(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集水管と、この集水管の外周に巻回され内部が前記集水管の内部と連通している複数の封筒状膜と、巻回状態の前記封筒状膜の上から巻回された補強用繊維に合成樹脂が塗布されて含浸され固化されることによって被覆形成された合成樹脂被膜とを有するスパイラル膜モジュールと、
前記スパイラル膜モジュールの前記合成樹脂被膜の両端部にそれぞれ接続された接続用筒状体と、
前記スパイラル膜モジュールの一端側の前記接続用筒状体に接続され、原水導入口を有し、前記封筒状膜間の原水流路に原水を流入させる第1マニホールドと、
前記スパイラル膜モジュールの他端側の前記接続用筒状体に接続され、処理水排出口と排液排出口とを有し、前記集水管が接続されて処理水が流入される処理水室と、前記封筒状膜間の原水流路から洗浄排液が流入される洗浄排液室とに区画形成される第2マニホールドと、
を備え、
前記集水管は、前記第1マニホールド側に閉鎖端部を有し、前記第2マニホールド側に開口端部を有し、
前記接続用筒状体は、前記合成樹脂被膜と固着される筒状体本体と、該筒状体本体の内側に、前記スパイラル膜モジュールの前記集水管の端部を挿通させて支持する支持環部と、前記筒状体本体と前記支持環部との間を連結し前記スパイラル膜モジュールにおける巻回状態の前記封筒状膜の端面に当接することにより該封筒状膜の軸方向ズレを防止する軸方向ズレ防止部とを有してなり、
前記集水管の前記閉鎖端部及び前記開口端部が、それぞれ前記支持環部に挿通し、
前記開口端部が前記第2マニホールド内に区画形成された処理水室に接続されていることを特徴とする水処理用膜モジュールユニット。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理用の膜モジュールとしてスパイラル膜を用いたスパイラル膜モジュールが知られている。スパイラル膜モジュールを用いて大量の原水を処理する場合、複数本のスパイラル膜モジュールが処理量に応じて用いられる。
【0003】
近年、船舶バラスト水中の微生物を膜処理することによって除去する試みがなされている。スパイラル膜モジュールによってバラスト水を処理する場合、膨大な量のバラスト水を短時間で処理する必要がある。特にタンカーのような巨大船舶では、バラストタンクの容量も巨大となるため、船舶内に膨大な数のスパイラル膜モジュールを備える必要がある。
【0004】
このため、本願出願人は、原水の流路を構成するマニホールドに対して複数本のスパイラル膜モジュールを接続した構造とすることにより、多数本のスパイラル膜モジュールを使用しても全体としてコンパクトに構成することができる水処理用膜モジュールユニットを提案している(特許文献1)。
【0005】
スパイラル膜モジュールは、集水管の外周に複数の封筒状膜が巻回されたスパイラル膜を外装容器の内部に収容した構造を有しており、複数本のスパイラル膜モジュールの端部を一つのマニホールドに原水の流出入が可能となるように接続することで、一つの水処理用膜モジュールユニットを構成している。
【0006】
図9に、この水処理用膜モジュールユニットの要部断面図を示す。図中、100はスパイラル膜モジュール、200はスパイラル膜モジュール100の一方端部に接続された第1マニホールド、300はスパイラル膜モジュール100の他方端部に接続された第2マニホールドである。
【0007】
スパイラル膜モジュール100は、一端が閉鎖され他端のみが開口する集水管103を中心軸としてその周囲に複数の封筒状膜102が巻回されてなるスパイラル膜が、集水管103の長さ方向が外装容器101の長さ方向と一致するように外装容器101内に収容されている。
【0008】
第1マニホールド200は、内部に複数のスパイラル膜モジュール100に共通のバラスト原水室201を有しており、壁面にバラスト原水が導入される原水導入口202と、スパイラル膜モジュール100の外装容器101の一端を接続するための複数の取付け開口部203とが形成されている。
【0009】
第2マニホールド300は、内部に複数のスパイラル膜モジュール100に共通の洗浄排液室301と、この洗浄排液室301に対して区画され、複数のスパイラル膜モジュール100に共通のバラスト処理水室302とを有している。各スパイラル膜モジュール100の集水管103の開口端は、バラスト処理水室302と接続されている。壁面にはバラスト処理水室302内のバラスト処理水を排出する処理水排出口303と、洗浄排液室301内の排液を排出する排液排出口304と、スパイラル膜モジュール100の外装容器101の他端を接続するための複数の取付け開口部305とが形成されている。
【0010】
これら第1マニホールド200及び第2マニホールド300とスパイラル膜モジュール100の合成樹脂被膜101との接続部分は、Oリング等のシール部材を介して嵌合し、例えば接着剤によって固着したり、第1マニホールド200と第2マニホールド300とに亘ってボルト(図示せず)を架け渡したりすることによって接続するようにしている。
【0011】
このような水処理用膜モジュールユニットによれば、処理量に応じてユニット数を適宜増やすことにより、大量の原水の膜処理を並列して行うことができて極めて効率的であり、省スペース化を図ることができる等の数々の利点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
スパイラル膜モジュールの外装容器は、原水の流入圧に耐え得るだけの耐圧性を有する必要があるため、一般にステンレス等の金属製の耐圧容器(ベッセル)が用いられている。このためスパイラル膜モジュール単体での重量が嵩み、ユニット全体の重量増を招いてしまう問題があった。ユニットの重量増は、特にユニットが貨物船に搭載される場合、積荷量の減少につながってしまい、重大な問題である。
【0014】
また、スパイラル膜モジュール単体での重量が嵩むことで、ユニットの組立てやスパイラル膜モジュールの交換作業時の問題もある。すなわち、ユニットが船舶内のような狭小スペースに設置される場合、機械を用いてスパイラル膜モジュールの吊り上げ作業を行うことが困難であることが多く、人手による作業が強いられることに加え、作業スペースも極めて狭小であることによって、ユニットの組立てやスパイラル膜モジュールの交換作業が極めて重労働となる問題がある。
【0015】
そこで、本発明者は、このような従来のスパイラル膜モジュールの構造の簡素化及び軽量化を図るため、外装容器を合成樹脂を用いて形成することを検討した。しかし、合成樹脂製の外装容器は寸法管理が難しく、マニホールド間に接続される各スパイラル膜モジュール同士で長さ寸法が一致しない場合があるという問題がある。マニホールド間の距離やスパイラル膜モジュールの取付け開口部の開口径は一定であるため、外装容器の長さ寸法にばらつきがあると、スパイラル膜モジュール毎にマニホールドとの接続状態にばらつきが生じてしまう。
【0016】
また、ユニットを船舶内に設置する場合、その設置場所は、スペースの関係上、船底付近の機関室近傍であることが多く、スパイラル膜モジュールは少なからずこの機関室からの熱の影響を受ける。このため、外装容器を合成樹脂製とすると、長さ方向の伸縮が発生する問題もある。この熱の影響はユニット内の各スパイラル膜モジュールで同一であるとは限らず、機関室に近い側と遠い側、ユニットの外側と内側のそれぞれのスパイラル膜モジュール毎に異なる場合がある。このため外装容器の長さ寸法のばらつきに、これら熱の影響による伸縮が加わることで、ユニット全体に変形が生じ、接続部位から漏水が発生するおそれがある。
【0017】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたものであり、第1の課題は、外装容器をなくして構造の簡素化及び軽量化を図り得るスパイラル膜モジュールを提供することにある。
【0018】
また、本発明の第2の課題は、外装容器のない構造簡素で軽量なスパイラル膜モジュールを複数本使用し、その寸法精度管理を簡素化でき、また、熱の影響によるユニット全体の変形が生じることがなく、マニホールドとスパイラル膜モジュールとの間の接続状態を長期に亘って安定して維持することのできる水処理用膜モジュールユニットを提供することを課題とする。
【0019】
また、本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0022】
(請求項1)
集水管と、この集水管の外周に巻回され内部が前記集水管の内部と連通している複数の封筒状膜と、巻回状態の前記封筒状膜の上から巻回された補強用繊維に合成樹脂が塗布されて含浸され固化されることによって被覆形成された合成樹脂被膜とを有するスパイラル膜モジュールと、
前記スパイラル膜モジュールの前記合成樹脂被膜の両端部にそれぞれ接続された接続用筒状体と、
前記スパイラル膜モジュールの一端側の前記接続用筒状体に接続され、原水導入口を有し、前記封筒状膜
間の原水流路に原水
を流入させる第1マニホールドと、
前記スパイラル膜モジュールの他端側の前記接続用筒状体に接続され、
処理水排出口と排液排出口とを有し、前記集水管が接続されて処理水が流入される処理水室と、前記封筒状膜
間の
原水流路から洗浄排液
が流入される洗浄排液室とに区画形成される第2マニホールドと、
を備え、
前記集水管は、前記第1マニホールド側に閉鎖端部を有し、前記第2マニホールド側に開口端部を有し、
前記接続用筒状体は、前記合成樹脂被膜と固着される筒状体本体と、該筒状体本体の内側に、前記スパイラル膜モジュールの前記集水管の端部を挿通させて支持する支持環部と、前記筒状体本体と前記支持環部との間を連結し前記スパイラル膜モジュールにおける巻回状態の前記封筒状膜の端面に当接することにより該封筒状膜の軸方向ズレを防止する軸方向ズレ防止部とを有して
なり、
前記集水管の前記閉鎖端部及び前記開口端部が、それぞれ前記支持環部に挿通し、
前記開口端部が前記第2マニホールド内に区画形成された処理水室に接続されていることを特徴とする水処理用膜モジュールユニット。
【0024】
(請求項2)
前記
第1及び第2マニホールドは、
前記スパイラル膜モジュールと接続される開口部を有し、該開口部と同心状に前記接続用筒状体
の外周を囲むように所定高さで突出する筒状フランジ部を有し、
前記合成樹脂被膜から突出する前記接続用筒状体の外周面と前記筒状フランジ部の内周面との間がシール部材によって密封されていることを特徴とする請求項1記載の水処理用膜モジュールユニット。
【0025】
(請求項
3)
前記原水が船舶バラスト水であることを特徴とする請求項
1又は
2記載の水処理用膜モジュールユニット。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るスパイラル膜モジュールによれば、外装容器をなくして構造の簡素化及び軽量化を図り得るスパイラル膜モジュールを提供することができる。
【0027】
また、本発明に係る水処理用膜モジュールユニットによれば、外装容器のない構造簡素で軽量なスパイラル膜モジュールを複数本使用し、その寸法精度管理を簡素化でき、また、ユニット全体の変形が生じることがなく、マニホールドとスパイラル膜モジュールとの間の接続状態を長期に亘って安定して維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明に係るスパイラル膜モジュール(以下、単に膜モジュールという。)を一部破断分解して示す斜視図である。
【0031】
膜モジュール2は、処理水を集める集水管21の外周に多数の封筒状膜22が巻回されてなるスパイラル膜20と、巻回状態の封筒状膜22の外周に一体に被覆形成された合成樹脂被膜26とを有している。
【0032】
集水管21は、一方端が閉鎖された閉鎖端部21aであり、他方端が処理水を排出するために開口した開口端部21bとされた直管によって形成されている。
【0033】
各封筒状膜22内には、それぞれ封筒状膜22の張設状態を維持し、該封筒状膜22の内側に透過した処理水のためのスペースを形成する透過側スペーサ23が設けられている。封筒状膜22の内部は集水管21の内部と連通しており、封筒状膜22を透過した処理水を集水管21内に移送可能としている。
【0034】
各封筒状膜22は集水管21の外周面に放射状に取り付けられている。隣接する封筒状膜22の間には、封筒状膜22同士が密着して膜面積が狭くなることを防止すると共に、集水管21と合成樹脂被膜26との間で、隣接する封筒状膜22間に原水流路24を形成するための原水スペーサ25が挿設されている。そして、内部に透過側スペーサ23を有する多数の封筒状膜22と、封筒状膜22間の多数の原水スペーサ25とが、集水管21の外周に一緒に巻回されて高密度に巻き付けられることによって、全体として集水管21を軸とする略円柱状を呈するスパイラル膜20を構成している。
【0035】
なお、このように封筒状膜22内の透過側スペーサ23及び封筒状膜22間の原水スペーサ25も封筒状膜22と一緒に巻回状態とされているが、本発明において、これら封筒状膜22、透過側スペーサ23及び原水スペーサ25が集水管21の外周に一緒に巻回状態とされたものを指称する場合、単に巻回状態の封筒状膜22という。すなわち、本発明において巻回状態の封筒状膜22という場合、封筒状膜22以外にこれら透過側スペーサ23及び原水スペーサ25も含むものとする。
【0036】
合成樹脂被膜26は、補強用繊維に合成樹脂を含浸させることによって巻回状態の封筒状膜22の外周に一体に被覆形成されたFRP製の被膜であり、補強用繊維26aによって補強されていることにより、膜モジュール2全体に剛性及び強度を付与している。ここで一体に被覆形成されているとは、合成樹脂被膜26の合成樹脂と巻回状態の封筒状膜22の外周面とが少なくとも一部において密着し、固化した合成樹脂と一体化していることをいう。
【0037】
このような合成樹脂被膜26は、
図2に示すように、巻回状態の封筒状膜22の上から補強用繊維26aを巻回していき、巻回された補強用繊維26aに図示しない合成樹脂を塗布して含浸させ、合成樹脂を固化することによって形成することができる。補強用繊維26aと合成樹脂の塗布、含浸作業は、合成樹脂被膜26が所定の厚み、強度となるように複数回繰り返し行われる。
【0038】
合成樹脂被膜26がこのように補強用繊維26aに合成樹脂を含浸させることによって形成されることで、巻回状態の封筒状膜22の外周面の少なくとも一部と合成樹脂被膜26を形成する合成樹脂とが固着して一体化する。合成樹脂被膜26と固着一体化された封筒状膜22の部分は膜としての機能を果たし得ないが、合成樹脂被膜26と接触する部分は各封筒状膜22の先端部分の極く一部に限られるため、膜処理に実質的に影響を与えるものではない。
【0039】
補強用繊維26aとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これら繊維は長尺な線条体であり、その長尺な線条体の形態のまま巻回状態の封筒状膜22の外周に巻回してもよいし、線条体を用いて形成された織布又は不織布等の布状繊維の形態とし、その布状繊維を巻回状態の封筒状膜22の外周に巻回してもよい。
図2では、補強用繊維26aとして帯状の布状繊維を巻回する例を示している。
【0040】
合成樹脂被膜26を形成する合成樹脂としては、一般に熱硬化性樹脂が用いられる。具体的にはエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0041】
この膜モジュール2によれば、従来の耐圧容器としての外装容器を用いなくても、補強用繊維26aによって補強された合成樹脂被膜26によって剛性及び強度を確保できるため、従来の外装容器を不要として構造を簡素化できると共に、外装容器が不要であることから膜モジュール2の軽量化と低コスト化が図られる。一般に船舶バラスト水を処理水する場合、膜モジュール2の設置本数は極めて膨大な数となるため、膜モジュール2の1本当たりの重量が軽くなることにより膜モジュール2の集合体である膜モジュールユニット1、更には膜モジュールユニット1の集合体であるバラスト水処理装置全体の重量を大幅に軽量化できる。特に船舶がコンテナ船のような荷役船である場合、バラスト水処理装置全体の軽量化により、その分より多くの荷物を搭載することが可能となる。
【0042】
合成樹脂被膜26は、従来の耐圧容器としての外装容器の代わりにスパイラル膜20における巻回状態の封筒状膜22の外周を被覆、保護するものであり、それ自体で膜モジュール2全体の剛性及び強度を確保している。この合成樹脂被膜26の厚みは、スパイラル膜20の外径にもよるが、5mm〜20mmとすることが好ましい。
【0043】
合成樹脂被膜26がこのような厚みを有することによって、外装容器がなくても膜モジュール2全体の剛性及び強度を確保できて原水流路24の変形がなく、円滑な原水の流れを確保できるといった効果の他に、全ての膜モジュール2に一定の水が流れるので、膜の劣化が一様になり、膜モジュール2全体の寿命を延ばすことができ、また、膜モジュール2の交換時の作業性も向上させることができるといった顕著な効果を得ることができる。
【0044】
図3は、このような膜モジュール2を複数本用いて構成される一つの水処理用膜モジュールユニットの斜視図である。
【0045】
水処理用膜モジュールユニット1(以下、単にユニット1という。)は、複数本の膜モジュール2と、これら複数本の膜モジュール2に共通の第1マニホールド3及び第2マニホールド4からなる2つのマニホールドとを有している。
【0046】
膜モジュール2は、第1マニホールド3と第2マニホールド4との間に2本以上並設されればよい。その数は限定されるわけではないが、好ましくは3〜20本の範囲であり、より好ましくは4〜15本であり、さらに好ましくは5〜10本である。本実施形態では6本の膜モジュール2を並設している。
【0047】
第1マニホールド3は、内部に複数の膜モジュール2に共通の原水室を有している。一方、第2マニホールド4は、内部に複数の膜モジュール2に共通の洗浄排液室(原水濃縮液室)と、この洗浄排液室に対して区画され、複数の膜モジュール2に共通の処理水室とを有している。
図3において、31は第1マニホールド3に設けられた原水導入口であり、第1マニホールド3内の原水室と連通している。41は第2マニホールド4に設けられた処理水排出口であり、処理水室と連通している。42は排液排出口であり、洗浄排液室と連通している。
【0048】
本実施形態では、第1マニホールド3及び第2マニホールド4の内部構成は、
図9に示した従来の第1マニホールド200及び第2マニホールド300と同一であるため詳細な説明は省略する。
【0049】
次に、膜モジュール2と第1マニホールド3及び第2マニホールド4との接続構造について
図4〜
図7を用いて説明する。
【0050】
図4は、膜モジュール2の端部に接続用筒状体を設けた状態を示す部分斜視図、
図5は、接続用筒状体の構造を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図、
図6は、膜モジュール2と第1マニホールド3との接続部分を示す断面図、
図7は、膜モジュール2と第2マニホールド4との接続部分を示す断面図である。
【0051】
接続用筒状体5は、金属、合成樹脂、金属と合成樹脂との複合材料、FRP等によって形成され、円筒形状の筒状体本体51の外周に複数条のフランジ部52、53、54a、54bが互いに所定の間隔をおいて突設されている。筒状体本体51は、
図5(b)に示すフランジ部52よりも図示左側に突出しており、この突出部分が、第1マニホールド3及び第2マニホールド4にそれぞれ設けられた膜モジュール取付け用の開口部32、43と嵌合される接続部51aとされている。
【0052】
また、筒状体本体51は、
図5(b)に示すフランジ部53よりも図示右側にも突出しており、このフランジ部53よりも突出した部分が、膜モジュール2の合成樹脂被膜26の端部と接続される接続部51bとされている。
【0053】
筒状体本体51の一方の接続部51aの外径は、第1マニホールド3及び第2マニホールド4にそれぞれ設けられた膜モジュール取付け用の開口部32、43の内径と同一又はやや小径となるように形成されており、他方の接続部51bの外径は、巻回状態の封筒状膜22の外径と同程度となるように形成されている。従って、接続部51bの外周面から突出するフランジ部54a、54bの外径は、巻回状態の封筒状膜22の外径よりもやや大きくなるように形成されている。
【0054】
なお、フランジ部54a、54bの外径は、フランジ部52、53の外径よりもやや小さくなるように形成されている。また、本実施形態では、フランジ部52、53の外径は合成樹脂被膜26の外径と同一又は大きく形成されている。
【0055】
筒状体本体51の内側には、膜モジュール2の集水管21の端部を挿通させて支持する環状の支持環部56が配置されており、この支持環部56の外周面と筒状体本体51の内周面との間が、放射状に延びる複数本の連結腕57によって連結されている。この連結腕57によって、支持環部56は接続用筒状体5の中央に筒状体本体51と同心状に位置している。この支持環部56の内径は、膜モジュール2の集水管21の外径とほぼ同一とされている。
【0056】
連結腕57は、本実施形態では放射状に6本設けられているが、複数本あればよく、特に限定されない。また、筒状体本体51と支持環部56との間で直線状に形成されるものに限らず、曲線状に形成されていてもよい。
【0057】
この接続用筒状体5は、合成樹脂被膜26が形成される前のスパイラル膜20に対して、支持環部56を集水管21の外周に嵌合すると共に筒状体本体51の接続部51b側の端面を巻回状態の封筒状膜22の端面に突き当てるようにして、巻回状態の封筒状膜22の両端部にそれぞれ配置される。このとき、各連結腕57も巻回状態の封筒状膜22の端面に当接する。
【0058】
そして、この状態で、両端部の接続用筒状体5の各フランジ部53よりも内側の接続部51bと巻回状態の封筒状膜22の外周とに亘って、前述したように補強用繊維26aを巻回すると共に合成樹脂を含浸させ、合成樹脂を固化することによって合成樹脂被膜26を一体に被覆形成する。合成樹脂被膜26の端部は、それぞれ接続用筒状体5のフランジ部53、54a、54bの間に形成される溝部分に食い込むことによって、接続用筒状体5と強固に固着一体化され、水密状態とされる。
【0059】
これによって各接続用筒状体5と膜モジュール2とは一体化される。膜モジュール2は、集水管21の一方の閉鎖端部21aが、
図6に示すように、支持環部56内に挿入され、他方の開口端部21bが、
図7に示すように、支持環部56内に挿入されることで、両端が接続用筒状体5によって支持された状態となる。各膜モジュール2は、集水管21の閉鎖端部21a側の接続用筒状体5の筒状体本体51が第1マニホールド3の開口部32に対して嵌合し、集水管21の開口端部21b側の接続用筒状体5の筒状体本体51が第2マニホールド4の開口部43に対して嵌合し、それぞれ接続されるため、合成樹脂被膜26に対して直接的な荷重負荷を与えることはない。
【0060】
筒状体本体51の封筒状膜22側の端面と連結腕57の封筒状膜22側の端面とは面一状となるように形成されているので、各連結腕57は、巻回状態の封筒状膜22の端面に対して径方向に沿って当接する。この連結腕57の当接により、巻回状態の封筒状膜22は、その軸方向(
図6、
図7に示す左右方向)のズレ(テレスコープ現象)が防止される。従って、この連結腕57は封筒状膜22の軸方向ズレ防止部として機能している。また、接続用筒状体5は、封筒状膜22の軸方向ズレの発生を防止するための軸方向ズレ防止部材(ATD)を兼用している。このため、第1マニホールド3及び第2マニホールド4との接続のための部材の他に軸方向ズレ防止部材を別途設ける必要がなく、部品点数が削減されることにより、コンパクト化、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0061】
このように両端部にそれぞれ接続用筒状体5が取り付けられた膜モジュール2と第1マニホールド3との接続は、
図6に示すように、接続用筒状体5の筒状体本体51における接続部51aを、第1マニホールド3の開口部32内に、接着も螺着もせずに、単なる嵌合状態で取り付けることによって行われる。これにより、第1マニホールド3の内部(原水室)と膜モジュール2の内部(原水流路24)とが、隣接する連結腕57、57間を通って連通し、第1マニホールド3から膜モジュール2への原水の流入が可能となる。
【0062】
また、膜モジュール2と第2マニホールド4との接続も、
図7に示すように、接続用筒状体5の筒状体本体51における接続部51aを、第2マニホールド4の開口部43内に、接着も螺着もせずに、単なる嵌合状態で取り付けることによって行われる。その後、第1マニホールド3と第2マニホールド4とに亘って不図示のボルトが架け渡されることで、両者間に複数本の膜モジュール2を保持した状態で連結される。これにより、第2マニホールド4の内部(洗浄排液室)と膜モジュール2の内部(原水流路24)とが、隣接する連結腕57、57間を通って連通し、膜モジュール2から第2マニホールド4への原水の流出が可能となる。また、膜モジュール2の集水管21の開口端部21bは、第2マニホールド4内に区画形成された処理水室と接続されることで、処理水を処理水室に排出可能とされる。
【0063】
このようにして膜モジュール2が接続用筒状体5を介して第1マニホールド3及び第2マニホールド4と接続されるようにしたので、ユニット1は、従来のユニットのような各膜モジュールの耐圧容器としての外装容器がなくなり、ユニット1全体の構成が簡素化されると共に軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0064】
また、膜モジュール2の荷重を、接続用筒状体5の筒状体本体51(接続部51a)で受けることができ、膜モジュール2の合成樹脂被膜26に全く荷重集中させることなく第1マニホールド3及び第2マニホールド4と接続することができる。これにより、膜モジュール2と第1マニホールド3及び第2マニホールド4との間の接続状態を長期に亘って安定して維持することができる。
【0065】
更に、膜モジュール2毎の合成樹脂被膜26に長さ寸法のばらつきが生じていても、接続用筒状体5の接続部51aの各開口部32、43への侵入度合によって吸収することができる。また、膜モジュール2毎に合成樹脂被膜26の外径寸法にばらつきがあっても、合成樹脂被膜26を第1マニホールド3及び第2マニホールド4に直接接続しないので、膜モジュール2と第1マニホールド3及び第2マニホールド4との間の接続状態に影響を与えることはない。これにより膜モジュール2の寸法精度管理を簡素化することができる。
【0066】
しかも、熱の影響によって合成樹脂被膜26に長さ寸法の伸縮が生じても、接続用筒状体5の接続部51aが開口部32、43内を軸方向に移動することで吸収できるため、ユニット1全体の変形が生じることはない。
【0067】
このように筒状体本体51の接続部51aが開口部32、43内を軸方向に好ましく移動できるようにするため、接続部51aのフランジ部52からの突出長さA(
図5(b)参照)は、第1マニホールド3及び第2マニホールド4の開口部32、43の内周面の壁厚B(
図6、
図7参照)よりも十分に大きくすることが好ましい。開口部32、43の外側周縁(膜モジュール2側の周縁)と接続用筒状体5のフランジ部52との間に隙間Sが形成するように筒状体本体51の接続部51aを開口部32、43内に十分に侵入させて嵌合させることにより、膜モジュール2に軸方向の大きな伸縮が生じても、接続用筒状体5の接続部51aが開口部32、43内を軸方向に移動することによって十分に緩衝することができる。
【0068】
第1マニホールド3及び第2マニホールド4の各開口部32、43には、
図6、
図7に示すように、該開口部32、43と嵌合した接続用筒状体5の外周(フランジ部52、53の外周)を更に覆うように、該開口部32、43を囲むように所定高さで突出する筒状フランジ部33、44がそれぞれ形成されている。そして、合成樹脂被膜26の端部から突出している接続用筒状体5のフランジ部52、53の間に形成される溝部55内に、ゴムパッキン等の弾性体からなるシール部材6が装着され、このシール部材6によって、接続用筒状体5の外周面と筒状フランジ部33、44の内周面との間がシールされて水密状態とされている。
【0069】
このように第1マニホールド3、第2マニホールド4にそれぞれ筒状フランジ部33、44を形成し、この内面において接続用筒状体5との間のシールを行うようにすることで、接続用筒状体5と第1マニホールド3の開口部32及び第2マニホールド4の開口部43との間で水密を確保する必要がない。フランジ部52、53の外径は膜モジュール2の合成樹脂被膜26の外径と同一又は大きく形成されているため、これらフランジ部52、53の外側を被覆する筒状フランジ部33、44は、自由にその突出高さを設定できる。このため、シール部材6が潰れることによって形成されるシール面積を軸方向に広く確保することができるようになり、より確実なシールを行うことができる。
【0070】
しかも、シール部材6はフランジ部52、53間で保持されることで軸方向に必要以上に潰れることが阻止されるため、シール部材6が許容量以上に潰れてシール効果を損なってしまうようなことは生じない。
【0071】
また、筒状フランジ部33、44が所定高さで突出していることで、合成樹脂被膜26に軸方向の伸縮が生じることによって接続用筒状体5の接続部51aが開口部32、43内で軸方向に移動した時に、シール部材6も筒状フランジ部33、44の内周面を軸方向に摺動することができ、水密状態を維持することができる。特に、筒状フランジ部33、44を合成樹脂被膜26の外側を覆う程度まで突出させることで、シール部材6が軸方向のいずれの方向に移動しても、シール部材6による確実な水密状態を得ることができる。
【0072】
このように構成されるユニット1は、処理量に応じて複数ユニット組み合わされることによって各種の水処理に供される。このユニット1によってバラスト水を処理する際は、ユニット1が多数ユニット組み合わされ、船舶内に搭載される。
【0073】
次に、このユニット1を用いてバラスト水を処理するバラスト水処理装置を構成した場合の処理方法の一例を
図8に示す。
【0074】
この場合の原水Wは一般に海水であり、バラストポンプ70によって船舶内に汲み上げられ、原水吸込み管71を介して各ユニット1の第1マニホールド3内に供給される。71aは原水吸込み管71に設けられる開閉弁である。
【0075】
各ユニット1の第2マニホールド4の処理水排出口41は処理水管72と接続され、該処理水管72を介してバラストタンク74と連通している。72aは処理水管73に設けられた開閉弁である。
【0076】
また、第2マニホールド4の排液排出口42は原水流出管(洗浄排液放流管)73と接続され、該原水流出管73を介して例えば海へ放流する。73aは原水流出管73に設けられた開閉弁である。
【0077】
バラスト水の処理は、例えば原水Wを各ユニット1に供給して処理水を得る膜処理と膜洗浄を交互に行う。膜処理では、デッドエンド方式による全量ろ過が行われる。この方式は、原水流出管73に設けられた開閉弁73aを閉じ、処理水管72の開閉弁72aを開けて、バラストポンプ70を始動して原水Wを汲み上げ、各ユニット1の第1マニホールド3に供給して、その全量を各膜モジュール2の原水流路24(
図1参照)を通過させることによって行われる。膜処理によって生じた処理水は、処理水排出口41から処理水管72に送られ、バラストタンク74に供給される。
【0078】
また、バラスト水をバラストタンク74に移送する漲水時において、上記の全量ろ過と交互に膜面平行流による膜洗浄(この洗浄をクロスフロー方式による膜洗浄といい、単に方式を指称する場合は、クロスフロー方式という場合がある)を行うことが好ましい。このクロスフロー方式は、原水流出管73に設けられた開閉弁73aを開けて、バラストポンプ70を始動して原水Wを汲み上げ、各ユニット1の第1マニホールド3に供給して、各膜モジュール2内の原水流路24(
図1参照)を通過させて排液排出口42から排出させる。膜モジュール2内を流れる原水Wは、膜モジュール2の封筒状膜22の膜面と平行な流れによって、膜表面の付着物質を剥離させる。排出された付着物質を含む原水(洗浄排液)は、原水流出管73を介して例えば海へ放流されてもよいし、あるいはその洗浄排液を新たに導入される原水W側(原水導入口31)に戻して洗浄排液を濃縮液として循環させてもよい。
【0079】
上記膜面平行流による膜洗浄の際には、処理水管72の開閉弁72aを開いて、膜洗浄と共に原水Wをろ過して処理水を得てもよいし、反対に、開閉弁72aを閉じて、処理水を得ないようにしてもよい。