【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記大きい方のくさび状の隙間の前記フォーマの長手方向における最大開口幅を前記小さい方のくさび状の隙間の前記フォーマの長手方向における最大開口幅の三倍以上としたことを特徴とする請求項1記載のフォーマの接続構造。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、フォーマ及び超電導線を有するケーブルコアと、当該ケーブルコアを収容する真空二重管構造の断熱管とを備え、断熱管の内側ではケーブルコアを冷却するための超低温の液体冷媒の循環が行われる。
そして、超電導線及びフォーマの冷却効率を高めるために、フォーマを中空に形成し、その中空内部にも液体冷媒が循環されるようになっている。
【0003】
ところで、超電導ケーブルを電力供給線として使用する場合には、電力供給源から遠方の電力消費地まで超電導ケーブルを敷設する必要があるが、超電導ケーブルは製造上又は運搬上の理由などから、単一のケーブル長には限界がある。このため、長距離のケーブル敷設の際には、敷設の現場でいくつもの超電導ケーブルをつなぎ合わせる必要があった。
そして、超電導ケーブルのフォーマの端部同士を連結する際には、先端部同士を突き合わせて溶接により接合したり(例えば、特許文献1参照)、筒状導体の両端からそれぞれのフォーマを挿入して、外部からかしめて連結したりする(例えば、特許文献2参照)などの方法が採られていた。
また、中空導体の継ぎ目を接続する方法として、中空導体の外周に補強パイプを配し、中空導体と補強パイプをロウ付けして接続する方法(特許文献3)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中空フォーマの先端部同士を突き合わせて溶接した場合、溶接に使う溶加材が中空部に流れ込むために、中空部分が塞がれたり狭くなったりする場合があり、冷媒の流通が阻害され、ケーブルの冷却を十分に行えなくなることがあった。また、フォーマの中空内部を塞がないように溶接を行うようにすると、中空内部近くまで溶接を行うことができず、溶接強度が低くなる、或いは、加工作業そのものが煩雑で作業性が悪くなるという問題があった。
また、筒状導体を用いてかしめやロウ付けによりフォーマを接続した場合、相互間の接触状態が不充分となって導電性が悪化する、或いは、フォーマの外側に配される超電導線に筒状導体の角部が当接して応力の発生原因となったり、筒状導体の角部において電界の集中が生じて絶縁性能が低下したりする等の問題が生じていた。
【0006】
本発明は、フォーマの内部中空状態を維持しつつ超電導導体層の良好な送電を可能とする超電導ケーブルの接続構造及び接続方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超電導ケーブルの内部に設けられた中空のフォーマ同士を接続する接続構造であって、それぞれの前記フォーマの接続端部に形成された中空内部に通じる開口部に中空の接続導管の一端部と他端部とが挿入され、対向状態としたそれぞれの前記フォーマの接続端部の間が溶接によって接合されたことを特徴とする。
【0008】
また、接続構造にかかる本発明は、それぞれの前記フォーマの接続端部はその長手方向に対する傾斜面を含む端面で構成されており、それぞれの前記フォーマの接続端部の対応する前記傾斜面同士がくさび状の隙間を形成するように対向しており、向かい合った前記端面の間が溶加材によって接合されている構成としても良い。
【0009】
また、接続構造にかかる本発明は、前記端面は大小二つの傾斜面を含み、対向状態としたそれぞれの前記フォーマの接続端部の間に前記傾斜面によって形成される大小二つのくさび状の隙間のうち、大きい方のくさび状の隙間が上側に、小さい方のくさび状の隙間が下側となるように配置され、当該各隙間が溶加材で充填されている構成としても良い。
【0010】
また、接続構造にかかる本発明は、前記大きい方のくさび状の隙間の前記フォーマの長手方向における最大開口幅を前記小さい方のくさび状の隙間の前記フォーマの長手方向における最大開口幅の三倍以上とする構成としても良い。
【0011】
また、接続構造にかかる本発明は、それぞれの前記フォーマは銅素線を束ねて形成されており、前記接続端部は銅材により一体的に固められている構成としても良い。
【0012】
また、本発明は、超電導ケーブルの内部に設けられた中空のフォーマ同士を接続する接続方法であって、それぞれの前記フォーマの接続端部に形成された中空内部に通じる開口部に中空の接続導管の一端部と他端部とを挿入する工程と、対向状態としたそれぞれの前記フォーマの接続端部の間を溶接によって接合する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、接続方法にかかる本発明は、それぞれの前記フォーマの接続端部はその長手方向に対する傾斜面を含む端面を形成する工程を備え、前記溶接で接合する工程では、それぞれの前記フォーマの接続端部の対応する前記傾斜面同士がくさび状の隙間を形成するように対向させると共に向かい合った前記端面の間に溶加材を充填する構成としても良い。
【0014】
また、接続方法にかかる本発明は、前記接続導管に対してその外周面から半径方向外側に向かって延出された状態で使用する着脱可能な挿入補助具を備え、前記接続導管の一端部と他端部とを挿入する工程では、当該挿入補助具が対向するそれぞれの前記接続端部の端面の間から外部に延出された状態で前記接続導管のそれぞれの前記フォーマの開口部に対する挿入作業を行い、挿入後は前記挿入補助具を除去する構成としても良い。
【0015】
また、前記傾斜面を含む端面を形成する工程では、それぞれの前記フォーマの接続端部に大小二つの傾斜面からなる端面を形成し、前記溶接で接合する工程では、対向状態としたそれぞれの前記フォーマの接続端部の間に前記傾斜面によって形成される大小二つのくさび状の隙間のうち、大きい方のくさび状の隙間が上側に、小さい方のくさび状の隙間が下側となるように配置し、当該各隙間を溶加材で充填する構成としても良い。
【0016】
また、接続方法にかかる本発明は、それぞれの前記フォーマは導体素線を束ねて形成されており、前記接続端部を一体的に固める工程を備える構成としても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、それぞれのフォーマの接続端部の中空内部に通じる開口部に中空の接続導管を挿入した状態でフォーマの接続端部間が溶接で接合されているので、内部の冷却用の液体冷媒の循環を良好に行うことが可能となる。更に、接続導管の存在によって、フォーマの中空内部を塞ぐ懸念がなくなるので、十分に接続端面全体を接合させることができ、接合強度の向上を図ることが可能となる。
また、接合作業時に接続導管によってフォーマの中空内部がフォーマを構成する部材の変形によって塞がれることが防止される。更に、接続導管の存在によって、フォーマの中空内部を塞ぐ懸念がなくなるので、接合作業を容易に行うことができ、作業性の向上も図ることが可能となる。
そして、フォーマの外側に筒状部材を設ける場合と異なり、フォーマの外周面に凸状部分が生じないので、外周に超電導線を配した場合の応力を排除することができ、耐久性や信頼性の向上を図ることが可能となる。また、大電流を流した場合でも超電導線における電解の集中の発生を回避し、良好な絶縁性を維持することが可能となる。
【0018】
また、対向状態としたフォーマの接続端部の対応する傾斜面同士がくさび状の隙間を形成する状態で端面同士が溶加材によって接合されている場合には、互いに対向するフォーマにおいて対向した端面全体に溶加材を容易に行き渡らせることができ、強力な接合を行うことが可能となると共に、作業性の向上も図ることが可能となる。
【0019】
また、対向状態としたフォーマの接続端部間に大小二つのくさび状の隙間を形成して、大きい方を上側とした場合には、大きい方のくさび状の隙間に溶加材を充填すると、溶加材が下方に漏れ出した場合でも下側のくさび状の隙間に充填される事となり、溶加材がフォーマの外周面から凸となる状態を抑制することが可能となる。また、これにより、接合作業を用意に行うことが可能となり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
また、大きい方のくさび状の隙間のフォーマの長手方向における最大開口幅を小さい方のくさび状の隙間のフォーマの長手方向における最大開口幅の三倍以上とした場合には、大きい方のくさび状の隙間から下側の小さい方のくさび状の隙間に溶加材が移動した場合に、当該小さい方のくさび状の隙間に不足なく溶加材を充填することができる。
【0021】
また、フォーマが導体素線を束ねて形成されている場合、フォーマそのものに高い可撓性を持たせることができ、その接続端部同士を突き合わせることも容易となり、作業性を向上することが可能である。
また、接続端部は一体的に固められているので、接合作業時にフォーマを構成する導体素線がバラつくことがなく、接合作業を容易にすると共に接合強度を高めることが可能となり、更に、断面が一体化されていることで接続抵抗も低くすることができる。
【0022】
また、接続導管が外周表面からその半径方向外側に向かって延出された挿入補助具を備える場合には、挿入補助具を用いて接続導管の挿入作業を行うことができ、接続作業の作業性の向上を図ることができる。また、挿入補助具は、接続導管に対して着脱可能であり、挿入作業後は除去することができるため、その後の作業にも妨げともならず、この点からも作業性の向上が図られている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[超電導ケーブル]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は超電導ケーブルの一例を示す図である。
超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ140、超電導線から構成される超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
【0025】
フォーマ140は、ケーブルコア11を形成するための巻芯であり、例えば銅素線等の常電導線(導体線)を撚り合わせて構成される。フォーマ140には、短絡事故時に超電導導体層112に流れる事故電流が分流される。
また、このフォーマ140は、内部が中空に形成されており、当該中空に形成された中空部には、当該フォーマ140及び超電導導体層112を冷却するために、液体冷媒(例えば液体窒素)が供給される。なお、この液体冷媒は後述する断熱管12内においてケーブルコア11の周囲に供給されるものと同一のものである。
【0026】
超電導導体層112は、フォーマ140の上にカーボン紙(図示しない)を介して複数の超電導線が螺旋状に巻回されて形成されている。
図1では、超電導導体層112を4層の積層構造としている。超電導導体層112には、定常運転時に送電電流が流される。
超電導導体層112を構成する超電導線は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層等が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体には、液体窒素温度以上で超電導状態となるRE系超電導体(RE:希土類元素)を用いることができる。RE系超電導体としては、例えば化学式YBa
2Cu
3O
7-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。また、金属マトリクス中に超電導体が形成されているテープ状の超電導線でもよい。超電導体には、ビスマス系超電導体、例えば化学式Bi
2Sr
2CaCu
2O
8+δ(Bi2212), Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10+δ(Bi2223)を適用できる。
なお、化学式中のδは酸素不定比量を示す。
【0027】
電気絶縁層113は、絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムを接合した半合成紙、高分子不織布テープなどの絶縁性紙類で構成され、超電導導体層112の上に積層状態に巻回することにより形成される。
【0028】
超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上にカーボン紙(図示しない)を介して複数の超電導線を螺旋状に巻回することにより形成される。
図1では、超電導シールド層114を2層の積層構造としている。超電導シールド層114には、定常運転時に電磁誘導によって導体電流とほぼ同じ電流が逆位相で流れる。超電導シールド層114を構成する超電導線には、超電導導体層112と同様のものを適用できる。
【0029】
常電導シールド層115は、超電導シールド層114の上に銅線などの常電導線を巻回することにより形成される。常電導シールド層115には、短絡事故時に超電導シールド層114に流れる事故電流が分流される。
保護層116は、例えば、絶縁紙、高分子不織布などの絶縁性紙類で構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
【0030】
断熱管12は、ケーブルコア11を収容するとともに冷媒(例えば液体窒素)が充填される断熱内管121と、断熱内管121の外周を覆うように配設された断熱外管122からなる二重管構造を有している。
断熱内管121及び断熱外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付き管)である。断熱内管121と断熱外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、真空状態に保持される。また、断熱外管122の外周はポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどで構成された防食層124で被覆されている。
【0031】
[超電導ケーブルのフォーマの接続構造の概要]
長距離のケーブルが敷設される場合、複数の超電導ケーブル10の端部同士が既知の中間接続部を介してつなぎ合わせされることとなる。本実施形態では、二本の超電導ケーブル10、10をつなぎ合わせる際のフォーマ140,140同士を接続するための接続構造について例示する。
【0032】
図2A〜
図2Dはフォーマ140,140を接続する際の接続作業工程を示している。なお、各超電導ケーブル10,10の端部において、断熱管12からケーブルコア11の端部が引き出され、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116は段剥ぎされて、フォーマ140の接続端部が露出した状態にあるものとする。
【0033】
図2Aに示すように、互いに接続するフォーマ140,140は、当初は、その接続端部の端面が長手方向に垂直な一つの平坦面から形成されている。
そして、
図2Bに示すように、これら各フォーマ140の接続端部に二つの傾斜面を形成する(傾斜面形成工程)。各フォーマ140の接続端部の端面は、
図3に示すように、これら二つの傾斜面141,142から構成された状態となり、各フォーマ140は、いずれも、二つの傾斜面141,142の境界となる境界部143が他方のフォーマ140側に突出した尖形の形状となる。なお、上側の傾斜面141は、上下方向及びフォーマ140の長手方向について全体的にその寸法が下側の傾斜面142よりも大きく形成されていることが好ましい。
なお、フォーマ140,140は、前述したように、複数の銅素線を撚り合わせて形成されているので、上下の傾斜面141,142では、いずれも銅素線の隙間を溶融した銅材で固めており、銅素線がばらけないようになっている。
【0034】
そして、
図2Cに示すように、各フォーマ140の接続端部における中空内部に通じる開口部144のそれぞれに接続導管145の一端部と他端部とを挿入し、互いの境界部143,143同士が突き合わされた対向状態とする(接続導管挿入工程)。なお、境界部143,143同士は、同径接続という点から互いに平行且つ接触状態とすることが望ましいが、多少の隙間を有する状態としても良い。
なお、接続導管145は、中空のフォーマ140の内径と略一致し、開口部144から挿入可能な外径に設計されている。この接続導管145は、全長に渡って中空の導体で形成され、溶接の際の接合相性という点からフォーマ140を形成する材質と同じものが好ましい。具体的には、フォーマ140が銅製の場合には銅製の筒状体を接続導管145として用い、フォーマ140がステンレス鋼製の場合はステンレス鋼製の筒状体を接続導管145として用いるのが好ましい。フォーマ140に挿入された接続導管145は、一方のフォーマ140の中空内部から他方のフォーマ140の中空内部へと流れる液体冷媒の流通を阻害しない構造となっている。従って、接続導管145の内径は大きい方が望ましいが、その肉厚が薄くなると強度の低下を生じるため、所定の強度を確保しつつ内径を定めることがのぞましい。
【0035】
そして、フォーマ140,140の接続端部同士を傾斜面141,141を上に向けた状態で境界部143,143が合致するように突き合わせた状態とすると、これらの接続端部間には、上側の傾斜面141,141の間と下側の傾斜面142,142の間とに、それぞれくさび状の隙間空間が形成される。この時、上側のくさび状の隙間空間の最大開口幅a(フォーマ140の長手方向幅)は、下側のくさび状の隙間空間の最大開口幅bの3倍〜4倍程度とすることが望ましい。ここでは3倍とする。
【0036】
次に、
図2Dに示すように、各フォーマ140,140の接続端部を、上側から溶加材146を用いて溶接を行う(溶接工程)。この時、上側のくさび状の隙間空間に溶加材146(半田、銅など)を充填すると、境界部143,143の間から下側のくさび状の隙間空間にも溶加材が侵入し、結果的に、上側のくさび状の隙間空間も下側のくさび状の隙間空間も溶加材146が充填される。
これにより、露出した接続導管145の外周面、上側の各傾斜面141,141及び下側の各傾斜面142,142の全体が溶加材146に密着し、各フォーマ140,140の接続端部同士を強固に連結することができる。また、接続導管145により、各フォーマ140の中空内部が溶加材146で塞がれることなく、中空内部同士が連通した状態は良好に維持される。
なお、上下のくさび状の隙間空間から外側に溶加材146がはみ出た場合には、溶加材146による接合部分がフォーマ140,140の外径に等しくなるように、研磨して余分な溶加材は除去することが好ましい。
【0037】
また、各ケーブルコア11,11のフォーマ140,140が接続された後には、その外周面にカーボン紙を介して超電導線が配置され、各ケーブルコア11,11が有する超電導線が互いに半田接続されて超電導導体層112が形成される。
そして、超電導導体層112の上には、絶縁紙が巻回されて電気絶縁層113が形成される。このとき、半田接続された超電導線の接続部に対しては、より絶縁性を高める必要があるので、ケーブルコア11のもとの電気絶縁層113よりも外径が大きくなるまで絶縁紙が巻回される。
そして、電気絶縁層113の上には、互いに半田接続される超電導線が配置され、超電導シールド層114が形成され、さらに、その上に重ねて常電導シールド層115及び保護層116が形成される。
これにより、超電導ケーブル10,10のケーブルコア11,11が端部同士で接続される。さらに、各超電導ケーブル10,10のケーブルコア11,11の接続部は断熱容器に格納される。各超電導ケーブル10,10の断熱管12,12は、この接続部を収容した断熱容器に接続される。
その結果、断熱管12,12内に供給される液体冷媒は、断熱容器を介して、流通可能となり、ケーブルコア11,11の接続部における冷却手段も確保される。
【0038】
このように、超電導ケーブル10,10のケーブルコア11,11を接続する場合に、それぞれのフォーマ140,140の接続端部の中空内部に通じる開口部144,144に中空の接続導管145を挿入した状態でフォーマ140,140の接続端部間が溶加材を用いた溶接で接合されるので、接合作業時にフォーマ140,140の中空内部が塞がれることが防止され、内部の冷却用の液体冷媒の循環を良好に行うことが可能となる。
また、溶加材がフォーマ140,140の中空内部を塞ぐ懸念がないので、十分に接続端面全体を接合させることができ、接合強度の向上を図ることが可能となる。また、溶加材がフォーマ140,140の中空内部を塞ぐ懸念がないので、接合作業を容易に行うことができ、作業性の向上も図ることが可能となる。
さらに、フォーマ140,140の外側に筒状部材を設けて接合する場合と異なり、フォーマ140,140の外周面に凸状部分が生じないので、フォーマ140表面の凸状部分による超電導導体層112の超電導線への応力の発生を解消し、超電導線の耐久性や信頼性の向上を図ることが可能となる。また、大電流を流した場合でも筒状導体の角部において電界の集中の発生を回避し、良好な絶縁性能を維持することが可能である。
【0039】
さらに、対向状態としたフォーマ140,140の接続端部間において、傾斜面141,141による大きい方のくさび状の隙間を上側として溶加材を充填すると、傾斜面142,142による小さい方のくさび状の隙間にまで溶加材が充填される事となり、接続端部の全体に溶加材を行き渡らせることができ、強固に接合すると共に、接合の作業性の向上を図ることが可能となる。
このとき、大きい方のくさび状の隙間のフォーマ140の長手方向における最大開口幅aを小さい方のくさび状の隙間の最大開口幅bの3倍とした場合、大きい方のくさび状の隙間から下側の小さい方のくさび状の隙間に溶加材が移動して、小さい方のくさび状の隙間にも過不足なく溶加材を充填することができる。
【0040】
また、各フォーマ140,140が導体(銅)素線を束ねて形成されている場合、フォーマ140,140そのものに高い可撓性を持たせることができ、その接続端部同士を突き合わせることも容易となり、作業性を向上することが可能である。
また、接続端部は一体的に固めることで、接合作業時にフォーマ140を構成する導体素線がバラつくことがなく、接合作業を容易とすると共に接合強度を高めることが可能となる。なお、接続端部を一体的に固める場合、固める際に用いる材料は、溶接後の接続部において電気性能のバラツキを抑えるという点から、導体素線の材質と同じ材料を用いることが好ましい。
【0041】
[フォーマの接続構造の他の例]
なお、上記フォーマ140,140の接続構造では、それぞれの接続端部に二つの傾斜面141,142による端面を形成し、これらによって大小二つのくさび状の隙間を形成したが、これらくさび状の隙間は、
図4A及び
図4Bに示すように、均一の大きさにしても良い。
図4Aはフォーマ140の長手方向に対する二つの傾斜面141,142の傾斜角度を等しくすると共に傾斜角度を緩やかにした場合を示し、
図4Bはフォーマ140の長手方向に対する二つの傾斜面141,142の傾斜角度を等しくすると共に傾斜角度を
図4Aの場合よりもやや大きくした場合を示している。
これらの場合も、接続導管145により各フォーマ140,140の中空内部が塞がれることなく、強固に良好な絶縁性を維持する接続を行うことができ、また、作業性の向上を図ること可能である。
さらに、溶接の際に、フォーマ140,140の上側のくさび状の隙間から下側のくさび状の隙間に溶加材を充填することができ、接合の作業性の向上も可能である。
【0042】
また、
図5に示すように、フォーマ140,140の接続端部に傾斜面141とフォーマの長手方向に垂直な垂直面147とからなる端面を形成し、傾斜面141,141同士が互いに合致する配置として、傾斜面141,141によるくさび状の隙間と垂直面147,147による平行な隙間とを形成し、くさび状の隙間を上に向けた状態で溶加材を充填して接合を行っても良い。
この場合も、接続導管145により各フォーマ140,140の中空内部が塞がれることなく、強固に良好な絶縁性を維持する接続を行うことができ、また、作業性の向上を図ること可能である。
さらに、くさび状の隙間を上に向けることにより、くさび状の隙間に充填した溶加材が平行な隙間側にも流れて充填され、接合の作業性を向上することが可能である。また、
図4A及び
図4Bの場合と異なり、くさび状の隙間に比べて平行な隙間はその容積が小さいので、過不足なく平行な隙間側への溶加材の充填を行うことが可能である。従って、接合強度を高めつつ、下側の隙間への過剰な溶加材の充填により外部に溶加材がはみ出てしまうことを抑制でき、余分な溶加材の除去作業なども不要とすることが可能となる。
また、一つのフォーマ140に傾斜面141は一つしか形成しないので接続作業の工数を低減することが可能である。
【0043】
また、
図6に示すように、フォーマ140,140の接続端部に一つの傾斜面141からなる端面のみを形成し、傾斜面141,141によるくさび状の隙間を上に向けた状態で溶加材を充填して接合を行っても良い。
この場合も、接続導管145により各フォーマ140,140の中空内部が塞がれることなく、強固に良好な絶縁性を維持する接続を行うことができ、また、作業性の向上を図ること可能である。
なお、この場合も傾斜面141は一つしか形成しないので接続作業の工数を低減することが可能となるが、各フォーマ140,140の接続端部同士の間にはくさび状の隙間しか形成されないので、充填した溶加材がその下側に漏れでないように、溶加材の充填量を調整しつつ接合作業を行う必要がある。
【0044】
また、図示は省略するが、フォーマ140,140の接続端部をフォーマの長手方向に垂直な端面のみとし、接続導管145によりフォーマ140,140の接続端部同士を接続しても良い。その場合、一方のフォーマ140の開口部144に接続導管145の一端部を挿入し、溶接により相互間を固定した後に、他方のフォーマ140の開口部144に接続導管145の他端部を挿入し、フォーマ140,140の対向する端面同士を溶接により接続する。
なお、この場合、傾斜面によるくさび状の隙間空間が形成されないので、当該空間への溶加材の充填が不要となり、溶加材を使用せずに、フォーマ140,140や接続導管145の部材の一部分を溶融させて溶接を行うことも可能である。また、少量の溶加材を使用しての溶接も可能である。
【0045】
また、
図7に示すように、接続導管145の外周表面部に形成された凹部に嵌合して着脱可能な挿入補助具148を使用して、各フォーマ140,140の開口部144,144(
図2B参照)に対する接続導管145の挿入作業を行っても良い。この挿入補助具148は、接続導管145の外周表面からその半径方向外側に向かって延出された状態で取り付けられ、各フォーマ140,140の開口部144,144に接続導管145を挿入する際には、各フォーマ140,140の接続端部における端面の隙間(例えば、くさび状の隙間)から外側に突出し、この挿入補助具148を操作してフォーマ140の長手方向に対して接続導管145を適切な位置に調整することを可能とする。
この挿入補助具148は、接続導管145に対して着脱可能であるため、接続導管145の挿入工程の完了時には、取り外して除去することが可能である。従って、溶接作業の際には、挿入補助具148は除いた状態で作業が可能である。また、挿入補助具148がそのままフォーマ140に取り付けられた状態にならず、フォーマ140の外周に超電導導体層112を形成する際の邪魔とならないようになっている。
なお、
図7では、接続端部形状が
図5と同じフォーマ140を図示しているが、これに限らず、
図2C,
図4A,
図4B,
図6のいずれのフォーマ140の接続作業にも利用可能である。