を圧縮成形することを特徴とする錠剤の製造法が開示されている。
特許文献2には、アゴメラチンと、同時乾燥したラクトースおよびデンプンからなる顆粒とを含むことを特徴とする、アゴメラチンの固形口腔分散性医薬組成物が開示されている。
特許文献3には、アゴメラチンの、被覆された固体の口内分散性医薬組成物であって、アゴメラチンおよび口内分散性配合物を得ることを可能にする賦形剤を含む中心核または中心層、および口内分散性のコーティングを含むことを特徴とする医薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1997/047287号パンフレット
【特許文献2】特表2005−523253号公報
【特許文献3】特開2007−182440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、舌下またはバッカル投与後に速やかに崩壊することにより口腔内粘膜からの薬剤吸収を促進することができる製剤を提供することである。そのような製剤は、同じ薬剤の経口(舌下またはバッカルではない)投与に対して、生物学的利用能を改善すること、薬剤に対する代謝物の比率を低下させること、Cmaxを増加させること、Tmaxを減少させること、AUC(0−tlqc)を増加させること、および、CmaxおよびAUC(0−tlqc)の変動係数を増加させることを含む、利益を有する。このような製剤はまた、一般的に、双極性障害の治療のために、および該疾患の緩解およびうつ病相のために有用である。
本発明の他の目的は、崩壊性を改善することができる新規な製剤技術を提供することである。また、本発明の他の目的は、口腔内速崩壊性製剤として有用な製剤を提供することである。このような目的は本発明を限定するものではなく、例示にすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
製剤:速崩壊性製剤
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、崩壊を妨げる成分(マスキング剤、結合剤など)を造粒成分として粒中に内添し、該粒の表面を糖または糖アルコールでコーティングした後に、製剤化することで薬剤の崩壊性が改善され、かつ生物学的利用能が改善されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の通りである。
[1]糖または糖アルコールを含有する被覆層により被覆された薬剤を含有する顆粒;および崩壊剤を含有する、速崩壊性製剤。
(以下、製剤[1]と略称する場合があり、下記の[2]から[18]および[37]から[69]についても同様である)
[2]薬剤を含有する顆粒がさらに結合剤を含有する、上記[1]に記載の速崩壊性製剤。
[3]薬剤を含有する顆粒がさらにマスキング剤を含有する、上記[1]に記載の速崩壊性製剤。
[4]薬剤を含有する顆粒がさらに可溶化剤を含有する、上記[1]に記載の速崩壊性製剤。
[4−1]崩壊時間が30秒以下である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の速崩壊性製剤。
[4−2]崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の速崩壊性製剤。
【0007】
本発明の「速崩壊性製剤」は、口腔内粘膜から薬剤を吸収させるための製剤としても優れている。具体的には、以下の通りである。
[5]口腔内粘膜吸収用の製剤である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製剤。本明細書で使用される、薬物送達の文脈における用語「口腔内粘膜の(oral−mucosal)」および「口腔内粘膜(oral−mucosa)」には、例えば、薬剤が体循環に入り、実質的に肝初回通過代謝を回避するような舌下またはバッカル経路による、口腔の粘膜内層への直接の薬剤の投与が含まれる。本明細書において使用される、薬物送達の文脈における用語「経口」には、口腔への薬剤の投与が含まれるが、口腔粘膜内層への直接の薬剤の投与は含まれない。(口腔内粘膜経路とは異なり)経口経路により送達される薬剤は、消化管での吸収後に体循環に入る。
[6]薬剤が(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(一般名ラメルテオン;以下化合物Aと略称する場合がある)である、上記[5]に記載の製剤。
[7]錠剤である、上記[5]または[6]に記載の製剤。
[8]薬剤を含有する顆粒を製造する工程、
得られた顆粒上に、糖または糖アルコールを含有する被覆層を形成する工程、
当該被覆された顆粒を、崩壊剤と混合した後、成形する工程を含む、
速崩壊性製剤の製造方法。
【0008】
製剤:化合物Aの口腔内粘膜吸収用の製剤
上記製剤[6]に加えて、本発明者らは、化合物Aについて口腔内粘膜からの吸収に優れ、その生物学的利用能が向上した製剤を鋭意検討した。
[9]薬剤として(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;
血中移行後の該薬剤の未変化体と代謝物の比率(即ち、薬剤の未変化体/代謝物)が、経口投与したときの比率より大きくなる、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
(ここで、および以下で、「薬剤の代謝物」は、具体的には、M−IIとして知られている、(2S)−2−ヒドロキシ−N−{2−[(8S)−1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル]エチル}プロパンアミドを意味する。)
[10]薬剤として(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;
血中移行後の該薬剤の未変化体と代謝物の比率が、経口投与したときの比率より大きくなり、
崩壊時間が30秒以下である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[11]薬剤として(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;
血中移行後の該薬剤の未変化体と代謝物の比率が、経口投与したときの比率より大きくなり、
崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[12](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドおよびマスキング剤を含有し;
経口投与に比較して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が約10倍以上に改善されている、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[13](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドおよびマスキング剤を含有し;
経口投与に比較して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が約10倍以上に改善されており、
崩壊時間が30秒以下である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[14](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドおよびマスキング剤を含有し;
経口投与に比較して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が約10倍以上に改善されており、
崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[15](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド、糖または糖アルコール、および崩壊剤を含有し;
経口投与に比較して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が約10倍以上に改善されており、
崩壊時間が30秒以下である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[16](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド、糖または糖アルコール、および崩壊剤を含有し;
経口投与に比較して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が約10倍以上に改善されており、
崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上である、
口腔内粘膜吸収用の、
製剤。
[17]錠剤である、上記[9]〜[16]のいずれかに記載の製剤。
[18]フィルム、トローチ、溶液、懸濁液、凍結乾燥製剤、チューインガム、またはスプレー剤の形態である上記[9]または[12]に記載の製剤。
【0009】
化合物Aの使用の方法:双極性障害の予防および/または治療(1)
本発明はまた、それを必要とするヒトに口腔内粘膜投与することによる、双極性障害の予防および/または治療のための化合物Aの使用の方法に関する。
[19](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドをヒトに口腔内粘膜投与することを含む、双極性障害の予防および/または治療方法。
(以下、方法[19]と略称する場合があり、以下の[20]〜[23]、[28]、[34]および[70]〜[110]で同様である)。
[20]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与(より好ましくは舌下投与)である、上記[19]に記載の予防および/または治療方法。
[21]1日あたり0.05〜1.0mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが投与される、上記[19]に記載の予防および/または治療方法。
[22]双極性障害がI型双極性障害である、上記[19]に記載の予防および/または治療方法。
[23]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である上記[19]に記載の予防および/または治療方法。
[24](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドがヒトに対して口腔内粘膜投与されるための、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを有効成分として含有する双極性障害の予防および/または治療薬。
(以下、薬剤[24]と略称する場合があり、以下の[25]〜[27]および[35]で同様である)。
[25]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与(より好ましくは舌下投与)である、上記[24]に記載の予防および/または治療薬。
[26]1日あたり0.05〜1.0mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが投与される、上記[24]に記載の予防および/または治療薬。
[27]双極性障害がI型双極性障害である、上記[24]に記載の予防および/または治療薬。
[28]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である上記[24]に記載の予防および/または治療薬。
[29]ヒトに対して口腔内粘膜投与されることによる、双極性障害の予防および/または治療のための(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
(以下、化合物[29]と略称する場合があり、以下の[30]〜[33]および[36]で同様である)。
[30]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与(より好ましくは舌下投与)である、上記[29]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
[31]1日あたり0.05〜1.0mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが投与される、上記[29]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
[32]双極性障害がI型双極性障害である、上記[29]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
[33]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である上記[29]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
[34](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、上記[5]〜[7]、または[9]〜[18]に記載の製剤として投与される上記[19]〜[23]に記載の予防および/または治療方法。
[35](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、上記[5]〜[7]、または[9]〜[18]に記載の製剤として投与される上記[24]〜[28]に記載の予防および/または治療薬。
[36](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、上記[5]〜[7]、または[9]〜[18]に記載の製剤として投与される上記[29]〜[33]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド。
【0010】
製剤:化合物Aの口腔内粘膜吸収用の製剤(2)
本発明の他の側面は、以下の「投与量および/またはPKプロファイルにより限定される製剤」に関する。
【0011】
[37](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.1mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、製剤。
[37−1](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.1mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、製剤。
[38](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.1mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、上記[37]に記載の製剤。
[38−1](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.1mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、上記[37−1]に記載の製剤。
[39](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.4mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、製剤。
[39−1](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.4mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、製剤。
[40](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.4mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、上記[39]に記載の製剤。
[40−1](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.4mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、上記[39−1]に記載の製剤。
[41](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.8mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、製剤。
[41−1](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有する口腔内粘膜吸収用の製剤であって;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.8mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、製剤。
[42](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.8mgであり、および(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらす、上記[41]に記載の製剤。
[42−1](1)化合物Aの投与量が1日あたり0.8mgであり、(2)該製剤がヒト対象に対して、絶食状態において、約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内の化合物AのCmaxおよび約3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内の化合物AのAUC(0−tlqc)をもたらし、および(3)ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、上記[41−1]に記載の製剤。
【0012】
[43](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.05〜1.0mgであり;および(2)ヒトに対する投与後の化合物Aの未変化体に対する化合物Aの代謝物(M−II)のAUC比率が、約20以下である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[44](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し;(1)化合物Aの投与量が1日あたり0.1〜0.8mgであり;および(2)ヒトに対する投与後の化合物Aの未変化体に対する化合物Aの代謝物(M−II)のAUC比率が、約20以下である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[45]AUC比率が約10以下である、上記[43]に記載の製剤。
[46]AUC比率が約10以下である、上記[44]に記載の製剤。
【0013】
[47](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC比率が、経口投与したときの約5倍以上である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[48]AUC比率が経口投与したときの約10倍以上である、上記[47]に記載の製剤。
[49]AUC比率が約30倍以下、好ましくは、約20倍以下である、上記[47]または[48]のいずれかに記載の製剤。
【0014】
[50](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC比率が約20以下である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[51]AUC比率が約10以下であり、より好ましくは、約5以下である、上記[50]に記載の製剤。
【0015】
[52](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上改善する、より詳細には、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上から約30倍以下の範囲で改善する、口腔内粘膜吸収用の製剤。
【0016】
[53](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し、ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[54]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、より好ましくは、約0.25時間以下である、上記[47]〜[52]のいずれかに記載の製剤
【0017】
[55](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し、ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドのCmaxおよびAUCを含む薬物動態パラメータの変動係数(CV)が約45%以下であり、好ましくは、約35%以下であり、およびより好ましくは、約30%以下である、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[56]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドのCmaxおよびAUCを含む薬物動態パラメータの変動係数(CV)が、約45%以下であり、好ましくは、約35%以下であり、およびより好ましくは、約30%以下である、上記[47]〜[54]のいずれかに記載の製剤。
【0018】
[57](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを含有し;(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの投与量が1日あたり0.05〜1.0mgである、口腔内粘膜吸収用の製剤。
[58](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの投与量が1日あたり0.1〜0.8mgである、上記[57]に記載の製剤。
【0019】
[59]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC比率が、経口投与したときの約5倍以上である、上記[57]または[58]のいずれかに記載の製剤。
【0020】
[60]AUC比率が経口投与したときの約10倍以上である、上記[59]に記載の製剤。
[61]AUC比率が経口投与したときの約10倍以上である、上記[60]に記載の製剤。
[62]AUC比率が約30倍以下、好ましくは、約20倍以下である、上記[59]〜[61]のいずれかに記載の製剤。
【0021】
[63]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC比率が約20以下である、上記[57]または[58]に記載の製剤。
[64]AUC比率が約10以下である、上記[63]に記載の製剤。
[65]AUC比率が約5以上である、上記[63]または[64]のいずれかに記載の製剤。
【0022】
[66](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上改善する、より詳細には、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上から約30倍以下の範囲で改善する、上記[57]または[58]に記載の製剤。
【0023】
[67]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、上記[57]〜[66]のいずれかに記載の製剤。
【0024】
[68]ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドのCmaxおよびAUCを含む薬物動態パラメータの変動係数(CV)が、約45%以下であり、好ましくは、約35%以下であり、およびより好ましくは、約30%以下である、上記[57]〜[67]のいずれかに記載の製剤。
[69]該製剤がさらに崩壊剤を含有する、上記[57]〜[68]のいずれかに記載の製剤。
【0025】
化合物Aの使用の方法:双極性障害の予防および/または治療(2)
本発明の他の側面は、以下の「投与量および/またはPKプロファイルにより限定される化合物Aの使用の方法」に関する。
【0026】
[70]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.05〜1.0mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含む、方法。
[71]1日あたり0.1〜0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが投与される、上記[70]に記載の方法。
[72](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが舌下投与経路またはバッカル投与経路により投与される、上記[70]または[71]のいずれかに記載の方法。
【0027】
[73]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.1mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内である、方法。
[73−1]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.1mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内であり;およびヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、方法。
[74]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[73]または[73−1]のいずれかに記載の方法。
[75]双極性障害がI型双極性障害である、上記[73]または[73−1]のいずれかに記載の方法。
[76]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[73]または[73−1]のいずれかに記載の方法。
[77]絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内である、上記[73]または[73−1]のいずれかに記載の方法。
[78]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[77]に記載の方法。
[79]双極性障害がI型双極性障害である、上記[77]に記載の方法。
[80]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[77]に記載の方法。
[81]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.4mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内である、方法。
[81−1]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.4mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内であり;およびヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、方法。
[82]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[81]または[81−1]のいずれかに記載の方法。
[83]双極性障害がI型双極性障害である、上記[82]に記載の方法。
[84]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[82]に記載の方法。
[85]絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内である、上記[81]または[81−1]のいずれかに記載の方法。
[86]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[85]に記載の方法。
[87]双極性障害がI型双極性障害である、上記[85]に記載の方法。
[88]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[85]に記載の方法。
[89]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内である、方法。
[89−1]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、絶食状態において、化合物AのCmaxが約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内であり;およびヒトに対する投与後の化合物Aの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である、方法。
[90]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[89]または[89−1]のいずれかに記載の方法。
[91]双極性障害がI型双極性障害である、上記[90]に記載の方法。
[92]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[90]に記載の方法。
[93]絶食状態において、化合物AのCmaxが約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内である、上記[89]または[89−1]のいずれかに記載の方法。
[94]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[93]に記載の方法。
[95]双極性障害がI型双極性障害である、上記[93]に記載の方法。
[96]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[93]に記載の方法。
【0028】
[97]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.05〜1.0mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、投与後の化合物Aの未変化体に対する化合物Aの代謝物(M−II)のAUC比率が20以下である、方法。
[98]双極性障害の予防および/または治療方法であって、1日あたり0.1〜0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与することを含み、投与後の化合物Aの未変化体に対する化合物Aの代謝物(M−II)のAUC比率が20以下である、方法。
[99]AUC比率が10以下である、上記[97]に記載の方法。
[100]AUC比率が10以下である、上記[98]に記載の方法。
【0029】
[101]投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC比率が、経口投与したときの約5倍以上である、上記[70]〜[72]のいずれかに記載の方法。
[102]AUC比率が、経口投与したときの約10倍以上である、上記[101]のいずれかに記載の方法。
【0030】
[103]AUC比率が約30倍以下、好ましくは、約20倍以下である、上記[102]のいずれかに記載の方法。
[104]投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC比率が約20以下である、上記[70]〜[72]のいずれかに記載の方法。
[105]AUC比率が約10以下、より好ましくは、約5以下である、上記[104]に記載の方法。
【0031】
[106](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能が、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上改善するように、より詳細には、経口投与したときの生物学的利用能の約10倍以上から約30倍以下の範囲で改善するように投与される、上記[70]〜[72]のいずれかに記載の方法。
【0032】
[107](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度の平均Tmax値が約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下となるように投与される、上記[70]〜[72]および[101]〜[106]のいずれかに記載の方法。
【0033】
[108](S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドが、投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドのCmaxおよびAUCを含む薬物動態パラメータの変動係数(CV)が約45%以下、好ましくは、約35%以下、およびより好ましくは、約30%以下となるように投与される、上記[70]〜[72]および[101]〜[107]のいずれかに記載の方法。
【0034】
[109]双極性障害がI型双極性障害である、上記[70]〜[72]および[101]〜108]のいずれかに記載の方法。
[110]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[109]に記載の方法。
[111]双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.1mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
[112]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[111]に記載の予防および/または治療薬。
[113]双極性障害がI型双極性障害である、上記[111]および[112]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[114]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[111]〜[113]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[115]絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内である、上記[111]に記載の予防および/または治療薬。
[116]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[115]に記載の予防および/または治療薬。
[117]双極性障害がI型双極性障害である、上記[115]および[116]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[118]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[115]〜[117]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[119]双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.4mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
[120]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[119]に記載の予防および/または治療薬。
[121]双極性障害がI型双極性障害である、上記[119]および[120]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[122]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[119]〜[121]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[123]絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内である、上記[119]に記載の予防および/または治療薬。
[124]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[123]に記載の予防および/または治療薬。
[125]双極性障害がI型双極性障害である、上記[123]および[124]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[126]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[123]〜[125]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[127]双極性障害の予防および/または治療薬であって、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与される1日あたり0.8mgの(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)を含有し、絶食状態において、化合物AのCmaxが約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内である、予防および/または治療薬。
[128]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[127]に記載の予防および/または治療薬。
[129]双極性障害がI型双極性障害である、上記[127]および[128]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[130]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[127]〜[129]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[131]絶食状態において、化合物AのCmaxが約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内である、上記[127]に記載の予防および/または治療薬。
[132]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[131]に記載の予防および/または治療薬。
[133]双極性障害がI型双極性障害である、上記[131]および[132]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[134]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[131]〜[133]のいずれかに記載の予防および/または治療薬。
[135]双極性障害の予防および/または治療用の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)であって、1)1日あたり0.1mgの化合物Aが、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与され、および2)絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.43〜約3.13ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.48〜約2.26ng.hr/mlの範囲内である、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[136]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[135]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[137]双極性障害がI型双極性障害である、上記[135]および[136]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[138]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[135]〜[137]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[139]絶食状態において、化合物AのCmaxが約0.66〜約2.05ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約0.67〜約1.62ng.hr/mlの範囲内である、上記[135]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[140]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[139]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[141]双極性障害がI型双極性障害である、上記[139]および[140]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[142]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[139]〜[141]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[143]双極性障害の予防および/または治療用の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)であって、1)1日あたり0.4mgの化合物Aが、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与され、および2)絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.04〜約6.89ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.52〜約6.68ng.hr/mlの範囲内である、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[144]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[143]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[145]双極性障害がI型双極性障害である、上記[143]および[144]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[146]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[143]〜[145]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[147]絶食状態において、化合物AのCmaxが約2.54〜約5.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約1.98〜約5.12ng.hr/mlの範囲内である、上記[143]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[148]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[147]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[149]双極性障害がI型双極性障害である、上記[147]および[148]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[150]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[147]〜[149]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[151]双極性障害の予防および/または治療用の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)であって、1)1日あたり0.8mgの化合物Aが、それを必要とするヒトの口腔内粘膜に投与され、および2)絶食状態において、化合物AのCmaxが約3.63〜約14.06ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が約2.48〜約14.43ng.hr/mlの範囲内である、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[152]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[151]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[153]双極性障害がI型双極性障害である、上記[151]および[152]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[154]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[151]〜[153]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[155]絶食状態において、化合物AのCmaxが約4.85〜約10.54ng/mlの範囲内および化合物AのAUC(0−tlqc)が3.60〜約9.91ng.hr/mlの範囲内である、上記[151]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[156]口腔内粘膜投与が舌下投与またはバッカル投与である、上記[155]に記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[157]双極性障害がI型双極性障害である、上記[155]および[156]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
[158]双極性障害の予防および/または治療が、双極性障害に伴ううつ症状の治療または双極性障害の緩解期の維持である、上記[155]〜[157]のいずれかに記載の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(化合物A)。
(発明の詳細な説明)
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、崩壊性に優れた速崩壊性製剤、薬剤の生物学的利用能の改善された製剤およびその製造方法などを提供することができる。
本発明の速崩壊性製剤[1]から[7]は、顆粒中に薬剤を含有させ、崩壊剤を顆粒外成分として配合することにより、崩壊剤との配合性が悪い薬剤(例えば、化合物A等)を使用する場合であっても、崩壊剤の薬剤への影響を減らすことができるため、薬剤の安定性を向上させることができる。
本発明の速崩壊性製剤は、崩壊を妨げる成分(例えば、マスキング剤、結合剤等)を顆粒中に内包させることにより崩壊性を向上させることができる。また、崩壊を妨げる成分を糖または糖アルコールにより被覆することで製剤中への水の浸入経路を確保することにより、速い崩壊性が達成できる。また、本発明の速崩壊性製剤は薬剤を糖または糖アルコールで被覆することを特徴とするため、表面の疎水性が高い薬剤の場合でも親水性に表面改質することで、製剤からの薬剤の溶出性を改善できる。
本発明の速崩壊性製剤によれば、良好な崩壊性と良好な製剤硬度の両方を達成できる。
本発明の速崩壊性製剤[1]から[7]の内、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤[5]から[7]は、薬剤を口腔内粘膜から吸収させることで、即効性が期待できる。
本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、経口投与時に初回通過効果を大きく受ける薬剤(例えば、化合物A等)の血中濃度の向上により、生物学的利用能を向上させることができる。また、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、そのような薬剤の吸収のばらつきを抑制することができ、延いては医薬としての有効性のばらつきを制御することができる。さらに、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、そのような薬剤の生物学的利用能の向上により、薬剤の低用量化、製剤の小型化を達成できる。
本発明の製造方法によれば、上記効果を有する本発明の速崩壊性製剤[1]から[7]を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、異なる濃度における口腔内粘膜送達後の化合物Aの平均血清濃度を示す。
図2図2は、経口送達後の化合物Aの平均血清濃度に比較した口腔内粘膜送達後の化合物Aの平均血清濃度を示す。
図3図3は、異なる濃度における口腔内粘膜送達後の代謝物M−IIの平均血清濃度を示す。
図4図4は、経口送達後の代謝物M−IIの平均血清濃度に比較した口腔内粘膜送達後の代謝物M−IIの平均血清濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
製剤:速崩壊性製剤
以下に、本発明の速崩壊性製剤について、詳細に説明する。
本発明の速崩壊性製剤は、糖または糖アルコールを含有する被覆層により被覆された薬剤を含有する顆粒、および崩壊剤を含有する。
本発明に用いられる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、解熱鎮痛消炎薬、向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰薬、血圧降下剤、糖尿病用薬、骨粗しょう症用薬、骨格筋弛緩薬または抗癌剤等が挙げられる。
本発明の速崩壊性製剤において、薬剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常0.03〜50重量%、好ましくは0.03〜20重量%、さらに好ましくは0.03〜3重量%である。
【0038】
本発明の速崩壊性製剤は、崩壊剤を顆粒外成分として配合することにより、崩壊剤との配合性が悪い薬剤を使用する場合であっても、崩壊剤の薬剤への影響を減らすことができるため、薬剤の安定性を向上させることができる。このように、本発明においては、薬剤として、崩壊剤との配合性が悪い薬剤(例えば、化合物A等)を使用する場合に特に効果を発揮する。
化合物Aは、米国特許第6034239号公報等に開示されている公知の睡眠障害治療剤であり、当該文献に記載の方法などの公知の方法によって製造することができる。
【0039】
本発明の速崩壊性製剤は、糖または糖アルコールを含有する被覆層により被覆された薬剤を含有する顆粒に賦形剤を含有する。
該賦形剤としては、例えば、コーンスターチ等のデンプン類;乳糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール(例、D−マンニトール)、ソルビトール(例、D−ソルビトール)、エリスリトール(例、D−エリスリトール)、ショ糖等の糖または糖アルコール:無水リン酸カルシウム、結晶セルロース、微結晶セルロース、カンゾウ末、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられ、コーンスターチ、D−マンニトール、結晶セルロースが好ましい。
該賦形剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常13〜94重量%、好ましくは54〜94重量%、さらに好ましくは81〜93重量%である。
【0040】
本発明の速崩壊性製剤においては、薬剤を含有する顆粒中に、必要に応じて、さらに添加剤を含有していてもよい。
薬剤を含有する顆粒中に含有していてもよい添加剤としては、例えば、結合剤、マスキング剤、可溶化剤等が挙げられ、必要に応じて、組み合わせて用いてもよい。
該結合剤としては、例えば、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム末、トラガント、カルメロース、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グリセリン等が挙げられ、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファー化デンプンが好ましい。
該結合剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
該マスキング剤としては、例えば、各種嬌味剤(ソーマチン、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、キシリトール、クエン酸、L−グルタミン酸ナトリウム等)、各種受容体拮抗剤(ベネコート、塩化ナトリウム等)、各種カチオンチャネル拮抗剤(L−アルギニン等)、各種包接化剤(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン等)、各種フレーバー(ストロベリーフレーバー、ミントフレーバー、オレンジフレーバー、バニリン等)等が挙げられ、必要に応じて2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
該マスキング剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。
該可溶化剤としては、例えば、各種水性溶媒(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、各種包接化剤(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン等)、各種界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール等)等が挙げられ、必要に応じて2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
該可溶化剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明の速崩壊性製剤においては、崩壊を妨げる成分(例えば、マスキング剤、結合剤、可溶化剤等)を顆粒中に内包させることにより崩壊性を向上させることができる。また、後述のように崩壊を妨げる成分を糖または糖アルコールにより被覆することで製剤中への水の浸入経路を確保することにより、速い崩壊性が達成できる。
【0041】
本発明の速崩壊性製剤は、薬剤を含有する顆粒上に形成された被覆層に糖または糖アルコールを含有する。
該糖または糖アルコールとしては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール(例、D−マンニトール)、ソルビトール(例、D−ソルビトール)、エリスリトール(例、D−エリスリトール)、ショ糖等が挙げられ、D−マンニトールが好ましい。
薬剤を含有する顆粒を糖または糖アルコールにより被覆することで製剤中への水の浸入経路を確保することにより、速い崩壊性が達成できる。また、製剤からの薬剤の溶出性を改善できる。
該被覆層に含有される糖の含有量は、製剤全重量に対して、通常5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。
該被覆層に含有される糖アルコールの含有量は、製剤全重量に対して、通常5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。
該被覆層に含有される糖および糖アルコールの含有量の総量としては、製剤全重量に対して、通常5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。
【0042】
本発明の速崩壊性製剤においては、該被覆層に、必要に応じて、さらに添加剤を含有していてもよい。
該被覆層中に含有していてもよい添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤等が挙げられ、必要に応じて、組み合わせて用いてもよい。
該賦形剤としては、例えば、コーンスターチ等のデンプン類;無水リン酸カルシウム、結晶セルロース、微結晶セルロース、カンゾウ末、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられ、コーンスターチ、結晶セルロースが好ましい。
該崩壊剤としては、例えば、アミノ酸、デンプン、コーンスターチ、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられ、クロスポビドン、カルメロースが好ましい。
【0043】
本発明の速崩壊性製剤において、「糖または糖アルコールを含有する被覆層により被覆された薬剤を含有する顆粒」の平均粒子径は、通常50μm〜500μm、好ましくは50μm〜355μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。
本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置、SYMPATEC社:HELOS&RODOSなどにより測定した値とする。
【0044】
本発明の速崩壊性製剤において、顆粒外成分として含有する崩壊剤としては、例えば、アミノ酸、デンプン、コーンスターチ、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられ、クロスポビドン、カルメロースが好ましい。
該崩壊剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。
【0045】
本発明の速崩壊性製剤において、顆粒外成分として含有してもよい滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク(精製タルク)、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、フマル酸ステアリルナトリウムが好ましい。
該滑沢剤の含有量は、製剤全重量に対して、通常0.5〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%、さらに好ましくは0.5〜1重量%である。
【0046】
本発明の速崩壊性製剤において、顆粒外成分として、必要に応じて、さらに添加剤を含有していてもよい。
該添加剤としては、例えば、上記で説明されたマスキング剤、可溶化剤等が挙げられ、必要に応じて、組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明の速崩壊性製剤は、薬剤の経口投与を目的としたいわゆる「口腔内崩壊製剤」として有用であるのみならず、口腔内粘膜吸収用の製剤(特に、舌下製剤、バッカル製剤)として好適である。
本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、口腔内粘膜から吸収させることで、即効性が期待できる。
【0048】
本発明の速崩壊性製剤の剤形は、特に限定されないが、錠剤が好ましい。
【0049】
本発明の速崩壊性製剤が錠剤である場合、製剤の重量は、20〜200mg程度が好ましい。
【0050】
本発明の速崩壊性製剤が錠剤である場合、絶対硬度は、通常1.0N/mm以上、好ましくは1.5N/mm以上、さらに好ましくは2.0N/mm以上である。本発明の速崩壊性製剤が錠剤である場合、絶対硬度は、通常5.0N/mm以下である。
【0051】
本発明の速崩壊性製剤が錠剤である場合、崩壊時間は、通常30秒以下、好ましくは15秒以下、さらに好ましくは10秒以下である。本発明の速崩壊性製剤が錠剤である場合、崩壊時間は、通常1秒以上である。
【0052】
本発明の速崩壊性製剤においては、前述の通り、崩壊を妨げる成分を顆粒中に内包させることにより崩壊性を向上させることができ、また、崩壊を妨げる成分を糖または糖アルコールにより被覆することで製剤中への水の浸入経路を確保することにより、速い崩壊性が達成できる。従って、本発明の速崩壊性製剤においては、上記のような高い絶対硬度に成形した場合でも、良好な崩壊性を有する。このように、本発明の速崩壊性製剤によれば、良好な崩壊性と良好な製剤硬度の両方を達成できる。
本発明の速崩壊性製剤において、好ましくは、崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上である。
【0053】
本発明の速崩壊性製剤は、製剤技術分野で慣用の方法で製造することができる。例えば、以下に示す本発明の速崩壊性製剤の製造方法により好適に製造することができる。
本発明の速崩壊性製剤の製造方法は、
工程(1):薬剤を含有する顆粒を製造する工程、
工程(2):得られた顆粒上に、糖または糖アルコールを含有する被覆層を形成する工程、
工程(3):当該被覆された顆粒を、崩壊剤と混合した後、成形する工程
を含む。
【0054】
工程(1)〜(3)において、必要に応じて、さらに添加剤を添加してもよい。工程(1)〜(3)で用いられる「薬剤」、「糖」、「糖アルコール」、「崩壊剤」、「添加剤」の種類、量としては、上記速崩壊性製剤について例示した種類、量が挙げられる。工程(2)によって得られる被覆された顆粒の粒子径は、上記速崩壊性製剤の「糖または糖アルコールを含有する被覆層により被覆された薬剤を含有する顆粒」の粒子径について例示した範囲が挙げられる。
工程(1)の顆粒の製造と工程(2)の被覆層の形成とを同時に行うこともできる。
【0055】
例えば、具体的に以下のように製造することができる。
糖または糖アルコール(例えば、D−マンニトール等)を適当な溶媒(例えば、水等)に溶解してコーティング液を得る。
薬剤(例えば、化合物A等)および任意の添加剤(例えば、D−マンニトール、結晶セルロース等の賦形剤、部分アルファー化デンプン等の結合剤等)を混合し、混合物を得る
。得られた混合物に、該コーティング液を噴霧しながら、造粒し、乾燥して造粒末(被覆された顆粒)を得る。得られた造粒末(被覆された顆粒)は、必要に応じて整粒してもよい。
得られた被覆された顆粒、崩壊剤(例えば、クロスポビドン等)および任意の添加剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム等の滑沢剤等)を混合し、混合末を得る。得られた混合末を圧縮成形し、錠剤を得る。
【0056】
ここで、混合(造粒、乾燥、整粒等を含む)は、例えば、V型混合機、タンブラー混合機(TM−30、TM−15S;昭和化学機械工作所:TM20−0−0;末広化工機株)、高速攪拌造粒機(FM−VG−10;パウレック社)、万能練合機(畑鉄工所)、流動層造粒乾燥機(LAB−1、FD−3S、FD−3SN、FD−5S;パウレック社)、箱形真空乾燥機(楠木機械)、パワーミル粉砕機(P−3;昭和化学機械工作所)、遠心転動造粒機(CF−mini、CF−260、CF−360;フロイント産業株式会社)、乾式造粒機、噴霧乾燥造粒機、転動造粒装置(MP−10;パウレック社)などの製剤機械を用いて行われる。
被覆は、例えば、遠心転動造粒機(CF−mini、CF−260、CF−360;フロイント産業株式会社)、転動造粒装置(MP−10;パウレック社)、一般的な流動層コーティング装置、ワースタータイプのコーティング装置などの製剤機械を用いて行われる。
圧縮成形は、例えば、単発錠剤機(菊水製作所)、ロータリー式打錠機(アクエリアス36K、アクエリアス2L;菊水製作所)、オートグラフ(AG−5000B、島津製作所)などを用い、通常1〜30kNの圧力で打錠することにより行われる。
【0057】
製剤:化合物Aの口腔内粘膜吸収用の製剤
本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、経口投与時に初回通過代謝効果を大きく受ける薬剤(例えば、化合物A等)を使用する場合に、特に効果を発揮する。本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、そのような薬剤の血中濃度の向上により、生物学的利用能を向上させることができる。また、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、そのような薬剤の吸収のばらつきを抑制することができ、延いては医薬としての有効性のばらつきを制御することができる。さらに、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、双極性障害の治療に使用された場合の副作用(例えば日中の残遺眠気(residual daytime sleepiness)および/または倦怠感(fatigue)など)の低減が見込まれる、薬剤の低用量化を達成でき、また、薬剤の生物学的利用能の向上により、製剤の小型化を達成できる。
本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、特に、薬剤として化合物Aを使用する場合、血中移行後の薬剤の未変化体の代謝物に対する比率が、経口投与したときの比率より大きくなるという効果を有する。また、本発明の口腔内粘膜吸収用の速崩壊性製剤は、経口投与に比較して、化合物Aの生物学的利用能を約10倍以上に改善する。
【0058】
i.製剤(A)
即ち、本発明は、薬剤として化合物Aを含有し;血中移行後の薬剤の未変化体と代謝物(特にM−II)の比率が、経口投与したときの比率より大きくなることを特長とする、口腔内粘膜吸収用の、製剤(製剤[9]〜[11]、[17]および[18])(以下、本発明の製剤(A)と略称する場合がある。)にも関する。
製剤(A)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であることが好ましい。製剤(A)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上であることがさらに好ましい。
なお、前述した製剤[5]から[7]も、当該「製剤(A)」に包含されるものである。
【0059】
ii.製剤(B)および生物学的利用能
本発明は、化合物Aを含有し、経口投与に比較して、化合物Aの生物学的利用能が約10倍以上に改善されている、口腔内粘膜吸収用の、製剤(製剤[12]から[18])(以下、本発明の製剤(B)と略称する場合がある。)にも関する。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。生物学的利用能は、通常約30倍以下、より詳細には、約25倍以下の範囲内になる。言い換えれば、生物学的利用能が約10倍以上から約30倍以下の範囲で、より詳細には、約10倍以上から25倍以下の範囲で、改善する。
製剤(B)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であることが好ましい。製剤(B)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上であることがさらに好ましい。
前述した製剤[5]から[7]も、当該「製剤(B)」に包含されるものである。
【0060】
ここで、「経口投与に比較して、化合物Aの生物学的利用能が約10倍以上に改善されている」か否かは、以下のとおり評価される。
静脈、経口、口腔内粘膜に各製剤を投与し、各経時時間後の血漿中濃度を測定し、この技術分野で公知の方法により血漿中濃度下面積(AUC)を計算する。AUC値は2種類あり、1つはAUC(0−tlqc)、1つはAUC(0−inf)である。AUC(0−tlqc)は、線形台形公式を用いて算出される、0時間から濃度定量可能最終時点(tlqc)までの血清中濃度下面積である。AUC(0−inf)は0時間から無限大までの血清中濃度下面積であり、AUC(0−inf)=AUC(0−tlqc)+lqc/λz(式中、tlqcは濃度定量可能最終時点、lqcは定量可能最終濃度、およびλzは自然対数濃度−時間曲線の終末相の対数線形回帰の負の傾きにより算出された、最終相の消失速度定数である。)により算出される。両方のAUC値が生物学的利用能の改善の評価のために使用できるが、原則としては、その評価はAUC(0−inf)に基づいてされる。
(a)生物学的利用能比率の算出方法A
生物学的利用能(BA)を、次式により算出する(絶対生物学的利用能)。

BA(%)=((経口もしくは口腔内粘膜投与AUC/経口もしくは口腔内粘膜投与の投与量)/(静脈投与AUC/静脈投与の投与量))×100

算出された口腔内粘膜投与のBAの、算出された経口投与のBAに対する比率(即ち、口腔内粘膜投与のBA/経口投与のBA)を算出する。この比率は「BA比率」(方法A)とする。
このとき、「経口投与のBAに対する口腔内粘膜投与のBAの比率」(絶対BA比率)が10以上の場合に、製剤は「経口投与に比較して、化合物Aの生物学的利用能が約10倍以上に改善されている」と評価される。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例3を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例3の方法には限定されない。
【0061】
(b)生物学的利用能比率の算出方法B
生物学的利用能比率、すなわちここでいう「経口投与のBAに対する口腔内粘膜投与のBAの比率」の他の評価方法として、次式により算出できる(方法B;相対BA比率)。

相対BA比率=A/B x 100
(式中、「A」は、ヒト対象に対して投与された口腔内粘膜製剤における、口腔内粘膜投与AUC/化合物Aの投与量を意味し;および「B」は、ヒト対象に対して投与された経口製剤における、経口投与AUC/化合物Aの投与量を意味する)

試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。該試験例は、経口投与に比較して口腔内粘膜投与の生物学的利用能が大きくなることを示す。
このとき、「経口投与のBAに対する口腔内粘膜投与のBAの比率」(相対BA比率)が10以上の場合に、製剤は「経口投与に比較して、化合物Aの生物学的利用能が約10倍以上に改善されている」と評価される。
【0062】
iii.製剤Cおよび薬剤の代謝物に対する薬剤の未変化体の比率
本発明は、化合物Aを含有し、血中移行後の薬剤の未変化体と代謝物の比率が、経口投与したときの比率より大きくなる、口腔内粘膜吸収用の製剤(製剤[9]から[11])(以下、本発明の製剤(C)と略称する場合がある。)にも関する。
「比率より大きくなる」とは、具体的には、約5倍以上、好ましくは、約10倍以上となることを意味する。なお、通常約30倍以下、より詳細には、約20倍以下の範囲内になる。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。
【0063】
製剤(C)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であることが好ましい。製剤(C)で剤形が錠剤である場合において、崩壊時間が30秒以下であり、かつ、絶対硬度が1.0N/mm以上であることがさらに好ましい。
なお、前述した製剤[5]から[7]も、当該「製剤(C)」に包含されるものである。
ここで、「血中移行後の薬剤の未変化体と代謝物の比率が、経口投与したときの比率より大きい」か否かは、以下のとおり評価される。
経口、口腔内粘膜に各製剤を投与し、各経時時間後の未変化体並びに代謝物双方の血漿中濃度を測定し、この技術分野で公知の方法により双方の血漿中濃度下面積(AUC)を計算する。AUC値は2種類あり、1つはAUC(0−tlqc)、1つはAUC(0−inf)である。AUC(0−tlqc)は、線形台形公式を用いて算出される、0時間から濃度定量可能最終時点(tlqc)までの血清中濃度下面積である。AUC(0−inf)は0時間から無限大までの血清中濃度下面積であり、AUC(0−inf)=AUC(0−tlqc)+lqc/λz(式中、tlqcは濃度定量可能最終時点、lqcは定量可能最終濃度、およびλzは自然対数濃度−時間曲線の終末相の対数線形回帰の負の傾きにより算出された、最終相の消失速度定数である。)により算出される。両方のAUC値が生物学的利用能の改善の評価のために使用できるが、原則としては、その評価はAUC(0−inf)に基づいてされる。
各製剤での未変化体と代謝物の比率(即ち、未変化体のAUC/代謝物のAUC)を算出する。
このとき、経口投与時の比率よりも口腔内粘膜投与時の比率が大きい場合に、「血中移行後の薬剤の未変化体と代謝物の比率が、経口投与したときの比率より大きい」と評価される。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。当該技術分野の当業者は、口腔内粘膜投与による代謝物(特に、多く存在する化合物Aの代謝物の中から特定の代謝物M−II)のレベルがこの試験に示されるように低くなることを予期することはできないだろう。
【0064】
製剤(A)、製剤(B)および製剤(C)の剤形は、口腔内粘膜から投与することが可能な剤形であれば特に限定されないが、例えば、錠剤(例、舌下錠、バッカル錠)、フィルム、トローチ、溶液、懸濁液、凍結乾燥製剤、チューインガム、スプレー剤等が挙げられ、中でも錠剤が好ましい。
製剤(A)、製剤(B)および製剤(C)で用いられる「化合物A」、「マスキング剤」、「糖」、「糖アルコール」、「崩壊剤」の種類、量としては、上記速崩壊性製剤について例示した種類、量が挙げられる。
【0065】
本明細書において、絶対硬度とは、単位面積当たりの硬度であり、次の式により定義される。
絶対硬度(N/mm)=硬度(N)/(厚み(mm)×直径(mm))
本発明において、錠剤硬度は、錠剤破壊強度測定機(TH−303MP、富山産業株式会社)を用いて測定することができる。
【0066】
本明細書において、崩壊時間とは、口腔内速崩壊錠用の崩壊試験機(ODT−101、富山産業株式会社)を用いて測定した値である。
【0067】
製剤:化合物Aの口腔内粘膜吸収用の製剤(2)
iv.製剤D
本発明は、口腔内粘膜吸収用の製剤にも関する(製剤[37]から[59])(以下、本発明の製剤(D)と略称する場合がある)。
製剤(D)について、原則として、各製剤[37]から[59]で特定した用語の定義およびその具体例は、上記製剤(A)〜(C)について例示したものが参照できる。
【0068】
製剤[37]から[39]に関して、「(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC比率」は、式:
「(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC/(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC]
により算出された値を意味する。
ここで、用語「AUC」およびその計算方法は上記製剤(A)〜(C)について例示したものが参照できる。
該AUC比率は、経口投与したときの約5倍以上、好ましくは、経口投与したときの約10倍以上である。一般には、該AUC比率は、経口投与したときの約30倍以下、より詳細には、経口投与したときの約25倍以下である。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。
【0069】
製剤[40]および[41]に関して、(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体に対する(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC比率は、式:
「(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの代謝物(M−II)のAUC/(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの未変化体のAUC」
により算出された値を意味する。
ここで、用語「AUC」およびその計算方法は上記製剤(A)〜(C)について例示したものが参照できる。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。
該AUC比率は、約25以下、好ましくは、約10以下、およびより好ましくは、約5以下である。一般に、該AUC比率は、約1以上である。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。
【0070】
製剤[42]に関して、「(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの生物学的利用能」は、前に製剤(B)について説明した算出方法(方法B)に従って算出できる。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。
該生物学的利用能は、経口投与に比較して、約10倍以上に改善されている。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。一般に、該生物学的利用能は、経口投与したときの生物学的利用能の、約10倍以上から約30倍以下の範囲、より詳細には、約10倍以上から約25倍以下の範囲で改善する。
【0071】
製剤[43]および[44]に関して、「ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドの血漿中濃度のTmax値」の用語中、TmaxはCmaxに到達する時間を意味し、Cmaxは製剤をヒトに対して投与した後の観測された最高血清濃度を意味する。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。
該平均Tmax値は、約0.4時間以下、好ましくは、約0.3時間以下、およびより好ましくは、約0.25時間以下である。
【0072】
製剤[45]および[46]に関して、用語「ヒトに対する投与後の(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミド(未変化体)のCmaxおよびAUCを含む薬物動態パラメータの個々のばらつき」は、式:
標準偏差/各対象薬物動態パラメータの平均値 x 100
により算出される、用語「変動係数(%)」で表わされる。
試験に供される具体的な製剤や試験方法については、後述の試験例4を参照すればよい。但し、実質的に同様の評価が可能であれば、試験例4の方法には限定されない。
個々のばらつきは、約45%以下、より好ましくは、約35%以下、および最も好ましくは、約30%以下である。ここで、「約」は、5%の誤差範囲を意味する。
【0073】
剤型
製剤(A)〜(D)は、例えば、「本発明の速崩壊性製剤」について説明された製造法に準じて製造することができる。特に、製剤(A)〜(D)の剤形が錠剤である場合に、該製造法が好ましい。なお、その他の口腔内崩壊性製剤の技術を適用することも可能である。
製剤(A)〜(D)で剤形がフィルムである場合、以下のような慣用の方法に従って製造すれば良い。例えば、薬剤、フィルム担体、および必要に応じて使用される他のフィルム担体等を含有する塗工液(溶液または懸濁液、溶媒は、例えば精製水)を保持基材面に塗布または噴霧した後、これを乾燥させて製造することができる(特許第3460538号公報)。
製剤(A)〜(D)で剤形が凍結乾燥製剤である場合、以下のような慣用の方法に従って製造すれば良い。例えば、薬剤、ポリマー、糖類等を配合し、溶解後凍結乾燥することにより製造することができる(Manufacturing Chemist(マニュファクチュアリングケミスト), Feb. 36 (1990))。
製剤(A)〜(D)で剤形がチューインガムである場合、以下のような慣用の方法に従って製造すれば良い。例えば、ガムベース用樹脂を主成分とし、ワックス、乳化剤、充填剤からなるガムベースに、薬剤、甘味料、香料、着色料、軟化剤、矯味物質等の添加剤を加え、ニーダーを用いて均一に混練した後、板状、ブロック状などの加工を施して製造することができる(特開2009−136240号公報)。
製剤(A)〜(D)で剤形がトローチである場合、錠剤の通常製法に従って製造すれば良い。
製剤(A)〜(D)で剤形が溶液もしくは懸濁液である場合、液剤の通常製法に従って製造すれば良い。
製剤(A)〜(D)で剤形がスプレー剤である場合、スプレー剤の通常製法に従って製造すれば良い。
【0074】
本発明の製剤は、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル)、特にヒトに対し、安全に投与することができる。
【0075】
本発明の製剤の投与量は、投与対象、投与経路、疾患等によっても異なる。例えば、成人に対し、薬剤として化合物Aを含む口腔内粘膜吸収用製剤として投与する場合、化合物Aの投与量が、約0.0002〜約0.02mg/kg体重、好ましくは約0.0002〜約0.01mg/kg体重、さらに好ましくは約0.0002〜約0.005mg/kg体重、最も好ましくは約0.0002〜約0.004mg/kg体重であって、1日1ないし数回に分けて投与することができる。好ましくは、1日1回である。言い換えれば、後述するように、化合物Aの投与量が1日0.05〜1.5mg(好ましくは、0.05〜1.0mg、より好ましくは、0.1〜1.0mg、さらにより好ましくは、0.1〜0.8mgおよび最も好ましくは、0.1mg、0.4mgおよび0.8mg)であって、1日1回投与することができる。
【0076】
化合物Aの溶解度は、pHに関わりなく、約0.2mg/mlである。この化合物は口腔内粘膜に吸収されるために、化合物は最初に唾液に溶解されなければならない。口腔中の唾液の量が約1mlであることを考慮した場合、本発明がもたらす化合物Aの量の削減は実用的観点から非常に有利である。
【0077】
本発明の製剤によれば、前述のように、その有効性を維持しながら、化合物Aの投与量を削減することができる。それゆえ、必要な場合は、製剤の大きさを小さくすることができる。この特徴は本発明の有利な点の1つでもある。
【0078】
化合物Aの使用方法:双極性障害の予防および/または治療
双極性障害の患者においては、メラトニン分泌が減少し、サーカディアンリズムに障害が生じていることが知られている。Neuroscience Letters, 475: 169-173 (2010); Journal of Psychiatric Research, 44:69-74 (2010)。
化合物Aが、ヒトに対して口腔内粘膜投与される場合、驚くべきことに化合物Aの薬物動態(作用の早い発現および消失)は内因性メラトニンとほとんど同じであることが観察され、その特徴的な薬物動態プロファイルにより、化合物Aは、既存の双極性障害用の薬物よりも、双極性障害患者において乱されていると考えられているサーカディアンリズムをよりよく調整することができる。このように、口腔内粘膜投与の場合、化合物Aは、双極性障害に対して既存の薬物よりも優れた効果を示すことが期待される。また、このサーカディアンリズム調整効果は、双極性障害患者におけるサーカディアンリズムおよび/または睡眠/覚醒周期をよりよく正常化することにつなげることもできる。
前述のように、本発明は、化合物Aについて口腔内粘膜からの優れた吸収、およびその生物学的利用能の向上、および特徴的な薬物動態プロファイルを示す製剤を提供する。例えば、化合物Aが口腔内粘膜に投与される場合、異なる個体間のCmaxおよびAUCのばらつきが化合物Aが経口投与される場合よりも少ない。
例えば、表4において、舌下投与についての未変化の化合物AのCmaxおよび活性代謝物M−IIのCmaxはそれぞれ4.74+1.52および4.18±1.26であり、未変化体/代謝物の比率は1.13である。一方、経口投与についての対応する未変化体/代謝物のCmaxおよび比率は、4.76±5.19、68.1±23.2および0.07である。舌下および経口投与についての関連AUC(0−inf)未変化体/代謝物の比率はそれぞれ0.30および0.03である。従って、表4は、代謝物に対する未変化の化合物Aの比率が、経口投与よりも舌下投与で高くなることを示す。従って、舌下またはバッカル投与は、初回通過代謝を回避し、および、その結果、化合物Aの代謝において患者間で存在するばらつきを減少すると考えられる。従って、より有効な双極性障害の予防および/または治療方法、およびより有効な双極性障害の予防および/または治療薬が提供されることとなる。
即ち、化合物Aを双極性障害を罹患している患者に口腔内粘膜投与することにより、双極性障害を予防および/または治療することが可能となる。具体的には、本発明の製剤(製剤(A)から(D))の形態において、化合物Aを適宜ヒトに投与することにより当該予防および/または治療を行うことができる。例えば、方法[59]〜[71]で言及したいろいろな種類のPKプロファイルは、化合物Aをヒトに対して製剤[37]〜[58]の形態で投与することにより達成することができる。
ここで、化合物Aの投与経路としては、舌下投与またはバッカル投与が好ましく、舌下投与が特に好ましいものである。
舌下およびバッカル投与は、早い治療効果の発現および早い消失をもたらすことについて有利である。これは、発現および消失が消化管通過時間のために遅い経口投与とは反対である。経口投与と比較した場合、舌下およびバッカル投与では、化合物Aに対する代謝物M−IIの比率が低くなる。早い消失を実現することにより、双極性障害を罹患している患者は、代謝物の存在に関連する遅延性眠気(prolonged sleepiness)を経験することなしに、化合物Aの効果の利益を得る。
舌下およびバッカル投与の早い発現/早い消失の特性は内因性メラトニンの効果と類似すると考えられる。一実施態様では、該製剤は、一定期間、一定の治療レベル以上の血中濃度を達成することにより治療効果を提供する。持続時間および血中濃度は双極性障害に罹患していない健常人の内因性メラトニンレベルに合わせることが望ましい。
化合物Aの投与量は、前述の範囲のものが挙げられるが、例えば、舌下錠またはバッカル錠として投与する場合には、1錠あたり0.05〜1.5mg(好ましくは、0.05〜1.0mg、より好ましくは、0.1〜1.0mg、さらにより好ましくは、0.1〜0.8mgおよび最も好ましくは、0.1mg、0.4mgおよび0.8mg)の化合物Aを含有する錠剤を(好ましくは1日1回)患者に対して投与することが好ましい。
対象疾患としては、本発明は、I型双極性障害、II型双極性障害(軽躁病エピソードを伴う反復性大うつ病エピソード(recurrent major depressive episodes with hypomanic episodes))(296.89)、および特定不能の双極性障害(296.80)を含む双極性障害に有効である。上記リストした疾患の後の括弧内の数字は、米国精神医学会により公表された精神疾患の診断・統計マニュアル、第4版(DSM−IV)および/または国際疾病分類、第10版(ICD−10)の分類コードを参照する。しかし、本発明はこの分類コード方式で記載したそれらと関連するまたは類似する疾患の治療に用いられることを意図し、もちろんそれらの疾患についてより多くのことが解明されるに従って変化してもよいことを理解すべきである。本発明は、I型双極性障害の治療に特に有効である。特に、「双極性障害に伴う、うつ症状(特に、急性うつ症状)の治療」、並びに「双極性障害の緩解期の維持」に有効である。
「化合物Aの口腔内粘膜投与による双極性障害の予防および/または治療」を行うに際しては、他の双極性障害の予防および/または治療のための薬剤と併用してもよい。該「化合物A」との併用において使用される他の双極性障害の予防および/または治療のための薬剤(以下、「併用薬剤」という。)としては、気分安定薬(例えば、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン、等)、抗精神病薬(例えば、クエチアピン、オランザピン、等)、これらから選択される1または2以上の薬剤の組合せが含まれる。これらに加えて、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)(例えば、フルボキサミン、パロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、シタロプラム、等)の1または2種以上を、「化合物A」および前述の「併用薬剤」と組み合せて投与することもできる。
「併用薬剤」の投与形態は、特に限定されず、投与時に、「化合物A」と「併用薬剤」が組み合わされていればよい。そのような投与形態の例には、以下が含まれる。:
(1)「化合物A」と「併用薬剤」とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、
(2)「化合物A」と「併用薬剤」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、
(3)「化合物A」と「併用薬剤」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、
(4)「化合物A」と「併用薬剤」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、
(5)「化合物A」と「併用薬剤」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、「化合物A」→「併用薬剤」の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)などが挙げられる。
「併用薬剤」の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として決定することができ、また、投与対象、投与ルート、疾患の重症度、組み合わせなどにより適宜選択することができる。
該「併用薬剤」は、臨床上用いられているのと同じ投与形態で、またはこの併用治療のために適した異なる投与形態で投与することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、製剤添加剤(例、D-マンニトール、結晶セルロース、など)としては、日本薬局方(第15改正)あるいは医薬品添加物規格2003適合品を用いた。
【0080】
実施例1
(1)精製水2550gにD−マンニトール(PEARLITOL50C、ロケット社)450.0gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 150.5g、D−マンニトール3068g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)112.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)450.0gを均一に混合した後、コーティング液3000gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部をパワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して、整粒末を得た。
(2)得られた整粒末1692gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)90gおよびフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV、JRS PHARMA)18gを加え、タンブラー混合機(TM−30、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(アクア08242L2JI、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、錠剤を得た。
【0081】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
D−マンニトール(顆粒中) 20.45 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
計 30 mg
【0082】
比較例1
精製水35g中にポリエチレングリコール400(PEG400)(和光純薬工業株式会社)を15g溶解させることでPEG400溶液を調製した。PEG400溶液50mlに化合物A 12.5mgを添加し、攪拌および超音波照射した後、水系フィルター(0.45μm)でろ過した。得られた化合物A溶液を1mlずつ小分けした。
【0083】
製剤(1mlあたり)の組成
化合物A 0.25 mg
PEG400 300.0 mg
精製水 700.0 mg
計 1000.25 mg
【0084】
比較例2
(1)精製水627gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達株式会社)40gを溶解して結合液を調製した。流動層造粒乾燥機(MP−01、株式会社パウレック)中で、化合物A 2.5g、乳糖(DMV株式会社)1053.5g、およびコーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社)160gを均一に混合した後、結合液667gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒物を16メッシュ(目開き1.0mm)の篩で篩過し整粒末を得た。
(2)得られた整粒末628gにコーンスターチ17gおよびステアリン酸マグネシウム5gを加え、袋混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(小型打錠機、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:7kN、1錠あたりの重量:130mg)し、錠剤(素錠)を得た。
(4)精製水198gにヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R)22.44gとコポビドン(Copovidone)4.5gを溶解、分散して、分散液Iを得た。精製水450gに酸化チタン25gおよび黄色三二酸化鉄0.5gを分散して、分散液IIを調製した。分散液Iに分散液IIを加え、撹拌混合し、コーティング液を得た。コーティング機(ハイコーターHC−LAB0、フロイント産業株式会社)を用いて、(3)で得た素錠に該素錠の重量が1錠あたり5mg増加するまでコーティング液を噴霧することにより、下記組成のフィルム錠を得た。
【0085】
製剤(135mgあたり)の組成
化合物A 0.25 mg
乳糖 105.35 mg
コーンスターチ 19.4 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4.0 mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.74 mg
コポビドン 0.75 mg
酸化チタン 0.5 mg
黄色三二酸化鉄 0.01 mg
計 135 mg
【0086】
実施例2
(1)精製水680gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)120gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(MP−01、株式会社パウレック)中で、化合物A 10g、D−マンニトール848g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)30g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)120gを均一に混合した後、コーティング液800gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒物を16メッシュ(目開き1.0mm)の篩で篩過し整粒末を得た。
(2)得られた整粒末28.2gとクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)1.5gおよびフマル酸ステアリルナトリウム0.3gをガラス瓶中で混合した。得られた混合物をオートグラフ(島津製作所製、AG−5000B)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:3KN/杵、錠剤1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0087】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 0.25 mg
D−マンニトール(顆粒中) 21.2 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
計 30 mg
【0088】
比較例3
精製水110g中にPEG400(和光純薬工業株式会社)を60g溶解させることでPEG400溶液を調製した。PEG400溶液100mlに化合物A 100.0mgを添加し、攪拌および超音波照射した後、水系フィルター(0.45μm)でろ過した。得られた化合物A溶液を1mlずつ小分けした。
【0089】
製剤(1mlあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
PEG400 352.9 mg
精製水 647.1 mg
計 1001 mg
【0090】
比較例4
(1)精製水10230gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達株式会社)660gを溶解して結合液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−S2、株式会社パウレック)中で、化合物A 165.3g、乳糖(DMV株式会社)17260g、およびコーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社)2640gを均一に混合した後、結合液10890gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。本造粒工程を2回行った。得られた造粒末の一部をパワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して、整粒末を得た。
(2)得られた整粒末37430gにコーンスターチ1013gおよびステアリン酸マグネシウム298gを加え、タンブラー混合機(TM20−0−0、末広化工機株)で混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス36K、菊水製作所)で7mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:7kN、1錠あたりの重量:130mg)し、錠剤(素錠)を得た。
(4)精製水16150gにヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業株式会社)1548gとコポビドン(Copovidone)310.5gを溶解、分散して、分散液Iを得た。精製水1822gに酸化チタン207gおよび黄色三二酸化鉄4.14gを分散して、分散液IIを調製した。分散液Iに分散液IIを加え、撹拌混合し、コーティング液を得た。コーティング機(ハイコーターHCF−100N、フロイント産業株式会社)を用いて、(3)で得た素錠に該素錠の重量が1錠あたり5mg増加するまでコーティング液を噴霧することにより、下記組成のフィルム錠を得た。
【0091】
製剤(135mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
乳糖 104.6 mg
コーンスターチ 19.4 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4.0 mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.74 mg
コポビドン 0.75 mg
酸化チタン 0.5 mg
黄色三二酸化鉄 0.01 mg
計 135 mg
【0092】
実施例3
(1)精製水680gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)120gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(MP−01、株式会社パウレック)中で、化合物A 40g、D−マンニトール818g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成)30g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成)120gを均一に混合した後、コーティング液800gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒物を16メッシュ(目開き1.0mm)の篩で篩過し整粒末を得た。
(2)得られた整粒末28.2gとクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)1.5gおよびフマル酸ステアリルナトリウム0.3gをガラス瓶中で混合した。得られた混合物をオートグラフ(島津製作所製、AG−5000B)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:3KN/杵、錠剤1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0093】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
D−マンニトール(顆粒中) 20.45 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
計 30 mg
【0094】
実施例4
5gの化合物A、および20gのCMECをアセトン:エタノール=3:2混液500mlに溶解後、スプレードライヤー(Pulvis Mini Spray、ヤマト科学株式会社)により噴霧乾燥して調製した。得られた固体分散体末は40℃で16時間真空乾燥した。固体分散末0.5gにD−マンニトール(PEARITOL100SD、ロケット社)を11.5g添加し瓶混合した。得られた混合末を120mgずつ小分けした。
【0095】
製剤(120mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
CMEC 4.0 mg
D−マンニトール 115.0 mg
計 120 mg
【0096】
実施例5
精製水422.5gにヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(以下、HP−β−CyDともいう。)(KLEPTOSE HPB、ロケット社)を75g溶解させる。得られたHP−β−CyD水溶液に、化合物A 2.5gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(MP−01、株式会社パウレック)中で、D−マンニトール(PEARLITOL50C、ロケット社)200g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成)7.5gを均一に混合した後、コーティング液500gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒物を16メッシュ(目開き1.0mm)の篩で篩過し整粒末を得た。得られた整粒末を114mgずつ小分けした。
【0097】
製剤(114mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
HP−β−CyD 30.0 mg
D−マンニトール 80.0 mg
結晶セルロース 3.0 mg
計 114 mg
【0098】
実施例6
(1)精製水2550gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)450gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 37.6g、D−マンニトール3180g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)112.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)450gを均一に混合した後、コーティング液3000gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部をパワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して、整粒末を得た。
(2)得られた整粒末1692gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)90gおよびフマル酸ステアリルナトリウム18gを加え、タンブラー混合機(TM−15S、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス2L、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0099】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 0.25 mg
D−マンニトール(顆粒中) 21.2 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
計 30 mg
【0100】
実施例7
(1)精製水2550gにD−マンニトール(PEARLITOL50C、ロケット社)450gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 150.5g、D−マンニトール3068g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)112.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)450gを均一に混合した後、コーティング液3000gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部をパワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して、整粒末を得た。
(2)得られた整粒末1692gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)90gおよびフマル酸ステアリルナトリウム18gを加え、タンブラー混合機(TM−15S、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス2L、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0101】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 1.0 mg
D−マンニトール(顆粒中) 20.45 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
計 30 mg
【0102】
比較例5
(1)精製水10230gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達株式会社)660gを溶解して結合液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−S2、株式会社パウレック)中で、化合物A 1320g、乳糖(DMV株式会社)16104g、およびコーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社)2640gを均一に混合した後、結合液10890gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。本造粒工程を2回行った。得られた造粒末の一部をパワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して、整粒末を得た。
(2)得られた整粒末37430gにコーンスターチ1013gおよびステアリン酸マグネシウム298gを加え、タンブラー混合機(TM20−0−0、末広化工機株)で混合することにより、混合末を得た。
(3)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス36K、菊水製作所)で7mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:7kN、1錠あたりの重量:130mg)し、錠剤(素錠)を得た。
(4)精製水16150gにヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業株式会社)1548gとコポビドン(Copovidone)310.5gを溶解、分散して、分散液Iを得た。精製水1822gに酸化チタン207gおよび黄色三二酸化鉄4.14gを分散して、分散液IIを調製した。分散液Iに分散液IIを加え、撹拌混合し、コーティング液を得た。コーティング機(ハイコーターHCF−100N、フロイント産業株式会社)を用いて、(3)で得た素錠に該素錠の重量が1錠あたり5mg増加するまでコーティング液を噴霧することにより、下記組成のフィルム錠を得た。
【0103】
製剤(135mgあたり)の組成
化合物A 8.0 mg
乳糖 97.6 mg
コーンスターチ 19.4 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4.0 mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.74 mg
コポビドン 0.75 mg
酸化チタン 0.5 mg
黄色三二酸化鉄 0.01 mg
計 135 mg
【0104】
実施例8
(1)精製水2890gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)510gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 17.05g、D−マンニトール3114g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)127.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)510gを均一に混合した後、コーティング液3400gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部を丸篩(メッシュサイズ1.0mmφ)を用いて篩過を行い、篩過末Aを得た。
(2)(1)と同じ工程を行い、篩過末Bを得た。
(3)得られた篩過末A3146.5g、篩過末B3146.5gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)375.0g、アスパルテーム750g、バニリン7.5gおよびフマル酸ステアリルナトリウム75gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(4)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス2L、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0105】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 0.1 mg
D−マンニトール(顆粒中) 18.32 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
アスパルテーム 3.0 mg
バニリン 0.03 mg
計 30 mg
【0106】
実施例9
(1)精製水2890gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)510gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 68.20g、D−マンニトール3063g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)127.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)510gを均一に混合した後、コーティング液3400gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部を丸篩(メッシュサイズ1.0mmφ)を用いて篩過を行い、篩過末Aを得た。
(2)(1)と同じ工程を行い、篩過末Bを得た。
(3)得られた篩過末A3146.5g、篩過末B3146.5gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)375.0g、アスパルテーム750g、バニリン7.5gおよびフマル酸ステアリルナトリウム75gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(4)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス2L、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0107】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 0.4 mg
D−マンニトール(顆粒中) 18.02 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
アスパルテーム 3.0 mg
バニリン 0.03 mg
計 30 mg
【0108】
実施例10
(1)精製水2890gにD−マンニトール(PEARITOL50C、ロケット社)510gを溶解してコーティング液を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、株式会社パウレック)中で、化合物A 136.4g、D−マンニトール2995g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成株式会社)127.5g、および部分アルファー化デンプン(PCS、旭化成株式会社)510gを均一に混合した後、コーティング液3400gを噴霧しながら、造粒し、ついで乾燥して、造粒末を得た。得られた造粒末の一部を丸篩(メッシュサイズ1.0mmφ)を用いて篩過を行い、篩過末Aを得た。
(2)(1)と同じ工程を行い、篩過末Bを得た。
(3)得られた篩過末A3146.5g、篩過末B3146.5gにクロスポビドン(Kollidon CL−F、BASF株式会社)375.0g、アスパルテーム750g、バニリン7.5gおよびフマル酸ステアリルナトリウム75gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合することにより、混合末を得た。
(4)混合末をロータリー式打錠機(アクエリアス2L、菊水製作所)で4mmφの杵を用いて打錠(打錠圧:4kN、1錠あたりの重量:30mg)し、下記組成の素錠を得た。
【0109】
製剤(30mgあたり)の組成
化合物A 0.8 mg
D−マンニトール(顆粒中) 17.62 mg
D−マンニトール(被覆層中) 3.0 mg
結晶セルロース 0.75 mg
部分アルファー化デンプン 3.0 mg
クロスポビドン 1.5 mg
フマル酸ステアリルナトリウム 0.3 mg
アスパルテーム 3.0 mg
バニリン 0.03 mg
計 30 mg
【0110】
試験例1
実施例1で得られた錠剤について、錠剤硬度および崩壊時間を測定した。錠剤硬度は、錠剤破壊強度測定機(TH−303MP、富山産業株式会社)を用いて測定した(n=10)。崩壊時間は、崩壊試験機(ODT−101、富山産業株式会社)を用いて測定した(n=6)。結果を表1に示す。
【0111】
崩壊試験機条件
回転数:50rpm
錘:15mmφ、10g
【0112】
【表1】
【0113】
試験例2
実施例1で得られた混合末について、溶出性を測定した。日局第2液500mLに、混合末を15g(化合物A 500mg相当)投入し、パドル法、回転数25rpm、37℃により評価した。試料投入後、経時的(0.25分、0.5分、0.75分、1分、5分、15分、30分)に溶出液をサンプリングし、水系フィルター(0.45μm)でろ過し、抽出液(水/アセトニトリル混液(1:1))で10倍希釈して溶解し、次の条件で高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)法にて定量し溶解度を算出した。結果を表2に示す。
【0114】
HPLC条件
検出器:紫外線吸光光度計、測定波長:240nm
カラム:YMC−Pack ODS−AM AM−307、5μm、内径:4.6mm、長さ:75mm
カラム温度:25℃
移動相:0.01mol/Lリン酸緩衝液/アセトニトリル混液(5:3)
流量:1.2mL/分
【0115】
【表2】
【0116】
試験例3
比較例1、3で得られた注射剤、比較例2、4で得られた経口錠、実施例2〜5で得られた口腔内粘膜吸収用製剤について、カニクイザルに絶食条件下で静注、経口、舌下およびバッカル投与後の血中動態を測定した。投与前、5分、10分、20分、30分、60分、120分、240分および360分後の血漿中濃度を測定し、台形公式により血漿中濃度下面積(AUC)を計算した。また、静注投与のAUCに対する経口、舌下およびバッカル投与のAUCの割合を計算することで生物学的利用能(BA)を算出した。結果を表3に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
試験例4
経口剤、口腔内粘膜吸収用製剤について、ヒトに経口および舌下投与後の未変化体および活性代謝物M−IIの血中動態を測定した。投与前、5分、10分、15分、20分、30分、45分、60分、90分、120分、180分、240分、360分、480分、600分、720分および1440分後の血漿中濃度を測定した。
結果を表4に示す。具体的には、この表中の記号/用語およびその定義は以下に説明した。実験は、非盲検条件でクロスオーバー法により行った。
AUC(0−tlqc):線形台形公式を用いて算出される、0時間から濃度定量可能最終時点(tlqc)までの血清中濃度下面積。
AUC(0−inf):AUC(0−inf)=AUC(0−tlqc)+lqc/λz(式中、tlqcは濃度定量可能最終時点、lqcは定量可能最終濃度)により算出された、0時間から無限大までの血清中濃度下面積。
λz:自然対数濃度−時間曲線の終末相の対数線形回帰の負の傾きにより算出された、最終相の消失速度定数。
Cmax:観測された最高血清濃度。
Tmax:Cmaxに到達する時間。
活性代謝物M−II:(2S)−2−ヒドロキシ−N−{2−[(8S)−1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル]エチル}プロパンアミド
【0119】
【表4】
【0120】
実施例11
99.5gの水に0.5gのメチルセルロース末を氷冷下で溶かし、得られた溶液10mL中に化合物A100mgを加えて攪拌し均一に分散させた。得られた懸濁液を、噴霧用デバイス(噴霧量:100μL/回)に充填し、口腔内スプレー製剤を得た。
【0121】
実施例12
60gの水に40gのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CyD)を溶かし、得られた溶液10mLに化合物A100mgを加えて攪拌溶解させた。得られた溶液を、噴霧用デバイス(噴霧量:100μL/回)に充填し、口腔内スプレー製剤を得た。
【0122】
実施例13
エタノール100mLに化合物A100mg、ポリビニルピロリドン1gおよびヒドロキシプロピルセルロース18gを加えて撹拌溶解させた。得られた溶液1mLを、プラスチックシート上に展延乾燥し、口腔内速溶性フィルム製剤を得た。
【0123】
実施例14
水とエタノールの混液(4:1)100mL中に、化合物A100mg、D−マンニトール5g、ヒドロキシプロピルセルロース100mgを加えて攪拌溶解させた。得られた溶液1mLを塩化ビニール樹脂を内膜にしたブリスターパックのポケット中に分注し、−30℃で凍結させた後、真空乾燥機を用いて乾燥を行い、口腔内速溶性凍結乾燥製剤を得た。
【0124】
試験例5:双極性障害の患者における緩解期の維持の治療効果
1.試験錠剤
化合物Aを含む経口8mg製剤
2.試験方法
試験錠剤は、6ヶ月間、双極性障害に罹患しおよび緩解期の患者の群に、就寝時に1日1回投与した。プラセボは、6ヶ月間、双極性障害の緩解期の患者の別の対照群に、就寝時に1日1回投与した。本試験は、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験として実施された。無作為化から処置の6ヶ月間で再発するまでの時間は、治験責任者(PI)によって決定するか、次の基準のいずれかによって定義される:うつ病[モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)(MADRS)スコア≧16];躁病/軽躁病[ヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale)(YMRS)合計スコア≧14];臨床全般印象度-双極性障害尺度(clinical global impressions bipolar version)(CGI−BP);再発を免れた各治療群の参加者(プラセボまたは化合物)の累積割合[MADRSスコア≧16およびYMRS合計スコア≧14]、躁病/うつ病/混合性症状のために投薬開始または変更、躁病/うつ病/混合性症状と自殺リスクや差し迫った自殺の危険性のために入院。
3.試験結果
試験結果を表5に示す。
【表5】

表5で示すように、化合物Aを投与した緩解期における双極性患者群は、プラセボを投与した患者よりも再発を免れた割合が高かった。これは、化合物Aが双極性障害患者の治療および緩解期におけるそれらの維持に有効であることを示す。
【0125】
試験例6:双極性障害の患者における急性うつ病に対する治療効果
1.試験錠剤
化合物Aを含む経口8mg製剤
2.試験方法
試験錠剤は、双極性障害に罹患しおよび躁病相である患者群に、1日1回、8週間まで投与した。プラセボは、双極性障害の躁病相である患者の別の対照群に8週間まで投与した。本試験は、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験として実施された。無作為化から処置の6ヶ月間で再発するまでの時間は、治験責任者(PI)によって決定するか、次の基準のいずれかによって定義される:臨床全般印象度−双極性障害尺度(clinical global impressions scale for bipolar disorder)(CGI−BP)。
3.試験結果
転帰の変化の長期分析は、うつ病のCGI−BP重症度が−0.1(−0.16から−0.05)であることを示し、0より低い値は化合物Aを支持する(95%CL;N=9;P値=0.001)。この結果は化合物Aがうつ症状を減少させることができることを示す。
【0126】
試験例7:薬物動態パラメータ
1.試験プロトコル
化合物Aを含有する口腔内粘膜錠剤の薬物動態パラメータおよび化合物Aを含有する経口8mg錠剤と比較した生物学的利用能を評価するために、無作為化非盲検試験を行った。
試験は2つのパートより構成される。:
(1)口腔内粘膜錠剤における化合物Aの3つの投与量(0.25、0.5および1mg)の薬物動態パラメータを評価するための並行群間デザインおよび
(2)経口8mg錠剤の生物学的利用能と比較した、口腔内粘膜0.5mg錠剤の相対生物学的利用能(薬物動態プロファイル)を評価するための、非盲検無作為化2期クロスオーバーデザイン
(1)については、18人の被験者は、3つの投与量レジメ(即ち、0.25、0.5および1mg;各6名)に無作為に割り当てられ、各被験者は、割り当てられた投与量で化合物Aの単回投与を受けた。
(2)については、24人の被験者は、無作為に割り当てられ、口腔内粘膜0.5mg錠剤または経口8mg錠剤のいずれかを、2期のそれぞれの間に単回投与を受けた。
試験を評価するために、化合物AおよびM−IIの、観測された最高血清濃度(Cmax)と、0時間から濃度定量可能最終時点までの血清中濃度下面積(AUC(0−tlqc)を含む、薬物動態パラメータが測定された。
2.試験結果
試験結果を以下の2つの表、および図1および2に示す。
(1)については、化合物Aの平均CmaxおよびAUC(0−tlqc)値は、0.25と0.5mgの間では、投与量に比例して口腔内粘膜投与量とともに増加し、0.5と1.0mgの間では、投与量比率より少なく増加した。
M−II値は、0.25と1.0mgの間で、投与量に比例して口腔内粘膜投与量とともに増加した。化合物AおよびM−IIの両方の被験者間のばらつきは11%〜66%の範囲であった。
(2)については、CmaxおよびAUC(0−tlqc)に関して、口腔内粘膜錠剤(%CV範囲 30%〜32%)よりも、経口8mg錠剤(%CV範囲 104%〜109%)において、はるかに大きい被験者間のばらつきが観察された。CmaxおよびAUC(0−tlqc)の幾何平均は、比較目的のための算術平均よりも適切であると考えられたが、口腔内粘膜投与後の化合物Aの平均Cmax値が、8mg錠剤の経口投与と比較して大きかったことを明らかにした。化合物AのAUC(0−tlqc)の幾何平均は、口腔内粘膜と経口投与の間で類似していた。また、M−IIのCmaxおよびAUC(0−tlqc)の幾何平均は、経口錠剤の投与後のM−IIと比較して、口腔内粘膜投与後ではずっと低かった。M−IIの被験者間の変動値は、口腔内粘膜と経口療法の双方の間で類似しており、18%〜47%の範囲であった。
したがって、0.5mg口腔内粘膜投与量は、経口8mg錠剤と比較して、(Cmaxによって測定される)化合物Aに対して最大暴露量の増加、および、(AUCによって測定される)化合物Aに対して同等の総暴露総量をもたらした。それに応じて、口腔内粘膜投与は、認可されている経口8mg錠剤と比較して、M−IIに対して少ない割合の暴露量(<7%)をもたらした。
【0127】
表4に示したデータおよび上記データに基づいて、以下の方法を用いて、0.1mg、0.4mgおよび0.8mg舌下錠剤の予測薬物動態パラメータを算出した。
化合物Aの未変化体のための2コンパートメントモデルおよびその代謝物M−IIのための1コンパートメントモデルを、それぞれ、0.25mg、0.5mgおよび1mgの投与後PKプロファイルを適合させるために使用した。続いて、ベイジアン(Bayesian)パラメータ推定値を、0.25mg、0.5mgおよび1mgの投与量に対する個々のパラメータ推定値が、シミュレーション中に、それぞれ、0.1mg、0.4mg、および0.8mgの投与量に対応するようにマップした。記述統計は、幾何平均および対応する95%と80%の下限と上限の幾何平均の信頼区間(CI)を含めて、個々のシミュレートされたCmaxおよびAUC値に基づいて算出した。
このようにして得られた、予測した幾何平均値および幾何平均の信頼区間を以下に示す。

【0128】
試験例8:維持(双極性障害の緩解期の維持)に対する治療効果
1.試験錠剤
実施例8、実施例9および実施例10の舌下製剤
2.試験方法
試験錠剤は、就寝時に毎晩一回、9ヶ月まで、双極性障害の緩解期の患者に舌下投与する。主要転帰は、無作為化から再発事象までの時間に応じて評価することができる。無作為化から9ヶ月の処置期間で再発するまでの時間は、治験責任者(PI)によって決定するか、次の基準のいずれかで定義される:うつ病[モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)(MADRS)スコア≧16];躁病/軽躁病[ヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale)(YMRS)合計スコア≧14];混合性エピソード[MADRSスコア≧16およびYMRS合計スコア≧14];または、参加者が、双極性障害、電気けいれん療法のために精神科入院を受けたかどうか、またはうつ病、躁病/軽躁病または混合性エピソードの治療のために任意の向精神薬の変更を受けたかどうか。
3.試験結果
化合物Aは、全ての投与量で双極性障害の維持療法に対して非常に有効であると予想される。
【0129】
試験例9:急性うつ病(双極性障害に伴ううつ症状)に対する治療効果
1.試験錠剤
実施例8、実施例9および実施例10の舌下製剤
2.試験方法
試験錠剤は、夜1日1回、8週間まで、双極性障害に罹患している患者に舌下投与する。主要転帰は、モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)(MADRS)の8週での合計スコアの基準値からの変化に応じて評価することができる。MADRSは、抑うつ症状(すなわち、外見に表出される悲しみ、言葉で表現された悲しみ、内的緊張など)の全体的な重症度を測定するための10項目の臨床評価スケールであり、0〜60の合計スコア範囲で、0(正常)から6(最も異常)までの7点リッカート尺度(Likert scale)で評価する。高いスコアは、症状がより重症であることを示す。
3.試験結果
化合物Aは、全ての投与量で急性うつ病に対して非常に有効であると予想される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明によれば、薬剤の生物学的利用能の改善された新規な製剤およびその製造方法等を提供することができる。
化合物Aを経鼻的に(鼻粘膜を通して)ヒト対象に投与する場合、上記に開示されたような口腔内粘膜投与の場合と同様に、双極性障害の予防および/または治療に有効であることが期待できる。化合物Aは、例えばWO01/15735に開示されるような処方の形態で投与することができる。
化合物Aがヒト対象に投与される場合、双極性障害の予防および/または治療のために、吸入(例えば、噴霧器等)に適した剤形で投与することもできる。該剤形はこの技術分野における通常の製法に従って製造することができる。化合物Aの投与量は、例えば、本願における製剤(A)〜(D)を参照して決定することができる。
【0131】
本出願は、日本で出願された特願2011−227333を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
図1
図2
図3
図4