特許第6062743号(P6062743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062743配信ツリー構築方法、端末管理サーバ及びコンテンツ配信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062743
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】配信ツリー構築方法、端末管理サーバ及びコンテンツ配信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/70 20130101AFI20170106BHJP
【FI】
   H04L12/70 E
   H04L12/70 F
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-3468(P2013-3468)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-135675(P2014-135675A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月1日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 壮
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋介
【審査官】 速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522372(JP,A)
【文献】 特開2011−229132(JP,A)
【文献】 特開2004−199578(JP,A)
【文献】 Biskupski, B. et al.,Tree-based analysis of Mesh Overlays for peer-to-peer streaming,IFIP International Conference on Distributed Applications and Interoperable Systems,Springer Berlin Heidelberg,2008年,pp. 126-139
【文献】 Biersack, E. W. et al.,Overlay architectures for file distribution: Fundamental performance analysis for homogeneous and heterogeneous cases,Computer Networks 51.3,2007年,pp. 901-917
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける配信ツリー構築方法であって、
利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、
前記利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、前記利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、
前記分配能力に応じて、前記利用者端末を分類し、
各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択することを特徴とする配信ツリー構築方法。
【請求項2】
コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける配信ツリー構築方法であって、
利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、
前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力に応じて、前記利用者端末を分類し、
各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択し、
前記利用者端末を前記選択した配信ツリーに接続すると、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の数が、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配可能な総分配能力の数を超える場合に、新たな配信サーバを起動し、前記新たな配信サーバを頂点とする新たな配信ツリーを構築し、前記新たな配信ツリーを、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーとして新たに選択することを特徴とする配信ツリー構築方法。
【請求項3】
請求項1に記載の配信ツリー構築方法において、
前記利用者端末を前記選択した配信ツリーに接続すると、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の数が、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配可能な総分配能力の数を超える場合に、新たな配信サーバを起動し、前記新たな配信サーバを頂点とする新たな配信ツリーを構築し、前記新たな配信ツリーを、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーとして新たに選択することを特徴とする配信ツリー構築方法。
【請求項4】
コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける前記端末管理サーバであって、
利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、前記利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、前記利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、前記分配能力に応じて、前記利用者端末を分類する手段と、
各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択する手段と、を備えたことを特徴とする端末管理サーバ。
【請求項5】
コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおいて、
前記利用者端末は、
前記コンテンツ配信システムに参加する際に、当該利用者端末が接続する接続先の紹介を受けるための要求であって、当該利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、当該利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報を含む接続先紹介要求を前記端末管理サーバへ送信する手段を備え、
前記端末管理サーバは、
前記利用者端末から接続先紹介要求を受信すると、前記接続先紹介要求に含まれる接続要求を受けることができるか否かを示す情報及び伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、前記分配能力に応じて前記利用者端末を分類する手段と、
各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記接続先紹介要求を送信してきた利用者端末が接続する配信ツリーを選択する手段と、
前記選択された配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の情報を、前記接続先紹介要求を送信してきた利用者端末へ送信する手段と、を備えたことを特徴とするコンテンツ配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ配信サービスを提供する際の配信ツリーを構築する方法、端末管理サーバ及びコンテンツ配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを用いたストリーミングによる動画配信サービスが普及している。この動画配信サービスには、受信端末を操作する利用者により視聴したいコンテンツが選択されると、配信サーバからそのコンテンツを受信端末へ伝送するVOD(Video On Demand)のような一対一の配信サービスに加え、配信サーバから同一のコンテンツを多数の受信端末へ同時に伝送する一対多(放送型)の配信サービスがある。
【0003】
IPネットワークにおいては、放送型の動画配信サービスを効率よく行う方式として、IPマルチキャスト(一対多通信)がある。しかし、この方式では、通信事業者の専用ネットワークが必要であり、複数の通信事業者を跨いで配信サービスを実現するのが困難であった。
【0004】
こうした背景から、通信事業者の専用ネットワークを必要とすることなく、複数の通信事業者を跨いだ放送型の動画配信サービスを実現するために、ピアツーピア技術を用いたコンテンツの分散配信技術が開発された。この技術は、コンテンツを要求する受信端末である利用者端末同士で論理的なツリー(配信ツリー)を構築し、利用者端末上で動作するアプリケーションソフトが相互にデータ転送を行うことにより、一対多通信のマルチキャストを実現するものである。
【0005】
例えば、特許文献1に記載されたコンテンツ配信方法では、インターネット等のネットワーク環境において、ノード間でコンテンツのストリームデータの送受信を行うために、各ノードが、上流ノードと下流ノードとの接続関係を示すトポロジ情報を交換し、上流ノードから下流ノードへストリームデータを中継する。この方法では、各ノードは、トポロジ情報を交換するために、自律的にトポロジ情報を記憶、更新及び提供する等の管理を行う機能を備えている。
【0006】
図1は、コンテンツ配信の流れを示す図である。図1に示すように、コンテンツ配信システムにおいて配信されるコンテンツは、その配信元となるコンテンツサーバから、コンテンツ配信事業者が自前の設備として設置する配信サーバ、ISP内部にホスティングする配信サーバ、またはクラウドサービスを利用して設置する配信サーバを経由し、この配信サーバを頂点として利用者端末同士が接続して形成する配信ツリーに沿って、各利用者端末へ配信される。図示しない端末管理サーバは、コンテンツ配信システムに参加する利用者端末を管理しており、複数の配信サーバ(図1ではN台)を頂点とする配信ツリー(図1ではN個)を構築している。各利用者端末は、利用者がコンテンツの視聴を始めるときに、端末管理サーバから接続先となる利用者端末の紹介を受ける。そして、各利用者端末は、複数の配信サーバを頂点とするいずれかの配信ツリーに属する配信サーバまたは利用者端末と接続することになる。
【0007】
また、このようなコンテンツ配信システムでは、配信ツリーを構築する際に、接続しているインターネット回線の送信容量に余裕があり、多くの利用者端末にストリームを分配可能な利用者端末を定常的に確保することにより、多くの利用者端末へコンテンツを安定して配信することができる。
【0008】
新規に視聴が開始される利用者端末が接続する配信ツリーを、複数の配信ツリーから選択する方法として、例えば、特許文献2に記載されたものがある。この配信ツリー構築方法は、新規に参加する利用者端末のネットワーク接続グループを示す所属情報と、既に参加している各利用者端末の示す所属情報とに基づいて、接続先を選択する。これにより、ISP等のネットワーク接続グループが異なる複数の利用者端末が放送システムに参加する場合であっても、コンテンツがインターネットエクスチェンジを介して伝送されることを低減し、長いネットワークを経由することを低減するトポロジーを構築するようにしたから、データパケットの欠落及び遅延を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−169089号公報
【特許文献2】特開2007−13593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、各々の利用者端末が接続しているインターネット回線の送信容量は不均衡であることから、自身の下位階層に接続可能な利用者端末数は異なるものとなる。また、ポート開放不可NAT(Network Address Translation)ルータを介してインターネットに接続している利用者端末のように、他の利用者端末から接続を受付けることができない利用者端末が存在する。さらに、これら利用者端末が任意の順番でコンテンツ配信システムに参加することから、配信ツリーによっては、インターネット回線の送信容量に余裕がある利用者端末が十分に確保されない。このため、従来のコンテンツ配信システムでは、配信ツリーの階層数が多くなってしまい、コンテンツ配信の遅延が増加したり、コンテンツ配信が不安定になったりするという問題があった。
【0011】
また、インターネット回線の送信容量が少ない利用者端末、または他の利用者端末から接続を受付けることのできない利用者端末の割合が多い場合は、その配信ツリーに接続する利用者端末数がその上限を超えてしまうことがあり得る。このため、利用者端末は、配信ツリーに接続できず、コンテンツを受信することができないという問題があった。一方で、そのような問題を回避するために、発生し得る最大限の接続数を事前に見込んで配信サーバを用意することが想定される。しかし、所定数の配信サーバを用意する必要があることから、コスト高になってしまい、配信サーバ数を事前に見積もることが困難であるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンテンツ配信の遅延を均一化し、コンテンツ配信の安定性を向上させることが可能な配信ツリー構築方法、端末管理サーバ及びコンテンツ配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1の配信ツリー構築方法は、コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける配信ツリー構築方法であって、利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、前記利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、前記利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、前記分配能力に応じて、前記利用者端末を分類し、各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の配信ツリー構築方法は、コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける配信ツリー構築方法であって、利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力に応じて、前記利用者端末を分類し、各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択し、前記利用者端末を前記選択した配信ツリーに接続すると、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の数が、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配可能な総分配能力の数を超える場合に、新たな配信サーバを起動し、前記新たな配信サーバを頂点とする新たな配信ツリーを構築し、前記新たな配信ツリーを、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーとして新たに選択することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の配信ツリー構築方法は、請求項1に記載の配信ツリー構築方法において、前記利用者端末を前記選択した配信ツリーに接続すると、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の数が、前記配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配可能な総分配能力の数を超える場合に、新たな配信サーバを起動し、前記新たな配信サーバを頂点とする新たな配信ツリーを構築し、前記新たな配信ツリーを、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーとして新たに選択することを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項4の端末管理サーバは、コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおける前記端末管理サーバであって、利用者端末が前記コンテンツ配信システムに参加する際に、前記利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、前記利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、前記分配能力に応じて、前記利用者端末を分類する手段と、各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記コンテンツ配信システムに参加する利用者端末が接続する配信ツリーを選択する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項5のコンテンツ配信システムは、コンテンツの配信元であるコンテンツサーバと、前記コンテンツサーバからコンテンツを受信する複数の配信サーバと、前記配信サーバを介してコンテンツの配信を受ける複数の利用者端末と、前記配信サーバを頂点として複数の利用者端末が階層的に接続する配信ツリーを構築する端末管理サーバとを備えて構成されるコンテンツ配信システムにおいて、前記利用者端末が、前記コンテンツ配信システムに参加する際に、当該利用者端末が接続する接続先の紹介を受けるための要求であって、当該利用者端末が他の利用者端末からの接続要求を受けることができるか否かを示す情報、及び、当該利用者端末が送受信可能なデータ伝送速度に応じた伝送能力の情報を含む接続先紹介要求を前記端末管理サーバへ送信する手段を備え、前記端末管理サーバが、前記利用者端末から接続先紹介要求を受信すると、前記接続先紹介要求に含まれる接続要求を受けることができるか否かを示す情報及び伝送能力の情報に基づいて、前記利用者端末がコンテンツを下流側の他の利用者端末へ分配する分配能力を決定し、前記分配能力に応じて前記利用者端末を分類する手段と、各配信ツリーにおいて同じ分類に属する利用者端末の割合が均等になるように、前記接続先紹介要求を送信してきた利用者端末が接続する配信ツリーを選択する手段と、前記選択された配信ツリーに属する配信サーバ及び利用者端末の情報を、前記接続先紹介要求を送信してきた利用者端末へ送信する手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、それぞれの配信ツリーにおいて、分配能力に応じた同じ分類に属する利用者端末の割合を均等にすることができる。これにより、各利用者端末におけるコンテンツ配信の遅延を均一化し、コンテンツ配信の安定性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】コンテンツ配信の流れを説明する図である。
図2】本発明の実施形態によるコンテンツ配信システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図3】利用者端末の構成の一例を示すブロック図である。
図4】端末管理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
図5】端末管理サーバの端末情報リスト記憶手段に格納された端末情報リストの一例を示す図である。
図6】端末管理サーバの配信ツリー選択手段による分配可能数算出処理の一例を示すフローチャートである。
図7】配信ツリーを構築する際の利用者端末による処理の一例を示すフローチャートである。
図8】配信ツリーを構築する際の端末管理サーバによる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔コンテンツ配信システム〕
まず、本発明の実施形態によるコンテンツ配信システムについて説明する。図2は、コンテンツ配信システムの全体構成の一例を示す概略図である。このコンテンツ配信システム1は、コンテンツサーバ2、複数の配信サーバ3、複数の利用者端末4、端末管理サーバ5、複数のポート開放可能NATルータ6及び複数のポート開放不可NATルータ7を備えて構成される。コンテンツサーバ2と複数の配信サーバ3とは、コンテンツ中継ネットワーク9を介して接続される。また、複数の配信サーバ3、インターネット8に直接接続している利用者端末4(利用者端末G)、端末管理サーバ5、複数のポート開放可能NATルータ6及びポート開放不可NATルータ7は、インターネット8を介してそれぞれ接続される。さらに、ポート開放可能NATルータ6と利用者端末4(利用者端末R)とは、ローカルネットワーク10を介して接続され、同様に、ポート開放不可NATルータ7と利用者端末4(利用者端末N)とは、ローカルネットワーク10を介して接続される。
【0021】
コンテンツサーバ2は、コンテンツの配信元となるサーバであり、コンテンツ中継ネットワーク9を介して複数の配信サーバ3と接続し、コンテンツのデータパケット(以下、コンテンツデータという。)を各配信サーバ3へ配信する。
【0022】
配信サーバ3は、配信ツリーの頂点となるサーバであり、コンテンツサーバ2から受信したコンテンツデータを、当該配信サーバ3及び利用者端末4が階層的に接続して構成する配信ツリーにおいて当該配信サーバ3に接続している利用者端末4へ、順次配信する。
【0023】
利用者端末4は、コンテンツ配信システム1に参加すると、同じ配信ツリーに属する他の利用者端末と接続し、コンテンツデータを受信し、受信したコンテンツデータを転送する端末である。
【0024】
端末管理サーバ5は、コンテンツ配信システム1に参加している配信サーバ3及び利用者端末4のコンテンツ配信に係る情報である端末情報を保持し、コンテンツ配信システム1に参加する利用者端末4からの接続先紹介要求を受付け、当該利用者端末4が接続すべき配信ツリーを選択し、選択した配信ツリーに関する端末情報を接続先リストとして、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4へ返信する。
【0025】
端末情報には、コンテンツ配信システム1に参加している配信サーバ3及び利用者端末4のIDに対応付けたIPアドレス及びポート番号等のデータ転送に必要な情報、並びに、配信サーバ3及び利用者端末4が属する配信ツリーの配信ツリーID等が含まれる。接続先リストは、利用者端末4の接続先の候補となる配信サーバ3及び利用者端末4の端末情報を一つ以上含むリストである。
【0026】
ポート開放可能NATルータ6は、例えばUPnP(Universal Plug and Play)によるポート開放機能に対応しており、当該ポート開放可能NATルータ6の外部(インターネット8)からの接続要求をローカルネットワーク10内の利用者端末4(利用者端末R)へ転送することができるルータである。よって、ポート開放可能NATルータ6にローカルネットワーク10を介して接続される利用者端末4(利用者端末R)は、インターネット8を介して配信サーバ3、他の利用者端末4(利用者端末R,G)及び端末管理サーバ5との間で、TCP/IP等の通信プロトコルにより相互に接続要求及びその受付けが可能であり、接続を確立したうえで、データを送受信する。この利用者端末4(利用者端末R)は、他の利用者端末4からの接続要求を受付けることができるため、到達可の利用者端末4である。
【0027】
ポート開放不可NATルータ7は、例えばUPnPによるポート開放機能等に対応していないか、または対応していても当該機能を無効にしていることにより、当該ポート開放不可NATルータ7の外部からの接続要求をローカルネットワーク10内の利用者端末4(利用者端末N)へ転送することができないルータである。よって、ポート開放不可NATルータ7にローカルネットワーク10を介して接続される利用者端末4(利用者端末N)は、インターネット8を介して配信サーバ3、他の利用者端末4(利用者端末R,G)及び端末管理サーバ5との間で、自身が接続要求を行うことで接続を確立し、データを送受信することは可能であるが、配信サーバ3、他の利用者端末4(利用者端末R,G,N)、端末管理サーバ5からの接続要求を受付けることはできない。この利用者端末4(利用者端末N)は、他の利用者端末4からの接続要求を受付けることができないため、到達不可の利用者端末4である。
【0028】
〔利用者端末〕
次に、図2に示した利用者端末4について説明する。図3は、利用者端末4の構成の一例を示すブロック図である。この利用者端末4(利用者端末R,G,N)は、通信I/F40、通信環境計測手段41、記憶手段44、接続先紹介要求手段45、接続制御手段46、コンテンツデータ中継手段47、コンテンツバッファ48及びコンテンツ再生手段49を備えている。通信環境計測手段41は、到達可否判定部42及び帯域計測部43を備えている。
【0029】
通信環境計測手段41の到達可否判定部42は、自端末(自身の利用者端末4)が他の利用者端末4から接続要求を受付けることができるか否かを判断することにより、到達可または到達不可を判定し、その判定結果の到達可否情報を記憶手段44に格納する。前述のとおり、「到達可」は、当該利用者端末4が外部からの接続要求を受付けることができることを示す。図2に示した利用者端末R,Gは、「到達可」の利用者端末4である。また、「到達不可」は、当該利用者端末4が外部からの接続要求を受付けることができないことを示す。図2に示した利用者端末Nは、「到達不可」の利用者端末4である。
【0030】
具体的には、到達可否判定部42は、自端末がインターネット8に直接接続しているか否かを判断する。また、到達可否判定部42は、インターネット8に直接接続していないと判断し、ローカルネットワーク10を介してポート開放可能NATルータ6またはポート開放不可NATルータ7に接続している場合は、当該ルータが外部からの接続要求を自端末へ転送できるか否かを判断する。例えば、到達可否判定部42は、自端末のIPアドレスを送信元アドレスとし、当該送信元アドレスを折り返すように設定したデータを、通信I/F40を介してインターネット8に直接接続している所定のサーバへ送信する。そして、到達可否判定部42は、通信I/F40を介して受信した送り返しのデータから、送り返しの送信元アドレスと自端末のIPアドレスとが一致する場合、自端末はインターネット8に直接接続していると判断し、自端末は到達可の利用者端末4であると判定する。一方、到達可否判定部42は、送り返しの送信元アドレスと自端末のIPアドレスとが一致しない場合、自端末はインターネット8に直接接続していないと判断し、ローカルネットワーク10を介してポート開放可能NATルータ6またはポート開放不可NATルータ7に接続していると判断する。
【0031】
そして、到達可否判定部42は、接続しているポート開放可能NATルータ6またはポート開放不可NATルータ7に対してポート開放要求を行い、その結果、ポート開放可能の応答がある場合、当該ルータが外部からの接続要求を自端末へ転送できると判断し、自端末は到達可の利用者端末4であると判定する。一方、到達可否判定部42は、ポート開放不可能の応答がある場合、または応答がない場合(ポート開放が無効の場合)に、当該ルータが外部からの接続要求を自端末へ転送できないと判断し、自端末は到達不可の利用者端末4であると判定する。
【0032】
帯域計測部43は、自端末のコンテンツデータの送受信に係る帯域の伝送能力を計測し、計測した伝送能力を記憶手段44に格納する。例えば、単位時間において大容量のデータを送受信できる場合は、高い伝送能力の値が計測され、小容量のデータしか送受信できない場合は、低い伝送能力の値が計測される。具体的には、帯域計測部43は、過去の通信履歴からネットワークのスループット(Mbit/sec)を計測し、または事前にスループットを計測し、計測したスループットを伝送能力とする。また、帯域計測部43は、自端末が接続している契約回線種別の情報に応じて予め設定された規定値(例えば、契約回線種別がFTTH、ADSLまたは携帯回線の場合、FTTHでは“10Mbit/sec”、ADSLでは“2Mbit/sec”、携帯回線では“0.5Mbit/sec”)を伝送能力とする。
【0033】
到達可否判定部42により判定された到達可否の情報及び帯域計測部43により計測された帯域の伝送能力の情報は、端末管理サーバ5において、当該利用者端末4が接続する配信ツリーを選択する際に、当該利用者端末4をその分配能力に応じて分類するための分配可能数を算出するために用いられる。
【0034】
記憶手段44には、自端末の端末ID、接続待受けアドレス(IPアドレス及びポート番号等のデータ転送に必要な情報)、通信環境計測手段41の到達可否判定部42により判定された到達可否の情報、帯域計測部43により計測された帯域の伝送能力の情報、後述する接続先紹介要求手段45からの接続先紹介要求に対する接続先リスト、並びに接続制御手段46により接続制御された接続先(コンテンツデータが送信されてくる上流側)の端末情報及び接続元(受信したコンテンツデータを送信する下流側)の端末情報等が格納される。
【0035】
接続先紹介要求手段45は、コンテンツ配信システム1に参加する際に、記憶手段44から自端末の端末ID、接続待受けアドレス、到達可否及び伝送能力の情報を読み出し、これらの情報を含む接続先紹介要求を、通信I/F40を介して端末管理サーバ5へ送信する。また、接続先紹介要求手段45は、送信した接続先紹介要求に対する接続先リストを、端末管理サーバ5から通信I/F40を介して受信し、受信した接続先リストを記憶手段44に格納する。
【0036】
接続制御手段46は、記憶手段44から接続先リストを読み出し、自端末の接続相手(接続先)となる配信サーバ3または他の利用者端末4を所定の処理により選択し、選択した配信サーバ3または他の利用者端末4へ通信I/F40を介して接続要求を行う。また、接続制御手段46は、他の利用者端末4から通信I/F40を介して接続要求を受付ける。
【0037】
コンテンツデータ中継手段47は、上流側の接続先である他の利用者端末4からコンテンツデータを順次受信し、受信したコンテンツデータを下流側の接続元である他の接続先端末4へ中継する。また、コンテンツデータ中継手段47は、受信したコンテンツデータをコンテンツバッファ48に格納する。コンテンツ再生手段49は、コンテンツバッファ48からコンテンツデータを読み出し、読み出したコンテンツデータを順次デコードして再生する。
【0038】
〔端末管理サーバ〕
次に、図2に示した端末管理サーバ5について説明する。図4は、端末管理サーバ5の構成の一例を示すブロック図である。この端末管理サーバ5は、通信I/F50、接続先紹介要求受付手段51、端末情報リスト記憶手段52、配信ツリー選択手段53、配信サーバ起動手段54、接続先リスト作成手段55及び接続先リスト送信手段56を備えている。
【0039】
接続先紹介要求受付手段51は、利用者端末4から通信I/F50を介して接続先紹介要求を受信し、受信した接続先紹介要求から到達可否及び伝送能力の情報を抽出し、これらの情報を配信ツリー選択手段53に出力する。また、接続先紹介要求受付手段51は、受信した接続先紹介要求から端末ID及び接続待受けアドレスの情報を抽出し、これらの情報を端末情報リスト記憶手段52に格納する。
【0040】
端末情報リスト記憶手段52には、接続先紹介要求受付手段51により接続先紹介要求から抽出された端末ID及び配信サーバ3のID(以下、配信サーバ3のIDも利用者端末4のIDと同様に端末IDという。)、接続先紹介要求受付手段51により接続先紹介要求から抽出された接続待受けアドレス、後述する配信ツリー選択手段53により選択された配信ツリーの識別情報(配信ツリーID)及び算出された分配可能数等の情報が端末情報リストとして格納される。
【0041】
図5は、端末情報リスト記憶手段52に格納された端末情報リストの一例を示す図である。端末情報リスト記憶手段52の端末情報リストは、配信サーバ3及び利用者端末4の端末IDに関連付けた接続待受けアドレス、配信ツリーID及び分配可能数から構成される。つまり、接続待受けアドレス、配信ツリーID及び分配可能数は、配信サーバ3及び利用者端末4の端末IDに対応している。
【0042】
ここで、端末IDは、配信サーバ3及び利用者端末4を一意に識別する識別子である。接続待受けアドレスは、他の利用者端末4から接続要求を受付けることができるIPアドレス及びポート番号の組である。ただし、到達可否情報が「到達不可」を示している利用者端末4の場合は、他の利用者端末4からの接続要求を受付けることができないため、ポート番号を“−−−−”と示している。
【0043】
配信ツリーIDは、配信サーバ3を頂点とする配信ツリーを一意に識別する識別子であり、配信サーバ3及び利用者端末4の端末IDに対応付けて、当該配信サーバ3及び利用者端末4が属する配信ツリーのIDを示している。
【0044】
分配可能数は、配信サーバ3及び利用者端末4が他の利用者端末4へコンテンツデータを同時に分配可能なストリーム数であり、言い換えれば、配信サーバ3及び利用者端末4の下流側に直接接続可能な他の利用者端末4の数を示している。
【0045】
図4に戻って、配信ツリー選択手段53は、接続先紹介要求受付手段51から到達可否及び伝送能力の情報を入力し、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4の分配可能数を算出し、当該利用者端末4をどの配信ツリーに接続させるかを選択する。分配可能数算出処理については、後述する図6にて詳細に説明する。また、配信ツリー選択処理については、後述する図8にて詳細に説明する。
【0046】
配信ツリー選択手段53は、算出した分配可能数及び選択した配信ツリーの配信ツリーIDを、接続先紹介要求受付手段51が格納した端末ID及び接続待受けアドレスに対応させて端末情報リスト記憶手段52に格納し、配信ツリーIDを接続先リスト作成手段55に出力する。また、配信ツリー選択手段53は、新規の配信ツリーを選択した場合、配信サーバ起動手段54に対し、その配信ツリーの頂点となる配信サーバ3を起動させる。
【0047】
図6は、配信ツリー選択手段53による分配可能数算出処理の一例を示すフローチャートである。配信ツリー選択手段53は、利用者端末4の分配可能数を算出する際に、入力した到達可否及び伝送能力の情報、並びに予め設定されたストリーム(順次配信される一連のコンテンツデータ)のビットレートを用いる。まず、配信ツリー選択手段53は、伝送能力を、予め設定されたストリームのビットレートで除算し、ストリームのビットレートに対する伝送能力の比率を算出する(ステップS601)。
【0048】
配信ツリー選択手段53は、到達可否情報が到達可を示しているかまたは到達不可を示しているかを判定し(ステップS602)、到達可を示していると判定した場合(ステップS602:到達可)、ステップS601にて算出した比率が4以上であるか否かを判定する(ステップS603)。配信ツリー選択手段53は、ステップS603において、比率が4以上であると判定した場合(ステップS603:Yes)、分配可能数を4に設定する(ステップS604)。一方、配信ツリー選択手段53は、ステップS603において、比率が4以上でないと判定した場合(ステップS603:No)、ステップS605へ移行する。
【0049】
配信ツリー選択手段53は、ステップS603から移行して、比率が4よりも小さくかつ2以上である条件を満たしているか否かを判定し(ステップS605)、この条件を満たしていると判定した場合(ステップS605:Yes)、分配可能数を2に設定する(ステップS606)。
【0050】
一方、配信ツリー選択手段53は、ステップS605において、この条件を満たしていないと判定した場合(ステップS605:No)、または、ステップS602において、到達可否情報が到達不可を示していると判定した場合(ステップS602:到達不可)、分配可能数を0に設定する(ステップS607)。
【0051】
このように、配信ツリー選択手段53により、到達可否及び伝送能力の情報、並びに予め設定されたストリームのビットレートを用いて分配可能数4,2,0が算出される。
【0052】
図4に戻って、配信サーバ起動手段54は、配信ツリー選択手段53からの起動指令に従って、新規の配信ツリーの頂点となる配信サーバ3を起動する。また、配信サーバ起動手段54は、起動した配信サーバ3の端末IDを端末情報リスト記憶手段52に格納する。この場合、配信ツリー選択手段53は、配信サーバ起動手段54により端末情報リスト記憶手段52に格納された新規の配信サーバ3の端末IDに対応させて、予め設定された接続待受けアドレス、選択した配信ツリーID、及び予め設定された分配可能数を端末情報リスト記憶手段52に格納する。
【0053】
接続先リスト作成手段55は、配信ツリー選択手段53から配信ツリーIDを入力し、その配信ツリーIDに対応する一つまたは複数の、配信サーバ3及び利用者端末4の端末ID、接続待受けアドレス及び分配可能数の情報を端末情報リスト記憶手段52の端末情報リストから読み出し、読み出した情報を接続先リストとして作成する。これにより、配信ツリー選択手段53により選択された配信ツリーに接続されている配信サーバ3及び利用者端末4の端末情報が接続先リストとして作成される。
【0054】
接続先リスト送信手段56は、接続先リスト作成手段55から接続先リストを入力し、入力した接続先リストを、通信I/F50を介して接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4へ送信する。
【0055】
〔動作〕
次に、本発明の実施形態による配信ツリー構築方法を実現する図3に示した利用者端末4及び図4に示した端末管理サーバ5の動作について説明する。図7は、配信ツリーを構築する際の利用者端末4による処理の一例を示すフローチャートであり、図8は、配信ツリーを構築する際の端末管理サーバ5による処理の一例を示すフローチャートである。図7を参照して、利用者端末4がコンテンツ視聴アプリケーションを起動し、利用者により視聴対象のコンテンツが選択されると、利用者端末4の接続先紹介要求手段45は、記憶手段44から自端末の端末ID、接続待受けアドレス、到達可否及び伝送能力の情報を読み出し、これらの情報を含む接続先紹介要求を、通信I/F40を介して端末管理サーバ5へ送信する(ステップS701)。尚、接続先紹介要求が送信される前に、通信環境計測手段41の到達可否判定部42は到達可否を判定し、帯域計測部43は帯域の伝送能力を計測し、これらの情報が記憶手段44に格納されているものとする。
【0056】
図8を参照して、端末管理サーバ5の接続先紹介要求受付手段51は、利用者端末4から通信I/F50を介して接続先紹介要求を受信し、受付ける(ステップS801)。そして、配信ツリー選択手段53は、接続先紹介要求に含まれる到達可否及び伝送能力の情報に基づいて、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4の分配可能数を算出する(ステップS802)。
【0057】
以下、分配可能数が3段階(m,n,0)のいずれかに設定されるものとし、配信ツリー選択手段53により、利用者端末4の分配可能数xとして、m,n,0のいずれかが算出される。また、配信サーバ3の分配可能数をS(予め設定された数)とし、m,nは、m>nとなる正の整数とする。また、現在構築されている配信ツリーの数をNとし、全ての配信ツリーにおいて分配可能数がxの利用者端末4の総数をNxallとし、分配可能数がxでありかつ配信ツリーIDがiの配信ツリーに属している利用者端末4の数をNxiとする。
【0058】
配信ツリー選択手段53は、ループ変数iをi=0に設定し(ステップS803)、ループ変数iにおいて、NxallをNで除算し、1つの配信ツリーにおいて分配可能数xの利用者端末4の数における平均値を求め、Nxiがその平均値より小さいか否か、すなわち、以下の条件式を満たすか否かを判定する(ステップS804)。
〔条件式1〕
Nxi<Nxall/N ・・・(1)
【0059】
配信ツリー選択手段53は、ステップS804において、前記条件式(1)を満たさないと判定した場合(ステップS804:No)、ループ変数iをインクリメントして(ステップS805)、ステップS804へ戻る。一方、配信ツリー選択手段53は、ステップS804において、前記条件式(1)を満たすと判定した場合(ステップS804:Yes)、ステップS806へ移行する。
【0060】
ここで、前記条件式(1)は、分配可能数xの利用者端末4が、それぞれの配信ツリーに均等に配置されているか否かを判定する式である。具体的には、配信ツリーID=iにおける分配可能数xの利用者端末4の数と、各配信ツリーに属する分配可能数xの利用者端末4の数における平均値とを比較する式である。配信ツリーID=iにおける分配可能数xの利用者端末4の数が、各配信ツリーにおけるその平均値よりも小さい場合、後述する処理において、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が接続する配信ツリーとして、当該配信ツリーID=iの配信ツリーが選択されるか、または新規の配信ツリーが選択される。一方、配信ツリーID=iにおける分配可能数xの利用者端末4の数が、各配信ツリーにおけるその平均値以上である場合、他の配信ツリーについて前記条件式(1)を判定する。尚、全ての配信ツリーにおいて、前記条件式(1)を満たさない場合、処理が中止される。
【0061】
配信ツリー選択手段53は、ステップS804から移行して、ループ変数iにおいて、その配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4における総分配可能数(その配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4により、現時点で接続可能な数の最大値)を算出してパラメータαを乗算し、その配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の数を算出し、パラメータαを乗算した総分配可能数と、その配信ツリーに属する配信サーバ3等の数とを比較し、前者が後者以上であるか否か、すなわち、
以下の条件式を満たすか否かを判定する(ステップS806)。
〔条件式2〕
α・(m・Nmi+n・Nni+S)≧Nmi+Nni+N0i+1 ・・・(2)
【0062】
ここで、前記条件式(2)は、配信ツリーID=iの配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の総分配可能数が、配信ツリーID=iの配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の数以上であるか否かを判定する式である。パラメータαは、コンテンツ配信システム1に余裕を与える変数であり、1以下の任意の値が設定される。例えば、α=0.8の場合、総分配可能数の8割を上限として、配信サーバ3及び利用者端末4の数がその上限を超えないように、後述する処理において、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が接続する配信ツリーを選択することができる。
【0063】
配信ツリー選択手段53は、ステップS806において、前記条件式(2)を満たすと判定した場合(ステップS806:Yes)、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が接続する配信ツリーの配信ツリーIDをiに決定する(ステップS807)。
【0064】
これにより、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が配信ツリーID=iの配信ツリーに接続することで、配信ツリーID=iにおける分配可能数xの利用者端末4の数が、各配信ツリーにおけるその平均値に近づくことになり、各配信ツリーに属する分配可能数xの利用者端末4の数を、配信ツリー間で均等にすることができる。つまり、ステップS804の条件により、それぞれの配信ツリーにおいて同じ分配能力を有する利用者端末4の割合を均等にすることができ、ステップS806の条件により、配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の総合的な分配能力を配信ツリー間で均等にすることができる。
【0065】
一方、配信ツリー選択手段53は、ステップS806において、前記条件式(2)を満たさないと判定した場合(ステップS806:No)、配信ツリーID=N+1の配信ツリーを追加し、配信サーバ起動手段54に、配信ツリーID=N+1の配信ツリーの頂点となる新規の配信サーバ3を起動させる。配信サーバ起動手段54は、配信ツリー選択手段53からの起動指令を受けて新規の配信サーバ3を起動し、配信ツリー選択手段53は、現在構築されている配信ツリーの数Nをインクリメントする(ステップS808)。ここで、前記条件式(2)を満たさない場合とは、当該利用者端末4が配信ツリーID=iの配信ツリーに接続されたとすると、この配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の数が、この配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4がコンテンツデータを下流側の他の利用者端末4へ分配可能な総分配可能数を超える場合を示している。
【0066】
配信ツリー選択手段53は、新規の配信サーバ3の情報(端末ID、接続待受けアドレス、配信ツリーID=N+1、及び分配可能数)を端末情報リスト記憶手段52に格納し、これらの情報を端末情報リストに追加する(ステップS809)。新規の配信サーバ3の端末ID、接続待受けアドレス及び分配可能数は、予め設定されているものとする。そして、配信ツリー選択手段53は、ループ変数iにN+1を設定し(ステップS810)、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が接続する配信ツリーの配信ツリーIDをi=N+1に決定する(ステップS807)。すなわち、配信ツリー選択手段53は、配信ツリーID=i(ステップS810においてループ変数iにi=N+1を設定する以前のi)の代わりに、配信ツリーID=N+1を選択しなおし、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が接続する配信ツリーとして、配信ツリーID=N+1の配信ツリーを決定する。
【0067】
これにより、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が新規の配信ツリーID=N+1の配信ツリーに接続することで、新規の配信ツリー以外の既存の配信ツリーにおいて、同じ分配能力を有する利用者端末4の割合を均等に保つと共に、配信サーバ3及び利用者端末4の総合的な分配能力を既存の配信ツリー間で均等に保つことができる。
【0068】
配信ツリー選択手段53は、ステップS807から移行して、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4が配信ツリーID=iの配信ツリーに属するものとして、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4の端末IDに対応する配信ツリーID=iを端末情報リスト記憶手段52に格納し、端末情報リストを更新する(ステップS811)。
【0069】
接続先リスト作成手段55は、配信ツリーID=iの配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の端末情報を端末情報リスト記憶手段52の端末情報リストから読み出して抽出し、接続先リストを作成する(ステップS812)。そして、接続先リスト送信手段56は、接続先リスト作成手段55により作成された接続先リストを、通信I/F50を介して、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4へ送信する(ステップS813)。
【0070】
図7に戻って、利用者端末4の接続先紹介要求手段45は、送信した接続先紹介要求に対する接続先リストを、端末管理サーバ5から通信I/F40を介して受信し(ステップS702)、接続制御手段46は、接続先リストに含まれる配信サーバ3及び利用者端末4の端末情報から、接続要求を行う配信サーバ3または利用者端末4の接続先を選択し、接続処理を行う(ステップS703)。
【0071】
これにより、それぞれの配信ツリーにおいて同じ分配能力を有する利用者端末4の割合を均等にすることができ、配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の総合的な分配能力を配信ツリー間で均等にすることができるコンテンツ配信システム1を実現することが可能となる。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態によれば、端末管理サーバ5の配信ツリー選択手段53は、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4の到達可否及び伝送能力の情報に基づいて分配可能数を算出し、同じ分配可能数の利用者端末4の数が各配信ツリーにおいて均等になるように、当該利用者端末4が接続する配信ツリーを選択するようにした。すなわち、配信ツリー選択手段53は、当該利用者端末4をコンテンツの分配能力に応じて分類し、各配信ツリーにおいて、同じ分類に属する利用者端末4の割合が均等になるように、当該利用者端末4が接続する配信ツリーを選択するようにした。これにより、他の利用者端末4から接続要求を受付けることができない利用者端末4が存在すること、及び各利用者端末4のインターネット回線の送信容量が異なることを考慮して、分配能力に応じた同じ分類に属する利用者端末4の割合が配信ツリー間で均等になるように、当該利用者端末4が接続する配信ツリーが選択される。したがって、それぞれの配信ツリーにおいて同じ分配能力を有する利用者端末4の割合を均等にすることができ、配信ツリーに属する配信サーバ3及び利用者端末4の総合的な分配能力を配信ツリー間で均等にすることができる。つまり、各配信ツリーの階層数がほぼ同じになるから、コンテンツ配信の遅延を均一化し、コンテンツ配信の安定性を向上させることが可能となる。
【0073】
また、本発明の実施形態によれば、端末管理サーバ5の配信ツリー選択手段53は、当該利用者端末4が接続する配信ツリーを選択する際に、現在構築されている配信ツリーに接続すると、当該配信ツリーの総分配可能数(総分配能力)を超えてしまう場合に、配信サーバ起動手段54に新規の配信サーバ3を起動させ、当該新規の配信サーバ3を頂点とする配信ツリーを新たに構築し、新規に構築した配信ツリーを、当該利用者端末4が接続する配信ツリーとして選択するようにした。これにより、現在構築している配信ツリーに接続することができない利用者端末4、すなわちコンテンツを受信できない利用者端末4が発生することを回避することが可能となる。また、発生し得る最大限の接続数を事前に見込んで配信サーバ3を用意する必要がないから、コストを低減して経済的な配信ツリーを構築することが可能になる。
【0074】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、端末管理サーバ5の配信ツリー選択手段53は、接続先紹介要求を送信してきた利用者端末4の到達可否及び伝送能力の情報に基づいて、当該利用者端末4によるコンテンツの分配能力として分配可能数(下流側に接続可能な利用者端末4の数)を算出し、同じ分配能力を有する利用者端末4の数が各配信ツリーにおいて均等になるように、当該利用者端末4が接続する配信ツリーを選択するようにした。これに対し、配信ツリー選択手段53は、当該利用者端末4によるコンテンツの分配能力として、利用者端末4から受信した伝送能力の情報を、当該利用者端末4によるコンテンツの分配能力とし、配信ツリーを選択するようにしてもよい。例えば、配信ツリー選択手段53は、利用者端末4における送信容量、スループット、または利用者端末4が接続している契約回線種別の情報に応じて予め設定された規定値を分配能力としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 コンテンツ配信システム
2 コンテンツサーバ
3 配信サーバ
4 利用者端末
5 端末管理サーバ
6 ポート開放可能NATルータ
7 ポート開放不可NATルータ
8 インターネット
9 コンテンツ中継ネットワーク
10 ローカルネットワーク
40 通信I/F
41 通信環境計測手段
42 到達可否判定部
43 帯域計測部
44 記憶手段
45 接続先紹介要求手段
46 接続制御手段
47 コンテンツデータ中継手段
48 コンテンツバッファ
49 コンテンツ再生手段
50 通信I/F
51 接続先紹介要求受付手段
52 端末情報リスト記憶手段
53 配信ツリー選択手段
54 配信サーバ起動手段
55 接続先リスト作成手段
56 接続先リスト送信手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8