(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管状の芯材に光学用フィルムを巻いた光学用フィルムロールであって、前記芯材が相接する外管部と内管部を有し、外管部が硬度145HV以下のアルミニウム製管であり、内管部が硬度150HV以上の鉄鋼製管である光学用フィルムロール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、管状の芯材は、外管部と内管部とを有し、これらが相接している。芯材は外管部と内管部のみからなっていてもよいし、外管部の外側および/または内管部の内側にさらに他の管状部分を有していてもよいが、コストなどの観点から、外管部と内管部のみからなっていることが好ましい。
【0010】
管状の芯材は、外管部が硬度(ビッカース硬さ)145HV以下のアルミニウム製管であり、内管部が硬度(ビッカース硬さ)150HV以上の鉄鋼製管であることが、上記した本発明の効果達成のためには重要である。外管部の硬度は、特に120HV以下が好適であり、最適には100HV以下である。下限については、25HV以上が好適であり、さらに好適には30HV以上である。また、内管部の硬度は、特に170HV以上が好適であり、最適には180HV以上である。上限については、500HV以下が好適であり、さらに好適には300HV以下である。
【0011】
アルミニウム製の外管部と鉄鋼製の内管部は相接していることも重要であり、相接する方法としては、外管部の内側に内管を挿入する方法、内管部の周囲に外管の材料であるアルミニウム製フィルムまたはシートを巻く方法が挙げられる。外管部と内管部の層間には接着剤を設けることもできるが、接着剤を設けない方が外管部と内管部をはがすときに有利である。
【0012】
外管のアルミニウム製管としては、アルミニウム製管、アルミニウム合金製管が挙げられる。アルミニウム合金としては、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−マグネシウム−ケイ素合金、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅合金などが挙げられる。内管の鉄鋼製管を構成する材質としては、炭素綱、高張力鋼、ステンレス鋼などの鉄綱または鉄綱−マンガン合金、鉄鋼−銅合金、鉄鋼−ニッケル合金などの鉄綱合金が挙げられる。
【0013】
内管部の引張強度は300N/mm
2以上あることが好適であり、さらに好適には350N/mm
2以上である。このような引張強度を有する内管部を有することにより、フィルムロールの撓みや表面の傷付きをより抑制する効果がある。外管部の引張強度は特に制限されないが、100〜300N/mm
2であることが好適である。
また、外管部の比重は3g/cm
3以下であることが好適であり、さらに好適には1.5〜3g/cm
3である。また内管部の比重は5〜10g/cm
3であることが好適であり、さらに好適には6〜9g/cm
3である。このような比重の管を使用することにより、フィルムロールの撓みをより少なくすることができる。
【0014】
また、芯材の外管部の外径は100〜300mmであることが好適であり、さらに好適には150〜280mmである。内管部の内径は80〜290mmであることが好適であり、より好適には90〜275mmであり、さらに好適には150〜250mmである。
【0015】
フィルムロールの撓みの低減と芯材の取り扱い性を両立させるためには、芯材の外管部の質量は、外管部と内管部の各質量の合計の質量(合計質量)に対して20〜80質量%であることが好ましい。より好適には30〜70質量%である。
【0016】
管状の芯材の円筒度は0.01〜1.5mmであることが好適であり、さらに好適には0.01〜1mmである。円筒度が1.5mmを超える場合、フィルムを巻き取る際に皺を生じやすくなる。0.01mm未満の場合は、芯材の製造コストが非常に高くなるおそれがある。ここで円筒度とは、JIS B 0182に準じて測定する値であって、最小の円筒径と最大の円筒径との差である。
【0017】
芯材の長さは、2m以上が好適であり、さらに好適には3m以上である。上限については10m以下が好適であり、さらに好適には8m以下である。
芯材の長さは、光学用フィルムの幅と同一かまたは少し長めであるが、フィルム幅より少し長い方が好適である。たとえば、芯材の長さは、フィルム幅よりも1mm〜50cm長いことが好適であり、さらには5mm〜40cm長いことが好適である。
【0018】
本発明において光学用フィルムとしては、PVAフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル樹脂フィルム、三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどが挙げられるが、本発明では、特にPVAフィルムを使用したときに本発明の効果がより顕著に奏されるので、以下、PVAフィルムについて説明する。
【0019】
PVAフィルムを構成するPVAとしては、例えば、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより製造されるものが挙げられる。また該PVAに対し不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等を15モル%未満の割合でグラフト共重合した変性PVA;ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等を15モル%未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVA;未変性または変性PVAをホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることもできる。
【0020】
前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。
【0021】
一方、変性PVAの製造に使用されるコモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらのなかでもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性PVAの変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
【0022】
PVAのけん化度は、偏光性能と耐久性の点から95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、特に99.5モル%以上が最も好ましい。
前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。PVAのけん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
【0023】
PVAの重合度は、偏光性能と耐久性の点から500以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2500以上が最も好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
前記PVAの重合度とは、JIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0024】
前記PVAフィルムを製造する方法としては、例えば、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法や、含水PVA(有機溶剤などを含んでいてもよい)を溶融して行う溶融押出製膜法などを採用することができる。これらのなかでも流延製膜法および溶融押出製膜法が透明性の高いPVAフィルムが得られることから好ましい。
【0025】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0026】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAのPVA濃度は、10〜70質量%が好適であり、10〜60質量%がより好適であり、13〜55質量%がさらに好適であり、15〜50質量%が最も好適である。このPVA溶液または含水PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させてもよい。
【0027】
PVAフィルムを製造する際に、可塑剤として多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも延伸性向上効果からジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好適に使用される。
【0028】
多価アルコールの添加量としてはPVA100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がより好ましく、5〜20質量部が最も好ましい。1質量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する場合があり、30質量部より多いと、PVAフィルムが柔軟になりすぎて取り扱い性が低下する場合がある。
【0029】
PVAフィルムを製造する際に、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型のノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
界面活性剤の添加量としては、PVA100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がより好ましく、0.05〜0.3質量部が最も好ましい。0.01質量部より少ないと、延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1質量部より多いと、PVAフィルム表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0031】
本発明において、PVAフィルムを製膜する時に、二段またはそれ以上の多段ロールで乾燥することが好ましい。単一のロールや金属ベルトのみで乾燥した場合には、水中でのカールが激しくなり、均一な延伸を実施しにくい。
【0032】
二段またはそれ以上の多段ロールの各乾燥面は、スチーム、熱媒、温水、電気ヒーターなどで加熱されたものが使用可能である。また、温風や冷風などをPVAフィルムに吹き付けたり、PVAフィルム周囲の空気や蒸気などを吸引するなどの手段を、補助的に用いてもよい。さらにまた、三番目以降の乾燥の場合は、ロール乾燥だけでなく、テンター方式やフリー方式などのフローティングドライヤーなどを用いることも可能である。
【0033】
本発明において、PVAフィルムはフィルム幅が2m以上であることが好適であり、3m以上がさらに好ましい。上限については10m以下が好適であり、さらに好適には8m以下である。
PVAフィルムの厚みは40〜100μmが好適であり、45〜90μmがさらに好ましい。
PVAフィルムの長さは、1000m以上が好適であり、2000m以上がより好適である。長さの上限は特にないが、取り扱い性より、好ましくは10000m以下である。
【0034】
上記したPVAフィルム(原反フィルム)を芯材に巻きつけることにより、本発明の光学用フィルムロールを得ることができ、この原反フィルムを次のような方法により偏光フィルムとすることができる。
上記した原反フィルムとなるPVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えば、該PVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、および乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作順に特に制限はない。また、特定の操作を二回またはそれ以上行ってもよい。
【0035】
染色は一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いられる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107等の二色性染料などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の混合物の形態で使用することができる。染色は通常、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVA溶液や含水PVAに混ぜてPVAフィルムを製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0036】
一軸延伸は湿式延伸法あるいは乾熱延伸法が使用でき、温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、4.5倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚みは、3〜75μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0037】
フィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用される処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
前記PVAフィルムの乾燥処理(熱処理)は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、芯材の外管部・内管部の硬度、フィルムロールの撓み、シャフトを引き抜くときに発生する異物、および芯材の取り扱い性については、以下の方法により測定または評価した。
【0039】
(1)芯材の外管部・内管部の硬度
芯材の両端部から5mm内側に入りこんだ線上で、芯材の周方向に等間隔で、芯材の外側・内側それぞれ4点ずつ、ポータブルビッカース硬度計にて硬度を測定し、それらの平均値を外管部・内管部の硬度とした。
【0040】
(2)フィルムロールの撓み(フィルムロール表面の皺)
フィルムロールの撓みの評価方法として、フィルムロールの表面に生じる皺を評価した。フィルムロールの撓みが大きいほどフィルムロールに皺を生じやすく、この皺が偏光フィルムなどの光学フィルムを作製した際の欠陥の原因となる。
具体的には、以下の実施例または比較例で得られたフィルムロールをアルミ箔とポリエステルのラミネートフィルムで防湿包装した後、フィルムロールの芯材の両端部を、水平に設置した、芯材の長さ方向に6cmの幅を有する一組の架台の上に乗せ、フィルムロールを芯材の両端部のみで支えた。架台とフィルムロールの端面との間隔は9cmとした。この架台に載せたフィルムロールを3ヶ月間倉庫に保管した後、防湿包装を開梱してフィルムロールの表面にある皺を、以下の基準で目視にて評価した。
○:フィルムロール表面に皺は認められず
×:フィルムロール表面に明瞭な皺が認められる
【0041】
(3)シャフトを引き抜くときに発生する異物
フィルムロールの撓みの評価に用いたフィルムロールの芯材の内壁面にある汚れをきれいにふき取った後、表面の汚れもきれいにふき取った、直径200mmのシャフト(SUS304製、中空構造、質量140kg)を挿入し、引く抜く操作を行った後、この芯材の内壁面を、ネル布を巻き付けた掃除棒で、汚れが目視で確認できなくなるまでふき取り、ネル布の表面に付着した汚れ(異物)の量を目視で観察し、以下の基準にて評価した。
○:ネル布の表面に付着した汚れは認められず
×:ネル布の表面に付着した汚れが、容易に認識可能
【0042】
(4)芯材の取り扱い性
芯材の取り扱いやすさを、芯材の質量で評価した。質量が軽い場合は汎用の機器での取り扱いが可能だが、質量が重い場合は専用の機器が必要になる。
○:100kg未満であり、汎用の機器で取り扱いが可能
×:100kg以上であり、取り扱いに専用の機器が必要
【0043】
《実施例1》
けん化度99.9モル%、重合度1750のPVA100質量部と、グリセリン10質量部を含有する、PVA濃度が15質量%の水溶液を、流延製膜して、フィルム幅4.2m、フィルム厚み75μmのPVAフィルムを作製した。得られたPVAフィルムを下記の芯材に8000m巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムロールについて、フィルムロールの撓み(皺)およびシャフトを引き抜くときに発生する異物の評価を行った。結果を表1に示す。
[芯材]
クラッド処理によって得られた、外管がアルミニウム合金A6063、内管が鉄鋼SUS304からなり、外管の内径が208mm、外径が217mmであり、内管の内径が203mm、外径が208mmである、円筒長4.5m、円筒度0.3mmの芯材。なお、具体的な物理データを表1に示す。
【0044】
《実施例2》
実施例1において、外管の材質をアルミニウム合金A5052に、内管の材質をSUS303に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、フィルムロールの撓み(皺)およびシャフトを引き抜くときに発生する異物の評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
《実施例3》
実施例1において、外管の内径を206mm、外径を217mm、内管の内径を203mm、外径を206mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、フィルムロールの撓み(皺)およびシャフトを引き抜くときに発生する異物の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
《比較例1》
実施例1において、芯材の材質をアルミニウム合金A6063のみとした、単層構造の芯材(内径203mm、外径217mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、フィルムロールの撓み(皺)およびシャフトを引き抜くときに発生する異物の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
《比較例2》
実施例1において、芯材の材質を鉄鋼SUS304のみとした、単層構造の芯材(内径203mm、外径217mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、フィルムロールの撓み(皺)およびシャフトを引き抜くときに発生する異物の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】