【実施例】
【0032】
図1は、本発明に係る切削ブレードのツルーイング方法を実施するためのツルーイング装置を兼ねる、ダイシング装置の外観斜視図である。
図1に示すように、ダイシング装置10は、ミストカバー11で覆われたブレードダイシング部12、操作板13、テレビモニタ14、表示灯15、及びコントローラ16等から構成されている。
【0033】
操作板13には、ダイシング装置10の各部を操作するためのスイッチ類や表示装置が取付けられている。テレビモニタ14は、図示しないCCDカメラで撮影した半導体ウェーハWの画像の表示、及び、プログラム内容の表示や各種メッセージ等を表示する。表示灯15は、ダイシング装置10の加工中、加工終了、非常停止等の稼動状況を表示する。
【0034】
図2は、ダイシング装置10内部における要部構造を説明するための側面図である。
図2に示すように、本体ベース18上には半導体ウェーハWを吸着載置して、図示しない駆動機構によって図のX、Y、Z、θ方向にそれぞれ移動されるX−Y−Z−θテーブル19が配設されている。X−Y−Z−θテーブル19は、X−Yテーブル19a、θテーブル19c、Zテーブル19b、及びチャックテーブル19d等により構成されている。
【0035】
また、X−Y−Z−θテーブル19の上方には、ブレードダイシング部20が配設されている。ブレードダイシング部20は、上記ミストカバー11で覆われている。さらに、
図3乃至
図6で示すように、モータ(図示せず)に固定されて、先端部がケーシング21から前方に突出されている回転スピンドル22と、その回転スピンドル22の先端部に締結ナット23、24で着脱可能に装着固定されている切削ブレード25等により構成されて
いる。
【0036】
図示の実施形態においては、切削ブレード25は、50〜600μm程度の厚みで、適宜の結合剤(ボンド)によって結合されたダイヤモンド粒子(砥粒)を含有してなるドーナツ状をした薄板円板であり、回転スピンドル22と一体に回転し、尚且つ、回転スピンドル22と一体に中心軸線26方向に移動可能になっている。
【0037】
そして、チャックテーブル19d上には、ダイシング加工時、半導体ウェーハWが被加工物として装着される。
【0038】
半導体ウェーハWは、
図3に示すように、装着テープ27を介してフレーム28に取り付けられた状態で装着される。そのフレーム28は、金属薄板あるいは適宜の合成樹脂で形成されており、中央部に円形開口29を有している。装着テープ27は、フレーム28の裏面に貼着され、円形開口29を跨いで配設されている。そして、半導体ウェーハWは円形開口29内にて装着テープ27の上面に貼着されている。
【0039】
図1乃至
図3を参照して、ダイシング装置10における半導体ウェーハWの切断加工について説明する。装着テープ27を介して半導体ウェーハWが装着されたフレーム28はチャックテーブル19d上に配置される。そして、多孔性材料から形成されているチャックテーブル19dを通して、半導体ウェーハWが吸引されることによってチャックテーブル19d上に保持され、所要位置に固定される。
【0040】
続いて、回転スピンドル22を回転させて切削ブレード25を回転させると共に、切削ブレード25を半導体ウェーハWの切断ストリートに位置合わせする。位置合わせ後、回転スピンドル22を所要位置まで下降、更に詳しくは
図4に図示する如く切削ブレード25の先端面が半導体ウェーハWの裏面を越えて装着テープ27の厚さ方向中間部まで切り込む位置まで下降する。また、下降した状態で切断ストリートに沿って移動し、半導体ウェーハWを切断する。次いで、回転スピンドル22は切削ブレード25が半導体ウェーハWと接しない位置まで上昇し、ケーシング21は回転スピンドル22と共に最初に半導体ウェーハWに切り込んだ位置に戻る。
【0041】
続いて、切削ブレード25を次の切断ストリートに位置合わせし、位置合わせ後、ケーシング21を下降させ、かくして次の切断ストリートに沿って半導体ウェーハWを切断する。このような切断工程を繰り返し遂行し、所定方向に並行して延在する全ての切断ストリートに沿った切断が終了すると、チャックテーブル19dを90度回転する。しかる後に、上記の切断を遂行し、先の切断ストリートに対して垂直に延在する全ての切断ストリートに沿って半導体ウェーハWを切断する。
【0042】
そして、切削ブレード25はその先端面がほぼフラットな形状に整形されて使用され、それ故に半導体ウェーハWはその表面から裏面まで実質上垂直に切断され、切断面は厚さ全体に渡って真直に延在する。しかしながら、切断を繰り返し遂行すると、切削ブレード25はその先端部両側縁角部から漸次消耗し、切削ブレード25の先端面は漸次丸みを帯びてくる。切削ブレード25の整形ドレスを遂行することなく切断を過剰に繰り返し遂行すると、切削ブレード25の先端面は略半円形状に変形されてしまう。そして、このように変形された切削ブレード25によって半導体ウェーハWの切断を遂行すると、切削ブレード25の先端面形状が半導体ウェーハWの切断面に転写され、切断面の下端には鋭い突出部が生成されてしまう。したがって、斯様な突出部の発生を回避するためには、切断を所要回数繰り返し遂行した後に、切削ブレード25の先端面を整形することが必要である。
【0043】
そこで、本発明では、半導体ウェーハWに替えて円板状をした整形用のドレッサーボード30を用意し、このドレッサーボード30をフレーム28の装着テープ27上に貼着させると共に、フレーム28をチャックテーブル19dに配置し、尚且つ、チャックテーブル19dを通してドレッサーボード30を吸引してチャックテーブル19d上に吸着保持し、このドレッサーボード30を使用して切削ブレード25の先端形状をフラットに整形するようにしたものであって、特に、ドレッサーボード30を切削ブレード25の位置に対して所定の角度を持って相対運動しながら整形する点を特徴とする。
【0044】
これについて、
図5乃至
図7を用いて、更に詳細に説明する。本実施例では、回転しているチャックテーブル19d上に水平に保持されているドレッサーボード30の表面に、
図5及び
図6に示すように、回転スピンドル22と一体に回転している切削ブレード25の先端部(外周端)を垂直に当接させ、尚且つ、切削ブレード25を中心軸線26の方向(
図5乃至
図7中に示す矢印31方向)に、ドレッサーボード30の表面と平行に移動させ
るとともに、ドレッサーボード30もチャックテーブル19と共に水平面内で、
図5乃至
図7中に矢印32で示すように連続して回転させる。
【0045】
これによれば、ドレッサーボード30がチャックテーブル19dと共に水平面で連続して回転していることにより、
図7に示すように切削ブレード25が中心軸線26の方向に移動するとき、ドレッサーボード30も切削ブレード25の位置に対して所定の角度θを持って相対運動することになる。そして、この相対運動により、切削ブレード25の先端とドレッサーボード30との間に発生する応力が分散し、切削ブレード25の先端に掛かる力を抑えることができる。
【0046】
また、従来の方法でドレッサーボード30と切削ブレード25との間に発生していたスティックスリップ現象も無くなり、切削ブレード25の先端部(外周縁部)に加わる大きな衝撃を抑制して切削ブレード25の破損を防止することができる。さらに、整形時における切削ブレード25の撓み変形も無くすことができるので、先端形状をフラット形状に整形することができる。
【0047】
また、砥石の有効幅は、
図8を用いて説明すると次のようになる。
図8の(a)は従来の研削方法の場合での模式図であり、(b)は本実施例の研削方法の場合の模式図である。同図において、(a)の従来の場合では、切削ブレード105とドレッサーボード103とは相対運動をしておらず、ドレッサーボード103に対して切削ブレード105だけが中心軸線109方向(
図13及び
図8(a)中の矢印110方向)に移動する。したがって従来の方法の場合では、切削ブレード105に対するドレッサーボード103の有効幅はW0と
なる。これに対して、(b)の本実施例のように、切削ブレード25とドレッサーボード30とを相対運動させるとともに、ドレッサーボード30を切削ブレード25の位置に対して角度θ傾斜させて研削した場合では、ドレッサーボード30は矢印32で示す方向に送られ、切削ブレード25は中心軸線26方向(
図8(b)中の矢印31方向)に移動する。したがって、本実施例の場合の有効幅は従来の有効幅W0よりも広いW1となる。これにより、切削ブレード25に対して、ドレッサーボード30の砥石面を広く、有効に活用することができ、効率的なツルーイングが可能になる。
【0048】
図9にドレッサー軌跡の一例を示す。
図9中に符号35で示すドレッサー軌跡は、ドレッサーボード30が半径50mmの場合の軌跡であり、符号36で示すドレッサー軌跡はドレッサーボード30が半径50mmの場合の軌跡である。また、符号37で示すドレッサー軌跡はドレッサーボード30が相対移動しない場合、すなわち従来の方法によるドレッサー軌跡である。なお、
図9に示す例では、ドレッサーボードは、40mm×100mmのGCドレッサーを使用している。切削ブレードは、電鋳タイプ♯1500、外径50/8mm、ブレード厚み0.1mmである。また、ドレッサーボードの上方に回転中心を設定して該ドレッサーボード上を反時計回りに6時の方向から逆側に移動するとともに、ドレッサー回転送りを1°/秒、ブレード回転数を20000rpmとした場合の軌跡である。
【0049】
また、この装置は、フレーム28の粘着テープ27に半導体ウェーハWを取り付けた場合は、ダイシング装置として使用され、ドレッサーボード30を取り付けた場合には切削ブレードのツルーイング装置として使用できる。したがって、簡単な切り替えにより、ダイシング装置としても、ツルーイング装置としても使用することができるので、装置の共用化が可能となり、設備の簡略化及び経済性の向上が期待できる。
【0050】
なお、切削ブレード25の位置に対して、ドレッサーボード30が傾斜している上記角度θは、本実施例では45度であるが、必ずしも45度に限定されるものではない。
【0051】
また、上記実施例では、切削ブレード25の先端形状をフラット形状に整形する場合について説明したが、これ以外に、例えば
図10の(a)に示すように、先端がV字型をした円板状の切削ブレード25や、
図10の(b)に示すように、先端中央がフラット形状で、その両側がそれぞれテーパー状をした円板状の切削ブレード25として整形することもできる。このように、切削ブレード25の先端部の側面をテーパー状に整形する場合は、例えば
図11に示すように、回転しているドレッサーボード30の外周縁に、同じく回転している切削ブレード25の側面を当接させ、尚且つ、ドレッサーボード30または切削ブレード25を上下方向に移動させることにより、整形が可能となる。
【0052】
また、ドレッサーボード30は、円板状をしたドレッサーボードを使用したが、円板形でなくともよい。
【0053】
なお、切削ブレード25のツルーイングは、例えば以下の実施例1,実施例2のようにして行う。
実施例1:回転方向でのツルーイング
スピンドル回転数:6000〜12000rpm
切り込み深さ:0.01〜0.05mm
送り角速度:3〜115deg/s (実施する位置により要可変)
ドレスプレート:使用するブレードスペックに合わせて選定
【0054】
実施例2:斜め直線方向でのツルーイング
スピンドル回転数:6000〜10000rpm
切り込み深さ:0.01〜0.05mm
送り速度:Y方向:10〜30mm/s、X軸はY方向速度の60〜100%(ブレード厚みにより設定)
【0055】
上記実施例1,2のいずれも0.001〜0.002mmの送りステップを複数回繰返し、1回のツルーイングで0.03mm程度の摩耗量を基準とする。
【0056】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。