(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切欠部は、隣り合う前記弾性板の前記切欠部と前記積層体の軸方向にずれて形成され、前記積層体の軸方向の一側から他側に亘って連続する溝を前記連通路として構成することを特徴とする請求項2に記載の圧力制御装置。
前記弾性板の軸方向の長さは、前記保持部材にて前記弾性板を固定する弾性板固定部(43)と前記回転体の前記周壁との距離よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による圧力制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による圧力制御装置を
図1〜
図7に示す。本実施形態の図面は、いずれも模式的なものであって、説明のため、適宜縮尺等を変更して記載している。第2実施形態についても同様である。
図1に示すように、本実施形態の圧力制御装置1は、ハウジング10、回転体30、および、積層体40等を備える。圧力制御装置1は、例えば回転電機やフライホイール等に適用される。
【0011】
ハウジング10は、筒部11、第1軸受保持部15、および、第2軸受保持部16等を有し、圧力制御装置1の外郭を構成する。
筒部11は、回転体30の形状に応じて形成される。本実施形態では、第1軸受保持部15側に形成される小径筒部12、および、第2軸受保持部16側に形成される大径筒部13を有する。小径筒部12の軸方向長さおよび径方向長さは、大径筒部13よりも小さく形成される。
小径筒部12の第1軸受保持部15側の壁部121には、空気等の流体が流出可能な流出口122が形成される。
【0012】
第1軸受保持部15は、第1軸受21を保持する。第2軸受保持部16は、第2軸受22を保持する。本実施形態では、第1軸受21および第2軸受22は、いずれもボールベアリングである。
【0013】
回転体30は、第1軸部31、第2軸部32、小径部34、および、大径部35等を有し、ハウジング10の内部に設けられる。本実施形態では、第1軸部31、第2軸部32、小径部34、および、大径部35が一体に形成されている。本実施形態では、回転体30は、
図3(a)中に矢印Yで示す方向に回転する。
第1軸部31は、小径部34の大径部35と反対側に設けられる。第2軸部32は、大径部35の小径部34と反対側に設けられる。第1軸部31は第1軸受21に回転可能に支持され、第2軸部32は第2軸受22に回転可能に支持される。これにより、回転体30は、ハウジング10に回転可能に支持される。
【0014】
積層体40は、ハウジング10と回転体30の周壁との間に設けられる。本実施形態では、積層体40は、ハウジング10の小径筒部12と、回転体30の小径部34の周壁345との間に設けられる。
図2に示すように、積層体40は、保持部材41、および、弾性板51を有する。
保持部材41は、略環状に形成され、ハウジング10の小径筒部12の径方向内側に固定される。また、保持部材41の内周面には、径方向内側に開口する凹状の弾性板収容部42が形成される。本実施形態では、凹状に形成される弾性板収容部42の底面である弾性板固定部43に弾性板51が固定される。
【0015】
弾性板51は、略矩形に形成される薄板であり、保持部材41に保持される。本実施形態では、弾性板51の短手方向の一端を固定端部52、短手方向の他端を先端部55、長手方向の端部を側端部57、58とする。また、弾性板51の固定端部52と先端部55との間の長さを「弾性板51の高さH」とし、側端部57、58間の長さを「弾性板51の幅W」とする。
【0016】
弾性板51は、保持部材41に固定された状態にて、回転体30の回転により生じる動圧により撓み可能な程度の形状に形成される。本実施形態では、弾性板51は金属により形成されるが、例えば樹脂等、回転体30の動圧により撓み可能であればどのような素材、形状としてもよい。
【0017】
複数の弾性板51は、回転体30の回転方向に積層され、固定端部52側が弾性板収容部42に収容されて保持部材41に保持される。詳細には、弾性板収容部42の弾性板固定部43に固定端部52が例えば溶接等により固定される。本実施形態では、弾性板51は、固定端部52よりも先端部55が回転体30の回転方向進行側となるように、回転体30の径方向から傾斜した状態で保持部材41に固定される。
【0018】
弾性板収容部42の深さは、弾性板51の高さHより浅く形成され、弾性板51の先端部55は、弾性板収容部42から回転体30側へ突出し、先端部55は回転体30の小径部34の周壁345と対向する。
【0019】
本実施形態では、弾性板51の幅Wは、弾性板51の高さHよりも大きい。また、弾性板51の幅Wは、弾性板固定部43と回転体30の周壁345との距離Lよりも大きい。なお、弾性板51の幅が「弾性板の軸方向長さ」に対応する。
本実施形態では、弾性板51の幅Wは、回転体30の回転時に積層体40の軸方向の一側と他側、すなわち弾性板51の幅方向の一側と他側とで差圧を形成可能な程度の長さに形成される。
また、複数の弾性板51は、回転体30の回転時に積層体40の軸方向の一側と他側とで差圧を形成可能な程度の微小な隙間をもって積層される。
【0020】
弾性板51の先端部55には、切欠部56が形成される。
切欠部56を
図3〜
図6に基づいて説明する。なお、
図3(a)は
図1のIII−III線断面に対応する図であって、弾性板51を説明するため、保持部材41およびハウジング10を省略して記載している。また、
図3(b)は、
図3(a)のB−B線断面の矢印方向から積層体40を見た図で、積層体40の内周面が平面状となるように広げた状態を示している。また、
図4は、
図3(b)の一部を拡大して模式的に示した図である。また、
図5は、
図4に示した弾性板51のそれぞれの平面図であり、
図6は1つの切欠部56に対応する箇所を拡大して示した拡大図である。なお、
図3(b)および
図4において、連通路59をわかりやすくするため、切欠部56により構成される連通路59を梨地にて示している。後述の
図8も同様である。
【0021】
図3(b)、
図4および
図5に示すように、本実施形態の切欠部56は、厚み方向の一側から見たとき、積層体40の軸方向、すなわち弾性板51の幅方向において、隣り合う弾性板51の切欠部56と一部が重複し、かつ、ずれて形成される。これにより、切欠部56は、弾性板51が積層された状態にて、軸方向の一側と他側とを連通する連通路59を構成する。本実施形態の連通路59は、積層体40の軸線に対して傾斜した状態にて軸方向の一側と他側とを連通するスパイラル溝である。
【0022】
回転体30の回転により生じる動圧により弾性板51が撓んだ状態にて積層体40の軸方向の一側と他側とを連通可能なように、弾性板51の動圧による浮上量や回転体30の軸ずれ量等を考慮し、切欠部56の幅や深さ等が適宜設定される。また、隣り合う弾性板51の切欠部56との重複量についても適宜設定される。なお、隣り合う弾性板51の切欠部56との重複量により、連通路59としての傾斜角度が設定されると捉えることもできる。
また、
図4および
図6に示すように、切欠部56の側面561は、スパイラル溝である連通路59に沿うように傾斜して形成される。
【0023】
回転体30が回転すると、ハウジング10と回転体30との間の空間Sの流体(例えば空気)が流動する。本実施形態では、回転体30が回転している状態にて積層体40の軸方向の一側と他側とを連通する連通路59が形成されているので、ハウジング10と回転体30との間の空間Sの流体は、連通路59および流出口122を経由し、ハウジング10の外部へ流出する。これにより、ハウジング10と回転体30との間の空間Sが減圧されるので、流体抵抗等による回転体30の運動エネルギの損失(以下適宜、「風損」という。)を低減することができる。
【0024】
ところで、熱膨張や振動等の外乱により、ハウジング10と回転体30との同軸度や、ハウジング10と回転体30との間の隙間が変動する虞がある。ここで、剛体にて形成されるハウジング10の内周面、或いは、回転体30の外周面に連通路59を形成した場合、外乱等の影響により隙間が変動すると、ハウジング10と回転体30との間の空間Sを適切に減圧できない虞がある。
【0025】
そこで本実施形態では、ハウジング10と回転体30との間に積層体40を設け、回転体30の回転により生じる動圧により撓み可能な弾性板51の先端部55に形成された切欠部56により連通路59を構成している。
図7(a)に示すように、回転体30の停止時において、弾性板51の先端部55は、回転体30の小径部34の周壁345に当接するか、ごくわずかな隙間が形成される。
また、
図7(b)に示すように、回転体30の回転中において、弾性板51は、回転体30の回転による動圧を受けて撓んで先端部55が浮上し、弾性板51の先端部55と回転体30の周壁345との間には、例えば数μmの隙間Dが形成される。弾性板51の先端部55は、回転体30の動圧を受けて回転体30の径方向への移動に追従するため、弾性板51の先端部55と回転体30との間に形成される隙間Dは、全周に亘り略均等となる。
【0026】
したがって、外乱等の影響により回転体30が径方向に移動したとしても隙間Dが適切に維持され、連通路59を経由してハウジング10と回転体30との間の空間Sの流体がハウジング10の外部へ流出するので、ハウジング10と回転体30との間の空間Sを減圧可能であり、風損を低減可能である。また、外乱の影響が大きくなりやすい大型の装置にも好適に適用可能である。
【0027】
以上詳述したように、(1)本実施形態の圧力制御装置1は、ハウジング10と、回転体30と、積層体40と、を備える。
回転体30は、ハウジング10の内部に設けられる。
積層体40は、保持部材41および弾性板51を有し、ハウジング10と回転体30の周壁345との間に設けられる。保持部材41は、ハウジング10に固定される。複数の弾性板51は、回転体30の回転方向に積層されて保持部材41に保持される。
【0028】
弾性板51の回転体30側の端部である先端部55、および、弾性板51の先端部55と対向する回転体30の周壁345の少なくとも一方には、切欠部56が形成される。本実施形態では、切欠部56は、弾性板51の先端部55に形成される。切欠部56は、回転体30が回転している状態にて、積層体40の軸方向の一側から他側へ流体が流通可能な連通路59を構成する。
【0029】
本実施形態では、弾性板51の先端部55には、回転体30が回転している状態にて積層体40の軸方向の一側から他側へ流体が流通可能な連通路59を構成する切欠部56が形成される。回転体30が回転しているとき、ポンピング機能によりハウジング10と回転体30と間の空間Sにある流体(例えば空気)が連通路59を通ってハウジング10の外部へ流出することにより、回転体30の周りの空間Sが減圧される。これにより、流体抵抗が低減されるので、回転体30の回転エネルギの損失を低減することができる。
【0030】
また、積層体40は、弾性板51が積層されて構成されるので、回転体30の回転による動圧を受けて撓む。そのため、例えば熱膨張や振動等の外乱の影響による軸ずれ等により回転体30が径方向に移動したとしても、弾性板51の先端部55は、動圧を受けて回転体30の移動に追従するため、回転体30と積層体40との間の隙間Dが周方向に亘って略均等に維持される。したがって、外乱等により回転体30が径方向に移動したとしても、回転体30と積層体40との間の隙間Dが維持されて連通路59のポンピング機能を適切に機能させ、回転体30の周りの空間を減圧可能であるので、流体抵抗による回転体30の回転エネルギの損失を低減することができる。
【0031】
また、高圧雰囲気下で用いれば、内部を低圧に保持でき、低圧雰囲気下で用いれば内部を高圧に保持できる。さらにまた、高温雰囲気下では内部を低温に、若しくは、その逆に低温雰囲気下では内部を高温に保持できる。すなわち、本実施形態の圧力制御装置1の前後の流体を遮断、或いは、閉じ込めなど、所謂、流体シールとしても応用可能である。
【0032】
(2)切欠部56は、隣り合う弾性板51の切欠部56と積層体40の軸方向にずれて形成され、積層体40の軸方向の一側から他側に亘って連続する溝を連通路59として構成する。特に本実施形態では、溝がスパイラル溝である。
連通路59が積層体40の軸方向の一側から他側に亘って連続する溝として構成されるので、連通路59の長手方向における圧損が低減され、減圧機能が向上する。特に、連通路59をスパイラル溝とすることにより、圧損がより低減され、減圧機能が向上する。
(3)切欠部56の側面561は、連通路59に沿って形成される。これにより、連通路59の長手方向における圧損がより低減され、減圧機能がより向上する。
【0033】
(4)弾性板51の軸方向の長さWは、保持部材41にて弾性板51を固定する弾性板固定部43と回転体30の周壁345との距離Lよりも大きい。これにより、積層された弾性板51間の隙間を通って流体が流通しにくくなるため、積層体40の軸方向の一側と他側とで差圧を維持可能となるので、回転体30が回転している状態においてハウジング10と回転体30との間の空間Sの減圧状態を適切に維持することができる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を
図8に示す。
図8は、第1実施形態の
図4に対応する図である。本実施形態では、弾性板61の先端部65に形成される切欠部66の形状が異なっているので、この点を中心に説明する。
切欠部66は、厚み方向の一側から見たとき、積層体40の軸方向、すなわち弾性板61の幅方向において、隣り合う弾性板61の切欠部66と一部が重複し、かつ、ずれて形成される。これにより、切欠部66は、弾性板61が積層された状態にて、積層体40の軸方向の一側と他側とを連通する連通路69を構成する。このように構成しても、連通路69は、積層体40の軸線に対して傾斜した状態にて軸方向の一側と他側とを連通するスパイラル溝となっている。
本実施形態では、切欠部66の側面661は、幅広面に対して略垂直に形成される。換言すると、本実施形態の切欠部66の側面661は、スパイラル溝に沿った方向ではない。
このように構成して、上記実施形態と同様の効果を奏し、特に(1)、(2)、(4)と同様の効果を奏する。
【0035】
(他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、切欠部は、連通路が積層体の軸方向の一側から他側に亘って連続するスパイラル溝となるように、隣り合う弾性板の切欠部と積層体の軸方向にずれて形成された。他の実施形態では、回転体が回転している状態にて積層体の軸方向の一側から他側に流体が流通可能であれば、切欠部の個数や形状はどのようでもよい。
【0036】
(イ)上記実施形態では、積層体を第1軸受側に設ける。他の実施形態では、積層体を第2軸受側に設けてもよいし、第1軸受側および第2軸受側の両方に設けるようにしてもよい。また、ハウジングと回転体の周壁との間であれば、積層体をどのような位置に設けてもよく、例えばハウジングの大径筒部と回転体の大径部の周壁との間に設けてもよい。
(ウ)上記実施形態では、ハウジングに流出口を設ける。他の実施形態では、例えば軸受の隙間等から流体をハウジング外部に流出可能であれば、流出口を設けなくてもよい。
【0037】
(エ)上記実施形態では、弾性板の軸方向長さは、保持部材の弾性板を固定する弾性板固定部と回転体の周壁との距離よりも大きい。他の実施形態では、積層体の軸方向の一側と他側とで差圧を形成可能であれば、弾性板の軸方向長さは、保持部材の弾性板を固定する弾性板固定部と回転体の周壁との距離以下であってもよい。
【0038】
(オ)また、弾性板の幅は、弾性板の高さよりも大きい。また、弾性板の幅は、弾性板固定部と回転体の周壁の距離よりも大きく構成している。他の実施形態では、例えば全ての弾性板の幅が、弾性板の高さよりも大きい、あるいは、弾性板固定部と回転体の周壁との距離よりも大きく構成していなくてもよい。すなわち、複数の弾性板は、全てが同じ形状、大きさであることに限らず、一部の弾性板の幅が弾性板の高さ以下である、あるいは、弾性板固定部と回転体の周壁との距離以下であってもよい。
【0039】
(カ)上記実施形態では、弾性板を保持する保持部材は、ハウジングと別体である。他の実施形態では、保持部材はハウジングと一体としてもよい。すなわち、ハウジングが「保持部材」を構成してもよい。また、上記実施形態では、弾性体収容部が保持部材の径方向内側に開口する凹状に形成される。他の実施形態では、保持部材に弾性板を固定可能などのような形状に形成してもよく、例えば弾性体収容部が形成されなくてもよい。
【0040】
(キ)上記実施形態では、回転体は一部材である。他の実施形態では、例えば回転体の軸中心に軸孔を設け、別部材にて形成された棒状の軸部材を軸孔に固定することにより回転体を構成してもよい。また、例えば圧力制御装置を回転電機としてのモータに適用する場合、ハウジングにステータを設けてもよい。また、磁極を形成するための磁石および巻線等の構成を適宜設けてもよい。また、圧力制御装置は、回転電機やフライホイール以外のどのような装置に適用してもよい。
【0041】
(ク)上記実施形態では、弾性板の回転体側の端部である先端部に切欠部を形成し、連通路を構成している。他の実施形態では、例えば弾性板の回転体側の端部であるには切欠部を設けず、弾性板の先端部と対向する回転体の周壁(第1実施形態の例では回転体30の小径部34の周壁345)に切欠部を形成し、回転体に形成される切欠部により連通路を構成してもよい。また、切欠部は、弾性板の回転体側の端部である先端部、および、弾性板の先端部と対向する回転体の周壁に形成するようにしてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。