(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記高エネルギー線の照射によりスルホン酸を発生する酸発生剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
被加工基板上に請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ性現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、α位にフッ素が置換されたカルボン酸のスルホニウム塩をレジスト組成物に導入した場合、LERの小さなパターンが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0032】
以下、本発明について詳細に記述する。
尚、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0033】
本発明は、
(A)下記一般式(1)で示される塩、
(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(以下、ベース樹脂)、
を含有するものであることを特徴とする高エネルギー線露光用の化学増幅型ポジ型レジスト組成物である。
【化5】
【0034】
上記一般式(1)中、R
0は水素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。
【0035】
R
0として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を例示できる。またこれらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよい。即ち、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。
【0036】
上記一般式(1)中、R
01及びR
02はそれぞれ独立に水素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。また、R
01及びR
02は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0037】
具体的にはR
0について述べたものと同様の一価炭化水素基が例示できる。また、R
01及びR
02が相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成する場合では、形成される環状置換基としてシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよい。即ち、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。
【0038】
尚、R
0、R
01及びR
02のうち少なくとも1つは環状構造を有する。環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を例示でき、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよい。即ち、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。上記例示の環式基のうち、好ましくは脂環式炭化水素基である。
【0039】
上記一般式(1)中、Lは単結合を示すか、隣接位の酸素原子と共に形成されるエステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合あるいはカーバメート結合のいずれかを示す。
【0040】
上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩のアニオン部における好ましい構造として、下記に示すものが挙げられる。
【0043】
スルホニウム塩のアニオン部について、上記構造中、好ましくは(A−9)〜(A−16)、(A−27)〜(A−34)、(A−44)〜(A−50)、(A−52)、(A−53)である。アニオンとしてこれらの構造を有するスルホニウム塩は、カルボン酸塩でありながら特に脂溶性が高く、ビシクロ環、トリシクロ環を有する剛直な構造のため、拡散も小さく、レジスト組成物として好適である。
【0044】
上記一般式(1)中、R
101、R
102及びR
103はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。また、R
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0045】
R
101、R
102及びR
103として、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくはアリール基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよい。即ち、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。
【0046】
R
101、R
102及びR
103のうちのいずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成するものとしては、下記式で示される基等が挙げられる。
【0047】
【化8】
(式中、R
5は、上記R
101、R
102及びR
103として例示した基と同じものを示す。)
【0048】
上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩のカチオン部の具体的な構造としては、下記に示すものが挙げられる。但し本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0050】
本発明のスルホニウム塩の具体的構造については、上記に例示したアニオンとカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。
【0051】
本発明の上記一般式(1)で示される塩を含有するレジスト組成物は、露光によってα位にフッ素が置換されたカルボン酸を発生させる。このカルボン酸はα位にフッ素が置換されていないカルボン酸に比べて高い酸性度を有するため、レジスト組成物中の樹脂のフェノール性水酸基を保護しているアセタール結合を切断し、脱保護することができる。また発生したα位にフッ素が置換されたカルボン酸は、従来常用されていたアルカンスルホン酸あるいはアレーンスルホン酸よりも低い酸性度を持つ。そのため、もし未露光部にα位にフッ素が置換されたカルボン酸が拡散したとしても、従来常用されていたスルホン酸が拡散した時に比べて、望まないアセタールの切断反応が起こりにくい。結果として、LERなどのラフネスが低減される。
【0052】
上記一般式(1)で示される塩から発生するカルボン酸の酸性度はpKaが0.0〜2.0の範囲であることが好ましく、0.2〜1.8の範囲であることがより好ましい。pKaが0.0以上であれば、アセタール結合を切断するための酸として適切な強度となり、ラフネスの低減されたパターンを得ることができる。また、pKaが2.0以下であれば、アセタール結合を切断するために十分な酸強度を有する。
【0053】
また、上記一般式(1)で示される塩は酸拡散制御剤としても働き得る。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物には、後述するアルカンスルホン酸又はアレーンスルホン酸等を発生する光酸発生剤を用いてもよい。この時、上記一般式(1)で示される塩を共存させておくと、共存させない時と比較してラフネスの小さいパターンが得られる。これは、上記一般式(1)で示される塩が酸拡散制御剤として働いた結果であると考えられる。
【0054】
即ち、上記一般式(1)で示される塩と、それよりも相対的に酸性度の高い酸を発生させる強酸発生型オニウム塩とを共存させると、光照射によって、対応するカルボン酸と強酸が発生する。一方、露光量の少ない部分には分解していない多くのオニウム塩が存在している。強酸はベース樹脂の脱保護反応を引き起こすための触媒として機能するが、上記一般式(1)で示される塩から発生するカルボン酸は脱保護反応をほとんど起こさない。強酸は、残存しているカルボン酸スルホニウム塩とイオン交換し、強酸のオニウム塩となり、代わりにカルボン酸が放出される。言い換えれば、イオン交換が生じることで、強酸がカルボン酸スルホニウム塩によって中和される。これが、本発明のカルボン酸スルホニウム塩がクエンチャーとして機能する機構であると推察される。このオニウム塩型クエンチャーは、一般的にアミン化合物を用いたクエンチャーよりもレジストパターンのLWRが小さくなる傾向にある。
【0055】
露光の最後に強酸が発生する場所は、強酸とカルボン酸スルホニウム塩との塩交換が数限りなく繰り返された結果、最初に強酸発生型オニウム塩が存在している場所とは異なっている。光による酸の発生と塩交換のサイクルが何度も繰り返されることによって酸の発生ポイントが平均化され、これによって現像後のレジストパターンのLWRが小さくなるものと推察される。
【0056】
本発明のレジスト組成物に含有されるベース樹脂は、下記一般式(U−1)で示される繰り返し単位を含むものである。
【化10】
(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、R
2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。B
1は単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aは、a≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【0057】
そのうち、リンカー(−CO−O−B
1−)のない繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位等に代表される水酸基が置換された芳香環に1位置換若しくは非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレンや、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン若しくは6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等に由来する単位を挙げることができる。
【0058】
リンカー(−CO−O−B
1−)を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマーに由来する単位である。
【0059】
リンカー(−CO−O−B
1−)を有する場合の上記一般式(U−1)で示される繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【化11】
【0060】
上述の一般式(U−1)で示される単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、本発明のベース樹脂の全繰り返し単位に対し40〜90モル%の範囲で導入されることが好ましい。但し、後述の本発明で使用する、ポリマーにより高いエッチング耐性を与える一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1つ以上を使用し、その単位が置換基としてフェノール性水酸基を有する場合には、その比率も加えて上記範囲内とされることが好ましい。
【0061】
本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジストとして露光部がアルカリ性水溶液に溶解する特性を与えるため、ベース樹脂に酸不安定基により保護された酸性官能基を有する単位(酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位)が含まれることが好ましい。本発明の高分子化合物に含むことができる、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位の最も好ましいものとして、下記一般式(U−2)で示される繰り返し単位が挙げられる。
【化12】
(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R
1、R
2、B
1前述の通りである。cは、c≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素又は酸不安定基を表すが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0062】
上記一般式(U−2)は、上記一般式(U−1)で示される単位の芳香環に置換したフェノール性水酸基の少なくとも1つを酸不安定基で保護したもの、あるいは、フェノール性水酸基がカルボキシル基に置換され、カルボン酸が酸不安定基で保護されたものである。このような酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト材料で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものであれば、特に限定されることなくいずれも使用することができる。
【0063】
上記の酸不安定基として、特に3級アルキル基を選択することは、レジスト膜厚が例えば10〜100nmの薄膜に成膜し、例えば45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、LER(パターンの端部が不整形状になる現象)が小さなパターンを与えるため好ましい。さらに、その際使用される3級アルキル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、該3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、一部エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素のアルキル置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0064】
上記のアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基を挙げることができ、また、これらを置換基として有する3級アルキル基として具体的には、t−ブチル基、t−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0065】
また、下記一般式(U−11)で示されるアセタール基は酸不安定基としてよく利用され、比較的パターンと基板の界面が矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。
【化13】
(式中、R
8は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、Yは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
【0066】
上記アセタール基のうち、より高い解像性を得るためには炭素数7〜30の多環式アルキル基が含まれるものが好ましい。またYが多環式アルキル基を含む場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。環構造の2級炭素上で結合している場合、3級炭素上で結合している場合に比べて、ポリマーが安定な化合物となり、レジスト材料として保存安定性が良好となり、解像力も劣化することがない。また、Yが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合している場合と比べても、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が良好なものとなり、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがない。
【0067】
尚、上記式(U−11)の具体例としては、下記のものを例示することができる。
【化14】
(式中、R
8は上記と同様である。)
【0068】
上記式中、R
8は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト材料に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、上述のような末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、R
8としてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するR
8の例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0069】
その他の酸不安定基の選択としては、フェノール性水酸基に、(−CH
2COO−3級アルキル基)を結合させるという選択を行うこともできる。この場合に使用する3級アルキル基は、上述のフェノール性水酸基の保護に用いる3級アルキル基と同じものを使用することができる。
【0070】
上述の一般式(U−2)で示され、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、ベース樹脂の全繰り返し単位に対し、5〜45モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0071】
また、上記ベース樹脂は、下記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1つ以上をさらに含むものであることが好ましい。
【化15】
(式中、fは0〜6の整数であり、R
3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0072】
これらの繰り返し単位(上記一般式(U−3)及び一般式(U−4)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1つ以上)を構成成分として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0073】
上記のような、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる繰り返し単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためにはベース樹脂を構成する全モノマー単位に対して5モル%以上の導入が好ましい。また、上記繰り返し単位が、官能基の作用によって極性を持ち、基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入量は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が30モル%以下であれば、現像欠陥が発生する恐れがないために好ましい。
【0074】
また、本発明のレジスト組成物に使用されるベース樹脂は、好ましくは、主要構成単位として上記一般式(U−1)及び(U−2)、さらに導入可能な一般式(U−3)、(U−4)の単位がベース樹脂を構成する全モノマー単位の60モル%以上を占め、これによって本発明のレジスト組成物の特性が確実に得られる。さらに好ましくは、上記(U−1)〜(U−4)の単位が全モノマー単位の70モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。
【0075】
また、全構成単位が(U−1)〜(U−4)より選ばれた繰り返し単位であるベース樹脂である場合は、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れる。(U−1)〜(U−4)以外の繰り返し単位としては、常用される酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を使用してもよい。これらのその他の繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行ってもよいが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0076】
上記本発明のレジスト組成物に用いられるベース樹脂は、公知の方法によって、それぞれの単量体に必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については特開2004−115630号公報を参考にすることができる。
【0077】
上記本発明のレジスト組成物に使用されるベース樹脂の好ましい分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、重量平均分子量が2,000〜50,000であることが好ましく、さらに好ましくは3,000〜20,000である。重量平均分子量が2,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、LERが劣化するといった現象が生じる恐れがない。一方、分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、LERが増大する傾向を示すため、分子量を50,000以下、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には20,000以下に制御することが好ましい。
尚、GPC測定は一般的に用いられるテトラヒドロフラン(THF)溶媒を用いて行うことができる。
【0078】
さらに、上記本発明のレジスト組成物に用いるベース樹脂においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散の場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0079】
本発明のレジスト組成物は、該レジスト組成物を化学増幅型ポジ型レジスト材料として機能させるために光酸発生剤、即ち、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0080】
このような光酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
上記酸発生剤の具体例のなかでも、アリールスルホネート型または、アルカンスルホネート型の光酸発生剤が、上記一般式(U−2)で示される繰り返し単位の酸不安定基を脱保護するのに適度な強度の酸を発生させるために好ましい。
【0081】
本発明のレジスト組成物は、塩基性化合物を含有することもできる。塩基性化合物を添加することにより、酸拡散を効果的に制御することができ、かつ、被加工基板として、最表面がクロムを含む材料からなる基板を用いた場合でも、レジスト膜内に発生する酸によるクロムを含む材料への影響を抑えることができる。塩基性化合物の添加量は、上記ポリマー100質量部に対し、0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部が好ましい。また、用いることができる塩基性化合物は多数が知られており第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が知られている。これらの具体例は特許文献9に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン N−オキシド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0082】
本発明のレジスト組成物には、被加工基板への塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特開2004−115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。
界面活性剤の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0083】
さらに、本発明は、被加工基板上に上述のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ性現像液を用いて現像する工程を含むレジストパターン形成方法を提供する。
【0084】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)等の被加工基板上にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように前述のレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0085】
次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、あるいは直接、ビーム露光により、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー、電子線、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるようにパターン照射する。尚、本発明の化学増幅型レジスト組成物はEUV又は電子線によるパターン照射の場合に、特に有効である。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0086】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。さらに、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0087】
尚、本発明のレジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持ち、かつ露光後、加熱までの時間が延長された場合にもパターン線幅の変化が小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、被加工基板として、レジストパターンの密着性が取り難いことからパターン剥がれやパターン崩壊を起こし易い材料を表面に持つ基板への適用に特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板上、特にはフォトマスクブランク上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0089】
[合成例1]カルボン酸スルホニウム塩の合成
本発明において使用されるカルボン酸スルホニウム塩を以下に示す処方で合成した。
【0090】
[合成例1−1]1−アダマンタンカルボン酸=1−(ジフルオロメトキシカルボニルメチル)−2−メチル−プロピルエステル(中間体1)の合成
【化16】
特開2012−97256号公報に記載の方法に準じて合成した、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル16g及び1−アダマンタンカルボニルクロリド19gを塩化メチレン100gに溶解し、この溶液に、トリエチルアミン11gと4−ジメチルアミノピリジン1g及び塩化メチレン20gの混合溶液を氷冷下滴下した。一晩熟成後、5質量%塩酸を加えてクエンチ後、反応液を水洗し、反応液を濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液を蒸留することで目的物である1−アダマンタンカルボン酸=1−(ジフルオロメトキシカルボニルメチル)−2−メチル−プロピルエステル20gを無色油状物として得た(収率67%)。
【0091】
[合成例1−2]トリフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート(Salt−1)の合成
【化17】
合成例1−1で調製した、1−アダマンタンカルボン酸=1−(ジフルオロメトキシカルボニルメチル)−2−メチル−プロピルエステル10g、1,4−ジオキサン50g、水20gの混合溶液に、25質量%苛性ソーダ4.8gを加え、2時間撹拌後、反応液をノルマルへキサンで洗浄し、3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタン酸ナトリウムの水溶液を調製した。これにトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液48g及び塩化メチレン200gを加え、30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物であるトリフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート15gを白色結晶として得た(収率86%)。
【0092】
[合成例1−3]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート(Salt−2)の合成
【化18】
合成例1−1で調製した、1−アダマンタンカルボン酸=1−(ジフルオロメトキシカルボニルメチル)−2−メチル−プロピルエステル7g、1,4−ジオキサン50g、水20gの混合溶液に、25質量%苛性ソーダ3.2gを加え、2時間撹拌後、反応液をノルマルへキサンで洗浄し、3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタン酸ナトリウムの水溶液を調製した。これに4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムメチルサルフェートの水溶液95g及び塩化メチレン150gを加え、30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート10gを白色結晶として得た(収率82%)。
【0093】
[合成例1−4]10−フェニルフェノキサチイニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート(Salt−3)の合成
合成例1−2におけるトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液を、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液に変えた以外は合成例1−2と同様の実験操作を行い、目的物である10−フェニルフェノキサチイニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート15gを白色結晶として得た(収率85%)。
【0094】
[合成例1−5]9−フェニルジベンゾチオフェニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート(Salt−4)の合成
合成例1−2におけるトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液を、9−フェニルジベンゾチオフェニウムの水溶液に変えた以外は合成例1−2と同様の実験操作を行い、目的物である9−フェニルジベンゾチオフェニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−4−メチルペンタノエート15gを白色結晶として得た(収率85%)。
【0095】
[合成例1−6]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチル(中間体2)の合成
【化19】
亜鉛15g、ベンズアルデヒド21g、ホウ酸トリメチル60mL、テトラヒドロフラン50gの混合溶液に、60℃の加温下でブロモジフルオロ酢酸エチル48g、ジブロモエタン4.5g及びテトラヒドロフラン50gの混合溶液を滴下し、その後90℃で10時間撹拌した。その後、10質量%塩酸100gを加えて反応を停止し、不溶分を濾別して除去し、濾液を飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の反応液を減圧濃縮し、濃縮液を蒸留精製することにより、目的物である2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチル28gを無色油状物として得た(収率60%)。
【0096】
[合成例1−7]1−アダマンタンカルボン酸=2−エトキシカルボニル−2,2−ジフルオロ−1−フェニル−エチルエステル(中間体3)の合成
【化20】
合成例1−6で調製した、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチル9g及び1−アダマンタンカルボニルクロリド9.5gを塩化メチレン60gに溶解し、この溶液に、トリエチルアミン6gと4−ジメチルアミノピリジン0.5g及び塩化メチレン20gの混合溶液を氷冷下滴下した。一晩熟成後、5質量%塩酸を加えてクエンチ後、反応液を水洗し、反応液を濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、目的物である1−アダマンタンカルボン酸=2−エトキシカルボニル−2,2−ジフルオロ−1−フェニル−エチルエステル15gを無色油状物として得た(収率68%)。
【0097】
[合成例1−8]トリフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオネート(Salt−5)の合成
【化21】
合成例1−7で調製した、1−アダマンタンカルボン酸=2−エトキシカルボニル−2,2−ジフルオロ−1−フェニル−エチルエステル6.6g、1,4−ジオキサン20g、25質量%苛性ソーダ2.5gの混合溶液を2時間撹拌後、反応液に水30gを加え、次いでこれをノルマルへキサンで洗浄し、3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオン酸ナトリウムの水溶液を調製した。これにトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液32g及び塩化メチレン100gを加え、30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物であるトリフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオネート5.5gを白色結晶として得た(収率58%)。
【0098】
[合成例1−9]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオネート(Salt−6)の合成
【化22】
合成例1−7で調製した、1−アダマンタンカルボン酸=2−エトキシカルボニル−2,2−ジフルオロ−1−フェニル−エチルエステル6.6g、1,4−ジオキサン20g、25質量%苛性ソーダ2.5gの混合溶液を2時間撹拌後、反応液に水30gを加え、次いでこれをノルマルへキサンで洗浄し、3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオン酸ナトリウムの水溶液を調製した。これに4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムメチルサルフェートの水溶液95g及び塩化メチレン100gを加え、30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオネート5.4gを白色結晶として得た(収率52%)。
【0099】
[合成例1−10]10−フェニルフェノキサチイニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−3−フェニルプロピオネート(Salt−7)の合成
合成例1−8におけるトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液を、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリドの水溶液に変えた以外は合成例1−
8と同様の実験操作を行い、目的物である10−フェニルフェノキサチイニウム=3−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−2,2−ジフルオロ−
3−フェニルプロピオネート5.5gを白色結晶として得た(収率83%)。
【0100】
[合成例1−11]ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)酢酸エチル(中間体4)の合成
【化23】
亜鉛7.8g、2−アダマンタノン15g、ホウ酸トリメチル30mL、テトラヒドロフラン25gの混合溶液に、50℃の加温下でブロモジフルオロ酢酸エチル24g、ジブロモエタン2.2g及びテトラヒドロフラン25gの混合溶液を滴下し、その後80℃で10時間撹拌した。その後、5質量%塩酸50gを加えて反応を停止し、酢酸エチル200gを加えて有機層を抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、次いで水で洗浄した。洗浄後の反応液を減圧濃縮し、濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再度減圧濃縮し、濃縮液にノルマルへキサンを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することにより、目的物であるジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)酢酸エチル15gを白色結晶として得た(収率58%)。
【0101】
[合成例1−12]トリフェニルスルホニウム=ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)アセテート(Salt−8)の合成
【化24】
合成例1−11で調製した、ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)酢酸エチル3.9g、1,4−ジオキサン20g、25質量%苛性ソーダ4.8gの混合溶液を2時間撹拌後、反応液に35質量%塩酸1.5gを加え、次いでトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液24g及び塩化メチレン100gを加えた。30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて晶析を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物であるトリフェニルスルホニウム=ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)アセテート4.7gを白色結晶として得た(収率63%)。
【0102】
[合成例1−13]4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)アセテート(Salt−9)の合成
【化25】
合成例1−11で調製した、ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)酢酸エチル2.6g、1,4−ジオキサン30g、25質量%苛性ソーダ4.0g、水10gの混合溶液を2時間撹拌後、反応液に35質量%塩酸1.0gを加え、次いで4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムクロリドの水溶液66g及び塩化メチレン100gを加えた。30分撹拌後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加え、再び濃縮を行い、濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて上澄みを除去することで、目的物である4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=ジフルオロ−(2−ヒドロキシアダマンタン−2−イル)アセテート2.4gをガラス状固体として得た(収率45%)。
【0103】
[合成例2]ポリマーの合成
本発明のレジスト組成物に用いたポリマーを以下の処方で合成した。合成した各ポリマーの組成比は表1に、繰り返し単位の構造は、表2〜表5に示した。
【0104】
[ポリマー合成例2−1]ポリマー1の合成
3Lのフラスコにアセトキシスチレン407.5g、アセナフチレン42.5g、溶媒としてトルエンを1275g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層をメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、白色重合体280gを得た。得られた重合体を
1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
ヒドロキシスチレン:アセナフチレン=89.3:10.7
重量平均分子量(Mw)=5000
分子量分布(Mw/Mn)=1.63
【0105】
得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル50gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー1を得た。収量は125gであった。
【化26】
【0106】
[ポリマー合成例2−2]ポリマー2の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−8−トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0107】
[ポリマー合成例2−3]ポリマー3の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー3を得た。
【0108】
[ポリマー合成例2−4]ポリマー4の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに4−ヒドロキシフェニルメタクリレート362g、アセナフチレン38.2g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(=V−601)40.9g、メチルエチルケトン500gをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、メチルエチルケトン250gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、ヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液10kgに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン5kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル40.5gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー4を得た。収量は128gであった。
【0109】
[ポリマー合成例2−5]ポリマー5の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、(2−メチル−1−プロペニル)−8−(トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー5を得た。
【0110】
[ポリマー合成例2−6]ポリマー6の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー6を得た。
【0111】
[ポリマー合成例2−7〜2−12]ポリマー7〜12の合成
ヒドロキシスチレンユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−1、2−2又は2−3と同様の手順により、表1に示したポリマーを製造した。また、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−4、2−5又は2−6と同様の手順により、表1に示したポリマーを製造した。
【0112】
[ポリマー合成例2−13]ポリマー13の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに4−ヒドロキシフェニルメタクリレート42.4g、メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−2−イル40.6g、メタクリル酸1−メトキシ−2−メチル−1−プロピル16.9g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(=V−601)9.3g、メチルエチルケトン124gをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、メチルエチルケトン62gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、1.5kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン300gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。
【0113】
[ポリマー合成例2−14、15、16]ポリマー14、15、16の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−13と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。
【0114】
表1中、各単位の構造を表2〜4に示す。なお、下記表1において、導入比はモル比を示す。
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
ポジ型レジスト材料の調製(1)
(A)光酸発生剤として上記で合成した本発明の塩、又は比較用の塩、
(B)上記で合成したポリマー(ポリマー1〜16)、
(C)酸拡散制御剤、
以上の成分を表6に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、さらに各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト材料の溶液をそれぞれ調製した。酸拡散制御剤は下記Base−1、Base−2で表される構造のものを使用した。また、使用した本発明の塩及び比較用の塩の構造を下記の表5に示した。表6中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CyH(シクロヘキサノン)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0119】
【化27】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
上記表6に示された本発明のレジスト材料(実施例1〜48)は、アセタール基を含有する樹脂と上記一般式(1)で示される塩を含有している。これらのレジスト材料中の上記一般式(1)で示される塩は、後述するPEB温度が120℃の場合、光酸発生剤として機能する。
【0123】
電子ビーム描画評価(1)(実施例1〜44、48、比較例1〜5)
上記調製したポジ型レジスト材料(実施例1〜44、48、比較例1〜5)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で90℃で600秒間プリベークして90nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0124】
さらに、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0125】
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とし、400nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。また、CDU(CD uniformity)を評価するには、ブランク外周から20mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内49箇所において、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量(μC/cm
2)をかけた場合の線幅を測定し、その線幅平均値から各測定点を差し引いた値の3σ値を算出した。各レジスト材料の評価結果を表7に示す。
【0126】
【表7】
【0127】
EUV露光評価(1)(実施例45〜47、比較例6)
上記調製したポジ型レジスト材料(実施例45〜47、比較例6)をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0128】
得られたレジストパターンを次のように評価した。35nmのラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力(限界解像性)とし、35nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。各レジスト材料の評価結果を表8に示す。
【表8】
【0129】
上記表7、8の結果を説明する。上記表7、8では、上記一般式(1)で示される塩は光酸発生剤として利用されている。上記一般式(1)で示される本発明の塩を含有するレジスト材料(実施例1〜44、48及び実施例45〜47)は、いずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、LERも良好な値を示した。一方、比較例1〜5及び比較例6の、露光によりベンゼンスルホン酸又はフッ素化アルカンスルホン酸を発生させる塩を酸発生剤として用いたレジスト組成物は、解像性とLER、CDUが実施例と比べて悪い結果となった。これは、露光により発生した酸が未露光部へ拡散した結果、未露光部でベース樹脂中の保護基をわずかに脱保護してしまうという望ましくない反応が起きた結果と考えられる。本発明の塩を含有するレジスト材料は、比較例に使用した塩を含有するレジスト材料よりも酸性度が低いため、比較例の塩を用いたレジスト材料に比べて相対的に、前述の望ましくない反応は起こりにくい。結果として、ラフネスが低減されたパターンを形成することができる。
【0130】
ポジ型レジスト材料の調製(2)
(A)酸拡散制御剤として上記で合成した本発明の塩、又は比較用の塩、
(B)上記で合成したポリマー(ポリマー1〜16)、
(C)光酸発生剤として下記PAG−1〜PAG−4で表される構造の塩、
以上の成分を表10に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、さらに各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト材料の溶液をそれぞれ調製した。表10中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CyH(シクロヘキサノン)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。また、使用した本発明の塩及び、比較用の塩の構造を下記の表9に示した。
【0131】
【化28】
【0132】
【表9】
【0133】
【表10】
【0134】
上記表10に示された本発明のレジスト材料(実施例49〜86)は、アセタール基を含有する樹脂と上記一般式(1)で示される塩を含有している。これらのレジスト材料中の上記一般式(1)で示される塩は、後述するPEB温度が90℃の場合、酸拡散制御剤として機能する。
【0135】
電子ビーム描画評価(2)(実施例49〜86、比較例7〜10)
上記調製したポジ型レジスト材料(実施例49〜86、比較例7〜10)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で90℃で600秒間プリベークして90nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0136】
さらに、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、90℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0137】
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とし、400nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。また、CDU(CD uniformity)を評価するには、ブランク外周から20mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内49箇所において、400nmの1:1のLSを1:1で解像する露光量(μC/cm
2)をかけた場合の線幅を測定し、その線幅平均値から各測定点を差し引いた値の3σ値を算出した。各レジスト材料の評価結果を表11に示す。
【0138】
【表11】
【0139】
上記表11の結果を説明する。上記一般式(1)で示される塩を酸拡散制御剤として含有するレジスト材料(実施例49〜86)は、いずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、LERも良好な値を示した。一方、比較例7〜10の、安息香酸塩又はカルボキシル基のα位にフッ素原子を有さない塩を酸拡散制御剤として用いたレジスト組成物は、解像性とLER、CDUが実施例と比べて悪い結果となった。これらの比較例に用いた塩は、光酸発生剤から発生したベンゼンスルホン酸とのpKaの差が大きすぎたため、イオン交換反応を起こせず、ラフネスが劣化したと考えられる。
【0140】
以上説明したことから明らかなように、本発明のレジスト組成物を用いれば、露光により解像性が極めて高く、ラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。これを用いたレジストパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
【0141】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。