(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の飼料用添加物は、後生動物を乾燥状態において1wt%以上、好ましくは5〜80wt%、より好ましくは10〜70wt%含み、残部が後生動物以外の汚泥よりなる。後生動物以外の汚泥は、後生動物を培養する有機性排水の好気性生物処理に伴って生成するものであり、細菌、原生動物、有機性SS及び無機性SS(硬度成分、鉱物など)よりなる。なお、後生動物を乾燥状態において1wt%以上含むとは、105℃で恒量になるまで乾燥させた状態の飼料用添加物中の後生動物の含有率が1wt%以上であることを表わす。
【0016】
この後生動物としては、ワムシ類を主体とするものが好ましく、後生動物中の10wt%以上、特に20wt%以上がワムシ類よりなることが好ましい。ワムシ類としては、シオミズツボワムシ、ハオリワムシ、ヒルガタワムシ、ハネウデワムシ、ミツウデワムシ、ミジンコワムシ、カシラワムシ、ネズミワムシ、フクロワムシ、ツボワムシ、カメノコウワムシ、アワワムシ、ヒラタワムシ、ドロワムシ、カタオワムシ、ミドリワムシ、スジワムシなど各種のものを挙げることができる。
【0017】
後生動物は、ワムシ以外のゾウリムシ、エアロゾマなどを含んでいてもよい。
【0018】
本発明では、飼料用添加物は、遊離アミノ酸を乾燥状態において0.5wt%以上、特に2〜5wt%含むことが好ましい。このように遊離アミノ酸を多く含む微小動物は、接餌促進作用に優れる。遊離アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸が好適である。この乾燥状態における遊離アミノ酸含有率とは、アミノ酸自動分析での遊離アミノ酸含有率を表わす。
【0019】
本発明の混合飼料は、この飼料用添加物と、飼料とを含むものである。混合飼料中の飼料用添加物の好ましい配合量は、混合飼料を105℃で恒量になるまで乾燥した状態において0.1〜30wt%特に0.5wt%以上である。
【0020】
飼料としては、魚粉、穀物類、大豆類、グルテンミール、小麦粉、飼料用酵母、油脂類などの1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
本発明の混合飼料は、飼料に対し、本発明の飼料用添加物と、必要に応じ他の添加物(例えばビタミン、ミネラル、抗生物質、食品添加物)などを添加して混合することにより製造される。この際、添加物として合成アミノ酸を用いることもできる。この場合は合成アミノ酸の使用量を従来より低減することができる。
【0022】
次に、微小動物の好適な培養による飼料添加物の生産方法について
図1を参照して説明する。
【0023】
この実施形態では、
図1のように、たんぱく質を40wt%以上、例えば40〜60wt%含む有機性排水を、第1の好気性反応槽(生物処理槽)1にて好気的に処理して細菌を培養し、この第1の生物処理槽1からの第1処理水を第2の好気性反応槽(生物処理槽)2に導入して第1処理水に含まれる細菌を微小動物(原生動物、後生動物)に捕食させることにより微小動物を培養する。
図1では、この第2の好気性反応槽2からの第2処理水を沈殿槽3に導入し、固液分離し、処理水を系外に取り出す。
【0024】
第2の好気性反応槽2内の汚泥の一部と、この沈殿槽3で沈降した汚泥を濃縮槽4に導入する。濃縮槽4内には、目合いの大きい第1の濾過材4aと、目合いの小さい第2の濾過材4bとが設けられており、第1の濾過材4aを通過し、第2の濾過材4bを通過しない大きさの汚泥を飼料用添加物又はその原料として収穫する。
【0025】
有機性排水がたんぱく質を40wt%以上含むものであると、遊離アミノ酸を多く含む微小動物を培養することができる。
【0026】
たんぱく質を40wt%以上含む有機性排水としては、食品工場排水(例えば食品工場からの煮汁)、魚粉分散水、畜産排水、血液排水、米とぎ工程排水等の穀物粉末分散水、生ごみ破砕物の分散水、廃牛乳、廃飲料などが例示される。
【0027】
この有機性排水は、糖質および/または粗脂肪を10wt%以上、例えば20〜40wt%含むことが好ましい。この理由は、微小動物の増殖に必要な成分であるからである。
【0028】
この有機性排水を、第1の好気性反応槽1に、好ましくは滞留時間が2〜12時間となるよう連続的に通水し、細菌によりBOD成分(有機成分)を菌体に変換(菌体培養)する。
【0029】
この第1の好気性反応槽1では、ワムシ等の微小動物の餌となる細菌を培養する。ワムシ等の微小動物の餌となる細菌は、3〜20μm程度、特に5〜10μmの微小フロックを形成しており、かつたんぱく質、糖質が豊富なものが好適である。
【0030】
このような微小フロックの分散性細菌は、たんぱく質及び糖質を含む基質、望ましくは可溶性の高分子化合物を基質として、滞留時間2〜12時間程度で好気性条件下、連続培養することにより得られる。第1の好気性反応槽1のDO濃度は、好ましくは1mg/L以上、特に2〜10mg/Lである。
図1のように、第1の好気性反応槽1に攪拌機1aを設けて強攪拌することが望ましい。
【0031】
この微小動物の培養方法は、微小動物を用いた有機性排水の生物処理(例えば特開2006−247494)とは異なり、微小動物の安定した大量培養を目的とするので、第1の好気性反応槽のBOD汚泥を2kg/kg−MLSS/d以上、例えば2〜12kg/kg−MLSS/dのように非常に高くし、かつDO(溶存酸素)濃度を1mg/L以上例えば2〜10mg/Lのように高くする。さらにこのとき攪拌強度G値5〜100s
−1という強攪拌でDOを槽内全体にまんべんなく供給することによって、分散性細菌が粗大フロック化することを抑制することが望ましい。
【0032】
第1の好気性反応槽1のpHは5〜9が好ましく、基質に油を含む場合は、やや高め、具体的には8〜9程度が好ましい。
【0033】
第1の好気性反応槽1の滞留時間は、前述の通り2〜12時間が好ましいが、有機性排水として溶解性の可溶性でんぷん、魚肉エキス等を使用する場合は2〜8時間程度、魚粉や穀物粉末等固形性のものを用いる場合は6〜12時間程度が好ましい。
【0034】
第1の好気性反応槽1の温度は30〜35℃が好ましいが、10〜40℃の範囲であればよい。
【0035】
このような条件で細菌を培養することにより、投入した有機性排水中の有機物重量の40〜70%例えばほぼ50%の、栄養価の高い、微小動物の捕食に好適な分散菌が連続的に生産される。この有機性排水中のたんぱく質含有量が多いと、細菌は遊離アミノ酸を豊富に含んだものとなり、この細菌を捕食した微小動物も遊離アミノ酸を多く含むものとなる。
【0036】
第2の好気性反応槽2では、微小動物を連続的に培養する。培養開始時は、好ましくは微小動物を少量添加すると共に、場合によっては、食品工場等の活性汚泥等を添加し、散気管2a等の曝気手段により曝気してDOを好ましくは1mg/L以上例えば2〜10mg/Lに維持しながら、第1の好気性反応槽1からの第1処理水を添加する。この添加は連続式とすることが好ましいが、初期は回分式の添加でもよい。第2の好気性反応槽2は、pHを7〜8に維持することが望ましい。第2の好気性反応槽2の温度を25〜30℃に維持すると、一日あたり微小動物の重量とほぼ同量の細菌を食するので、これを目安に第1の好気性反応槽の流出液を添加するのが好ましい。
【0037】
この操作を継続すると、第2の好気性反応槽2の後生動物を含む固形物は、乾燥重量で3〜10g/L程度の濃度で安定する。槽内の微小動物は、後生動物であるワムシ類を主体とし、ゾウリムシ等を少量含むものとなる。
【0038】
この第2の好気性反応槽2からの第2処理水を沈殿槽3に導入し、固液分離し、処理水を系外に取り出す。
【0039】
後生動物を収穫するには、濃縮槽4内の上段側に第1の濾過材4aを張設し、下段側に第2の濾過材4bを張設し、第1の濾過材4aの上側に第2の好気性反応槽2の沈降汚泥と、沈殿槽3の沈降汚泥とを導入する。第1の濾過材4aを通過するが、第2の濾過材4bを通過しない大きさの汚泥を濃縮槽4から取り出し、後生動物含有汚泥よりなる飼料用添加物を収穫する。この飼料用添加物はその後、必要に応じ、水分90wt%以下、例えば70〜85wt%程度に脱水される。また、必要に応じ乾燥して保存し易くしてもよい。
【0040】
第1の濾過材4aの目合いは500〜2000μm特に1000〜1500μmが好適であり、第2の濾過材4bの目合いは20〜50μm特に20〜30μmが好適である。これにより、粒径20〜2000μm特に50〜500μmの後生動物含有汚泥が飼料用添加物として濃縮槽4から収穫される。
【0041】
第1の濾過材4a不通過の粒径の大きい汚泥と、第2の濾過材4bを通過した分散菌、原生動物、及び溶解性有機成分等を含む液分とを第2の好気性反応槽2に返送することが好ましい。
【0042】
なお、沈殿槽3からの汚泥のみを濃縮槽4に導入してもよい。
【0043】
後生動物の収穫に当たっては、全量ではなく一部後生動物を残すように収穫することが望ましい。毎日1回、前日に増えた分のみ収穫するようにしてもよい。後生動物の増える量(重量)は、与えた細菌の重量の30〜40%である。前述の通り、第1の好気性反応槽1では、投入した糖類、たんぱく質の約50%が細菌に変換されるので、第1の好気性反応槽1に投入した糖類及びたんぱく質の15〜20wt%程度の後生動物が培養される。
【0044】
収穫した後生動物は、前述の通り、遊離アミノ酸を豊富に含む。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
図1のフローに従って下記条件で微小動物を培養して飼料用添加物(後生動物含有汚泥)を収穫した。なお、第1の濾過材4aの目合いは1000μm、第2の濾過材4bの目合いは20μmである。第1の濾過材4a不通過の汚泥と第2の濾過材4b通過液との全量を第2の好気性反応槽2に返送した。
【0046】
原水:たんぱく質50wt%、糖質30wt%、粗脂肪10wt%を含む魚加工排水
第1の好気性反応槽
BOD汚泥負荷:5kg/kg−MLSS/d
攪拌強度G値:5s
−1
DO:2mg/L
pH:7
温度:27℃
第2の好気性反応槽
SRT:25日
DO:2mg/L
pH:7
温度:27℃
【0047】
収穫した後生動物含有汚泥の一部を分取し、遠心脱水機で水分含有率90wt%以下に脱水した後、105℃で恒量になるまで乾燥させた乾燥状態での後生動物の含有率を測定したところ10wt%であった。
【0048】
この乾燥状態の飼料用添加物の遊離アミノ酸含有率をアミノ酸自動分析法によって分析したところ、主な遊離アミノ酸量は、
遊離アラニン:0.95wt%、
遊離グリシン:0.39wt%、
遊離プロリン:0.39wt%
遊離グルタミン酸:0.93wt%
(合計2.66wt%)であった。
【0049】
上記の収穫した後生動物含有汚泥を脱水及び乾燥して水分含有率6wt%の飼料用添加物を製造した。市販の養魚用配合飼料(日本水産株式会社、ニッスイ初期飼料D−2、主な遊離アミノ酸濃度合計1.2wt%程度)90重量部と、この飼料用添加物10重量部とを混合して混合飼料を調製した。
【0050】
この混合飼料を用いてタイ稚魚20匹(平均体重33.0g)を6週間飼育し、平均体重を測定したところ、56.5gであった。
【0051】
<比較例1>
飼料として上記養魚用配合飼料のみを用い、実施例1と同様にしてタイ稚魚20匹を6週間飼育して平均体重を測定したところ、50.7gであった。この結果より、アミノ酸を多く含む実施例1の飼料用添加物は嗜好性を向上させる効果があることが示された。
【0052】
<比較例2>
実施例1において原水水質を下記条件に変えて培養した。
原水:たんぱく質20wt%、糖質10wt%、粗脂肪5wt%を含む飲料製造工程排水
【0053】
得られた後生動物含有汚泥を実施例1と同様に脱水及び乾燥して水分含有率6wt%の飼料用添加物を製造した。
得られた飼料用添加物中の後生動物の主な遊離アミノ酸量を同様にして測定したところ、
遊離アラニン:0.01wt%、
遊離グリシン:0.04wt%、
遊離プロリン:検出されず
遊離グルタミン酸:0.07wt%
(合計0.12wt%)であり、実施例1に比べてアミノ酸量が著しく少なく、さらに比較例1で用いた市販飼料と比較してもアミノ酸量が少なかった。
【0054】
この後生動物含有汚泥を飼料用添加物として用いたこと以外は実施例1と同様にして混合飼料を調製し、同様にタイ稚魚20匹を6週間飼育して平均体重を測定したところ、44.5gであった。