特許第6064190号(P6064190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064190
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】誘導検出型ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   G01D5/245 110Q
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-166605(P2012-166605)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25820(P2014-25820A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100092820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100106389
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−210472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
回転軸を中心として回転可能で且つ前記ステータと対向して配置されたロータと、
前記ステータに前記回転軸を中心として環状に形成された第1の送信巻線及び前記第1の送信巻線の内周側に環状に形成された第2の送信巻線と、
前記ステータに前記送信巻線に沿って前記回転軸を中心として環状に形成された第1の受信巻線及び第2の受信巻線と、
前記ロータに前記回転軸を中心として環状に形成されて前記第1の送信巻線、前記第2の送信巻線、前記第1の受信巻線及び前記第2の受信巻線とそれぞれ磁束結合する第1の磁束結合体及び第2の磁束結合体と
前記第1の送信巻線と前記第2の送信巻線に交互に電流を供給する電流供給手段と
を備え、
前記第1の受信巻線及び前記第1の磁束結合体は、第1のピッチをもって前記ロータの回転方向に周期的に変化する形状を有する第1トラックを形成し、
前記第2の受信巻線及び前記第2の磁束結合体は、前記第1のピッチと異なる第2のピッチをもって前記ロータの回転方向に周期的に変化する形状を有する第2トラックを形成し、
前記第1の受信巻線及び前記第2の受信巻線は、同様の半径で前記回転軸の延びる方向に第1の絶縁層を介して積層形成され、
前記第1の磁束結合体及び前記第2の磁束結合体は、同様の半径で前記回転軸の延びる方向に第2の絶縁層を介して積層形成され、
前記第1の磁束結合体は、前記第1のピッチで変化する歯車状の第1の電流経路と、前記第1の電流経路の内周側を連結する環状の第2の電流経路とを有し、
前記第2の磁束結合体は、環状の第3の電流経路と、前記第3の電流経路によって外周側が連結された前記第2のピッチで変化する歯車状の第4の電流経路とを有し、
前記電流供給手段によって前記第1の送信巻線に電流を流す場合は前記第1の受信巻線によって信号を受信し、
前記電流供給手段によって前記第2の送信巻線に電流を流す場合は前記第2の受信巻線によって信号を受信する
ことを特徴とする誘導検出型ロータリエンコーダ。
【請求項2】
前記第1の受信巻線は、前記第1の磁束結合体と対向し、
前記第2の受信巻線と前記第2の磁束結合体との間には、前記第1の受信巻線及び前記第1の磁束結合体が配置される
ことを特徴とする請求項1記載の誘導検出型ロータリエンコーダ。
【請求項3】
前記第1のピッチは前記第2のピッチよりも短い
ことを特徴とする請求項記載の誘導検出型ロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとに設けられた配線間の磁束結合を利用して物体の回転角を測定する誘導検出型ロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリエンコーダは、送信巻線及び受信巻線が配置されたステータと、これらと磁束結合可能な磁束結合体が配置されたロータとを備える(特許文献1参照)。マイクロメータ等のハンドツールへロータリエンコーダを応用する場合、波長の異なる信号を発生する複数のトラック(送信巻線、受信巻線、及び磁束結合体)を集約しその外径を小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小型化した誘導検出型ロータリエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る誘導検出型ロータリエンコーダは、ステータと、回転軸を中心として回転可能で且つステータと対向して配置されたロータと、ステータに回転軸を中心として環状に形成された第1の送信巻線及び第1の送信巻線の内周側に環状に形成された第2の送信巻線と、ステータに送信巻線に沿って回転軸を中心として環状に形成された第1の受信巻線及び第2の受信巻線と、ロータに回転軸を中心として環状に形成されて第1の送信巻線、第2の送信巻線、第1の受信巻線及び第2の受信巻線とそれぞれ磁束結合する第1の磁束結合体及び第2の磁束結合体とを備える。第1の受信巻線及び第1の磁束結合体は、第1のピッチをもってロータの回転方向に周期的に変化する形状を有する第1トラックを形成し、第2の受信巻線及び第2の磁束結合体は、第1のピッチと異なる第2のピッチをもってロータの回転方向に周期的に変化する形状を有する第2トラックを形成する。また、第1の受信巻線及び第2の受信巻線は、同様の半径で回転軸の延びる方向に第1の絶縁層を介して積層形成され、第1の磁束結合体及び第2の磁束結合体は、同様の半径で回転軸の延びる方向に第2の絶縁層を介して積層形成される。更に、上述した第1の磁束結合体は、第1のピッチで変化する歯車状の第1の電流経路と、第1の電流経路の内周側を連結する環状の第2の電流経路とを有し、第2の磁束結合体は、環状の第3の電流経路と、第3の電流経路によって外周側が連結された第2のピッチで変化する歯車状の第4の電流経路とを有する。
【0006】
上記構成では、第1及び第2の受信巻線及び第1及び第2の磁束結合体がそれぞれ同様の半径を有しており、且つ回転軸の延びる方向に積層形成されるため、絶対位置検出型の誘導検出型ロータリエンコーダを小型に構成することが可能である。また、第1の送信巻線と第2の送信巻線とを独立して構成している為、容易な構成で実現可能である。更に、第1及び第2の磁束結合体に、それぞれ第1及び第2の受信巻線と強く磁束結合する電流経路と、ほぼ磁束結合しない電流経路とを設けた為、第1トラックと第2トラックとの間のクロストークを低減して、高精度な測定を行う事が可能である。
【0007】
また、上記誘導検出型ロータリエンコーダには、第1の送信巻線と第2の送信巻線に交互に電流を供給する電流供給手段を備える事が可能である。これにより、第1トラックと第2トラックとの間のクロストークを低減する事が可能となる。
【0008】
また、上記第1及び第2の受信巻線と、第1及び第2の磁束結合体とは、次のように積層することも可能である。即ち、第1の受信巻線は、第1の磁束結合体と対向し、第2の受信巻線と第2の磁束結合体との間には、第1の受信巻線及び第1の磁束結合体が配置される。また、この場合においては、第1のピッチを第2のピッチよりも短くする事が可能である。この様な構成によれば、短いピッチを有するトラックの感度が高まるため、測定精度を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、小型化した誘導検出型ロータリエンコーダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを搭載したデジタル式マイクロメータ1の正面図である。
図2】同ロータリエンコーダ11の断面図である。
図3】同実施の形態に係るステータ13及びロータ15の断面図である。
図4】同実施の形態に係る第1の送信巻線31a、第2の送信巻線31b及び第1の受信巻線32aを示す平面図である。
図5】同実施の形態に係る受信巻線321aを示す平面図である。
図6】同実施の形態に係る第2の受信巻線32bを示す平面図である。
図7】同実施の形態に係る受信巻線321bを示す平面図である。
図8】同実施の形態に係る第1の磁束結合体41aを示す平面図である。
図9】同実施の形態に係る第2の磁束結合体41bを示す平面図である。
図10】同実施の形態に係る第1の送信巻線31a及び第2の送信巻線31bへの電流供給手段を示す回路図である。
図11】同実施の形態に係る第1の送信巻線31aを流れる電流によって第1、第2の磁束結合体41a、41bに生じる誘導電流を示す概略図である。
図12】同実施の形態に係る第2の送信巻線31bを流れる電流によって第1、第2の磁束結合体41a、41bに生じる誘導電流を示す概略図である。
図13】同実施の形態に係る第1及び第2の受信巻線32a,32bにて得られる信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態に係る誘導検出型デジタル式マイクロメータの構成]
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを搭載したデジタル式マイクロメータの構成について説明する。図1は、デジタル式マイクロメータの正面図である。デジタル式マイクロメータのフレーム3には、シンブル5が回転可能に取り付けられている。測定子であるスピンドル7は、フレーム3の内部で回転可能に支持されている。
【0013】
スピンドル7の一端側は外部に出ており、この一端が測定対象物に当接する。一方、スピンドル7の他端側には送りネジ(図1では図示せず)が切られている。この送りネジがシンブル5内のナットに嵌めこまれている。
【0014】
この構成において、シンブル5を正方向に回転させるとスピンドル7の軸方向に沿ってスピンドル7が前進し、シンブル5を逆方向に回転させるとスピンドル7の軸方向に沿ってスピンドル7が後退する。フレーム3にはデジタル式マイクロメータの測定値を表示可能な液晶表示部9が設けられている。
【0015】
[第1実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11の構成]
次に、図2を参照して、図1のデジタル式マイクロメータに組み込まれた第1実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11の構成について説明する。図2は、誘導検出型ロータリエンコーダ11の断面図である。
【0016】
誘導検出型ロータリエンコーダ11は、ステータ13と、スピンドル7(回転軸)を中心として回転可能で且つステータ13と対向して配置されたロータ15とを備える。ロータ15は円筒状のロータブッシュ19の端面に固定されている。ロータブッシュ19にはスピンドル7が挿入されている。ステータブッシュ21は、フレーム3に固定されている。
【0017】
スピンドル7の表面には、図1のシンブル5の内部に配置されたナットに嵌められる送りネジ23が形成されている。また、スピンドル7の表面には、スピンドル7の長手方向(つまりスピンドル7の進退方向)に沿ってキー溝25が掘られている。キー溝25には、ロータブッシュ19に固定されたピン27の先端部が嵌っている。スピンドル7が回転すると、その回転力がピン27を介してロータブッシュ19に伝わり、ロータ15が回転する。言い換えれば、スピンドル7の回転に連動してロータ15が回転する。ピン27はキー溝25に固定されていないので、ロータ15をスピンドル7と共に移動させずにロータ15を回転させることができる。
【0018】
[第1実施形態に係るステータ13及びロータ15の構成]
次に、図3を参照して、ステータ13、及びロータ15の構成について説明する。図3は、ステータ13及びロータ15の断面図である。ステータ13は、図3に示すように、積層された絶縁層33A〜33Dを有する。ステータ13は、ロータ15側の絶縁層33Aに第1の送信巻線31a、第2の送信巻線31b及び第1の受信巻線32aを備え、中間の絶縁層33Cに第2の受信巻線32bを備える。なお、絶縁層33A〜33Dにはスピンドル7を通すための貫通穴34が形成されており、第1及び第2の送信巻線31a,31b、第1の受信巻線32a、及び第2の受信巻線32bは貫通穴34を中心として環状に形成されている。
【0019】
一方、ロータ15は、図3に示すように、積層された絶縁層42A及び42Bを有する。ロータ15は、絶縁層42Aに第1の磁束結合体41aを備え、絶縁層42Bに第2の磁束結合体41bを備えている。なお、絶縁層42A,42Bにはスピンドル7を通すための貫通穴43が形成されており、第1の磁束結合体41a、及び第2の磁束結合体41bは貫通穴43を中心として環状に形成されている。
【0020】
第1の送信巻線31a及び第2の送信巻線31bは、電流方向が周期的に変化する送信電流を交互に、即ち時分割で流し、これにより発生する磁界をロータ15に形成された第1、第2の磁束結合体41a、41bに与える。第1及び第2の送信巻線31a,31bは、絶縁層33Aのロータ15側の表面に設けられる。
【0021】
第1、第2の磁束結合体41a、41bは、各々、送信巻線31に流れる送信電流により生じた磁界に基づく誘導電流を発生させる。第1の磁束結合体41aは、絶縁層42Aのステータ13側の表面に設けられる。第2の磁束結合体41bは絶縁層42Bのステータ13側の表面に設けられる。第1、第2の磁束結合体41a、41bは、同等の径を有し、絶縁層42Aを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。
【0022】
第1の受信巻線32aは、第1の送信巻線31aと第1の磁束結合体41aとの磁束結合により第1の磁束結合体41aに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。第2の受信巻線32bは、第2の送信巻線31bと第2の磁束結合体41bとの磁束結合により第2の磁束結合体41bに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。
【0023】
第1の受信巻線32aの一部は、絶縁層33Aのロータ15側の表面に形成され、第1の受信巻線32aの残りの部分は絶縁層33Bのロータ15側の表面に形成され、両者は絶縁層33Aを貫通するスルーホール又はビアによって相互に接続されている。第2の受信巻線32bの一部は絶縁層33Cのロータ15側の表面に形成され、第2の受信巻線32bの残りの部分は絶縁層33Dのロータ15側の表面に形成され、両者は絶縁層33Cを貫通するスルーホール又はビアによって相互に接続されている。第1の受信巻線32aと第2の受信巻線32bとは、同等の径を有し、絶縁層33Bを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。
【0024】
図3において、第1の受信巻線32aは、第1の磁束結合体41aと対向する。また、第2の受信巻線32bと第2の磁束結合体41bとの間には、第1の受信巻線32a及び第1の磁束結合体41aが配置される。この配置によって、第1の受信巻線32aで受信する信号強度を高くすることができる。第1の受信巻線32aの受信信号が測定精度に影響を与える場合、この配置は好ましい。
【0025】
次に、第1及び第2の送信巻線31a,31b、第1の受信巻線32a、第2の受信巻線32b、第1の磁束結合体41a及び第2の磁束結合体41bの平面的形状について説明する。
【0026】
図4は第1及び第2の送信巻線31a,31b及び第1の受信巻線32aを示す平面図である。第1の送信巻線31aは、図4に示すように、スピンドル7に対して同軸的に形成され、略円形の電流経路を持つ。また、第2の送信巻線31bは、スピンドル7に対して同軸的に、且つ第1の送信巻線31aの内周に形成され、略円形の電流経路を持つ。
【0027】
第1の受信巻線32aは、図4に示すように、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1の送信巻線31aの内周であり、且つ第2の送信巻線31bの外周である位置に環状に形成される。第1の受信巻線32aは、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線321a〜323aにて構成される。受信巻線321a〜323aは、交差部が短絡しないように、互いに交差する部分が絶縁層33Aを介して上下に配列され、相互がスルーホール又はビアホールにて接続されることにより各々絶縁分離されて配置される。
【0028】
次に、図5を参照して、受信巻線321aの形状について説明する。図5は受信巻線321aを示す平面図である。受信巻線321aは、図5に示すように、ロータ15の回転方向にピッチλ1をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線321aにおいて、図5に示す例では、菱型状の対PA1は10個設けられる。なお、受信巻線322a、323aも受信巻線321aと同様の形状を有する。
【0029】
次に、図6を参照して、第2の受信巻線32bの形状について説明する。図6は第2の受信巻線32bを示す平面図である。第2の受信巻線32bは、図6に示すように、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1の受信巻線32aと積層方向に重なるように環状に形成される。第2の受信巻線32bは、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線321b〜323bにて構成される。受信巻線321b〜323bは、交差部が短絡しないように、互いに交差する部分が絶縁層33Cを介して上下に配列され、相互がスルーホール又はビアホールにて接続されることにより各々絶縁分離されて配置される。
【0030】
次に、図7を参照して、受信巻線321bの形状について説明する。図7は受信巻線321bを示す平面図である。受信巻線321bは、図7に示すように、ピッチλ1と異なるピッチλ2(λ2≠λ1)をもってロータ15の回転方向に周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線321bにおいて、図7に示す例では、菱型状の対PA2は9個設けられる。本実施の形態において、ピッチλ1はピッチλ2よりも短い(λ1<λ2)。なお、受信巻線322b、323bも受信巻線321bと同様の形状を有する。
【0031】
次に、図8を参照して、第1の磁束結合体41aの形状について説明する。図8は第1の磁束結合体41aを示す平面図である。第1の磁束結合体41aは、図8に示すように、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1の受信巻線32aと空隙を介して重なるように形成される。第1の磁束結合体41aは、第1の受信巻線32aと同じピッチλ1をもってロータ15の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に内接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第1の磁束結合体41aは、スピンドル7に近づく方向に窪む凹部411aと、スピンドル7から離れる方向に突出する凸部412aとを交互に構成する。また、第1の磁束結合体41aは、複数の凹部411aを連結する円環状の連結部413aを有する。即ち、複数の凹部411a及び凸部412aは歯車状の第1の電流経路を形成し、複数の凹部411a及び連結部413aは円環状の第2の電流経路を形成する。図8に示す例では、凹部411a、凸部412a及び連結部413aの組合せPA3は10個設けられる。
【0032】
次に、図9を参照して、第2の磁束結合体41bの形状について説明する。図9は第2の磁束結合体41bを示す平面図である。第2の磁束結合体41bは、図9に示すように、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1の磁束結合体41aと絶縁層42Aを介して積層方向に重なるように形成される。第2の磁束結合体41bは、ピッチλ2をもってロータ15の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に外接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第2の磁束結合体41bは、スピンドル7に近づく方向に窪む凹部411bと、スピンドル7から離れる方向に突出する凸部412bとを交互に構成する。また、第2の磁束結合体41bは、複数の凸部412bを連結する円環連結部413bを有する。即ち、複数の凸部412b及び連結部413bは円環状の第3の電流経路を形成し、複数の凹部411b及び凸部412bは歯車状の第4の電流経路を形成する。図9に示す例では、凹部411bと凸部412bの組合せPA4は9個設けられる。
【0033】
以上図3図9に示した構成により、第1の受信巻線32a及び第1の磁束結合体41aは、ピッチλ1をもってロータ15の回転方向に周期的に変化する形状を有する第1トラックを形成する。また、第2の受信巻線32b及び第2の磁束結合体41bは、ピッチλ1と異なるピッチλ2をもってロータ15の回転方向に周期的に変化する形状を有する第2トラックを形成する。本実施の形態においては第1トラックのピッチλ1が第2トラックのピッチλ2よりも短いので、第1トラックの方が第2トラックよりも測定精度に影響する。このピッチλ1による第1トラックの信号強度を第2トラックの信号強度よりも高めているので、高い測定精度が得られる。
【0034】
図10は、第1の送信巻線31a及び第2の送信巻線31bに電流を供給する電流供給手段を示している。第1の送信巻線31a及び第2の送信巻線31bは、一端が共に接地され、他端がスイッチS1を介して交流電源Vに接続される。測定時においては、電流方向が周期的に変化する送信電流を、スイッチS1の切り替えによって第1の送信巻線31aと第2の送信巻線31bとに交互に供給する。
【0035】
[第1実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11の動作]
次に、図11及び図12を参照して、第1の受信巻線32a及び第2の受信巻線32bにて得られる信号について説明する。上述の通り、第1の送信巻線31a及び第2の送信巻線31bは、電流方向が周期的に変化する送信電流を交互に、即ち時分割で流し、第1の送信巻線31aに電流を流す場合には第1の受信巻線32aによって、第2の送信巻線31bに電流を流す場合には第2の受信巻線32bによって信号を受信する。
【0036】
まず、図11を参照して、第1の送信巻線31aに電流を流す場合について説明する。第1の送信巻線31aに、例えば時計回りに電流が流れると、各電流経路には、右ねじ方向に磁界が発生するので、この磁界が第1及び第2の磁束結合体41a,41bと結合して第1及び第2の磁束結合体41a,41bには反時計回りに電流が流れる。
【0037】
第1の磁束結合体41aにおいては主に凸部412aに誘起される電流が大勢になる。従って、磁束結合体41aにおいて誘起される電流は主として凹部411a及び凸部412aから形成される歯車状の第1の電流経路を流れる。これにより、第1の磁束結合体41aの凹部411aには、図11の紙面の表面から裏面へ、凸部412aには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ1の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第1の受信巻線32で受信する。
【0038】
また、第2の磁束結合体41bにおいては、凸部412b及び連結部413bにおいて電流が誘起され、主に円環状の第3の電流経路に電流が流れる。凹部411b及び凸部412bからなる歯車状の第4の電流経路に流れる電流は、第3の電流経路に流れる電流の10分の1程度の値となる。従って、第2の磁束結合体41bにおいて発生するピッチλ2の磁気パターンを形成する磁界は、第1の磁束結合体41aにおいて発生するピッチλ1の磁気パターンを形成する磁界と比較して極めて小さい。また、第1の磁束結合体41aは、1周の長さがピッチλ1×10であるのに対し、第2の磁束結合体41bは、1周の長さがピッチλ2×9であるから、第1の受信巻線32aに結合される磁界の影響は、図13に示す通り、1周分のトータルでは第2の磁束結合体41bからの磁界の影響が相殺される。即ち、異なるピッチλ1、λ2によって、第1の受信巻線32aでは第2の磁束結合体41bに起因する誘導電圧は打消し合うため、その信号は検出されない。すなわち、第1の受信巻線32aでは第2の磁束結合体41bからのクロストークを抑制することができる。
【0039】
次に、図12を参照して、第2の送信巻線31bに電流を流す場合について説明する。第2の送信巻線31bに、例えば時計回りに電流が流れると、第1の送信巻線31aに電流を流した場合と同様に、第1及び第2の磁束結合体41a,41bに反時計回りに電流が流れる。
【0040】
第2の磁束結合体41bにおいては凹部411bに誘起される電流が大勢になる。このため、電流は主に凹部411b及び凸部412bから形成される歯車状の第4の電流経路を流れる。これにより、第2の磁束結合体41bの凹部411bには、図12の紙面の表面から裏面へ、凸部412bには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ2の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第2の受信巻線32bで受信する。
【0041】
一方、第1の磁束結合体41aにおいては凹部411a及び連結部413aにおいて電流が誘起され、電流は主に円環状の第2の電流経路を流れる。従って、上述の場合と同様に第1の磁束結合体41aにおいて発生するピッチλ1の磁気パターンを形成する磁界は、第2の磁束結合体41bにおいて発生するピッチλ2の磁気パターンを形成する磁界と比較して極めて小さい。また、若干の磁界が第2の受信巻線32bに電流を誘起した場合であっても第1の磁束結合体41aと第2の受信巻線32bとの位相の違いによってその電流は打ち消しあい、検出される事は無い。
【0042】
以上より、図13に示すように、ステータ13に対するロータ15の位置に応じて変化する受信信号が第1の受信巻線32a及び第2の受信巻線32bから得られる。両受信信号は、ロータ15が1回転する間に1周分ずれているので、2つの受信信号から1回転における絶対位置を検出することができる。なお、図13は1相分の信号しか図示していないが、実際には、120°ずつずれた3相の受信信号が得られる。
【0043】
以上、本実施の形態によれば、第1、第2の受信巻線32a、32bをスピンドル7の長手方向に絶縁層を介して重ねることができ、また第1、第2の磁束結合体41a、41bも絶縁層を介してスピンドル7の長手方向に重ねることができるので、エンコーダの外径を小さくすることができる。しかも、クロストークを生じさせることも無い。
【0044】
以上、発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。例えば、第2の受信巻線32bは第2の磁束結合体41bと対向し、第1の受信巻線32aと第1の磁束結合体41aとの間には第2の受信巻線32b及び第2の磁束結合体41bが配置されてもよい。また、第2の受信巻線32bは第1の磁束結合体41aと対向し、第1の受信巻線32aと第2の磁束結合体41bとの間には第2の受信巻線32b及び第1の磁束結合体41aが配置されてもよい。また、第1の受信巻線32aは第2の磁束結合体41bと対向し、第2の受信巻線32bと第1の磁束結合体41aとの間には第1の受信巻線32a及び第2の磁束結合体41bが配置されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
3…フレーム、 5…シンブル、 7…スピンドル、 9…液晶表示部、 11…誘導検出型ロータリエンコーダ、 13…ステータ、 15…ロータ、 19…ロータブッシュ、 21…ステータブッシュ、 23…送りネジ、 25…キー溝、 27…ピン、 31a…第1の送信巻線、 31b…第2の送信巻線、 32a…第1の受信巻線、 32b…第2の受信巻線、 33A〜33D…絶縁層、 41a…第1の磁束結合体、 41b…第2の磁束結合体、 42A、42B…絶縁層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13