(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の発光素子が赤色系の発光波長を有する発光素子であり、前記第2の発光素子が青色系の発光波長を有する発光素子である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光装置。
前記第1の発光素子と第2の発光素子を結ぶ線の前記開口部内での中央部に垂直に交差する部位の反射壁の傾斜角度をθ3とする場合、θ3<θ1かつθ3<θ2を満足する請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの発光装置においても、発光色の配光のばらつきを十分満足できる程度にはいたっていない。また、発光装置を構成する樹脂パッケージの開口の形状において、開口幅をさらに小さくしたり、反射板の角度を90°に近い角度とする場合には、例えば、樹脂パッケージの製造時において離型性が悪化し、樹脂パッケージの意図しない変形、破損等が発生するなど、成形性に問題が生じることがあり、発光ばらつきを防止した精度のよい発光装置を製造することができない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、発光色の配光のばらつきを改善するとともに、発光装置の製造における樹脂パッケージの成形性をも改善することにより、より高精度に配光特性を制御することができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の発明を含む。
(1)特性の異なる第1の発光素子および第2の発光素子と、
上面に向かって幅広となる反射壁を有する開口を備えた樹脂パッケージを含んでなり、
前記開口は、前記樹脂パッケージ上面において、少なくとも2つの半径の異なる第1および第2のアール部を備えており、
前記第1の発光素子近傍に配置される前記第1のアール部の半径が、前記第2の発光素子近傍に配置される前記第2のアール部の半径より大きいことを特徴とする発光装置。
(2)前記第1のアール部と前記第2のアール部が、前記第1及び第2の発光素子の配列方向に対向する上記の発光装置。
(3)前記特性が異なる第1および第2の発光素子は、発光波長が異なる発光素子であり、
前記第1の発光素子の発光波長は、前記第2の発光素子の発光波長よりも長波長である請求項1又は2に記載の発光装置。
(4)前記第1の発光素子が赤色系の発光波長を有する発光素子であり、前記第2の発光素子が青色系の発光波長を有する発光素子である上記いずれかの発光装置。
(5)前記第1の発光素子と前記第2の発光素子を結ぶ線の延長線と交差する部位の反射壁の傾斜角度をそれぞれθ1及びθ2とし、前記第1の発光素子と第2の発光素子を結ぶ線の前記開口部内での中央部に垂直に交差する部位の反射壁の傾斜角度をθ3とする場合、θ3<θ1かつθ3<θ2を満足する上記いずれかの発光装置。
(6)前記第1の発光素子に近い前記反射壁の傾斜角度をθ1とし、前記第2の発光素子に近い反射壁の前記傾斜角度をθ2とする場合に、θ2≦θ1を満足する上記いずれかの発光装置。
(7)前記開口は、底面に少なくとも2つの半径の異なるアール部を備えており、
前記第1の発光素子近傍に配置されるアール部の半径が、前記第2の発光素子近傍に配置されるアール部の半径よりも大きい上記いずれかの発光装置。
(8)前記第1の発光素子近傍に配置される樹脂パッケージ上面における前記第1のアール部の半径が、前記開口の底面における前記アール部の半径よりも大きく、かつ、
前記第2の発光素子近傍に配置される樹脂パッケージ上面における前記第2のアール部の半径が、前記開口の底面における前記アール部の半径よりも小さい上記いずれかの発光装置。
(9)前記特性が異なる発光素子は、素子高が異なる発光素子である上記いずれかの発光装置。
(10)赤色系、緑色系及び青色系の発光波長を有する3つの発光素子がこの順に一列に載置されている上記いずれかの発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光装置によれば、発光色の配光のばらつきを改善することができる。また、発光装置の製造における樹脂パッケージの成形性を改善することにより、より高精度に配光特性を制御することができる。これによって、品質の高い発光装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発光装置は、少なくとも2つの発光素子と、樹脂パッケージとから構成される。
【0011】
<発光素子>
発光素子は、通常、半導体発光素子であり、いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子であればどのようなものでもよい。発光素子は、少なくとも2つ、好ましくは3つ、4つ以上搭載される。これらの発光素子は、少なくとも1つが、2つの場合には他の発光素子と特性が異なるか、3つ以上の場合には他の発光素子の複数の全部又は一部と特性が異なることが好ましい。
ここで、特性とは、特に限定されないが、例えば、配光特性であることが好ましい。そのために、発光波長、後述する半導体層の組成(組成比を含む)、出力、輝度、素子自体の高さ等が異なるものが挙げられる。素子自体の高さは、発光素子が基板を備える場合には基板下面から発光素子を構成する半導体層の上面の合計厚み、基板が除去されている場合には、発光素子を構成する半導体層の下面から上面の合計厚みを意味する。
発光素子は、後述する樹脂パッケージの開口内において、所定方向に、一列に配列されている。ここでの一列とは、直線状または略直線状に配置されていることが好ましいが、ジグザグ状(つまり、V字、W字を構成するような形状)に配置されていてもよい。例えば、
図1に示すように、矢印X方向に一列に配列させることが好ましい。
【0012】
本発明の発光装置では、発光素子は、例えば、RGBに対応するように、赤色系、緑色系、青色系の発光色の異なる発光素子を複数個、好ましくは3個組み合わせることにより、色再現性を向上させることができる。また、発光色の同じ発光素子を複数個組み合わせても、光出力を向上させることができる。RGBに対応して3個組み合わせられる場合には、赤色系、緑色系及び青色形の発光素子がこの順に一列に配列させることが好ましい。
【0013】
発光素子は、例えば、基板上(窒化物半導体基板、シリコン基板、サファイア基板等)に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、GaAs、InAlGaP等のIII-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体等、種々の半導体によって、活性層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合、PN接合などのホモ構造、ヘテロ結合あるいはダブルヘテロ結合のものが挙げられる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造、多重量子井戸構造としてもよい。活性層には、Si、Ge等のドナー不純物及び/又はZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされる場合もある。得られる発光素子の特性、例えば、発光波長は、半導体の材料、混晶比、活性層の特定の元素、例えば、InGaNのInの含有量、活性層にドープする不純物の種類を変化させるなどによって、紫外領域から赤色まで変化させることができる。
【0014】
発光素子は、後述するリードフレームに搭載され、そのために、接合部材が用いられる。例えば、青及び緑発光を有し、サファイア基板上に窒化物半導体を成長させて形成された発光素子の場合には、エポキシ樹脂、シリコーン等を用いることができる。また、発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子裏面にAlメッキをしてもよいし、樹脂を使用せず、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材を用いてもよい。さらに、GaAs等からなり、赤色発光を有する発光素子のように、両面に電極が形成された発光素子の場合には、銀、金、パラジウムなどの導電性ペースト等によってダイボンディングしてもよい。
【0015】
なお、発光素子は、通常、フェイスアップ実装、つまり、発光素子の基板(又は半導体層)に対して同じ面側に一対の電極が形成され、その電極が形成された面を、光出射面に向けて実装するタイプのもの及びフリップチップ実装等によって発光装置に搭載される。
【0016】
<樹脂パッケージ>
樹脂パッケージは、発光素子を搭載するための部材であり、樹脂によって成形されている。樹脂パッケージは、この機能を確保することができるものであれば、どのような樹脂を用いて成形されていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂、当該分野でパッケージ材料として利用されている樹脂(例えば、特開2011−256326号、特開2011−178983号等に記載の樹脂)等の樹脂、セラミック等が挙げられる。また、これらの材料には、着色剤又は光拡散剤として、種々の染料又は顔料等を混合して用いてもよい。着色剤としては、Cr
2O
3、MnO
2、Fe
2O
3、カーボンブラック等が挙げられる。光拡散剤としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。これにより、パッケージに吸収される発光素子から出射される光を最小限に止め又は反射率の高い白色パッケージあるいは黒色パッケージ等の種々の色彩のパッケージを構成することができる。
樹脂パッケージには、通常、後述する開口に透光性樹脂が埋め込まれるため、発光素子等から生じた熱の影響を受けた場合のパッケージと透光性樹脂との密着性等を考慮して、これらの熱膨張係数の差の小さいものを選択することが好ましい。
【0017】
樹脂パッケージの大きさ及び形状は特に限定されるものではなく、平面視における外形状としては、例えば、円、楕円、三角形、四角形、多角形又はこれらに近似する形状等が挙げられる。なかでも、平面視が四角形又は四角形に近似する形状であることが好ましい。大きさは、用いる発光素子の大きさ、搭載する発光素子の数によって、適宜調整することができる。
【0018】
(開口)
樹脂パッケージは、発光素子を搭載し、発光素子からの光を取り出すために機能し、上面に向かって幅広となる反射壁を有する開口を備えている。
開口の平面(樹脂パッケージ上面での)形状は特に限定されるものではなく、円、楕円、四角形に近似する形状等いずれでもよい。ただし、必ずしも点対称又は線対称の形状でなくてもよい。なかでも、平面視が四角形に近似する多角形又はこれらに近似する形状であることがより好ましい。開口の大きさは、用いる発光素子の大きさ、搭載する発光素子の数によって、適宜調整することができる。
【0019】
開口は、このような形状のいずれであっても、樹脂パッケージ上面において、少なくとも2つの半径の異なるアール部を備えている。この2つの異なる半径のアール部は、発光素子の配列方向に対向する少なくとも一対のアール部を備えていることが好ましい。ここで、発光素子の配列方向に対応するアール部とは、例えば、
図1において、発光素子の配列方向であるX方向において、アール部a1とアール部b1との位置関係、つまり、発光素子の配列方向Xにおいて、互いに向き合うように配置することを意味する。開口は、樹脂パッケージ上面において、発光素子の配列方向において、アール部a1とアール部b1とが連結されていてもよいし、アール部a1とアール部b1との間に、直線部分が配置していてもよい。
【0020】
また、第1の発光素子側(近傍)に配置されるアール部の半径は、他方の発光素子側(近傍)に配置されるアール部の半径よりも大きい。ここで、第1又は第2の発光素子側(近傍)に配置されるアール部とは、例えば、
図1において、発光素子1に隣接して発光素子1に面するアール部a1か、あるいは発光素子3に隣接して発光素子3に面するアール部b1を意味する。
図1のように3つ以上の発光素子が配列されている場合には、両端に配置された発光素子以外の発光素子2には面するアール部は通常存在しない。半径とは、例えば、
図2に示す樹脂パッケージ4の上面における開口4aのアール部を矢印a1及び矢印b1で表すと、この部位の曲線を延長して形成される円の半径を意味する。
【0021】
アール部の半径は、例えば、樹脂パッケージ及び開口の大きさによって適宜調整することができるが、例えば、一辺の長さが0.数mm〜10mm程度の発光素子又は開口の場合には、0.0数mm〜数mm程度が半径を有し、例えば、1〜数mm程度の発光素子又は開口の場合には、0.2mm〜0.8mm程度が半径を有することが好ましい。よって、上述したアール部の半径の大きさの差は、例えば、一方の半径(例えば、大きいほうの半径)の10〜50%程度が挙げられる。具体的には、0.05〜0.5mm程度が挙げられる。
【0022】
この場合、大きい半径を有するアール部に面する発光素子は、発光波長が長い、例えば、赤色系の発光素子であることが好ましい。一般に赤色系の発光素子は、緑色系及び青色系の発光素子と、それを構成する半導体層と組成が異なる、つまり、構成元素の種類が異なる。よって、緑色系及び青色系の発光素子と比較して、各層又は活性層の厚みが厚い又は素子高さが高い、横方向の光出射がより多い、駆動電圧が低いなど、その特性が顕著に異なることがある。このような特性を有する発光素子であっても、それに隣接する(面する)アール部の半径を大きくすることにより、この発光素子から出射される全光をより狭く導くことが可能となる。その結果、赤色系の発光素子を、緑色系及び/又は青色系の発光素子とともに配列させても、これら発光素子の色バランスを調整することができ、異なる発光色の配光ばらつきを小さくすることができる。
【0023】
樹脂パッケージの開口の底面における形状は、特に限定されるものではなく、円、楕円、三角形、四角形又はこれらに近似する形状等いずれでもよい。なかでも、平面視が四角形、四角形に近似する多角形又はこれらに近似する形状であることがより好ましい。開口の底面の形状においては、必ずしも点対称又は線対称でなくてもよい。
開口は、底面においてこのような形状のいずれであっても、発光素子の配列方向に対向する少なくとも一対のアール部を備えている。発光素子の配列方向に対応する底面のアール部とは、例えば、
図1において、発光素子の配列方向であるX方向においてはアール部a2とアール部b2との位置関係を意味する。開口は、樹脂パッケージ底面において、発光素子の配列方向において、アール部a2とアール部b2とが連結されていてもよいし、アール部a2とアール部b2との間に、直線部分が配置していてもよい。なお、開口の底面形状が三角形又はこれに近似する形状の場合は、発光素子の配列方向から若干のずれを有して対向するアール部であってもよい。なお、開口の底面形状がいずれの形状であっても、配列された発光素子のうちの1つに近接して配置されるアール部と、他の1つに近接して配置されるアール部とが、異なる特性を有していればよい。
底面におけるアール部の半径の大小関係も、上面におけるアール部の半径の大小関係と同様である。ただし、底面におけるアール部の半径の大小関係の差は、必ずしも上面におけるアール部の半径の大小関係の差と同じでなくてもよい。ここでの半径とは、例えば、
図2に示す樹脂パッケージ4の底面における開口4aのアール部を矢印a2及び矢印b2で表すと、この部位の曲線を延長して形成される円の半径を意味する。
【0024】
また、第1の発光素子近傍に配置される樹脂パッケージ上面におけるアール部の半径は、開口の底面におけるアール部の半径よりも大きいことが好ましい。例えば、
図1及び
図2において、発光素子1近傍に配置される樹脂パッケージ上面におけるアール部a1の半径は、開口の底面におけるアール部a2の半径よりも大きいことが好ましい。大きさの差は、特に限定されるものではなく、例えば、一方の半径(例えば、上面の半径)の5〜30%程度が挙げられる。具体的には、0.02〜0.3mm程度が挙げられる。
この場合、第2の発光素子近傍に配置される樹脂パッケージ上面におけるアール部の半径が、開口の底面における前記アール部の半径よりも小さいことが好ましい。例えば、
図1及び
図2において、発光素子3近傍に配置される樹脂パッケージ上面におけるアール部b1の半径は、開口の底面におけるアール部b2の半径よりも小さいことが好ましい。大きさの差は、特に限定されるものではなく、例えば、一方の半径(例えば、上面の半径)の5〜30%程度が挙げられる。具体的には、0.02〜0.3mm程度が挙げられる。
【0025】
上面に向かって幅広となる反射壁は、開口の周囲の一部において存在せずに開口の周囲の一部が樹脂パッケージの上面又は開口底面に対して垂直であってもよいが、全開口の周囲にわたって配置されていることが好ましい。つまり、反射壁は、開口の全周囲にわたって、底面に向かって幅狭であることが好ましい。反射壁がこのような傾斜を有することにより、発光素子から出射された光を効率的に、取り出し面の方向(上面方向)に反射させることができる。ただし、反射壁は、その表面が平面であってもよいし、曲面であってもよい。
この反射壁は、その部位によって、異なる傾斜角度で傾斜していることが好ましい。いずれにおいても、反射壁の傾斜角度は、樹脂パッケージの上面又は開口底面に相当する面に対して、90°よりも小さく、45°程度以上であることが好ましく、60〜80°程度であることがより好ましく、60〜70°程度であることがさらに好ましい。このような傾斜角度とすることにより、上述した光取り出し効率の向上に加えて、樹脂パッケージ成形時の離型性を確保することができ、樹脂パッケージを損傷させることなく、精度よく適切な形状に成形することが可能となる。
【0026】
特に、発光素子が一列に載置されている場合、発光素子を結ぶ線の延長線と交差する部位の反射壁の傾斜角度をそれぞれθ1及びθ2(
図1(B)参照)とし、発光素子を結ぶ線の前記開口部内での中央部に垂直に交差する部位の反射壁の傾斜角度をθ3(
図1(C)参照)とすると、θ3<θ1かつθ3<θ2を満足することが好ましい。ただし、複数の発光素子が直線状に配列されていないときは、少なくとも両端の2つの発光素子(好ましくは、発光素子の重心など)を結ぶ線の延長線を、発光素子を結ぶ線の延長線とすることが好ましい。なお、
図2に示したように、θ1及びθ2を有する部位は、それぞれ部位Pθ1及び部位Pθ2で表され、θ3を有する部位は、部位Pθ3で表される。
【0027】
傾斜角度θ3と傾斜角度θ1及びθ2との差は、例えば、5〜20°程度が好ましく、7〜15°程度がより好ましく、7〜12°程度がさらに好ましい。一般に、本願の樹脂パッケージのように、開口形状が所定の基準線に対して非対称とする場合には、その製造方法にも依存するが、通常利用される、金型を利用した射出成形法等によって形成すると金型に対して、離型性が極端に悪化する。一方、上述したように、非対称であっても、樹脂パッケージの一部、例えば、部位Pθ3の部位において、その傾斜を緩やかにすることにより、離型性を著しく改善することができる。なお、アール部の半径が大きな部位においては、樹脂パッケージの離型時に金型に引張られ、樹脂パッケージに部分的に意図しない応力が付加され、これに起因して、樹脂パッケージの変形又は損傷にいたることがあるが、このような応力の付加による変形及び損傷をも、上述したような傾斜の緩和により、効果的に防止することができる。
【0028】
また、
図1(A)に示すように、赤色系の発光素子に近い反射壁の傾斜角度をθ1とし、青色系の発光素子に近い反射壁の傾斜角度をθ2とする場合に、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とは、同じであってもよいが、θ1をθ2よりも大きくすることが好ましい。つまり、θ2≦θ1を満足することが好ましい。
このような関係を満たすことにより、配光を改善することができる。
【0029】
さらに、部位Pθ1から部位Pθ3にかけての反射壁の傾斜角度、部位Pθ2から部位Pθ3にかけての反射壁の傾斜角度は、同じであってもよいし、第1の発光素子近傍に配置されるアール部と第2の発光素子近傍に配置されるアール部、つまり、部位Pθ1に近いアール部と部位Pθ2に近いアール部とは、樹脂パッケージ上面の開口及び/又は樹脂パッケージ底面の開口の半径が異なることから、互いに異なっていることが好ましい。
例えば、各アール部の中央付近(
図2の部位Pa3、部位Pb3)の傾斜角度は、θ1、θ2及びθ3にかかわらず、配光性及び/又は離型性とのバランスをはかり、最適な角度に設定することが好ましい。具体的には、θ1及びθ2よりも大きくても、小さくても、θ3よりも大きくても、小さくてもよいが、第1の発光素子に近いアール部の中央付近の傾斜角度は、θ1よりも小さく、θ3よりも大きいことが好ましい。また、第2の発光素子に近いアール部の中央付近の傾斜角度は、θ2よりも小さく、さらに、θ3よりも小さいことが好ましい。この場合の傾斜角度の下限は、θ1の傾斜角度よりも9°程度以内、好ましくは5°程度以内であり、θ3の傾斜角度よりも5°程度以内、好ましくは3°程度以内である。
このような傾斜角度に設定することにより、特に、樹脂パッケージの離型時において、樹脂パッケージに部分的に意図しない応力が付加されることにより、変形及び損傷にいたることなく、樹脂パッケージの変形や損傷を効果的に防止することができる。
【0030】
開口の深さは、用いる発光素子の素子高さ、ボンディング方法等によって適宜調整することができる。例えば、上述した発光素子の厚みの1.5〜10倍程度が好ましく、1.5〜5倍程度、2〜5倍程度がより好ましい。具体的には、0.1〜1mm程度、0.2〜0.6mm程度、さらに好ましくは0.25〜0.35mm程度が挙げられる。開口の底面及び/又は反射壁は、エンボス加工又はプラズマ処理などを行って、表面積を増加させ、後述する透光性樹脂との密着性を向上させることが好ましい。
【0031】
本発明の発光装置には、発光素子の他、保護素子が搭載されていてもよい。保護素子は、1つでもよいし、2つ以上の複数個でもよい。ここで、保護素子は、特に限定されるものではなく、発光装置に搭載される公知のもののいずれでもよい。具体的には、過熱、過電圧、過電流、保護回路、静電保護素子等が挙げられる。搭載する部位は、開口内であって、発光素子の近傍でもよいが、樹脂パッケージ内に一部又は全部が埋設されていることが好ましい。
【0032】
(リードフレーム)
本発明の樹脂パッケージには、リードフレームが一部埋設されている。リードフレームは、発光素子を搭載するための部材である。また、発光素子と電気的に接続される電極及びリード端子としての役割も果たす。そのために、リードフレームは、樹脂パッケージ内部に埋設されて固定された部位以外の別の一部が発光素子を載置し、電気的な接続をとるために樹脂パッケージの開口内(その底面)で露出し、さらに他の一部がパッケージ内から外に突出している。リードフレームの開口底面における一部表面の露出により、発光素子からの光を反射させ、効率よく正面方向へと取り出すことができる。
【0033】
リードフレームは、通常、1つの発光装置において2つ以上備えられており、さらに発光素子の数+1つ以上、あるいは、発光素子数の2倍以上であってもよい。例えば、発光素子が3つ搭載される場合には、1つのリードフレームの3つの発光素子を載置し、これらの発光素子は、それらが載置されたリードフレームと、それぞれ別のリードフレームに、それぞれ電気的に接続される。
なお、複数のリードフレームは、上述した発光素子の電極との電気的な接続以外、実質的に電気的に分離されてパッケージ内に配置されている。
【0034】
リードフレームは、実質的に板状であればよく、波形板状、凹凸を有する板状であってもよい。材料は特に限定されず、発光素子に適当な電力を供給することができるような材料等であればよい。また、熱伝導率の比較的大きな材料で形成することが好ましい。このような材料で形成することにより、発光素子で発生する熱を効率的に逃がすことができる。例えば、200W/(m・K)程度以上の熱伝導率を有しているもの、比較的大きい機械的強°を有するもの、あるいは打ち抜きプレス加工又はエッチング加工等が容易な材料が好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等が挙げられる。また、リードフレームの表面には、搭載される発光素子からの光を効率よく取り出すために反射メッキ(例えば、銀又は銀合金、Ni/Pd/Au等による)が施されていることが好ましい。リードフレームの大きさ、厚み、形状等は、得ようとする発光装置の大きさ、形状等を考慮して適宜調整することができる。
【0035】
リードフレームのパッケージ外におよぶ部位(つまり、リード端子)は、発光装置に搭載される発光素子の放熱性及び発光装置の使用態様(配置空間、配置位置など)を考慮して、その形状、大きさ等を適宜調整することができる。また、リード端子は、他の電子機器との位置関係などの使用態様に応じて、適宜屈曲、変形させることができる。
【0036】
リードフレームは、発光素子と電気的に接続されずに発光素子を載置するのみ、発光素子が載置されない、発光素子と電気的に接続されないものであってもよい。このようなリードフレームは、例えば、その一端が、リード端子として機能する部分よりも表面積が大きいことが好ましい。これにより、パッケージ内で発光素子から生じた熱を外部に導く放熱経路として、また、過電圧対策として機能させることができる。
【0037】
(ワイヤ)
本発明の発光装置では、発光素子に形成された一対の電極が、発光素子への電力供給のために、ワイヤによって、リードフレーム及び/又は隣接する発光素子の電極と電気的に接続されている。
ワイヤの材料及び直径などは、特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用されているものを利用することができる。特に、発光素子の電極とのオーミック性が良好であるか、機械的接続性が良好であるか、電気伝導性及び熱伝導性が良好なものであることが好ましい。
【0038】
ワイヤは、例えば、金、銅、白金、アルミニウム、銀等の金属及びそれらの合金を用いたもの、ワイヤ表面に銀又は銀合金を被覆したもの等を用いることができる。なかでも、反射率が高い材料としては、銀、銅、鉛、アルミニウム、白金又はこれらの合金が好ましく、銀又は銀合金がより好ましい。例えば、市販品として、銀が87.7体積%、金が8.7体積%、パラジウムが3.6体積%のワイヤ(商品名:SEA、田中貴金属社製)が挙げられる。
ワイヤの直径は、特に限定されるものではないが、10μm〜70μm程度が挙げられ、15〜50μm程度が好ましく、18〜30μm程度(例えば、25μm程度)がより好ましい。
ワイヤの熱伝導率は、0.01cal/S・cm
2・℃/cm程度以上が好ましく、さらに0.5cal/S・cm
2・℃/cm程度以上がより好ましい。
【0039】
(透光性樹脂)
本発明の発光装置では、発光素子が載置された開口内に、透光性樹脂が埋め込まれていることが好ましい。
透光性樹脂は、発光素子やワイヤ、導電部材の一部を、封止して、塵芥や水分、外力などから保護する部材である。透光性樹脂の母材は、発光素子から出射される光を透過可能な材料(好ましくは透過率70%以上)で形成されていることが好ましい。
具体的には、付加又は縮合型のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、またはこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂が挙げられる。
【0040】
この透光性樹脂は、さらに上記樹脂に、亜鉛を含む金属塩および/または金属錯体を含むことが好ましい。亜鉛を含有することにより、特に硫黄原子を含有するガスを効果的にトラップすることができ、銀の硫化を抑制することが可能となる。
例えば、燐酸エステルまたは燐酸の亜鉛塩、燐酸エステルまたは燐酸の亜鉛塩の酸あるいはエステルを配位子として有する亜鉛錯体を含むものが挙げられる。
具体的には、亜鉛ビスアセチルアセトネート、亜鉛ビス2−エチルヘキサノエート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカネート等のカルボン酸塩、亜鉛華、スズ酸亜鉛などを含むことが好ましい。
このような透光性樹脂を用いることにより、硫黄含有ガスが、リードフレームまたはリードフレーム表面の鍍金あるいはワイヤとして用いられる銀または銀合金へ到達して、これらが硫化することを劇的に抑制することができる。
透光性樹脂としては、例えば、特開2011−256326、特開2011−137140、特開2011−178983等に記載されたものを利用することができる。
【0041】
透光性樹脂には、拡散剤又は蛍光物質を含有させてもよい。拡散剤は、光を拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。蛍光物質は、発光素子からの光を変換させるものであり、発光素子からパッケージの外部へ出射される光の波長を変換することができる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、有機蛍光体であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2などの無機蛍光体など、種々好適に用いられる。本発明において、白色光を得る場合、特にYAG:Ce蛍光体を利用すると、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる黄色系が発光可能となり白色系が比較的簡単に信頼性良く形成できる。同様に、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2蛍光体を利用した場合は、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる赤色系が発光可能であり白色系が比較的簡単に信頼性よく形成できる。また、蛍光体を完全に沈降させ、気泡を除くことで色むらを低減させることができる。
【0042】
以下に、本発明の発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態
図1〜
図3に示すように、この実施形態の発光装置は、RGBに対応する3つの発光素子1、2、3と、これらをその開口4a内に搭載した樹脂パッケージ4を備える。
発光装置は、平面形状が正方形に近い長方形に相当する形状に形成されている。例えば、上面が1.8mm×1.7mmであり、高さが0.84mm程度の大きさを有する。開口は、上面視において、卵形の形状を有しており、開口4aの深さは、0.45mm程度である。
赤色系発光素子1、緑色系発光素子2、青色系発光素子3は、この順に、
図1のX方向に沿って、この順に直線状に配列されている。
赤色系の発光素子1はシリコン基板にInAlGaP系半導体層を貼り合せた構造によって形成されており、その素子高さは、170μm程度である。緑色系発光素子2及び青色系発光素子3は、サファイア基板にGaN系半導体層を積層させた構造によって形成されており、その素子高さは、それぞれ、120μm程度、85μm程度である。
【0043】
樹脂パッケージ4の開口4aの底面4dの発光素子1、2、3が搭載された部位には、リードフレーム5、6の一部が露出されており、ワイヤ7によって、発光素子1、2、3とそれぞれ電気的に接続されている。開口4aの底面4dで露出した部位以外のリードフレーム5、6の一部は樹脂パッケージ4内に埋設され、さらに、外部端子として樹脂パッケージ外に突出され、トップビュー型に構成されている。
【0044】
開口は、樹脂パッケージ4上面において、発光素子の配列方向Xに対向する方向に、一対の対向するアール部を2対備えている。
図1においては、アール部a1及びアール部b1と、
図2においては、これらアール部a1及びb1に対応するアール部c及びdの上面部が相当する。
【0045】
赤色系の発光素子1側(近傍)に配置されるアール部a1の半径は、例えば、0.6mmに設定されており、青色系の発光素子3側(近傍)に配置されるアール部b1の半径は、例えば、0.45mmに設定されており、アール部a1の半径が、アール部b1の半径よりも大きい。樹脂パッケージ4の上面において、アール部aとアール部cとは同じ形状であり、アール部cとアール部dとは同じ形状である。
【0046】
また、開口は、底面にも、発光素子の配列方向に対向して、2対のアール部を備えている。
図1においては、アール部a2とアール部b2、
図2においては、これらアール部a2及びb2に対応するアール部c及びdの底面部が相当する。
そして、赤色系発光素子1側(近傍)に配置されるアール部a2の半径は、例えば、0.55mmに設定されており、青色系の発光素子3側(近傍)に配置されるアール部b2の半径は、例えば、0.5mmに設定されており、アール部a2の半径が、アール部b2の半径よりも大きい。樹脂パッケージ4の開口4aの底面においても、アール部aとアール部cとは同じ形状であり、アール部cとアール部dとは同じ形状である。
【0047】
このようなアール部の半径では、赤色系の発光素子側(近傍)に配置される樹脂パッケージ4上面におけるアール部の半径は、開口4aの底面4dにおけるアール部の半径よりも大きい。
また、青色系の発光素子3側(近傍)に配置される樹脂パッケージ4上面におけるアール部の半径が、開口4aの底面4dにおけるアール部の半径よりも小さい。
【0048】
開口4a内において、発光素子1、2、3を結ぶ線の延長線と交差する部位Pθ1及びPθ2の反射壁4cの傾斜角度をそれぞれθ1及びθ2とし、発光素子1、2、3を結ぶ線に垂直に交差する部位Pθ3の反射壁の傾斜角度をθ3とする場合、θ3は72°程度、θ1は79°程度、θ2は79°程度に設定されている。
また、赤色系発光素子1近傍のアール部の中央部位Pa3付近の反射壁の傾斜角度は、75°程度に設定されている。青色赤色系発光素子3近傍のアール部の中央部位Pb3付近の反射壁の傾斜角度は、70°程度に設定されている。
【0049】
この発光装置は、発光素子の特性に応じて、樹脂パッケージの開口を構成する反射壁の傾斜角度を制御することにより、それらの特性に起因する発光色の配光ばらつきを小さくすることができ、これら発光素子の色バランスを適切に調整することが可能となる。特に、赤色系の発光素子は、緑色系及び青色系の発光素子と比較して、各層又は活性層の厚みが厚い又は素子高さが高いため、発光面が高い位置にあり、横方向の光出射がより多い、駆動電圧が低いなど、その特性が顕著に異なるが、このような特性を有する発光素子であっても、それに隣接する(面する)アール部の半径を制御することにより、発光素子から出射される全光をより狭いに導くことが可能となる。その結果、赤色系の発光素子を、緑色系及び/又は青色系の発光素子とともに配列させても、これら発光素子の色バランスを調整することができ、異なる発光色の配光ばらつきを小さくすることができる。この結果、発光効率を向上させることができる。
【0050】
また、上述したアール部の半径の制御、さらに反射壁の傾斜角度の制御によって、樹脂パッケージ成形時の離型性を確保することができ、樹脂パッケージを変形、損傷させることなく、精度よく適切な形状に成形することが可能となる。