(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに基材層を含み、離型層が基材層の少なくとも一方の面に積層され、かつ基材層がポリオレフィン、ポリビニルアルコール系重合体、ポリエステル、ポリアミド及びセルロース誘導体からなる群より選択された少なくとも1種で形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[離型フィルム]
本発明の離型フィルムは、固体高分子型燃料電池の膜電極接合体(MEA)を製造するための離型フィルムであって、側鎖に炭素数3〜10のアルキル基を有するオレフィン単位を含む環状オレフィン系樹脂で形成された離型層を含む。本発明の離型フィルムは、特に、イオン交換樹脂を含む電解質膜及び/又は電極膜をその上に積層し、MEAを製造した後、MEAから剥離するためのフィルムであってもよい。
【0021】
(離型層)
本発明の離型層は、環状オレフィン系樹脂を含み、この環状オレフィン系樹脂が側鎖に炭素数3〜10のアルキル基を有するオレフィン単位を含んでいるため、所定の粘弾特性を有していている。
【0022】
離型層(環状オレフィン系樹脂)のガラス転移温度(Tg)は、210〜350℃程度の範囲から選択でき、耐熱性と機械的特性とのバランスの点から、例えば、220〜350℃、好ましくは230〜340℃(例えば、250〜320℃)、さらに好ましくは260〜300℃(特に265〜280℃)程度であり、高度な耐熱性が要求される用途では、例えば、270〜350℃、好ましくは280〜340℃(特に300〜335℃)程度であってもよい。ガラス転移温度が低すぎると、耐熱性が低いため、剥離不良が起こり易く、高すぎると、生産が困難となる。なお、本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0023】
離型層の動的貯蔵弾性率E’は、昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で−50℃から250℃まで測定した動的粘弾性試験において、ガラス転移温度よりも低い温度領域(例えば、−50〜100℃程度)に転移点を有するのが好ましい。転移点が無い場合、靱性が低下し、側鎖が長すぎる場合や側鎖を有する単位の割合が多すぎると、ガラス転移温度が低下し、耐熱性が低下する。なお、動的貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定でき、前記試験において、動的貯蔵弾性率E’と動的損失弾性率E”との比である力学的損失正接tanδが極大点をとることから評価できる。
【0024】
このような特性を有する環状オレフィン系樹脂は、側鎖に炭素数3〜10のアルキル基(C
3―10アルキル基)を有するオレフィン単位を含んでいればよく、C
3―10アルキル基は、環状オレフィン系樹脂の主鎖に対して、自由度の高い側鎖として存在することにより、変形により生じるエネルギーを熱エネルギーに変換できるためか、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を上昇させて耐熱性を向上させても、弾性及び靱性を保持できる。なお、α−オレフィンにおいて、末端アルキル基の炭素数が3以上になると、室温で液体となるが、本発明でも、側鎖のアルキル基の炭素数が3以上になると、前述の効果が発現する。一方、炭素数が10を超えると、ガラス転移温度が低下しすぎる。
【0025】
C
3―10アルキル基としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。これらのC
3―10アルキル基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐熱性と弾性と靱性とのバランスに優れる点から、好ましくは直鎖状C
4−9アルキル基(例えばn−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基など)であり、さらに好ましくは直鎖状C
4−8アルキル基(特にn−ヘキシル基などの直鎖状C
5−7アルキル基)である。
【0026】
前記環状オレフィン系樹脂は、繰り返し単位として、C
3−10アルキル基を有する鎖状オレフィン単位及び/又はC
3−10アルキル基を有する環状オレフィン単位を含んでいてもよく、単独重合体であってもよいが、所望の特性を調整し易い点から、前記鎖状オレフィン単位及び/又は前記環状オレフィン単位と、他の共重合性単位との共重合体が好ましく、C
3―10アルキル基を有さない環状オレフィン単位(A)と、C
3―10アルキル基を有する鎖状又は環状オレフィン単位(B)とを含む共重合体が特に好ましい。
【0027】
環状オレフィン単位(A)を形成するための重合成分(単量体)は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンであり、単環式オレフィン、二環式オレフィン、三環以上の多環式オレフィンなどに分類できる。
【0028】
単環式オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状C
4−12シクロオレフィン類などが挙げられる。
【0029】
二環式オレフィンとしては、例えば、2−ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネンなどのC
1―2アルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;オクタリン;6−エチル−オクタヒドロナフタレンなどのC
1−2アルキル基を有するオクタリンなどが例示できる。
【0030】
多環式オレフィンとしては、例えば、ジシクロペンタジエン;2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノシクロペンタジエノナフタレン、メタノオクタヒドロシクロペンタジエノナフタレンなどの誘導体;6−エチル−オクタヒドロナフタレンなどの置換基を有する誘導体;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデンなどとの付加物、シクロペンタジエンの3〜4量体などが挙げられる。
【0031】
これらの環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、剥離性と柔軟性とのバランスに優れる点から、二環式オレフィンが好ましい。C
3―10アルキル基を有さない環状オレフィン(環状オレフィン単位(A)を形成するための環状オレフィン)全体に対して二環式オレフィン(特にノルボルネン類)の割合は10モル%以上であってもよく、例えば、30モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上(特に90モル%以上)であり、二環式オレフィン単独(100モル%)であってもよい。特に、三環以上の多環式オレフィンの割合が大きくなると、ロール・ツー・ロール方式での製造に用いることが困難となる。
【0032】
代表的な二環式オレフィンとしては、例えば、C
3―10アルキル基以外の置換基を有していてもよいノルボルネン(2−ノルボルネン)、C
3―10アルキル基以外の置換基を有していてもよいオクタリン(オクタヒドロナフタレン)などが例示できる。前記置換基としては、メチル、エチル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、アミド基、ハロゲン原子などが例示できる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの置換基のうち、剥離性を損なわない点から、メチル基やエチル基などの非極性基が好ましい。これらの二環式オレフィンのうち、ノルボルネンやC
1−2アルキル基を有するノルボルネンなどのノルボルネン類(特にノルボルネン)が特に好ましい。
【0033】
鎖状又は環状オレフィン単位(B)を形成するための重合成分(単量体)は、環状オレフィン系樹脂の主鎖に対して側鎖としてC
3―10アルキル基を形成可能であり、かつエチレン性二重結合を有する重合性のオレフィンであり、C
3―10アルキル基を有する鎖状オレフィン、C
3―10アルキル基を有する環状オレフィンに分類できる。なお、鎖状オレフィン単位は、環状オレフィンの開環により生じた鎖状オレフィン単位であってもよいが、両単位の割合を制御し易い点から、鎖状オレフィンを重合成分とする単位が好ましい。
【0034】
C
3―10アルキル基を有する鎖状オレフィンとしては、例えば、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのα−鎖状C
5−13オレフィンなどが挙げられる。これらの鎖状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖状オレフィンのうち、好ましくはα−鎖状C
6−12オレフィンであり、さらに好ましくはα−鎖状C
6−10オレフィン(特に1−オクテンなどのα−鎖状C
7−9オレフィン)である。
【0035】
C
3―10アルキル基を有する環状オレフィンは、前記環状オレフィン単位(A)の項で例示された環状オレフィン骨格にC
3―10アルキル基が置換した環状オレフィンであってもよい。環状オレフィン骨格としては、二環式オレフィン(特にノルボルネン)が好ましい。好ましいC
3―10アルキル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなどの直鎖状又は分岐鎖状C
3―10アルキルノルボルネンなどが挙げられる。これらの環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、好ましくは直鎖状C
4―9アルキルノルボルネンであり、さらに好ましくは直鎖状C
4−8アルキルノルボルネン(特に5−ヘキシル−2−ノルボルネンなどの直鎖状C
5−7アルキルノルボルネン)である。
【0036】
環状オレフィン単位(A)と鎖状又は環状オレフィン単位(B)との割合(モル比)は、例えば、前者/後者=50/50〜99/1、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10(特に75/25〜90/10)程度である。環状オレフィン単位(A)の割合が少なすぎると、耐熱性が低下し、多すぎると弾性及び靱性が低下し易い。
【0037】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン単位(A)及び鎖状又は環状オレフィン単位(B)以外に他の共重合性単位を含んでいてもよい。他の共重合性単位を形成するための重合成分(単量体)としては、例えば、α−鎖状C
1−4オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなど)、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、ジエン系単量体(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、又はこれらの誘導体((メタ)アクリル酸エステルなど)など]などが挙げられる。これらの重合成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、剥離性を損なわない点から、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの極性基を有する単位を実質的に含まない単量体が好ましく、エチレンやプロピレンなどのα−鎖状C
1−4オレフィンなどが汎用される。他の共重合性単位の割合は、環状オレフィン単位(A)及び鎖状又は環状オレフィン単位(B)の合計に対して、例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。
【0038】
環状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、10000〜300000、好ましくは50000〜250000、さらに好ましくは80000〜200000(特に100000〜150000)程度である。分子量が小さすぎると、製膜性が低下し易く、大きすぎると、粘度が高くなるため、取り扱い性が低下し易い。
【0039】
環状オレフィン系樹脂は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、開環メタセシス重合により得られた重合体は、水素添加された水添樹脂であってもよい。環状オレフィン系樹脂の重合方法は、慣用の方法、例えば、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合(通常、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合)などを利用できる。具体的な重合方法としては、例えば、特開2004−197442号公報、特開2007−119660号公報、特開2008−255341号公報、Macromolecules, 43, 4527(2010)、Polyhedron, 24, 1269(2005), J. Appl. Polym. Sci, 128(1), 216(2013), Polymer Journal, 43, 331(2011)に記載の方法などを利用できる。また、重合に用いる触媒も、慣用の触媒、例えば、Macromolecules, 1988年, 第31巻, 3184頁、Journal of Organometallic Chemistry, 2006年, 691巻, 193頁に記載の方法で合成された触媒などを利用できる。
【0040】
離型層には、さらに慣用の添加剤が含まれていてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、充填剤、滑剤(ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなど)、帯電防止剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤など)、難燃剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などが含まれていてもよい。また、表面平滑性を損なわない範囲で、有機又は無機粒子(特にゼオライトなどのアンチブロッキング剤)を含んでいてもよい。
【0041】
離型層中の環状オレフィン系樹脂の割合は、例えば、離型層全体に対して80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上(例えば、95〜100重量%)であってもよい。
【0042】
特に、本発明では、電解質膜や電極膜を汚染し易いシリコーン化合物などの低分子量の離型剤を含んでいなくても剥離性を向上でき、シリコーン化合物を実質的に含んでいないのが好ましい。
【0043】
離型層の平均厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.3〜80μm、さらに好ましくは0.5〜50μm程度である。特に、離型層がコーティング膜である場合、薄肉であってもよく、例えば、0.2〜5μm、好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは0.8〜2μm程度であってもよい。離型層が薄肉であると、取り扱い性に優れ、ロール・ツー・ロール方式などに適するとともに、経済性も向上する。なお、平均厚みは、コーティング膜の場合、離型層の塗工量(単位面積当たりの固形分重量)及び密度に基づいて算出できる。
【0044】
(基材層)
本発明の離型フィルムは、前記離型層を含む限り、特に限定されず、前記離型層単独で形成された単層の離型フィルム(例えば、押出成形により形成された離型フィルム)であってもよく、基材層の少なくとも一方の面に前記離型層が積層された積層構造の離型フィルムであってもよい。これらのうち、燃料電池の生産性を向上でき、薄肉で厚みの均一な離型層を容易に製造できる点から、積層構造の離型フィルムが好ましい。
【0045】
基材層は、燃料電池の製造工程において、離型フィルムの寸法安定性を向上でき、特に、ロール・ツー・ロール方式において張力が負荷されても、伸びを抑制でき、さらに乾燥工程や加熱圧着処理などによって高温に晒されても、高い寸法安定性を維持し、電解質膜や電極膜との剥離を抑制できる点から、耐熱性及び寸法安定性の高い材質で形成されているのが好ましく、具体的には、150℃における弾性率が100〜1000MPaの合成樹脂で形成されていてもよい。前記弾性率は、例えば、120〜1000MPa、好ましくは150〜1000MPa、さらに好ましくは200〜1000MPa程度であってもよい。弾性率が小さすぎると、寸法安定性が低下し、ロール・ツー・ロール方式での製造において電解質膜や電極膜との剥離が発生し、燃料電池の生産性が低下する。
【0046】
このような合成樹脂としては、例えば、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が使用できるが、ロール・ツー・ロール方式で製造できる柔軟性を有する点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィンなど)、ポリビニルアルコール系重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、セルロース誘導体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール系重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド及びセルロース誘導体からなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、耐熱性と柔軟性とのバランスに優れる点から、ポリエステル、ポリイミドが特に好ましい。さらに、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリC
2−4アルキレンアリレート系樹脂が好ましく使用できる。ポリイミドとしては、熱硬化性ポリイミド(ピロメリット酸系ポリイミド、ビスマレイミド系ポリイミド、ナジック酸系ポリイミド、アセチレン末端系ポリイミドなど)、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。
【0047】
基材層は、フィルム強度を向上させる点から、延伸フィルムで形成されていてもよい。延伸は、一軸延伸であってもよいが、フィルム強度を向上できる点から、二軸延伸が好ましい。延伸倍率は、縦及び横方向において、それぞれ、例えば、1.5倍以上(例えば、1.5〜6倍)であってもよく、好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは3〜4倍程度である。延伸倍率が低すぎると、フィルム強度が不十分となり易い。
【0048】
基材層の平均厚みは、例えば、1〜300μm、好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm(特に20〜80μm)程度である。基材層の厚みが大きすぎると、ロール・ツー・ロール方式での生産が困難となり、薄すぎると、寸法安定性が低下する。
【0049】
離型層と基材層との厚み比は、例えば、離型層/基材層=1/1〜1/500、好ましくは1/5〜1/300、さらに好ましくは1/10〜1/200(特に1/30〜1/100)程度である。
【0050】
基材層の表面は、離型層との密着性を向上させるために、慣用の表面処理や易接着処理に供してもよい。
【0051】
(離型フィルムの製造方法)
離型フィルムの製造方法としては、慣用の方法を利用でき、単独の離型層で形成されている場合は、例えば、押出成形やコーティングで形成してもよく、基材層との積層構造の場合は、例えば、コーティング、共押出や押出ラミネート、加熱圧着などの方法であってもよく、粘着剤や接着剤を介して積層してもよい。
【0052】
これらのうち、薄肉で、表面平滑な離型層を形成し易い点から、基材層の上に環状オレフィン系樹脂を含む溶液をコーティング(又は流延)した後、乾燥する方法が好ましい。コーティング方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、ブレードコーター法、バーコーター法、グラビアコーター法などが汎用される。
【0053】
溶媒としては、非極性溶媒を利用でき、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類、ソルベントナフサなどの芳香族系油などを利用できる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらのうち、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ソルベントナフサなどの芳香族系油が好ましい。
【0054】
溶液中における固形分濃度は、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.3〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%(特に0.8〜15重量%)程度である。
【0055】
乾燥は、自然乾燥であってもよいが、加熱して乾燥することにより溶媒を蒸発させてもよい。乾燥温度は、50℃以上であってもよく、例えば、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃程度である。
【0056】
[積層体]
本発明の積層体は、固体高分子型燃料電池を製造するための積層体であり、離型フィルムと、この離型フィルムの離型層の上に積層され、かつイオン交換樹脂を含むイオン交換層(電解質膜、電極膜、膜電極接合体)とで形成されている。
【0057】
前記イオン交換樹脂としては、燃料電池で利用される慣用のイオン交換樹脂を利用できるが、なかでも、強酸性陽イオン交換樹脂や弱酸性陽イオン交換樹脂などの陽イオン交換樹脂が好ましく、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などを有するイオン交換樹脂(詳しくは、電解質機能を有する電解質基として、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などが導入されたイオン交換樹脂)などが挙げられ、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂(電解質基としてスルホン酸基が導入されたイオン交換樹脂)が特に好ましい。
【0058】
前記スルホン酸基を有するイオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有する各種の樹脂を使用できる。各種の樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0059】
前記スルホン酸基を有するイオン交換樹脂のなかでも、スルホン酸基を有するフッ素樹脂、架橋ポリスチレンのスルホン化物などが好ましく、スルホン酸基を有するポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などであってもよい。なかでも、離型性などの点から、スルホン酸基を有するフッ素樹脂(少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフルオロ炭化水素樹脂など)が特に好ましい。特に、固体高分子型燃料電池では、側鎖にスルホン酸基(又は−CF
2CF
2SO
3H基)を有するフッ素樹脂、例えば、[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体(ブロック共重合体など)などが好ましく利用される。
【0060】
イオン交換樹脂のイオン交換容量は0.1meq/g以上であってもよく、例えば、0.1〜2.0meq/g、好ましくは0.2〜1.8meq/g、さらに好ましくは0.3〜1.5meq/g(特に0.5〜1.5meq/g)程度であってもよい。
【0061】
このようなイオン交換樹脂としては、デュポン社製「登録商標:ナフィオン(Nafion)」などの市販品を利用できる。なお、イオン交換樹脂としては、特開2010−234570号公報に記載のイオン交換樹脂などを用いてもよい。
【0062】
イオン交換層は、前記イオン交換樹脂で形成された電解質膜、前記イオン交換樹脂及び触媒粒子を含む電極膜であってもよい。
【0063】
電極膜(触媒層又は電極触媒膜)において、触媒粒子は触媒作用を有する金属成分(特に、白金(Pt)などの貴金属単体又は貴金属を含む合金)を含んでおり、通常、カソード電極用電極膜では白金を含み、アノード電極用電極膜では白金−ルテニウム合金を含む。さらに、触媒粒子は、通常、前記金属成分を、導電材料(カーボンブラックなどの炭素材料など)に担持させた複合粒子として使用される。電極膜において、イオン交換樹脂の割合は、触媒粒子100重量部に対して、例えば、5〜300重量部、好ましくは10〜250重量部、さらに好ましくは20〜200重量部程度である。
【0064】
イオン交換層も、離型層の項で例示された慣用の添加剤を含んでいてもよく、例えば、無機粒子や無機繊維などの無機材料(炭素質材料、ガラス、セラミックスなど)を含んでいてもよい。
【0065】
イオン交換層は、離型層の少なくとも一方の面に形成されていればよく、離型層の両面に形成されていてもよく、離型層の一方の面のみに形成されていてもよい。
【0066】
イオン交換層の平均厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは1.5〜300μm、さらに好ましくは2〜200μm程度である。
【0067】
電解質膜の平均厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm程度である。
【0068】
電極膜の平均厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは2〜50μm程度である。
【0069】
[積層体及び膜電極接合体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、離型フィルムの離型層の上(離型層の少なくとも一方の面)にイオン交換樹脂を含むイオン交換層を積層する積層工程を含む。
【0070】
前記積層工程では、離型フィルムの離型層の上に、イオン交換層(イオン交換樹脂を含む電解質膜及び/又はイオン交換樹脂を含む電極膜)をコーティングにより形成すればよく、例えば、第1の離型フィルムの上に電解質膜をコーティングにより積層し、離型フィルムの上に電解質膜が積層された積層体を製造し、かつ第2の離型フィルムの上に電極膜をコーティングにより積層し、離型フィルムの上に電極膜が積層された積層体を製造してもよい。
【0071】
電解質膜及び電極膜をコーティング(又は流延)により形成するために、電解質膜及び電極膜は、イオン交換樹脂(及び触媒粒子)を溶媒に溶解した溶液の状態でコーティングに供される。
【0072】
溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのC
1−4アルカノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、取り扱い性などの点から、水や、水とC
1−4アルカノールとの混合溶媒が汎用される。溶液中の溶質(イオン交換樹脂、触媒粒子)の濃度は、例えば、1〜80重量%、好ましくは2〜60重量%、さらに好ましくは3〜50重量%程度である。
【0073】
コーティング方法としては、前記離型フィルムの製造方法で例示された慣用の方法が挙げられる。これらの方法のうち、ブレードコーター法、バーコーター法などが汎用される。
【0074】
イオン交換樹脂(及び触媒粒子)を含む溶液をコーティングした後、加熱して乾燥することにより溶媒を蒸発させてもよい。乾燥温度は、50℃以上であってもよく、電解質膜では、例えば、80〜200℃(特に100〜150℃)程度であり、電極膜では、例えば、50〜150℃(特に60〜120℃)程度である。
【0075】
前記積層工程で得られた積層体は、通常、密着工程に供されるが、連続的に製造する場合は、密着工程の前に、積層工程において、密着工程が行われる場所に搬送される。
【0076】
本発明では、前記離型フィルムが柔軟性に優れるため、このような搬送を伴う積層工程をロール・ツー・ロール方式で行うことができ、生産性を向上できる。さらに、離型層と基材層との組み合わせにより、寸法安定性にも優れるため、ロール・ツー・ロール方式でも、離型フィルムが張力による伸びが抑制される。そのため、イオン交換層が剥離することなく、ロール状に巻き取ることができ、生産性を向上できる。
【0077】
積層工程で得られた積層体は、密着工程に供してもよい。密着工程では、第1及び第2の離型フィルムの離型層の上にそれぞれ積層された電解質膜と電極膜とを密着させて膜電極接合体が調製される。
【0078】
電解質膜と電極膜との密着は、通常、加熱圧着により密着される。加熱温度は、例えば、80〜250℃、好ましくは90〜230℃、さらに好ましくは100〜200℃程度である。圧力は、例えば、0.1〜20MPa、好ましくは0.2〜15MPa、さらに好ましくは0.3〜10MPa程度である。
【0079】
密着工程で密着した複合体(電解質層と電極膜とが密着し
た積層体)は、イオン交換層(電解質膜及び/又は電極膜)から離型フィルムを剥離する剥離工程に供され、固体高分子型燃料電池の膜電極接合体が得られる。本発明では、前述の乾燥工程や加熱圧着処理を経た積層体であっても適度な剥離強度を有するため、積層工程や密着工程では離型フィルムとイオン交換層とが剥離せずに、剥離工程では容易に離型フィルムを剥離でき、作業性を向上できる。
【0080】
離型フィルムの離型層は、イオン交換層に対して、所定の離型性を有する必要があり、離型フィルムの離型層とイオン交換層との剥離強度(特に、剥離工程での積層体の剥離強度)は、例えば、0.1〜20mN/mm、好ましくは0.5〜18mN/mm、さらに好ましくは1〜15mN/mm(特に2〜12mN/mm)程度である。剥離強度が大きすぎると、剥離作業が困難となり、小さすぎると、積層工程及び密着工程での作業性が低下する。
【0081】
本明細書では、剥離強度は、20℃、50%RHで1時間以上静置した後、300mm/分の条件で180°剥離する方法で測定できる。
【0082】
さらに、第1の離型フィルムを剥離した電解質膜に対して、前記密着工程及び剥離工程と同様に、さらに第3の離型フィルムの離型層の上に電極膜(第2の離型フィルムがアノード電極用電極膜である場合、カソード電極用電極膜)が積層された積層体の電極膜を密着させて剥離し、慣用の方法で、各電極膜の上に燃料ガス供給層及び空気供給層をそれぞれ積層することにより膜電極接合体(MEA)が得られる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた離型フィルムの特性は、以下の方法で評価した。
【0084】
[ガラス転移温度]
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC6200」)を用い、JIS K7121に準じ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定を行った。
【0085】
[粘弾性測定]
試験片について、熱プレス法又は溶液キャスト法により厚み50〜100μmのフィルムを作製し、幅5mm、長さ50mmに切り出し、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、チャック間距離20mm、昇温速度5℃/分及び角周波数10Hzの条件で、−100℃から250℃まで動的貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0086】
[環状オレフィン系樹脂の組成比]
環状オレフィン系樹脂(共重合体)の組成比は、
13C−NMRで測定した。
【0087】
[溶解性]
離型フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂1重量部を、トルエン9重量部中に添加して攪拌し、室温での溶解状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0088】
○:直ちに完溶する
△:溶解に所定の時間を要する
×:溶解しない。
【0089】
[電極膜の離型性]
易接着性二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」、厚み50μm)、イオン交換樹脂
分散液(デュポン社製「ナフィオン(登録商標)DE2020CS」、イオン交換樹脂の水−アルコール分散液、固形分濃度20重量%)を用意し、ドクターブレードを用いて、前記ポリエステルフィルムの易接着層面に前記イオン交換樹脂
分散液をキャストし、その塗膜を130℃のオーブン内で乾燥させて、電解質膜であるイオン交換層(厚み20μm)を含む積層体を形成した。
【0090】
得られた積層体の電解質膜側の面と、実施例及び比較例で得られた電極膜を含む積層体の電極膜側の面とを、表1に示す温度及び圧力10MPaで圧着し、電極膜側の基材フィルムを剥離し、離型性を以下の基準で評価した。
【0091】
○…離型層に電極膜が残存していない
△…離型層に電極膜が僅かに残存している
×…離型層に電極膜が残存している。
【0092】
[靱性]
ロールに離型フィルムをセットし、0.3m/分の速度で離型フィルムを送り出し、Pt目付量0.5mg/cm
2の塗布量で、実施例で使用した電極膜の塗布液を、ロール・ツー・ロール方式で塗工し、以下の基準で評価した。
【0093】
○:離型層に割れやひびが発生せず、問題なく塗工できる
×:離型層が割れて塗工できない。
【0094】
[合成例1]
乾燥した300mLの2口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、ジメチルアニリ
ニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート8.1mg、トルエン235.7mL、7.5モル/Lの濃度でノルボルネンを含有するトルエン溶液7.0mL、1−オクテン5.7mL、トリイソブチルアルミニウム2mLを添加して、反応溶液を25℃に保持した。この溶液とは別個に、グローブボックス中で、触媒として、92.9mgの(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル[(t−BuNSiMe
2Flu)TiMe
2]をフラスコに入れ、5mLのトルエンに溶解させた。この触媒溶液2mLを300mLフラスコに加えて重合を開始した。2分後に2mLのメタノールを添加して反応を終了させた。次いで、得られた反応混合物を塩酸で酸性に調整した大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して、2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aを5.0g得た。得られた共重合体Aの数平均分子量Mnは30,000、ガラス転移温度Tgは215℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと1−オクテンとの組成(モル比)は、前者/後者=70/30であった。
【0095】
[合成例2]
1−オクテンの配合量を3.3mLに変更する以外は合成例1と同様にして、2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Bを5.0g得た。得られた共重合体BのMnは121,000、Tgは269℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと1−オクテンとの組成(モル比)は、前者/後者=83/17であった。
【0096】
[合成例3]
1−オクテンの配合量を1.7mLに変更する以外は合成例1と同様にして、2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Cを4.6g得た。得られた共重合体CのMnは123,000、Tgは325℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと1−オクテンとの組成(モル比)は、前者/後者=94/6であった。
【0097】
[合成例4]
乾燥したガラス反応器に、トルエン199.3g、2−ノルボルネン33.9g、5−ヘキシル−2−ノルボルネン15.4g、及びMMAO−3A(Modified methyl aluminoxane type 3、東ソーファインケム(株)製、濃度2.23モル/L)3.1gを添加した。次に、トルエン0.87gに溶解させた(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル0.0074g(20μモル)を、前記反応器に添加した。40℃で7時間攪拌して重合を継続した後、メタノール3gを添加して反応を終了させた。その後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別、洗浄後、70℃で3時間以上減圧乾燥して、2−ノルボルネン・5−ヘキシル−2−ノルボルネン共重合体Dを21.3g得た。得られた共重合体DのMnは175,000、Tgは331℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと5−ヘキシル−2−ノルボルネンとの組成(モル比)は、前者/後者=79/21であった。
【0098】
[合成例5]
乾燥したガラス反応器に、トルエン646.1mL、2−ノルボルネン117.5g、1−ヘキセン114.7mL、及びMMAO−3A(Modified methyl aluminoxane type 3、東ソーファインケム(株)製、濃度2.23モル/L)7.0mLを添加した。次に、トルエン2.6mLに溶解させた(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル0.0074gを、前記反応器に添加した。40℃で3時間攪拌して重合を継続した後、メタノール3gを添加して反応を終了させた。その後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別、洗浄後、70℃で3時間以上減圧乾燥して、2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体Eを8.7g得た。得られた共重合体Eの数平均分子量Mnは32,000、ガラス転移温度Tgは300℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと1−ヘキセンとの組成(モル比)は、前者/後者=88/12であった。
【0099】
[合成例6]
1−ヘキセンを1−デセンに変更し、配合量を174.7mLに変更する以外は合成例5と同様にして、2−ノルボルネン・1−デセン共重合体Fを8.5g得た。得られた共重合体Fの数平均分子量Mnは27,000、ガラス転移温度Tgは244℃、動的貯蔵弾性率(E’)が−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンと1−デセンとの組成(モル比)は、前者/後者=85/15であった。
【0100】
[合成例7]
メタロセン化合物として、(t−BuNSiMe
2Flu)TiMe
2を、「Macromolecules, 1998年, 第31巻, 3184頁」の記載に基づいて調製し、−20℃にてヘキサン中で再結晶して精製した。また、乾燥アルミノキサンを、「Macromolecules, 2001年, 第34巻, 3142頁」の記載に基づいて調製した。
【0101】
100mLの摺り合わせガラス栓付きガラス反応器に磁気攪拌子を入れ、十分に窒素ガスで置換した。この反応器に、調製した乾燥アルミノキサン0.464gを入れ、次いで所定量の2−ノルボルネンのトルエン溶液(濃度5.14M)を添加した。全体が29mLになるまでトルエンで希釈し、2−ノルボルネン濃度を1.5Mに調整した。オイルバスで重合温度に保持し、系内を数回減圧脱気した後、1気圧のエチレンを導入し、飽和させた。反応器に、調製したメタロセン化合物のトルエン溶液(濃度0.02M)を1mL添加して重合を開始し、所定時間重合を行った後、塩酸酸性メタノール(塩酸を添加したメタノール)を添加して重合を停止した。重合中は所定の温度を維持した。塩酸酸性メタノール中にポリマーを沈殿させ、メタノールで十分に洗浄し、減圧下に60℃で6時間乾燥して、2−ノルボルネン・エチレン共重合体Gを1.1g得た。得られた共重合体GのMnは30,000、Tgは207℃、2−ノルボルネンとエチレンとの組成(モル比)は、前者/後者=94/6であった。なお、動的貯蔵弾性率(E’)は、−50〜100℃に転移点は認められなかった。
【0102】
[合成例8]
2−ノルボルネン濃度を1.9Mに変更する以外は合成例7と同様にして、2−ノルボルネン・エチレン共重合体Hを0.9g得た。得られた共重合体HのMnは55,000、Tgは212℃、2−ノルボルネンとエチレンとの組成(モル比)は、前者/後者=95/5であった。なお、動的貯蔵弾性率(E’)は、−50〜100℃に転移点は認められなかった。
【0103】
[離型フィルムの製造例1]
1重量部の2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aを、9重量部のトルエンに溶解し、塗工液を調製した。基材フィルムとして、易接着性二軸延伸ポリエステルフィルム(コスモシャインA4100)を用い、塗工液をメイヤーバーコーティング法により基材のフィルムの片面にコーティングし、100℃の温度で1分間乾燥して離型層(乾燥厚み1μm)を形成し、離型フィルム1を得た。
【0104】
[離型フィルムの製造例2]
1重量部の2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Bを、99重量部のトルエンに溶解する以外は製造例1と同様にして、離型フィルム2(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0105】
[離型フィルムの製造例3]
1重量部の2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Cを、99重量部のトルエンに溶解する以外は製造例1と同様にして、離型フィルム3(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0106】
[離型フィルムの製造例4]
1重量部の2−ノルボルネン・5−ヘキシル−2−ノルボルネン共重合体Dを、99重量部のトルエンに溶解する以外は製造例1と同様にして、離型フィルム4(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0107】
[離型フィルムの製造例5]
2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aの代わりに、2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体Eを用いる以外は製造例1と同様にして、離型フィルム5(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0108】
[離型フィルムの製造例6]
2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aの代わりに、2−ノルボルネン・1−デセン共重合体Fを用いる以外は製造例1と同様にして、離型フィルム6(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0109】
[離型フィルムの製造例7]
2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aの代わりに、2−ノルボルネン・エチレン共重合体(Topas Advanced Polymers,GmbH社製「TOPAS(登録商標)6017S−04」、Tg178℃)を用いる以外は製造例1と同様にして、離型フィルム7(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0110】
[離型フィルムの製造例8]
2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aの代わりに、2−ノルボルネン・エチレン共重合体Gを用いる以外は製造例1と同様にして、離型フィルム8(離型層の乾燥厚み1μm)を得た。
【0111】
[離型フィルムの製造例9]
2−ノルボルネン・1−オクテン共重合体Aの代わりに、2−ノルボルネン・エチレン共重合体Hをトルエンに溶解しようと試みたが、溶解しなかったため、離型フィルムを作製できなかった。
【0112】
実施例1
Pt担持カーボン(田中貴金属工業(株)製「TEC10E50E」)7重量部、前記イオン交換樹脂
分散液(ナフィオンDE2020CS)35重量部をボールミルで混合し、電極膜(電極用触媒層)の塗布液とした。離型フィルム1の離型層の上に、ドクターブレードを用いて電極膜の塗布液を塗工後、100℃で10分乾燥し、Pt目付量が0.5mg/cm
2の電極膜を含む積層体を得た。
【0113】
実施例2〜6及び比較例1〜2
離型フィルム1の代わりに、それぞれ離型フィルム2〜8を用いる以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0114】
実施例及び比較例で得られた積層体を評価した結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1の結果から明らかなように、実施例の離型フィルムは、靱性及び離型性に優れている。離型性は、ガラス転移温度と加工温度との差異が大きいほど、向上する傾向があり、実施例2〜4及び6では、優れた離型性を示している。
【0117】
一方、比較例1の離型フィルムは、耐熱性が低いため、燃料電池の製造工程において、離型不良を起こし易く、収率の低下となる虞がある。比較例2の離型フィルムは、靱性が低いため、ロール・ツー・ロール方式での製造工程中において、離型フィルムの離型層の割れやひびによって、イオン交換層との離型不良を起こし易く、収率の低下となる虞がある。