特許第6064413号(P6064413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064413
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/20 20100101AFI20170116BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L33/20
   H01L33/32
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-168869(P2012-168869)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-27236(P2014-27236A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】榎村 恵滋
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅彦
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−124429(JP,A)
【文献】 特開2008−177528(JP,A)
【文献】 特開2006−310893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の凸部を有する基板上に、n型窒化物半導体層、発光層及びp型窒化物半導体層がこの順に積層されて構成され、平面形状が長方形である半導体発光素子であって、
前記n型窒化物半導体層は、少なくとも一部領域において、一方向に延長する露出領域を有しており、前記n型窒化物半導体層の露出領域上には、n側パッドと、該n側パッド部から延長し、前記一方向に延伸するn側延伸部とが配置されており、
前記p型窒化物半導体層は、前記長方形の半導体発光素子の短手方向の中央領域に位置するp側パッドと、該p側パッド部から前記一方向に延長するp側延伸部とを備え、
前記凸部は、その底面形状が3つの頂点を有する形状であり、
前記凸部のうち、隣接する2つの頂点が、前記露出領域を含んで延びる前記一方向への延長線に対して、最短かつ等距離となるように配置された凸部が全体の半分以上を占め、
前記n側延伸部に隣接する前記p型窒化物半導体層の端部と前記p側延伸部との距離αは、前記n側延伸部とは反対側に位置する前記p型窒化物半導体層の端部と前記p側延伸部との距離βよりも長いことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記凸部は、錐台状又は錐体状である請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記複数の凸部は、前記延長線に対して平行な複数の列を構成し、該複数の列のうち隣接する2つの列の凸部は、互いに1/2ピッチずれて配置されている請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記複数の凸部は、前記延長線に対して垂直な複数の行を構成し、該複数の行のうち隣接する2つの行の凸部は、互いに1/2ピッチずれて配置されている請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記n側パッドは、前記一方向に直交する方向の中央領域に配置されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記n側延伸部は、前記n側パッド部から、短辺から離れ、かつ長辺に向かって伸びる、半導体発光素子のコーナー部で丸みを帯びた形状で配置されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記n側延伸部は、n側延伸部からn側パッド部に向かって幅広となる部分を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子は、ディスプレイ、バックライト及び照明等の様々な分野のデバイスにおいて光源として広く利用されている。
このように広く利用されている半導体発光素子においては、その光取り出し効率をより向上させるために、電極材料の選択、電極の配置、半導体発光素子底面における反射膜の配置など、素子自体に発光効率を向上させる工夫がなされている。
その一例として、例えば、発光効率を向上させるために、基板表面に所定形状の凸部を設けることが提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−77562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、さらなる発光効率の向上を実現することが求められているのが現状である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より一層光取り出し効率の向上を実現した半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を含む。
(1)表面に複数の凸部を有する基板上に、n型窒化物半導体層、発光層及びp型窒化物半導体層がこの順に積層されて構成された半導体発光素子であって、
前記n型窒化物半導体層は、少なくとも一部領域において、一方向に延長する露出領域を有しており、
前記凸部は、その底面形状が複数の頂点を有しており、
前記凸部のうち、隣接する2つの頂点が、前記露出領域を含んで延びる一方向への延長線に対して、最短かつ等距離となるように配置された凸部が全体の半分以上を占めることを特徴とする半導体発光素子。
(2)前記凸部は、底面形状が3つの頂点を有する形状である上記に記載の半導体発光素子。
(3)前記凸部は、錐台状又は錐体状である上記いずれかに記載の半導体発光素子。
(4)前記複数の凸部は、前記延長線に対して平行な複数の列を構成し、該複数の列のうち隣接する2つの列の凸部は、互いに1/2ピッチずれて配置されている上記いずれかに記載の半導体発光素子。
(5)前記複数の凸部は、前記延長線に対して垂直な複数の行を構成し、該複数の行のうち隣接する2つの行の凸部は、互いに1/2ピッチずれて配置されている上記いずれかに記載の半導体発光素子。
(6)前記半導体発光素子は、平面形状が長方形であり、前記一方向が該長方形の長辺に平行又は略平行な方向である上記いずれかに記載の半導体発光素子。
(7)前記n型窒化物半導体層の露出領域上の一部には、n側パッド電極が配置されており、該n側パッド電極は、前記一方向に直交する方向の中央領域に配置されたn側パッド部と、該n側パッド部から延長し、前記一方向に延伸するn側延伸部とを含む上記いずれに記載の半導体発光素子。
(8)前記露出領域を含んで延びる一方向への延長線が、前記一方向に延伸するn側延伸部を含んで延びる延長線と一致し、
前記凸部のうち、隣接する2つの頂点が、前記n側延伸部を含んで延びる一方向への延長線に対して、最短かつ等距離となるように配置された凸部が全体の半分以上を占める上記いずれかに記載の半導体発光素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半導体発光素子によれば、より一層光取り出し効率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明の実施の形態1の半導体発光素子を電極配置面側から見た平面図である。
図1B図1のI−I’線断面図である。
図1C図1のII−II’線断面図である。
図1D図1の領域Yにおける1つの凸部の向きを示す拡大平面図である。
図1E図1の領域Yにおける凸部の一配列を示す平面図である。
図1F図1の領域Yにおける凸部の別の配列を示す平面図である。
図1G図1の半導体発光素子の指向特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施の形態2の半導体発光素子を電極配置面側から見た平面図である。
図3】半導体発光素子における1つの凸部の別の向きを示す拡大平面図である。
図4A】半導体発光素子における1つの凸部のさらに別の向きを示す拡大平面図である。
図4B】半導体発光素子における1つの凸部のさらに別の向きを示す拡大平面図である。
図5】本発明の別の形態の半導体発光素子を電極配置面側から見た平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の半導体発光素子は、主として、表面に複数の凸部を有する基板上に、n型窒化物半導体層、発光層及びp型窒化物半導体層がこの順に積層されて構成される。この半導体発光素子は、通常、n型窒化物半導体層及びp型窒化物半導体層に、それぞれn側電極及びp側電極を備える。
【0009】
(基板)
基板は、特に限定されるものではなく、窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる基板であればよい。基板は、C面、R面及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA1)、AlNのような絶縁性基板、炭化珪素(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、GaN、GaAs、ダイヤモンド並びに窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板等が挙げられる。なかでも、サファイア基板が好ましく、凸部が形成される前の基板として、C面を一面とするサファイア基板が好ましい。基板は、その表面及び/又は裏面にオフアングルを有していてもよい。このオフアングルは、例えば、0〜10°程度が挙げられ、0〜±5°程度、0〜±2°程度、0〜±1°程度、0〜±0.5°程度、0〜±0.25°程度が好ましい。
基板の厚みは特に限定されないが、凸部の形成及び半導体層の積層等における強度を考慮すると、50μm〜2mm程度であることが適している。
【0010】
(凸部)
基板の表面に存在する凸部は、その底面形状が複数の頂点を有する形状であればよい。つまり、円又は楕円等のような形状ではなく、底面を形作る線が急激にその方向を変える点(つまり、頂点)が複数存在し、このような複数の線と頂点とによって形作られた形状を意味する。ここでの線は、必ずしも直線のみを意味するのではなく、弧のように湾曲した線であってもよい。具体的には、三角形、五角形、六角形等の多角形又はこれに近似した形状、好ましくは、これらの正多角形又は正多角形に近似した形状、より好ましくは、三角形又は正三角形に近似した形状が挙げられる。ここで、近似した形状とは、上述したように、隣接する頂点同士を結ぶ線が必ずしも直線でなく、湾曲した線によって形作られる形状を意味する(例えば、図1Dの線D、E、F参照)。
【0011】
凸部の底面のサイズ、例えば、隣接する頂点を結ぶ線の距離又は任意の頂点間の最長距離は、0.1μm〜5μm程度が挙げられる。また、凸部同士の間隔、つまり、隣接する凸部同士の最小の距離は、0.5〜50μm程度、1〜20μm程度が挙げられる。
【0012】
凸部の形状は、錐体状、錐台状等が挙げられる。錐体状又は錐台状である場合には、その凸部の底面と側面とのなす角は、30〜80°程度が挙げられ、40〜70°程度が好ましい。
凸部の高さは、例えば、0.2μm程度以上、基板上に積層する半導体層の総厚さ以下であることが適している。発光波長をλとしたとき、高さがλ/4以上であることが好ましい。光を十分に散乱又は回折することができるとともに、積層された半導体層の横方向における電流の流れを良好に維持し、発光効率を確保することができる。
【0013】
複数の凸部のうち、特定の凸部は、1つの半導体素子を構成する基板上の凸部数の半分以上を占める(例えばこれを「優勢」ということがある)。この場合、1つの半導体発光素子において配置する複数の凸部の大きさ(底面積)は同じであることが好ましい。
【0014】
例えば、図1Aに示すように、n型窒化物半導体の露出領域2aが発光素子の2つの辺に沿って端部に設けられる場合には、基板表面の全面において、凸部が、図1Dに示す方向で配置していても、n型窒化物半導体の露出領域の大きさにもよるが、略85%程度以上、好ましくは90%以上において、特定の凸部が優勢に配置された状態とすることができる。
また、図2に示すように、n型窒化物半導体の露出領域72aが発光素子の中央付近に設けられる場合には、基板表面の全面において、図1Dに示す方向に配置すれば、略50%程度において、特定の凸部が優勢に配置された状態とすることができる。さらに、図2に示すように、露出領域が中央付近に設けられる場合、例えば、その中央線W(厳密には、n側延伸部の中央線)に対して、Wr側は図1Dに示す方向に配置し、Wl側はその逆、つまり図3に示す方向に配置することにより、略100%において、特定の凸部を優勢に配置させた状態とすることができる。
【0015】
特定の凸部とは、隣接する2つの頂点が一方向に延長する線に対して等距離となるように配置された凸部を意味する。さらに、凸部における2つの頂点が一方向に延長する線に対して最短かつ等距離となるように配置されていることが好ましい。ここで、一方向に延長する線とは、例えば、後述するn型窒化物半導体層の露出領域が延びる一方向の延長線(この延長線は、露出領域内に及ぶ線も含む)、好ましくは、露出領域の延長方向に延びる露出領域の中央線及びその延長線、露出領域上に形成されているn側電極のn側延伸部の中央線及びその延長線のいずれかを意味する。言い換えると、この特定の凸部は、例えば、隣接する頂点を結ぶ線が、上述した一方向に延長する線に対して平行又は略平行であり、かつ、凸部内で一方向に延長する線に近い側に配置されていることを意味する。ここで、平行又は略平行又は略平行とは、±10°程度、好ましくは±5°程度の傾斜を許容することを意味する。
【0016】
このような特定の凸部は、上述したように配置されていればよく、基板全面においてランダムに配置されていてもよいし、規則的に配置されていてもよい(図1E及び1F参照)。
規則的な配置としては、例えば、複数の凸部は、上述した延長線に対して平行な複数の列を構成し、複数の列のうち隣接する2つの列の凸部が、互いに1/2ピッチずれた配置(図1E)、複数の凸部は、延長線に対して垂直な複数の行を構成し、複数の行のうち隣接する2つの行の凸部が、互いに1/2ピッチずれた配置(図1F)、言い換えると、複数の凸部は、それぞれ、露出領域を含んで延びる一方向への延長線に対して等距離となる2頂点を結ぶ線が、延長線に対して平行に、かつ(1)複数列を構成するように配置されており、この隣接する列の凸部は、1/2ピッチ列方向にシフトした配置であるか、(2)複数行を構成するように配置されており、この隣接する行の凸部は、1/2ピッチ行方向にシフトした配置等が挙げられる。
【0017】
基板表面に凸部を形成する方法は、例えば、特開2006−310893号公報、特開2008−177528号公報、WO2009/020033号公報、特開2011−77562等に記載されている、当該分野で公知の方法が挙げられる。
具体的には、適当な形状のマスクパターンを用いて、後述するようなドライエッチング又はウェットエッチング等のエッチングを行う方法が挙げられる。なかでも、ウェットエッチングが好ましい。この場合のエッチャントは、例えば、硫酸とリン酸との混酸、KOH、NaOH、リン酸、ピロ硫酸カリウム等が挙げられる。また、マスクパターンを用いてエッチングした後、マスクパターンを除去して、さらに全面エッチングしてもよい。
【0018】
凸部の底面形状は、例えば、用いるマスクパターンの形状、エッチング方法及び条件を適宜調整して制御することができる。この際のマスクパターンの材料及び形状は、例えば、絶縁膜(レジスト、SiO等)が挙げられる。その形状は、円形、楕円形、三角形又は四角形等の多角形形状の繰り返しパターン等が挙げられる。このようなマスクパターンの形成は、フォトリソグラフィ及びエッチング工程等の公知の方法により実現することができる。
【0019】
このように、基板表面に凸部が形成されている場合には、活性層から、n型窒化物半導体層内を導波してきた光が直接凸部表面に照射され、一部は電極配置面側に進行方向を変化させ、他の一部は、n側の露出面の側面方向に反射させることができるため、光の取り出し効率が効果的なものとなる。
【0020】
(半導体層)
半導体発光素子を構成する各半導体層は、種々の窒化物半導体を用いることができる。具体的には、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)などにより、基板上にInAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の半導体を複数積層したものが用いられる。その層構造としては、MIS接合、PIN接合又はPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。各半導体層は、超格子構造、活性層を量子効果が生ずる程度の薄膜に形成した単一量子井戸構造及び多重量子井戸構造としてもよい。
【0021】
具体的には、半導体発光素子は、例えば、複数の凸部を有するサファイア基板1上に、GaNバッファ層、ノンドープGaN層、n型コンタクト層となるSiドープGaN層、n型クラッド層となるSiドープGaN層、活性層となるInGaN層、p型クラッド層となるMgドープAlGaN層、p型コンタクト層となるMgドープGaN層が、この順に積層された層構造によって構成することができる。
【0022】
このような窒化物半導体層の積層構造は、その一部領域において、n型窒化物半導体層が露出する露出領域が形成されている。通常、露出領域は、半導体発光素子の外縁を取り囲む領域と、後述するようなn側電極を形成する領域とを含むが、本発明における露出領域とは、後者を意味する。n側電極を形成するための露出領域は、一方向(例えば、図1Aにおいて矢印Z方向)に延長している。露出領域の長さ、幅及び形状は特に限定されるものではなく、半導体発光素子の大きさ、形状等によって適宜調整することができる。また、このn側電極を形成するための露出領域は、半導体発光素子の外縁を取り囲む露出領域と連結されていてもよいし、この外縁を取り囲む露出領域とは分離して配置されていてもよい。
この露出領域は、窒化物半導体層の積層構造を形成した際、その上に存在するp型窒化物半導体層と発光層、任意にn型窒化物半導体層の深さ方向の一部が除去されることにより形成されている。
【0023】
上述した例においては、例えば、MgドープGaN層、MgドープAlGaN層、InGaN層、SiドープGaN層、SiドープGaN層は、部分的にエッチング等により除去され、SiドープGaN層が露出する露出領域を有することができる。
【0024】
半導体発光素子は、電極配置面側から見て、長方形形状であることが好ましい。長方形形状としては、例えば、2対の辺が1:1.5〜8程度の比となるものが挙げられ、好ましくは1:2〜5程度であり、より好ましくは1:2.5〜4程度である。具体的には、150μm〜250μm×600μm〜900μm程度が挙げられる。特に、長手方向に細長い形状とすることにより、半導体発光素子を、例えばサイドビュー型にパッケージングする場合に、高さ方向に非常に小さい発光装置を得ることができる。
【0025】
(電極)
n側電極は、任意にn型窒化物半導体層の略全表面に接続された透光性導電膜と、その上に接続されるn側パッド電極とを備える。p型電極は、p型窒化物半導体層の略全表面に接続された透光性導電膜と、その上に接続されるp側パッド電極とを備える。なお、これらn側の透光性導電膜、n側パッド電極、p側透光性導電膜、p側パッド電極は、上述したn型窒化物半導体層の露出領域の位置に応じて、半導体発光素子の外周に沿って又は内側のいずれに配置されていてもよい。
これらのn側及びp側パッド電極は、通常、上述した透光性導電膜に対して、全域で導通するように配置されている。つまり、パッド電極は、その全面において、透光性導電膜に接触するように配置されている。これによって、n側及びp側パッド電極は、n型半導体層及びp型半導体層に、それぞれ、全域で導通するように配置されることとなる。
【0026】
特に、p型電極では、透光性導電膜を介して、p側パッド電極の直下及びその外周を取り囲む領域であって、p側窒化物半導体層上に、絶縁膜が配置されていることが好ましい(図1B及び図1Cの絶縁膜5参照)。ここでの絶縁膜は、当該分野で通常用いられるもの、例えば、Si、Al、Zr、Ti、Nb等の酸化物又は窒化物等の単層又は積層膜が挙げられる。なかでも、二酸化シリコンが好ましい。絶縁膜の厚みは、例えば、50nm〜2μm程度とすることが好ましい。これにより、電流が直接印加されるp側パッド電極から、その直下のp型窒化物半導体層への直接的な電流の供給を緩和させて、半導体発光素子の全面に渡ってより均一に電流を分布させることが可能となる。
【0027】
n側及びp側の透光性導電膜は、公知の材料、例えば、ITO等の透明導電性酸化物によって形成することができる。また、後述するパッド電極を構成することができる各種金属又は合金の単層又は積層膜で形成してもよい。
n側及びp側のパッド電極は、公知の材料、例えば、W、Al、Ti、Cr、Rh、Pt、Au、Ni等の金属又は合金の単層又は積層膜で形成することができる。例えば、n型窒化物半導体層側から、Al、W、Pt及びAuを積層した積層膜、p型窒化物半導体層側から、Ni、Au及びAuを積層した積層膜等が挙げられる。
これらの電極は、n側とp側とで、それぞれ異なる材料及び/又は積層構造で形成されていてもよいし、製造方法の簡略化を考慮して、それぞれ同一材料の同一積層構造又は一部同一材料の積層構造で形成されていてもよい。
【0028】
n側パッド電極は、n側パッド部と、このn側パッド部から延長するn側延伸部を備える。p側のパッド電極は、p側パッド部と、このp側パッド部から延長するp側延伸部を備える。
このように、パッド部から、延伸部を延長させることにより、パッド部に供給された電流を、半導体発光素子の全面に渡って拡散することができる。
【0029】
n側パッド部及びp側パッド部は、ワイヤボンディング等のボンディングを実現できる程度の面積を有していればよく、上述したn型窒化物半導体の露出領域が延長する一方向に直交する方向(例えば、短手方向)の中央領域に、互いに向かい合って配置されていることが好ましい。ここでの中央領域に配置されているとは、n側パッド部及びp側パッド部のそれぞれ一部が、半導体発光素子の、いわゆる短手方向の中央(例えば、図1中、X)に跨って配置していることを意味する。なかでも、n側パッド部及びp側パッド部のそれぞれの重心が中央に配置されていることが好ましい。また、n側パッド部及びp側パッド部は、いわゆる短手方向において、同じ位置に配置されていることが好ましい。
これらのパッド部を、いわゆる短手方向の中央領域に配置することにより、パッケージング等する場合に、半導体発光素子の収容空間が非常に狭い場合であっても、実装性を良好に確保することが可能となる。
【0030】
n側パッド部は、一方向(例えば、長手方向)においては、n型窒化物半導体層から、半導体発光素子の中心側に偏って配置されていてもよいし(図2中、21a参照)、n型窒化物半導体層の端部にほぼ隣接して配置されていてもよい(図1A中、11a参照)。
p側パッド部は、いわゆる長手方向においては、p型窒化物半導体層の端部にほぼ隣接して配置されていてもよいし(図2中、22a参照)、p型窒化物半導体層から、半導体発光素子の中心側に偏って配置されていてもよい(図1A中、12a参照)。言い換えると、p型半導体の短辺から離間して配置されていてもよい。
なかでも、n側パッド部がn型窒化物半導体層の端部に隣接して配置され、p側パッド部が半導体発光素子の中心側に偏って配置されていることが好ましい。このような配置によって、p側パッド電極の全周辺において、より均一に電流を拡散させることができ、半導体発光素子の全面に渡る均一な電流の拡散を実現することができる。また、n側パッド部との距離を最適化することができるため、Vfを低減させることができる。
中心側に偏って配置される程度は、例えば、後述するパッド部の直径又は長さの1〜3倍程度、好ましくは1〜2倍程度が挙げられる。
n側パッド部とp側パッド部との距離は、例えば、半導体発光素子の長手方向の長さの50〜85%程度、好ましくは60〜80%の長さが例示され、具体的には、500μm〜700μm程度が挙げられる。
n側パッド部及びp側パッド部は、必ずしも同じ形状及び大きさでなくてもよいが、例えば、半導体発光素子の短辺の長さの1/6〜1/2程度、好ましくは1/5〜1/3程度の直径を有する円に近い形状又は一辺がこの程度の長さの四角形に近い形状であるものが挙げられ、具体的には、直径又は一辺の長さが40〜80μm程度が挙げられる。
【0031】
n側延伸部及びp側延伸部は、同じ太さであってもよいし、異なる太さであってもよいし、部分的に異なる太さであってもよいし、一部のみ幅広となる太さであってもよい。これら延伸部は、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。例えば、これら延伸部は、n側パッド部及びp側パッド部の1/20〜1/5程度の幅を有するものが挙げられる。具体的には、3μm〜12μm程度、好ましくは5μm〜8μm程度が挙げられる。
n側延伸部及びp側延伸部は、それらの一部同士が、通常、図1Aにおける矢印Z方向(いわゆる長手方向)の一部において、オーバーラップするように配置されている。このようなオーバーラップの部位においては、n側延伸部に隣接するp側半導体層の端部とp側延伸部との距離α(最短距離、例えば、図1参照)は、p側延伸部とn側延伸部とは反対側に位置するp型半導体層の端部)との距離β(最短距離、例えば、図1参照)よりも長いことが好ましい。この距離αと距離βの長さの違いは、例えば、α:β=1.5〜3:1程度が挙げられる。具体的には、αは100〜150μm程度の範囲であり、βは60〜85μm程度の範囲であり、(α−β)は30〜50μm程度が好ましい。
ここで、一方向においてオーバーラップするとは、半導体層の積層方向に重なっていることを意味するものではなく、電極配置面側から見て、一方向に直交する線に平行な線を一方向に移動させた場合に、この平行な線がいずれかの位置で、n側延伸部及びp側延伸部の双方に交差することを意味する。例えば、図1Aにおいては、矢印Mの領域が長手方向においてオーバーラップする領域を指す。
上述したオーバーラップの部位においては、特に電流が集中しやすくなるが、上述した距離αを距離βよりも長くすることにより、電流集中を効果的に緩和させることができる。
【0032】
ただし、n側延伸部の先端は、一方向において、p側パッド部とオーバーラップしないことが好ましい。また、p側延伸部の先端が、一方向において、n側パッド部とオーバーラップしないことが好ましい。これにより、パッド部と延伸部との間で発生する電流集中を効果的に緩和することができる。
【0033】
n側延伸部は、n側パッド部から延長する限り、どのように伸びていてもよい。例えば、必ずしも全部が辺に沿わずに、一部のみ辺に向かって伸びていてもよい(例えば、図1A等参照)し、半導体発光素子の短手方向の中央線に沿って伸びていてもよい(例えば、図2参照)。
なお、n側延伸部は、上述したように、n型窒化物半導体層の露出領域上に形成されるため、その形状は、露出領域の形状に対応するため、露出領域を含んで延びる一方向への延長線は、一方向に延伸するn側延伸部を含んで延びる延長線と一致する。
【0034】
p側延伸部は、p側パッド部から延伸する限り、さらに、n側パッド部側に延伸する限り、どのように伸びていてもよい。p側延伸部は、少なくとも一部が、半導体発光素子の中央領域から該中央領域に対してn側延伸部が配置された領域とは反対側の領域に及ぶ領域上において、延伸していることが好ましい。例えば、p側パッド部の端部から直線状に伸びるか(例えば、図1A参照)又は屈曲部分を有して直線状に伸びていてもよい(例えば、図2参照)。p側パッド部の端部から伸びる場合、その方向は、半導体発光素子の長辺に沿って、つまり、長辺に平行な方向に伸びることが好ましい。
p側延伸部がp側パッド部の中央から延長する場合には、電流分布の均一性を向上させながら、さらにVfを改善することができる。この場合、特に、p側延伸部がn側延伸部と近づくと、電流集中が生じやすくなるが、オーバーラップ部分以外のところで、p側延伸部をよりn側延伸部に近づけることで、電流集中を軽減したまま、さらにVf改善することができる。
【0035】
(保護膜)
本発明の半導体発光素子は、通常、その上面が保護膜によって形成されており、n側パッド部及びp側パッド部へのワイヤボンディングを確保するために、これらn側パッド部及びp側パッド部の直上に開口(図1等の保護膜6参照)を有している。ここでの保護膜としては、上述した絶縁膜と同様のものが挙げられる。
【0036】
本発明においては、基板表面の凸部の形状及び配置によって、半導体層内、特に、n型窒化物半導体層内を導波する光を、基板とn側窒化物半導体層との界面で、凸部の側面によって、露出領域を規定する半導体層の側面に向けて効率的に反射させることができる。これによって、露出領域を規定する半導体層の側面に向けて効率的に反射させた光を、光取り出し面に向けることができるため、より効率的に光取り出しを向上させることができる。また、半導体発光素子におけるn側パッド電極及びp側パッド電極の配置及び形状によって、発光強度分布を均一化し、順方向降下電圧(Vf)を低減させて発光特性とともに、実装性にも優れた半導体発光素子を実現することができる。特に、基板表面の凸部の形状及び配置と、n側パッド電極及びp側パッド電極の配置及び形状との双方を組み合わせることにより、より一層の光取り出し効率の向上を実現することができる。
以下に本発明の半導体発光素子の実施形態を具体的に説明する。
【0037】
(実施の形態1)
この実施の形態の半導体発光素子10は、図1A図1Cに示すように、複数の凸部1aを備えた基板1上に、n型窒化物半導体層2、発光層3、p型窒化物半導体層4がこの順に積層されて、平面形状が長方形に形成されている。この半導体発光素子10は、電極配置面側から見て、例えば、240μm×800μmの長方形形状である。
半導体発光素子10の一部領域においては、p型窒化物半導体層4及び発光層3とともに、n型窒化物半導体層2が深さ方向に若干除去されて、n型窒化物半導体層2が露出した露出領域2aを備える。この露出領域2aは、一方向、例えば、図1Aにおける矢印Z方向(いわゆる長手方向)に、延長した領域を有するとともに、一方向に直交する方向、つまり、半導体発光素子の短手方向の中央領域(中央線Xを跨ぐ領域)に配置され、半導体発光素子10の短辺に略隣接して配置された領域と、半導体発光素子10の一コーナー部位を含み、一方向に延長した領域につながる領域とを有している。
【0038】
基板1の表面の複数の凸部1aは、図1AのY領域において拡大して模式的に示すとともに、図1Dに示したような形状及び向きで、基板1上の全面にわたって配置されている。
つまり、凸部1aは、底面形状が複数の頂点、例えば、3つの頂点A、B及びCを有しており、隣接する2つの頂点A及びBが、露出領域2aから一方向へ延びる延長線Qに対して、最短かつ等距離となるように配置されている。言い換えると、隣接する頂点A及びBを結ぶ線Gが、一方向に延長した延長線Qに実質的に平行であり、かつ、凸部1a内で一方向に延長する延長線Qに近い側、つまり、図1Aにおいては、左側に配置されている。
これにより、基板1とn型窒化物半導体層2との界面で効果的に光を乱反射させることができ、特に、凸部1aの側面dに照射された光は、n型窒化物半導体層の露出領域2aの側面に反射され、これに起因して、光取り出し側への反射をより一層確実にすることができる。
【0039】
ただし、凸部1aの形状及び配置は、図1Dに示されたように基板1上全面にわたって配置されているため、露出領域2a直下の基板1表面では、上述した頂点A及びBの延長線Qに対する最短かつ等距離という関係は、必ずしも該当しないこととなる。
【0040】
この半導体発光素子10では、凸部1aは、その底面の形状が、頂点A、B及びCを結んだ線によって、一辺が2.5μm程度の正三角形を構成し、テーパー角が60°程度の錐台形状である。頂点A及びB、頂点B及びC、頂点A及びCの間に配置する側面d、e、fは、それぞれ、外側に向かって凸の湾曲を有しており、凸部1aの上面jは、正三角形をベースとして円形に近い形状となっている。言い換えると、正三角形の頂点が丸みを帯び、また、各辺が外側に膨らみ丸みを帯びているものである。凸部1aの高さは、例えば、1μm程度である。隣接する頂点A同士の距離(ピッチ)は3.5μm程度である。
【0041】
凸部1aは、基板1の表面において、上述したように図1Dの形状及び配置とし、かつ図1Eに示すように、各凸部1aの2つの頂点を結ぶ線が、斜め方向に隣接する凸部1aにおいて、直線を構成するように配置されている。言い換えると、凸部1aの配置を向かって右から第1列、第2列、第3列とすると、第2列は第1列から凸部1aの半分のピッチだけ列方向(縦方向)にシフトしており、第3列は第2列からさらに凸部1aの半分のピッチだけ列方向にシフトしている。したがって第3列の各凸部1aは、第1列の凸部1aと行方向(横方向)では位置が重なっている。このような配置によれば、凸部1aにより、横方向における光を効果的に凸部1aの側面に照射させ、光取り出し方向への反射を確実にすることができ、光取り出し効果を向上させることができる。
【0042】
また、凸部1aの分布を、図1Fに示すように、凸部1aの行ごとに、凸部1aの半分の幅ずつシフトするように配置することが好ましい。すなわち、図1Fにおいて凸部1aの配置を上から第1行、第2行、第3行とすると、第2行は第1行から凸部1aの半分のピッチだけ行方向(横方向)にシフトしており、第3行は第2行からさらに凸部1aの半分のピッチだけ行方向にシフトしている。したがって第3行の各凸部1aは、第1行の凸部1aと列方向(縦方向)では位置が重なっている。このような配置によれば、図1Eの示す分布において、横方向における光の抜け道Lをより塞ぐことができるために(図1F矢印L参照)、光の凸部1aの側面への照射及び光取り出し方向への反射をより確実にすることができ、光取り出し効果をさらに向上させることができる。
【0043】
n側電極は、n型窒化物半導体層の露出領域2a表面の大部分に形成されたn側透光性導電膜11nとその上に積層されたn側パッド電極11とによって形成されている。p側電極は、p型窒化物半導体層の表面の略全面に形成されたp側透光性導電膜12pとその上に積層されたp側パッド電極12とによって形成されている。
【0044】
n側パッド電極11は、n側パッド部11aと、n側延伸部11bを有する。n側パッド部11aは、短手方向の中央領域(中央線Xを跨ぐ領域)に配置され、半導体発光素子10の短辺に略隣接して配置されている。n側延伸部11bは、n側パッド部11aから、短辺に沿わずに、短辺から離れ、かつ長辺に向かって伸びるように、半導体発光素子10のコーナー部で丸みを帯びた形状で配置されている。n側延伸部11bは、n側延伸部11bからn側パッド部11aに向かって若干幅広となる部分を有する。
【0045】
p側パッド電極12は、p側パッド部12aと、p側延伸部12bとを有する。p側パッド部12aは、短手方向の中央領域(Xを跨ぐ領域)に配置され、半導体発光素子10のn側パッド部11aが配置された短辺とは異なる短辺から、半導体発光素10子の中心側に偏って配置されている。p側延伸部12bは、p側パッド部12aの端部、つまり、n側延伸部11bが配置する側とは異なる側の、短手方向の端部から、半導体発光素子10長辺に平行な方向に、n側パッド部11aに近づく方向に延伸している。言い換えると、p側延伸部12bは、半導体発光素子10の中央領域に対して、n側延伸部11bが配置された領域とは反対側の領域において延伸している。
【0046】
半導体発光素子10の短辺から中心側に偏って配置されたp側パッド部12aは、例えば、半導体発光素子10の長辺長さの18%程度内側に配置されている。具体的には、半導体発光素子10の端部からp側パッド部12aの中心までの距離は150μm程度が挙げられる。
このように、p側パッド部12aが中心側に偏って配置されているために、p側パッド部12aの全周において発光できる領域を確保することができ、発光強度分布をより均一にすることが可能となる。
【0047】
n側延伸部11bの先端は、長手方向において、p側パッド部12aとオーバーラップしておらず、p側延伸部12bの先端は、長手方向において、n側パッド部11aとオーバーラップしていない。
これによって、n側延伸部11bの先端とp側パッド部12aとの間、p側延伸部12bの先端とn側パッド部11aとの間で、電流の集中が発生することなく、半導体発光素子の全体にわたって均一な光強度分布をより図ることができる。
【0048】
また、この半導体発光素子は、図1A図1Cに示したように、p側透光性導電膜12pを介して、p側パッド電極12の直下及びその外周を取り囲むように、p型窒化物半導体層4上に、SiOからなる絶縁膜5(膜厚:300nm)が配置されている。これにより、電流が直接印加されるp側パッド電極12から、その直下のp型窒化物半導体層4への直接的な電流の供給を緩和させて、半導体発光素子の全面に渡ってより均一に電流を分布させることが可能となる。
【0049】
このように基板1の表面に凸部1aが、特定の形状及び配置で形成されている場合の半導体発光素子の指向特性を、配光測定器を用いて測定した。半導体発光素子10長手方向の中央部を、図1Aの線II−II’とし、露出領域2a側(図1Aの左側)側面の法線方向を0°、半導体発光素子10上面の法線方向(図1Aの紙面手前方向)を90°、露出領域2aと反対側(図1Aの右側)側面の法線方向を180°として測定した光強度のプロットを図1Gに示す。
図1Gに丸で示すように、凸部1aの頂点A及びBの間に配置する側面dが、図1Aにおける矢印Z方向(長手方向)に延長した露出領域2aに面することにより、凸部1aの側面dが存在する側に強く光を出射することができる。
【0050】
また、上述した半導体発光素子10をダイボンド樹脂によって反射板(例えば、銀)上に搭載し、その全体をエポキシ樹脂で封止したサンプルを想定し、光取り出し効率をシュミレーションした。
比較例として、半導体発光素子10において、凸部1aの形状は同一であるが、その配置を図4Aのようにしたもの、つまり、隣接する2つの頂点AbとBb、BbとCb及びCbとAbのいずれもが、露出領域を含んで延びる一方向への延長線に対して、最短かつ等距離とならないように配置したもの(比較例1)、図4Bのようにしたもの、つまり、隣接する2つの頂点AdとBd、BdとCd及びCdとAdのいずれもが、露出領域を含んで延びる一方向への延長線に対して、最短かつ等距離とならないように配置したもの(比較例2)以外、同様の構成を有する半導体発光素子を作製し、上記と同様にサンプルを想定して光取り出し効率をシュミレーションした。
その結果、半導体発光素子10では、比較例1及び2に対して、光取り出し効率が6〜7%程度向上した。具体的には、半導体発光素子10の光取り出し効率を100%とすると、比較例1及び2では、いずれも93〜94%程度の光取り出し効率しかシュミレーションされなかった。
これにより、本実施形態の半導体発光素子10では、比較例に対して、約6〜7%程度光取り出し効率が向上することが確認された。
【0051】
また、この半導体発光素子では、n側パッド部11a及びp側パッド部12aが、短手方向の中央領域に配置されているために、導電性ワイヤをパッド電極に接合する際に、導電性ワイヤが周辺部材等に干渉することなく、適所において接合することができるために、ワイヤの断線などの不具合を招くことがなくなり、実装性を確保することができる。
【0052】
(実施の形態2)
この実施の形態の半導体発光素子20では、図2に示すように、n型窒化物半導体層の露出領域72aが、半導体発光素子20の内側に形成され、それに伴って、p側電極及びn側電極の配置が実施の形態1と異なっている。
つまり、この半導体発光素子20では、露出領域72aは、短手方向の中央領域(Xを跨ぐ領域)に配置され、半導体発光素子20の内側に偏って配置された円形に近い領域と、その円形に近い領域から、半導体発光素子20の中央領域上に延長する領域とを備えている。
n側電極は、この露出領域72aの略全面に、透光性導電膜21が形成されており、その上にn側パッド電極21nが形成されている。n側パッド電極21nは、円形に近い領域上に配置されたn側パッド部21aと、その領域から半導体発光素子20の中央領域上に延長するn側延伸部21bを有する。
【0053】
p側電極は、短手方向の中央領域(中央線Xを跨ぐ領域)であって、半導体発光素子20の短辺に略隣接した領域及びその両側から、短辺に沿わずに、短辺から離れ、かつ長辺に向かってそれぞれ伸び、半導体発光素子20のコーナー部で丸みを帯びた形状の領域の上に配置された透光性導電膜22と、短手方向の中央領域上に配置されたp側パッド部22aと、その両側から延びるp側延伸部22bとを有する。
【0054】
このようなn型窒化物半導体層の露出領域72aの配置に伴って、露出領域72aを含んで延びる一方向への延長線(図2中、W)、つまり、半導体発光素子20の短手方向の中央線を境として、基板1上に形成される凸部を、その底面の2つの隣接する頂点が、延長線Wに対して最短かつ等距離という関係にするために、図2に対して延長線Wに対する右側(図2中、矢印Wrの領域)においては、領域Yにおいて、拡大して模式的に表したように、図1Dに示す形状及び向きとし、延長線Wに対する左側(図2中、矢印Wlの領域)においては、領域Yにおいて、拡大して模式的に表したように、図3に示す形状及び向き配置とした。
つまり、図2中、矢印Wrの領域では、図1Dに示したように、隣接する頂点A及びBを結ぶ線Gが、一方向に延長した延長線Wに実質的に平行であり、かつ、凸部1aa内で延長線Wに近い側、左側に配置され、矢印Wlの領域では、図3に示したように、隣接する頂点Ac及びBcを結ぶ線Gcが、延長線Wに実質的に平行であり、かつ、凸部1ab内で延長線Wに近い側、右側に配置されている。
【0055】
なお、基板の凸部1a及びn型窒化物半導体層の露出部の位置及び形状、n側電極、p側電極が異なる以外は、実質的に半導体発光素子10と同様の構成を有する。
この半導体発光素子20においても、実質的に半導体発光素子10と同様の光取り出し効率を含む同様の効果が得られる。
【0056】
(別の形態)
この形態の半導体発光素子10aは、図5に示すように、基板1の表面に形成される凸部1aが、半導体発光素子10とは水平方向に逆向きに配置されている以外、実質的に半導体発光素子10と同様の構成を有することもできる。
つまり、この凸部1aはすべて、図3に示したように、隣接する頂点Ac及びBcを結ぶ線Gcが、延長線Qに対して等距離(つまり、実質的に平行)であり、凸部1a内で延長線Qに遠い側、右側に配置されている。
【0057】
この半導体発光素子10aを用いて、実施の形態1と同様に、ダイボンド樹脂によって反射板(例えば、銀)上に搭載し、その全体をエポキシ樹脂で封止したサンプルを想定し、光取り出し効率をシュミレーションした。
その結果、半導体発光素子10aでは、実施の形態1における半導体発光素子10の光取り出し効率を100%とした場合、略これに匹敵する値、99.5%の光取り出し効率がシュミレーションされた。
これにより、本形態の半導体発光素子10aでは、比較例に対して、約5.5〜6%程度光取り出し効率が向上することが確認された。
【0058】
(実施の形態3)
この実施の形態の半導体発光素子は、半導体発光素子20のうち、基板1の表面に形成される凸部1aを、全面にわたって、図1Dに示す凸部の形状及び向きで配置した以外、実質的に半導体発光素子20と同様である。
この半導体発光素子においても、実質的に半導体発光素子20と同様の光取り出し効率を含む同様の効果が得られる。
【0059】
(実施の形態4)
この実施の形態の半導体発光素子は、半導体発光素子20のうち、基板1の表面に形成される凸部1aを、全面にわたって、図3に示す凸部の形状及び向きで配置した以外、実質的に半導体発光素子20と同様である。
この半導体発光素子においても、実質的に半導体発光素子20と同様の光取り出し効率を含む同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の半導体発光素子は、照明用光源、LEDディスプレイ、携帯電話機等のバックライト光源、信号機、照明式スイッチ、車載用ストップランプ、各種センサおよび各種インジケータ等に広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 基板
1a、1aa、1ab 凸部
2 n型窒化物半導体層
2a、72a 露出領域
3 活性層
4 p型窒化物半導体層
5 絶縁膜
6 保護膜
10、10a、20 半導体発光素子
11n、21n n側透光性導電膜
11、21 n側パッド電極
11a、21a n側パッド部
11b、21b n側延伸部
12p、22p p側透光性導電膜
12、22 p側パッド電極
12a、22a p側パッド部
12b、22b p側延伸部
A、B、C、Ab、Bb、Cb、Ac、Bc、Cc、Ad、Bd、Cd 頂点
D、E、F、Dc、Ec、Fc 凸部底面を形作る線
G、H、K、Gc、Hc、Kc 2つの頂点を結ぶ線
d、e、f、dc、ec、fc 凸部の側面
j、jc 凸部の上面
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4A
図4B
図5