(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062418
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20170106BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20170106BHJP
C23F 1/16 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/306 F
H01L21/308 C
C23F1/16
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-504640(P2014-504640)
(86)(22)【出願日】2012年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2012083435
(87)【国際公開番号】WO2013136624
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-55520(P2012-55520)
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康太
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−235438(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/157335(WO,A1)
【文献】
特開平02−135619(JP,A)
【文献】
特開2009−167459(JP,A)
【文献】
特開2007−049120(JP,A)
【文献】
特開2006−135282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C23F 1/16
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング液組成物において、
(A)第二鉄イオン成分
を第二鉄イオン濃度で1〜10質量%;
(B)塩化水素成分
1〜20質量%;
(C)下記一般式(1)で表される化合物及び炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物成分
0.1〜5質量%
を含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液組成物:
【化1】
(式中、R
1、R
3は各々独立に水素または炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキル基を表し、R
2は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキレン基を表し、nは1〜3の数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物または炭素数3〜4の分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物成分である、請求項1に記載のエッチング液組成物:
【化2】
(式中、R
1、R
3は各々独立に水素または炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキル基を表し、nは1〜3の数を表す。)
【請求項3】
前記(C)成分が、少なくともジプロピレングリコールモノメチルエーテルまたはイソプロパノールを含む、請求項1または2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
更に、安定化剤、(A)、(B)または(C)成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤及び界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を含有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
添加剤が、還元剤である、請求項4に記載のエッチング液組成物。
【請求項6】
酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするエッチング方法において、エッチング液組成物として請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエッチング液組成物を用いることを特徴とするエッチング方法。
【請求項7】
酸化インジウム系被膜が、酸化インジウム被膜、インジウム−スズ酸化物被膜及びインジウム−亜鉛酸化物被膜からなる群から選択される1層以上の膜である、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
金属系被膜が、銅、ニッケル、チタン、クロム、銀、モリブデン、アルミニウム、白金及びパラジウムからなる群から選択される金属被膜及び/または銅、ニッケル、チタン、クロム、銀、モリブデン、アルミニウム、白金及びパラジウムからなる群から選択される2種類以上の金属を含有する合金被膜からなる1層以上の膜である、請求項6または7のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関し、更に詳細には、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするために用いられるエッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜等に使用される酸化インジウム系被膜のウエットエッチングに関する技術は、種々知られているが、安価でエッチング速度が良好であることから、塩酸を含む水溶液がエッチング液組成物として多く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化第二鉄と塩酸を含有するインジウム−スズ酸化物(以下、ITOと略す場合もある)用エッチング液組成物が開示されている。
【0004】
また、塩酸を使用しないエッチング液として、例えば特許文献2には、銅または銅合金のエッチング剤として、第二銅イオン、有機酸、ハロゲンイオン、アゾール、ポリアルキレングリコールを含有する水溶液が開示されている。ここで、ポリアルキレングリコールは電解銅めっき層の溶解を抑制し、下地導電層である無電解銅めっき層のエッチングを促進するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−231427号公報
【特許文献2】特開2006−111953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、ITO膜と銅膜からなる積層膜を一括でエッチングすることによってITO膜と銅膜からなる直線性の良い細線を形成するために上記に開示されたエッチング液を用いた場合、エッチング速度を制御することができず所望の幅の細線を得ることができない場合があることや、細線が蛇行してしまう場合があるという問題点があった。また、特に大きな問題点として、ITO膜と銅膜とでエッチング速度が大きく異なることから、基板表面と平行方向におけるITO膜がエッチングされる幅と、同方向における銅膜がエッチングされる幅が大きく異なり、細線を形成するITO膜と銅膜との間に大きな段差が生じてしまうという問題点が存在した。
【0007】
したがって、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括エッチングする際に、酸化インジウム系被膜と金属系被膜との間に大きな段差が発生することなく、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる細線の細り幅が少なく、また、直線性良くエッチングすることができるエッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、第二鉄イオン成分;塩化水素成分;及び下記一般式(1)で表される化合物及び炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物成分を含むエッチング液組成物が、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った:
【0009】
【化1】
(式中、R
1、R
3は各々独立に水素または炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキル基を表し、R
2は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキレン基を表し、nは1〜3の数を表す。)
【0010】
すなわち、本発明は、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング液組成物において、
(A)第二鉄イオン成分(以下、A成分と略す場合がある。)
を第二鉄イオン濃度で1〜10質量%;
(B)塩化水素成分(以下、B成分と略す場合がある。)
1〜20質量%;
(C)上記一般式(1)で表される化合物及び炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物成分(以下、C成分と略す場合がある。)
0.1〜5質量%を含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は上記エッチング液組成物を用いることを特徴とする酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするエッチング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエッチング液組成物によれば、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングする際に、酸化インジウム系被膜と金属系被膜との間に大きな段差が発生することなく、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる細線の細り幅が少なく、また、直線性良くエッチングすることができるという効果を奏するものである。
したがって、本発明のエッチング液組成物は、特にITO被膜と金属系被膜を一括でエッチングすることにより細線を形成するために用いられるエッチング方法に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】評価試験におけるL
1、L
2の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
まず、本明細書に記載する「酸化インジウム系被膜」とは、酸化インジウムを含む膜であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウム、インジウム−スズ酸化物及びインジウム−亜鉛酸化物から選ばれる1種以上からなる被膜を総称するものとする。
また、本明細書に記載する「金属系被膜」とは、金属からなる被膜であれば特に限定されるものではないが、例えば、銅、ニッケル、チタン、クロム、銀、モリブデン、アルミニウム、白金及びパラジウム等からなる群から選択される金属被膜や、銅、ニッケル、チタン、クロム、銀、モリブデン、アルミニウム、白金及びパラジウムからなる群から選択される2種類以上の金属を含有する合金被膜、例えば、CuNi、CuNiTi、NiCr、Ag−Pd−Cu等の合金被膜から選ばれる1種以上からなる被膜を総称するものとする。
【0015】
本発明のエッチング液組成物に用いられる(A)第二鉄イオン成分は、本発明のエッチング液組成物の主剤を構成する成分である。第二鉄イオン成分として用いられる化合物は、特に限定されるものではなく、第二鉄イオンを供給することができる化合物であればよく、例えば、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、酢酸鉄(III)等が挙げられ、無水物でも水和していてもよい。前記第二鉄イオンを供給することができる化合物は2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明のエッチング液組成物における好ましい(A)第二鉄イオン濃度は、所望とする被エッチング材である酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよいが、0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。(A)第二鉄イオン濃度が0.1質量%よりも少ないと、充分なエッチング速度が得られないことがあるために好ましくない。一方、(A)第二鉄イオン濃度が15質量%より多い場合には、(C)成分として上記一般式(1)で表される化合物を用いた場合に、該化合物が不溶化する場合があるために好ましくない。
【0017】
本発明のエッチング液組成物に用いられる(B)塩化水素成分は、本発明のエッチング液組成物の主剤を構成する成分である。
本発明のエッチング液組成物における好ましい(B)塩化水素成分の濃度は、所望とする被エッチング材である、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよいが、0.1〜25質量%、好ましくは1〜20質量%である。(B)塩化水素成分の濃度が0.1質量%よりも少ないと、充分なエッチング速度が得られないことがあるために好ましくない。一方、(B)塩化水素成分の濃度を25質量%より多くしても、エッチング速度の向上は図られず、かえって装置部材の腐食等の不具合を生じる場合があることがあるために好ましくない。
【0018】
本発明のエッチング液組成物に用いられる(C)上記一般式(1)で表される化合物及び炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物は、(A)第二鉄イオン成分及び(B)塩化水素成分と組み合わせて用いることにより、本発明のエッチング液組成物に、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングする際に、細線の細り幅を減少させる効果、直線性を向上させる効果、大きな段差が発生することを抑制させる効果を付与することができる。
【0019】
本発明のエッチング液組成物に用いられる場合のある上記一般式(1)において、R
1及びR
3で表される水素若しくは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキル基としては、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル等が挙げられ、R
2で表される炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐状アルキレン基としては、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、第2ブチレン、第3ブチレン、イソブチレン等が挙げられる。これらの中でも、R
1及びR
3としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましく、R
2としては、エチレン基、プロピレン基等が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられ、また、炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0021】
更に、上記一般式(1)で表される化合物として、下記一般式(2)で表される化合物若しくは炭素数3〜4の分岐アルコールを用いると、酸化インジウム系被膜と金属系被膜との間に発生する段差が小さく、細線の細り幅が小さく、直線性が良い細線が得られることから好ましい。また、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルまたはイソプロパノールを用いた場合が、上記に示すような効果が特に高いことから、特に好ましい。また、本発明のエッチング液組成物が樹脂レジストを用いたエッチング工程に用いられる場合には、イソプロパノールを用いると、樹脂レジストへの影響がなく、特に好ましい。
なお、前記一般式(1)で表される化合物及び炭素数1〜4の直鎖または分岐状アルコールは2種以上を併用してもよい。
【0022】
【化2】
[式中、R
1、R
3及びnは、上記一般式(1)のR
1、R
3及びnと同意義である。]
【0023】
本発明のエッチング液組成物における好ましい(C)成分の濃度は、所望とする被エッチング材である酸化インジウム系被膜と金属系被膜との積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよいが、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。(C)成分の濃度が0.01質量%よりも少ないと、その配合効果が発現しないために好ましくなく、また、10質量%を超えても、配合効果の更なる向上が見られない。
【0024】
また、本発明のエッチング液組成物には、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分のほかに、本発明の効果を阻害することのない範囲で、周知の添加剤を配合させることができる。当該添加剤としては、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等が挙げられ、これらの添加剤を使用する場合の濃度は、一般的に、それぞれ0.001質量%〜10質量%の範囲である。
【0025】
なお、本発明のエッチング液組成物のエッチング速度が速過ぎる場合には、還元剤を添加剤として用いることが好ましく、具体的には塩化銅、塩化第一鉄、銅粉、銀粉等が挙げられる。なお、還元剤を添加する場合、その濃度は、好ましくは0.01〜10質量%の範囲内である。
【0026】
本発明のエッチング液組成物は、酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を一括でエッチングする際に使用される。該酸化インジウム系被膜は1層でもよく、2層以上の積層膜であってもよい。また、該金属系被膜は1層でもよく、2層以上の積層膜であってもよい。該酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜は、金属系被膜が酸化インジウム系被膜の上層であってもよく、下層であってもよく、上層及び下層にあってもよい。また、該酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜において、酸化インジウム系被膜と金属系被膜は交互に積層されたものであってもよい。
【0027】
上述のような酸化インジウム系被膜と金属系被膜からなる積層膜を有する機器としては、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、有機EL、太陽電池、照明器具等が挙げられ、これらの機器の電極や配線を加工する際に、本発明のエッチング液組成物を使用することができる。
【0028】
本発明のエッチング液組成物を用いた酸化インジウム系被膜と金属系被膜との積層膜を一括でエッチングするエッチング方法としては、特に限定されるものではなく、周知一般のエッチング方法を用いればよい。例えば、ディップ式、スプレー式、スピン式によるエッチング方法が挙げられる。これらの中で、例えば、ディップ式のエッチング方法によって、PET基板上にCuNi/Cu/ITO層が成膜された基材をエッチングする場合には、該基材を本発明のエッチング液組成物に浸し、適切なエッチング条件にて浸漬した後に引き上げることでPET基板上のCuNi/Cu/ITO層を一括にエッチングすることができる。
【0029】
エッチング条件は特に限定されるものではなく、エッチング対象の形状や膜厚などに応じて任意に設定することができる。例えば、エッチング温度は、10℃〜60℃が好ましく、30℃〜50℃が特に好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるので、必要なら上記温度範囲内に維持するよう公知の手段によって温度制御してもよい。また、エッチング時間は、エッチング対象が完全にエッチングされるに十分必要な時間とすればよいので特に限定されるものではない。例えば、電子回路基板における配線製造におけるような膜厚500〜2000Å程度のエッチング対象であれば、上記温度範囲であれば0.2〜5分程度エッチングを行えばよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではないことを理解されたい。
実施例1
表1に示す化合物を(C)成分として用いて、表2に示す配合でエッチング液組成物を配合し、本発明品1〜19を得た。なお、含有量の残部は水である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
比較例1
表3に示す配合でエッチング液組成物を配合し比較品1〜5を得た。なお、含有量の残部は水である。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例2
CuNi/Cu/ITO/PET上にポジ型液状レジストを用いて幅75μm、開口部25μmのレジストパターンを形成した基板を縦20mm×横20mmに切断してテストピースとした。このテストピースに対し、実施例1で調製した本発明品1〜19のエッチング液組成物を用いて、40℃、1分間、撹拌下でディップ式によるエッチング処理を行った。
【0036】
比較例2
CuNi/Cu/ITO/PET上にポジ型液状レジストを用いて幅75μm、開口部25μmのレジストパターンを形成した基板を縦20mm×横20mmに切断してテストピースとした。このテストピースに対し、比較例1で調製した比較品1〜5のエッチング液組成物を用いて、40℃、1分間、撹拌下でディップ式によるエッチング処理を行った。
【0037】
評価試験
実施例2及び比較例2で得られた細線について、細線の直線性、細線の幅(L
1)、及びITOとCuの段差の大きさ(L
2)をレーザー顕微鏡によって確認した。細線の直線性は、細線側面の蛇行の有無を確認することで評価した。具体的には、目視で細線に蛇行がみられるものを×、蛇行が見られないものを○とした。ITOとCuの段差の大きさ(L
2)は、得られた配線の片側におけるITO膜とCu膜の線幅の差の絶対値を計算したものである。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4の結果より、比較品1、2、3、5において、直線性の悪い細線が得られたことに対して、本発明品1〜19は全てにおいて直線性の良い細線を得ることができた。また、本発明品1〜19は比較品1〜5よりも太い配線を大きな段差が発生することなく得ることができることがわかった。
このことから、本発明のエッチング液組成物は、酸化インジウム系被膜と金属系被膜を一括でエッチング処理する際に用いることにより、細線の細りが少なく、酸化インジウム系被膜と金属系被膜に大きな段差が発生することなく、直線性の良い細線を得ることができるエッチング液組成物であることがわかった。