(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062767
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ガス測定装置及びガス測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20170106BHJP
【FI】
G01N21/3504
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-40074(P2013-40074)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167451(P2014-167451A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】徳尾 聖一
(72)【発明者】
【氏名】射庭 彩人
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠人
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−049171(JP,A)
【文献】
特開平06−347403(JP,A)
【文献】
特開2001−324446(JP,A)
【文献】
特開平09−182740(JP,A)
【文献】
特開2012−052880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/3504
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源から発せられた赤外線が、赤外線検出素子に到達した赤外線量に応じて、測定対象ガスの濃度が表示されるガス測定装置において、
内部空間に測定対象ガスを導入することが可能な測定セルと、
前記赤外線検出素子からの出力に基づいて前記内部空間の測定対象ガスの濃度判定を行う演算部と、
前記光源と演算部とを制御する制御部と、を備え、
前記光源は、測定対象ガスにより吸収される吸収波長帯の赤外線と吸収されない非吸収波長帯の赤外線の両方を同時に発光可能であり、
前記赤外線検出素子は、前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線に対して感度を有するとともに、当該赤外線発光素子には、前記光源から発せられた前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線が到達するようになっており、
前記制御部は、前記光源から発せられる赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させる制御を実行可能であり、前記光源から発せられる赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させている期間内に、前記赤外線検出素子の出力を複数回取得し、該取得された出力群に基づいて測定対象ガスの濃度判定のための演算を前記演算部に実行させることを特徴とするガス測定装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記光源から発せられる赤外線のピークの連続的変化に基づいて、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする請求項1に記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記光源の温度の連続的変化に基づいて、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス測定装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記光源が点灯開始制御されてからの所定期間内と、前記光源が消灯制御されてから所定期間内との、いずれかの期間内に、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガス測定装置。
【請求項5】
前記演算部が、前記光源が未発光時の赤外線検出素子の出力に基づいて前記光源以外からの赤外線輻射によるオフセットを相殺することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項6】
前記測定対象ガスが、CO2であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項7】
前記光源と前記赤外線検出素子との間の光路に介挿された光学フィルタをさらに備え、該光学フィルタは、前記吸収波長帯及び非吸収波長帯の赤外線に対する透過率が、最大透過率の50%以上の透過率を持つ連続した波長帯域に含まれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記発光スペクトルが連続的変化している期間内に、赤外線検出素子からの出力を取得するタイミングを制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項9】
前記制御部が、前記光源の温度又は光源の点灯開始後経過時間と、消灯制御後経過時間との、いずれかに基づいて赤外線検出素子からの出力を取得するタイミングを制御することを特徴とする請求項8に記載のガス測定装置。
【請求項10】
光路に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源から発せられた赤外線が、赤外線検出素子に到達した赤外線量に応じて、測定対象ガスの濃度として表示されるようにしたガス測定方法において、
前記光源から発せられる赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させながら、前記吸収波長帯の赤外線と、前記非吸収波長帯の赤外線とを、前記光源から両方同時に発せさせ、前記光源から発せられた前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線を赤外線検出素子に到達させる発光工程と、
前記光源から発せられた赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させている期間内に赤外線検出素子からの出力を複数回取得して出力群を得る発光時出力取得工程と、
前記出力群に基づいて測定対象ガスの濃度判定のための演算を実行するガス濃度演算工程と、を有することを特徴とするガス測定方法。
【請求項11】
前記発光スペクトルの連続的変化は、前記光源の温度の連続的変化によることを特徴とする請求項10に記載のガス測定方法。
【請求項12】
前記光源の未発光時に取得された赤外線検出素子の出力を取得する未発光時出力取得工程を更に有し、
前記ガス濃度演算工程は、前記未発光時出力取得工程により前記光源の未発光時に取得された赤外線検出素子の出力と、前記出力群とに基づいて前記演算を実行することを特徴とする請求項11に記載のガス測定方法。
【請求項13】
前記演算は、前記出力群に関する下記式(1)により導出された透過率Aλ
i(c)に基づいて実行されることを特徴とする請求項10、11又は12に記載のガス測定方法。
【数1】
(ただし、I
all(T,c)は光源温度T[℃]、ガス濃度cにおける赤外線検出素子の出力群(I
all(T,C))を示し、Aλ
i(c)はガス濃度cにおける波長帯λiの赤外線の透過率を示し、Iλ
i(T)はガス濃度ゼロ、温度T[℃]における波長帯λiの赤外線に対する赤外線検出素子の出力を示し、nは赤外線検出素子に入射する赤外線スペクトルの範囲を分割する数で2以上の整数を示す。)
【請求項14】
前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記n以上であり、前記式(1)で表される前記出力群(Iall(T,C))から最小二乗法を用いて各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする請求項13に記載のガス測定方法。
【請求項15】
前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記nに等しく、前記式(1)で表される出力群(Iall(T,C))の逆行列を解くことにより各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする請求項13に記載のガス測定方法。
【請求項16】
前記透過率Aλi(c)において、ガス吸収のない波長帯域λrefの透過率Aλref(c)を参照用パラメータとして、他の波長帯の透過率との比率を求める演算を実行することを特徴とする請求項13に記載のガス測定方法。
【請求項17】
前記制御部は、前記出力群に関する下記式(1)により導出された透過率Aλi(c)に基づいて前記演算を前記演算部に実行させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のガス測定装置。
【数2】
(ただし、Iall(T,c)は光源温度T[℃]、ガス濃度cにおける赤外線検出素子の出力群(Iall(T,C))を示し、Aλi(c)はガス濃度cにおける波長帯λiの赤外線の透過率を示し、Iλi(T)はガス濃度ゼロ、温度T[℃]における波長帯λiの赤外線に対する赤外線検出素子の出力を示し、nは赤外線検出素子に入射する赤外線スペクトルの範囲を分割する数で2以上の整数を示す。)
【請求項18】
前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記n以上であり、前記式(1)で表される前記出力群(Iall(T,C))から最小二乗法を用いて各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする請求項17に記載のガス測定装置。
【請求項19】
前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記nに等しく、前記式(1)で表される出力群(Iall(T,C))の逆行列を解くことにより各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする請求項17に記載のガス測定装置。
【請求項20】
前記透過率Aλi(c)において、ガス吸収のない波長帯域λrefの透過率Aλref(c)を参照用パラメータとして、他の波長帯の透過率との比率を求める演算を実行することを特徴とする請求項17に記載のガス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス測定装置及びガス測定方法に関し、より詳細には、光路に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源から発せられた赤外線が、赤外線検出素子に到達した赤外線量に応じて、測定対象ガスの濃度として表示されるガス測定装置及びガス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から大気中のガスの測定を行う赤外線ガス測定装置として、ガスの種類によって吸収される赤外線の波長が異なることを利用し、この吸収量を検出することによりそのガス濃度を測定する非分散赤外吸収型(Non−Dispersive Infrared)ガス測定装置が知られている。このガス測定装置は、検出するガスが吸収特性を持つ波長に限定した赤外線を透過するフィルタ(透過部材)と赤外線センサを組み合わせ、その吸収量を測定することによってガスの濃度を測定するようにしたものである。
【0003】
このガス測定装置は、測定対象のガスによる赤外線の吸収が生じない波長域の赤外線を選択的に透過する参照用フィルタと、測定対象のガスによる赤外線の吸収が生じる波長域の赤外線を選択的に透過する測定用フィルタをそれぞれ配置した赤外線検出素子を複数配置し、それぞれの赤外線検出素子からの出力信号に基づいて測定対象のガスの有無や濃度を検出している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のものは、検出精度や出力の安定性を向上させたガス測定装置及びCO
2検出方法である。以下、これらも含めて、ガス測定装置及びガス測定方法ともいう。その動作原理は、波長による吸収度合いの差異を、CO
2検出に応用したものである。光源であるセラミックヒータから放射された赤外線において、波長4.3μm付近の赤外線は、気体容器内のCO
2により吸収されて、その放射強度が低下する。一方、波長3.9μmの赤外線は、CO
2による吸収はなく、その放射強度が低下することはない。
【0005】
そして、ガス測定装置の気体容器内を通過した異なる波長を含む赤外線から、波長4.3μmと波長3.9μmとの2波を、2波それぞれに対応した通過帯域を有する2種類の光学フィルタで濾波選別する。これら波長の異なる赤外線それぞれの放射強度に基づいて、気体容器内のCO
2の濃度が算出される。セラミックヒータの放射強度分布は、CO
2の赤外線吸収スペクトルを含む、2μm〜50μmの波長領域でブロードであり、CO
2の赤外線吸収スペクトル付近の波長領域で十分な放射強度を有する。したがって、光源にセラミックヒータを用いたガス測定装置の検出精度及び出力の安定性は向上される。
【0006】
図1は、従来のガス測定装置を説明するための構成図である。このガス測定装置300は、内部空間331に測定対象ガス(
図1のGAS)を導入することが可能な測定セル330により外形が構成されている。また、その測定セル330の内部の一端に配置されて赤外線(
図1のIR)を発光する1つの光源310から、内部の他端に並べて配置された2つの赤外線検出素子321,322までの間に、それぞれ形成された光路332,333を有している。ガス測定装置300は、これらの光路332,333に、それぞれ介挿された2種類の異なる光学フィルタ351,352と、赤外線検出素子321,322からの出力に基づいて、内部空間331に導入された測定対象ガスの濃度判定を行う演算部340とをさらに備えて構成されている。
【0007】
図2は、
図1の内部空間のCO
2雰囲気における赤外線透過スペクトル例(波長帯域:2.5μm〜8μm)の図である。この赤外線透過スペクトル例の特定帯域、すなわち、波長4.2〜4.4μmの帯域(以下、CO
2吸収帯域ともいう)において、CO
2による赤外線の吸収が発生し、赤外線の透過率が局所的に低下することが確認できる。
【0008】
ガス測定装置300では、CO
2吸収帯域の赤外線を選択的に透過する光学フィルタ351を有する第一の赤外線検出素子321と、CO
2吸収帯域以外の赤外線を選択的に透過する光学フィルタ352を有する第二の赤外線検出素子322との2組を用いている。CO
2の濃度に応じて第一の赤外線検出素子の出力I
CO2は変化するが、第二の赤外線検出素子322の出力I
refは変化しないため、それらの出力の差や比に基づいてCO
2の濃度を測定することが可能になる。
具体的例としては、下記式に基づき、CO
2濃度を導出することが可能である。
【0009】
【数1】
【0010】
(C
CO2:CO
2濃度、ε
CO2:CO
2の吸収係数、l:光路長)
また、例えば、特許文献2に記載のものは、組み立て精度が確保され、小型で低コストの波長選択型赤外線検出素子及びそれを用いた赤外線ガス分析計である。この赤外線ガス分析計(以下、単にガス測定装置ともいう)は、光源からの赤外線を波長選択的に透過させる波長選択フィルタと、この波長選択フィルタを透過した赤外線を検出する赤外線検出素子とを一体に形成した複数のミラーを用いた波長選択フィルタを赤外線検出素子と一体形成したものである。
【0011】
また、特許文献3に記載のものは、1組の光学フィルタ及び赤外線検出素子でガス濃度を測定することが可能な濃度測定装置(以下、単にガス測定装置という)である。このガス測定装置は、2つの異なる波長の赤外線を、離散的かつ選択的に発するように制御される光源と、その光源から発せられた赤外線を選択的に透過する光学フィルタとを用いることにより、フィルタ及び赤外線検出素子を1組で足りるようにしたものである。なお、このガス測定装置は、検出用赤外線に波長4.257μm、参照用赤外線に波長1.5μmが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−33431号公報
【特許文献2】特開2001−228022号公報
【特許文献3】特開2005−49171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1に開示されたガス測定装置、あるいは
図1に示された従来のガス測定装置では、光学フィルタ及び赤外線検出素子は、個別素子の組み合わせであるため、両者を精度良く位置合わせすることが困難であった。その結果、組み立て精度のばらつきによって、測定器間で測定誤差が発生しやすかった。また、複数の光学フィルタ及び赤外線検出素子を用いるため、装置の大型化や高コスト化が不可避であった。
【0014】
上述した特許文献2に開示されたガス測定装置、一体形成により位置合わせの精度の問題はある程度低減されるものの、赤外線検出素子を複数用いるので小型化が困難である。そればかりか、このガス測定装置の測定精度を維持するためには、複数のミラーを用いた波長選択フィルタの光学特性を揃えて維持することが不可欠である。このように構成が簡素でないという問題があった。
【0015】
また、上述した特許文献3に開示されたガス測定装置では、参照用赤外線と検出用赤外線とを離散的かつ選択的に発するように制御される光源が必要であり、その制御に相当の電力を要するという欠点があった。そればかりか、このガス測定装置の測定精度を維持するためには、検出用赤外線の波長域と参照用赤外線の波長域と、それぞれ離散した波長域の赤外線とを、選択的に透過する光学フィルタの光学特性を揃えて維持することが不可欠である。この光学フィルタは、特殊な部材であり一般的でないため製造が容易でないという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、より簡素で製造容易かつ測定精度が高いガス測定装置及び節電対応したガス測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、光路(32)に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源(10)から発せられた赤外線が、赤外線検出素子(20)に到達した赤外線量に応じて、測定対象ガスの濃度が表示されるガス測定装置(100)において、内部空間(31)に測定対象ガスを導入することが可能な測定セル(30)と、前記赤外線検出素子(20)からの出力に基づいて前記内部空間(31)の測定対象ガスの濃度判定を行う演算部(40)と、前記光源(10)と演算部(40)とを制御する制御部(60)と
、を備え、前記光源(10)は、測定対象ガスにより吸収される吸収波長帯の赤外線と吸収されない非吸収波長帯の赤外線の両方を同時に発光可能であり、
前記赤外線検出素子(20)は、前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線に対して感度を有するとともに、当該赤外線発光素子(20)には、前記光源(10)から発せられた前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線が到達するようになっており、前記制御部(60)は、
前記光源(10)から発せられる赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させる制御を実行可能であり、前記光源(10)から発せられる赤外線の発光スペクトル
を連続的
に変化
させている期間内に、前記赤外線検出素子(20)の出力を複数回取得し、該取得された出力
群に基づいて測定対象ガスの濃度判定のための演算を前記演算部(40)に実行させることを特徴とする。(
図3)
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御部(60)が、前記光源(10)から発せられる赤外線のピークの連続的変化に基づいて、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする。(
図3、
図5、
図6乃至
図8)
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記制御部(60)が、前記光源(10)の温度の連続的変化に基づいて、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする。(
図3、
図5、
図6乃至
図8)
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の発明において、前記制御部(60)が、前記光源(10)が点灯開始制御されてからの所定期間内と、前記光源(10)が消灯制御されてから所定期間内との、いずれかの期間内に、前記発光スペクトルの連続的変化を制御することを特徴とする。(
図3、
図5、
図6乃至
図8)
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記演算部(40)が、前記光源(10)が未発光時の赤外線検出素子(20)の出力に基づいて前記光源(10)以外からの赤外線輻射によるオフセットを相殺することを特徴とする。(
図3、
図5、
図6乃至
図8)
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記測定対象ガスが、CO
2であることを特徴とする。(
図5、
図7、
図8)
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記光源(10)と前記赤外線検出素子(20)との間の光路(32)に介挿された光学フィルタ(50)をさらに備え、該光学フィルタ(50)は、前記吸収波長帯及び非吸収波長帯の赤外線に対する透過率が、最大透過率の50%以上の透過率を持つ連続した波長帯域に含まれることを特徴とする。(
図5)
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記制御部(60)が、前記発光スペクトルが連続的変化している期間内に、赤外線検出素子(20)からの出力を取得するタイミングを制御することを特徴とする。(
図3、
図5、
図6乃至
図8)
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記制御部(60)が、前記光源(10)の温度又は光源(10)の点灯開始後経過時間と、消灯制御後経過時間との、いずれかに基づいて赤外線検出素子(20)からの出力を取得するタイミングを制御することを特徴とする。(
図3、
図5)
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、光路(32)に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源(10)から発せられた赤外線が、赤外線検出素子(20)に到達した赤外線量に応じて、測定対象ガスの濃度として表示されるようにしたガス測定方法において、
前記光源(10)から発せられる赤外線の発光スペクトルを連続的に変化させながら、前記吸収波長帯の赤外線と、前記非吸収波長帯の赤外線とを、前記光源(10)から両方同時に発
せさせ、前記光源から発せられた前記吸収波長帯の赤外線と前記非吸収波長帯の赤外線との両方を含む連続した波長帯域の赤外線を赤外線検出素子に到達させる発光工程(S10)と、前記光源(10)から発せられた赤外線の発光スペクトル
を連続的
に変化
させている期間
内に赤外線検出素子(20)からの出力を複数回取得して出力群(I
all(T,C))を得る発光時出力取得工程(S20)と、前記出力群(I
all(T,C))に基づいて測定対象ガスの濃度判定のための演算を実行するガス濃度演算工程(S30)と
、を有することを特徴とする。(
図4)
【0022】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記発光スペクトルの連続的変化は、前記光源(10)の温度の連続的変化によることを特徴とする。(
図3,
図5,
図6乃至
図8)
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の発明において、前記光源(10)の未発光時に取得された赤外線検出素子(20)の出力を取得する未発光時出力取得工程(S25)を更に有し、前記ガス濃度演算工程(S30)は、前記未発光時出力取得工程(S25)により前記光源(10)の未発光時に取得された赤外線検出素子(20)の出力と、前記出力群(I
all(T,C))とに基づいて前記演算を実行することを特徴とする。(
図4)
また、請求項13に記載の発明は、請求項10、11又は12に記載の発明において、前記演算は、前記出力群(I
all(T,C))に関する下記式(1)により導出された透過率A
λi(c)に基づいて実行されることを特徴とする。
【0023】
【数2】
【0024】
(ただし、I
all(T,c)は光源温度T[℃]、ガス濃度cにおける赤外線検出素子(20)の出力群(I
all(T,C))を示し、A
λi(c)はガス濃度cにおける波長帯λiの赤外線の透過率を示し、I
λi(T)はガス濃度ゼロ、温度T[℃]における波長帯λiの赤外線に対する赤外線検出素子(20)の出力を示し、nは赤外線検出素子(20)に入射する赤外線スペクトルの範囲を分割する数で2以上の整数を示す。)
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記出力群(I
all(T,C))の数が、前記n以上であり、前記式(1)で表される前記出力群(I
all(T,C))から最小二乗法を用いて各波長帯λiにおける赤外線の透過率A
λi(c)を導出することを特徴とする。
【0025】
また、請求項15に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記出力群(I
all(T,C))の数が、前記nに等しく、前記式(1)で表される出力群(I
all(T,C))の逆行列を解くことにより各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλ
i(c)を導出することを特徴とする。
また、請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記透過率Aλ
i(c)において、ガス吸収のない波長帯域λ
refの透過率Aλ
ref(c)を参照用パラメータとして、他の波長帯の透過率との比率を求める演算を実行することを特徴とす
る。(
図8)
また、請求項17に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のガス測定装置において、前記制御部は、前記出力群に関する前記式(1)により導出された透過率Aλi(c)に基づいて前記演算を前記演算部に実行させることを特徴とする。
また、請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記n以上であり、前記式(1)で表される前記出力群(Iall(T,C))から最小二乗法を用いて各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする。
また、請求項19に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、前記出力群(Iall(T,C))の数が、前記nに等しく、前記式(1)で表される出力群(Iall(T,C))の逆行列を解くことにより各波長帯λiにおける赤外線の透過率Aλi(c)を導出することを特徴とする。
また、請求項20に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、前記透過率Aλi(c)において、ガス吸収のない波長帯域λrefの透過率Aλref(c)を参照用パラメータとして、他の波長帯の透過率との比率を求める演算を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、より簡素で製造容易かつ測定精度が高いガス測定装置及び節電対応したガス測定方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来のガス測定装置を説明するための構成図である。
【
図2】
図1の内部空間のCO
2雰囲気における赤外線透過スペクトル例の図である。
【
図3】本発明に係るガス測定装置の実施例1を説明するための構成図である。
【
図4】
図3のガス測定装置によるガス測定方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【
図5】本発明に係るガス測定装置の実施例2を説明するための構成図である。
【
図6】光源の温度別に示した赤外線の発光スペクトルの図である。
【
図7】
図6の発光スペクトルにおける波長3.8μm〜4.4μm付近の拡大図である。
【
図8】光源温度1200℃、CO
2濃度0〜6000ppmにおいて、赤外線検出素子に入射される赤外線量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
図3は、本発明に係るガス測定装置の実施例1を説明するための構成図である。実施例1のガス測定装置100は、光源10と、その光源10から発せられる赤外線を受光する赤外線検出素子20と、内部空間31に測定対象ガスを導入部33から導入して導出部34から排出することが可能な測定セル30と、赤外線検出素子20からの出力に基づいて内部空間31の測定対象ガスの濃度判定を行う演算部40と、これらを制御する制御部60を備えて構成されている。
【0030】
<測定セル>
測定セル30は、内部空間31に測定対象ガスを導入することが可能なものであれば特に制限されない。導入部33及び導出部34は、測定セル30の内部空間31に対する何らかの通気機能部が少なくとも合わせて一つ以上あれば良い。なお、経時的なガス濃度の測定精度向上といった観点から、ガスの導入部33及び導出部34をそれぞれ備えるものであることが好ましい。
【0031】
<光源>
光源10は、測定対象ガスによる吸収波長帯の赤外線と、非吸収波長帯の赤外線の両方を同時に発光可能であり、発光スペクトルを連続的に変化できるものであれば特に制限されない。例えば白熱電球や、MEMS(micro electro mechanical systems)ヒーター、LED等が挙げられる。また、光源10は点光源と面光源とのいずれでも構わない。
ここでいう吸収波長帯については、測定対象ガスの濃度によって赤外線透過率(以下、単に透過率ともいう)が変化する波長帯であれば良い。
【0032】
この吸収波長帯は、測定対象ガスによって任意に決定することが可能である。例えば、測定対象ガスがCO
2の場合、吸収波長帯は約4.2μmから約4.4μmにおいて、特異的に赤外線吸収が生じる。その吸収波長帯以外の帯域から、非吸収波長帯が任意に選択される。つまり、非吸収波長帯は、約4.2μmから約4.4μm以外の帯域に設定される。なお、吸収波長帯と非吸収波長帯とは、測定対象ガスの雰囲気において、透過率に大差をつける条件を満足するならば、極力近接した波長帯であることが好ましい。すなわち、単一の光源10を用いて異なる波長帯の赤外線を発光させる場合、それらの異なる波長帯が近接している程、光源10に対する要求性能は、より一般的なもので足りるので有利になる。その結果、光源10には製造容易で、簡素なものを使える。また、類似した観点から、非吸収波長帯が、吸収波長帯に近接した波長帯である程、少ない計算量で濃度を導出できるなど演算が容易となる。その結果、演算部40に対する要求性能も、より一般的かつ簡素なもので足りるので有利になる。
【0033】
<赤外線検出素子>
赤外線検出素子20は、光源10が発する赤外線に対する感度を有するものであれば特に制限されない。その赤外線検出素子10には、焦電センサ(Pyroelectric sensor)、サーモパイル(thermopile:熱電堆)、ボロメータ(bolometer)等の熱型赤外線センサや、量子型赤外線センサ等が好適である。
本実施例1のガス測定装置100は、単一の赤外線検出素子20により、光源20の発光スペクトルが連続的に変化している期間中に、光源20が発する赤外線に含まれる前記吸収波長帯及び非吸収波長帯に対する赤外線検出素子20の出力を少なくとも2回以上取得する。これら取得された2回以上の出力に基づいて測定対象ガスの濃度判定ができるため、前記赤外線検出素子20は1つでよく、測定セル30をより小型化することが可能になる。
【0034】
<演算部>
演算部40は、光源10から発せられる赤外線の発光スペクトルが連続的に変化する期間内に、赤外線検出素子20の出力を少なくとも2回以上取得し、その取得された出力に基づいて測定対象ガスの濃度判定のための演算を実行することが可能なものであれば特に制限されない。その演算部40には、例えば、アナログIC、デジタルIC及びCPU(Central Processing Unit)等が好適である。なお、制御部60に、演算部40の機能が含まれていても構わない。
【0035】
演算部40は、制御部60により、光源10とともに総合制御され、赤外線検出素子20から取得された出力に基づいて、各波長帯における透過率Aλiを導出する。それから、濃度判定するために、下記(1)〜(4)に例示する演算処理を実行することが有効である。
(1)所望の濃度αにおける透過率Aλi(α)を閾値として記憶しておき、その閾値と導出された透過率Aλiを比較することにより、空間中の測定対象ガス、例えば、CO
2に対する濃度が閾値以上であるか否かを判定する演算処理。
(2)各濃度における透過率を記憶しておき、それらの値と導出された透過率Aλiを比較することにより空間中の測定対象ガス、例えば、CO
2濃度を定量的に判定する演算処理。
【0036】
(3)また、光源10が未発光時の赤外線検出素子20の出力に基づいて光源10以外からの赤外線輻射によるオフセットを相殺する演算処理。
(4)また、光源20の発光中、赤外線検出素子20から2種類の出力を、少なくとも各1回ずつ合計2回以上取得する。これらの出力は、測定対象ガスに対する吸収波長帯の出力と、非吸収波長帯の出力との2種類である。これら取得された2種類の出力に基づいて測定対象ガスの濃度判定のために実行する演算処理。この演算処理によれば、吸収波長帯と、非吸収波長帯とは、光源20の経時劣化に伴って、測定対象ガスの無い条件に限れば、それぞれの出力が、概ね均等に減少するので、経時劣化に伴う出力減少分も容易に補正することが可能になる。
【0037】
<制御部>
制御部60は、光源10の発光と、演算部40の演算処理とを、適切なタイミングを計りながら総合制御し、赤外線検出素子20から取得された出力に基づいて、測定対象ガスの濃度判定するための演算を演算部40に実行させる。なお、演算部40に、制御部60の機能が含まれていても構わない。
制御部60は、光源10から発せられる発光スペクトルを連続的に変化させるように制御できるほか、赤外線検出素子20の出力を取得するタイミングを制御する機能も備えている。そして、この制御部60は、光源10から発せられる発光スペクトルを連続的に変化させている期間中に同期して、赤外線検出素子20の出力を取得するように、出力取得のタイミングを制御する。このような制御部60の機能によって、より高精度なガス濃度判定が可能になる。つまり、ガス濃度判定に必要な、異なる2種類以上の波長域の赤外線にそれぞれ対応した出力を、1組の光源10及び赤外線検出素子20によって、複数回に亘って取得することで、より高精度なガス濃度判定が可能になる。
【0038】
また、制御部60によれば、光源10から発せられる赤外線の発光スペクトルの連続的変化は、その光源10から発せられる赤外線のピークの連続的変化に基づいて制御することができる。
また、制御部60によれば、上述した発光スペクトルの連続的変化は、光源10が白熱電球や、MEMS(micro electro mechanical systems)ヒーターの場合、温度の連続的変化に基づいて制御することができる。
また、制御部60によれば、上述した発光スペクトルの連続的変化は、光源10が点灯開始制御されてから所定期間内と、前記光源10が消灯制御されてから所定期間内との、いずれかの期間内における赤外線の発光スペクトルの連続的変化に基づいて実行することができる。
【0039】
また、制御部60は、光源10の温度又は光源10の点灯開始後経過時間と、消灯制御後経過時間との、いずれかに基づいて赤外線検出素子20からの出力を取得する。すなわち、光源10がON⇔OFFされる際に、光源10の温度変化に伴って、発光される赤外線の波長スペクトルが変化するので、複数回計測することで異なる波長スペクトルに対する赤外線検出素子20からの出力を取得することが可能である。このように、赤外線検出素子20からの出力を取得するタイミングを制御することで、より高精度なガス濃度判定が可能になる。
【0040】
また、上述した光源10の温度に基づいたタイミングの制御に関し、例えば、光源10の温度に基づく情報をモニタリングする方法がある。ここで、タングステンフィラメント球の光源10を例示する。タングステンの温度と電気抵抗は相関関係を有するため、タングステンの電気抵抗を、制御部60が、モニタリングすることにより光源10の温度情報を取得することが可能である。そのようにして取得された温度情報に基づいて、赤外線検出素子20からの出力を取得するタイミングが制御されることにより、光源10が所望の温度である時のタイミングで赤外線検出素子20からの出力を取得することが可能になる。
実施例1のガス測定装置100は、測定対象ガスの濃度を判定するための赤外線検出素子20が一つで足りるため、
図1に示した従来のガス測定装置などと比較して、節電対応することも可能になる。
このように、本発明のガス測定装置によれば、節電対応するとともに、より高い測定精度を実現できる。
【0041】
次に、実施例1のガス測定装置100を用いたガス測定方法について説明する。
図4は、
図3のガス測定装置によるガス測定方法を説明するためのフローチャートを示す図である。本実施例1のガス測定方法は、光源10から発せられた赤外線が赤外線検出素子20に到達する間に、光路32に導入された測定対象ガスによって赤外線吸収が生じることを利用したガス測定方法である。このガス測定方法には、
図4に示すように、発光工程(S10)と、発光時の出力取得工程(S20)と、ガス濃度演算工程(S30)とを有する。
【0042】
まず、発光工程(S10)により、吸収波長帯の赤外線と、非吸収波長帯の赤外線とを、光源10から両方同時に発する。また、発光時出力取得工程(S20)により、光源10から発せられた赤外線の発光スペクトルの連続的変化の期間に赤外線検出素子20からの出力を複数回取得して出力群I
all(T,C)を得る。そして、ガス濃度演算工程(S30)により、出力群I
all(T,C)に基づいて演算を実行することによって、測定対象ガスの濃度を判定する。上述したガス測定方法によれば、単一の赤外線検出素子20からの出力に基づいて、高精度なガス濃度判定を行うことが可能である。
【0043】
なお、発光スペクトルの連続的変化は、光源10の温度の連続的変化に基づいて制御部60により制御されるようにしても良い。さらに、光源10以外からの赤外線輻射によるオフセットを低減する観点から、光源10の未発光時に取得された赤外線検出素子20の出力を取得する未発光時出力取得工程(S25)を更に備え、ガス濃度演算工程(S30)では、未発光時出力取得工程(S25)により光源10の未発光時に取得された赤外線検出素子20の出力と、発光時出力取得工程(S20)に複数回取得された出力群I
all(T,C)とに基づいて演算を実行することが好ましい。
【0044】
実施例1のガス測定装置100を用いて、工程(S20)乃至工程(S30)を実行するガス測定方法によれば、測定対象ガスの濃度を判定するための赤外線検出素子20が一つで足りるため、
図1に示した従来のガス測定装置を用いガス測定方法などと比較して、節電対応することも可能になる。
本発明のガス測定方法によれば、節電対応するとともに、より高い測定精度を実現できる。
【実施例2】
【0045】
図5は、本発明のガス測定装置の実施例2を説明するための構成図である。実施例2のガス測定装置200において、測定対象ガス(
図5のGAS)は、CO
2を示し、符号50は光学フィルタを示し、それ以外の符号は
図3と同じものを示す。つまり、実施例2は実施例1の条件をいくつか限定した内容であるため、実施例1について説明した内容は、そのまま実施例2に適用した上で、実施例2に固有の説明を加える。
【0046】
<光学フィルタ>
光学フィルタ50を、光源10と赤外線検出素子20との間の光路32に介挿することで、より高精度なガス濃度判定が可能になる。この光学フィルタ50は、最大透過率の50%以上の透過率を持つ連続した波長帯域に吸収波長帯と非吸収波長帯を含むものが好ましい。
本実施例2のガス測定装置200に用いられた光学フィルタ50は、波長3.8μmから4.4μmにおける透過率が100%であり、それ以外の波長帯の透過率が0%のバンドパスフィルタである。
【0047】
<光源>
光源10から出力される赤外線は、プランクの放射則に従って、光源温度に依存した赤外線を出力するものとする。この光源10から発せられる赤外線の発光スペクトルは、制御部60によって連続的変化するように制御される。
<制御部>
制御部60は、光源10の温度が連続的に変化することに基づいて、光源10の発光スペクトルを連続的に変化させるように制御する。なお、発光スペクトルの連続的変化に関する制御方法はこれに限定されず、他の制御方法でも構わない。
【0048】
<プランクの放射則に従った赤外線の発光スペクトル>
図6は、光源の温度別に示した赤外線の発光スペクトルの図である。発光スペクトルは、光源10の各温度におけるプランクの放射則に従う。
図7は、
図6の発光スペクトルにおける波長3.8μm〜4.4μm付近の拡大図である。以下実施例説明のために、波長3.8μm〜4.0μmを波長帯をλ1、波長4.0μm〜4.2μmの波長帯をλ2、波長4.2μm〜4.4μmの波長帯をλ3と称する。
【0049】
図8は、光源温度1200℃、CO
2濃度3000ppmにおいて、赤外線検出素子に入射される赤外線量を示す図である。波長帯λ1においては、CO
2による赤外線吸収が発生しない為、CO
2濃度0ppmの場合の出力と実質的に同一の出力となる。波長帯λ2においては、CO
2による赤外線吸収が少し発生するため、CO
2濃度0ppmの場合の出力と比較して少し減少する。波長帯λ3においては、CO
2による赤外線吸収が多く発生するため、CO
2濃度0ppmの場合の出力と比較して、大幅に出力が減少する。
ここで、CO
2濃度0ppm、温度T℃における各波長帯λi赤外線検出素子からの出力をI
λ1(T)とし、CO
2濃度cにおける各波長帯λiの吸収係数をλi(c)とすると、CO
2濃度cppm、温度T℃赤外線検出素子からの出力I(T,c)は下記式(2)で表現される。
【0050】
<演算部>
演算部40で実行する演算は、実施例1と同様である。発光時出力取得工程(S20)において、光源10から発せられた赤外線の発光スペクトルの連続的変化の期間内に、赤外線検出素子20からの出力を複数回取得して出力群I
all(T,C)を得る。その出力群I
all(T,C)に関する下記式(2)により透過率A
λi(c)を導出する。
【0051】
【数3】
【0052】
(ただし、I
all(T,c)は光源温度T[℃]、ガス濃度cにおける赤外線検出素子(20)の出力群(I
all(T,C))を示し、A
λi(c)はガス濃度cにおける波長帯λiの赤外線の透過率を示し、I
λi(T)はガス濃度ゼロ、温度T[℃]における波長帯λiの赤外線に対する赤外線検出素子(20)の出力を示し、nは赤外線検出素子(20)に入射する赤外線スペクトルの範囲を分割する数で2以上の整数を示す。)
本実施例2に当てはめると、n=3、T=1000,1100,1200℃である。
そして、光源の温度が1000℃、1100℃、1200℃のそれぞれにおける赤外線検出素子の出力はそれぞれ下記式(3)〜(5)で表される。
【0053】
【数4】
【0054】
【数5】
【0055】
【数6】
【0056】
少なくとも計算に使用する光源温度の条件数とnが同じ場合、逆行列を解くことでCO
2濃度に対応する透過率A
λiを求めることができる。すなわち、上記例では、出力群(I
all(T,C))の数が、nと等しく、式(2)で表される出力群(I
all(T,C))の逆行列を解くことにより各波長帯λiにおける赤外線の透過率A
λi(c)を導出する。
そして、取得された出力群の数が、式(2)のnと等しく、上記式(2)であらわされる出力群の光源温度が3つで、nが3であるため、逆行列を解くことで各波長帯における透過率A
λiを求めることができる。
上記式(3)〜(5)は、連立すると下記行列式(6)で表現できる。
【0057】
【数7】
【0058】
ここで上記式(6)を下記式(7)に置き換える。
【0059】
【数8】
【0060】
よって求めるべき係数Aは下記式(8)のように表現できる。
【0061】
【数9】
【0062】
下記式(9)に示す逆行列を求める方法は、LU分解を用いる方法と、掃き出し法と、余因子を用いる方法とのいずれでも良い。
【0063】
【数10】
【0064】
さらに精度を高めるために、出力群(I
all(T,C))の数が、n以上であり、上記式(2)で表される出力群(I
all(T,C))から最小二乗法を用いて各波長帯λiにおける赤外線の透過率A
λi(c)を導出することが好ましい。
すなわち、取得された出力群I
all(T,C)の数が、n以上であり、nよりも多い光源温度の計測データを使用して連立させ、回帰分析を行っても良い。ここでは式(7)に従い、最小二乗法を用いて各波長帯における透過率A
λi(c)を算出する。最小二乗法とは単回帰式で誤差の二乗和を最小にするように各波長帯における透過率A
λi(c)を求める方法であり、下記式(10)に示す擬似逆行列を使って下記式(11)で算出できる。
【0065】
【数11】
【0066】
【数12】
【0067】
このようにして導出された各波長帯における透過率A
λiから、空間中のCO
2ガスの濃度判定を行うことができる。濃度判定の方法には、実施例1で説明した演算処理(1)、(2)を実行する。
(1)所望の濃度αにおける透過率A
λi(α)を閾値として記憶しておき、その閾値と導出された透過率A
λiを比較することにより、空間中のCO
2ガスに対する濃度が閾値以上であるか否かを判定する演算処理。
(2)各濃度における透過率を記憶しておき、それらの値と導出された透過率Aλiを比較することにより空間中のCO
2濃度を定量的に判定する演算処理。
【0068】
本実施例2の透過率A
λi(c)において、ガス吸収のない波長帯域λ
refの透過率A
λref(c)を参照用パラメータとして他の波長帯の透過率との比率を求める演算を採用しても良い。具体的には、赤外線検出素子からの各出力が、上記式(2)の代わりに下記式(12)で表されることを用いる。これにより、A
λ1(c)/A
λref(c)、A
λ2(c)/A
λref(c)、A
λ3(c)/A
λref(c)、をそれぞれ導出することによって、ガス濃度を判定する方法である。
【0069】
【数13】
【0070】
この方法によれば、光源10の経時劣化や、光学フィルタ50への付着物等の影響によりI
all(T、c)の値が変動した場合であっても、高い判定精度を維持してガス濃度判定を行うことが可能となる。
この方法を採用した場合のガス濃度判定の動作を、本実施例2で限定した条件下で説明する。すなわち、測定対象ガスがCO
2であり、光源10はタングステンフィラメント電球を用いる。この光源10の温度の連続的変化によって、発光スペクトルが連続的変化する赤外線が、その光源10から発せられる。そして、光学フィルタ50は、波長3.8μmから4.4μmの赤外線の透過率が100%で、それ以外の波長帯の透過率が0%のバンドパスフィルタを用いる、という条件下である。
【0071】
本実施例2で限定した条件下において、測定対象ガスがCO
2であるため、3.8μm〜4.0μmの波長帯λ1においては、ガスによる赤外線吸収が生じない。この波長帯λ1における赤外線の透過率A
λ1(c)をA
ref(c)とすると、上記式(12)は下記式(13)となる。
【0072】
【数14】
【0073】
この式(13)を、上記式(3)〜(5)と同様に逆行列又は最小二乗法を用いて、A
λ1(c)/A
λ1(c),A
λ2(c)/A
λ1(c),A
λ3(c)/A
λ1(c)を、それぞれ導出すれば、ガス濃度を判定することが可能になる。
以下の条件でシミュレーションしたところ、相当に高精度な判定結果が得られた。すなわち、ガス濃度1000ppm、光源10の温度がそれぞれ1240℃,1460℃,1630℃の場合において、赤外線検出素子の出力I
all(T、1000ppm)に5%のオフセットを加えた場合、式(2)に基づいて導出されるA
λ1(1000ppm),A
λ2(1000ppm),A
λ3(1000ppm)は、設定値に対して同じく5%の誤差を有する。一方、上記式(13)に基づいて導出されるA
λ2(1000ppm)/A
λ1(1000ppm)は、設定値に対して0.005%の誤差、A
λ3(1000ppm)/A
λ1(1000ppm)は、0.0005%の誤差に抑制されることが確認された。つまり、上記式(13)に基づいて導出される判定結果は、きわめて高精度であることが確認できた。
以上説明したように、本発明によれば、より簡素で製造容易かつ測定精度が高いガス測定装置及び節電対応したガス測定方法を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、光路に導入された測定対象ガスの雰囲気で、光源から発せられた赤外線が赤外線検出素子に到達した赤外線量に応じて出力される電気信号により測定対象ガスの濃度として表示するガス測定装置及びガス測定方法に関し、本発明のガス測定装置及びガス測定方法は、光源から発せられる赤外線の発光スペクトルが連続的変化している期間内に、赤外線検出素子の出力を複数回取得し、該取得された出力に基づいて測定対象ガスの濃度を、きわめて高精度に判定するので、CO
2に代表されるガスの濃度判定に好適である。
【符号の説明】
【0075】
10 光源
20,321,322 赤外線検出素子、
30,330 測定セル
31,331 内部空間
40 演算部
50,351,352 光学フィルタ
100,200,300 ガス測定装置